特別支援学校等における医療的ケアの実施に関する検討会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成23年10月31日月曜日10時~12時

2.場所

文部科学省東館16F3会議室

3.議題

  1. 介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度改正の概要等について
  2. 今後の特別支援学校等における医療的ケアの実施に関する自由討議

4.出席者

委員

勝田委員、北住委員、戸田委員、花井委員、濱川委員、古川委員、三室委員

文部科学省

千原特別支援教育課長、前田特別支援教育課課長補佐、相川振興係長

オブザーバー

(文部科学省)下山特別支援教育調査官、丹羽特別支援教育調査官
(厚生労働省)翁川福祉人材確保対策室室長補佐、久保訪問サービス係長

5.議事要旨

(1)開会

事務局より委員及びオブザーバー等の紹介があり、特別支援教育課長より挨拶が行われた。

(2)座長の決定

三室委員を座長とすることが承認された。その後、座長より挨拶があった。

(3)会議の非公開

配付資料及び議事要旨は公開とし、本検討会議は非公開とすることが確認された。

(4)配付資料の確認

事務局から配付資料について、確認があった。

(5)喀痰吸引等の制度について

事務局から今般の喀痰吸引等の制度改正の概要等について説明があった。その後、質疑応答があり、主な発言は次のとおりである。

(○=委員、□=事務局) 

○介護職員等が実施する医療的ケアへの対応について、省令に完全に拘束されるのか確認したい。具体的には、酸素療法を受けながら通学している子どもがいるし、日常的なケアとして人工呼吸器を使用している子どももいる。法律には明記されていないこれらの行為を学校でどのように位置づけるか。特別支援学校において、特例のような形で、もっと幅の広い対応が可能なのか。行為として教員が実際に関わって良いとされている部分、つまりたんの吸引及び経管栄養だけに絞っての議論なのか。少し幅を広げての検討も必要なのか。基本的な枠組みの問題としてお聞きしたい。

□介護職員等が制度上実施できる行為は、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の喀痰吸引、胃ろう又は腸ろうによる経管栄養並びに経鼻経管栄養である。御指摘の行為について学校としてどう対応するかについては議論をお願いしたい。

(6)自由討議

 主な発言は次のとおりである。

(◎=座長、○=委員、□=事務局、△=厚生労働省)

1.実施可能な医療的ケアについて

○喀痰吸引の範囲について、基本的には咽頭の手前までとなっているが、これはある程度の目安であり、機械的に完全に分けることはできない。機械的に分けると、実際に不利益を被るのは子どもたちである。個人差があるため、機械的に分けるのではなく、それぞれの状態に応じた合理的な判断、役割分担が必要であり、それが保証されるような内容であるべきだ。気管カニューレ内のたんの吸引については、カニューレ内部であれば問題ないと思う。人工呼吸器をつけている場合、呼吸器回路を外してたんの吸引を実施することはリスクを伴うという問題があるが、安全が確保できる範囲であれば、カニューレ内部の吸引を教員が行うことは可能と思われる。経鼻経管栄養について、栄養チューブが胃の中に入っているかの確認については、看護師が行うこととなっている。ただ、看護師が常駐しない場合にどうするかという問題があるため、全てのケースにおいて看護師が確認することとなると、生徒が不利益を被る場合がある。これも個人差があるので、原則は看護師が確認するが、特例的に担当医が認めれば、教員による確認も不可ではないと思う。

○法令上、教員が実施できる医療的ケアは何か。

△口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の喀痰吸引、胃ろう又は腸ろうによる経管栄養並びに経鼻経管栄養である。それぞれの行為について、どこまで実施できるかという細かいところまでは、法令上では規定していないが、胃ろう・腸ろうの状態の確認と経鼻経管栄養の栄養チューブの挿入の確認など、違法性阻却通知において看護師が行ってきたということがあるので、医師又は看護師等で行うよう通知に記載する方向で検討しているところである。こうした法令等で定められた範囲の中で、ケースバイケースで判断せざるを得ない場面は、これまで同様にあるだろう。

○いわゆる医療従事者でない者が判断できないということであれば、看護師がいない状況において実施できる行為の範囲は限られるのではないか。

△判断について、これまでと同様に、医師の指示が必要である。その指示の頻度がどの程度であるかは、最終的には個別の判断であり、一律に回数を決めない方が良いかと考えている。また医療職・看護職員が判断しないといけない部分もあり、医療・看護・介護職等との連携と役割分担が必要である。

○医師は、介護福祉士あるいは教員に対して直接指示できると理解していいか。

△この法のスキームでは事業者が医師の指示を受けることになるので一義的には事業者である特別支援学校の教員等が直接指示を受けることになる。

2.医療的ケアを行うことができる者について

○経管栄養の場合、胃内のチューブ挿入確認の頻度については、送ろうとする栄養がきちんと届いているかということが大切で、一日何回すればよいというようなものでもない。子どもの場合、管を引き抜いてしまったり、脊椎に変形がある子は胃の位置の確認が難しかったり、自分で違和感を表現できなかったりする。実際に入っているチューブの長さが大人より短く、頻繁に車いすから降ろすこともあり、また気管も細いことから誤嚥したときには急変しやすい。子どもの特徴を考慮すること、また看護師が学校に常駐することで特別支援学校における医療的ケアが進んできたという経緯を踏まえると、看護師の常駐について現状から後退する必要もないと感じている。

○経鼻経管栄養チューブが胃に入っているかの確認は注入の度に毎回行うことが必要である。これは基本的には教員と看護師が一緒に行うという原則を残すべきである。ただ、看護師の常駐を原則とすることが難しい学校もある。学校種が多様化し、さらに学校が分散化してくると、看護師の配置が予算的にも難しくなる。例外的に、看護師が常駐しない体制も認めていいのではないか。医療者としての判断が必要なレベルと、そうでないものがある。また、それぞれの生徒によっても差があるということを踏まえて考えるべきだ。

◎看護師の配置について現状から後退する必要はないという話だが、各都道府県における医療的ケアの実施体制について、現状を事務局で説明してほしい。

□毎年度、文部科学省において公立の特別支援学校を対象に医療的ケアの実施体制について調査しており、平成21年5月1日現在、看護師のみで行っているのが18県市であり、看護師と教員で連携しながら行っているのが42都道府県市である。チューブの確認については、看護師と教員がダブルチェックで確認をしながら行うという体制をとっているところが多い。

○学校の場合は、看護師が集まらないとか経済的に看護師配置が難しいなど苦しい部分がある。しかし、配置の仕方を少し考えることで、看護師が常駐でない体制下での医療的ケアの実施の在り方、例えば看護師の巡回による方法などについて検討中である。

○看護師の常駐は難しいが一般教員には任せきれないという場合に、ある程度、養護教諭が関与できないか。デリケートな問題も含むが、今後、学校における実施体制の中で、養護教諭の位置づけも含めた方向性を考えることも必要かと思う。

○横浜市は医療的ケアを必要とする児童生徒が多数在籍しているため、全国に先駆けて、医療的ケアを教育活動に位置づけて進めてきた経緯がある。そして、看護師が配置される以前から、養護教諭も教員として、担任と同様に医療的ケアに関わってきた。
 養護教諭の養成課程は様々であり、採用においては看護師免許は必須ではなく、特別支援学校の養護教諭として採用された訳でもない。
 養護教諭は学校保健を推進していく立場にあり、特別支援学校ではさらに担任や看護師と連携を図る、コーディネーターとしての役割が必要であると考える。
 制度が変わっても、現状より後退させないよう、大きく変更する必要はないのではないかと思う。看護師配置による安心・安全を大事にすべきであると考える。

○実際に特別支援学校の先生方の話を聞くと、看護師が配置されることで安全面に関して安心できるとのことである。子どもの状態のアセスメントが一番重要であり、この判断が一番難しい。3~4年前、全国の看護師100人程度にかけた調査では、4割の看護師が緊急事態に遭遇したと返事をしている。そういう意味では、やはり安定した状態で行うことが望ましいと考える。

○違法性阻却下において、看護師が常駐しているが、実際に教員が関われる範囲は4割程度で、残りの6割は看護師しか対応できないというのが現状であるため、看護師を外すことは難しいだろう。ただ、看護師の配置の問題は、財政的にも非常に厳しい状況であるのは事実であり、看護師配置の方法について、交付税措置などの対策を国でも考えてほしい。

○教員以外の職員、例えば寄宿舎指導員や介助員が医療的ケアを行うことについて、医療的ケアを必要とする子どもが寄宿舎に入った場合、看護師を配置することが難しければ寄宿舎指導員が行えばよいという意見があるかもしないが、夜間の管理は非常に難しいと思う。また、介助員は非常勤が多いと考えられ、教員と同程度と言えるほど子どもとの関わりがないことから難しいと思う。学校の職員だから誰でもできるという話にはならないと考える。

○医療的ケアを実施する際、研修をどうするかよりも子どもをよく知っているというのが大前提であり、研修を受ける前提条件として、生徒の状態をきちんと把握するということを押さえておくべきである。手技ができることよりも、対処の方法がより大切であり、研修だけ受講すればよいということではない。そういったことを踏まえると、不特定の子どもに医療ケアを実施できる資格があっても、学校においては慎重であるべきだろう。看護師の配置が後退しないことを大前提としながら、ある程度柔軟な体制を例外的に認めながら進めていければと思う。

○今回の法改正により体制を後退させるのではなく、原則は看護師と連携しながら、安心感を持ちつつ学校の教員が携わるのが一番良いと思う。また、子どもたちの安心感が、安全にも繋がると思う。個別の問題に判断の余地を残しつつも、原則は現状より後退させないことが安全・安心と考える。寄宿舎指導員や介助員については、非常勤化しており体制としては弱い部分がある。

3.学校における体制整備について

○基本的には現在の体制が良いと考える。これまでの体制を崩すと安全・安心が損なわれ、行為の幅は広がったが医療的ケアを行う教員は少なくなるというような事態に陥る可能性がある。

4.研修について

○教員の資質や専門性をより高める観点から、9時間の研修以外に各自治体で安全・安心を担保できるような仕組みを作ることもあり得る。

○今まで教員がやっていたことを介護職員にもやっていただかないと、教員や看護師の仕事が増えて、成り立っていかないという状況があり得るので、そのような場合、個々に応じた必要な研修を考えて、今までのレベルから下がらないようにしていただきたい。
 普通校の免許しか所有していない教員がいるわけだが、普通校の教員の中には、障害児に関わってこなかった人もいるだろう。例えば、大学の教員養成課程に数時間でもそういった時間があるべきと考えている。

○研修時期について、夏休みに研修を実施する学校が多いが夏休みでは遅いと感じている一方で、春休み中の実施は異動があるため難しい。よって、学期途中に研修を行うことが望ましいと考えるが、先生の手が足りなくなるので、研修期間中は非常勤講師を配置するなどの配慮も必要だと思う。

○研修に関して、研修は教育委員会、事業の実施者は学校となることが想定されている。教育委員会が責任は持つが、個々の学校でも研修を行ってよいとしないと成り立たないだろう。地域によって差はあるが、学校には、指導医、学校医がかかわっており、看護師が力をつけている場合もある。学校内での研修も認める形にしないと、学校を出て、教育委員会主催の研修に参加することは難しいと思う。

5.全体を通じての留意点について

○一般の小・中学校等において医療的ケアを実施することについて、モデル事業をするなどして、丁寧に検証することが必要ではないか。

(7)閉会

事務局より、今後の日程等について説明があり閉会となった。 

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(初等中等教育局特別支援教育課)