全国的な学力調査に関する専門家会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成23年8月24日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

旧文部省庁舎6階 第2講堂

3.議事要旨

(1)本専門家会議の座長として梶田叡一委員が選任された。
(2)事務局より議事運営について説明があり,承認された。
(3)座長代理に荒井克弘委員が選任された。
(4)事務局よりワーキンググループの設置についての説明があり,承認された。
(5)ワーキンググループ主査に耳塚寛明委員が選出された。
(6)事務局より,23年度全国学力・学習状況調査について(資料3),24年度以降の全国学力・学習状況調査の調査方式(資料4)及び全国的な学力調査に関する専門家会議における検討課題(案)(資料5)等について説明があり,その後,これらに関する意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

○きめ細かい調査は数年に一度ではなく,毎年の実施でよいのではないか。実際に教育を受けて力を付けていかなければいけない子どもたちを中心に考えた場合に,毎年,全国学力・学習状況調査を受けて,全国レベルでどうなのかを知ることは非常に意義がある。

○行政レベルで,指導方法の改善等を行うことは当然大事なことだが,結果を個々の子どもたちに還元し,子どもたちの学習意欲や学力に対する関心を高めることの方が大事である。

○きめ細かい調査の中身については,学校レベルまで把握するということであれば,従来の悉皆調査に近づく形になっていくだろう。具体的な調査方式については,次回以降に議論していきたい。

○24年度調査から理科が追加されるが,パフォーマンス・アセスメントは大規模調査に馴染まないので,特定の課題に関する調査など小規模な調査において実施し,併用していくことが考えられる。また,問題の出題形式については,具体的な方法については次回以降に検討したい。

○昨年度末に取りまとめられた「平成23年度以降の全国的な学力調査の在り方に関する検討のまとめ」では,社会や英語の追加について改めて検討することが適当であるとされている。これについては理科の実施や限られた時間・予算といった現実的な条件を踏まえて,いずれ議論をしたい。

○全国学力・学習状況調査について,学校現場を預かる身としては,調査結果を子どもの日々の学力向上へどのように結び付けていくかが重要。こういった目的が無ければ,調査をしても意味がない。結果の公表の仕方によっては,学校現場に圧力がかかるという問題もある。

○全国学力・学習状況調査を経験してきた中で,その結果を受けとめた授業の改善や,あるいは生活関連の調査と学力向上と絡めて,生徒又は保護者に説明をするなどの活用が始まってきており,これは今後とも必要。また,現在,学校では教育課程を授業時間目一杯でやっているため,調査に関する今後の方針などはなるべく早く出して,現場が準備できるようにしてもらいたい。また24年度調査から理科が加わるということで,1日の中でうまく収まるようにしてもらいたい。

○全国学力・学習状況調査には学力検査の要素も入ってもいいと思う。個々の学校・児童生徒において,調査の結果を指導方法に生かすことが重要。こういう調査は,結果そのものにとらわれず,それを児童生徒の学力や学習意欲の向上に生かすよう使っていくべきである。そういう面では,調査を全国的規模で行い,より多くの児童生徒が調査を受けることが望ましい。現場での指導の改善と専門家による分析をうまく合わせていけばよいと思う。

○全国学力・学習状況学力調査については,基本的には,文部科学省として全国的に行っている教育施策がどのような効果があったか把握することが,まず第1の目標である。現場の意見としては,他との比較等に使いたいという要求はあるが,教育施策の効果の把握という役割を重視すべきである。

○全国学力・学習状況調査が平成19年度から行われて,各学校でこれを生かしていこうという動きが強まってきたことは非常に良いことで,こういう勢いを,ぜひ今後も加速し,PDCAサイクルの中に位置づけることが重要。

○現場の声を聞くと,いかに活用するかということが一番大きな課題である。ただ,国の全国学力・学習状況調査の今後の方針について,調査方式の変更や科目が増えるといった動きがあると,現場では今後,学力調査がどうなるか困惑することがある。国として,今後の方針をきちんと打ち出した上で,例えば都道府県や市町村の独自調査と組み合わせるなど役割分担をうまくしていくような仕組みづくりが求められているのではないか。

○全国学力・学習状況調査の目的を明確にし,その上で方法が決まってくるという形が本来あるべき姿である。そのため,この専門家会議で,その学力調査に何を求めるかという目的をはっきり打ち出していければと期待している。

○調査を実施した後,公立学校の先生方に少し自信が出てきているような状況が伺える。教育の現場では,先生が自信を持つことは重要で,これだけでも学力調査は非常に効果があったと思う。

○子どもたちにしっかりと力をつけるという大前提がある中で,きめ細やかな調査については,悉皆調査に近い形で,一人ひとりの子どもにフィードバックでき,学習指導の改善に役立つという当初のねらいを実現する必要がある。また,特に19年から実施をしている国語,算数・数学については,既に学習上,あるいは学習指導上の課題が幾つか見つかっている。そのため,それらの課題について,焦点を当てて細やかに見るという精密調査も考えられる。さらに,全国的な調査には,全国学力・学習状況調査以外にも教育課程実施状況調査,特定の課題に関する調査があり,それらの役割分担を明らかにするとともに,その三者をうまく組み合わせていくことが必要。

○全国学力・学習状況調査の議論をしていると,悉皆か抽出かという方法論の議論に収れんしてしまう。大規模なテストを実施するため,コストパフォーマンスを考えないといけない。調査にはメインの目的があって,それに対してサブの目的がある。そのサブの目的に対してどのような調査方法が最適なのかを議論していく必要がある。サブ目的に応じて実施形態・実施方式にはいくつものバリエーションをもたせ,それをシステマティックに組み合わせることでわが国の子どもたちの学力保障・学力向上に役立てるべきである。それから,経年比較という言葉で表現される部分だが,現在,学力の改善指標がないことから,それを構築することなども,きめ細やかな調査の一つの観点であると考える。

○全国学力・学習状況調査は悉皆から抽出,希望利用方式と変わったが,基本的にはまだ導入ステージにあり,完成形ではないと理解している。時系列的な比較ができないなどの基本的な課題があることから,このような課題を踏まえて,中長期的な展望のもとに,よりよいものに変えていくという,第2ステージに入ると考えている。調査方式が悉皆か抽出かということが問題なのではなくて,必要な調査を,例えば4年を1つのサイクルとして順番に行うといったことも考えられる。時系列的な調査,特定の教科を詳しく見る調査,格差に焦点をあてた調査,あるいは数年に一度の悉皆調査といった,様々な調査方式の組み合わせで考えていくべき。

○調査結果の分析については,最も重要な教育施策の効果をどう分析できるのかという点について成果が十分ではないと感じる。それは,この学力調査自体の問題というよりも,教育施策に関してのデータの蓄積が組織的に行われておらず,うまく分析に入れられなかったという問題があり,こうしたデータの整備も並行して行っていく必要がある。研究者に対するデータの公開や分析の効率を上げていくという課題もある。

○全国学力・学習状況調査は第一義的には国にとって有用であることが重要。しかし,地方においても,この調査結果を現状把握や施策の検討に利用しているという状況も少なからずあることについても一定の配慮をする必要があるだろう。

○この全国学力・学習状況調査は決して完成形にはなっていない。むしろ,今年の3月に取りまとめられた検討のまとめによってようやくスタートラインに立ったという認識を持っている。今後,次の段階,例えば経年変化の分析,地方独自調査と国の調査との結合について検討していくには,単年度ではなく,例えば3年というスパンの中で構築することを考えていかなければならない。これは国しかできない。費用も時間もかかるが,それは10年後,50年後の日本をどうつくるかということに非常に深く関わってくる。

○教育テストというのは教育を改善するための1つの方法論だが,日本では非常に遅れている。学習指導要領のような教育スタンダードを作り,それを行政的に徹底させるという点では,日本は世界に冠たる位置を占めている。しかし,その効果をきちんと調査,評価できる人材が少ない。

○義務教育段階では,全国的な学力調査を実施しているが,高校ではこのような調査を実施していない。高校段階についても議論する必要があるのではないか。

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初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)