公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議(第12回) 議事録

1.日時

平成24年5月11日(金曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省東館16階 特別会議室

3.議事録

【木村主査】  ただいまから、公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議を開かせていただきます。本日はお忙しい中、本会に御出席をいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、前半の1時間で、我が国の財政の現状等について、財務省からプレゼンテーションをしていただきまして、引き続き、質疑を行いたいと考えております。後半の1時間は、これまでのヒアリング及び議論も踏まえて、前回に引き続き、今後の教職員定数改善の進め方等についての自由討議を行いたいと考えておりますので、よろしくお願いします。

 それでは、まず、事務局から、本日の資料等についての確認及び説明をお願いいたします。

【谷合企画官】  それでは、本日御用意いたしました資料ですが、議事次第に続きまして、資料1が委員名簿。資料2が、財務省、神田主計官に御用意いただきました資料。資料3が、自由討議のための論点メモとなってございます。不足等がございましたら、お申しつけいただきたいと思います。以上でございます。

【木村主査】  ありがとうございました。それでは、早速でございますが、財務省からのヒアリングに移りたいと存じます。本日は、財務省から神田主計官にお越しいただいております。我が国の財政の現状等について、30分程度で御発表いただきまして、引き続き、質疑を行いたいと考えております。それでは、神田主計官、よろしくお願いします。

【神田主計官】  財務省主計局で、文部科学担当の主計官をやっております、神田でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 今日は、学級規模、教職員配置の適正化という極めて大切なアジェンダを扱い、また、立派な先生方が集まっておられる、こういう会議にお招きいただきまして、本当にありがとうございます。せっかくの機会ですので、なるべく効果的に御説明できればと思いまして、資料を御用意いたしました。では、早速ではございますが、資料に基づいて、御説明申し上げます。

 この資料の構造は、前半が財政の現状で、後半が教育関係の私どもの考え方の根拠を多少入れております。前半をメインで御説明できればと存じます。

 まず、1ページが財政の現状のグランドデザインです。詳しいことは、この後、説明していきますけれども、要は、歳出と歳入は恒常的に大きく乖離して、極めて深刻だと。借金が税収を4年連続で上回っています。よく言われる債務残高対GDP比219%は、古今東西あるいは国際的にも最悪な状況です。

 また、税収規模の2倍を上回る国債償還額があるため、マーケットで少しでも滞ると、一気にデフォルトになるという危険な状況にあり、これは主要先進国の中で最悪な状況です。もっと言えば、実はギリシャより悪い。こういった話もしていきたいと思います。

 2ページですけれども、まず、フローで、足元の平成24年度予算の構造で、どれだけ深刻かということを御説明したいと思います。2ページのところで、歳入を御覧いただくと、公債金が44兆円、つまり借金が44兆円で、税収が42兆円でありますので、借金が税収を上回っている。しかも、皆様からいただいている税収は、この下の歳出を御覧いただければわかるのですが、国債費つまり借金を返すものと、地方に配ってしまう地方交付税17兆円でほとんど消えてしまいます。

 だから、文科省の予算も、ほとんどすべて子供たちの借金でやっているような状態になっています。しかも、子供たちの借金でやっている国家活動、霞が関でやっているお仕事の半分以上は、自動的にプログラム予算として、社会保障関係費で消えてしまいます。26兆円が、毎年、高齢化に伴う自然増ということで、1兆円ずつ増えていくので、仮にこのとても持続可能でない44兆円の借金を維持する、すなわち毎年それだけ借金を積み上げていくとしても、この中で、どんどん国債が増えると、当然、国債費が増えますので、他のお仕事が圧縮されていくという状況になっています。

 3ページ、4ページは、歳出、歳入が具体的にどのようなものか、一番基礎的な絵で示したものです。要は90兆円予算があります。この半分は借金で賄っているわけですが、そのうち3割、26兆円が社会保障で、地方交付税として地方に行ってしまうもので2割、国債費2割で消えてしまって、残った部分で、皆さんがイメージしている国家活動をやっているということであります。おととし、初めて、文教・科学振興費が公共事業を抜いて5兆円、防衛費5兆円、公共5兆円、それ以外の全省庁で10兆円ぐらいというものが歳出の構造です。4ページの、歳入のほうは、租税、税金が大体40兆円、公債金が44兆円になっております。

 いわゆる歳入全体に占める公債金収入の割合、公債依存度は、過去最高の49%までに至っている。だから、日銀の納付金などを入れても、かき集めても、税金は半分までいかないというような状況になってきています。

 5ページは、一番わかりやすく日本の財政を1カ月分の家計に例えた場合のものです。先生方の月収が仮に40万円だとしたら、家計で毎月78万円を払わなければいけない構造になっていて、その中で、ローンの元利払い、これまでの借金を返すために19万円使ってしまうので、59万円しか残らない。しかも、そのうち14万円が田舎への仕送りで自動的に消えてしまうから、文教を含めて使えるお金は45万円しかありません。しかも、このうち半分以上は、社会保障費を家計の支出にあてはめることは困難ですが、自分で裁量的に使えないお金に消えてしまう。足りない分の38万円は、新たな借金として積み重なっていって、今日7,382万円のローン借金がたまっているという状況です。

 今、たまたま金利が低く、1%ぐらいだからいいわけですけれども、例えば1,000兆円の借金があれば、金利1%上がったら10兆円利払い費が増えるわけですから、大変なことになっているということであります。

 6ページですけれども、ぎりぎりのところでも、少しずつは歳出構造を改善しなければいけない、あるいは、これから増税するわけで、身を切っていかなければいけない姿勢を示さなければいけないということで、何とかいろいろなところから浄財を募って、それで重点配分をする。1兆円規模でこういった重点化措置をおこない、あるいは、定員をこれまでにない規模で削減しています。毎年、実は国家公務員の数は、どんどん減らしていっています。文科省のお役人の数も、どんどん減らされております。我々財務省もそうです。ただ、今年は過去にない削減をさらにしています。

 役所で使う庁費も極めて厳しく削減をしていますし、一時期、宿舎がマスコミで報道されましたけれども、宿舎の建設は、新規は一切ゼロ査定になって、継続分も対前年度71.5%の削減で、ほとんど何もできないような状況まで、ぎりぎりまで無駄を削減しており、頑張って、少しでも歳出削減をしているということが現状であります。

 7ページからですけれども、今、公債残高がこうやって毎年増えていくと、一般会計税収の17年分になっています。赤ちゃんを含めて国民1人当たり554万円になっています。

 8ページですけれども、増えていくのは当たり前で、私どもはずっと財政再建は、もう数十年、言っていて、ワニの口と言っているのですけれども、要は、税収は、累次の減税と景気低迷があって増えない。歳出のほうは、社会保障中心にどんどん増えていってしまうということで、口があいていく部分が借金で、それがどんどん累積していくということであります。くどいようですが、税収と公債発行額が4年連続で逆転して、公債依存度が過去最高の49%まで、平成24年度はなってしまったというわけであります。

 国際的に見たら、これがどれだけ異常かということが、9ページであります。今、日本の公的債務はGDPの219%、当然、断トツのトップでありまして、ギリシャをはるかに超えております。ギリシャは、これを今回ぐっと圧縮しようということをやって、御存じのとおり、ちょっと政情不安になっている。おそらく再選挙になるのでしょう。

 我々、子供のころに、イタリアになってはいけませんよとよく言われていたのですけれども、イタリアは大体100%強ぐらいで、ずっと固定しています。にもかかわらず、プライマリーバランス、要は、新しい借金が増えないようなところまで、財政改革を頑張って進めてきたのですが、それにもかかわらず、御存じのとおり、国際金融市場で国債が売られ、金利が高騰してしまいまして、今極めて厳しい歳出削減をやろうとしているわけであります。

 日本は、こうした国からも更にかけ離れた状況にありますので、一旦崩れたら、ほとんどもうだれも助けることができないような状況にあります。これは、要するに、世界的に最悪だということですが、実は歴史的にも未知の領域に入っていまして、10ページですけれども、ちょっと不気味で、民主主義が壊れていく過程も似たようなことなのかもしれませんけれども、戦前と今の日本の財政、非常に似ていまして、戦争直前のときの急上昇と、ちょうど今の急上昇が同じようで、ついに昭和19年を突き抜けてしまいました。したがって、我々の経済学では、実は経験的に立証できないぐらいに、大変な状況にまで来てしまいました。

 こういうふうになっていった原因、あるいは、それによって、どうやって財政が硬直化するかということは、11ページであります。この20年間を比較したものが上下の表でありまして、国債発行額ががんと40兆円ぐらい増えています。その数字は、極めて簡単であります。社会保障が15兆円増えている。3割ぐらいまで占めるようになった。国債が増えていくから、当然、国債費、元利払いも増えるので、ここは8兆円増えている。税収のほうは、制度的な減税と景気低迷によって、16兆円減っています。これを足していただくと、ちょうどそのお金になる。

 要は、社会保障が増えていった。しかし、それに見合った税収を確保せずに、むしろ減らしてしまった。そのことによって、国債がたまっていったという構造であって、文教・科学技術を含め、それ以外の歳出は、確かに社会保障のあおりを受けて、公共事業なんて3分の1になってしまい、厳しいですけれども、かなり無理して守っている。だから、結果的に、国債は、社会保障が増えた分だけ、そして、それに伴って国債が増えた分だけ、増加してしまうという状況で、もう限界になっているということです。

 12ページですけれども、こういう特異な現象は、やはり日本だけで、ほかの国も当然、高齢化社会は進展していますが、日本ほどのスピードではありません。日本がやっぱり先進国で最速のスピードで、しかも、2050年に高齢者、65歳以上が40%になるような国は、ほかにはないですけれども、ただ、それでも、ほかの国でも多少高齢化になって、社会保障費が増えるときに、必ず増税あるいは社会保障費を増やしているのですが、日本は一番社会保障支出が急増しているにもかかわらず、国民負担を減らしてしまったので、それはもう当たり前のことで、赤字になっているということが現状であります。

 13ページですけれども、これがわかりやすくて、一番左を御覧になったらわかりますように、日本は、小さな政府です。GDP比の政府の支出が、小さいほうになっています。しかも、小さな政府と言いながら、そのうち半分しか税収がないので、最も低負担国家と言っても過言ではありません。

 ところが、社会保障のほうは、低負担、中サービスで、大体真ん中よりちょっと下ぐらいのGDP比の支出をやっています。実際にもいろいろな統計で、年金のレベルあるいは医療のレベルは、数字で見て、GDP比でトップクラスでありますし、また、WHOなどでも、日本は国民皆保険で、保険証1枚でどこでも行けるなどいろいろなことで、トップクラスの医療をやっている。ところが、歳入のほうがないものですから、大変なことになる。つまり、小さな政府で、しかし、社会保障だけは大きくしている結果として、社会保障以外の支出は、当然低くなってしまうということであります。

 したがって、今後これはどんどんひどくなるので、後で申し上げるように、当然、文教予算なども無駄のないようにはしなければいけませんけれども、しかし、この現状、つまり税収を増やさず、しかし、社会保障は増えていくというままでは、どんどん、どんどん国家の仕事がなくなっていくという、極めて深刻な状況にあって、それで、今、何とか消費税を増やす、あるいは、歳出を合理化しよう。とりわけ社会保障を合理化しようという議論をしているわけであります。

 それが待ったなしというのが14ページで、野田総理もよくおっしゃっていますけれども、1965年、ちょうど皆年金、皆保険制度ができたころはおみこしのように、生産人口9人で1人のご老人をお支えしていたのが、今は騎馬戦、2.4人で1人、これがいずれ1人で1人ぐらいの肩車になってしまいます。生産人口と同じ人数の御老人を今の制度で支える、これはとても無理です。

 だから、何をやらなければいけないかと言うと、御老人の方でも生産人口に入っていっていただくとともに、やはり社会保障を少しでも合理化する。例えば、マクロ経済スライドを入れるとか、薬はジェネリックをもう少し多用するとか、いろいろな議論をしておりますけど、やはり全世代で負担するということが重要です。それが所得税だと、老人は払ってくれないし、金持ちはもう海外に逃げてしまう。消費税であれば、だれでも少しは負担する。薄く、広く、全世代で負担しないと、皆さんのような勤労世代だけで、老人をお支えすることは不可能だということが、もう客観的な認識だと思います。

 15ページですけれども、日本は家計の資産がたくさんあるから、1,000兆円ぐらいあるのだから、大丈夫だという無責任な議論がありますが、確かにこれまでそれで吸収をしてきたのですけれども、ついにパンクしつつある。今91.1%まで来ています。健全な国は、大体5割ぐらいです。これがどんどん、どんどん高まっていく。高齢化社会は、貯蓄率がどんどん下がっていく。足元でマイナスになったりしていますから、家計の金融純資産は、当然、増えることはありません。他方で、国債は、毎年、44兆円新発されているわけですから、どんどん増えていくに決まっているし、しかも利払い費なども、言ってみれば、全部、自転車操業で、さらに借金で賄っているわけですから、急増していくと、100%を超えていくことになるわけであります。

 マーケットは先を見越しており、いずれそうなることを見ているので、いつ勝負しようかということをねらわれている。ユーロはかなり材料が出尽くしていますので、日本は、今、非常に危険な状態になってきております。

 これをもう少しわかりやすくしたものが16ページでありまして、ぐっと純資産はもうあんまり増えなくなっていますねと。ところが、債務はぐんぐん上がっていって、いずれこがクロスすると。クロスした後は、傾向として海外の保有に頼っていくことになるので、外国人投資家の影響が大きくなる。一度信認を失って売られ始めると、もうめちゃくちゃ高金利にせざるを得ませんから、やはりクラッシュするということで、待ったなしになっているということが、このチャートであります。

 17ページは、もっとわかりやすい足元の話で、ちょっと専門的になるかもしれませんけれども、国債償還額と税収、つまり、今、我々、借金地獄にある。ただ、返していかなければいけない。要するに、返せなくなったら、デフォルトで、日本国家は破産するわけで、そのお金が税収の2倍になっていると。

 ほかの国は、そのようなところはないわけです。大体半分以下であって、これはどういうことかと言うと、結局、借金を返すのを、自分の収入で賄えないところが、その2倍あるということだから、要は、自転車操業で返すために、追い貸ししてもらうということができなくなった瞬間に、財務省はデフォルトを起こすということです。

 財務省がデフォルトを起こすということは、日本国家がデフォルトを起こすことであります。もう金融機関も、全部国債が吹っ飛びますから、その経営に深刻な影響を与えますし、国内経済も混乱に陥って、日本の企業も経営危機にさらされる。そういう危険な状態にならないよう、何とか我が省のの理財局が国債管理政策、要は、投資家に安定的に国債を購入してもらえるよう回ったり、あるいは、日銀に協力をいただいてもらったりしていますけれども、相当に危険な状態であります。

 ただ、それをあまり強調しすぎると、逆にほんとうに売られてしまう可能性もあるので、一生懸命、日本はちゃんと財政改革しますからということで、何とか時間稼ぎをしながら、今、一体改革を国会で御審議をしていただいているということになっております。

 もう一つ、緊張感を我々が持っている材料は、18ページの格付でありまして、実は、諸外国で破綻をしたときというのは、かなりのケースは、格下げのニュースが、あるいは、格下げになるという見込みに基づく投機で、どんどん、どんどん転げ落ちていく。1回格付が下がると、当然、国債が売られてしまうとか、実体経済が悪くなって、さらにお金が必要になって、国債を出すと、さらに格付が下げられるという悪循環に自動的になる構造になっていて、日本は今、足元、ダブルAマイナスです。しかも、ネガティブ・アウトルックをつけられています。

 要は、一言で言うと、なぜダブルAマイナスで済んでいますかという説明は、日本はまだ消費税5%ですね。ほかの国はみんな20%ですね。差の15%は最低引き上げる余地があるから、それをまじめに政府がやると約束してくれるのだったら、我々も国債を売りませんよということです。

 ところが、それができなくなる可能性、ソブリンリスクと言われていますが、要は、国家が本来必要な行動をとれないと市場が見きわめたときに、ネガティブ・アウトルックのトリガーが引かれて、シングルAになる。シングルAが複数になると何が起こるかと言うと、すべての投資家ではないですが、基本的に外国人投資家にとって、国債のリスク・ウェイトが2割認識されてしまうところがあるので、今までみたいに持てなくなるわけです。持てなくなって、売られると、がんがん下がる。

 よくストックで、外国人はあんまり持ってないからいいという議論があります。それは事実です。ストックベースは、9割以上は日本国内で持っているのですけれども、19ページをごらんいただきたいのですが、値づけをするのは、別にストックではなくて、日々のマーケットですよね。国債の流通市場、要するにデイリーマーケットでの外国人の比率は極めて高くて、つまり、日本人はもう塩漬けになってしまっているものですから、動かせない。要は、自分で売ったら、それで、その引き金を引いてしまって、自分が持っている資産が激減する可能性があるから、みんな塩漬けで動かない状況にあります。

 海外投資家が薄いマーケットで動いていて、先物では既に4割近く、現物でも2割近くになっているので、彼らが投機的な行動、あるいは、実態として危険だと感じて、動いたときは、我々に全く想像ができない事態に陥ります。

 20ページですけれども、成長したら、何とかなるのではないかということを言う人がよくいます。そのようなことはなくて、この20年間の平均成長率は、御存じのとおり、ほとんどもうゼロです。残念ながら、今、人口がどんどん減っていっています。2050年までに、さらに人口が3分の1減って、そのときは、申し上げたとおり、40%は65歳以上の方になる。この厳しい国際競争の中で、少なくとも毎年減っていく人口を乗り越えるだけのこの厳しい国際競争の中で、一人当たりの生産性を上げなければいけない。そのようなことをできている先進国は、余りありません。非常に苦しい。

 ただ、それは政府として頑張って、少しでも成長率を上げようと思っております。ただ、成長率を上げても、借金は減らない。それはなぜかというと、ここにあることで、名目成長率と長期金利の関係をエンピリカルで見てみますと、残念ながら、GDPの成長率が、長期金利を上回る確率は極めて低いのです。バブル以降は、もうほとんどありません。せっかく成長しても、金利のほうがもっと上がってしまうものですから、借金のほうが増えてしまう。

 しかも、もっと申せば、ちょっと専門的なのですが、弾性値という話があって、成長して、経済の規模が大きくなったら、多少税収は増えますけど、歳出のほうも増えます。例えば、年金などはインデックスしていますから、結局、歳入と歳出は両方増えて、弾性値の差しか、財政にプラスにならないので、仮に成長がうまくいったとしても、そんなにきかない。しかも、今、御存じのとおり、44兆円のすき間がありますから、それを埋めるだけの成長は、おそらく何十%という成長を毎年しなければいけないので、ほとんどあり得ないなということで、非常に残念ですけれども、それは難しい。

 しかも、21ページは伝統的な話ですけれども、財政赤字自体が成長を阻害しているのではないか。結局、これは、今、経済学会で一番典型的な考え方ですが、ラインハート、ロゴフの分析を記載していますけれども、GDP比率が90%、日本は219%ですが、90%以上になると、成長率の平均は、ほぼ4%低下するという回帰分析があります。

 これはもう当たり前のことで、おそらく皆さんも同じだと思うのですけれども、これだけ借金があります。今後も増えていきますということがわかっていたら、多くの国民は消費をしすぎると危ないなと思い、貯蓄に回します。だから、成長しない。企業だって、同じです。今後、増税があるに違いないとか、金利が上がりそうだなと思えば、危なくて投資できない。それだったら、海外に行ったほうがいいとなってしまうわけです。

 やはり、将来、しっかりと見通しが立つような形にしなければ、長期的な投資など、だれもしてくれるわけがないのですが、残念ながら、今の成長率が上がらない一因として、民間投資が低迷している点が挙げられます。低迷どころか、むしろ減らしていっている。その一つの原因は、やっぱり財政赤字にあるのだろうということが、経済学者たちの見解でありまして、実際に統計を見ても、22ページ、これは日銀の数字ですけれども、明らかにクラウディング・アウトが起こっていて、結局、民間が投資しないから、銀行は国債を買うというところもありますけれども、要するに、非金融法人企業、企業が300兆円も投資をやめてしまって、どんどん巻き上げてしまって、国のほうはどんどん750兆円借金を増やしているということが、日本の全体のバランスシートです。このような悲観的な社会を続けていいのだろうかと思います。

 23ページはエクイティ、公平の観点と国家、国民のサスティナビリティの観点から、深刻な問題で、60歳以上の方は、生涯で大体5,000万円ぐらい得します。それはなぜかと言うと、将来世代から5,000万円ぐらい搾取しているからできていることなのです。

 結局、今の年金とか高齢者医療の分を、自分たちでファイナンスせずに、借金でやっているということは、子供たちが払うことになるので、結果的に内閣府の試算ですけど、5,000万円の所得移転が起こっていて、これ自体、不公平というだけではなくて、若い人たちがこんなに上に貢ぐのであれば、ばかばかしいからと言って、税金とか社会保険料を納めなくなる。あるいは、目端のきいた者だったら海外に行ってしまう。

 やはり、国民のアイデンティティーを守るために、御老人は大切にしますけれども、少しでも効率化するのと、多少、今よりは全世代型の公平な負担にして、持続可能な、そして、国民全体が公平感を持ったアイデンティティーを共有できるような形にしていかなければいけないと思います。

 以上が大体財政の話で、次に教育予算の話をさせていただきます。

 よく日本の公財政教育支出は少ないという話があります。それは事実です。OECD平均の7割です。他方で、子供の数も7割なので、一人当たりでは同じといえます。それが25ページで、GDP比で、一人当たりの公財政教育支出は、大体同じです。

 26ページですけれども、先ほど申し上げたとおり、日本は小さな政府です。そうすると、小さな一般政府総支出の中で、どれだけ教育に頑張っていますかということが、国民一人当たりの一般政府総支出に占める子ども一人当たりの公財政教育支出という数字をとれば、相当日本は高いとわかります。私は切らなければいけない立場ですが、かなりいいところまで行っています。

 なぜそうなったかと言うと、実は昔はそうでもなかったのです。28ページですけれども、子供の数が平成元年から3割減っているにもかかわらず、実は財政当局は、頑張って公教育費をかなり守ってきました。その結果、一人当たりの公教育費は激増して、54%増えております。だから、今、世間並みになっているのですが、これもいろいろな分析がありますが、おそらく過去はそうではなかったのだろうと考えられます。今ようやく追いついているのだろうなと。

 29ページですけれども、そうはいっても、それぞれのひずみはあって、今、我々もつらいですけれども、公務員の人件費削減を、与野党みんな言っておるわけです。国家公務員は、独法化とかいろいろあって、3分の1ぐらいになり、今は56万人。このうち30万人が自衛隊員ですから、実質30万人しかいないのです。地方公務員は230万人います。実はその3分の1から4分の1が義務教育の職員なので、結局、ここのところが議論できないと、政治がおっしゃっている公務員の人件費削減は、とまってしまうと、国家公務員だけを深堀りしても30万人しかいませんのでといった問題があります。

 30ページですけれども、先ほど申し上げたように、子供の数が3割減っていく中、教職員定数も多少減らしていっていますが、加配で戻すというか、政策的に配分をいただいているので、8%しか減っていない。そうすると、児童生徒一人当たりの教職員数は、実は4割近く増えております。これは政府部門では、極めて例外的な話で、31ページを御覧いただけたら、これがフェアな比較かということはあるのですけれども、よく言われる話では、今、警察とか消防は、治安が悪化していて、増やしてくれということですが、児童一人当たりの教職員の増加に比べれば、穏やかにしかできていないということになっております。

 32ページ、今後の展開ですけれども、悲しいことにどんどん子供が減ってしまうので、定数管理していても、教員一人当たりの児童生徒数は少子化でどんどん低下していくだろうということで、今かなりいいところまできているけれども、何もしなくても、さらに相当なところまでいきますという話であります。

 33ページからは、よく言われている教育支出と学力は、ほとんど相関関係がない。これは33ページのグラフを見ていただければ明らかなように、全く関係がない。OECDの分析でも関係ない。日本は学級規模は大きいものの、学力テストの上位5カ国であるということです。

 34ページですけれども、直近のOECDの提言、別にOECDがすべてではないですけれども、やはり成績がいい国は、学級規模より教育の質を優先しておるのだと。日本は、逆に、せっかくの追加投資が、学級規模の縮小に充てられているということを問題視されていて、やっぱり教員養成の手法を、もっと自由にしなければいけないだろうという問題提起をされておられます。

 35ページからは、私たちにも極めて重要な問題なので、ここに載せた以外にも、いろいろな分析をしましたけれども、これはいろいろな考え方があります。ただ、少なくとも学級規模を小さくしたら、自動的によくなるという相関関係は見出しがたい。一番言いたいことは、投資するわけですから、そのお金に見合った効果が得られるかと言うと、なおさらよくわからないなというところがあります。

 39ページからがその一例でありまして、学級規模と学力を見たら、これを見たらわかるように、全然関係ないし、なぜこの県が低くて、どの県が高いかということかということは、学級規模ではなくて、これは諸要因だということは、皆様はぴんとこられると思います。

 40ページ、学級規模といじめ・不登校の関係ですけれども、いじめはレポーティングの問題があるので、我々もこれはどれだけいい数字かはわからないですが、不登校というのは、客観的にとれるだろうと。そうすると、学級規模にかかわらず、大体1,000人に10人から15人が、学校に来てくれないということで、そろっているなと。あんまり関係ないのだなということです。

 41ページ、これも学校側がどれだけ正しく報告しているかということがあるのですが、少なくともあんまり学級規模と関係ないなということが見えると思います。

 ただ、私がより心配している一つは、42ページで、教員の質です。要は、両方あります。まず、サプライサイドで、これはほかの分野もみんなそうですけど、教員だけではなくて、18歳人口が120万人、僕らのときは大体200万人以上いたのですが、今120万人で、これから60万人に減っていきます。そうすると、当然、質の維持はなかなか難しい。他方で、デマンドサイド、教員を採用する側が、これから膨大な大量退職が出てきます。少なくとも昔ほどの競争を経ていない、あるいは、選抜をされない人たちで埋めなければいけないので、大丈夫かということです。

 むしろ、教員の質をどう強化するかということと、マクロでの優秀な先生のデマンド、サプライの関係を、どういうふうに将来見通していくのかということも、一つ重要な論点ではないだろうかと思っております。

 43ページに締めくくりですが、要は、歳入というのは90兆円ですが、皆さんからいただいている税金は40兆円しかない。借金の44兆円を下回っているのだと。歳出のうち、国債費と地方交付税でほとんど消えてしまって、社会保障26兆円を含む国家サービス、教育予算を含む国家サービスは、すべて借金頼みと言ってもいい状況です。

 子供のための教育予算も、子供たちの借金でファイナンスしているような姿で、子供たちのために、子供たちに借金を背負わすということは、やはり偽善です。しかも、高齢化に伴う社会保障費の自然増は、毎年1兆円なので、増税か社会保障の削減がない限り、教育予算等の維持は極めて困難であります。さらに、公債残高は世界最悪で、国庫が破綻すれば、教育投資どころではない。

 このような厳しい状況で、当然、私も教育は日本の社会にとって、最も重要で、または可能性があると思っていますけれど、このような状況ですので、少なくとも血税1円を最も有効に活用するように、最大限努力することをしなければいけないと思っております。ぜひ先生方あるいは文科省の方々の英知で、最高の政策を一緒に築き上げていけたらいいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 今日はどうもありがとうございました。

【木村主査】  どうもありがとうございました。

 日本の国の経済状況、我々はほとんど認識はしていると思いますが、さらに詳しいデータで御説明をいただきました。同時に、教育分野における問題提起もしていただきました。

 この問題は、教育と財政両方の立場があるため議論が出にくいことが予想され、うまく議論がかみ合うかどうかを座長として心配しておりますが、いかがでしょうか。委員の先生方から、御質問あるいは御意見等をいただきたいと思います。 どうぞ、中川委員。

【中川委員】  ちょうどこの検討委員会の委員でもあります土居先生が、おとといの朝、NHKのニュースに出ておられまして、それは消費税増税をするかどうかということで、土居先生は、これは消費税を上げなければいけないという立場の意見をお述べでした。片や、早稲田の先生は上げる必要はないということでした。 私はそれをずっと聞いていまして、これははるかに土居先生のほうに、軍配が上がったなという感じで見ていたのですけれども、この今の発表の中で、確かに日本の財政はもう危機的な状況にあるということは、だれもが知っています。その中で、ギリシャ以下だということも聞くわけですが、消費税が上がったということは、全く想定外なわけです。

 やがて、消費税は上がると思うのですけれども、多分、消費税が10%、15%ぐらいになったとしたら、教育に対しては、こんな厳しいということはないという予想はつきますね。

【神田主計官】 ありがとうございます。

 どういう状況かと言うと、二つあって、一つは既存の借金が1,000兆円あります。残念ながら、それを返すことは、今の我々の力ではあきらめているに近い議論です。

 普通の国はどういうことをやるかと言うと、例えば、マーストリヒト条約は、歳出超過を3%以内に抑えて、消費税を10%以上にしなさいとか、あるいは、GDP比を100%以下にしなさいとか、そういうかたちで縛っていた。

 日本は、言ってみれば、もう全然違った次元の低い目標なのです。プライマリーバランスを2015年に半分にしましょうとか、それも、今、危うくなっています。まず世間並みにしようと思ったら、とてもとどかない。だから、G20とかG7でも、日本は、もうどうにもならないのはわかっているから、低い目標でもぜひやりなさいと言われていることが、今やろうとしている、とりあえず2015年までに10%という話です。

 10%上げたら、どうなるかというと、ちょうど高齢者3経費を、ある程度消費税でファイナンスできるようになると考えているところですが、社会保障改革をしない限り足りません。また、先ほど申し上げたとおり、2015年に高齢化が止まるかといえば、そうではないです。団塊の世代が、これからどんどん毎年100万人ずつ、65歳未満から65歳以上に上がっていくので、このままでは、1兆円ずつ増えるのが、これから数十年続くのです。

 したがって、社会保障改革をしない限り、一旦上げても、また増やさなければいけなくなるという構造になっています。

 先の社会保障の自然増は考えていないということが一つと、金利の負担のことも考えていない。国債費がどんどん増えて、特に金利が今の1%未満を維持できるかというと、多くの人は難しいだろうと考えていて、そうなると、1%で兆単位のお金が足りなくなるわけです。

 だから、非常に厳しい状況にあって、そこは、やはり、次にやらなければいけないことは、無限に消費税を上げたら、もう経済が崩壊してしまいますから、社会保障を合理化するということを、相当の気合いでやらなければいけないだろうなと思っています。

 実は、それを我々もやろうとしているのですが、例えば、デフレになったら、皆さんの給料は下がります。民間企業の方も、おそらく下がっているのですが、年金だけは下げてこなかったのです。

 本来、法律上は下げなければいけないのですが、その部分を、今回はデフレで下がった分だけは、やっぱり返してということができたのですが、それ以外のところの改革は、ことごとく政治の場で撤回させられてしまいまして、例えば、1回診療を受けるときに、100円払ってもらうということもあっさり撤回させられてしまったし、お医者様の診療報酬も、もうちょっと下げてもらいたいと。

 もちろん、我々も、勤務医あるいは産科の方と外科の方、とりわけ大病院、大学病院では、その人たちの御苦労はわかっているので、配分の形で、その人たちには回してもいいけど、開業医でかなり裕福な方は、もうちょっと我慢してくださいという議論をしていたのですけれども、うまくいかなくて。ただ、これは引き続きやらないと、増税ばっかりやっていたら、経済がおかしくなってしまいますから、やはり、両方やるということだと思います。

【木村主査】  ありがとうございました。 ほかに。どうぞ、井上委員。

【井上委員】  2点ほどお尋ねさせていただきたいと思います。

 今日の主計官の御説明は、我が国の財政状況は大変危機的状況にあって、社会保障と税の一体改革は必須の事項であるということを、改めて認識させていただきました。

 そこで、私ども、特に教育関係について議論をしているわけですが、その中で、先ほど御説明いただいた資料の6ページで、日本の再生重点化措置と公務部門における無駄の削減というものがございまして、ここで、マル2で、教育・雇用などの人材育成ということが掲げてあって、これについては、予算の重点化を図るために、財源は歳出の削減で捻出していくという、基本的な指針が出ているわけでございます。

 そこで、教育関係について、今、私どもが議論していることは、学級規模あるいは教職員配置の適正化についてでございまして、これは、ある意味で、教育振興基本計画の中で、人づくり、教育というものは、我が国を持続可能な社会にしていくために非常に重要であるということは、閣議決定でお認めいただいているわけで、したがって、従来、定数改善も、ある意味では、児童生徒数の自然減の範囲内で、基本的にはずっとここのところやってきて、年度によっては、それの頭を出しているところはあるかもしれませんが、そういう形でやってきました。

 児童生徒数が減少したら、教員の負担が軽くなるのではないかと、一般的には考えられますが、平成18年度の教員の勤務実態調査がございまして、これだと、昭和41年に調査したときは、時間外勤務が1月8時間程度だったのが、平成18年度には、平日で34時間で、休日も合わせれば8時間で、1月42時間、超過勤務をやっている。これはなぜかというと、やはり社会の変化で、少子化なり、あるいは、男女共働きとか、あるいは、離婚等によるひとり親家庭の増加とか、いろいろな社会の変化が、学校にそれが負担となってあらわれている。

 そういう意味で、勤務の内容を、両者比較してみますと、一つは、やはり学級規模が学力だけではなくて、ある意味で、生活集団として、生徒指導。先ほどのこのデータの中にあります、いろいろな不登校なり、いじめとか、校内暴力、そういう生徒指導を学級単位でやっているということが、一般的でございますから、そういう意味では、学級の負担がそれだけ増えてきたということは、データからもはっきりしているわけです。

 ですから、数字の上だけを見ると、確かに教員数が、児童生徒数に対して増えているように見えるのですが、実質は学校の負担がかなり大きい分を、教員一人一人の負担にしわ寄せがいっているのではないか。

 したがって、先般の中教審の議論でも、教員が一人一人の子どもに向き合うような教育環境の整備をすべきだということで、この学級規模の適正化についてお願いして、現在、小1、小2まできているわけです。だから、それによって、例えば、小1プロブレムがかなり解消してきたとか、学級崩壊も減ってきたとか、いろいろな成果は上がっているという報告は、私どもは受けているわけです。

 それだけに、やはり、先ほどプライマリーバランスというお話があって、教育の枠内で人材育成をやることが可能であれば、そういう学級規模の縮小、学級規模は40人から35人にする。それによって、子どもたち一人一人に向き合う教員の勤務を充実させて、教育を効果的に行うということも可能ではないかと私は思っているのですが、そういうことについて、主計官はどういうふうにお考えかということが1点です。

 もう1点は、非常にグローバル化が進み、教育についても、国際的に競争的社会になっている。先ほどもPISAの調査結果について御提示いただいて、その資料はそのとおりだと思うのですが、そういう中で、日本の小中学校などは、先生方がまだ頑張っているから、そういう結果が出ているのではないかと私は思っているわけでございます。

 それだけに、全体として見た場合に、昨年9月に新聞紙上等で発表されたOECD諸国におけるGDPに対する教育の公財政支出が、日本は最下位になったという報道が出ておりまして、確かにそういう実情があって、先ほどこのデータの中でも、そういう現実については、小さな政府だから、それは当然そうなっているというお話があったわけです。

 やはり、国際的なそういう競争的環境の中にあった場合には、諸外国の教育の条件整備を参考にしながら、教職員定数の改善等もやっていただくということが必要ではないか。それは教育振興基本計画の中にも、OECDの公財政支出の状況を参考にして、我が国の財政支出を今後も取り組んでいくということが、閣議決定で書いてあるわけでございますけど、そういう点についても、ぜひ御配慮いただきたい。

 これは、なぜ申し上げるかと言うと、我が国の発展は、明治維新後の学制発布以降、教育令によって、学校制度が整備されて、そのときかなり過大な投資をして、近代日本の発展に貢献した。また、第2次世界大戦後も、国の荒廃を建て直すために、6・3制の新しい教育制度を設けて、6・3建築等、かなり多大な教育投資をして、今日の経済大国第2位、今、中国に抜かれて、第3位になりますが、そういう発展をしてきた。

 先ほど主計官が御説明のとおり、今、財政的に非常に厳しい意味で、第3の変革期になっているのではないか。それだけに、今後の我が国の発展を考えた場合には、教育は我が国の礎をつくる一人一人の国民に、適正な能力を発揮できるような教育を行うということが、やっぱり必要で、我が国の持続的発展を確保する一つの大きな礎ではないか、基本的な条件ではないかと思いますので、その点について、どのようにお考えか。

 その2点について、お願いしたいと思います。

【木村主査】  では、お願いいたします。

【神田主計官】  ありがとうございます。

 社会の構造がものすごく変わってしまっていて、実は、今回の税と社会保障の一体改革の考え方も、少子高齢化、人口減と、高齢者が4割になってしまうということだけではなくて、核家族化、あるいは、老人一人だけの世帯が増えてきている。あるいは、コミュニティーが壊れてきていて、削らなければいけないとはいっても、昔ほど各家族で支えることができない、あるいは、コミュニティーで支えることができない。

 したがって、一定の社会保障は維持しなければいけないけれども、全部子供たちの借金でやっているということは無責任ではないかと、あるいは、国家が破綻するのではないかということで、やはり、社会保障はかなり切らないといけないのですけれども、それは限度があるので、社会保障を合理化しつつも、やはり足りない分は増税でやらなければいけないと、そういう議論です。

 実は、教育も同じようなところがあります。教育現場がものすごく昔より難しくなっていることは、ほかのところと同じで、社会構造の変化で大変、難しくなっているところがあると思います。もともと家庭でやらなければいけないことが、学校にしわ寄せがきたということは、もう事実だと思います。

 ただ、それを言い出すと、すべてそうで、我々の仕事もそうです。

 やっぱり社会がすごく複雑、困難になっていて、しかも、環境自体が変わっているから、決まったものをやるわけにはいかない。教育もそうですが、決まったものを教えて覚えさせるだけでは、もうこの乱世、厳しいグローバリゼーションの中で戦っていけないです。これは難しくなっているのです。

 だから、かなり教育の質を高めなければいけないし、そのためのハードルが高くなっていることはわかっているのですが、ただ、そのためにどういうやり方をするのが一番いいのかというところが、大事なところです。要するに、学級規模の話をしたら、教員の給料です。人数を増やすと質が下がるかもしれません。それに回すほうがいいのか、別のほうがいいのか。あるいは、配置の仕方を延べ単で、既に地方でかなりやっていますけれども、わっと機械的に学級規模を減らすのがいいのか、それとも政策的にここのところが一番大事だろうというところで、重点的に投資するのがいいのか。

 あるいは、一回張りつけてしまうと、なかなか難しいですが、機動的に、理想的には、不完全情報で難しいですけれども、各学校ごと見きわめて、もっと丁寧に配分できるようにしたらいいのかもしれませんし、そこはここのテーマでもあると思います。教職員配置の適正化の議論のところなのだと思います。

 だから、そこをどうしたらいいのかということを、私たちの考えでは、少なくとも貴重な投資を、学級規模を小さくするところに、延べ単でやるのが効率的かというと、その立証は全くなされていないのだろうなと思っていることと、もう一つは、くどいようですけれども、それを子供たちの借金でやるのですかということです。要は、今、1,000兆円を彼らに回すわけです。そこを捨象しても、毎年44兆円、借金を増やしているのです。

 皆さんが払うのではないのです。60年償還だから、今年生まれた子供たちが払うのです。自分たちがいいことをやりたいからといって、それで、子供たちに背負わせるということは、ものすごく無責任で、偽善的だと思います。それが、私が一番言いたいことです。

 だから、1円でも使うのだったら、最も効率的に使わなければいけない。僕も、ゼロにしろなどと言っていません。そんなことはできっこありませんから。ただ、その緊張感が必要だと。一番この政策がいいということを一生懸命議論して、使いたい。

 しかも、44兆円赤字ということは、もし借金をゼロにしたら、歳出は半分です。今の歳出を前提にして、そこを組みかえましたと言っても44兆円足りないわけですから、半分にしますよと。そうしたら、義務教育だって、8,000億円でやらなければいけないわけです。そんなこと、できっこないわけではないですか。1兆6,000万円プラス3兆2,000万円なければ、できないのです。

 そんな厳しい状況にあるときに、やっぱり我々は考え方を切りかえなければ。主計局だって、今まで甘かったかもしれない。一生懸命戦ってきたつもりですけれども、やっぱりこれだけ借金を増やしてしまって、毎年どんどん、どんどん財政の自由度がなくなる。ごらんになってわかるように、今まで文教はなるべく結果的に守られてきたけれども、ほぼ限界になってきています。

 これまで実は、公共事業が犠牲になってきたわけです。公共事業は昔10兆円の時代があったのですが、今は4兆円ですから。社会保障が増えた分、文教は、私のところが、ある程度守られているから、ほかのところがどんどん減っていて。あえて言えば、防衛費もちょっと微減なので、そこのところも、多少守られていたのですが、これ以上、公共事業を削減したら、今度はもう公共インフラが全部だめになってしまう。皆さんも、耐震化で苦労されていると思うのですが、橋とか高速道路とか、もうみんな老朽化してきていますから。いずれこれは数百兆円と言う人もいますけれども、考えなければいけない。

 だから、もうどうにもならないのです。だから、歳出を少しでも合理化するとともに、やはり増税をしなければ、もう成り立たたないという。もう何か言葉で表現できないくらい、我々は追い詰められているところを、ぜひシェアしていただければ、ありがたいと思います。

 他方で、信じてもらえないかもしれませんけど、皆さんの教育が大事だという情熱も、我々はシェアしているつもりです。ただ、金がないということがありまして、御理解をいただければと。

【木村主査】  ありがとうございました。 ほかに。 どうぞ。向こうから。貞広委員。

【貞広委員】  ありがとうございます。

 神田主計官の分析については、既に論説を何度か読ませていただいていますが、本日は同様の視点について、説得的に再度御提示いただきました。

 論説の中でも、ずっと神田主計官がおっしゃっていることですが、今回のプレゼンテーションにおいても、学力達成と学級規模縮小の直接的な関係は、定量的に切り出して観察することが難しいという御報告をいただきました。と、同時にそれと並んで今日御指摘いただいた重要な点は、教職を魅力あるものにして、優秀な方々に教職についていただく必要があるという点だと受け止めております。

 そうすれば、適切な言い方かどうかわかりませんけれども、仮にもうどうしても手元不如意で、教員の数を増やすことができなかったとしても、一人一人の教員が優秀であれば、質の高い教育活動を確保でいるということを提案いただいたとお聞きしました。

 私は、教員養成の大学に席を置き、最近の学生を見ていて、感じることの一つとして、教育実習などをはじめとした現場での実習的な学びが増える昨今の教員養成課程の中で、彼らが子どものころよりも、学校現場が非常に大変な事態になっていて、特別支援の特別なサポートが必要な子供たちも増えているという現状を見るに、実習をやればやるほど、志の高い学生こそが、教育現場の実情から腰が引けてしまって、自分は教員をやっていけないのではないかという気持ちになっていることです。むしろその様に感じる学生にこそ、教育現場で活躍して欲しいと思いますが、そういうまじめな学生こそが悩んでしまうのです。つまり、大変さの裏返しは、その大変さをサポートしてもらえるような環境がないという状況を示していて、そうした意味での教職の魅力が、低下しているということなんです。

 ですから、学力への効果を直接的に、定量的に切り出すということは難しいから、学級規模は縮小しなくていい。または、加配教員は、もうこれ以上要らないのではないかという議論ではなく、物心両面からの現場へのサポートを充実させて、教職の魅力を増強し、優秀な人材に教職についてもらうという視点が肝要かと思います。神田主計官の本日の御提案は、そうしたサポートへの公的財政支出について、お互いに知恵を出していきましょうという御提案だったと思うのですけれども、現時点で、神田主計官が、今、教職の魅力をもっと増やす、または、社会的にもっと教職についている方々をサポートをしていこうというマインドを醸成するためにできることについて、もし腹案を持たれていたら、お教えいただければと思います。ありがとうございます。

【神田主計官】  大事なテーマをありがとうございます。

 日本社会はすごくおかしくなっていて、例えば、弁護士は、教員よりもずっと給料が高いのですが、何か人気がなくなって、みんな来なくなっていって、全く似たような話を、前、日弁連の人たちから受けたりして、一体どういうプロフェッションがいいのだという。

 みんな苦労していて、そこは、若い人たちがグローバリゼーションの中で、立ち行けないぐらいハングリー精神がなくなっているという、全体的な日本民族の劣化があるのかもしれないので難しいのですけれども、少なくともこれは教育と社会の鶏と卵かもしれないですが、やっぱり教職を含めて、プロフェッションに対して誇りを持つ。だから、別に大学なんか行かなくても、パン屋さんになったって、クリーニング屋さんになったって、みんながリスペクトする。あなたがいなかったら、きれいにならないのだと。

 それと同じように、教職は、より高いレベルですけれども、やはり自分たちも誇りを持ち、みんなが尊敬する存在に戻すということが一番大事で、やっぱり、職業、プロフェッションに対する価値観が、日本社会は非常に希薄で、相対化され、また、あるいは、物質主義化していて、給料が幾らみたいになっていて、教員がやることの大きな仕事を、本人が理解するというより、社会が崇高なものだというふうに認識していない異常な事態を直すことが、一番大事だと思います。

 だから、それをどうやったらいいかわからないということが、鶏と卵状況で、でも、学校教育は、別に先生は偉いぞと言うと、自分は偉いぞということになって、やりにくいかもしれないけれども、職業は尊いものだと、職業を通じて、社会にみんなこれから貢献していくのだと。私は教育の場で頑張っているのだと。みんなも、こうやって1回しかない人生で、何をやっていくのだということを、先生と一緒に見つけなさいと。そういうことを小さいときからやっていただけたら、日本はもう1回目が覚めるのではないかなという気がします。

【木村主査】  ありがとうございました。清原委員。

【清原委員】  ありがとうございます。三鷹市長の清原と申します。よろしくお願いします。

 本日、神田主計官は大変率直に、国の財政運営をされているお立場から、問題のあり方を提示してくださったと思うのですが、私が市長を務めております三鷹市は、地方交付税の不交付団体を堅持しております。東京都には26の市がございますが、現在、地方交付税不交付団体は6団体しかありません。このところ交付団体になる市が増えてまいりました。

 国がこれだけ財政が厳しいということは、基礎自治体である市町村も経営が難しく、ほとんどが地方交付税を受けて、財政運営をしているということですので、今日、地方の交付税が多いということを示されたことは、まさに日本国の国と地方の関係の構造的な部分を、改めてお示しいただいたものだと思います。

 しかし、基礎自治体は何もしていないかと言うと、そうではなくて、例えば、社会保障の取り組みとしては、三鷹市の例ですが、国民健康保険税についても、今年度、改定いたしましたし、市民の皆様には申しわけないですが、介護保険料も値上げという形で改正いたしましたし、広域連合で進めております高齢者医療についても、保険料を上げざるを得ない状況です。学童保育の育成料も上げました。

 やはり経営の中で、正しい受益者負担のあり方ということについては、努力することはもちろんのことだと思いますので、それは重要なことだと思うのですが、例えば、例として、今日いただきました資料の23ページのところで、大変重要な御指摘があって、世代ごとの生涯を通じた受益と負担ということで、先ほどもお答えの中でご紹介がありましたが、「子どもたちの未来に借金を増やすことを極力減らしたい」という財政運営をしたいと。

 ですから、教育環境をよくするといっても、それをよほど判断しないと、子どもたちに実はツケが回るのだという、大変率直な問題提起があったのですが、ここで御質問ですが、私たち、公立学校を設置者として運営している立場では、やはり校舎の耐震化、体育館の耐震化は、子供たちのためだけではなく、地域の皆さんの安全安心のために必要ですから、やはり最大限優先的に取り組みたい。

 あわせて、先ほど例示されました教員の質の向上ということについては、中教審でも、その資質向上のために、大学院修士レベルまで、すべての教員の資質を上げるような取組を提案されていますし、また、今後、研修のさらなる強化ということで、質の向上ということをキーワードに、初等・中等教育は進めていらっしゃいます。これは高等教育局も連携して、そのように進めていらっしゃいます。

 さらに、社会保障と税の一体改革のトップには、子ども・子育て新システムが入っていて、保育と幼児教育の一体化の中で、幼児教育の質の面を子供たちに提供するための新システムを、今国会でも議論されるということになりまして、キーワードは質ではないかと思っています。神田主計官にも、量的な部分だけではなくて、質的な部分で、教育の問題を判断していくべきだという問題提起をいただきました。

 そこで、御質問ですが、どうしてもいろいろなものを比較検討するときには、数字とか量になります。しかし、教育は、際立って質を重視しなければいけない取組だとも思います。もちろん、土木だって、橋だって、道路だって、質のいいほうがいいわけですけれども、そこで、主計官が財政的な判断、予算等の判断をされるときに、量的なものの判断は、それなりに前年度比較などいろいろできるのですが、質的なものを判断されるとき、例えば、児童生徒の満足度だとか、教員の効率的な職務運営であるとか、なかなか質的な指標がつくりにくいようなものを、主計官として判断していただきたいと思うし、今後はそれを取り入れていかないと、予算編成のときに、ここは我慢してくださいと、でも、ここは優先しますということが、なかなか言いにくくなる、せめぎ合いの状況が増えていくと思います。

 そこで、今までも量だけではなくて、ちゃんと質を判断して、教育については予算化を進めてきたということの何か具体的な例があれば、教えていただければありがたいと思います。 以上です。よろしくお願いします。

【木村主査】  では、よろしくお願いします。

【神田主計官】  ありがとうございます。

 市長さんのところは、ものすごく頑張って、財政改革をやっておられるということは、私もよく聞いていまして、ありがとうございます。

 地方財政というのは実はばらばらで、もちろん確かに東京は恵まれているところがあるのですが、他方で、努力もしているところがあって、他方で、恵まれていないところもあれば、努力もしてないところもあって、議論は非常に難しいのですが、ただ、総体として言えば、結局、交付税だけでなくて、御存じのとおり、地方債だって、最後、交付税措置する部分がたくさんあるし、地方財のレーティングは国債と連動しているので、結局、国が倒れたら、どうにもならない。

 ところが、国のほうが、プライマリーバランスは、はるかに悪くて、御存じのとおり、地方全体だと、プライマリーバランスは、ほとんどポジティブです。そこら辺が、今、非常に悩ましいのですが、地方分権で、御存じのとおり、今回の消費税も、実は、1.6%、地方に自動的に行ってしまうものですから、これまでの借金の穴埋めに使える部分は、ほんの一部です。あと1%分は基礎年金に行ってしまいますから、そういった悩みがあります。

 たくさんの御指摘いただいたのですが、おっしゃっていた耐震化は、我々としても、最優先事項になっていて、22年度の予備費及び一次補正、23年度の一次補正及び三次補正と、もう数千億円を入れていて、基本的にはここ数年のうちに100%になるような予算措置を念頭に置いてやっていて、今、もう9割見込みです。この2年間で、ものすごく進んでいます。

 おっしゃったことで一番大きなことは、質の話ですが、ここは政策判断をするときは、比較可能性が大事で、結局、何とはなしに、いや、このほうがいいんだよと言い合っていたら、それはうまくいかなくて、そこで、アカウンタビリティーを発揮して、データといいますか、客観的に人を説得できたほうに、予算措置がなされるということになっている。

 確かに、量か質かという議論とちょっとずれるのです。量か質かという一番基礎的な議論は、量を増やせばいいということと、量は関係なくて、質を高めればいいのだと言いますが、今おっしゃっていることは、おそらくそういうことではなくて、質をどうやって説明するかで、ここが別の意味での量とする技能が求められるわけです。

 こういう政策をとったことによって、これだけ質が上がりましたということを、仲間ではなくて、例えば、予算で競合している人たちのデータとぶつけて、こちらのほうがより社会に対する利益が高いですよということを示すところが、やっぱり日本は弱かったところがあった。

 私の今の一番の経験で、科学技術のほうが、今それが大騒動です。私がもう厳しく成果目標を出して、評価してくれと。それで順位付けしてくれという議論をずっとしてきて、総合科学技術会議で、S、A、B、Cとつけるのが甘いので、みんながSとA、もう86%がSとAだったんですが、そんなのだったら、何にも私の重点化査定に使えないと言いました。結局、科学者同士で何がより重要かという差別化ができず、S、A、B、C判定はなくなってしまったのです。

 そうすると、どうなるかといっても、個別プロジェクトの国家戦略における位置づけと一定の不完全な定量化された成果目標みたいなものでやるしかないので、それで、どんどん査定しているわけですが、結局、そうしたときに、やっぱり優先されるものは、説明責任を果たしたところ、こういう条件において、こういうことをすれば、こういうふうに質が上がって、その質はこういった統計によって、フォローできるということを出したところが強くて、結果的にそういったところが重点的に予算配分されております。

 逆にそういったことができなかったところは、残念ながら、国民に対する説明責任が欠けているので、とても私は背負えませんと言って、ゼロ査定にしたりしています。

 だから、ここは、挙証責任をどこまで果たすかということだと思います。難しいけれども、そういった統計技術はたくさんあり、海外では普遍的ですので、我々も、かなりきわどい統計手法であっても、統計的にインパクトが大きければ、それは当然、目を通しますので、これはぜひいろいろ教えていただければ、非常に建設的な議論ができるのではないかと思っております。

【清原委員】  ありがとうございました。

【木村主査】  小澤委員。

【小澤委員】  全国連合小学校長会の小澤です。小学校の立場でお話しさせていただきます。

 資料の30ページと32ページ、ともに教職員定数と児童生徒数の関係ですが、特に30ページのところに、児童生徒40人当たりの教職員数は、約40%増えていると。小学校現場で全く実感がありません。多分、この統計データのとり方に要因があるのではないかと私は思いました。

 というのは、小学校学級担任制、中学校教科担任制を一緒にデータをとっているということ。教職員数は、いわゆる標準法においての人事措置と指導加配等の加配措置と、すべて一緒にした数で割り込んでいますよ。

 そうなった場合、小学校の学級担任制をもとにして、それに、教科によって指導加配等とか、要するに、加配については、運用の規定項目があるわけですから、それによって運用しているということで、それを合わせると、平成になってから、40%も小学校現場で教員数が増加しているという実感は、全く持てないのではないかと思います。

 それが一つと、これは国のデータですから、やむを得ないのでしょうけれども、ただ、地域差、指定都市と指定都市外は、全く状況は違います。やはりそういうところの児童数が増加している地域、あるいは、児童数が減少していない地域もあって、そこの割り込みと一緒に、データを見ていかなければいけないのではないかなと思います。

 小学校と中学校を一緒にして、こういうデータ、それから、標準法で割り振っている人的措置の分と加配の部分と一緒にして、データをとるということは、実感とは極めてそぐわないと思っています。

【神田主計官】  ありがとうございます。

 実感にそぐわないのは、当たり前だと思います。結局、それは何を示しているかというと、配分の問題です。ここで、このチャートが訴えているものは、全体のパイは、こういうふうになっているということ客観的事実です。これだけのリソースを財政が破綻する中で、割かれておりますと。

 ところが、学校現場で、それだけ楽になっているという実感がないとすれば、それは配分が悪いのかもしれない。それはおっしゃるとおりで、もちろん、担任ではない人もたくさんいるし、地域間の不均衡もある。これは、お医者さんとか弁護士さんの議論をするときも、そうです。今、個別のところでは、人が足りないと言って、増やしてくれと言うのですが、マクロで見ると、余っていて、だから、日弁連とか日医は増やさないでくれと言うのです。

 しかも、もう一つ言えば、先生がおっしゃることと関係するのですが、地域だけではなくて、中でも分野によってのばらつきがある。先ほどちょっと話が出たのですけど、産科とか外科は足りないけれども、心療内科は余っている等です。

 なかなかうまくいかないけれども、ただ、財政の立場で見ると、全体として、これだけのファイナンスをしていますよと、その中の配分をもう少し考えてくださいよと。これだけ人がいるのに、現場は不満を言っているではないですか。一体どういう分配をしているのですかと。そういう議論になります。

 だから、これは別に中学校と小学校を分けるなんて簡単なので、やってみても結構ですが、ただ、言いたいことは、二つあって、一つは、教職員をどんどん減らしているというのは、そうではない。必死にこれだけにして、一人当たりでは、子どもが減っているので、これだけ増えていますよということと、仮にこれだけ維持していても、もちろん学校現場が難しくなっているということもあると思うのですが、しかし、一人当たりで教職員が増えた実感がないとすれば、どういうふうな配分にしたら、このことをより効果的に生かすことができるのだろうかということが、おそらく建設的な議論だろうと思います。

【木村主査】  相川委員、どうぞ。

【相川委員】  今日は、主計官、ありがとうございました。

 私は、保護者の立場からお願いと、ちょっとあります。

 やはり説明を聞いて、私も、歳入の問題は、これから大きな問題であると思います。経済がどうしても伸びない、むしろ低迷から減少していくような気がします。

 それで、やはり主計官にお願いしたいことは、最終的には配分の問題だと思うんです。今、確かに福祉のほうに重点的に配分という話もありますけれども、やはり切るところは切っていかなければいけないと私は思います。

 今、社会を見て、先ほど学力の問題だとか子どもの学力についてのデータを見ると、PISAだとかで、学力がまだ高い位置にある。今の状況で、35人学級を進めることが、果たしていいかどうかということもありますが、この高い位置というのは、内容を分析すると、今、教育関係の企業が随分増えている。そこに支えられている部分がかなりある。というと、国が負担するよりも、家庭が負担しているということが非常に多い。もうちょっとデータを分析し、その内容を確認していただきたい。

 それと、今、デフレの状態で、所得が二分化しています。おそらく高収入の人が、今の状態では減ってくる。そうすると、やはりそういう教育(塾)にも、費用をかけられなくなる。これは悪循環の話ですが、そうならないためにも、ぜひ教育費に対して配分をしていただきたい。これは、保護者からのお願いです。

【神田主計官】  ありがとうございます。

 今おっしゃったことは、民主主義において、結構重要な論点で、結局、子供たちは選挙権を持っていないし、与えることは、おそらく正しいとは思わないのですけれども、ただ、これから、他方で、老人が増えていて、自分もいずれなるわけですから、人ごとではないわけです。10人に4人が65歳以上になったら、民主主義のプロセスの中で、おそらく老人が、実際の投票行動において、マジョリティーになる可能性があります。

 その下では、おじいちゃん、おばあちゃんが、子どもたちのことを考えた行動、つまり、自分の年金や医療も最大限必要だけれども、ただ、そうはいっても、少し切ってもらってでも、子どもたちに投資してほしいという思いを持った人が、ある程度いないと、結構大変なことになるなと。我々、現役世代、くどいようですけど、我々もいずれ卒業してしまうので、それがもう半分以下になってしまうわけですから、すごいことになってしまうのです。

 先ほどの公私の関係は、日本の場合、圧倒的に小さな政府で、とりわけ小さな政府の上、さらに税収を歳出の半分しか取らない。間違ったことになってしまっているので、私費になる、それは、当たり前のことです。

 もし税金がサービス分、入ってきて、つまり、このようなことはあり得ないのですが、今より税収が倍増し、80兆円になる。そしてプラスの借金がなくなるとすれば、もっと、もっと私費が減って、公費が増えるでしょう。

 日本の大学システムも、同じです。比較的公的支出が少ないということは、私学が頑張ってくださって、8割を支えてくださっている。だから、その結果として、小さい政府になって、税金も少ない。極端に言えば、それを国有化したら、当然、税金が増える。ところが、税金を増やせないと、借金が増えてしまう。

 結局、打ち出の小づちはなくて、大きな政府だったら、たくさん負担しなければいけないし、小さい政府だったら、小さい負担ですむ。ところが、今、中規模のサービスをやっているけれども、圧倒的に少ない負担しかないから、話がおかしくなってしまっているのだと思ういます。そこは、やっぱり何とかしなければ。

 ただ、そうした中でも、階層の固定化は、絶対避けなければいけないとは私は思っていて、教育で日本民族が隔離されるということは極めて危険だし、日本のダイナミズムも失うので、だから、なるべく義務教育はしっかりやらなければいけないだけではなくて、今みたいな一種、意欲があれば、貧しいけれども、歯を食いしばって、頑張って、いい成績をとった者は、もうしっかりと奨学金をどんどん出してやるというインセンティブになるだけではなくて、やっぱりそれこそ本当の重点投資です。

 金持ちなんかは要らないわけだし、勉強する気のない者に投資したって、金の無駄ですから、やはり、ちゃんとやっている人と貧しい人に、なるべく貴重な資金を投資できたらなという気持ちはあります。

【木村主査】  ありがとうございました。

 よろしゅうございましょうか。主計官、今日はありがとうございました。

【神田主計官】  今日は大変失礼なことを申しましたが、非常に勉強になりました。また、引き続きよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

【木村主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、冒頭申し上げましたように、これまでのヒアリング及び議論も踏まえて、前回に引き続きまして、今後の教職員定数改善の進め方等についての自由討議を進めたいと思います。

 まず、事務局から、論点メモについて、前回からの変更点を中心に、御説明をいただきたいと思います。 谷合企画官、よろしくお願いします。

【谷合企画官】  それでは、お手元の資料3の御用意をお願いいたします。この資料3でございますが、前回も配付した資料でございます。ただ、一部修正をしておりまして、大きく二つの観点から修正を加えておりますので、その修正部分について御説明をいたします。

 まず、修正の一つの観点としては、前回、自由討議を行った際に、各委員からいただいた御意見を踏まえて、それを主な御意見ということで、追記をしているということでございます。

 具体的には、まず1ページ目でございますが、下半分に点線で囲った部分でございます。例えば、少人数学級の効果につきまして、単に学力だけではなく、学習意欲やコミュニケーション能力、あるいは、欠席や不登校、楽しく学校に行けることなど、多様な観点から、少人数学級というものが評価されるべきではないかという御意見をいただきましたので、記載をしてございます。

 1ページ飛ばした3ページ目のところですけれども、ここにも主な御意見を追加してございまして、ここは、子どもの数に比べて、教職員数があまり減っていないのではないかという御指摘に対する御意見として、例えば、少子化の進展、家庭環境の変化の中で、学校の教育活動が高度化・複雑化しているという状況の中で、単純に教員数と児童生徒数の比率だけでは判断できないといった御意見ですとか、日本の教員は、欧米と比べて、教科指導以外の多くの役割を担っているといった点についての御発言がありましたので、記載をしています。

 このように、各委員から自由討議でいただきました御指摘について、今後も随時、この論点メモに追加をしていって、論点メモを充実していきたいということを考えておりますので、お願いをいたします。

 修正の大きな二つ目の点でございますけれども、一部論点を追加しております。具体的には3ページと4ページの部分になるのですけれども、この検討会議を2月に再開するに当たって、お示しをいたしました検討項目がございましたけれども、検討項目に沿って、お示しした検討項目を一通り網羅するような形で、論点として提示をさせていただいたということでございます。

 具体的には、3ページに、質の高い学びのための効果的な教職員配置のあり方について、どう考えるかという部分でございますが、討議のポイントといたしまして、例えばマル1でありますように、双方向・協働型の新しい学びへと授業変革するための教職員配置について。

 マル2は、現場に近いところでの裁量での教職員配置の仕組みをどう考えるか。

 マル3は、教職員配置の成果の検証システムについて挙げています。

 次の4ページの3、個別の教育課題に対応するための教職員配置のあり方についてというところでは、特別支援教育を取り巻く状況の変化に対応するために、教職員配置をどう考えるか。 複式学級など、小規模な学校への支援をどう考えるか。そのほか、震災対応、学校マネジメント体制整備等々の課題に対応するための教職員配置について、どう考えるか。 マル4で、地域人材の活用について、どう考えるか。

 こういった点について、検討項目に従って、論点という形で追加をしてございます。したいがいまして、こうした論点についても、今後の自由討議の中で、御意見を賜れればと存じます。

 最後、5ページ目の最後のマルになりますが、前回少し御紹介しましたが、60歳定年後の再任用の義務づけに関しまして、今後、国家公務員あるいは地方公務員についても検討が進んでまいりますので、そのこととの今後の計画的な定数改善ということも、一つ論点として追加してございます。

 論点メモの修正についての御説明は、以上でございます。

【木村主査】  ありがとうございました。

 ただいま御紹介いただきましたとおり、前回とは若干変わっている部分もございます。それをざっとごらんになりまして、どの観点からでも結構でございますので、追加のコメント、御議論をいただければと思います。よろしくお願いします。

 どうぞ、清原委員。

【清原委員】  ありがとうございます。三鷹市長、清原です。

 論点を詳細にまとめていただきまして、ありがとうございます。特に4ページの3、個別の教育課題に対応するための教職員配置のあり方について、どう考えるかという点について、1点だけ発言をさせていただきます。

 三鷹市では、前にも事例を報告させていただきましたが、コミュニティ・スクールを基盤とする小中一貫教育を進めております。この間、全国の自治体の中でも、このような小中一貫教育を進めようとされている動きが、大いに顕在化してまいりました。それぞれの地域の特徴を生かしながら、義務教育として、小学校、中学校の教育を一貫していくということは、大変重要な流れだと思っております。

 したがいまして、この3の個別の教育課題の中に位置づけられるのか、あるいは、今後、全体としての小中学校という義務教育の方向性の中に、コミュニティ・スクールが位置づけられることになるか。その位置づけについては、まだコミュニティ・スクールが学校の大多数ではないのではございますが、その取り組みにおいて、いわゆる担任であるとか、教科の教員だけではなくて、「コーディネーター」の機能を果たす教員が一人いるだけで、かなり円滑に進みます。

 しかし、三鷹市で、私は、それを三鷹市の費用として、人件費を出しましたので、サンセットにいたしまして、年度を限って、活躍してもらいました。それでも、十分に円滑な移行ができましたので、時間軸を置いた配置も有効な考え方とも思います。

 したがって、恒常的に増員するだけではなくて、適時、適切に教員を配置することで、有効な新システムの導入なども可能かと思いまして、そのような論点も入れていただくと、今後のあり方に向けて、現実的ではないかなと感じました。

 以上でございます。よろしくお願いいたします。

【小川副主査】  前も話ししたのですが、5ページで、今回、定数改善計画の問題で、最後に、国家公務員の再任用の義務づけに伴って、地方公務員も平成25年度から年金支給の支払いの年齢が遅くなるのに伴って、たしか平成25年度から再任用義務化ということで進みますが、基本的にこの仕事は、各都道府県の教育委員会がやるというか、定数の枠内でやりとりするということで、国とすれば、直接関与するということはないのかと思います。

 ただ、再任用義務化は、都道府県の定数運用等々に、非常に大きな影響をもたらしますもので、この再任用義務化を目前に控えていて、文科省とすれば、どういう対応をとろうとしているかということをお聞きしたいということが、一つ。

 もう一つは、再任用義務化は、今言ったように、都道府県の仕事であって、国が直接、それに、ああしろ、こうしろというような指導をしたり、ガイドラインをつくるということは難しいかと思うのですけれども、やはり再任用義務化といいながら、やっぱり定数の枠内で運用するわけですので、例えば、新規の採用の枠の減少にも、大きな影響をもたらしますので、できる限り、再任用義務化が、新規の採用枠の減少に、できる限り最小限度の影響を及ぼすような工夫というか、配慮ということも必要ではないか。

 そういう点では、例えば、正規の教職のポスト以外の例えば支援スタッフとか、例えばスクールソーシャルワーカーとか、そういう教職のポスト以外のそういう支援専門スタッフのところで、そういう再任用義務化を図っていくというようなことも工夫の一つとして考えられてもよいと思います。例えば、そういうことも含めて、国として何らかの対応策を考えないのかどうかということを、少しお聞きしたいのです。

【伯井課長】  国家公務員の再任用の義務づけ、要するに、定年をそのまま延長しないという形で、再任用という形を、より義務化していこうという方向で検討されていまして、それは地方公務員も、当然、同様の年金の支給開始年齢の繰り上げを同時に行いますから、同様の措置が講じられるわけでございます。

 我々としても、担当の総務省と連携しながら、教員特有の問題もございます。例えば、役職定年制を、校長とか、学校における管理職でどのように考えるかとか、あるいは、フルタイム再任用という場合と、短時間の場合もございます。

 例えば、小学校における短時間勤務の対応をどう考えるかとか、当然、我々も必要な検討をして、実際は人事を行っていく各都道府県の仕事になるわけですけれども、できる限りの制度設計において、齟齬をきたさないということ、情報提供をしっかり各県にやっていこうということで、まだ、これは動いている話でございますので、そこをやっていこうと思います。

 この会議との兼ね合いにおきましては、計画的な定数改善ということになりますと、今の検討では平成25年度末退職者から、再任用を義務づけでいこうということですので、3年ごとに、対象年齢を1歳ずつ上げていこうという形で、段階的に実施されます。そうすると、当然、先ほどの退職者の話が、予定どおり、退職者が出なくなるわけですので、採用計画にも、大きな影響が出てくる。

 我々、先の見通しを持った安定的な、かつ、計画的な人事を教育委員会で行ってもらうためには、ここをどう年度に置いていくかということが、大きな課題になります。そのためにも、実は我々の定数改善も、各県における採用計画に、先の見通しを持つことの困難さの一要因ともなりつつありますので、そういうことも含めて、この会議のテーマとして、一度少し事柄を整理させていただいて、また、どこかで資料の提供をしながら、議論させていただきたいと思っております。

【小澤委員】  今、60歳定年後の再任用義務づけの問題については、私どもも同様な考えを持っておりまして、現実的に言いますと、例えば、今、課長からお話があった役職定年制を、例えば校長にとっている都道府県と、とってない都道府県の比率を見ると、とってない都道府県のほうが、圧倒的に少ないです。そのような状況もあり、非常に散らばっているかと思います。

 ただ、定年後の再任用等を定数内に含み込むか、含み込まないかということは、非常に大きな問題でありまして、この辺は各都道府県に任せると、法的にはそういう形しかとらざるを得ないのかもしれませんけれども、各等道府県に任せた場合の問題性が、非常に出てくるのではないかと思っております。

 先ほど主計官にもお話ししましたけれども、結局はこういうデータがいつも出てくるのですが、小中の児童数が、こういう形で減少していて、教員数が減少していないからという、そういうデータの対応の仕方がありますが、講習、通常学級、特別支援学級ということを含めて見ていただかないと、データ単独に、児童生徒数が増加していて、教育の質については、人数から見れば、ある程度担保できているという見方にはならないのではないかと思います。ぜひその辺のことも、基礎的なデータをもう少し整備していただければ、ありがたいと思っております。

 やっぱり、教職員の配置についての弾力的な、いわゆる地教委ないしは校長の裁量権限、学級編制については、地教委の裁量権限が強くなりましたけれども、ぜひ、その辺のことを、少なくても、今ある人材をどうやって運用するかということは、現場サイドの中で、創意工夫できるような体制整備を整えていただければと思います。 以上です。

【藤崎委員】  少人数学級という言葉において、ちょうどこの中に担任という言葉が出てきていないですけれども、改めて考えてみましても、日本の学校教育のよさは、特に初等教育の場合においては、担任制度、子供が先生に見守られているということを、私は非常に感じていますが、以前、国研のほうで、将来にわたって、人との信頼関係を築くに当たって、小学校時代に担任の先生との信頼形成が、その後の人間形成に非常に役に立つという研究を聞いたようなことがあるのですが、そういった研究の結果はございましたでしょうか。

【工藤部長】  その研究は思い当たらないのですが、また調べて、後日、御回答を申し上げます。

【藤崎委員】  私もはっきり記憶していればよかったのですが、たしか小学校時代の先生との関係が、将来にわたって、人との関係をはぐくむ基礎になるという研究結果が含まれていたような気がします。

【工藤部長】  わかりました。

【藤崎委員】  改めて、担任の役割というか、日本の学校教育を支えている点も、もう少し検証しまして、それで、この少人数学級の効果について提案できればいいなと思います。

 また、一方で、先ほどの60歳以上の問題ですが、現場を見ていますと、ベテランの先生が入ることによって、いい面もたくさんありますが、その一方で、若い先生たちが遠慮をして、結果として、子供がこぼれてしまうようなケースもあったりするように思われます。ですから、ベテランの先生が、若い先生を育てていけるような、そういった配慮と環境づくりも必要なのではないかなと思います。以上です。

【米田委員】  先ほどからの話に関連してお話します。60歳定年後の再任用の義務づけということに関してですが、この3月の下旬に、退職される方々に辞令を交付するということで、小学校と中学校の退職者の一人一人にお渡ししました。定年で御退職なさる方々のそばにいて、渡してながら、お顔を拝見しますと、60歳で退職される方はほんとうにくたびれて、あともう燃え尽きておりますというふうな印象を与える方が非常に多いということを、私は非常に強く持ちました。

 また、若年で退職される方、55歳前後とか、早い方は52、3歳で退職される方の結構おりましたけれども、その方々は、また希望があれば、学校で非常勤講師として、仕事ができるような体制をとっているのですが、まだ私は頑張れますというような印象を与える方が結構おりました。

 ですから、個人によって、いろいろ違うと思いますので、先ほどもお話が出ましたが、各県などにその辺の仕組み等は、やっぱりお任せいただいたほうがいいのかなという感じを持っております。以上です。

【長南委員】  4ページの討議のポイント、マル1、ここの表記の仕方ですけれども、私は、以前に少人数学級、少人数指導等の用語の使い方を、少し吟味すべきではないのかという提案をしました。ここで、ポツで、少人数学級・少人数指導等という表記になっていますけれども、これは、私の考え方からすると、少人数学級と少人数指導等、分けたほうがいいのではないかと思います。いかがでしょうか。

【木村主査】  その辺少し検討してみましょう。私も若干そういう印象を持っています。

【新庄委員】  財政のお話をいただいた上で、お話しするのは、なかなか難しいかなと思う点もあるのですが、私は全日本中学校長会の代表として来ておりますが、中学校は今年度から新しい学習指導要領が全面実施になりまして、やはり、いろいろな教育実数の増、教育内容が増加したという点から、教員が指導にかける時間が非常に増えております。増加しております。

 学力の面からだけ、データ的なもので比べるということではなく、この討議のポイントの中にも幾つかお話が入っておりますが、個別の教育課題に対応する時間が、教員にも非常に増えております。それは、学力の面からいえば、例えば、学校だけではなくて、学校外に学びの場を求めていったりする場合、その渉外、折衝を教員が行ったりする。または、地域人材を活用する、地域教材を活用するというときも、教員がその辺の準備や企画、運営を行っていく。

 学力だけではなくて、生活指導面もそうだと思うのですが、いじめ、不登校の問題、そのようなところでも、先ほど出ていたスクールソーシャルワーカーとか、スクールカウンセラーとも連携を行ったりする。関係機関との折衝を行ったりするという意味でも、やはり教員に、非常にさまざまな責任がかかってきている。そういうことを考えた場合には、やはり何らかの条件整備、教師が子供と向き合う時間の確保が一番必要ではないかと思っています。

 今、少人数指導を行っている、例えば、理科、数学、英語等で行っていますが、その少人数指導は、子供一人一人と向き合う時間は、授業中では確保するのですが、ある意味、全体の学校内の時間割を見たときには、目いっぱいの時間割になっております。そういう意味では、子供と向き合う時間が非常に少なくなっている。そういう面もあるので、今後、討議の中で、皆さんと考えていければなと考えております。 以上です。

【兵馬委員】  私も特別支援学校の関係のほうで出させていただいていて、発達障害のお子さんが増えている。今、文科省の中でも、調査をしているということもありますので、また、そのデータをお出しいただくことも大事かと思います。

 先ほど財政の話の中で、教員の質の話が出てきたのですが、教員は、一つの仕事と見るのか、それとも、複数の仕事を兼ね合わせて持つのか。例えば、特別支援学校の場合、生徒が企業に就労するというときには、教科指導、学校の指導だけではなくて、職場の開拓を行うとか、そういうことの進路指導担当、そういうものが専任に置かれている。

 先ほど、清原市長も、小中の学校の連携のためのコーディネーターがありますけど、これは学校間のコーディネーターかもしれませんが、特別支援教育の専門性を持ったコーディネーターも、現在も加配措置であるということですけれども、担任という仕事であるとか、学校の中の生徒指導であるとか、進路指導であるとか、また、そういうそれぞれの役割もあるということがありますから、そういう専門職の考え方も、一つ必要なのかと思います。

 先ほども出た外部の専門家も、やはり学校の中に導入してということになると、教員という職種とそういう外部の人たちは、どういうふうに学校の中で連携をとるかといったことも、また考える必要があるのかと思っておりますので、また、項目の中に加えていただけるといいかと思っています。

【中川委員】  今日、主計官に来ていただいて、いろいろ思ったんですけれども、我々が地方において、予算獲得をするときと同じような感じを受けました。地方においても、主計員とのやりとりにおいて、いかに教育の内容を理解していただくかということに費やすわけです。

 例えば、この春、私は、当然、小学校2年生は、これはもう法改正で定数化するものと信じ切っておりましたけれども、結果は、加配定数の増加という妥協の産物といいますか、そういうことになった。それは、やっぱり、これは財政の大きな壁があるのだなということをつくづく思いました。

 そのような意味で、もっと財政当局に学校現場の実態を理解していただくという努力をするほうが、かえって早いのかなという気がしました。もう今まで出ているように、例えば、この春から、全国で23の県が、地方の努力によって、小学校2年生を少人数化している。24の県はしていなかった。

 逆に言うと、財政の困難な中で、23の県が、地方の努力によって、それだけ少人数学級を実現したということは、もうこの事実だけでも、少人数学級のよさは、現場ではもう十分わかっている。だから、この財政難でやっているのだということの裏返しなのです。

 だから、主計官、財務省のほうでも、この学校の実態をわかっていただければ、わかるのかなという気がしました。いかに学校の先生が大変だということを理解していただく。先ほどから出ておるように、もう以前とは違うのですから、子供の質も違うし、保護者の質も違うし、教員のとられる時間が全然違うのですからということを思いました。

 以上です。

【宮﨑委員】  どうしようかなと思って、迷っていたのですが、先ほどの主計官のお話を伺っていて、42ページのことが私はすごく気になって、先ほど清原市長と主計官のやりとりの中で、質の保証の問題が出たと思います。このことに関して、私どもは、どこかで、一言、やっぱり言っておかなければいけないのではないか。教員の質を確保するために、私たちの取り組みはどうあるべきかというあたりを言っていかないと、いけないのではないか。

 もう一つは、歳出の考え方を変えなければいけないという、最も効果的な使い道は何なのかということについて、やっぱりこの場として検討してほしいというような言い方だったと私は理解したのですけど、この点について、だから、少人数学級が必要なんだというあたりは、やっぱり理論構築をしておかないといけないので、この質保証と、もう一つは、少人数学級のあり方。学校現場として、教員のいわゆる質保証をするため、これは、ここの大きなテーマではないのですけど、何らかの形で言っておく必要があるのではないか。そのあたりは、どこに入れればいいのかなと思いながら、ずっと見ていたのですけど、少し御検討いただくとありがたいと思いました。以上です。

【木村主査】  それでは、大体御意見も出尽くしたようでございますので、本日の議論は以上にしたいと思います。当然、主計官ああいうことをおっしゃるだろうと思って伺っていましたので、私は特に感想も、印象もないのですが、今後の問題の中で最も重要なのは教員の質の向上です。教員の質については、本当真剣に考えなければいけないと思います。

 これは別に国際的なデータを比較したのはないのですが、アメリカの小中高の先生方が、11年間にわたって6,400人日本に来られました。1回、200人、1年間に600人という大型訪問が、11年弱続きました。このプログラムは、フルブライトの事務局が面倒をみました。数年前にこのプログラムは終了しましたが、私は、1回200人、全32チーム全部で6,400人の先生方全員に、お目にかかりました。

 アメリカの先生方の日本に来ての感想は、自分たちに比べると、日本の先生方は非常に恵まれている、アメリカに比べると、社会的なステータスが高いというのが。私もそれは確かだと思うのですが、その辺のところが、主計官のおっしゃり方でいきますと、数値として出てこない。つまり定性的な議論しかできない。

 私は、東京都の教育委員長を務めてさせていただいている関係で、連合会の会長もやっておりますが、連合会の総会では、少人数学級、少人数教育ということについて度々議論をしていますが、残念ながら少人数のほうが有義に良いという数値的なデータはあんまり出てこない。

 ただ、少人数クラス、少人数ティーチング、各地方自治体でおやりになっていますから、そういうところで、先生方に多種多様なアンケートをされています。その中で、明らかに、少人数クラスを推進されている、先生一人に対する生徒の数が少ない都道府県では、先生方に元気が出てきているという。子供と接する時間が多くなったとか、家庭訪問の回数が十分とれるようになったとか、そういうことで、元気が出てきている、これは非常に重要なことだと思います。

 先ほど冒頭で出ました教員の質、先生になったってしょうがないやという、昨今の風潮はあります。しかし実際には、今御紹介したデータでもわかるように、この風潮は今後変わってくるのではないかと思っています。主計官のおっしゃり方だと、これを数値化するということは、ほとんど不可能だということですが、先ほど中川委員がおっしゃったように、そういうデータを、我々のほうから徹底的に発信していく必要があるのではないかと思います。

 もう一つ、日本の先生方は忙しいという点です。これは事実だと思います。大学も同じです。大学も、教授も准教授もほとんどアドミニストレーションをやっていますから、研究に、あるいは、ティーチングに使う時間が、諸外国、先進諸国に比べると、少ないということは事実だと思います。

 どうしてそうなるかというと、やはり我が国ではサポーティング・スタッフの数が圧倒的に少ないですね。英国、アメリカも非常に多い。英国だと、平均の学校で、サポーティング・スタッフが六、七人います。日本では、高校は少し多いようですが、小中学校だと、一人ぐらいしかいません。

 先ほどお話が出ましたけれども、そういうところへ、本当のプロを入れていくことが必要だと思います。例えば、フィンランドでは、小学校、中学校と、進路相談を非常にきちんとやるのですが、小学校のときは、親と生徒と先生方の三者です。中学校になっても、同じことをやるのですが、先生方は入らない。親と進路指導の専門家と生徒の三者です。進路指導の専門家は大学のディグリーがありまして、それをとってないと進路指導員にはなれない。つまり中学校レベルからはプロを入れているということです。

 先ほどコーディネーターという話が、清原市長から出ましたが、そういうプロを含めたトータルな形で学校の構成員のストラクチャーを考えていく必要があるのではないでしょうか。日本の大学と、アメリカ、イギリスの大学を比べると、決定的に違うことは、日本の大学の先生方はものすごく雑用をしているとう点です。これも、サポーティング・スタッフの数が圧倒的に少ないからです。私、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツの一流大学について、一時、30年ほど前に、サポーティング・スタッフの数を調べたことがありますが、比率にして、日本と1けた違っていました。だから、研究やティーチングに専念できるのです。

 これは、大学、中学校だけの問題ではなくて、日本全体がそのようなシステムになっているというのが私の見方です。大学については、そのような定員を増やすべきだと言い続けましたが全然駄目ですね。先生方が何でもやるのでなくて、先ほど主計官もおっしゃいましたように、プロを学校へ引っ張り込む、プロを育てて、引っ張り込むということによって、大学、学校の効率がかなりよくなるのではないかと、もう30年ぐらい前からずっと考えております。 よろしゅうございましょうか。 小川先生よろしいですか。

【小川副主査】  はい。

【木村主査】  それでは、本日はお忙しい中、ありがとうございました。

 時間が参りましたので、以上とさせていただきたいと思います。次回以降の件、その他、事務連絡につきまして、谷合企画官、よろしくお願いいたします。

【谷合企画官】  ありがとうございました。

 次回、第13回会合につきましては、6月1日金曜日の午後1時から3時、場所は文部科学省3階の3F2会議室で開催します。

 内容については、ヒアリング及び自由討議を予定しておりますが、具体的な内容については、追って御連絡を差し上げたいと思っております。

 6月1日金曜日の午後1時から3時で、文部科学省3階でございます。 よろしくお願いします。

【木村主査】  ありがとうございました。

 本日の検討会議は、以上で終了したいと思います。次回また、よろしくお願いいたします。

 

―― 了 ――

 

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