公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議(第10回) 議事録

1.日時

平成24年4月3日(火曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議事録

【木村主査】  ただいまから公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議を開かせていただきます。

 本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございました。

 まず、新たに委員の交代がございましたので、御紹介申し上げます。全日本中学校長会の役職変更に伴いまして、久保田委員が退任され、後任に港区立高陵中学校長の新庄先生が委員としてお加わりになっております。御紹介申し上げます。

 よろしくお願いいたします。

【新庄委員】  よろしくお願いします。

【木村主査】  本日は、御案内しておりましたように、お三人の有識者の方並びに地方公共団体の方々からヒアリングをしていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

【谷合企画官】 まず、資料の確認を兼ねてでございますが、議事次第の下に、資料1、委員名簿がございます。資料2は本日のヒアリングの出席者の名簿、資料3は前回第9回の主な発言。そして、資料4は新しい資料でございまして、本検討会議におけるヒアリングの考え方を整理しました。検討会議では、できるだけヒアリングを体系的に行っていく必要があると考えておりまして、事務局においてヒアリングの目的や考え方を整理したものでございます。

 1にございますように、昨年の実績といたしましては、大きく、(1)少人数学級の効果、(2)学級規模及び教職員配置の適正化に関する論点と考え方の二つの観点から、ごらんの方々からヒアリングを行ってきました。

 では、今年どう進めていくかということでございますが、幾つか念頭に置かねばならないことがございます。2にございますように、例えば、昨年末の予算編成における政府・与党会議におきましては、学力等への政策効果を全国レベルで検証、あるいは地方での進展や公務員人件費改革を十分踏まえるといった指摘がございました。財務省との合意でも、同様の内容が盛り込まれております。

 これらを念頭に置きながら、次のページにございますように、ヒアリングにおける観点を三つ整理してございます。観点1として、少人数学級等に係る教職員配置について、学力のみならず、基本的な生活態度、学習意欲等を含め、様々な観点からの効果検証、観点2として、少人数学級等の地方での進展状況、学校教育の状況の把握、観点3として、公務員人件費抑制が求められる財政状況下での計画的な定数改善でございます。

 事務局ではこれらの観点に沿って今後のヒアリングを進めていきたいと考えておりまして、当面、本日及び次回の検討会議では、下記の方々にお越しいただく予定としております。本日は、この後、堀内孜先生、そして、静岡県及び長崎県教育委員会に御発表をお願いしてございます。さらに次回、4月10日を予定してございますが、国立教育政策研究所、そして三重県教育委員会から御発表いただくことを予定しております。

 資料5、6、7が、本日お越しいただいております方からの発表資料でございます。

 資料8と9を御説明したいと思います。資料8でございますけれども、去る3月23日、政府の国家公務員制度改革推進本部及び行政改革実行本部におきまして、「国家公務員の雇用と年金の接続に関する基本方針」が決定されました。今後、この方針に基づいて、仮に法案が成立し、さらに地方公務員についても同様の措置がなされるとすれば、地方公務員たる教職員にも同様の内容が適用され、教員の配置や新規採用に影響が生じるといったことになりますので、概略を御説明したいと思います。資料8の最後のページ、5ページに概要が添付されてございますので、ごらんいただきたいと思います。

 まず、1のマル1に書いてございますように、定年退職する職員がフルタイム再任用を希望する場合、当該職員の任命権者は、定年退職日の翌日、フルタイム勤務を要する官職に当該職員を採用するものとする。そして、マル3にございますように、マル1の再任用期間は、退職共済年金の支給開始年齢に従って段階的に延長するものとする、としてございます。これはいわば国に再任用を義務づけるといったものでございまして、基本的には、職員が希望すれば、年金支給開始までの期間については雇用が確保されるということになるわけでございます。

 このほか、2のマル1にございますように、組織活力の維持等の観点から、局長、部長、課長等の一定の役職については、再任用を希望する場合、他の官職で再任用することについて検討することなども記載されておりますけれども、こういった点についても教職員についてどのように考えるかといったことが、今後検討が必要になってくると考えてございます。

 なお、仮にこのような形で再任用が行われていくとどのような問題が生じるかということでございますが、3の60歳超職員の追加的増加への対応にございますように、希望する職員を再任用することによりまして、3年に一度、60歳を超える職員が公務部内に追加的に留まる、すなわち、3年に一度、基本的には退職者が出ない年が生じるということになります。最初に到来するのは平成25年度末、すなわち平成26年3月末ということになります。この再任用制度が地方公務員にも適用されることとなれば、各都道府県におきましては、あらかじめ再任用を見込んだ計画的な採用計画あるいは人事配置計画を立てることが必須になります。したがって、文部科学省においても、情報収集に努めるとともに、適時に各都道府県に情報提供をしてまいりたいと考えております。

 なお、4にございますように、再任用された職員の給与の在り方については別途検討するとされておりまして、これについても、義務教育費国庫負担金の算定に影響を与える可能性もございますので、注視をしていきたいと考えております。

 続きまして、最後に資料9でございますけれども、一般職の国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律が本年2月29日に成立をいたしました。本法律によりまして、人事院勧告に係る給与改定を実施した上で、平成26年3月末まで資料のとおり役職段階別の減額率によりまして給与の減額措置を実施することとなりました。教育公務員を含めた地方公務員の給与につきましては、同法の附則によりまして、「地方公務員法及びこの法律の趣旨を踏まえ、地方公共団体において自主的かつ適切に対応されるものとする」と規定をされております。その旨は、次のページの総務副大臣通知により、各地方公共団体に周知されています。したがって、今回の法律は国家公務員に係る法律でございますが、今後、地方への波及というものが一つ重要になってくるということでございます。

 なお、義務教育費国庫負担金の取り扱いについては、現状では何も決まっていない状態でございまして、文部科学省としては、今後、政府全体の地方公務員給与の取り扱いの検討を踏まえて対処すべき問題であると考えてございます。

 以上で資料の確認と説明とさせていただきます。

【木村主査】  ありがとうございました。

 ただいまの説明に対しまして、何か御質問ございますでしょうか。どうぞ、土居委員。

【土居委員】  御説明、ありがとうございました。特に、資料8の「国家公務員の雇用と年金の接続に関する基本方針」に関連したところで、質問をさせていただきたいと思います。

 文部科学省で平成22年8月に「新・公立義務教育諸学校教職員定数改善計画(案)」を立てて、これがこの検討会でも軸になっているわけですが、その際にいわゆる自然減で教員の方が退職されるということを見込んでおられると思うのですが、これに対する影響ないしは計画をさらに見直すというようなことになるものなのか、どうなのかというところの、影響についてお伺いしたいと思います。

【木村主査】  いかがでしょうか。

【谷合企画官】  御指摘のように、平成22年の時点の計画は、その時点での自然減ということで算定をしておりますので、再任用は加味していなかった状態です。したがって、今後、仮に新たな計画的改善を考えるという場面になれば、こういった再任用の状況なども加味して、若干の修正が必要になる可能性はあると思っております。

【伯井課長】  自然減は児童生徒数の減少に伴って教職員定数が学級数に応じて減っていくというもので、直接的には定数そのものの話でございますので、したがいまして、それが減っていくということなので、この、定年がどうなるか、再任用をどうするかということとは直接的には関係しません。というのは、これは決まった定数の中で再任用雇用者をどうやって位置づけるかということになりますので。ただ、その当時考えておりました、教職員の新陳代謝による、若返りによる給与減を財源と見込んで定数改善していこうという、そこには大きな影響がございますし、また、教職員の計画的採用ということについては、3年に一度、退職者数が大きく変わってきますので、各都道府県における人事政策に大きな影響を与えるというので、我々は今後、計画的な採用人事ということを考えるに当たって念頭に置かなきゃならないなということでございます。

 ちなみに、22年の定数改善計画(案)は今説明いたしましたように政府としては残念ながら合意に至っておりませんので、ある意味、こういった所与の条件を踏まえながら計画的改善をどうやってしていくかというのは、今まさに考えていかなきゃならないということでございます。

【木村主査】  ありがとうございました。

 それでは、最初のヒアリングを開始したいと思います。堀内先生は、兵庫教育大学の教授でいらっしゃいまして、少人数学級等における教員の職務実態調査、あるいは保護者の満足度等について、お調べになっております。本日はそういう観点からの御発表です。

【堀内氏】  失礼いたします。兵庫教育大学の堀内と申します。お手元に、先ほど資料確認いただきましたように、資料5という形で1枚のレジュメと大学の紀要の抜き刷りを配付いただいております。

 実は、今回ここでお話をさせていただきたいというのは、前にいらっしゃる小川先生が長で、5、6年前でしょうか、当時、財務課の委託研究でしたでしょうか、定数改善に向けて少人数教育の効果を測定するというプロジェクトがございまして、その一部を私も担当させていただきました成果が、お配りしました資料でございます。そのときは、学校経営における少人数教育の効果といいましょうか、問題点という課題が私にいただいたテーマでございまして、そのまま答えが出たかどうかはちょっとわかりませんけれども、従来、学力効果というところを中心に少人数教育というのは考えられてきたと思いますが、少し違う角度から検討をしてみたいということで調査を行いました。今日は、その枠の中で、これまでのここの会議の御論議とちょっと違う方向になるかもわかりませんけれども、それなりの問題提起をさせていただければと思っております。

 タイトルとしまして、「費用対効果」という言葉をあえて使いました。これは、文科省関係に限らない、教員関係に限らないと思いますけれども、公務員の問題というのは常に、どうしても員数的な数値が先に来ます。要するに、定員が何人で、何人増やすのか、削減するのかと。それはもちろん公務員という性格上必要だと思いますけれども、やはりそれ以上に、それによってお金が幾ら増えるのか、減るのかというところが、実際上の意味合いを持つのではなかろうかと。このことにつきましては、やはり教員についても同じ側面を持っている。意外とこういったことが、教育行政関係、さらには学校の現場に通底していない。例えて言いますと、校長先生にあなたの学校の人件費は幾らでしょうと聞いて、答えられる校長は多分一人もいないんのではないかと思います。もう当たり前に、何人という頭でしか考えられていらっしゃらない。

 調査そのものは今言いました枠の中で二つ行いました。すなわち少人数学級の効果。これは25人以下学級と35人以上学級というものを抽出いたしまして、この検討会議の委員の門川さんが教育長だったときに、調査をいたしました。それは、京都市さんが長年、学力調査を独自にやっていらっしゃいまして、公表はされてなかったのですけれども、部内のデータとしてどの学校がどの学力水準にあるかというのをかなり正確に把握されていらっしゃるということで、こちらは別にそれを見せていただくわけじゃありませんが、そこから全く同程度の学力水準の学校ということで抽出をお願いいたしました。これは小学校4年生です。

 もう一つは小学校1年生を対象とした調査でございまして、小学校1年生と小学校2年の9月まで、いわゆる加配で複数学級担任制を敷いておりました。それら31人以上の小1、小2の学級に、当時は26時間だったと思いますけれども、非常勤の講師を1人加配すると。逆に言いますと30人以下にはこれを入れていないということでございましたので、ぎりぎり31人の学級と30人の学級、すなわち一人の差しかありませんので、学級の員数の差はないと。逆に、そのことによって一人と二人の学級担任ということの効果はどれだけあるのかということを調査いたしました。具体的には、参与観察、私も参加しましたし、何人か御協力いただきまして、あとは、当時、私は京都教育大学にいたのですけれども、大学院生を中心に、ビデオを持たせまして、その学級の先生の行動を2日間ずっと観察をいたしました。それから、終わってからこの先生方にインタビューをさせていただく。さらに、期間中に児童と保護者に質問紙調査をするという、3種の調査をあわせて行いました。

 その結果につきましては、お手元の資料にまとめてございますので、お目通しいただきたいと思います。最終的には(2)のほうの、すなわち複数担任学級についてまとめたほうですが、それの96ページ以下の2~3ページを見ていただき、あわせまして、(1)のほうは78ページ以降、(2)のほうは94ページ以降に、一応この二つの調査のまとめをさせていただいております。どのような効果が認められたかということでございます。

 結果を先に申しますと、少人数学級の効果はほとんど認められませんでした。もちろん学力調査をいたしておりません。来週ですか、国研の山森さんたちがそちらを担当しましたが、全体の報告会の中でも、正直言いましてはっきりした効果は測定できなかったということで小川先生の全体の研究は終わったように記憶しております。私どもも、学力調査はいたしませんでしたけれども、児童や保護者の認識――満足度ですね。こういったことを質問紙を通しまして聞いたのですが、これは当初の予想に反しまして、測定できなかったというよりも、むしろ逆のことが測定できました。どういうことかといいますと、多人数、35人以上の学級のほうが、保護者や子どもは満足度が高い。要するに、学校生活に満足をしているということが出ました。標本数がそれほど多くありませんのであまり断定的なことは言いたくはないですけれども、明らかな傾向としてそういったことが出たことは間違いございません。それについていろいろ分析をしたのですけれども、幾つかの点が多分想定できただろうと思います。すなわち、少人数であるということは、教師の目が行き届きます。そのことによって、子どもたちは少し窮屈度を感じているということがあったように思います。

 もう一つは、これは教師のインタビューで我々もある意味では気がついたところでございますけれども、先ほど言いましたように、学力水準とともに、担任の教師のキャリアというものもほぼ同じ人たちをお願いいたしました。年齢的には40代半ばのベテランの先生ということです。彼ら・彼女たちに調査の後に集まっていただきましてインタビューをしたのですけれども、要するに、20年前後のキャリアをお持ちの先生方にとりまして、10人程度の子どもの差というものは、指導上それほど問題ではないということです。確かに、しんどさはあります。特に、5、6年前でしたけれども、いわゆる学力論争が大変沸騰していまして、どこの学校に行きましても必ず、朝に小テストをしたり、そんなことをやっておりました。あるいは、家庭との連携が大変問題となっておりまして、いわゆる家庭との連絡帳でしょうか、こういったものを先生が必ずその日のうちにチェックをして返さなきゃいけないと。私も幾つかの学校を回ったのですけれども、本当に忙しい生活を先生方は送っていらっしゃるということに気がつきました。ですから、そういった意味で、25人と35人、10人少ないということは、その10人分の手間が省けるということはありますが、具体的に授業の指導そのものについて、一言で言いますと、ベテランの先生にとりまして、25人ならば25人なりの指導法を考えるし、35人ならば35人なりの方法でやるということです。意外と、学力の問題でもこの辺が論議されてこなかったのではなかろうか。教師の力量と、いわゆる子どもの人数の問題です。ですから、今言ったことが、初任者、若い教師にそのまま当てはまるとは思っていません。むしろ逆に若い先生はその10人の差というのは大変大きいだろうと思いますけれども、今言いましたように、ベテランの先生方にとりましてはそれほど大きな問題ではないということでした。

 もう一つの複数担任のほうでございますけれども、これは明らかにその効果が表れたと思っております。さっき言いました質問紙についても明確に、二人配置のほうが子どもも保護者も満足度が高いということが出ました。それから、我々が幾多の学校を回りましてわかることは、教室の整然さが全く違います。二人いらっしゃいますと、本当に整然としていて、展示物も外れていない、教室もごみが落ちていない。ところが、一人の担任、これは1年生ですから、机は曲がったまま、ゆがんだまま、ごみは散らばっているということは、歴然としてわかりました。

 このようなことで、調査そのものについては、結果的に少人数学級ということについて費用対効果は確かめにくいと。それに対しまして複数配置というものは、小学校の低学年について言いますと、かなり効果が測定できたということでございます。今回、費用対効果ということをあえてうたいましたのは、この調査をまとめたときにその観点でまとめたこともありますけれども、2番目のほうに少し数字を入れました。単純に言いますと、少人数学級で本務教員を増やすというときの、当時のお金で913万円平均ということです。これに対しまして複数担任の場合は、週28時間の非常勤講師でございます。したがいまして、年齢、キャリア、関係ありません。時間給で配置しておりますので、お一人187万円ということです。意地悪く言いますと、複数担任に対しまして少人数学級の場合は5倍の効果が測定できるかどうかと。もしこれがなければ、費用対効果の面から著しく問題あるのではなかろうかということです。

 私も6次と7次の改善にちょっとかかわらせていただきましたが、例えば、7次のときに定数崩しという概念をつくりました。これは論議の中で多様な崩し方ということを論議させていただいたのですが、結果的には、例えば40時間の常勤の本務教員を20時間の非常勤2人に割るという、とんでもない答えになってしまいました。とんでもないと言うとちょっと言葉が過ぎるのですけれども、例えば校長先生に、あなたのところ、本務教員を一人外して、20時間の非常勤を二人にしたらどうでしょうかと。だれもこれは喜びません。だれもしないはずです。ところが、今言いましたように、40時間の本務教員を一人外すかわりに28時間の講師を五人入れるけれども、どうかと、こういう持ちかけ方をしたときに、校長先生は考えるだろうと思います。さらに、7次のときには、それは教員に限らず事務職員や養護教諭等々、多様な職務を含めて崩したらどうかという論議をさせていただいたのを記憶しております。そうした場合に学校の改善というのは多分図れるだろうと思っております。

 今まで少人数教育と言った場合に、例えば少人数学級と、それによって学力がどれだけ上がったのかという論点で多分来ただろうと思います。私個人も、40人よりも30人、30人よりも25人、ここから下はちょっと問題でしょうけれども、少ないほうがいいだろうと思います。それは、今の学校、あるいは教員というものが多忙をきわめている。少しでも学級規模が小さくなれば、教員の負担が少なくなって、いい教育ができるだろうと。これは常識論で、私はいいだろうと思っております。けれども、それを学力効果という形で論議をしますと多分詰め切らないのではなかろうかと思います。

 これに対しまして、複数配置の問題ということを考えた場合に、多面的な効果ということが期待できるのではなかろうか。たまたま先ほど再雇用の問題が出されたのですけれども、これから、多分、学校の問題としては深刻になってこざるを得ない。これを考えたときに、実際に、今言いました非常勤28時間とか30時間未満という形を考えた場合に、非正規教員を増やすことはとんでもないという御意見があります。私も、それについては、そうだろうと思います。ただし、増やす分についてです。減らして非常勤を配置していくということではなくて、上乗せ分についてはもっと多様に考えるべきだろうと、こう思います。特に小学校の場合にかなり、50歳を過ぎまして途中退職が増えております。特に女性教員ですね。今、手元にデータがありませんが、かなりの数が60歳以前に退職をしております。小学校の教員、労働としては大変きついものがあります。したがいまして、フルタイム40時間は大変しんどいという形の早期退職があります。これにさらに、60歳以上の再雇用がかかわってくると。どういう形で対応するのかという観点を考えたときに、今言いましたように短期雇用でできるだけ効率的、なおかつ費用対効果の高い方式というものがあっていい。これは今ここで検討されています少人数教育ということのある意味では一つの在り方として御検討いただいていいのではなかろうかと考えています。

 そのときに、ぜひとも御検討いただきたいのは、従来、少人数教育の在り方としまして、少人数学級やTTの加配等々があったと思います。一応、文科省のほうはそういう言い方をほとんどされていませんけれども、これが府県の教育委員会に行き、さらに市町村の教育委員会におりていきますと、大変使い勝手の悪いものになっていきます。府県の教育委員会さんのほうではそれほど縛っていませんとおっしゃるのですが、実際に学校現場におりますと、この人は何時間の何の教科の何年生と、これしかだめですというような理解で実際には位置づいているんじゃなかろうかと思います。今、二つの調査と言いましたけれども、実際に各学校の学級の実態というのは多様です。人数だけの問題ではありません。例えば、そこに一人、特別な支援を必要とする子どもがいるか、いないか。あわせまして、先生の力量がこれにかかわってまいります。新任の教員と、20年、30年のベテランでは、全く当たり前に指導力は違います。小学校についてですが、こういったものをいかに組み合わせて学級担任を決め、学級経営まで考えていったらいいのかと、これが管理職の大変頭の痛いところだろうと思います。すなわち、このような加配も含めてさまざまな形の教員の配置を考えたときに、学校裁量ということをもっと大胆に進めないと、文字どおり費用対効果が減じてしまうということでございます。教育委員会からすると、それほど任せられる校長はいないとおっしゃるかもわかりませんけれども、その点も含めてもっともっと学校の自主性というものを高めていきませんと、このような観点からの費用対効果を高めることは大変難しいのではなかろうかと思っております。

 早口で恐縮でございます。以上でございます。

【木村主査】  ありがとうございました。

 大変要領よくおまとめいただきましたが、いかがでございましょうか。なかなか大きな問題を提起していただいたと思いますが、御質問等、あるいは御意見でも結構ですが、いかがでございましょうか。

【藤崎委員】  質問ですが、この論文で学級経営をごらんになった先生方というのは、学級経営力、生徒指導力など、かなりうまい先生であられたのか、気になりました。というのは、例えば、年齢、キャリアが似たようであっても、子どもから好かれているか、あるいは学級の雰囲気が非常によいかどうかなどがあると思うのですけれども、教師のランクづけというのは非常に難しいのはわかっておりますが、先生はどのようにお感じになられた先生方だったでしょうか。

【堀内氏】  先ほど言いましたように学級を選ぶのは教育委員会にお願いしたのですが、そのときに、学校そのものの学力水準と、抽出します学級担任の先生について、「同じレベルの」という言い方でお願いいたしました。そのときのチームに京都市の学校指導部長の先生も加わっていただいていましたので、調査全体の趣旨等はかなり徹底していただいたのではないかと思っています。そういった観点で、結果的に言いますと、私もすべての学校を回りましたが、先生がおっしゃるように、これは雰囲気ということしか言えませんけれども、実際の授業の仕方等々を見まして、若干、こっちの先生のほうがちょっとうまいみたいのはありましたが、それほど大きな隔たりはない先生方を選んでいただいたのではないかと理解しております。

【藤崎委員】  平均的な先生というふうに考えてもよろしいのでしょうか。それとも、かなり指導力のすぐれた先生方だったのでしょうか。

【堀内氏】  年齢相応ではあるということと、いわば問題視されている方は少なくとも入っていなかったということは間違いないと思います。

【藤崎委員】  ありがとうございます。

【木村主査】  ほかにございませんでしょうか。 この種の調査は初めてですか。

【堀内氏】  多分といいましょうか、少人数教育という言い方では初めてだと思います。来週ですかね、かなり大がかりな学力調査も、同じチームといいましょうか、小川先生のもとでやったのですけれども、多分、これは小川先生のアイデアだと思います。あのとき、四つのチームに分けまして、学力調査をするチームと、外国の制度を調べるチーム、それから、私どもの、学校経営と称していますけれども、主に教員の勤務状態について調べるチームと、それから外国の文献を調べるチームという、4班編成でこの全体のプロジェクトは進んだんです。学校経営と言われまして、ちょっと戸惑うのは正直ございました。この調査はなかなか難しいわけです。一応、学校経営という課題をいただいたのですけれども、そのままこの問題が学校経営とどう結びついているかということには多分ならなかっただろうと思います。その一つ手前の、教員の勤務の問題というところで調査の焦点をつくったということでございます。

【木村主査】  よろしゅうございますか。

 それでは、どうもありがとうございました。

 次へ参りたいと存じます。次は、静岡県教育委員会からのプレゼンテーションでございます。本日は、静岡県教育委員会の学校人事課人事監兼課長補佐の渡邉聡様並びに学校人事課首席人事管理主事の市川克明様、さらに学校人事課人事管理主事の西山義則様の3人にお越しいただいております。

 それでは、おそれいりますが、20分程度でお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

【渡邉氏】  それでは、失礼いたします。静岡県教育委員会学校人事課人事監の渡邉でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、私のほうから、静岡県の少人数学級編制の推進、その成果と課題について、説明をさせていただきます。

 初めに、事業の概要ですけれども、「住んでよし 訪れてよし」「生んでよし 育ててよし」「学んでよし 働いてよし」、これは静岡県が目指す県の理想の姿です。この理想郷の実現のためには、人づくりを抜きに語ることはできません。そこで、本県では、個人として自立し、人とのかかわり合いを大切にしながら、よりよい社会づくりに参画し、行動する人を「有徳の人」と称し、この「有徳の人」の育成を教育の基本目標としております。

 そして、教育委員会として、スライドにありますように、「有徳の人」をはぐくむために、生涯学習社会の基盤づくり、ライフステージに応じた学び、家庭、学校、地域、職場の連携、文化・スポーツの振興、そして社会の変化に対応する学びの推進の五つの柱を設定し、目指す教育の方向を示しました。これから説明させていただきます少人数学級の推進も、この「有徳の人」づくりを意識したものとなっております。

 本県におけるこれまでの少人数学級の推進について、説明をさせていただきます。

 静岡県が少人数学級を初めて導入したのは、平成16年のことです。この当時、中学校1年生の不登校やいじめの発生件数の急増、いわゆる中1ギャップが喫緊の課題でしたので、この中1ギャップの解消の方策として35人学級編制を中学校1年生に導入いたしました。導入に際しては、適正な学級規模について、平成15年度に各学校長にアンケート調査を実施しました。これによりますと、公立小中学校のおよそ77%の校長が、25人から30人の学級規模を適正というふうに考えておりました。このアンケート結果のほか、個への対応、集団と個のかかわり合いのバランスを勘案し、25人から30人程度の学級規模が適正と考え、35人学級編制の導入を決定したところであります。また、学校の実情に応じ、校長の判断で40人学級編制を選択することも可能といたしました。

 平成20年度、静岡県の教育を考える有識者会議であります理想の学校教育具現化委員会が設定されて、さまざまな提言がなされました。その一つに、少人数学級というものがありました。この提言を受けて、静岡式35人学級編制を定めました。なお、財源といたしましては、指導方法工夫改善加配を活用しております。

 この静岡式35人学級編制について、説明します。主な特徴は3つあります。一つは35人学級編制を1年ごとに段階的に拡充していくということ、二つ目は学校の実情に応じて学級編制を選択できること、三つ目は学級編制の下限を設けたということであります。

 まず、一つ目の1年ごとに段階的に対象学年を拡充していくことについてですけれども、静岡県では、知事のマニフェストを受けて、平成25年度までにすべての学年で少人数学級を実施する計画を策定しています。既に実施していた中学校1年生を中心に、中学校は2年生、3年生へと、小学校は、中学校との円滑な連携を重視して、6年生から順に学年を下げていくという計画をいたしました。段階的に実施する理由として、懸念される教室の不足に対応するために見通しを持って新設や転用を図ることができるようにすること、子どもの実態や成果・課題を見きわめながら拡充を図ることができることなどが挙げられます。当初、本県としては、40人学級のまま非常勤講師を配置する計画であった小学校1・2年生で国段階で35人学級編制が実施されてきましたので、今年度は小学校3年生を除いた小中8学年で35人学級編制が実施をされているということになります。

 二つ目の学級編制の選択ができるということについて、説明いたします。表に、平成22年度、23年度の該当校の選択状況を示してございます。22年度、23年度とも、中学校で約90%の学校が35人学級編制を選択しております。小学校では、22年度、導入に慎重な学校があったということでしょうか、84%でしたけれども、少人数学級への理解が深まったことで、23年度は90%近くに増えております。35人学級編制を導入しない学校からの報告では、理由として、教室の不足、学年縦割りの活動を重視して各学年の学級数を統一したいということ、あるいは、少人数学級ではなく、ティームティーチングや習熟度別編制指導で学力の定着を図りたいなどの理由が上がってきております。

 特徴の三つ目、学級編制の下限を設けているということですけれども、この検討会でも話題となっていると思いますが、小中学校では学級を基盤としたさまざまな活動を通して児童生徒同士や教員との信頼関係を深め、学習指導と生活指導の両面にわたって高い教育効果を上げてきております。特に、人と人とのかかわり合い、中でも子ども同士のかかわり合いを重視した活動を意図的に設けていくということが重要だと思います。この点を重視しますと、学級規模が小さ過ぎることで、学習活動、学級運営などに支障が出ることが予想されます。そこで、静岡式35人学級編制では、学級編制の下限を25人といたしました。例えば、37人の学年では、通常の35人学級編制では2学級(18人と19人)となりますけれども、静岡式の場合は1学級のままということになります。74人の学年でありますと、3学級となるところですが、静岡式では2学級となります。したがいまして、静岡式35人学級編制の対象となるのは、1学年75人以上の学校ということになります。

 次に、静岡式35人学級編制の成果について、説明をさせていただきます。

 まず、平成23年度の児童生徒数をもとに本県の学級編制の実態について、説明をさせていただきます。本県では、40人編制の場合、小学校では総学級数の約27%が、中学校では約49%が、36人以上在籍する学級となります。これが、静岡式35人学級編制によって、特に小学校で26人から30人規模の学級が大幅に増加します。本県にとっては、少人数学級導入の意義は大きいと言えると思います。

 では、生徒指導面の成果について触れたいと思います。全児童生徒のうち、30日以上の欠席者が占める割合を示しました。小学校では、平成21年度から22年度にかけて、0.4%から0.41%と、わずかに増えております。しかし、平成16年度から少しずつ増加してきておりましたので、改善の傾向はあらわれているかなと思っています。中学校は、静岡式35人学級編制導入後の22年度から、3%が2.86%に減少しています。残念ながら大きく改善したとは言いがたい結果ですけれども、少なくとも増加に歯どめをかけているということは言えると思っております。

 その他の結果について、アンケート調査の結果をもとに説明をさせていただきたいと思います。先ほどの堀内先生の御発表の中のデータと随分違うところもあるなと思いながら伺わせていただきましたけれども、私どものアンケートについては、県内のすべての学校778校、あるいは35人学級の対象校を対象にしてとった調査の結果ということになります。

 少人数学級の導入によって児童の意識にどのような変容があったのかということですけれども、2年間の追跡調査を行っております。小学校5年生で36人以上の学級に在籍していたときと、1年後、小学校6年生で35人以下の学級に在籍したときの意識の違いをまとめたものが、このグラフです。「授業の内容がよく分かる」の問いに対して、特に国語において、6年生で肯定的な回答が増えております。その背景には、教師の目がより行き届き、きめ細かな指導が可能になっていることが挙げられます。それは、「先生は丁寧に教えてくれる」の問いに対して、肯定的な回答が増えていることにあらわれております。その結果、授業が楽しいと感じている児童が増えています。6年生になって学習の難度が高くなっていることを考えると、成果があらわれていると言えます。なお、「学級の雰囲気はよいと思う」の問いに対しても肯定的な回答が増加していますので、子どもたちの精神的な安定が学習面にもよい影響を及ぼしていると考えられます。

 続いて、教職員はどのように感じているのか、説明をいたします。

 まず、校長へのアンケートでは、子どもたちの授業への取り組みが変わったととらえていることがわかります。また、教員も授業改善に取り組んでいるととらえていることがわかります。教育委員会としても、学校訪問の際等には、言語活動や、より価値のある体験活動を取り入れるなど、少人数学級を踏まえた授業改善に取り組むことをお願いしてきました。この点が浸透してきていると考えております。

 続いて、学級担任へのアンケート結果です。学級担任は、少人数学級の成果として、きめ細かな指導が可能になった点や、事務処理の時間が短縮され、子どもとかかわる時間が増えたこと、教室内のスペースに余裕ができ、環境が整ったことを挙げています。

 次に、保護者へのアンケート結果です。小中学校の保護者ともに、静岡式35人学級編制を肯定的にとらえております。具体的な成果として、教室にゆとりがあり、落ちついた雰囲気の中で生活できる、細かい指導・支援が受けられる、教師と子どものコミュニケーションがとりやすくなることを挙げています。

 一方、静岡式35人学級編制に否定的な意見もないわけではありません。その理由としては、40人が35人になってもあまり変わらないのではないか、あるいは、人数が減ることで学級合唱や行事の取り組みに迫力がなくなったなどの意見が挙げられています。子どもたちの変容をもとに、少人数学級の良さを学校から保護者・地域に発信していくことが大切であると考えております。

 成果について説明をしてまいりましたけれども、静岡式35人学級編制の課題も明らかになってきました。本日は、課題として2点を申し上げたいと思います。一つは静岡式ですと学級編制の下限を設けている点、もう一つは指導方法工夫改善加配の活用により少人数学級を実施している点です。

 まず、下限を設けている点ですが、現在、小学校では、1・2年生の下限を設けない35人学級編制、4年生以上の下限を設けた35人学級編制が混在をしております。そこで、小学校の校長を中心に、下限の規定をなくしてほしいとの要望も寄せられています。特に、1学年が単学級の学校からの要望が強いです。ただし、中学校からは、小学校ほど強い要望は出ておりません。その理由として、発達段階によって学級の適正規模も変わってくるのではないかと考えております。その点について、中学生への意識調査の結果をもとに説明します。例えば、「どの授業も発言しやすいと思う」の問いに対して、中学校1年生では学級規模が小さいほど肯定的な回答が増えていますが、学年が進むに従って、大きな差はなくなっています。「全体的に授業が楽しいと思う」の問いに対しても、同様の結果が出ています。発達段階によって生徒の意識が変わってくることがうかがえます。この点を考慮すると、学校の実情に応じて35人学級編制と40人学級編制を選択できる静岡式は有効であると考えます。

 次に、指導方法工夫改善加配を活用して少人数学級を実施していることについてですが、課題が2点挙がるかと思います。1点は、小学校における専科教員の減員です。一般的に指導方法工夫改善加配の配置は、専科教員の増員につながります。しかし、静岡式35人学級編制の導入により、この加配が学級担任に振りかえられますので、専科教員が減員をしてしまいます。専科教員は、学級担任を支えたり、広い視野で児童を指導したり、学校運営上欠かすことができない存在であります。専科教員の減員による学校運営の困難性も、校長から報告されております。

 2点目は、ティームティーチングや習熟度別編制による指導ができなくなった学校があるということです。少人数指導の研究が進んでいる学校では、発達段階や子どもの実態によりティームティーチングや習熟度別編制を使い分け、学力の定着を図ってきましたが、静岡式35人学級編制の拡充により、一部の学校で実施できなくなっております。これを指導方法工夫改善加配を振りかえて実施する静岡式35人学級編制のマイナス面と指摘する校長もおりました。この点については教育委員会としても課題としてとらえていますが、今のところ平成25年度までにすべての学年で35人学級編制ができるように計画を進めるつもりです。その上で、学校の実情に応じて少人数学級か少人数指導かを選択できるようにしたいと考えております。

 以上で説明を終わりたいと思いますが、1学級の少人数化が歓迎されている一方、専科教員の存在価値も大きいと感じます。したがいまして、私どもがお願いしたいことは、加配定数を減ずることなく学校の実情に応じて少人数学級編制が実施され、喫緊の課題に対応できるようにしていただきたいということになります。どうかよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。

【木村主査】  どうもありがとうございました。

 いかがでございましょうか。ただいまのプレゼンテーションに対して御質問ございましたら、お願いします。どうぞ、長南委員。

【長南委員】  25人を下回る学級編制をしないというふうになっていますけれども、25人以下の学級はないのですか。

【渡邉氏】  25人以下になるような場合には35人学級編制を行わないということですので、ないといいますか、ごく小規模校等ではもちろんそれはたくさん……。

【長南委員】  あるでしょうね。大体何%ぐらいなのでしょうかね、35人学級が該当になる学校数というのは。

【渡邉氏】  平成23年度の数でいきますと、要するに、1学年が36人から40人、それから71人から74人のところが、一般の35人学級編制ですと学級数が増えるのですけれども、静岡式だと増えないということになりますが、その学級にちょうど当たるのは、小学校5年生が31校、小学校6年生が32校ございました。ですので、単純な35人学級編制ですとその5年生31校と6年生32校も35人学級編制で学級数が増えていたということになりますが、その程度の違いがございました。

【長南委員】  25人という数字の基準は何なのでしょうね。

【渡邉氏】  一つの根拠は、先ほどちょっとお示しをしました校長にアンケートをとったときに、あの場合は切れどころが、26人以上30人以下、31人から35人というくくりでしたけれども、そこの部分が適正であると考える校長が非常に多かったというところが、一つのよりどころになっております。

【長南委員】  わかりました。

【木村主査】  ありがとうございました。ほかに。どうぞ、中川委員。

【中川委員】  少人数学級にするために指導方法工夫改善の教員を利用しておられるということですけれども、100%、指導方法工夫改善ですか。

【渡邉氏】  静岡式に回しているものはすべて、指導方法工夫改善加配を充てているということです。

【中川委員】  私、鳥取県なのですけれども、私の県では、指導方法工夫改善を少人数学級に回してもいいという文科省の指導があってから何人か回したのですが、学校現場からは大ブーイングでした。一切これには手をつけてくれるなと。実際に、小学校の専科ができないとか、あるいは習熟度別指導ができないとかというようなことで、絶対これには手をつけるなというようなことで県教委に対して非常に厳しい突き上げがあったり、もちろん各地教委も厳しい突き上げで、これには手をつけないようにして、今は少人数学級にするために県と市の財源半々でやっているんですが、現場の声は起きないのかなあと、ちょっと不思議に思うのですけれども。

【渡邉氏】  先ほど課題の中でも触れさせていただきましたけれども、やはり現場サイドからいきますと、静岡式35人学級編制を行うことによって、指導方法工夫改善の加配が削られてしまうというのですかね。学校現場から言いますと、今までついていたものがはがされてしまうということが現実に起こっておりまして、そういう意味では現場からつらいという声は上がっておりますけれども、全体の流れとしては先ほどお示ししましたように少人数学級編制は歓迎されている中ですので、ある意味その板挟みの状態ではあるのですが、そういう状況です。そういう御意見は確かにございました、静岡県でも。

【木村主査】  ほかにございませんか。

 それでは、ございませんようですので、これで終わりにしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

【渡邉氏】  ありがとうございました。

【木村主査】  それでは、最後になりますが、長崎県教育委員会からお願いしたいと存じます。本日は、義務教育課人事管理監、長谷川哲朗様にお越しいただいております。どうぞお願いいたします。

【長谷川氏】  それでは、失礼いたします。長崎県の長谷川と申します。右肩に資料7と番号が振ってある冊子を用いて、本県における少人数学級と少人数指導の取り組み状況について、説明をさせていただきたいと思います。

 資料の中身に入る前でございますが、本県は、市町村合併によって、80近くあった市町村が21市町になっております。それとほぼ時期を同じくして、地方機関である六つの教育事務所を平成18年度末に廃止をいたしました。その後は、県教委の本庁と各市町教育委員会との直接的な連携、あるいは直接的な協力関係によって、それを基盤にして教育行政を行っているところであります。

 また、人事行政に関して特徴的なこととしては、本県は離島・半島部を多く抱える県でございますので、昭和52年度から、全県的な教育水準の維持向上と教育の機会均等を図るため、広域交流人事を実施いたしております。すべての教職員が必ず離島部の勤務を経験するというルールをつくって、現在運用しているところでございます。しかしながら、この数年来、特にしま部において学校の小規模化あるいは統廃合が進み、広域交流人事にもいささか停滞が生じている現状でございます。すなわち、離島勤務の該当勤務年数等になっても、なかなか離島にあきがないと、定数があかないという状況が生じているという状況でございます。また、この小規模化等によって、県全体の教職員定数も大きく減少している傾向にございます。あわせまして、教員の年齢構成にやや偏りがある状況で、当分の間、退職者が非常に少ない状況が続いております。したがって、小中学校ともに新規の採用者がここ数年極めて少ないという状況でございます。他県と比べますと、特に大都市圏と比べますと、大量退職という状況はまだ至ってないという状況でございます。

 本題の少人数学級につきましては、平成18年度から、いわゆる指導方法工夫改善の加配定数、少人数加配を活用して、導入をいたしております。先ほど御質疑でもありましたが、本県においても県単独の予算措置はしておりません。すべて、いわゆる少人数加配を使って少人数学級を編制するという形をとっておるところでございます。

 資料の2ページをごらんください。今申し上げましたように本県の学級編制の基準は平成18年度から新たに定めておりますけれども、各学年、そのような基準で少人数学級を編制いたしております。なお、小学校の第2学年につきましては、1学年に続く形にしましたので、1年おくれで19年度からの実施というふうにいたしております。残りの学年は18年度から実施という形でございます。

 その2ページの表の「ねらい」というところに書いておりますけれども、本県の少人数学級編制においては、小1プロブレムとか中1ギャップ等、児童生徒の発達上の課題に対する対応、あるいは小中学校間の円滑な接続を図るという観点から、各学年の学級規模を検討したところでございます。その結果、表のとおりの形になっているわけですが、いわゆる30人・35人学級に当たって、静岡県教委様からも話がありましたけれども、本県の場合は、下限は設けておりません。小学校1年生が30人ですから、場合によっては16人と15人という2クラスの編制になることも想定されて、学級規模が小さくなり過ぎるのではないかという議論はいたしました。しかしながら、学習集団というのは弾力的に編制できる。また、小学校6年間を通して常に学年1クラス、いわゆる単学級で6年間を過ごすと、それは人間関係を固定することにつながって、一たん崩れた人間関係を修復したりすることは子どもの力では非常に困難であるというような問題点を懸念材料ととらえ、その結果、下限は設けない。すなわち、下限を設けないことで、いわゆるクラス替えが行われる可能性を高くしたということでございます。クラス替えについてはメリット・デメリットあろうかと思いますけれども、本県の場合は、この時点ではクラス替えの積極的な意義を認めて、クラス替えができる可能性を高めるために下限を設けなかったという状況でございます。

 次に、そのページの2番の本県の学級編制の実態というものをごらんください。県全体の数値を示しておりますけれども、特に(2)に記載をいたしておりますが、少人数学級の導入によって、23年度においては、小学校では92.4%――括弧書きの部分です。中学校では77%、これだけの学級が既に35人以下になっているという状況であります。

 続けて、(3)をごらんください。県全体の学校数とその割合を示しておりますけれども、特に本県の場合はしま部における教育状況を整備するというのが極めて大きな課題になりますので、都市部としま部に分けてその表を記載しておるところでございます。表の下に書いておりますが、都市部というのは、長崎市、佐世保市、諫早市、大村市、そして長崎市周辺の西彼杵郡を示しております。しま部としては、五島市、対馬市、壱岐市、新上五島町。これ以外にも小さなしま部はございますけれども、まずは大型離島でしま部という形でくくっております。表に示しておりますとおり、学校数については、小中学校ともに、長崎市、佐世保市等の都市部にほぼ50%の学校、それに対して、五島や壱岐、対馬のしま部には約20%、学校数としてはしま部に約20%ございます。残りの30%が、島原半島とか、平戸、松浦とか、そういうところにあるというふうに読み取っていただければと思います。

 本県の学級編制の基準に従って少人数学級編制を実施している学校は、小学校が360校のうち87校(24.2%)、中学校が178校のうち48校(27%)。いずれも小中ともにその7割から8割が都市部に集中し、しま部での実施は極めて少ない。それだけの児童生徒数がいないという状況でございます。学校数に占めるしま部の割合から比べると、少人数学級編制をしているしま部の学校は極めて少ないという実情になっております。

 あわせまして、一番右の欄になりますが、いわゆる少人数指導のための加配についても、一定の学級規模を持つ学校に優先的に配置をしておりますので、少人数学級ほどではないにしても、いささか都市部に偏るという傾向がございます。少人数学級編制を取り入れた段階で、表の右側の少人数指導のための加配をこの学級編制のほうに振りかえたわけでございます。その時点では、先ほど御指摘があったように、今まで少人数指導の加配を得ていた市町や学校からは、できるだけ加配をなくしてほしくないという意見が出されて、その意見は現在も続いているところでありますが、この少人数学級も定着をいたしておりまして、ほぼ全県的な少人数指導がなされている状況になっております。ただ、先ほど来申し上げているように、しま部においてはそのような学級規模を持つ学校が少のうございますので、なかなかこの加配の恩恵には恵まれないという状況になっているところでございます。

 続けて、3ページでございます。本県では、少人数学級を実施した学校は、研究指定校として毎年度その実施効果について、児童生徒、保護者及び教職員へのアンケートを実施いたしております。23年度は、135校を対象にして、実施をいたしました。表の見方、グラフの見方は、赤と青の折れ線を示しておりますが、青のほうが平成19年度、少人数学級の導入当初の数値、それから赤のほうが昨年度の数値で、肯定的な評価をパーセントで示しております。(1)が小学校第1学年の児童に対するアンケート、(2)が2年生の児童に対するアンケートであります。1番の「授業への集中」という項目がありますが、子どもに対しては、実際には「先生の話を静かによく聞いていますか」などの表現で、子どもにとってわかりやすく調査を行っているわけでございます。いずれも、小学校1年、2年、子どもなりの受けとめ方ではありますけれども、四つの項目、一定の高い評価が維持されているのではないかと思っております。導入前のデータを明確にとっておりませんので、導入によってどんな効果がという点はこれでは見えないわけですが、導入したことによって一定の高い評価が続いているということを読み取っていただければと思っております。特に、小学校の低学年でねらった、幼稚園や保育所との円滑な接続や、基本的な学習・生活習慣づくりに効果があらわれていると考え、小学校低学年で少人数学級を導入することの意義は大きいのではないかと考えております。

 この小学校低学年について関連して、4ページの(5)になりますが、小学校第1学年の保護者に対する評価を見ていただきたいと思います。評価項目については子どもに対する評価に加え保護者向けの評価を挙げておるわけですが、いずれも極めて高い数値の評価を受けていることがよくわかると思います。特に「先生の理解や指導」から始まる5から8の項目を見ると、少人数学級は、学校、特に学級担任と家庭、保護者との緊密な関係構築に効果を上げていると考えております。中身としては、少人数学級の実施によって少人数にふさわしい学級づくりや授業づくりの取り組みがそれぞれの学校でなされ、その結果が保護者にとっては、我が子の育ちや学びを実感することにつながっていると考えております。

 3ページの(3)、小学校第6学年児童の評価であります。低学年に比べまして全体の数値はやや低うございますが、少人数学級を導入後、徐々に青から赤の線へ効果が高まっているのではないかと考えております。定着しているのではないかと考えております。

 4ページの(4)、中学校の第1学年の生徒を対象にした評価であります。先ほど見ていただいた小学校6年生と同じ項目の評価でありますが、6年生ほどの効果は見られておりません。このことは、教科担任制の中学校に比べ、小学校のほうが学級担任とのかかわりが強く、学級担任による少人数のメリットを生かした学習指導や生徒指導の効果が小学校のほうでより即効的にあらわれているのではないかというふうに考えております。中学校1年生については、その数値に見られるように、少人数学級を導入してもなお、まだ、新しい環境への適応とか、学習内容の理解定着とか、教員との関係づくりに課題があるというふうにとらえております。中学校にふさわしい、教科担任制にふさわしい、効果的な少人数学級の生かし方について、課題意識を持って引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

 関連しまして、そのページの(6)の中学校第1学年の保護者につきましては、生徒の評価に比べて、保護者のほうは少人数学級についてその効果を認める数値が高くなっているという状況でございます。

 続いて、5ページ、(7)の教職員の評価であります。マル1、少人数学級のねらいに対する評価というところですが、この小学校1・2年生を見ていただければ、4点満点で3.9、3.7という非常に高い数値が出ております。表の中で、言葉がちょっと切れていて申しわけないんですが、「期待する児童生徒の状態」というふうに読んでいただきたいと思います。それをねらってこの少人数編制をしているわけですが、特に小学校低学年では、4点満点で非常に高い数値が出ているということでございます。小学校6年と中学校1年については、低学年ほどではないにしても、いずれも高い評価であると考えております。教職員にとっては、少人数学級の導入によって期待する効果が上がっていると考えております。

 その下のマル2につきましては、教職員評価の中で、少人数学級に係る評価のうち、点数の高いものを幾つか取り上げてみました。そこに掲げているような項目について、特に効果が認められているというところであります。特に、二つ目のマルの子供の発言や活動の機会がふえたというのは、子どもたちの評価では実感されてないのですが、教職員の評価にとっては非常に高い数値になっているという状況であります。

 5ページ中ほどの4番からは、少人数指導、チームティーチングとか習熟度別の指導に取り組んでいる学校の検証結果で、特に顕著なものを取り上げております。

 (1)小学校ですが、マル1は、少人数指導を導入する前後で青から赤に理解度が高まったという、顕著な例でございます。これは少人数指導の実施の前後であります。

 次のページのマル2につきましては、少人数指導、チームティーチングや習熟度別の学習集団に対する指導によって当年度内に効果が顕著にあらわれた例ということで、青から赤に理解度が高まったという状況であります。特に、3番目の知識・理解の向上に資するものが大きいと。いわゆる基礎的・基本的な部分に対する少人数指導の効果は大きいととらえております。

 マル3は、低学力の層のいわゆる底上げに効果があった事例ということで、1、2、3、4、左側のほうが度数の高いほうなのですが、赤を見ていただくと、右側が低くなって、左側が多くなっている。学力層が左側に動いているということを読み取っていただければと思っております。

 6ページから7ページ、中学校も書いておりますが、中学校についても同様の結果が出ているということを説明したいと思っております。

 7ページのまとめのところに書いておりますけれども、少人数学級にしても、少人数指導にしても、学級の規模を小さくすればそれだけで効果が上がるというものではなく、既にこの検討会議でも取りまとめられたように、小さくなった学級の規模のメリットを上手に生かして、さまざまな取り組み、教師の役割、あるいは家庭学習への支援、そのような多様な手だてと相まって相乗的に少人数の学級とか指導の効果は高まるのではないかと考えております。

 以上、資料を使った説明ですが、最後に、本県の実情を踏まえて、2点のお願いを、この場をかりてさせていただきたいと思います。

 一つは、申すまでもないことでありますけれども、少人数学級編制については学校現場や保護者から非常に高い評価を得ている状況でございます。したがって、今後における計画的な実施、学年の拡充をぜひお願いしたいと思っております。本県は財政的に非常に厳しい状況にあって、冒頭申し上げたように、県単独によって人的措置を行うことは非常に厳しい状況でございます。したがって、国による新・定数改善計画の今後の実施が不可欠であって、頼りでございます。少人数学級編制については標準法の改正を伴うことが最も望ましいのでありましょうが、少人数学級をするために標準法の改正を伴うことに困難さが今後も避けられないとするのならば、その場合は加配定数を充実させて実質的な改善措置がなされることを強くお願いしたいと思います。加えて申し上げれば、いわゆる基礎定数の改善のために現在の加配定数を減じて振りかえるということは避けていただいて、実質的な定数改善の実がとられることを強くお願いしたいと、これが一つ目のお願いでございます。

 二つ目につきましては、先ほど来申し上げておりますけれども、新・定数改善計画(案)が公表されたときに、本県では、少人数学級とあわせて、いわゆる複式学級の標準の引き下げ、あるいは中学校における解消、これが非常に大きな反響で、非常に期待が高うございました。複式学級の数がしま部では非常に多うございます。それから、中学校においては、学級の規模が小さくなって、すべての教科がそろわないという学校が非常に多くなっておる状況でございます。あるいは、3学級未満で養護教諭が配置されていないという学校も多うございます。したがって、そのような状況を考えてみると、少人数学級編制とあわせて、本県においては、複式学級編制の標準の引き下げや解消、あるいはへき地や小規模校に対する加配の措置、あるいは養護教諭の配置基準の見直し等、それらの人的配置についても御検討をいただきたいというふうに考えております。以上、よろしくお願いいたします。

【木村主査】  ありがとうございました。

 いかがでございましょうか。ただいまの長崎県からのプレゼンテーションにつきまして、御質問、御意見、ございますか。どうぞ、長南委員。

【長南委員】  最初に、事務所を解消したという報告があったのですけれども、特に問題とか課題は出てないでしょうか。

【長谷川氏】  既に5年が経過いたしまして現在のやり方が安定的になされておるわけですが、当初はやはり、直接的に管内の学校の人事管理、それから指導等を携わっておりました事務所がなくなるという影響は多うございました。ただ、冒頭申し上げたように、市町村の合併によって、指導主事が未配置であった市の教育委員会、町の教育委員会がなくなってまいりまして、それぞれの市町によって独自の教育施策が進められるという効果が出ておるところでございます。

【長南委員】  私も、教育事務所というのはほんとうに必要なのかどうかと、思っているのですね。ですので、今のことは結構正しいことじゃないのかなと思います。

 それからもう一つ、児童生徒のところの1番目の項目で「授業の理解」というのがありますけれども、授業の理解をはかる、例えばアンケート調査とか、その項目というのは何でしょうか。

【長谷川氏】  子ども向けのアンケートは単刀直入に、「授業がよくわかるようになりましたか(つまずくことが減りましたか)」という項目に対する回答でございます。

【長南委員】  そうですか。わかりました。

 前の発表とも関連するのですけれども、少人数学級、少人数教育、少人数指導、習熟度別指導、チームティーチングと、いろんな用語があるわけですね。この際、少人数学級、少人数教育、少人数授業といった用語のレベルを考えないといけないのかなと。少人数学級を選んだとすれば、少人数指導と同等のレベルでそれを議論することが果たしていいのかどうかですね。それ、私は前からいろいろ考えています。ですから、山形県の場合には、少人数学級を優先していますので、少人数指導というのはあまりやってないのですね。ですので、この会議で、用語の使い方、用語の領域みたいな、または用語のレベルみたいな、そういうのもちょっと考える必要があるのかなというふうに思います。

 以上です。

【木村主査】  ありがとうございました。今の御発言は、少人数教育の形態が非常に複雑になってきたというお話でした。要は形態の数を増やすということなのだけれども、それのやり方をどうするかということが問題だということですね。堀内先生の御発表でも、少人数学級そのものはさほど効果が見えないけれども、複数指導では非常にはっきりした費用対効果が出ているというようなことでしたから、ますます問題が複雑になる。御提案のとおり、一度きちんと言葉の整理をする必要はあるかもしれませんね。

 ほかにございませんでしょうか。どうぞ、中川委員。

【中川委員】  先ほどの意見ともダブるんですけれども、今の長崎県の長谷川先生もおっしゃっていたのですが、指導方法工夫改善加配を少人数学級に回すということは、恩恵を受ける学校というのは都市部の地域です。でも、数から言えば多い。本来であれば加配を受けるべく小さな学校に加配が配当されないということ。声の数から言えば、都市部の数のほうが多い、いいことだいうようなことで。ところが、少数ではあるけれども小さな学校が困っている現実、これはやっぱり考える必要があると思います。以上です。

【木村主査】  ありがとうございました。

 堀内先生、長崎県と静岡県の、二つの発表をお聞きになって、何かお感じになったことはありますか。せっかくいらしていただいたのでコメントをお願いします。

【堀内氏】  あまり言わないほうがいいと思いながら聞いていたのですけれども、今のはどちらも県教委さんの御発表ですね。要は、その中に含まれていたと思うのですが、やっぱり市町村レベルで、もっと言いますと、最後は学校レベルと私は思っていますけれども、今、いろいろ御質問があったことも含めてなんですが、どういった実態に対してどこが意思決定して、学級編制なり指導方法を考えていくのか。何々式というのはいいのですが、それが県全体に当てはまる話なのか、どうなのかということについては、大変失礼な言い方をしますけれども、疑問には思います。もっともっときめ細やかないろんなやり方が、一つの大きな県の中でもあっていいだろうと。どうして一つの県単位でこのやり方がいいという話になるのかについては、かなり疑問を感じております。

 すみません、余計なことを言いました。

【木村主査】  ありがとうございました。重要な問題提起だと思います。

 どうぞ、小川委員。

【小川副主査】  今の堀内さんの問題意識と同じなんですけれども、もう一度確認ですが、静岡県の場合には、指導方法工夫改善の振りかえというのは、少人数学級にするか、TT等々のいわゆる少人数指導加配で活用するか、これは市町村で決めるんですか、それとも各学校単位で決めることができるのですか。

【渡邉氏】  学校単位で選択を許しているということになります。

【小川副主査】  そういうふうな決定の権限のしくみがある中で、少人数学級への振りかえの方が割合として圧倒的に多いことがもう一つよくわからないのですね。これは、県全体として35人学級という看板を掲げて、それを推進したいというふうな県教委の意向が見えるというようなこともあって、各学校が少人数学級という振りかえのほうに活用するのか。それとも、指導方法工夫改善をもらっても、それにいろんな条件、活用する条件がいろいろあって、なかなか活用しづらいというようなこともあって、いっそ少人数学級できちっと固定してやったほうがすっきりするとか、いろんな理由があるような気がするのですけれども、県教委とすれば、少人数学級にこれほど加配が振り分けられるというふうな原因とか理由というのをどう認識されているのかなというのを少しお聞きしたいのです。特に中学校の場合には加配の要望というのは結構強いような気がするのですけれども、それにもかかわらず年度を追って少人数学級への振りかえというのがかなり増えてきているので、その理由というのを県教委としてはどう認識されているのかというのをちょっと教えていただければと思うのですが。

【渡邉氏】  一つは、最初におっしゃられましたように、静岡県教委としては静岡式35人学級編制を推進していきたいということについては各市町のほうへおろしていることですので、基本的にはその線で考えていただいている中で、学校の実情に応じて、35人学級編制ではなく、40人学級のまま、TTでありますとか、というふうなことが入っているという形ですので、基本的には、県としては35人学級を推進しているというスタンスであります。

 したがいまして、中学校等では、単純に加配、いわゆる加配教員、専科教員のほうがいいのでという形で35人を見合わせるということはあまり行われていないという状況が、正直なところであろうと思います。

【木村主査】  ほかに。どうぞ、中川委員。

【中川委員】  全体を通してよろしいですか。

【木村主査】  どうぞ。三つのプレゼンテーションを聞いていただきましたので、全体を通して、コメントがありましたらお願いしたいと思います。

【中川委員】  すみません。前回、貞広委員も指摘されていたことですけれども、少人数学級を地方の努力によって取り組んでいるところ――特に小学校2年生ですね。これに対するインセンティブが何もないじゃないかと。地方が一生懸命努力している。そして、少人数学級をやっていないところを優先して加配を配っていくというやり方、これについてどうなのかなと。それに対して伯井課長から、トータルで不均衡が生じないような配分の仕方で対応するというふうな返答があったようですけれども、実際のところ、24年度の加配の配当の状況というのを明らかにすべきじゃないかと思います。各県に対してこういう数で配当していったのだというようなことをしないと、これはおかしいなあと思います。このままだと、おそらく全国の知事会等でも、うちの県は自分の財政でやっている、ここには加配を持ってこずに、やっていないところに持ってくるとは、というようなことが出かねないと思います。なるべく実態を明らかにすべきだと。今年度、900人の加配増したものは、どんなふうな配分でやったかという。これが1件。

 それからもう1件、前回の資料で、都道府県の教育委員会に対して調査依頼された文書が出ていました。その文書を見て、びっくりしました。主要教科(小:算・国・理)、(中:英・数・国)とか、主要5教科(小:算・国・理・社・生活)、(中:英・数・国・理・社)、この文書があったのですけれども、教科に主要な教科とそうでない教科があるのかと。学校現場では少なくともこういう言葉は使っていないし、もちろん教育委員会も使わない。どの教科も人格形成にとって大切な教科だよというようなこと。仮に保護者が言っても、校長は「いや、そんな主要教科とかは使いませんよ」って言っているのに、文科省の言葉が公式な文書で出ているということ、これについてどんな見解を持っておられるのかなと。私は、これは訂正通知を出すべきだと思います、間違った使い方をしたということで。

 と思うのですけれども、以上です。

【木村主査】  お願いします。

【伯井課長】  小2の今年度の措置として加配措置900人で実質的に対応するということに対する御指摘でございますけれども、まだ正式に予算が確定しておりませんので、予算が確定次第、各県に加配を正式に内示するという段取りになっております。したがいまして、この会議の場でも、こういう考え方でやったのだということでいま一度資料をお配りして、不均衡のないようにやっておりますので、それについてお示しをしたいと思っております。今のところ、各県の教育委員会からも、この間御説明いたしましたように、先行して実施しているところについても、今まで実施してなかったところについても同様の、加配の数の割合ですけれども、現状の加配数における増加の割合ができるだけ均衡がとれるような形で配当できそうでございますので、そういうことについて、次回、何らかの資料で御説明をさせていただきたいと思います。それが1点目でございます。

 2点目の主要教科、ちょっと配慮に欠ける文言を調査に使いましたので、それは訂正をしたいと思いますけれども、従来、指導方法工夫改善加配なんかを配るときの積算上の考え方として、一定の教科について特定の指導ができているかどうかということを前提に加配の考え方をしておりましたので、その延長線上でやりましたが、少しそこは、今後、調査結果をある程度世の中に公表するようなときには配慮しながら出していきたいと思っておりますので、よろしく御理解いただきたいと思います。

【木村主査】  ありがとうございました。 ほかにございませんでしょうか。どうぞ、貞広委員。

【貞広委員】  大変興味深いプレゼンテーションをいただきまして、ありがとうございます。6ページ目以降、少人数指導によって当年度内に効果があらわれた事例等について、大変効果が上がっているというデータをお示しいただいています。ただ、普通にこれを見た場合に、二つの質問が出ると思います。まず1点は、ここに挙げられた効果事例は、少人数指導を導入した学校の、少なくとも長崎県内の学校の中でどの程度一般化できる効果事例であるのかという点、2点目は、その効果というのは少人数指導によるものと限定的に言えるのかということです。1点目に関しては、おそらく全体的に少人数指導を導入した学校の中でこうした効果がどれぐらいの割合の学校に見られたのかということから始まって、もう少し詳細に分析できるかと思いますので、情報やデータをお持ちでしたらお教えください。一方、2点目に関しては、例えば少人数導入前後の比較を行い、低学力層の底上げなど、少人数指導によって当年度内に効果があらわれたのか否かということがあったのか、なかったのかということを比較対照することによってしか見えてこないと思うのですが、これについても何らかの情報やデータをお持ちでしたら、あわせてお示しいただいたほうがより説得的になるのではないかという期待を込めて、質問申し上げる次第です。

【木村主査】  いかがでしょうか。どうぞ。

【長谷川氏】  調査の妥当性については、今御指摘のとおりであります。ここに挙げているデータは、共通の尺度とか共通の方法を示して調査をとっているものではなくて、それぞれの学校の効果検証という視点をとっておりますので、比較対照するものがございませんし、県内の中でこのような学校がどれくらいかというデータは持ち合わせておりません。御指摘のことを踏まえて、効果検証のよりよいやり方については今後考えたいというふうに考えております。以上です。

【木村主査】  ありがとうございました。どうぞ、清原委員。

【清原委員】  ありがとうございます。三鷹市長の清原です。

 長崎県さんに御質問させていただきたいのですが、このように意欲的に少人数学級編制研究指定校を設けて検証されているわけですが、少人数学級を編制されているところの事前・事後の比較と効果というのは今日詳しく御紹介いただいたんですけれども、少人数学級を導入していないところと導入したところとで同時期にどのような学習上の効果や課題があったかというような、同時点における導入校とそうでない学校との比較があれば教えていただきたいというのが1点です。

 それから、これは静岡県さんにも長崎県さんにも伺いたいんですが、県としてこのような少人数教育に関してできることをしたいということで取り組んでこられたわけですが、その際、国の加配等の支援がない中で取り組まれるときの教員の配置であるとか、あるいは少人数ということで指定されるところに教員の資質の面で何らかの配慮をされて重点的に少人数校に何らかの特別な教員を配置されているのか、それとも、全くそういうことでなくて教員の人数だけを配慮して配置をされていらっしゃるのか。私は基礎自治体の立場なものですから都道府県の教育委員会と違う現場の認識があるんですが、教員の資質というものは相対的に人数が多い学級の指導に向くタイプと少人数の学級に向くタイプがあるのかないのかということについても十分承知していないものですから、量の部分だけではなくて質の面でも、少人数に重点を置かれるときに、静岡県の皆様や長崎県の皆様は何らかの特別な研修とか、あるいは配置への工夫をされたのかどうか。費用もかけていらっしゃることでございますので、何らかの、そういう副次的なといいましょうか、しかし極めて影響があるかもしれない教員の研修等についても、関連して教えていただければと思います。以上です。ありがとうございます。

【木村主査】  長崎県、よろしくお願いします。

【長谷川氏】  長崎県でございます。1点目の少人数編制未実施校との比較は、申しわけございませんが、これも持ち合わせておりません。ただ、そういうデータが必要だという課題意識は有しておりますので、今後、何らかの形で取り入れていきたいと考えております。

 それから、2点目ですが、少人数学級を実施するという側面だけをもって、何らかの特性・資質を持った教員を充てるということはしておりません。また、そのために特化した研修というのも、行っておりません。あくまでも人の配置はトータルとしての学校経営に資するようにというふうに考えてやっております。以上です。

【木村主査】  静岡県、お願いします。

【市川氏】  静岡県です。今、教員の配置については、長崎県と同じように、それをもって何かというようなことはしておりません。ただ、少人数学級を推進するにあたって、先ほどから何回も話題になっていますが、ただクラスサイズが小さくなって同じ授業をやっていればいいということではありませんので、導入に際しては、教員の資質の向上がポイントになるということで、静岡県の総合教育センターで定期的な学校訪問を実施しておりますので、そのときに、少人数学級の環境下、今までよりも少ない人数の中でどのような効果的な指導方法があるのか、これを研究するということで、指導訪問をしております。具体的には、先ほどの発表の中にもありましたが、子供同士のかかわり合いを大切にした授業を重視しようということで言語活動、あるいは、少人数学級になったところで教室内に少しゆとりが生じますので、そういうようなところを活用しました体験的な活動、こういうようなものを重視した授業に転換するようにということで、授業改善をするように、そういう指導をしております。

【清原委員】  ありがとうございます。文部科学省では中央教育審議会のほうで教員の資質向上に関しても検討をされていますので、今回のこのような調査研究というのは、今後の授業の持ち方、あるいは指導方法等についても大変示唆あるものだと思いまして、ぜひそれぞれの検討で連携をしていただければ有効と感じました。

 以上です。ありがとうございました。

【木村主査】  ありがとうございました。 ほかに。どうぞ、新庄委員。

【新庄委員】  静岡県教委さんにお聞きしたいのですが、資料の9ページのところに「校長調査より」というところがあります。今の教員の資質向上ともかかわりが深いと思うんですが、教員の授業への取り組みが変わってきたという調査結果が出ていますが、具体的にどのような、教員の授業への取り組みが変わったというものがもしありましたら、教えていただきたいと思います。

【渡邉氏】  すみません、具体的に実例をというのは今できなくて申しわけないですけれども、聞き取り、あるいは調査結果の中での具体的な例としては、先ほど人事管理主事が申し上げました、子ども同士のかかわり合いをできるだけたくさん取り入れた授業をというような意識で自分の授業を見直すというような形の意欲が職員の中に高まっていると感じている校長が多いなあと思います。

 先ほど来話が出ている1学級の人数というところですけれども、どういう学習形態、あるいはどういうような学習を展開するかということによって、随分違うのだろうなと思うのですね。例えば一斉の講義式の授業であれば、これは35人でも40人でもあまり変わらないのかもしれません。ですけれども、例えば小集団を活用して活動しながらというような学習活動になったときには、やはり40人だと苦しいな、30人程度だとやりやすいなというところがあったりとか、そういうようないろいろなファクターが多分あるのだろうなと思いながら伺っていたのですが、そういう意味で、私どもとしては、校長からのアンケートの結果を受けたときに、先ほど申しましたような意識が教員の中に芽生えているというふうに感じている校長が多いのだなととらえております。

【新庄委員】  ありがとうございます。やはり一人一人にきめ細かい配慮や指導があった上で、子供たちの意欲喚起もできます。それに伴って教員ももっともっと高いところを目指してあげようと、そういう指導改善につながっていくものと思いますので、校長がこういうことを把握し、感じているというのは、大変貴重な意見であると思いました。ありがとうございます。

【木村主査】  ほかに。どうぞ、藤崎委員。

【藤崎委員】  まず、静岡県、そして長崎県、県全体で少人数学級に取り組まれていることに、非常に感心いたしました。やはり強い指導力がなければ、少人数学級の推進というのはなかなか進まないのではないかということを感じております。これはやはり国が主体となって、もちろん各県いろいろな状況に差はありますが、ぜひ進めていきたい問題だなというふうに、改めて感じました。

 一方で、市の教育委員をやっていまして、学校視察に行った場合、各学級の教員の指導力の差というものを非常に感じて帰ってきます。例えば指導力がちょっと不足していて学級の雰囲気がよくない場合、少人数ですと子供たちが先生の影響を大きく受け、むしろ子供の人数がある程度多いほうがその学級というのは経営がうまくいくような、そういう事例を多々見てまいりました。ということで、特に小学校に関しては、専科教員の重要性、担任だけに任せる少人数学級によって起こるマイナス面を感じます。ですから、今日堀内先生の御発表にもあったように、学校の裁量というのも同時にいかに大切か。それから、小学校に関しては学級の中で悪い意味では密室化してしまうような状況が見られますので、バランスよく少人数学級促進と、そして、専科教員といった、あるいは加配も同時に大切にしていかなければいけないと思いました。以上です。

【木村主査】  ありがとうございました。

 ほかにございませんでしょうか。どうぞ、長南委員。

【長南委員】  少人数学級が始まって、10年くらいになるわけですね。これまでの間というのは、少人数学級の効果を検証するためにいろんな調査研究をやってきたわけです。その結果によって、きょう堀内先生からは少人数学級はあまり効果がないという報告を受けて、山形県は果たしてどうなのかなと。山形県の場合は、県の独自の予算もつくって、中学校3年生まで33人以下の学級でやっているわけですね。ですから、少人数学級の効果を検証するときには、例えば、明らかに有利なことというのは、教室の広さが全然違いますね。40人の基準でやった学級編制の教室の広さと、33人でやったときは全然違います。余裕が出てきますよね。それから、40人の子供たちに向かった教員の意識というのと、33人以下の子供たちに向かった教員の意識というのは、全く違うと思います。この有意差があるわけです。それから、子供というのはいろんな子供たちがいて、学級編制をするときにAという子供とBという子供が一緒というのはある時期は避けたいと、そういったときに、少人数学級編制ができるということは、分けることができるというので、有利な点があるわけです。そういった点から考えた場合には、明らかに少人数学級の効果というのはわかるわけです。ですので、少人数学級編制というのは制度として、仕組みですので、これは日本の教育の基盤としてまずやると。そのほかに、必要な場合には少人数指導。少人数指導の中でも、習熟度別にするのか、チームティーチングにするのかという、その指導方法の部分だけです、この部分は。ですから、この部分をあんまり国ではなくて、子供に一番近いところにいる教員の人たちが選ぶ、決めることだと思います。ですので、先ほど言ったように言葉の吟味と、それから少人数学級の成果を検証するときのやり方、こういうのは少し精度を高めていく必要があるのではないのかなと思いました。

 以上です。

【木村主査】  ありがとうございました。

 私、大学に33年間いて、一つの学科だけを教えてきたのですが、各年、その年の人気度によってクラスの大きさが違ってきます。人気がある年は50人ぐらいになってしまうこともあり、人気がない年には30人ぐらいになってしまいます。50人と30人ですと、私の個人的な経験では、一人一人に対する目の行き方が全く違いますね。今思い出してみると、人数の少ないクラス、少ないクラスのときのほうが大体できは悪いのですが、その連中のことは鮮明に覚えています。答案の字まで覚えています。しかし、5、60人クラスについては、そのようなことがなく思い出せない。ですから、人間と人間のかかわりみたいなものの中で、その辺の違いは非常に大きいのではないかと思います。大学とは違うのかもしれませんが、やっぱり人数の問題とはあるのではないかという気がしますね。

 それからもう一つ、非常におもしろいと思ったのは、長崎県のデータです。3ページの3の少人数学級編制の効果というところで、平成19年と23年、赤と青の折れ線が4つの点を結んでありますね。そうすると、小学校1年生、小学校2年生では、一番低いのが「発言等の機会」ということになっています。ほかが高いのに、「発言等の機会」が、少人数クラスにしたのにどうして良くならないのか、不思議に思いました。ところが、6年生になると、これは有意な差が出ています。赤のほうがかなり上へ行っている。数%の差ですから、有意な差だと思います。それと、「学級の人間関係」のところを見ると、小学校1年生、小学校2年生は、特に問題ない。かなり高い。ところが、小学校6年生になると、それが非常に下がってしまう。両方とも下がってきています。思春期を迎えて、難しさというのが出てきているということでしょう。次のページに中学校1年生のデータが出ていますが、これは赤と青はあまり差がないんですが、40%という非常に低い値になっている。小学校6年生と中学校1年生は6つの項目、小学校1年生と2年生は4つの項目しかありませんが、こうしたデータだけでも、教育の難しさとか、その辺がわかって、どう対処していけばいいのかということになる。一つのヒントを与えてくれていて、非常におもしろいなあと思いました。要はこういう調査をたくさんやることですね。あまり調査をやると学校の先生から忙しくするなと叱られるかも知れませんが、やはりエビデンスをできるだけたくさん集めて考えていくということが大切ではないかと思います。事務局、何かありますか。

【谷合企画官】  ありがとうございました。

 次回の予定でございますが、次回第11回会合につきましては、来週4月10日火曜日、10時から12時、場所は三田の共用会議所で開催を予定しています。内容は、少人数学級の効果について国立教育政策研究所からの発表、それから三重県教育委員会から取組状況についての発表を予定しております。どうぞよろしくお願いします。

【木村主査】  次回もひとつよろしくお願いいたします。 本日は、どうもありがとうございました。

 

── 了 ──

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