公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議(第4回) 議事録

1.日時

平成23年7月15日(金曜日) 13時~16時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議事録

【木村主査】  それでは、よろしゅうございましょうか。委員の皆様、大体おそろいになったようでございますので、ただいまから公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議を開催させていただきます。今、気がつきましたが、これは検討会議の中でも相当名前が長いほうですね。本日はお忙しい中、また、大変お暑い中お集まりいただきましてありがとうございました。本日は、前回に引き続きまして、地方公共団体、ならびに有識者の方々からヒアリングを受けたいと考えております。ヒアリングは今回で終わりということになろうかと思います。今後はヒアリングでいただいたいろいろなご意見をもとに論点整理をして議論していくことになる予定でございます。

 それでは、まず事務局から本日の資料についての確認及び説明をお願いいたします。

【谷合企画官】  失礼いたします。それでは、お手元の資料をご確認お願いいたします。議事次第の後に、資料1といたしまして本検討会議の名簿。資料2といたしまして本日ヒアリングにご出席いただく方のお名前。資料3が今後の日程でございます。これは最後にまた改めてお話をいたします。そして、資料4-1から4-6までが、本日ヒアリングにお越しいただいた方からの資料ということになってございます。

 資料は以上でございますが、もし不足等ございましたら事務局にお申しつけをお願いいたします。以上です。

【木村主査】  資料よろしゅうございましょうか。会議の途中でも結構です。足りないことにお気づきでしたら、お手をお挙げいただきたいと思います。

 それでは、早速でございますが、ヒアリングを始めさせていただきます。本日はまず、横浜国立大学の髙木先生からご意見をお伺いしたいと思います。髙木先生は、教育人間科学部の教授をお務めでございます。本日は、「新たな時代に求められる授業改革の在り方」という観点からお話をいただく予定でございます。髙木先生、20分程度でお願いできればと思いますが、よろしくお願いいたします。

【髙木氏】  それでは、始めさせていただきたいと思います。

 私、横浜国立大学で国語教育を担当しております。仕事柄、小中学校の現場へ年間50回ぐらいは行っているんだろうと思いますが、そういうことも踏まえつつ、また、学習指導要領にちょっとかかわったということもございまして、そういう観点からお話をさせていただきたいと思います。

 資料の1枚目をごらんください。最初のは前書きのようなものなので軽く流したいと思いますけれども、「笑えない国語科の現実」と書きましたが、今でもこんな現実がやっぱりあるよということで、ちょっと簡単に書いてみました。

 正解到達主義、これは特に読みの場合ですけれども、ずっとこれは批判されてきているんですが、学校とか入試とかでしか生かされないようなものを一生懸命育てていて、今のように実際の場だとか生活で生かせるという観点からすると、まだかけ離れた部分が残っている。

 それから同じように、読ませない読むことの学習と書きましたけれども、読みの学習なのに先生が一方的に解説しているような学習というのは、やっぱりないわけではないということです。

 それから同じように、話させない話すことの学習、書かせない書くことの学習というのは、先生たち自身がなかなかそういうトレーニングを受けてないものですから、逃げてしまう先生がいて、そういう活動を実践させないという方たちもやっぱりいらっしゃいます。特に、これも高校になってしまうんですが、進学校ほど表現の授業を受けていない。これはかなり深刻な問題でして、高校は特に現代文と古典というふうに先生が分かれてしまうと、表現の部分を担当する先生がだれもいないということが実際に起こってきまして、高校における表現の未履修者は相当多いだろうと思われます。大学も入試センター試験ぐらいしかないとすると、ほんとうに書くこと、表現することの指導を受けない子たちがどんどん社会に出ていっている。

 そして2枚目をごらんください。今回、言語活動ということが、国語科だけではございませんが、取り入れられたということです。それを探っていきますと、中曽根内閣の臨教審あたりから言われだしたこととつながっているなと思いますが、それをちょっと簡単にまとめたものです。

 背景としては、グローバルな経済競争が広がっていった、そういう時代と一致しているわけですけれども、それが今日にずっとつながってきている。そういう中での学力観の変容というものを、本田由紀さんという東大の教育社会学者がまとめたものを、僕が表にまとめて、僕の言葉もちょっと入れているんですが、旧来は近代型の能力で、いわゆる業績主義、メリトクラシーというもの、今はハイパー・メリトクラシーで、ただ勉強できるだけではだめだよという時代になっていて、そこにありますように、個性だとか、創造性だとか、ネットワーク形成力とか、いろいろなものが求められる時代になっているのだということをおっしゃっている。

 それを私なりに図にしたものが、次のページにございます。真ん中の小さい楕円の部分、これはいわゆる基礎学力ですけれども、従来はそういうものをきちっとやっていれば、いい大学に入り、いい会社に勤めるということで自己実現できた部分もあったんですが、今ではその周りにある部分、白くなっている言語活動の部分ですが、そういうもので試行錯誤したり失敗したりしながら、いろいろな能力を身につけていくということが求められている時代で、本田さんに言わせると、子供自身が大分そういう方向にシフトしているんだということです。

 先に言ってしまえば、ですからこういう多様な活動の中でいろいろなことをさせなくてはいけないので、当然、先生たちの対応も非常に難しくなっています。学級規模についても、やっぱり一定数のものに抑えてもらうことがとても大事になっているだろうと申し上げたいということです。

 以下は国語ということですので、実際に、昔と今とではどう考え方を変えていかなければいけないかということを、小学校、『あきあかねの一生』という昔の教科書に出ていた教材で、練習教材、ミニ教材なんですが、それを小学校3年生に読ませたという調査を私が昔したことがありまして、それを例に、今お話ししたようなことを簡単にご説明したいと思います。まことに失礼なんですけれども、この短い文章ですので10秒ぐらいお読みいただいて、これを、大人には段落分けと言っても意味が通じると思いますが、いわゆる意味段落に、幾つかに分けてほしいということで、先生方、ちょっとこれをお読みいただいて、どんなふうに段落を分けるか、お考えいただけますでしょうか。10秒か20秒ぐらいでできると思いますので、ちょっとお読みください。

 よろしいでしょうか。これは、小学校2年生用の教材で、学習指導要領では昔から、時間的な順序に気をつけて読むということを練習するための学習材でございます。先生方、今読んで段落分けをしていただいたかと思うんですが、1と2が1つのグループ、3と4が1つのグループ、5が1つと、多分、季節で分けられた方が非常に多いのではないかと思います。いかにもわざとらしく、丸1の段落の冒頭には「春に」とありますし、丸3の段落の冒頭には「夏の」とありますし、丸5の冒頭には「秋に」とございます。ですので、こういう季節の順番に注目して文章を順序よく読ませるという、小学校2年生の教材です。

 この教材を読んでない、扱ってない、つまり別の教科書会社の教科書を使っていた子供たちの、28名の、山形県の小さな学校にお願いして、これを3年生、つまり段落分けの勉強は一応した、でもこれを読んでないという子たちに段落分けをしてもらいました。その結果が次のページにございますのでちょっとごらんください。28名ですが、数えてみると実に11通りの分け方を子供たちはしているのです。この短い文章をどうやって分けるんだというぐらいの分け方なんですけれども、想像つかれますでしょうか。

 まず、28名ですけれども、一番子供たちで多かったのを挙げてみたいと思います。まず、一番多かったのは、1、2が1つ、3が1つ、4、5が1つ。いかがでしょうか。子供たちの理由がいろいろあるんですが、1、2はヤゴのとき、3はヤゴがトンボに変わるとき、4、5は大人になってからというような理由です。あるいは、1、2はまだ水の中、3は水から出ているところ、4は水から出てどこかへ飛んでいっちゃう、そういう場所に着目したりしているわけですね。

 次に多いのは、1、2、3が1つ、4、5が1つ。これは、1、2、3というのはヤゴのこと、4、5はトンボのことということです。これはいわゆる文章論という考え方が国語学の中にありますけれども、その中で、主語の連鎖という分析の方法があるんです。この段落の主語は何かと見ていく。そうすると、1、2、3は「やごは」で始まるんです。ですので、ヤゴは主語。そして、4、5は大人になったばかりのアキアカネと、アキアカネが主語と考えますと、文章論で言うと、1、2、3と4、5というのは理由が立つわけです。ところが、教科書や学習指導要領の意図としては、1、2が季節で言うと春、3、4は夏のことだから1つ、5は秋と、こうやって読ませたいわけです。そうすると、そこにもう既にずれがあると言えるわけです。

 子供たちの反応はいろいろあるんですけれども、11通り全部挙げていると切りがないのでやめますが、子供たちがどういうところに着目して読んだかということで、「形状」と書きましたけれども、大人か子供かのようなことです。それから「行動」、卵を産むとか、山のほうへ飛んで行くという行動。それから「場所」、水の中、水から出たところとかです。それから「季節」というふうに見てみますと、そこに書きましたように記号で示しましたけれども、子供たちが一番注目しているのは大人か子供かという「形状」で、先ほどの文章論でいうところの、主語は何かということとほぼ一致するわけなんです。だから文章論でも別に間違ったとらえ方ではないのに、実際の授業では季節の順序を教えるということが起こって、先生方が非常に困るわけです。

 昔見た授業では、みんなに、子供たちにいろいろ意見を言わせて、でも何か、1と2、3と4、5で、季節で分けるのが何となくいいかなとか言って、先生が何か無理やりそこへ持っていって、うまく説明ができないまま、その後の公開研究会で参観者の先生からめちゃくちゃに言われてしまうというようなことがよくあったわけです。

 何が言いたいかと申しますと、昔はこれだけ違っても、先生がこれを教えたいというところに、ある意味では強引に持っていって、「正解はこれだよ」と教えて、子供たちもテストの前にそれを覚えて答えるということで、ある程度よかった時代もあったわけです。ですが、今の学習指導要領は、目的とかそういうものによって文章の大事な部分も変わってくるよということを学ばせようとしているところがあります。そうしますと、正解が1つというときには、先生は問答無用で、ある意味では最後、押しつけちゃえばいいんですけれども、今は、読む目的によって違う、なぜ違うのかということを考えさせながら、いろいろな観点によってとらえ方が違うんだよと整理するには、やっぱり一定数の時間も必要ですし、また、バリエーションがあまりあり過ぎても困るし、なさ過ぎても困る。適正な学級の人数というのがある程度必要になってくるんだろうと思います。

 そういうことを考えますと、次の資料を見ていただきたいんですけれども、正解到達主義的な昔の読解から、今求められているものは、言語活動としてのということで、より実際的な場で使える力ということです。先ほどのように単純な読解でも、子供の頭の中はこんなに多様であると、11種類も分け方があると、しかも先生が意図したものとは違うことです。それから、先生と同じような分け方をしていても、全く理由が違うんです。そこが難しいところなんですが、そういう意味で、従来は学校の特殊な場でしか通用しないものでも正解が1つという読みを強いて、それである程度まで通用してきた。ところが、これからは目的や場に応じた実践的、実際的な読み方を身につけさせていかなければいけない。つまり、試行錯誤させて、そのプロセスでいかに学ばせるかということが大事であり、また、学び合うとか、そういうことがとても大事になってきている時代だと思います。

 それから、集団に準拠した評価から、目標に準拠した評価に変わったということは、そもそも個の読み方それぞれを大事にするという意味合いがもともとあったわけですので、そういう面からも、もうちょっと丁寧に子供たちの意見をすくい上げ、意味づけていく作業が必要になっている、そういう時代だろうと思います。

 次のページを見ていただいて、また図が出てきますけれども、簡単にいうと中の楕円が言語活動なんですが、国語科では言語活動を成り立たせている中の知識、技能、能力といったものをいかに身につけさせてあげるかが大事で、昔は「これは時間的順序で読むんだよ」と教え込めば済んだこと。でも今は、子供たちに意見を出させて、それぞれどうしてそういうふうに読んでいるのかということを分類、整理しながら、目的と場合によって読まれ方も変わるということを体験させながら学びとって、子供の側から引き出していく、そういう時代になってきているんだろうと思います。

 言いかえますと、その下のスライドになりますけれども、多様さやプロセス、個を生かすために学習をつくっていかなければいけないわけですので、それができるような適正な学級規模というものが必要なんだろうと思います。

 ちなみに先ほど3年生28名にやりましたけれども、それで11通りです。例えばこれが四十何人とかになりますと、もう途方もないことになりかねない。その下に書きましたけれども、僻地教育のところにも行ったことがあるんですが、そこでは逆に答えが出なさ過ぎて、だれか1人有力な子が言ってしまうとそれで終わってしまうということが起こってしまうようでした。国語の場合は、やっぱりある程度バリエーションが欲しいので、少な過ぎてもいけないだろうなというところがあります。ですので、先ほどの28名というあたりを1つの参考情報としていただきながら、学級の適正規模について、つまり読みの中でもこれだけ意見が分かれる、それを1つの目安にして考えていただけるといいのかなと思っております。

 もうそろそろ時間ですのでまとめさせていただきますと、教科書にも出ている金子みすゞという詩人がいまして、「みんなちがって、みんないい」という有名なフレーズのある詩がありますけれども、それをもじって申し上げますと、昔は「みんな違っても、理由はさておき答えは1つ」のようなところがあったと思うんです。それが、80年代、読者論という流れが国語に入ってきて、それぞれの意見を大事にしようというのが出てきたわけです。それは今でも、1つの学習の潮流としてあるんですけれども、それをまた言いかえてみますと、始めから終わりまで「みんなちがって、みんないい」と。でも、だったらみんなで、教室で勉強する必要ないんじゃないのという感じもあるわけです。

 この2つについては、答えが1つの場合は、人数が何人いてもある意味では関係ありません。それから、みんなばらばらのままでいいと言うんだったら、これも人数が何人いても、ある意味では構いません。だけど今の時代というのは、みんな違ったら、なぜ違うのかということを考え合って、その違いを生かし合う、そういう学び合いの授業をつくっていかなければいけない。とすると、人数が多過ぎても、少な過ぎても成り立たない、そういうことを今、言語活動の充実が求められているこの時代において、学級の適正規模というものがやっぱりあるのではないかと思いますので、失礼ながら小学校2年生の教材も読んでいただいて、今日、このようなご説明をさせていただいたということでございます。

 以上でございます。

【木村主査】  髙木先生、大変興味のあるプレゼンテーションありがとうございました。

 申しおくれましたが、ご質問、ご意見は、お三方のプレゼンテーションの後に、まとめてお願いしたいと考えております。

 引き続きまして、五十嵐日野市立平山小学校長からプレゼンテーションをしていただきます。「新たな時代に求められる授業改革の在り方」についてでございます。それでは五十嵐先生、20分程度でよろしくお願いいたします。

【五十嵐氏】  はい。東京都日野市立平山小学校校長の五十嵐と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 日野市は平成18年度からICT活用教育を市の重点施策として取り組んでおり、本校もICTを活用して、それをツールとして子供たちの学力を向上させ、学びの質を高めるということを目指してきましたので、そのあたりのことについて紹介したいと思います。まず最初に日野市のことをざっと説明させていただいた後に、本校の実践を紹介したいと思います。

最後に、これらのことから示唆される、学級規模及び教職員配置について、日頃考えていることを少し述べさせていただきます。

 最初に日野市なんですけれども、とにかくICTを推進していくにはサポートが欠かせません。そのサポート体制が平成18年度からスタートしましたが、その前の平成17年からオール日野市で準備を始めてきました。ポイントは3点です。日野市が教育CIO的な組織を立ち上げたことと、ICTに特化した部署を教育委員会の中につくってもらったということ、それから学校もそれを受けてマネジメント体制を築き上げてきたという3点です。

 その最初の1つ目の教育CIO的な組織についてですが、この組織に、平成17年度から、大学の先生で、教育工学だけではなくて、教育の本質がわかってらっしゃる、教師教育の専門も兼ねてらっしゃる、信州大学の東原教授にずっと専属で入っていただいています。さらに、モデル校の管理職や教員も集めながら、教育委員会や首長部局の課長と一緒に、どうしていったらいいかという方向性を出してきましたこの委員会は今も継続しています。

 こうしてその中で18年度からは、実際に実践するかなめとしての部署が立ち上がったんですが、実は私は今、学校現場でひたすら実践をしているところなんですが、当時の推進室の1代目の室長です。ですので、当時は行政の立場から、学校の先生たちと一緒に築き上げてきたという体験を持っています。当時の立ち上げの段階で、日野市は小学校、中学校合わせて25校あるんですけれども、校長先生がよく頑張ってくださいました。まずは教務主任を核として、こういう内容でやっていこうと啓発をして進め、今では、もう全校が当たり前のように使っています。さらに、とにかく使ってみるという第1ステージの段階から、効果のある使い方をしていこうという第2ステージに入っていると思っています。

 これらが日野市の教育の情報化を進めてきた概要です。左上にあるマークはICTマークという認定証です。日野市が掲げている3つの目標、セキュリティ遵守、校務での活用、授業での活用の3つにそれぞれ指標があり、それをクリアした学校にマークが授与されます。まずはセキュリティーを守らなくてはなりません。ほんとうに幸いなことに、今、服務事故は起こっていませんが、これからもだれかが破れば全滅だという意識を高く持っています。鍵のマークで示しています。それから、平成18年から導入した校務支援システムを活用して効率化していこう。そして一番上にあるのは子供の学びで、授業にも活用していこうということになっています。3つのマークがそろって合わせると、日野市の地図の形が出来上がる仕組みなっています。昨年度は、全校がセキュリティー部門に合格しました。全校が3つそろうには、もうちょっとというところなんです。

 日野市の各学校のウエブサイトを見ていただくと、このマークが出ています。ちょっと薄くなって欠けている部分はそれに挑戦中ということで、3つ、きれいなマークで形づいている学校も増えてきました。このように、日野市は全校で、共通の目標をもって進んでいるところです。

 本校はコミュニティースクールですので、地域の方々のお力をたくさんいただきながら、特色のある活動をしています。農業体験活動であるとか、食育とか、いろいろなことに取り組んでいるんですが、赤で囲ませていただいた部分、確かな学力をつけるためのICTというところを今日は中心にしてお話をさせていただきたいと思っています。

 まずは、子供たちに学力をつけたいという願いでずっと頑張ってきました。本格的にこのことについて研究を始めたのは、平成21年、22年の2年間です。私も本校に着任したのが21年度でしたので、推進室での仕事を3年間終わって、じゃあ実際にやってみろということで、偶然にも市内の校長に着任をさせていただいて、学力をつけるという本校の課題に寄り添ってきました。学力をはかるためには、そんなに短い期間で数値で表せるわけではないというのはわかっていたんですが、それでも子供たちの力を、基礎基本については着実に上げたいという思いでやってきました。

 これは昨年、研究発表で使わせていただいたデータ、エビデンスです。日野市全校で実施しているCRTのデータです。特に課題の見られた当時の3年と6年で、4月にやったデータ、12月にやったデータを比較してみると、このような結果になりました。真ん中のデータを詳しく示すと、このような形です。実際につまずきの見られた単元について、子供たちに力を入れてきましたので、こういう成果を得ることができました。個人表を見るとまだまだ個別の課題はありますので、これも踏まえて夏の補習などで指導しています。

 学力が上がったというエビデンスが得られた理由なんですけれども、1つ目はICT以前のことですが、基本的な生活習慣を重視しました。これはほんとうに大事です。基本的な生活習慣は、コミュニティ・スクールという利点を生かして、地域との連携の中で確立させる様々な取組を行いました。具体的には、ここは少し簡単に、ざっと流していきたいと思うんですが、地域と一緒になって、「親子花まる週間」というのを学校運営協議会でつくったんです。それを地域、家庭と一緒に、普段の生活のチェックリストを使って取り組みました。これは今も継続しています 

それから2つ目は、つまずきの見られる児童への個別指導ということです。手をかけてあげたい子供への個別指導は、平日はなかなか難しいです。そこで、今までは希望者を全員呼んで夏の補習をやっていたんですが、そうではなく、保護者の方に理解していただいて、ほんとうに手をかけてあげたい子だけを重点的に指導しました。これがとっても効果がありました。これは夏の補習風景です。プリント学習等、いろいろあるんですが、ほんとうに個に寄り添うために、本校では、日野市の全小学校にも導入されている個別学習支援システムの「インタラクティブスタディ」を活用しました。子供が問題を解き、正解するとすぐに褒めるメッセージが出てきます。間違っていたら、その子がどう間違えたかを瞬間的に診断して、それにふさわしい治療問題に移っていきます。できた子はより発展的な問題に移っていきますし、できなかった子には補助的な問題に移っていくという、個に応じたシステムです。じゃあ教員は何をするかというと、教員は、コンピューターでは対応できない、ほんとうに手をかけてあげたい子に寄り添えるのです。夏休みは、プール指導と補習指導の担当者に分けて、全員体制で徹底的に子供の指導にあたりました。このシステムは、通常の授業においても、各学年でちょっと弱い単元を選んで、その単元の終末に行っているところです。

 

 それから3つ目は、日常の授業の中でICTというツールをうまく活用して、授業の質を高めていくことです。具体的に、ICTの活用をどのようにやってきたかということについて簡単に触れさせていただきます。これは2月に子供たちが算数で使ったものなんですが、ちょうどこの時、総務省のICT絆プロジェクトで、日野市の本校ともう1つの学校に、4年生以上の児童数分、タブレット型の1人1台の学習者用情報端末が入りました。また、本校では、特別支援学級用には、このスレート型のタブレットを入れました。

 知識基盤社会において、ICTは不可欠なツールだと思っていますし、先日、デジタル読解力、PISAの結果が出て話題になりましたけれども、これからはやっぱり自分たちで情報を発信して、判断して、世界中のいろいろな考えの人の意見があるということを実感させていく必要がある。先ほど髙木先生もおっしゃっていましたけれども、そういう多様な意見を持っている方と交わしながら、何か知恵を出していくということが求められていきます。そういう素地を育成しなければなりません。ところが、調査結果では、マルチメディアの作品をつくることとか、表計算ソフトを使ってグラフを作成することがよくなかったということが強調されています。だからといってICTを入れて、まずはそういうデータづくりとか、マルチメディア作品をつくることを目標にするということはちょっと違っていると思っています。本校ではそれを日常の授業の中に入れて力をつけています。その紹介を先にしたいと思っています。実は総務省からいただいたタブレットは4年生以上の児童数分ということだったんですが、全教員が反対しました。可能性があるので、1クラス分の数を各学年に分配してほしいという希望が出ましたので、そのようにしました。今、各学年ブースに40台ずつ置いています。、

 1年生の事例です。これは5月の映像です。1年生とコンピュータとの初めての出会いです。コンピューターを丁寧に扱うことから始めます。起動したら、「ようこそ」と出てきて大はしゃぎです。「ようこそだって」というようなはしゃぎっぷりで、とても楽しそうにやっています。無理なく1年生から使っていますので、集中的にコンピューターの使い方ということではなくて、何か必要に応じて取り入れていくということで自然に身につくのではないかと考えています。写真では、国語のひらがなや漢字の手書きドリルで学習しています。これは非常に厳しくて、書き順が違ったらはねられてしまいます。教師が幾ら個別に寄り添っても、書き順まではっきりと、どの子がどう間違ったかまでは把握できません。

 2年生です。これは昨年の冬の実践です。算数で三角形や四角形の勉強をした後に、自分の生活の周りにもないだろうかということで探し回りました。この時、デジカメを持って取材しました。教室に戻って、グループウエアソフトを活用して、取材してきた画像等を取り込みます。一人一人がまとめた画面は、全員分、前のボードに映し出すことがが出るんです。それで発表し合って、「あ、こんなところに三角形があるのか」ということで、みんなで学び合っている、そんな実践です。

 3年生です。今回の国語の「書くこと」は、内容が問題解決型の基礎にもなっています。課題を設定して、取材して、構成して、記述して、推敲して交流するという流れです。これを基本として、社会科の地域探検の学習で活用・発展させています。自分たちが取材したことをみんなで統合して1つの場面に構成するという、そんな学習です。実際にカメラを撮ったり、グループで話し合ったり、1つの画面に構成したりしていきます。

 これは4年生です。4年生以上は理科でよく使っています。実際に女の子がデジカメで実験結果の様子を撮っています。これは動画です。簡単な動画を撮って、それを取り込んで、実験の方法とその結果を表現し、発表しています。物の温まり方の学習では、グループによって実験方法が異なりっていますので、それぞれのグループの発表から、「つまりこういう温まり方なんじゃないか」という知を導き出している、そんな授業です。高学年でも行っています。

 5年生です。「算数と情報」という授業です。これは表計算ソフトの勉強ではありません。実は、総合的な学習の時間に大豆を栽培しているんですけれども、班によって違ったテーマを追究しています。栽培して収穫した大豆、1株から何粒できるかとか、虫に食われたのがどのぐらいかとか、大きさはどのぐらいかというのを実際に自分たちが測定したり観察したりして、その結果の表し方をみんなで学びます。そのテーマにふさわしいデータは何なんだろうか、どういうグラフだったらわかりやすく伝わるのかということを算数で扱います。総合で体験したことに基づいて、算数でグラフを作成します。グラフの勉強はずっといろいろな教科でやってきているんですが、実際に自分たちで表計算ソフトを使ってグラフを作成するのは初めてです。ここでの学習は、以後の学習に生かされます。6年生では当然のように表計算ソフトでデータで示すという能力がついています。

 6年生です。同じく算数なんですけれども、これは、卒業に向けて感謝の会という、自分たちで運営していく会で、予算の計画を立てる際の学習です。自分たちの係で予算額を決めるんですが、査定委員会というものをつくります。その査定委員会が「この項目の予算額を見直してください」ということで、根拠を持って説明をして、その後、各係がもう1回練り直して、修正して、改善案を出すという、ちょっとした会議です。その際、表計算ソフトで集計したり修正したりするのは簡単です。これでもう少しこうやったらいいんじゃないかという積極的な意見のやり取りがありました。無事に会は終わりました。このように、何かツールの勉強ではなくて、普段の授業の中で情報活用能力を意識しながら取り入れています。これがとても大事なのではないかと本校は考えているところです。

 今、ざっとそれぞれの学年の授業実践を見ていただいたんですが、つい先日、文部科学省からも、21世紀にふさわしい学びの環境と、それに基づく学びの姿を示した「教育の情報化ビジョン」が出されました。そのビジョンの中に、これからの学びの姿ががイラスト化されて出ています。まさにこれからは、今までの授業にICTというツールを加えると、子供達の可能性が広がります。より個別に寄り添う学習ができますし、学び合いにより深まる学習が可能になってきます。今、本校では、あまり実践例がない中で、新たな実践を生み出しているところです。このイラストをもとにして、校内研究で各学年ごとにどんどんといろいろな実践をつくり込んでいるところです。

 ICTを、一斉学習で使うのはもう当たり前です。全学級に電子黒板が配置されておりますので、資料を提示したり、大きく映したりしています。同時に黒板も使います。黒板と電子黒板を上手に使いながら、場合によっては1人1台の学習者用情報端末も使いながら、ノートも書きます。そのあたりも上手に効果的に使いながら、一斉学習で当たり前のように使っています。

 それから個別学習においては、先ほど夏の補習学習で説明させていただいたんですが、算数で必要な単元の終末に個別学習支援システムを使っています。これは下の2つの図がそうなんです。そうすると、机の形も変わってきます。シュリケン型と言って、隣同士で少し相談したりもできるんですが、画面は見えないようなつくりということで工夫しているんです。学習形態も変わります。あと上の写真は、実際に図形作成ソフトで作った動的図形教材の「一筆書き」を活用しているところです。どうやったら一筆書きができるか、図形の条件を自ら発見し、その条件を用いて図形を判別したり実際に一筆書きできる図形を作成したりします。思考力が高まります。それから右上は、国語の音読の場面です。音読は、自分がどこが上達したかがなかなかわからないので、録音して、聞き直して、自己評価、相互評価から改善して録音し直し、自分の上達を実感するといった学習を行っています。

 協働学習は、より考えを深めていく学習です。写真は2年生です。2人で画面を見せ合いながら、画面がくるっと回りますので、「ここを私はこう考えた」という読み取りをペアでやって話し合っています。それから少しグループでも討論しています。それから下のほうは自分たちが一人一人、あるいはグループで練り込んだものをデータベースで発表しながら、「いや、やっぱりこうなんじゃないか」と意見交換しています。ねらうところは、いろいろいろな考えがあって、自分の考えも知ってもらうこと、それから相手の考えも知ること、それによってもとの考えよりも自分がちょっと進歩したな、考えが深まったなと思えることで、これはとっても大事なのではないかと思っています。

 本校はわかくさ学級という特別支援学級もありますので、「視覚に訴える」「個に応じた」「学び合い」というキーワードで、実物を拡大したり、自作教材を使ったり、個別学習支援システムを使ったりしています。個別学習支援システムの教材は手づくりです。やっぱり一人一人に応じたものをつくりたいということで、教員が頑張って作っています。手書きドリルも使っています。また、個別学習であっても、こうやって隣同士で学び合う姿も見られますので、こういう新しい学びに発展していくなというのを実感しているところです。さらに、1対1じゃないと対応の難しい子も、こうやって見合うことでコミュニケーションも広がります。そんな可能性も感じています。また、1人がつくったものをみんなで1枚の作品に仕上げるといった充実感があります。こんな協働学習の取り組みもしています。

 そんなわけで、学びのイノベーションに、我々教員が挑戦しているところです。このようなことを年に6回公開しています。公開視察です。もう3回の公開視察は終わったんですけれども、また10月、11月、2月とあります。全学級が授業を見せています。担当の学年を決めて、毎回、その担当の学年が説明会の中心となっています全教員が自分の校内の研究の内容を説明できることは大切です。組織力の一つとして、全教員で研究を進めることをモットーにしていますので、ぜひ見に来てください。

 最後に、35人以下学級を前提とした上で、私がちょっと大事だなと思うことだけを、すみません、簡単に話します。

 少人数での学びに欠けることを補う必要があるという、先ほど髙木先生がおっしゃったご意見と同じです。自分と異なる考え方との出会いというのがとても大事なので、あまりにも小さな人数になっていくと、それがなかなか難しくなります。そのときにこそ、ネットワークを使うと、異なる地域にいる子供たち同士のやりとりもできますから、そういう多人数化、異なる考えとの出会いをもたらすコミュニケーションツールとして使えるのではないかと思います。特に僻地や、遠隔地においては、そういうやりとりで学びが深まるということを補完できるのではないかと考えます。

 それから、一人一台の学習者用情報端末を活用する際には、チームティーチングが有効です。少なければ少ない人数であればいいのかというと、そうでもありません。ICTを使ってくると、より一層子供に寄り添う場面が出てきます。教員が複数体制でチームでやるというやり方がとても有効になってきます。そういった意味では、担任の他に、チームティーチングの指導者が配置されていると助かります。教員の数にしても、学校にゆとりがあると、とても便利だなと考えます。

 今、何とか教育、何とか教育というのがたくさん出てきています。でも、学校には余裕がなくなってきていますので、1人でも多くの教員の配置があると、そういう新しいものにも取り組みやすくなります。また、大学院とかいろいろな学ぶ機会も増えていくと、教員が新しいことに自分から学んで取り組んでみようかなという気持ちが強くなると思います。そして、未来を担う学校に、新しい風が入ってくる機会につながると思います。ぜひ加配の措置が学校にあると、学びもよりよいものが早く、学校の中に浸透する1つのいい動きになるかなと考えているところです。

 長くなりました。すみません。以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

【木村主査】  どうもありがとうございました。

 それでは、第1部の最後、赤井大阪大学大学院国際公共政策研究科教授にお願いをしたいと存じます。「少人数学級・少人数指導の取組及びその効果」についてでございます。赤井先生20分程度で、お願いをいたします。

【赤井氏】  はい、ありがとうございます。こんにちは。大阪大学の赤井です。所属は国際公共政策ということですけれども、皆さんご存じの、公共政策大学院というところで、経済学、政治学、法律で公共政策を考えようという大学院なんです。私の専門は公共経済学で、財政面から考えていこうということで、財政というとどうしてもお金の話になるんですが、日本で少子高齢化問題も大きいですし、教育は当然重要なんですけれども、教育政策を行っていく上で、やはり効率的、効果的、さらに一番重要なのは、説明責任。それがほんとうに社会的に価値があるんだと。価値はあると思うんですけれども、それを事業仕分けではないですけれども、国民にきちっと説明していくということが一番重要なので、そういう視点も含めて、少人数教育についての意見を述べさせていただきたいと思います。

 この会議の前に何回か会議は開催されているようで、その資料も見せていただいて、もう既に少人数教育に関してはたくさんの議論も、資料も、先行研究も、また今日の後半は研究所からもたくさんの研究成果が出てくると思うんですけれども、たくさんある。事例はもちろん、小学校で価値があったというお話もたくさんありますし、海外事例でも効果があるというものもあれば、データを使った分析になりますので、そのデータの取り方、分析方法によってはそうでもないというさまざまなものがあって、絶対というものはないと思うんですけれども、そういう試みをどんどんしていくということは当然重要かなと思います。これを踏まえた上で、さらなる視点、どういうことを考えればいいのかということをちょっと述べさせていただければと思います。

 さらなる視点の1つ目ですが、効果ということで、当然、効果を最大化するということで、同じ予算を使って一番効果を上げられる、その効果の中でも一番いい政策をとるというのが一番重要なんですけれども、効果の度合いも多様性があるので、どういう視点が重要かということで、少人数教育は当然効果があるんですが、もっといいものがあったら現場でそちらを採用することを認めるのか認めないのか。例えば全学校全教科で少人数化を強制するための財源確保なのか、そういう少人数化でやりたい、効果があると思ったところに少人数化ができるための財源確保なのか、そのあたりを少し明確にするのがいいのかなと思います。

 少人数化で教員を増やすということなんですけれども、この4月から35人学級が始まって、そこでは柔軟な学級編制ということで、無理に35人にしなくても、学校の判断で教員を張りつけて複数担任制のようにするとか、そういうことも一部柔軟性を持たせているので、そういう視点ではよりさまざまな事業を組み合わせて最大限の効果を得るという視点は入っているのかなと。科目・内容ごとの教員配置・学級編制などは、自治体の判断に任せるということなんですけれども、強制していればある程度INPUT基準ということで、強制して35人だから効果はあるんだという説、逆に言うと、データがとりにくいときにINPUTで、それが形式的には説明責任になっているということはあると思うんです。最大効果を出すために自由度を与えると、あとは評価体制ということで、当然35人じゃなくて、複数担任制をやったほうがよかったという説明責任を相手に負わせる。学校はそれがいいと思ってやっているわけですけれども、学校にきちっとそれを説明させるという評価体制も一緒に入れていくことが重要なのではないかということです。

 もう1つ、それはあまり財政的な視点ではないんですが、少人数化を達成している自治体は既にあったわけで、その自治体と、してない自治体との格差を今回埋めようということですけれども、少人数化を達成していた自治体では、お金が浮いてくるというか、そういう部分が出てくるので、その財源がどのように使われていって、結果としてその余ったお金がほんとうにいいように使われたのか。だから、制度を入れて最低限のボトムアップを考えるのはいいんですけれども、上の部分でどういうことが起きているのかということもきちっと把握しておく必要があるでしょうと。

 それから、財政支出。財政の観点からいうと、ご存じのように、現在、義務教育国庫負担金3分の1が直接文科省から出ていますけれども、3分の2は交付税で手当てされています。事実上は交付税で手当てしているということになって、交付税というか基準財政需要額ということで、正確に言うと地方財政計画で手当てしているわけですけれども、当然日本の財政状況を考えると、地方財政計画の中身というのは結構ブラックボックスで、交付税手当て分を文科省が事実上、形式上増やしたとしても、交付税は増えてないという現状なので、例えば今回でも、国としてはそういう方針を入れたといっても、3分2の部分で持ち出しというんですか、そういうことが実際起きることになるし、交付税は増えないまま持ち出しということになれば、そういう影響も出てくる。後でちょっと、財政の話を最後のほうでさせていただきたいので、そのときに話しますけれども、実額負担県ということで、文科省が用意したお金を十分使い切れずに返額するというか、使えなかったので文科省に返しますという県がどんどん増えてきています。それは11ページに表があるので、その表を見てもらえば、ぐーっと上がっているのがわかると思うんですけれども、後でまた説明します。そういうものも、制度の中で、見えない部分で起きていることなので、それが実際どう自治体政策に影響を与え、財政負担に影響を与え、教育の中でも影響あるでしょうし、教育以外の部分にも影響があるでしょうし、そういう部分も含めた調査というのも一緒に行っていくことが、効果を見る上では重要ではないかというのが1つの視点です。

 それで2番目がコスト、財政とか仕分けとか言うと、コスト、コストと言うんですけれども、コストを把握する。コストだけですべては議論できないと思いますが、コストを把握するということが重要で、コストをできるだけ小さく、効果はできるだけ大きくということになります。研究成果がいろいろ、少人数教育は価値があるのかないのかという議論は海外でもたくさんあって、今日も出てくると思うんですけれども、コストを考慮した研究というのはあまりなくて、少人数教育を行ったところで学力が伸びたかどうかという議論、確かに伸びているということになればいいと思うんですけれども、やはりコストもどのぐらいかかっているのかということを把握する。さらにベネフィットの金銭評価、難しいと思うんですけれども、できる限り金銭評価をしていくということで、そういう努力をしているのかどうかというのはかなり予算折衝においても、国民に理解を得る上でも重要で、事業仕分けのときでも、コストとベネフィットに関してどのぐらい努力を、要するに説明するための、把握するための努力をしているのかがすごく重要になっているので、無理だと言わずに、コストとベネフィットも考慮するという分析をする、そういう分析をする努力をしておくことが今後重要になってくるのではないかというのが2つ目の視点です。

 言いたいことは3つだけなんですが、3番目が結局、少人数化がいいという議論をされているんですけれども、それが最も効率的なのかというところが十分まだ議論されていないように思うので、政策パッケージとして考えて、少人数化がほかの政策に比べてより効率的であるならば、ほかよりもいいという説得性が必要になってくるのかなと。ほかのものをやめて少人数化に入れかえるということも当然重要になってくるし、それだとコストは節約できるというか、入れかえになるわけですから、節約できるということなので、1つのものよりも、今日のご発表の中にも当然あったと思うんですけれども、少人数化だけじゃなくて、ほかのICTなり、ほかの設備と組み合せればもっと効果があるんだということになれば、そうだと思うので、そういう視点の議論というものをもっと深めていくことができれば、もっと効果的な議論ができるのかなと。

 言いたいことはその3つなんですが、それに加えて、ちょっと財政的な視点から、少しこの研究会の範囲を超えるかもしれないんですけれども、ほかの視点ということで、加配定数の再分配とのセット、学校統廃合の促進とのセット、小規模校校長兼任、いろいろな視点はあると思うので、そこを含めると。さらに、もっと大きい意味での、国がどのぐらい責任を持つべきなのか、国と地方の責任分担というか、役割分担。あと、それを担保する財政の責任分担。それに関して、残りの時間、少しお話をさせていただきたいと思います。

 それで補足資料という形にしたんですが、1で市町村への権限の移譲。これ、私は関西出身なんですけれども、関西、大阪のほうで権限を入れていこうということなので、それに関しての議論というのも結構重要じゃないかと。あと、教育財政システムの設計。つまり国・自治体・学校の役割・責任分担というところも重要じゃないかということでちょっと考えを述べさせていただいて、参考にしていただければなと思います。

 都道府県から、ちょっと字が小さくて申しわけないんですけれども、結局これから話すことは全部インセンティブと公平性のバランスになってくると思うんです。経済学では、インセンティブとリスクのトレードオフ、効率と公平のトレードオフ、そういうふうに言うわけですけれども、公平性を確保ということになると、ある程度調整が必要になってくる。都道府県で権限を得ているということだけれども、実際、政令指定都市では人事権が移譲されているわけで、今度議論されたのが中核市で人事権を移譲という話が出て、さらに大阪では、ほかの都市へもどんどん行くと。連携して、人口規模さえとらえられれば移譲していけばいいのではないかという議論があって、移譲可能な広域自治体の規模の基準や、広域自治体の場合、責任はどこが担うのか、責任の明確化、どのような組織体制がいいのか、そういうところを含めてやることも、政策パッケージというか、議論をして絡めていくことも重要なのではないかという1つの視点。

 それから、財政に関しては、やはり地方をどこまで国が面倒を見るのかということで、特に出てくるのが義務教育費国庫負担金というお話。現在3分の1がダイレクトに出ていて、3分の2が一般財源で交付税経由ということになっているわけですけれども、そこの3分の1、3分の2というバランスがいいか悪いかというのがあって、いいか悪いかは別としても、それによっていろいろなひずみが出てくる。これが平成20年度と21年度の実額県ということなんですけれども、全国を見ながら、各県ごとの教職員の年齢構成を反映して、教職員定数、そういうものとか単価とかから、国庫、交付税措置分の必要額を決めているわけですけれども、実際給与削減というのを行うと、教員定数というのは標準法で決まっているんですが、それを満たしながらでも実際必要な額というのはそれぞれの地域で変わってきて、当然、今、財政が大変ですから、教職員の給与もカットしているわけです。

 これが20年度、さらにもう1つが21年度、これを見てもらったらわかると思うんですけれども、少し増えていると思うんです。実際に文科省的に計算をした額は、給与カットの結果、使い切れないというか、使わないと。使ったら自分の持ち出しが3分の2あるので、カットする3分の2のインセンティブもあるので、カットをして3分の1は返さないといけないんだけれども、3分の2は節約できるという意味での給与カットというのが進んでいます。定数は満たされていないといけないため、それで授業の質は保たれているという議論もあるかもしれないですが、その一方で教職員の給与が下がり、インセンティブはどのように変わり、質はどのように変わっているのかというところで、単なる少人数学級ということだけで起きる問題ではないし、今回、少人数学級を入れることによって、3分の1は出ますけれども、3分の2が自己負担になったところでは、よりプレッシャーがかかる、お金が出せないということで、教職員の給与を下げるとか、ほかの面での影響が出てくるので、少人数学級の話をするときに、少し遠いですけれども、こういう財政的な影響も考える必要があると。

 このグラフが、16年度から21年度にかけて、実額負担県、まさに、いわゆる想定している金額を使い切れなくて文科省に一部返済している県が、21県に上ります。47都道府県のうちの半分まではいってないですけれども、結局、こういうことが起きているというのをどのように考えるのか。これと少人数学級は直接関係しないかもしれないですけれども、少人数学級がこういうのを助長する1つの原因にもなり得るという可能性があるので、そこも考える必要があるのではないだろうかと。

 もう少し時間があるので、最後は少しまた、さらに離れますが、義務教育費負担のあり方ということで、これを簡単に読んでいただければいいと思うんですけれども、ポイントとしては国が全額見るのか、国というか文科省から全額出すのか、交付税経由で全部やるのか、国と地方両方でやるのかというようなところの3つに分かれてくると思うんですが、1番目がいわゆる100パーセント国庫負担ということです。それは地方の財政に左右されることなく教育が実施されるということですけれども、どこまでそれをやるのかというようなところ。競争という観点や、インセンティブと考えるなら、やはり自分でやりたいというところもあると思うので、そういう意味では一般財源による全額地方負担、そのバランスとしては3分の1と3分の2になっているんですが、それが3番のHYBRID型のような形で整理できるのかもしれません。

 どれがいいのかほんとに難しいんですけれども、考え方としては、やはり国民がどこまでを国で見てほしいのか、どこまでを公平性という形で全員平等にしてほしいのか、下のレベルですね。あるところからは、やはり日本を支えるのは、こんなことは文科省では言えないのかもしれないんですが、ある程度は、要するに日本を支えるのはエリートで、エリートというか、一部の人が頑張って日本を引っ張っていくんだったら、その人に重視した、特化した教育制度というのも必要になってくるかもしれないということで、それを国民がどう考えているのかということをしっかりと把握して、それをベースにこの方針でいくんだというのを示すことが国民に教育政策のあり方を考える上で重要なのではないだろうかと。

 パラメーターを把握するのは難しいんですが、そういう努力をしっかりとしていくということで、国民がどう考えているのか、最終的には政治決着で、政治上、今進んでいる方向は国民の考えだという形でいいとは思うんですけれども、政治もいろいろ混乱していますし、4年に1回しかというところもありますので、そういうところとのバランスで、やはりパラメーターを把握して、きちっと方向性を見ていくということは重要でしょう。

 あとは、格差を許容していれば競争インセンティブだという話はあるんですが、格差も料金格差、サービス格差、アクセス格差などあると思うので、単なる格差を許容するかしないかということではなくて、あらゆる視点から国民の考え方をきちっと整理しておく必要があって、どちらの方向を目指すのかというのがわかってくるでしょうと。

 ここはパラメーターの把握をどういうふうにしていくのかということなのでいいと思うんですけれども、最終的には、私の意見としては、データに基づいていないのであんまり学者が言うべきじゃないと思うんですけれども、やはり国の責任ということでは国が100パーセント国庫負担するのがいいのではないかと事業仕分けのときも意見を述べたんですが、そのためには国民から文科省が信頼されないといけないということなので、ガバナンス制度の構築ということで、今までインプットで縛っていたものをアウトプットにするんであれば、評価システムをきちっと入れる。その評価も徹底した権限移譲ということで、学校現場に柔軟性を持たせるとともに、例えば教育長とか学校長とかにきちっと責任を与えて、そのかわり自由度も与える。チェックをし続けて、最低限のレベルを達成していない場合には徹底的に介入する。そのとき介入するのは当然いいと思うので、最低レベルをどこまできちっとするのかという基準とか評価づくりをつくっていく。そうすることによって信頼をかち取って、それでしっかりと教育行政を行っていく。

 最後ちょっと大きな話になりましたけど、そういうふうにしていくのがいいのではないかという意見も踏まえて、後半のほうは意見なので何かの参考になればと思います。

 以上です。ありがとうございました。

【木村主査】  赤井先生、どうもありがとうございました。

 それでは、お三方からプレゼンテーションをいただきましたので、ここで少し時間をとりまして、ご質問、ご意見等をいただきたいと存じます。特に順序を決めませんので、どなたのプレゼンテーションについてでも結構です。ご質問、ご意見等ございましたら、お願いしたいと思います。

 どなたかどうぞ。清原委員。

【清原委員】  ありがとうございます。三鷹市長の清原です。

 五十嵐先生にご質問をさせていただきます。実践に基づいたお話で、大変具体的で興味深く伺いました。この検討会では学級規模と教職員の適正配置について検討をしていることから、幾つかさらに教えていただいて深めたいと思うんですが、1点目は授業改革ということで、目標としては学力向上を第一に挙げてICTの活用を図ってこられました。その中で、学級規模というよりも、むしろチームティーチングが有効であるということも示唆されましたので、ICTを活用する場合というのは、いわゆる学級規模が大きいとか小さいとかというよりもICTを活用する教員の指導の仕方にかかってしまうのでしょうか。つまりICTを活用する場合の学級規模についてどのようお考えでしょうか。日野市の人口とか学級数とかをよくよく承知していないので確認なんですけれども、35人を軸として、ご意見があれば教えていただければと思います。

 2点目に、必ずしも教科によっては、このようなICTを生かせないものもあるのではないかと思いましたら、かなり多様な教科で学年ごとに工夫をしていらっしゃるようで、そちらの小学校では、いずれもICTがない教室風景が想像できないような実践ぶりだと思うんですけれども、そのときに教員が手づくりの教材をつくることにかかる負担、したがって、加配が重要であるとも示唆されましたし、教員のあり方が、学級の指導から教材づくりも含めたコーディネーターというんでしょうか、そういうような方向に変質していくのかといった方向性もお話しになられましたので、それはこれまでの、いわゆる授業の技術とは違うことにもなっていくかと思われます。1学級を指導する教員が1名ではなく最低2名程度必要なのかなとも感じ取れましたので、そういう印象でよろしいのかどうか、お聞かせいただければと思います。

 どうぞよろしくお願いします。

【木村主査】  それでは、五十嵐先生、よろしゅうございますか。

【五十嵐氏】  ありがとうございます。電子黒板が教室に入るスペースとか、見やすさといった物理的な面以外には、ICTを活用する授業だから何人までということは全くないと思います。使い方によると思います。人数が多ければ子供の目が行き届かないのは同じことです。ですから、本校でも今40人に近い学級がありますので、早くこの学年にも35人学級が適用できないかなと思っているところです。

 ただ、授業の方法論として、例えば個別にきちんと見取らなければいけない学習のときに、個に応じた教材を与えたときに、ある程度までは、コンピューターに任せられますが、どうしても任せられない子がてきます。、そのときこそが人間教師の出番で大切な役割なんです。そのときにやはり1人では厳しいんです。個別学習をすればするほど私たちは加配、TTの必要性を感じているところです。

 もう1つは、地方の小規模の学校では、多人数での意見交換が非常に厳しいので、ほんとに協働学習をやりたがる。それはなぜかというと多様な考え方が出ないからです。やっぱり多くの立場の違った人たちといろいろ意見を交わすことがとても必要になってくるので、

小規模の学校において学びを深めるためにそういうやりとりが必要になってくるのではないかと思います。

 もちろん本校で協働学習を進めて意見を交換するだけでも、ほんとうに子供は多様な考えをしていて、それに改めて気づいて驚かされるという場面がたくさんあります。そう考えると、地方に限らず、小さな学級規模になっているときほどICTがとても大事なツールになるのではないかと考えます。35人学級とICTというお題をいただいたときに、確かに電子黒板は大型なので人数が多いと入らないし、人数が少ないほど見やすいという具体的な悩みも聞いていますので、物理的にも絶対少ないほうがいいとは思うんです。けれども、実際にどういう学びの方法かによるのではないかなと考えます。

 それから2点目なんですが、これはほんとうにやればやるほどおもしろくなってきました。本校はそもそも算数での活用から研究を始めましたから、算数、理科の学習での効果は非常にあると自信をもって言えます。しかし、芸術教科は今までどおりがいいのだと思っていましたら、そうではないんです。図工の教員がデジタルペンでこんな授業をしました。デッサンをするときに、完成形の作品鑑賞だけではなくて、作成過程を互いに見合う学習をしました。どういう過程で描いていったらいいものができ上がるかというのを、そのツールを使うと再生できるんです。その子はどこから描いて完成するかということを、時間を短縮して再現させ、振り返れるんです。そうすると、どういうふうにデッサンをしたらいいのかということを全員で共通理解できます。その学習をした後の子供たちの絵がぐっと変わってきました。そういう学習履歴をとってやることについては、これは図工には有効だなという話もありましたし、音楽の教員も違う使い方で実践していますので、私は、教科でのICT活用は専門性のある教員が工夫をして頑張ればいろんな可能性があると思っています。まだまだわからないところがたくさんあると思っています。

 そういったときに、やればやるほど教員は自作の教材をつくりたがります。ところが時間的にも無理です。特に特別支援学級の教員はほんとうに一人一人の個に応じた教材をつくりたがるんです。この子にはこういう教材を作ってあげたいと。そこで本校では専門の方にお願いをしてつくっていただいきました。アイデアはやっぱり教員です。こういうふうに使って、こういうふうにやりたいんだけど、こういうふうにつくってくれないかという案を出します。ただ、それがそのままつくってくださる専門の方には伝わりにくいので、その辺は、教科教育のこともICTのことも専門でいらっしゃる大学の教授の方がうまいこと間に入っていただいてつくり上げてくださいました。これからはいろんな個に応じた教材をつくるためには教員がそれをすべて担うのは無理ですので、そういう方が学校と教材作成の専門家とうまくつないでくださるとうれしいです。現場を知らない企業が莫大な予算をかけて、難しい多機能なコンテンツをつくるということではなくて、日々の日常の、明日の授業に役立つようなちょっとしたものをすっとつくれるような調達の仕組み、それは1つの学校だけではなくて、全国にも共通できますから、そういう仕組みができれば全国でも共有できるのではないかなと考えます。

 もちろん、教材を作成することも教員の力を付ける一つにはなります。教材をつくればつくるほど、教材はどのようにできるかが理解でき、子供はどうつまずきやすいのか、どういう順番でつくっていったらいいのかという基本的な教材論から指導論に入っていきます。こういう経験もどこかで必要なのかもしれません。しかし、それ以上に、これからの未来の学びを実現できる教員としての力が必要だと考えます。子供の学びをコーディネートしていく力、多様な考え方をつなげていく力がプラスアルファで加わるのではないかなと考えます。

 以上です。

【清原委員】  ありがとうございました。

【木村主査】  よろしゅうございますか。

【清原委員】  はい。

【木村主査】  ほかにどうぞ。どなたかございませんか。

 土居委員、どうぞ。

【土居委員】  ご説明どうもありがとうございます。赤井先生に1つご質問なんですが、先ほど11ページというか、11枚目のスライドの実額負担県の話をされたんですけども、中教審の初等中等教育分科会の昨年の7月の提言でも、この点について触れられていて、それは総額裁量制の導入と関係があるんじゃないかという話があるんですけども、これに関しては、赤井先生、どういうふうに思っておられるのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思うんですけど。

【赤井氏】  いろいろな制度が絡み合っていると思うんですけど、自由度を与えるということで、そういういろいろな制度を入れていくと、やはり自治体財政が苦しいところは給料を下げていくということにもなっていきますし、こういうことが起きる理由は、100パーセント国が見ていればまたそれは違うんですけれども、3分の1と3分の2という分け方をしているというところと、あと、総額裁量制の話もありましたけど、自由度を与えるということをしていくと、どうしても当然格差は出ていくわけです。

 その格差を何らかの形で国は見ていかないといけなくて、1つは定数ということで、ここを見ていただいたら、未充足というのは一部ついていますけど、充足していると書いているので、これは年度途中のところ、たまたま5月1日に人が足りなかったというだけで、事実上定数に関しては規定どおり入っているので、給料は関係なく、教室内に何人の先生がいてどういう指導を行っているかという目に見えるインプットに関しては国がちゃんと責任を持っている。だから、いいと見るのか、ただ、そうではなくて、給料も下がってきていて、国が想定していたほどのお金がそこで使われていないと。それは当然自由度を与えたわけですから、それはいいと見るのか、だめと見るのか、そこは全体の評価ができていないとやはりこれは問題になってきて、できないからインプットではかるんだという考えもあれば、ここは定数さえとれていればいいと見るのか、あとは自由を与えているからには評価システムを確立しておかないと当然ここは問題だという話にもなってくるので、まさに評価システムをつくっていない状態で自由度を与えていくと、いろいろな説明というのが難しくなってくるという話なのかなと思います。

【土居委員】  そうすると17枚目のスライドでご指摘になった一括交付金というアイデア、もし評価システムを、しかるべきものを設定し、かつ、いわゆる総額裁量制の中の最高限度額、3分の1補助という補助率の問題は棚上げにするとしても、結局実額負担県というのは最高限度額に達していないので、それを返したというか、事実上その分だけお金は要らないとみなされたということだと思うんですが、もしある一括交付金を設けて、ここでいうところの最高限度額に相当するような金額を交付すると。かつ、それはもっとちゃんと評価をした上で自由裁量の余地を与えるということであれば、特段お金を国に返さなきゃいけないというような話にはならないで済むと。ただし、そのかわり自由裁量を与えるからにはちゃんと成果を上げてくれという話になると、そういうふうに理解してよろしいですか。

【赤井氏】  そうだと思います。まさに一括交付金という話はあまり詳しく述べなかったので、こういう場では直接この議論じゃないかなと思ったんですけど、まさに一括交付金で文科省が出すわけですから、教育分野というのは限るんですけれども、それは徹底的に評価をした上で、それに見合っていれば教育分野であれば何に使ってもいいし、決められた想定のもので十分節約できているなら教育分野のほかのものに使ってもいいし、最低限のクリア、それは全国調べながら幾ら渡せばいいかということも当然やるわけですけれども、最低限のレベルをきちっと評価できるレベルであればそこは自由にしていいと。でも、評価システムがない限り、こういうのを入れると何に使っているかわからないという話がまた、要するにインプットからアウトプットに変わるときは評価システムが重要だという話だと思います。

【木村主査】  ありがとうございました。

 ほかにございますか。どうぞ、小川委員。

 あ、先にお手が挙がっていました。米田委員、お願いします。

【米田委員】  お願いいたします。髙木先生にアドバイスいただければありがたいんですが、私は3月までほぼ全員がセンター試験を受ける高等学校におりましたので、髙木先生の「笑えない国語科の現実」というところ、ぐさっとくるような感じでよくわかるんですが、いずれ本県では小学校、あるいは中学生の段階、小学校の段階から、特に今年から問いを発する子供たちを意識的に、意図的に育成しようということで、大きなスローガンとして掲げていろんな場で打ち出しております。

 基本的には公の場で自分の考え、あるいは自分の疑問を積極的に出してほしいということで、そういう子供たちを育てようということなんですが、自分が自らいろんな問いかけをすることによって、自分の疑問点をもちろん解決することにもなるし、おそらくはほかの人たちが質問として出されないかと思われるようなことも、自分が質問することによってほかの人たちも疑問を解決することにつながるだろうし、となれば、クラスのほかの人たち、クラスメートに対して、ある意味ではサービス、貢献にもなるだろうと。そうすればクラス全体の学びにもつながるし、それが結果的にはクラス全体の学力の向上にもつながることにもなるであろうということで、とにかくどんどん積極的に質問を出すようにしようと打ち出しています。

 クラスサイズによって、あるいは生徒、児童の性格によっていろいろ違うところはもちろんあるんですけれども、問いを出すときに、最初スモールグループ、小さなグループの中では仲間に質問を出せる人がもちろんいるわけですが、全体の中でなかなか出せない子供もおそらくいるだろうと。それから、クラスの中で指導方法の工夫によってできるだけ多くの子供が発言できるような仕掛けをもちろん先生はつくっていくことができるんですが、子供たちが、ある一定の授業時間の中で最大限いろんな発言ができるようにするとすれば、やはりある程度クラスの人数は少ないほうがいいのかなと予測される、多分そうだろうと思うんですが、そういうふうな観点から、今、秋田県は30人程度の編制を行っているところです。この後小学校の高学年、あるいは中学校でも2年生、3年生あたりまでもっていけば、もっとそういう力を出して、そして、そういうふうな発言する力がついてくるのではないかなと思うんですが、その辺、髙木先生のお考えというか、簡単で結構ですので、教えていただければと思いますが。

【木村主査】  高木先生、お願いします。

【髙木氏】  問いを発する力を子供たちが身につけるのはとても大事なことで、昔は大人が問いを与えて、それに対する正解を求めたということが多くて、今でも実際にそれは多いわけですけれども、問い自体を自分たちでつくる力というのはとても大事で、それは多分学び合いの中で知ることが非常に多いんだろうと思います。

 これは今回のテーマからしても、あまりに多いと収拾がつかなくなりますし、あまりに人数が少ないと問いのバリエーションも生まれないということで、学び合うための一定の規模が必要だと言えると思います。

 先ほどの調査からしますと、30人内外ぐらいが適当かなと僕は思いますけれども、今おっしゃったように、みんながみんないきなりクラスの前で意見などを言えるわけでもないので、やっぱり小集団である程度できるということも必要だと思います。そうすると、やっぱり小集団に分かれて、ある程度のバリエーションが出るようなことを考えますと、4人グループを幾つできるかみたいな、例えばそんなようなことを考えなければいけないのかなと思います。

 それから、最終的に子供たちみんながクラスで自由に発表できるようになったり、問いを発することができるようになったりするというのが理想ですれども、その過程では、いきなりできる子ばかりでもないし、最後までできない子もいると思うんですが、その指導過程で、先生たちがノートとかそういうものをうまく生かして、丁寧に見てあげて、授業中意見は言えないんだけれども、ちゃんとよく考えている子を引き出してあげるということも必要だろうと思います。そうすると、やっぱり先生たちが事前に子供たちの書いたものをよく読む、それから、そのためのノート指導、前回の会議の資料を見させていただきましたけれども、秋田県はそういうことをすごく熱心にやっていらっしゃるようですけども、ノートとか板書の指導もすごく必要になってくると思います。ノートを丁寧に見てあげたり、それを次の時間にすくい出してあげたりということから考えましても、人数は一定程度に抑えていくことも必要だと思います。

 ただ、これは大学にいて思うんですが、大学でも対面的、双方向的な授業を僕もかなりやっています。僕はものすごく板書しますし、それから授業中もものすごく話し合わせますし、それはそれで多分学生は満足してくれている部分があるとは思うんですが、ただ、教養の授業なんかは必ずしもそういうことばかりができるわけでもないので、やっぱり学年の発達というか、それに応じた話し合わせ方の違いみたいなことも出てくることも必要だと思います。例えば高校生が、小学生と同じように話し合う場面だけでいいかというと、そういうこともないだろうと思います。ですので、それぞれの発達に応じて適正なクラス編成みたいなものがあると思いますので、そういうことをご検討いただけるといいのかなと思います。

 ちょっと余談になるかもしれませんが、小学校の低学年のクラス規模をまず検討されていると思いますので、私が聞いた中で大変ショックを受けたことで申し上げますと、先生方はよく知っているかもしれませんけども、1年生で入ってきた子供を、ボランティアのお母さんが面倒を見ているような、システムが盛んに行われていますけど、ある男の子が、そのお母さんのことも先生のことも、てめえ、てめえと呼んでいたと。さすがにむかむかするわけです。でも、休み時間になるとしがみついてくる。この子は一体なぜそういうふうなんだろうと思って、ずっと観察を続けて半年ぐらいたってわかったことは、その子は家で親からてめえと呼ばれていた。その子にとって二人称はてめえしかないわけです。そういう子が昔より明らかに増えているわけです。そうすると、てめえと呼んでくるような子供たちを大量に抱えたら、先生はその指導だけで膨大な時間を使ってしまう。それで、なおかつ教材をつくれとか、教材研究をしろと言われてももう限界があるわけです。

 そういうことも含めて適正規模で、とにかく小学校の小さいうちに「話す・聞く」の態度をしっかりつけるとか、そういうことをきちっとやっていただくことが、その後の効果が非常に高い、効率がいいということで言えば、小学校の低学年を厚くフォローしていただけるということがまず大事で、それができた段階で次を考えていただくことが大事。

 同じようなことを中学校でも聞きます。小学校もいろいろなので、例えば学級崩壊したクラスから中学校へ上がってきた子と、そうじゃないところから上がってくると、やっぱりものすごくクラス経営が大変になって、でも、中学生ですら1年生のときに「話す・聞く」をきちっとやればすごく変わってくる。特に「話す・聞く」というのは実際にやらせることが大事ですので、それが可能な人数、そういうものをぜひ考えていただきたいなと思います。1つの目安は30人前後だと僕は思いますけれども、それを目安にしていただければなと思います。

【木村主査】  ありがとうございました。ほかに。

 どうぞ。

【貞広委員】  ありがとうございます。赤井先生にご質問させていただきたいのですが、17枚目のスライドのところで、一括交付金のことに関連して、一括交付金に関しては徹底した算定根拠を出さなければいけないというお話でしたが、この算定根拠についてお考えがあるところをお教えいただきたいと思います。

 と申しますのは、算定根拠を考えるときに、例えば現状、または実態から後追い的に単価を出すようなこと、つまり今これだけ出しているから、これが算定根拠、単価であるというような考え方では不十分であるのは言うまでもないと思いますが、それと同時に、例えば本日ご提示いただいた効率性や公平性という観点のみに依拠しては適切な教育環境は担保されないのではないかと思います。

 更に、より重要なこととして、今日のほかの方々のお話を聞いていますと、適切な人数には、学年や教科や学習単元によって複数のバリエーションがあるということがわかりました。つまり、「学習」といってもその有り様は一様ではなく、適切な人数には、その学習の在り方の組み合わせによって複雑なバリエーションがあるということです。こういうケースについて、徹底した算定根拠をどのようなイメージから考えたらいいのか、少しお考えを教えていただければと思います。

【赤井氏】  まさにそこは難しい問題なので、そこのところは現場も見ないといけないと思うんですけれども、配るからには説明責任が当然重要になってきて、どのぐらい必要なのかということはわかってきて、そこのところは透明性と徹底性と、あと簡素性というわかりやすさがあって、結局交付税制度もそうなんですけれども、自由に使っていいよと。だけれども、その額は幾らがいいのかというのはやはり算定しなければわからなくて、そのためにすごく、電話帳のような算定根拠というか、算定式があるわけです。

 それはそれでちゃんとやっているという意味では、透明性というのはあるんだけれども、それも分厚過ぎて、細かく見ていけばわかるけれども、複雑でわかりにくいというところがあるので、やはり最終的には国民がそこのところのバランスも考えた上で、どのように算定しているかというのがまず見えないといけないんですけれども、その根拠も徹底してやっているというのも、すべてをやって複雑という意味ではなくて、説明をして、国民からの質問にはちゃんと徹底して答えられるという意味で、そこが難しいんですが、それぞれ根拠というのも、例えば先進的にやっている例とかいろいろな例を踏まえた上で、総合的に複雑な中からわかりやすいポイントをとらえて算定していくみたいな感じになっていくのかなと、そこのところはほんとに難しいので、一緒にまた考えさせてください。

【木村主査】  ほかにございませんか。

 どうぞ、藤崎委員。

【藤崎委員】  藤沢市教育委員会の教育委員の藤崎と申します。五十嵐先生に質問です。その前に藤沢市の現状として、藤沢市内の小学校35校には、一応教員に対してのパソコンの配給はまだしておりません。ただ、全校に電子黒板はあるんですが、実際視察に行きますと、物が置かれたりしていてほとんど使われていない学校も多い状態です。

 特に読み、書き、そろばんの学力を伸ばすことについて、この平山小学校の取り組みに関心を持ったんですけれども、例えば小学校でこういった学習をして、日野市内では中学生に進学した後どのような状況になっているか、また、市内全体としてICTの活用がどの程度進んでいるか、それから各学校、どれぐらい、予算って難しいと思うんですが、そういったことをお聞きできればと思います。

【五十嵐氏】  ありがとうございます。機器を整備するだけでは使われないのはわかるような気がします。日野は平成18年に、整備と同時にサポート体制の1つとしてメディアコーディネーター制度を、国では今ICT支援員といっていますが、その体制を整えました。これも実は教員免許を持つ者に限ったんです。教員免許を持っている人ということで、結局集まったのは教員になりたいという、一たん卒業したけどまだなれていない人たち、あるいは教員を目指して免許を取得中の人だちで、今も都内にいろいろ散らばっていますけれども、そういう人たちを求め、教員に寄り添ってもらいました。、当時はまだ年配の先生がうまく使いこなせなかったりして随分ばらつきがありましたから、今までの長年の環境が変わることへの負担を感じさせない、寄り添って楽しいんだよというような働きがけをしながら市内の学校に全部入りました。小学校は1週間ごとに入り、ICTを活用した授業の第一歩のお手伝いをしました。中学校は3週間ごとに入りました。そうやって慣れてもらったのです。やっぱり最初は、今まで培ったやり方というのにこだわりますから、そうじゃない新しいものがあるんだ、それはこんなに子供達に意欲を持たせられて楽しい授業になるということを一緒に感じましょうというスタンスでいきました。今は、当たり前のように市内小中全部の学級で使われています。

 あとは、学校評価の項目は、平成19年度から市の重要施策については共通にしています。日野市はICT活用教育、特別支援教育、幼小中連携なんですけれども、そのことについては全校が取り組み指標と成果指標をつくっていますので、ICTについて、学校評価に関わらない学校、無関係な学校はないんです。また、先ほど紹介しましたように、認証制度としてのICTマークもつくりましたので、そういった意味では、まず、学校がやっていくきっかけをサポートしてあげて、その後は続ける仕組みを自治体が考えることが大きいのかなと、振り返っていて思います。

 以上です。

【木村主査】  どうぞ。

【藤崎委員】  また、ぜひ視察などをよろしくお願いいたします。

 あと、すいません、もう1つ、藤沢市の現状で赤井先生のお話を聞いていて思った意見なんですけれども、ちょうど政策パッケージの中で、学校統廃合の促進とのセットというのがありまして、これは学区の再構築というか、そういったものにもかかわってくるんではないかと思うんです。

 例えば藤沢市の場合、小学校が隣り合わせに建っているところが2校ありまして、それはもともと1校がとても人数が多くなってしまったので、すぐ隣につくったんですが、今現在はといいますと、1つは小規模校になっています。もう1つは大きいままなんですが、もともと自治会、地域の歴史とか、そういったものがありまして、学区を変えていくというのが非常に難しいんです。地域の運動会なんかも盛んですし、そうなった場合、簡単には学校が建てられませんので、国の中で少人数を促進していくから学校をもう一度見直しましょうという推進力がないと、地方自治体だけではこういったアンバランスを解決できないなと感じている次第です。

 すいません、以上です。

【赤井氏】  まさにいろいろなインセンティブをつけて、結果としては、全体として効果があるよということをちゃんと説明できれば非常に進むのかなという気はしますけど、まさにいろいろあるので、文科省にお願いしてください。

【木村主査】  どうぞ、小川委員。

【小川副主査】   髙木先生に、授業の考え方でちょっと教えていただきたいのですが、今まで少人数学級か少人数指導かということでずっと長く議論されてきた経緯がありました。従来は、長い間、ホームルーム集団と学習集団を一体的に捉えて運営されてきましたが、前の改善計画からホームルーム集団、生活集団と学習集団を分離して、科目や単元によっては学習集団をホームルーム集団から分離して、少人数指導とか習熟度指導をやるという手法が導入されてきましたよね。それについては一定の効果があるという評価がこの間なされてきているのですが、他方では、例えば学級づくりという面からいうと、意外とホームルーム集団と学習集団を適宜必要に応じて分けてやるということについては、学級づくりという視点から見ると、いろいろマイナスもあるという声が、現場に行けば行くほど生の声として聞こえてきます。特に授業づくり、先ほどの髙木先生の報告から言えば、新教育課程の中で求められている考えさせる授業を展開していく際に、そういう学級づくりというものと、学習の集団としてのまとまりというのは、かなり一体的なものとして把握される必要があると思うんですけれども、ホームルーム集団づくりと、必要に応じて科目や単元によって適宜そういうものを崩して、少人数指導とか習熟度指導などの学習集団をいろいろ活用していくということは、今後も可能性としては維持されていくべきなんでしょうか。

 私は生活集団と学習集団をいろいろ切り離してやるということは、今後の新しい教育指導のあり方を考えるとあまり好ましくないのかなという印象も持ち始めているので、国語という授業の場面ではなかなか難しいと思うんですけれども、何かお考えがあれば教えていただきたいんですけれども。

【髙木氏】  私は国語ですので、ほかの教科のことはよくわかりませんし、ほんとは五十嵐先生が実践的にもっとよくご存じだと思うので、私のわかる範囲でということですけれども、特に国語に言えることかもしれませんが、話し合う活動はとても大事で、秋田県が成績のいい理由の一つは、多分自分の意見を話し合ったり、書いたものを読み合ったりすることを非常に大事にしていることだと思います。

 そういう観点から申しますと、今さらという感じもあるかもしれませんけれども、大村はまさんがかつてこういう言葉を残しているんです。話し合いの力をつけるために一番肝心なことは、だれかがだれかを侮っていたり、だれかがだれかに侮られていると思っていたりしては本当の話し合いの力はつかない。もしそうだとすると、結局生活指導になってくるんです。国語でも話し合いの指導をきちっとやっていくことは。あるいは『ごんぎつね』について話し合っていくということでも、やっぱりそれは生活指導になっていくんです。

 これは高校でも『羅生門』をうまくやった授業なんかを見ていますと、クラスの友達が、ああ、あんなことを思っていたのかとか、こんな読み方をするやつだったのかということに驚いていくわけです。そうすると、少なくとも国語では、そういう中でお互いのことを、読みを通して知り合うとか、そういうところで人間関係、つまりコミュニケーション力を育てていく。もう1つ、大村はまさんが言っているおもしろいことは、学校では「話し方」を教えるんじゃない、「話すこと」を教えるんだと。話し方というのはその辺の話し方の本っていっぱい出ているでしょう、それを読めばいいんだと。でも、学校では「話すこと」を教える。

 つまり一種の人間教育だと思うんですが、そういう観点からしますと、話し方を教えるために特別クラスとか、特別集団をつくるということは多分できると思いまが、でも、日本の学校というのは、それを通して生活指導とか生活習慣とか、人間形成とかをすごく大事にしていて、このことについてフィンランドとかアメリカとかの先生方にお話を聞くと、随分びっくりするらしいです。日本というのは丸ごと子供たちを抱え込んでいる。だから大変なんだけども、でもそのよさがあるんじゃないかとおっしゃる。そういうよさを考えるとするならば、安易に生活と学習とを分けないほうが僕はいいと思います。

 ただ、先生が先ほどおっしゃっていたように、特に問題を抱えるような子を必要に応じて別の場面で指導するということは、当然これは効果があると思いますので、地域や親御さんたちの了解を得られるならば、必要に応じてそういうことはされるべきだと思いますが、基本的にはやっぱり日本のよさでもあると僕は思いますので、そこは崩さないというのが原則であってほしいなとは思っています。

 以上です。

【木村主査】  ありがとうございました。

 直接少人数クラスとは関係ないことですが、私も髙木先生にご質問したことがあります。お話を伺っていて非常に興味を引かれたのですが、例えば先ほどの段落の分け方、4ページに段落の分け方の種類についてお書きいただいていますが、これは普通の先生ならみんなこのぐらいの段落の分け方があるというのはおわかりになるかと思うのですが、これをどれも正しいというか、なるほどと受け取れるには相当力がないとだめだと思います。その辺、どうでしょうか。

 私の専門は、エンジニアリングですが、いい研究者、いい技術者を送り出している研究室の先生は、たしかに非常にフレキシブルな考え方をする人が多い。そういうところから決まって多くのいい研究者、技術者が出ています。そういう考えのやわらかさ、例えば、僕らが聞いていて、ばかな質問だなと思うような質問でも、そういう先生はちゃんと受け取る。しかしそれが出来るには相当な力が要りますよね。その辺についてどうお考えでしょうか。

【髙木氏】  これは教員養成の問題にもかかわってくることでなかなか難しいところでありますし、実際現場に行かれて、先生方は経験を積みながら学んでいく部分もあるんだろうと思います。ただ、この段落分けに関して言いますと、本来国語の段落分けというのは、文章について学ぶということが目的で、その方法として段落に分けたらどんなふうに読めるかなということだったのに、目的と方法を取り違えてしまって、唯一の正解だけがあると思い込んでしまっていることが1つの原因になっているわけです。

 だから、ほんとの目的は何で、手段は何なのかということを先生方がしっかり学習の場面で理解して臨むということです。そうしないと、子どもからほかのことを言われちゃうと、全部ノイズになって邪魔な意見にしかならないので、そこから学びをつくり上げていくというのは、本当の目的は何なのかと先生自身に問う力が必要です。だから、僕はよく言っているのは、子供に考える力を求めるということは、先生自身に考える力がないとだめだと申し上げているんですが、そういうことを学生にも考えさせていますし、免許更新講習なんかで、「あきあかねの一生」の段落分けは必ずまくらで取り上げるんですが、そうすると先生たちはやっぱり驚くんです。子供がこんなにいろんな考え方をするのと。それをいろんな場面で先生たちに気づいていただかなければいけないので、僕はなるべくそういうふうにしています。あと教員養成のカリキュラムの中でもう少し考えるべきことがあって、今ある意味では昔よりいいなと思うのは、指導要領の指導事項をある程度理解させたり、指導案を書かせたり、現場へ行かせたりとか、昔なかったことが、今は実習以外にもそういうことをするようになってきて、それはとてもいいと思うんですが、けれども、逆に指導要領の指導事項を覚えさせれば良いというような授業になりかかっている部分が大学にあって、覚えさせることと、なぜそうなっているのかという根本を考えるのとは違うわけです。両方がなければいけないのに、今は、ある意味で悪しき現場主義になりかかっていると思うんです。むしろ昔のままで良いはずもないですが。

 やっぱり現場と学問との往還がもっと必要なのに、委員会が設定する研修も、どっちかというと実用主義的というか、すぐ役立つ的なものになっていますし、私たちも行くとそういうことを求められるので、そういう話をしがちになってしまう。でも、そこで一歩踏みとどまって、やっていることの意味を深めていくという場が教育には必要で、そういう意味では先生たちの研修ってものすごく必要だと思うんです。今「失敗学」ってすごく大事な言葉になっていますけれども、「失敗学」を教育の中に持ち込んで、もっともっと失敗に学ぶ、学び合う、根本を考える、そういう場を研修とか大学の免許更新講習とかでもっともっと充実させていくことが、必要になるのではないかなと思います。私自身は少なくとも免許更新講習はそういうことを目指してやっていますので、それなりに先生たちに楽しんでもらっているのかなとは思っています。

【木村主査】  ありがとうございました。

 それでは、少し時間が超過しましたが、5分ほど休憩をさせていただきたいと思います。以上で第1部は終わりということで、50分から再開致します。

( 休憩 )

【木村主査】  恐れ入ります。少し時間が押しておりますので、始めさせていただきたいと思います。

 第2部ということになります。第2部では、少人数学級・少人数指導の取り組み及びその効果の観点、第1部とテーマは同じでありますが、国立教育政策研究所からプレゼンテーションをいただくことにしております。ヒアリングのご出席者につきましては資料2に記載してございますので、そちらをご覧下さい。時間の関係でこちらからのご紹介は控えさせていただきます。

 お3人からプレゼンテーションをいただくことになっております。まず角屋さんからですか。順番はよろしいですか。少し時間が押していますので、初めのお約束ですと全体で50分ということになっておりますが、45分ぐらいでお願いしたいと思います。

【角屋氏】  はい、承知しました。基礎研究部の角屋です。よろしくお願い申し上げます。

 スライドを見ていただきたいんですけれども、これからの教育というのは、先ほどの先生方からも出ましたように、この3つじゃないかというふうに思います。その根拠は何かといいますと、学校教育法に基づいているということと、それから言語活動の充実ということに基づいているということであります。

 これら3つは一体何に帰着するかというと、一番最後に書きましたように、子供一人一人に確かな学力を定着させて向上させようということが大きな目的であります。この目的以外のことは何も言っておりません。この目的のもとで今から先生方にご提案したいものがございます。

 そうすると、私は理科教育を中心にしながら、教科教育学を勉強している者なんですけれども、理科教育において子供一人一人に確かな学力を定着させたり、向上させるということはどういうことなのかということをまず考えてみました。

 それは1つは、1番目です。予想や、これ「結果」というのは、すいません、間違えまして、「仮説」の設定です。「結果」は「仮説」ということです。すいません、ちょっと間違えました。仮説を設定するということと、それから実験計画を立案するということと、実験を実際に実施するということと、実験結果を処理するということと、それから考察や結論を引き出すということの5つの大きな過程からなっているというふうに考えます。

 その過程を踏まえた上で、一人一人が科学的な概念や観察実験の技能や、あるいは科学的な思考力、表現力、あるいは態度みたいなものを獲得していくということが、一人一人に確かな学力を定着させたり向上させたりすることであるというふうに言えます。

 ならば、これは具体的にどうなるかということなんですけれども、それを具体的にするために、1つ、学習指導過程を例にとりました。それは、これは第5学年の振り子の運動という1単位時間の学習過程を例にとって、先生方にご説明申し上げたいと思いますが、その学習指導過程において、新指導要領のねらい、つまり一人一人に確実に学力を定着するために必要な理想的な学習過程、先ほどの1番~5番までの学習指導過程の時間配分と、実際にやられている学習指導過程での時間配分を対比させました。

 そうすると、こういう形になります。これはお手元の資料にも書いてありますけれども、1番目、予想や仮説を設定する部分では、新しい指導要領を確実に実現していく、つまり確かな学力を確実に定着するという目的のためには、やっぱり予想や仮説の設定ではほんとうは10分ぐらい欲しいんだと。今のクラスサイズをもとにするならばですね。今のクラスサイズをもとにするならば、欲しいんです。

 ところが、実際やられているのは5分ぐらいしかやられていないんですね。それからまた実験計画を立案する部分では、ほんとうは今のクラスサイズでは10分ぐらい欲しいんですけれども、5分ぐらいしかやられていない。それから実験の実際の実施の部分では、ほんとうは30分ぐらい欲しいんですけれども、現実では20分ぐらいしかとれないだろうというわけですね。さらに実験結果の処理のところでは、ほんとうは15分ぐらい欲しいんですけれども、10分ぐらいしかとれないというのが現実であります。さらに、考察とか結論を引き出す部門ではほんとうは10分ぐらい欲しいんですけれども、5分ぐらいしかないというのが現状であります。

 そこから、現実では、ここの結論にありますように、1往復する時間が糸の長さだけによって変わり、おもりの重さとか振れ幅に関係しないということも引き出すわけですね。ということは、一人一人にほんとうは密なる丁寧な指導をしたいんですけれども、先ほど申し上げましたような形で、時間的な拘束というものがありますので、クラスサイズを今までどおりにしますと、非常に無理がある。

 したがって、これからは教師が児童一人一人とかかわる時間を増やして、きめ細かな指導ができるようにするために、45分間の学習課程を同一に物を考えるならば、とにかくクラスサイズを少なくしていただいて、そしてクラスサイズを少なくすることによって、一人一人が、今まで我々が目指している確かな学力をより確実に定着させたり向上させたりすることができるようになるんじゃないかということが、私たちの提案であります。

 なお、先ほど申し上げました想定した時間と実際の実働時間というのは、私たちのセンターの教育課程調査官の先生方に協力いただきまして、大体多くの先生方が妥当なものを引っ張りだしまして、各教科ごとに並べましたのが、7ページ以降の各教科ごとの想定時間と実際の時間の値であります。

 これらのことから、すべての教科において子供たち一人一人により確実な学力を定着させるために、クラスサイズをぜひ小さくしていただきたいということであります。以上が私の提案であります。以上です。

【木村主査】  どうぞ。

【山森氏】  国立教育政策研究所の山森でございます。教育心理学を担当しておりまして、この七、八年、少人数学級の研究課題に取り組んでいます。私の資料は、資料4-5と書いてある少し大きな紙に出ているものでございます。

 1枚目に本日の話題提供のサマリーを載せております。これに沿って、学級規模に関しての先行研究と、学級規模が子どもに与える影響、特に子どもの変化に与える影響という観点からお話をしたいと考えてございます。

 まず1枚目のペーパーでございますけれども、大きな一覧表がございます。これはどういったものかと申しますと、小規模学級を支持する研究例というものをざくっと一覧にしたものであります。前回のこの検討会議の場でもクラスサイズパズルであるとか、そういったいろいろな指摘もあったように、小規模学級を支持しない研究という例も多々あるということも承知しておりますけれども、あえてここで支持する研究というものを集めてみると、このようなものが代表的なものとして挙げられるということでございます。

 これらの結果は、小規模学級ほど学力が高いこと、学習態度がよいこと、学級の雰囲気がよく、児童生徒の向社会的な行動が多く見られ、競争や排他的な行動が少ないとまとめることができると思います。

 また、教師に対しては、個人差に応じた指導と、いわゆる言語活動と言われるようなものが充実するといったような傾向があるように思われます。

 この中でも特に、米国のテネシー州のスター計画と言われる学級規模縮小の実験的な研究というのが全州規模で行われたものの結果を太字にして載せてございます。

 その中でもわりとわかりやすいものということで、紙の右上のほうに少し分布のようなものを載せていますけれども、例えば図1という小さい図では、学力検査得点の分布というのを1学期当たり13~17人の小規模学級、それから22~27の通常学級とで比較をしたものであります。こういうふうに見てみますと、小規模学級に在籍する子どもの群のほうが、上位層というのは比較的多いということがわかります。

 また、図2では無学年制テストの得点がどういうふうに伸びていったかという結果でございます。4年間小規模学級に在籍した児童と4年間通常規模学級に在籍した児童で比べると、読解テストにおいては就学前、幼稚園の段階では差はついていないけれども、小1で差がついて、その後、その差というのが維持されることが示されています。また算数テストの場合には修学前、幼稚園の段階で差がついて、それがそのまま維持されることが示されています。

 ちなみに、それぞれの研究についての引用文献リストが2枚目に一通り載せておきましたので、ご参考にしていただければと思います。

 3枚目は、学級規模・学年の学級数とクラス替えによる学級経営の土台づくりというタイトルでございます。これは何に着目をしたかというふうに申しますと、学級規模および学年の学級数が、クラス替えの効果に対してどういう違いが出てくるかということに着目したものでございます。

 昨年度は定数改善に関する有識者ヒアリングというものがありまして、私も招かれましましたが、そこで、学級規模が37人未満と37人以上で比較し、なおかつ学年の学級数を2~4学級と5学級以上で比較したところ、学級規模が37人未満、学年の学級数5学級以上というところで効果があったということを報告しました。今回お配りした資料の一番後ろに参考資料として、去年お話しした内容というのを載せてありますので、適宜ご参照いただければと思います。

 1年間の学級づくりということを考えたときに、クラス替えというのは非常に重要な局面であります。つまり、クラス替えがうまくいって、きちんと学習指導も成果指導もできるような子どもの集団をつくって、1年間うまく授業できるかの成否を分ける場面でもあります。

 そのクラス替えのときには、ここにいらっしゃる校長先生方はよく御存じと思いますが、一緒にしてはいけない子と、それから一緒にしなければいけない子というリストをつくって、短冊というふうに呼んでいますけれども、それに一つ一つ書いていって、そして一緒にしちゃいけない子を離し、一緒にしなきゃいけない子をくっつけ、さらにピアノができるであるとか学力であるとか、そういったことまで細かくクラス分けをしていきます。

 そうしたときに、私1回、クラス替えの様子というのを観察したことがあるんですが、1学年の中学校の1年生から2年生に進級するとき、1学年が150人、学級規模では大体37で4学級ぐらいできるんですが、そういったときの一緒にしちゃいけない組み合せというのは13通りありました。一緒にしなくちゃいけないという組み合わせも8通りあって、しかも一緒にしちゃいけない子もいるんだけれども、一緒にしなきゃいけない子もいるというような、重なる子というのも出てきていて、非常にクラス替えをするのは難しいということになります。

 クラス替えで何が期待されているのかというと、例えば生徒指導上の問題であるとか、または人間関係的な問題というのを、うまくクラス替えをすることによって解決をして、子どもが1年間安心して学校生活を送ることにつなげることだと思います。

 そこで、クラス替えによって、こういった生徒指導上の問題、または人間関係的な問題というのが解決したかどうかということを先生方に聞いたものというのが、3枚目のスライドの結果であります。

 参考までに、平成21年度調査と書いてある欄に昨年度お話しした内容もつけておりますが、実はこの調査を2年間、同じ県でやっています。この県というのは、平成22年度から中学校2年生で33人学級を全面実施しているということになりますので、そうすると、33人以下30人以上の範囲と、それから30人未満ということで比べてみたというものであります。

 こういうふうに見てみたときに、学年の学級数が5学級以上の場合というのは、30人未満と30人以上というところではほとんど同じ程度の解決率ということになりますが、学年の学級数が2~4学級のときには、学級規模が30人未満の学校のほうが、クラス替えによる人間関係とか、または生徒指導上問題解決率が高く、学年の学級数が5学級以上の場合とほぼ同じということになります。

 去年のヒアリングでお話ししたときには、学級規模を縮小することで学年の学級数が増えるということも利点なんだということをお話ししました。それに加えて、今回報告した結果が示唆するのは、仮に学年の学級数が少ない学校であっても、もう少し学級規模が小さいと、学年の学級数が多い学校と同じぐらいクラス替えがうまくいく、ということだと考えられます。

 次に4枚目の、少人数学級導入前後の同一学年間の比較に移ります。昨年度の有識者ヒアリングのときには、33人を超える規模の学級の子どもよりも、33人以下学級の子どものほうが、7月から1月にかけて家庭学習によく取り組むようになるという調査結果を報告しました。今回はこの結果に対する追跡調査のようなものとして、中学校2年生で少人数学級が完全実施されたときに、前の年の2年生と完全実施されたときの2年生との間で、学習行動がよくなった生徒の割合、また宿題とか家庭学習をよりよくするようになった生徒の割合に違いが見られるかということを調べてみました。

 調査の枠組みというところに書いてあるように、それぞれの年度でほぼ同じような内容を独立に聞いていますから、先生方に去年よりいいですかというような印象論で聞いているわけではないということに注意をしていただきたいと思います。

 その上で、結果というところをごらんいただきたいのですが、少人数学級導入前より後のほうが、7月より1月のほうが状況がよくなった生徒の割合が5ポイント以上高い学校というのを、よくなった生徒が多い学校と定義し、そうじゃないところについては去年とは変わらない学校と分類をしてみました。少人数学級導入のほうが授業中集中するような生徒が多いかというところで見てみますと、全体としても74パーセントの学校が、前の年度と比べても、次の少人数学級導入した後の学年のほうが、集中するように変化した子どもが多くなったということでありますし、これが授業に積極的に参加という項目でもほぼ同じ傾向であります。

 しかも、前の年度と次の年度の2年生の学級規模を比べたときに、より小さいか、そこそこ小さいか、ここでは7人以上と7人未満で分けました。例えば極論を言うならば、20人学級になった去年の2年生に対して、次の年の2年生は、前の年度の2年生が30人ぐらいの学級規模だったけれども、次の年度の2年生は22~23人になったときには、7人以上小さいという学校に分類されます。その結果、学級規模の差がより大きい、すなわちより学級規模が小さくなった学校のほうが、よい変化をするようになった子どもが多いというのが学習行動の中でも授業中のものにおいて出てきています。

 また、宿題であるとか宿題以外の家庭学習という面に着目してみましても、これは学級規模の変動の幅の違いとの関係ではあまり見られなかったものの、半分以上の学校で、前の年よりも完全実施をした年のほうが、よりよい方向に変化していった子どもが多かったというような結果です。

 また、学級経営の土台づくりということで、先ほどクラス替えの話もしましたが、クラス替えによる生徒指導上または人間関係的な問題の解決が、前の年の2年生と次の年の少人数学級導入後の2年生で、どれぐらいうまくいったのかということを比較してみたときに、少人数学級導入後のほうが平均的な解決率を見てみてもうまくいっていますし、また特に少人数学級を導入した後に学級数が増えている学校、またもともと学級数が多い学校というところにおいては、すべての学校においてクラス替えが前の年と比べてうまくいっているという結果が出ています。

 これらの結果をまとめますと、少人数学級導入前の中学2年生より導入後の2年生のほうが、学習行動がよくなった生徒の割合が高い学校というのが多かったこと、そしてクラス替えがうまくいった、ということになろうかと思います。

 最後に、5枚目の、進級時における学級規模の差と進級後の授業中の学習行動や家庭学習の取り組み状況の変化について紹介します。私どもが平成21年度に調査を行った時点で、調査対象の自治体というのは中1まで少人数学級を実施していて、中2からは通常規模に戻していました。ですので、中1から中2の間で自分が在籍する学級規模の差というのがぐんと大きくなります。その学級規模の差幅と、2年生に上がった後の半年間の子どもの変化という関係を分析してみたものであります。

 具体的には、1学年のときには21~33人学級に子どもは在籍したのですけれども、1年生のときと2年生のときと比べた学級規模の大きさが5人未満の学級に在籍した子ども、5人以上大きい規模の学級に在籍した子ども、そして10人以上大きい規模の学級に在籍した子どもという3通りに分けて検討してみました。

 ここのグラフを見ていただきたいんですけれども、授業中の学習行動の教師評定の得点が7月より1月の方が得点が高くなった子ども、得点に変化のなかった子ども、得点が低くなった子どもの3通りに分けています。そうすると、学習行動に関しては、5人未満学級規模が増えた学校の子たちの中の22.8パーセントの子どもが、だんだんと授業態度が悪くなっていったことがうかがえます。そして5人以上増えた学校では24.6パーセント、10人以上ですと25.4パーセントというように、若干ではありますが、前の年と比べて学級規模の差が大きいほど、授業態度が悪くなっていく子どもが増えていく傾向というのが見られます。

 こういった傾向というのは、家庭学習においては顕著であります。前の年と比べて5人未満の幅で学級規模が増えたというところに在籍している子たちで見ると、24.3パーセント、5人以上増えたという子たちで30.1パーセント、10人以上ですと36.5パーセントというふうになっていきます。つまり、前の年と比べて、あるとき突然学級規模がぐんと増えるということが、その後の変化を追っていったときに、少しずつ悪い方向に変化していく子どもというのが多くなってしまう。

 しかも、それが家庭学習のところに出てきている。家庭学習というのは先生が直接教える場面は全くないわけで、むしろ家庭学習の様子を先生がチェックをするとか、または個別にコメントを付けるとか、間接的な支援をすると思うんですけれども、そういったところにおいて、学級規模の増大幅というものが大きく影響しているというのは少し興味深い結果かと思います。

 ですので、この研究結果が示唆するところというのは、1回入れた少人数学級の制度というのは、継続していかないと、かえってまずいんじゃないかということであります。1回目のここの場でもそういったことを示唆する結果が鳥取市から提出されたと思うんですけれども、それと似たような結果かと思っています。

 以上、私の話をまとめますと、1点目は、先行研究にはいろいろあるんですけれども、少人数学級ほど学力が高いであるとか学習態度がよいとか、または先生にとっては個人に応じた指導が実現できる、言語活動に当たる学習活動が充実するといったような結果というのも結構出てきているというようなことであります。

 2点目は、クラス替えという場面に着目すると、学級規模縮小に伴う学級数の増にも利点が見られますが、学級数の増がそれほど期待できない場合であっても、さらに学級規模を小さくすることで、学級数の増と同様の効果が期待できるのではないかということです。3点目は、同一学年を少人数学級導入前後で比較すると、総じて少人数学級導入後の学年の状況がいいということです。先生方の印象でいうと、去年の2年生より今年の2年生はいいねというような先生方が直感として持たれる印象というのが少し数字で出てきているかなということであります。

 そして最後に、学級規模を途中から変化させる、途中から大きくさせるということは、授業中の学習行動であるとか家庭学習の取り組み状況、両者において、とりわけ家庭学習の取り組み状況において、好ましくない方向に変化する生徒が増えることにつながるというふうに考えられるという内容であります。

 私の話題提供は以上でございます。

【木村主査】  ありがとうございました。それでは、最後お願いいたします。

【妹尾氏】  教育政策・評価研究部の妹尾と申します。専門は教育経済学でありまして、少し経済学の観点から、特に学力の規定要因を分析している中で、少人数のほうがいいかどうかという観点の分析部分を少し取り出してご紹介したいと思います。

 まず1枚目のスライドをめくっていただいて、1枚目のシートのほうなんですけれども、報告の要点としましては4つ挙げてありまして、1つは、分析の中から見えてくることは、家庭の要因等を考慮した上でも、学校教育にかかる資源の投入量と学力との間には何らかの関連性が見られるということは、どうも確からしいということです。

 その中で、2つ目として、資源の投入量は、平均点とあわせて学力下位層のばらつきにも少し注目したんですけれども、ここのばらつきを抑えるような、そういう効果も見えてくる。つまり、政策的介入の余地が示唆される結果が出ている。

 それから3つ目は、少人数かどうかというところへ焦点を当てて、変数を、分析結果を眺めてみると、児童教員比率と学力との関係は、これは単独では決して効果が決まるものではなくて、ほかの条件、例えば授業研修回数なんかの頻度と合わせて、いい効果が出るか、それともうまくいかないかという傾向を確認する必要があるんじゃないかということです。

 最後に、この手の学力に注目した分析は最近日本でも多々出てきているんですけれども、少しこの手の分析の留意点として、学力以外ですね、基礎体力の向上あるいは社会性の育成といった、教育成果とか教育目的と言ってもいいかもしれませんけれども、それを捨象している可能性があるので、この手の学力規定要因の分析に関しては、一般性については留意が必要だと。ほかの教育目的あるいは成果に関して同じようなお話ができるかというと、それはわからないという前提のもとでお聞きいただきたいと思います。

 ちなみに、本報告の内容は既に野崎ほか論文で報告した内容で、一番後ろのページに参考文献リストが、スライドの18になりますけれども、そちらの中に今回報告した内容に関してのペーパーの引用先は書いてありますので、この中の野崎、下から2番目のやつです、こちらでホームページのウエブ上からダウンロードできる状態にしてありますので、もしご興味がある方がおられたら、そちらのほうで詳細は確認していただきたいと思います。

 内容のほうですけれども、具体的にどういう分析をやっているかということで、このあたりはお話を軽くという感じかと思うんですけれども、学力を巡る、学力に焦点を当てた議論が最近出てきていまして、教育の成果はその後の賃金や経済成長率にも影響があるだろうというのは海外の先行研究なんかでもよくある話なんですけれども、特に2000年代以降、日本においても学力関係のデータの利用可能性が向上した。都道府県とか政令指定都市とか、自治体レベルで学力テストをしっかりやったりというケースも増えてきていますし、何しろ全国学力・学習状況調査のほうが出ましたので、こういうものを使いながら、日本でも学力の規定要因の分析が少しはできるようになってきたということです。

 目的としましては、学校に関係する資源が学力に対して与える効果を定量的に分析する。それから、もう1つは学力獲得における公教育の役割に注目ということで、学力に関して家庭とか児童・生徒の置かれた社会経済条件が非常に強く影響を与えているということは、この分野でもよく知られている話であります。ただし、じゃ、そこの部分を政策的に左右できるかということになると、結局のところ、それはなかなか難しいと。じゃあ、その部分は置いておいて、公教育としてはそれをどう補っていけるか。つまり、学校教育の中で動かせる、政策的に介入できるような変数を探していくという方向性が非常に重要な点だと思われます。

 ここではあえて学力の規定要因に関する分析を、学力の生産関数の推定ということで、ここでは特に学力、教育成果というよりは学力に限定したという意味で、教育の生産関数というよりは、学力の生産関数、学力の規定要因を記述しています。

 学力テストから見えてくるお話を少ししたいんですけれども、これは、今お話しした全国学力・学習状況調査の小学校の集計結果なんですけれども、見てもらうと、まず、右側が私立、左側が公立で各教科があって、グラフの右へ行けば行くほど点数が高い生徒の割合、左のほうに行けば点数が低い生徒の割合と。一見してわかるのは、公立のほうが右から左の幅が大分大きいわけですね。つまり、学力のばらつきがその分、右側の私立なんかと比べると大きいという特徴があるということ。

 もう少し細かい部分に注目すると、公立の下のほうにしっぽが長い分布になっている。つまり、公立のほうには学力の下位層が存在して、その厚みも私立なんかと比べると非常に大きいという特徴が言えるということです。

 次のページが、今度は、実はこのお話は日本のデータだけの特徴なのかということで、PISAの日本のデータでもこれは全く同様のことが言えて、これも右へ行けば行くほど学力層が高いということになるんですけれども、特に2002年、2003年、2006年から、一番学力が低い層の1というのが、この3年間で10.0、19.0、18.4と右肩上がりに下のほうが増えている。2のほう、下から2番目の学力層に関しても、2000、3、6と、18.0から22.0。一方、真ん中層ですね、3とか4あたりの中位・上位層を見ると、これは逆に下に生徒が移っている分、この中・上位層が2000、3、6と減っている。それから一番上の5は毎回変わらず一定層存在する。

 つまり、学力の指標をとるとき、決して平均点だけをとるのではなくて、学力下位層をとらえるような指標も1つ用いながら、学力の分析をしていくにはその点が非常に重要になってくるということです。

 スライドの6ページ目のほうなんですけれども、もう一度簡単におさらいすると、学力の生産関数ということで、学力の規定要因ということで、家庭属性等の効果について考慮した上で、政策的に介入可能な変数を探す作業をしてみました。

 具体的には、教育予算、それから学校資源といったものが注目する変数になってくるということです。2つ目に、学力の指標として、平均値に加えて、下方への分散、つまり下位学力層のばらつきに注目しましたということです。

 実際にデータに関して簡単にご紹介しますけれども、8ページ目のほうに全国学力・学習状況調査のほうの2007年から2009年の都道府県レベルですけれども、公表データ、都道府県別の学力の分布が公開されていますので、それを用いて、これからお話しする結果は小学校の結果ですので、この点ご注意ください。各教科ごとに平均点、あるいは学力の下位層に与える効果がどう変化したかというのを見たということです。そのデータに加えて、都道府県の社会経済条件みたいなものを追加して分析しましたということです。

 平均点以外の学力下位層をどうとらえるかという指標についてなんですけれども、10ページ目に簡単な概念図をご紹介しているんですけれども、要するに下のしっぽが長いということですので、このグラフの中でP10というのは下から10パーセント目の人の点数が書かれているわけですが、これが右に行けば下位分散、つまり学力のばらつきは小さくなって、これが左に行けば下位分散は大きくなる。少し指標の見方として、平均点は高いほうがいいんですけれども、下位分散という指標に関しては、なるべく小さくするような要因を見つけるほうがいいという分析結果の見方になります。

 具体的に、先ほど予算変数とか学校変数とか言ったんですけれども、具体的にはそこに書いてあるような指標、それから制御変数というのは、動かせない変数として、そういう社会条件、社会経済条件の子供たちの要素を入れているということです。

 データの出所等についてはスライドの12、13のほうに詳細は書いてありますので、そちらのほうで確認していただいて、結果のほうを14、15のスライドのほうで記述しています。見方としては、例えば、国語A問題でプラスとかマイナスとか出ているかと思うんですけれども、これが例えば国語A問題だと、複式学級の割合がマイナスに出ているというのは、複式学級の割合が上がってくると、点数がマイナスですから平均点が下がってくるという見方になってきます。

 15ページのほうは、今度は下方へのばらつき、学力のばらつきの推計結果になってきて、先ほどと同じように、例えば国語A問題の複式学級割合を見ると、今度はプラスに出ている。これはどういうことかというと、複式学級の割合が増えれば下位分散が増える、つまり下方の学力のばらつきがより大きくなる、少しプラスマイナスの見方がややこしいので、そういう見方になります。

 結果として、16ページのほうに簡単な結果を載せてあるんですけれども、予算変数、それから学校変数ともに平均点、下位分散、何らかの関係がある傾向は示唆されております。

 基本的には、学校投入変数がいろんな要素があるということなんですけれども、今回の検討会の内容に即して少し議論させてもらうと、その中で問題になるのは、児童教員比率という数字がどう影響を与えるかというお話になるかと思うんですけれども、その点について17ページ目のほうに解釈のほうを少しまとめております。

 まず1つ目は、平均点と下位分散の両者において、教員1人当たり児童数と学力との関係は、結局、教員1人当たり児童数だけで決まるものではなくて、授業研修回数との相乗効果の中でプラスになるか、マイナスになるかが決まってくるということです。

 それから2つ目は、授業研修回数が全国平均程度の場合、授業研修回数は大体全国で9回ぐらいということなんですけれども、教員1人当たりの児童生徒数が多いと平均点が下がる。ただし、それから加えて下位分散は大きくなる。つまり、下方の学力のばらつきはより大きくなるということです。

 ただし、一方で、研修回数が全国平均よりも上積みして確保されていれば、これも大体マックスでやっている地域は12回近くやっている。そういう地域にとっては、逆に教員1人当たり児童数が高いほど平均点が高くなる。それから下方分散が小さくなる、下方の学力のばらつきが小さくなるというような傾向が観測されるということです。

 結論としては、教育1人当たり児童数と学力との関係は、単純な児童教員比率と、少人数かどうかというだけではなくて、授業研修以外のひょっとしたら要因も、補完的な効果もあるのかもしれませんけれども、そういった組み合わせですね、学校の置かれている条件によって左右されている可能性があるというのが主な結論になってくるということです。

 それから、今後、この研究について少し方向をお示ししたんですけれども、国立教育政策研究所としましては、今、公表データでやっている分析なんですけれども、条件がそろえば、文科省でお持ちのもう少し細かい非公表レベルの個票データをお借りする、あるいは市町村レベルのデータをお借りするという形で、よりきめ細いデータで今後同様のデータ分析のほうを進めさせていただけたらと予定しております。

 以上で報告のほうを終了いたします。

【木村主査】  ありがとうございました。以上、国立教育政策研究所のお3人からプレゼンテーションをいただきました。

 それでは、いかがでございましょうか。ご質問、ご意見等ございましたら。はい、どうぞ、中川委員。

【中川委員】  ありがとうございました。前半の髙木、横浜国大の先生ともあわせての関連なんですけれども、私は今の新学習指導要領の求めている能力、これを実践しようと思ったら、前提として今のクラスサイズでは対応できないというような前提があるようにずっと思っております。

 その意味で、先ほどの髙木先生は言語活動ということに注目をされて、実践の結果を発表された、その中では、人数が多すぎては多様さやプロセス、個を生かせない、個を把握できない、丁寧な指導もできないというふうなことを断言しておられた。

 そして今の理科の実践例を見ましても、今のクラスサイズでは対応できない、一人一人に教師が対応しようと思えば、だめなんですよと。今の一定時間内ではできないんですよ。今、理科の実践例の発表だけだったんですけれども、あとまだよく見ていないんですけれども、他の教科の実践例もあるようでございます。

 国立教育政策研究所としては、やはり今の新指導要領を実践するためにはクラスサイズを変えなければいけないというような、研究員の方々はそういう前提で言っておられるのかどうなのかということが1点。

 それからもう1点聞かせてください。山森先生の発表、これ以上のエビデンスがあるかと思うような見事な少人数学級の実践例だったと思うんですけれども、この対象校というのは、ある県というふうに書いてあるんですけれども、一体どういうのでしょうか。例えば都市部の学校なのか、農村部なのか、学級規模はどうなのか、まあ、見事だなと思いました。これを出されたら財務方も何も言えないんじゃないかなと思いました。

 以上です。

【木村主査】  どうもありがとうございました。いかがでしょうか。お願いいたします。

【大槻次長】  すいません、1点目でございますけれども、私ども前提をもって研究しているわけではございませんで、新指導要領が求めるいろいろな考え方を学校の授業の中で実践していった場合、どの程度の時間であればできるのかということを出しましたところ、いろんな個別の活動を含めていくと45分では足りないという、それが結論でございました。あとはご判断いただきたいと思います。

【木村主査】  次、どうぞ。

【山森氏】  2点目の質問ですけれども、この調査というのは山形県でやっております。山形県における義務標準法に則った形で学級編制をした場合、2年生が2学級以上となる中学校のほとんどすべてを対象にしています。

【木村主査】  ありがとうございました。長南委員、何かありませんか。

【長南委員】  いや、私は角屋部長のご発表は実にわかりやすい示し方だなと思いました。実際に理科の指導案を見たときに、やはりこうですよね。実際はやはり10分必要なんだけど、5分。大体半分ぐらいずつしか実際やっていないですね。ですから、こういうことから見ても、今の学級規模というのは小さくしなきゃならない。そのほかにもいろんな要素がまだ入ってきているわけね。特別支援の関係もあるし。ですから、これは非常によくわかりやすいデータだなというふうに思いました。

 それから山森さんのデータは、見事にそれが出ているんだなと思いましたね。たまたま山形県では、ちょうど今年で中学3年まで少人数学級ができたんです。実際よりも4年ぐらいちょっと長くかかったんですけれどもね。学年進行で進んでいく段階があったために、このようなことができたわけですよね。ですから、非常にいい結果が出たんだなというふうに思いました。

【木村主査】  ほかに。どうぞ。じゃ、小澤委員から先に。

【小澤委員】  山森先生のご研究の中で、1ページ目に個人差に応じた指導と言語活動が充実するということで、ほかの今日の発表の中に共通している部分だと思うんですよね。少人数学級と言語活動の相関性が何らかに高いといいますか、強いというか、そういうことは実際に授業を見ていても、私も実感としてそう思います。

 言語活動が充実するということは、まさしく今回の小学校の場合は学習指導要領の改定の趣旨そのものでありますので、そういう意味では小規模は有効なのかなというふうに思いました。

 それから、3本目の発表の中の授業研修の回数というお話がありましたよね。これは全国学力・学習状況調査のアンケート調査のやつですよね。校内研究の回数というふうにとらえていいんですよね。

【妹尾氏】  そうです。前年度の授業研究を伴う校内研修という形で指標をとっているかと思います。

【小澤委員】  1人の教員が9回とか、そういうナンバーでやった、そういうことじゃないんですよね。学校全体としてですよね。

【妹尾氏】  そうです。学校全体の、学校質問紙調査のほうの変数ですね。学校1校当たりということです。

【小澤委員】  この結果を見て私が思ったことは、どこの学校でもそうだと思うんですけれども、全国2万800校の小学校の教員の指導力のレベルの差って幅がかなり、秋田県のように幅がわりと狭い地域もあるのかもしれませんけれども、これまでの話の中で、かなり幅があるんですね。

 今日のご発表を聞いていて、もしかしたら、その学校の教員集団の教員の指導力、これの幅の生かし方で、どこの学年を35人学級にするか、どうするか、もし35人以下学級の数が限定されているという状態だったら、そういう運用の仕方もあるのかなというふうに思いましたし、幾つかの県でこういう運用の仕方も確かにあったなという思いを持ちました。

 終わります。

【木村主査】  ありがとうございました。清原委員、どうぞ。

【清原委員】  ありがとうございます。三鷹市長の清原です。

 本日、3名の方の3つの視点からの研究報告によりまして、相対的に学力向上のためには小規模学級が有効であるということや、あるいは家庭学習や生徒指導に至るまで有効性があるということが示唆されたわけですが、三鷹市でもコミュニティースクール型の小中一貫教育で、学力のみならず、人間力と社会力の向上を考えておりますので、その中で少人数学級の有効性を客観的な研究の中で示唆されたということは大変有効だと受けとめました。

 その中で触発されまして、具体的に2つの提案的な意見を申し上げますので、もしコメントがあればいただければと思います。

 私は市長ですので、どうしても教員の皆様からの多忙感とか、それを心配する保護者からの声が届いています。そんな中で、例えば小学校の場合には担任以外に、呼び方はいろいろあると思うんですが、フリー・ティーチャーというか、フレキシブル・ティーチャーというか、ユーティリティー・ティーチャーというか、そういう少し余裕のある教員の配置も有効ではないかと考えているわけです。

 それはどういうことかといいますと、例えば国語、算数とかいうような基本的な教科のみならず、小学校の教員というのは家庭科まで含めて、かなり授業数多いわけですね。週27時間というような教員もおります。年休もとりにくいというふうに聞いておりまして、その上で三鷹市の場合はコミュニティースクールということで小中一貫もやっておりますから、支援はしておりますけれども、やはり多忙感というのは多少なりともあります。

 そうしたときに、今年は特に新採の教員が多くて、1校当たり5人ぐらい、あるいは6人いるところもありまして、そういうところですと、新人がいきなり担任というのもなかなか過酷な状況でして、どんなに資質の高い新採の教員であっても、やはりそれを育成する教員というのも必要です。継承ということも重要だと思っています。

 そうした状況の中で、私は今、フリー・ティーチャーとかユーティリティー・ティーチャーとかフレキシブル・ティーチャーと言ったんですけれども、少しゆとりがあると違います。1つの事例は、今年5月の35人学級導入時に学級の再編成を選択せずに、配置された教員を担任外で活用している学校があります。この学校の場合には、学年すべてに今少しゆとりが図られまして、初任者が配置されているけれども、いきなり担任にならず、かえって余裕を持って先輩の指導を受けながら対応ができていて、子どもたちとの関係も築きながら成長しているという例を目の当たりにしました。

 したがいまして、少人数学級にするということで、もちろん教員数は相対的には増えるわけですけれども、しかし、資質の向上と相まって、ポジティブな意味で加配になるのかもしれませんけれども、そうした少しゆとりのある教員の有効性というのは、これまでの研究の中でご紹介いただけるものがあるのかどうかというのが1点です。

 2点目は、これは学習指導要領とも関係するのかもしれませんけれども、どうしても教科によって時数が違います。そうしますと、これは中学校のケースですが、どうしても技術家庭の教員というのは相対的には数学、英語に比べれば担当の時数が少なくなる。ほかでもちろん活躍してもらっていいわけなんですけれども、しかし、三鷹市内の場合はコミュニティースクールもやっていることがあるかもしれませんが、そういう専門教科の教員で相対的に時数が少ない場合には、複数校でその専門を生かしてもらう可能性もあるのかななどと考えることもできます。これは教員の方はそうは思わない、やっぱりきちんと一つの学校の一員として働きたいと思うのかもしれませんけれども、市長だから、すいません、客観的にそれこそフリーで言ってしまって恐縮なんですけれども、でも、そういう柔軟な中で、それぞれの資質の高い教員が生かされるのではないかとも考えます。

 そういうこととセットで考えないと、著しく学級数を増やすということは教員が増える、そこで財源もかかる、三鷹市などのような場合には教室数も増やさなければいけないかもしれない。ひょっとしたら、これは過疎の地域とは違いますけれども、学校も新設しなければならないというところの財政のバランスを考えたときに、資質の高い教員のそうした複数校担当みたいなことも可能性としてはあるのかどうか、提案的意見ですので恐縮でございますが、今までの研究の中で何かご示唆いただければありがたいと思います。

 ありがとうございます。

【木村主査】  何かありますか。

【大槻次長】  今のところ、そういった研究は見当たらないように思っております。申しわけございません。

【木村主査】  英国でやっていますね。スクールアライアンスと言って、私が訪れた学校の近辺の3校ぐらいでアライアンスを組んで、まさしく今、市長がおっしゃったようなことをやっています。例えば、A校の優れた先生にB校で教えてもらうというようなことをやっていると聞いています。

 小川委員どうぞ。

【小川副主査】  妹尾さんと山森さんに質問ですけれども、まず1つ、妹尾さんの報告は大変興味深いデータで、授業研修回数がいろんな変数の中でも一番影響力のある変数だということですけれども、もう1つ、こういうことも少しやったのか教えてほしいのは、授業研修回数が一番大きな影響力を持つ変数ですけれども、その授業研修回数という変数の影響力が低下する、ないしは影響力が全くなくなるような児童教員比率の何かレベルというのがあるのかどうか。そういう検証をしたのかどうかということも含めて、その辺のところの示唆をいただければと思います。

 2つ目は、山森さんでも妹尾さんでもどちらでも構わないのですが、お二人の研究はその目的がそれぞれに異なり、研究のアプローチも違いますし、また、変数や説明変数も違うのでまったく異なった結果が出てくるのは当然だと思いますが、殊、少人数学級の効果という点からすれば、両者の調査研究の評価は分かれています。それについて、それぞれどういうふうに認識されているのかというのをちょっとお聞きしたいんですけれども。

【木村主査】  じゃ、お願いします。

【妹尾氏】  まず1点目の授業研修回数と児童教員比率のお話なんですけれども、どの点で研修の効果が全体としてもプラスになるかマイナスになるか、いい方向に出るか、悪い方向に出るかということは、細かい計算はまだやっていないんですけれども、例えば国語A問題なんかに関して、推計結果を用いて少しシミュレーションをすると、ここで用いている児童教員比率ということの1つ注意点としては、これは決してクラスサイズじゃなくて、いわゆる、さっきお話が出たようなフリーのような先生の数もそこに入ってくる中での人数になるので、実際のクラス規模より小さな数字になっているかと思うんですけれども、全国平均で1人当たり19.19、大体1人当たりに対して児童20人ぐらいの規模でやっているんですけれども、少なくともこの規模、平均的な児童生徒比率でみますと授業研修回数の補完的な効果も含めると最終的にプラスに効いてくる。やればやるほど効いてくるというような少なくとも結果ではあるということです。

 それから2点目についてなんですけれども、特に山森先生の研究との兼ね合いについては意識していないんですけれども、報告の当初に少しご示唆したとおり、教育目的として、教育成果として図っているものが違うときに、単純に結果の出方が微妙に違うとか、そういうところは少しまだ議論できないのかなと、そういうふうに感じております。

 結局、教育目的に対してはいろんな手段があるわけで、その中で、この部分に関してはこうだということは出てくるんですけれども、もう少し包括的な研究の方向性といろんな要素を加味して、いろんな教育目的を加味した中での研究分析というのも今後必要なのかなという認識でおります。

 以上です。

【木村主査】  どうぞ、山森さん。

【山森氏】  今、小川先生よりいただいた質問、特に変数についての問題というふうに受けとめております。これは、やっている学問によって違ってくるかなという気がいたします。例えば、教育社会学とか教育経済学ですと、かなりマスなデータになるので、例えば学校の平均点であるとか、大きなデータになると思います。

 一方、私は教育心理学者ですので、教育心理学というのは子どもに一番近い学問というふうに私はいつも言っているんですけれども、そうすると、子ども一人一人というのを対象にするというところで、1つ大きな違いがあるかなと思っています。

 ですので、妹尾さんがやっているものというのは平均点とその分散ですけれども、私が今回報告しているものというのは、子ども一人一人の変化の得点を全部とっています。なので、2回分のデータが名前のないえんま帳のようにずっと続いている、そういうものをとっておりまして、その中で見えてくるものがあるだろうということと、それからもう1つは、少人数学級とか学級規模の縮小の政策というのが、例えば40人クラスに子どもがいて、40人に等しく同じような効果を及ぼすとは到底思えなくて、ある子のこの部分に効果がある、ある子の別の部分に効果、その組み合わせなんだと思うんですね。

 その1つとして着目しているのがクラス替えという今回紹介したものなんですけれども、その他にも一つ一つの場面を丁寧に切り取って、結果を積み上げていかなければいけないと思っています。

 今回、どこの県ですかという質問もいただきましたけれども、県を絞ったというものも、いろんな県がまざってしまうと、かえってデータとしてよくわからなくなってしまうので、条件をできるだけそろえるという点が1つの県にしているという理由でございます。

 それともう1つ、私は七、八年もこの仕事をやってきて、やはり1時点の学力テストの平均点と学級規模との関係を分析しても、大体あまりいい結果が出てこない。そうではなくて、どの辺の子たちの学力が伸びたのかとか、または学力の発達のスナップショットではなくて、カーブの形を評価するとか、そういったことをやっていかなきゃいけないなと思っておりまして、今回のこれが1つの取り組みなんですけれども、この先もそういった学力の発達の変化というところに着目して、さらにその分析を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

【木村主査】  ありがとうございました。よろしゅうございますか。はい、どうぞ、久保田委員。

【久保田委員】  今のお話の中で、山森さんのお話なんですけれども、これは我々学校現場の実態とものすごく近いといいますか、また今しかできない研究だと思うんですけれども、やはり学力との関係も見たい。そういう場合に、ここでは家庭学習に着目しておりますけれども、学習意欲という部分も学力ですので、そのあたりをもう少し明確に、学力という面で学習意欲のほうから突っ込んでいくような質問立てとか調査とか、そういうものというのはお考えの部分はあるんでしょうか。

【山森氏】  今回のこの調査については2回のパネルデータをとるということをやっていましたので、子どもに調査をするのではなくて、先生が評定をするという形にしました。ですので、子どもの学習意欲はどうですかと聞くよりは、むしろこういう行動が見られますかということで聞いたほうがデータとしてはすっきりいくということで、今回はこういったことをやっていますが、今までやった中では学習意欲などの特性に着目したこともございます。また2回目のここの検討課題で京都府の方のプレゼンテーションがあって、国研との共同研究という話もあったと思いますが、そこではまさに学力テストのパネルデータをとることに着手しているところでございます。

 学力のデータをとることはやはり学校さんが提供してくださるに至るまでの壁が非常に大きいもので、なかなかできないわけであるんですけれども、何とか工夫をしていきたいというふうに考えているところであります。

【木村主査】  ありがとうございました。ほかに、よろしゅうございますか。どうぞ、藤崎委員。

【藤崎委員】  貴重な研究発表をありがとうございました。意見というよりもお願いなんですが、このような研究をもとに、例えば教科別に教室の使い方なんていうのも興味深かったんですが、今後、少人数化が進んだ場合、今でも図工室とか理科室とかどんどん普通教室に転用しています。ですから、こういった分析をもとに、今後の少人数化に対応する学校建築のあり方、またこれは地域での避難所の役割も求められていくと思うんですけれども、学校をどんな建物にすればいいのか、またはその費用ですとか、そういったものもぜひこういったことをもとに研究していただければありがたいなと思いました。

 以上です。

【木村主査】  ありがとうございました。どうぞ。

【井上委員】  今回の教育政策研究所の研究は非常に説得力がある研究ではないかと思って聞いていたわけですが、特に山森さんの5ページの下段で、1年で学級規模が小さかった場合、2年に進学して、それが学級規模が大きくなったら、学習上の活動あるいは家庭学習の取り組み状況等が、それが1年よりは悪くなるという結果がここに出ています。これは先ほど山形県の実際の調査結果というお話で、それが学年進行がおくれたというお話があったので、おくれた場合にはこういう結果が出るということが出てくる心配があるわけで、そういう意味で、今回の定数改善計画ではできるだけ学年進行で、学級規模を40から35にした場合に、それを1年で今年度やっていますから、来年度はそれを学年進行で2年を35人にしていくという最低限の定数改善をやる場合に、非常に説得力があるデータだなと思って見ていたわけですが、これはどの程度の規模でそういう調査をやったのかということを教えていただきたい。

【木村主査】  それでは、山森さん、お願いします。

【山森氏】  規模に関してなんですけれども、山形県内で、仮に40人の学級編制基準を取った場合に2年生が2学級以上となる中学校のほとんどすべてであります。ですので、ここ25、25、14というふうに学校数を書いてありますけれども、1クラスの規模が大体40人基準のときの2学級以上の学校のほとんどすべてが調査対象に協力してくれて、2年分データを提供してくださいました。したがって、こういった条件にあてはまる山形県のほとんどすべての学校はこの中に入っているとご理解いただければと思います。

 ですので、ここでは出現率の百分率だけを示しているわけですが、全国学力テストでは、有意差の検討というのは悉皆調査だからという理由でしていないんですけれども、それと同じように今回もそういった悉皆調査に近いという理解のもと、有意差の検討はしておらず、厳然たる差としてこれだけありますということで示しているということでございます。

【井上委員】  ありがとうございました。

【木村主査】  小川委員。

【小川副主査】  3人の報告に対する質問ではないんですけれども、これからヒアリングが終わって、これから整理して、さらに意見交換を進めていくわけですけれども、それで要望が1つあるんですけれども、今日は1部、2部のプレゼンを聞いて、ヒアリングを聞いて、非常に有意義でした。新教育課程のもとでの目指すべき授業づくりの中で、少人数学級のあり方を議論するということは非常にいろんな意味で示唆があったんですけれども、今日のような議論をすればするほど、小学校、中学校、高校、それぞれ学校種ごとで抱えている問題とか授業上の課題というのは全く違ってきますので、もう少しその辺を詰めて、もう少し議論してほしいなと思っています。

 というのは、前回たしか特別支援学校という特殊な事情のもとでの定数改善のあり方のご提言があったんですけれども、同じように小・中・高それぞれの今抱えている問題状況は違ってきていると思いますので、できれば小・中・高、学校種別ごとに定数改善等々、どういうふうな問題とかご要望があるのかというのをもう少し詳細に議論してもいいんじゃないかなと思っています。

 今までいろいろヒアリングがありましたけれども、教育委員会レベルとか校長先生のヒアリングがあったんですけれども、そうした学校種別ごとの特性に応じた議論というのはあまりこれまでしてこなかったんで、どういう形でやるかについては事務局と主査のほうにお任せしますけれども、少し次回以降、その辺も考慮してやっていただけないかなと思います。

【木村主査】  その辺、私も同じような感じを持っています。ということで、冒頭、ヒアリングは今日で終わりと申し上げましたが、それを撤回しなければいけないと思っています。現場の意見を聞くというふうなことも是非やっていただければと思います。事務局、よろしくお願いいたします。

 よろしゅうございますか。どうぞ、中川委員。

【中川委員】  先ほど清原委員さんの質問に関連してでございますけれども、先ほどは具体的に技術家庭科の先生が時間数が足りないというようなことで、兼務はどうという話だったんですけれども、小規模校の場合によくこういう事例が起きます、現実には。対応の方法として、非常勤講師で対応したりとか時間講師で対応したりとかいうことがあるんですけれども、それでは責任が持てないということで、例えば私どもの鳥取県、鳥取市の場合は、お願いをして正職員を兼務辞令を出していただいて、何校かの兼務辞令ということで正職員を配当しております。

 というふうなことも含めて、小規模校の定数のあり方ということを議論の1つにしていただきたいなと思うんです、加配を含めて。多くの市では、小さな学校を抱えている市では困っております。実際には教員が足りないから。その辺も1つの検討材料にしていただきたいと思います。

 以上です。

【木村主査】  わかりました。ありがとうございました。

 角屋さんのプレゼンテーションを聞いていておもしろいと思ったことがあります。現在は45分でやっているが、75分あればもっとうまくいくということでしたね。45分の75というと、3分の5ですね。大学でも全く同じで、工学部の話ですが、実習は3時間で組んであるのですが、3時間では足りない。ほとんどの場合5時間位かかります。つまり3分の5の時間がいるということです。やっていることは全く同じです。仮説の設定から始め、実験計画を立てさせて、実験を実施して、実験結果を処理して、考察をさせる。そうするとどうしても5時間はかかる。5時間でも足りない位ですね。3分の5で奇しくも一致しているので、おもしろいなと思いつつお話を伺っておりました。

 それでは、よろしゅうございますか。

 じゃ、事務局、何か連絡事項ありましたら、お願いいたします。

【谷合企画官】  それでは、次回の予定につきましてご説明します。

 資料3というのが今後の日程でございまして、次回は第5回になりますが、7月25日月曜日の13時~17時、場所はこの文部科学省の16階の特別会議室でございます。

 今回でヒアリングは基本的には終わりますけれども、次回は文書にて意見照会をしておりました教育関係団体あるいは地方団体からの意見結果を整理して、ご報告をしたいということ。それからもう1つは、今回までのヒアリングを踏まえて、ご審議といいますか、検討に入っていきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いをいたします。

 以上です。

【木村主査】  ありがとうございました。それでは、少し時間を過ぎてしまいましたが本日は以上で会議を閉じたいと思います。どうもありがとうございました。

── 了 ──

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