公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議(第3回) 議事録

1.日時

平成23年7月1日(金曜日) 13時~17時

2.場所

三田共用会議所第3特別会議室

3.議事録

【木村主査】  出席予定の委員の皆様方全員おそろいになりましたので、ただいまから公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議開催をさせていただきます。

 本日はお忙しい中、また、大変お暑い中本会にご参加をいただきましてありがとうございました。本日は、前回に引き続きまして、有識者の方々並びに地方公共団体の皆様からご意見を伺いたいと考えております。前回、議論する時間が足りないというようなことを申し上げたところ、事務局でその辺を勘案していただきまして、その結果、会議の時間が 4時間になってしまいました。多少時間が長くてもいろいろご意見をいただいたほうが良いと思いますので宜しくお願いします。それでは、まず事務局から本日の資料につきまして確認をお願いいたします。

【谷合企画官】  失礼します。それでは、お手元の資料をごらんください。まず議事次第がございまして、資料 1が本検討会議の委員の名簿でございます。そして、資料 2をご覧ください。資料 2が、本日ヒアリングにお越しいただく予定の方々の名簿でございます。時間の関係で、お名前の紹介はこの資料の配付をもってかえさせていただきたいと思います。そして資料の 3、これは、会議の最後で改めてご紹介いたしますが、今後の日程でございます。そして、資料 4-1から 4-8までございます。こちらが、本日お越しいただいている方々からのご提出いただいた資料でございます。資料については以上でございますが、不足等ございましたら事務局にお申しつけください。以上でございます。

【木村主査】  ありがとうございました。よろしゅうございましょうか。

 それでは、早速でございますが、ヒアリングを開始したいと存じます。まず初めに、この検討会議の委員でもいらっしゃいます慶應大学経済学部の土居先生から、少人数学級・少人数指導等の取り組み及びその効果の観点等についてご発表いただきたいと存じます。時間は、前回 15分では短いということを申し上げました結果、今回は 20分ということにななりました。よろしくお願いいたします。それでは、土居先生どうぞ。

【土居委員】  ただいまご紹介いただきました、委員もさせていただいております土居でございます。いつもいろいろありがとうございます。

 私は財政を専門といたしておりますので、「公立義務教育諸学校の学級規模のあり方と財政」と題しましてお話をさせていただきたいと思います。お手元の資料で、若干私が書き漏らしたことが、ないしは誤字といいますか、文字が間違っている点がありますので、スライドでお示ししながら補足させていただきたいと思います。

 ご承知のように我が国の財政状況は非常に厳しい状況にありまして、非常に多くの政府債務を抱えているという中で、これからの将来を担う若い人材をどう育てていくかということを考えていかなければいけないという意味では、フリーハンドでいろいろと自由に絵がかけるというわけでなくて、厳しい財政制約をどう考え合わせながら教育の重点化ないしは効果ある教育の政策に取り組んでいくかということが重要なんだろうと思っております。ありていな言い方で申しますと、義務教育はお金では語れない、お金の都合だけで決めるわけにはいかないけれども、お金がなければ維持充実はできないということで、お金の心配が要らなければ私はこんな話をしなくてもいいのかもしれませんが、お金の話を心配しなければならない状況ということなので、それをいかに整合的に実施していくかということが重要なんだろうと思っております。

 その意味では、この検討会議でも以前にお話をさせていただきましたけれども、予算編成の中で、この学級規模の適正化をいかに説得的に他の予算よりも優先する価値があるかということを示していくということは重要なんだろうと思います。その中で、今回は少し私がデータを観察いたしましたので、その簡単なご報告をさせていただきたいと思います。そういう意味では、いろいろな分析を蓄積して、それに基づいて客観的な議論を進めていくということは説得力を高める意味でも重要なんだろうと思います。

 後で慶應の赤林先生がより詳しくお話ししてくださるとは思うんですけれども、簡単に導入部分ということで、経済学部の分野でも学級規模にまつわる分析というものは海外では特に多く蓄積があって、日本でも最近ようやく出てきているということでありますけれども、まだまだ少ないという印象を私は持っております。特に教育効果というのはそもそも数量的にははかれないんだというような話もかつてはかなり顕著にあったように思いますけれども、そういう数量化できないものもあるとはいえ、できるだけ説得力を高めるにはそこをあえて何らかの形でうまく分析の俎上に載せて、かつそれを客観的にどういう効果があるのかということを分析していくということが望まれると思っております。

 少人数学級というのは、当然ながら、釈迦に説法ですが、一人一人にきめ細かく教育ができるという意味で学力とかさまざまな効果が、よい効果が期待されるという、それをクラスサイズ効果なんというようなことで呼んでおりますけれども、いざそのデータを持ってきて分析すると、どうも必ずしもクラスサイズ効果という、少人数学級、学級の規模を小さく、 1クラス当たりの人数を少なくするとよりよい効果が出るということばかりが観察されるわけではないという、クラスサイズパズルと呼ばれている現象というのが起こっているというのが今の経済学の分野でも一つの論争の種となっております。

 おそらく、いろいろな説明はできるんですけれども、学級規模を横軸にとりまして、縦軸に費用といいましょうか教育に費やす投入、そして、ないしはその教育効果として上げられる達成度というものを縦軸にとったときに、もちろんいろいろなケースが考えられるんですけれども、例えば 1人当たりの費用が U字型になっていて、平均的な達成度というのが、ある学級規模までをとるとどんどん高まっていくんだけれども、ある一定規模以上のクラスサイズになるとその達成度が下がっていくというようなことになると、例えばこういう話でいえば、ちょうど真ん中あたりに、何らかの費用面ないしは学習効果の面で、それらを両方勘案したときの望ましい学級規模というものが存在するのだろうと。もちろんこれが何人なのかというのは分析をしてみなければわからないわけですけれども、論理的に言うとそういうようなところが最適な学級規模という話になるんだろうというのがいろいろ経済学部でも議論をされているということです。

 いざ我が国のデータをとって、学級規模とさまざまな教育効果との間の相関関係を見てみるとどうなるだろうかと。ここでは、私は決してこのグラフですべてが語れるとは思っていません。ただ、いわゆる単相関といいましょうか、 2つの変数を持ってきてプロットしてみるとこんな感じになるという話で、これから少し 4枚ほどグラフをお見せいたしますけれども、結論から申しますと、学級規模と何らかの教育効果との間の関係というのは単相関、つまり、 2つの変数との間で何らかの極めて強い、明確にわかるような相関関係がそう簡単には見出せないと。それは当然でありまして、いろいろな教育環境とか、さまざまなもっと考慮しなければならないものがあるわけでして、単相関といいますか、 2つの変数の間だけで単純に相関関係を見ただけで、それは相関がないから意味がないと結論づけるのは早計だろうと思います。

 ただ、単純な議論というのも世の中には存在するので、説得力を考えるならば、単純に 2つの変数の間で相関があるかないかということだけですべてを決めてしまうというのはちょっと乱暴なんだろうなと。もう少しより深い客観的な議論が必要なんではないか、そういうことのためにあえてここでそのグラフをお見せしております。

 まず 1つ目の 6ページ目のグラフは、 6枚目のスライドのグラフは、横軸にこれは全学年の公立小学校の、すみません、これは「小学校」というのが抜けています。公立小学校の学級規模、縦軸が小学校でのいわゆる学力テスト、これの国語 A、 B、算数 A、 Bの 4科目の得点率を単純に合計したもののその都道府県内の平均点ということでお示ししております。これを見ますと、一見すると若干正の相関もあるようなないようなという、そんなような感じになっています。ただ、これを気をつけなければならないと私は思っているのは、 6年生にテストを受けさせているわけですが、学級規模は全学年でとっているということなので、しかも単純にその県内の学級数と児童数で割り算しているというだけですので、もう少し細かく見るという必要はあると思う。

 例えば、もちろん複式があるので、単式学級でないとなかなか 6年生とクラスという 1対 1対応はできませんので、仮に単式学級だけをとって 6年生でその学級規模を県内平均ということではかって、それで先ほどの同じ学力テストの点数を相関してみせたのがこれですが、これもわかったようなわからないような、右下がりなのか、特異値に引きずられているのかというような感じで学力だけがすべてではないと。

 では、不登校の児童数を、この不登校の児童数は全学年ということなので、学級規模も一応全学年としておりますけれども、この配付しているプリントでは明記しておりませんが、縦軸は公立小学校だけをとったときの不登校児童の数ということでありますけれども、しかも長期欠席者における不登校が理由の児童数ですけれども、これもわかったようなわからないような感じになっていると。さらには、いわゆるいじめという、認知件数で見ても、これもわかったようなわからないような、特異値に引きずられているということで、端的に申しますと、単相関で見てこれは効果がないからやっぱりだめなんだと結論づけるのはちょっと早いと。もう少しより精緻な、いろいろほかに考慮しなければならない要素がたくさんありますので、もう少しそこで分析をしてみようと。

 もちろん本格的な分析をすると 1本論文が書けるというぐらいのものだとは思いますので、ちょっとさすがにそこまでの時間的余裕を持っておりませんでしたので、今日に間に合う程度に、 2007年と 2010年の小学校における学力・学習状況調査の結果とそれらの年と関連づけられる諸変数との間でどういう相関関係があるかというのを見たものです。この配付しているプリントでは冒頭に説明変数と書いてありますが、これは被説明変数の間違いで、申しわけございませんが訂正をお願いしたいと思います。それから、これは、いろいろな分析方法はあるのですが、いわゆるクロスセクションと。 47都道府県で 2007年は 2007年、 2010年は 2010年ということで分析をしております。

 学級規模と学力の関係というのを見る上ではほかの要素も勘案しなければいけないと。ほかの要素としていろいろ考えられると思いますが、例えば県内での所得水準と。 1人当たり県民所得をとりました。それからあと、学力・学習状況調査の中で児童に対する質問をしておりますので、例えば 1つ、「朝食を食べている」と答えた児童の割合、これは県内の平均ですけれども、「食べている」という 1番の選択肢を選んだ児童の割合というのを説明変数に持ってくると。それから、先ほど少しお示ししましたけれども、不登校の児童、長期欠席の中の理由として不登校を上げている児童の数を 1,000人当たりにしたものとか、あとは、これもその調査のときにあわせて学校に対して質問をしているわけですが、 6年生で就学支援を受けている児童の割合が何%であるかと。その県内における数字として 30%以上の学校の割合というのが統計としてとれますので、それをとってきたということで、これら 3つは大体教育環境ないしは親のしつけといいましょうか、そのようなあたりになります。それ以外には、経済社会変数として、県内総生産の増加率ですけれども、実質経済成長率、それから県の財政力指数、それから面積といういわゆる他の要因をコントロールするような変数も入れてみました。

 少しプリントでは色が薄くなってしまって見えていないんですが、こちらのスライドを見ていただきますと、黄色い部分が統計的に優位に、 5%優位水準で優位であると。その相関係数はゼロではないということが認められる変数と。これを見ますと、どうも 2007年では学力テストの成績と学級規模との間には一応負の相関、つまり学級規模、クラスの児童数が少ないほど成績がよいという関係は見出せるんだけれども、統計的に優位ではないというレベルにとどまっていると。それに比べれば、所得とか、それから朝食を食べる児童の割合とか不登校の児童の割合とかが優位にきいていると。

 これも予想される、つまり朝食を食べ、もちろん朝食だけですべては決まりませんけれども、朝食を食べるということをちゃんと親としてしつけている、そういう子供が多い県ほど成績がよいとか、不登校の児童が少ない県ほど成績がよいとか、ないしは、あと、所得が高い県ほど成績がよいというような関係があるというようなところでありますが、ほかにいろいろ変数を入れてみましたけれども、残念ながらこの 2007年はどうも学級規模との間では相関が優位に観察されないと。

  2010年はどうかというと、光明が差したというのか何というか、学級規模との間での優位な負の相関というのが一部の回帰式では観察されると。ただ、すべての、いろいろな変数を入れてみて、いつでも優位に負の相関が出てくるかというと必ずしもそうではないというところで、若干安定性がないというところでありますが、少なくとも、 2007年は全然優位の相関が出てこなかったのに比べれば、 2010年は学級規模と学力テストの成績との間では優位に負の相関、つまり学級規模が、 1クラスの人数が少ないほど学力テストの成績がよいという結果が出ていると。

 あと、ほかは似たような結果ですが、ちょっと 2007年は不登校のほうは優位にはきかないみたいですけれども、 2007年と 2010年しか時間の余裕がなくて分析できていないので、どこまで私の申し上げたことが確たるものなのかということも、これまた今後さらなる検証が必要で、少なくとも全く関係ないとまで言えるほど学級規模と学力との間の関係というのは無関係だと言えるものではないけれども、まだ安定的に観察できるというところまでいっていないということで、ひょっとするとこれは今年、来年とさらにデータを蓄積していくともう少し明確な関係が強く言えるというようなことになってくるかもしれないということであります。

 最後に、残された時間数分で財政との関係で申しますと、確かに全国的に、ネイションワイドに 35人学級ないし 30人学級というようなものを展開するという上で、だれがどういう形でお金を出して責任を持つのかということを明示しながら財政的に予算措置をしていくということが必要なのではないかと思っております。

  15枚目のスライドが私の結論として端的に申し上げているところですけれども、まさに学級規模として国はこれ以下にはしてはいけないという最低限の水準と。ナショナルミニマムとここで言っておりますけれども、通常使われる日本国憲法 25条の意味のナショナルミニマムという意味ではなくて、ここで申し上げている意味は、どの自治体でもこれ以下の水準にはならないという水準であると。それが 25条で保障している以上のものを出していてもそれは構わないということなんですけれども、それをナショナルスタンダードとお呼びになる学者の方もいらっしゃいますけれども、ここでは一応最低限という意味を強調してミニマムという言葉を使わせていただいていますが、 25条の意味とは若干違うということだけを申し上げておきますが、これ以下になるということはないという部分をきちんと国が決めて、そこの部分には責任を持って国費を選択と集中で投じていくという発想が求められるのではないかと。

 それに加えて、さらにもう少し加配とかいろいろな地域に応じたさまざまな取り組みというものは、それはむしろ地方が自主的に決定して地方自治体の予算を充てていくと、そういうような形で中長期的には移行していくというような形の財政的裏づけを与えていくということが必要だろうと思います。

 現状というのは、国が責任を持つべき分野というのを横軸にとったときに、左側が行政分野としてより国が責任を持つべき分野で、右側が地方自治体が独自にやってよいというような分野というようなことで 16枚目のスライドのところで横軸に示しておりますが、どうも国が本来もっと責任を持つべきじゃないのかというようなところが微妙に中途半端にしかお金が出ていないと。そのわりには地方自治体が自由にしていいというようなところも国も奨励的な形でお金を出しているというような構図があるように思います。

 これは別に教育に限らず、ほかの分野ももっとそうなんですけれども、そういうことであるならば、願わくば、国が責任を持ってきちんとこれはどの自治体でもちゃんとやるべきだ、最低限ここは担保すべきだというところは、より選択と集中で国がきちんとお金を出しつつ、地方自治体がより自由に決めてよいという部分については、それは端的に言えば国は口も出さないしお金も出さない、そのかわり今まで出している国が責任を持つべき分野に地方自治体が負担させられているというような呪縛は解かれるので、そこのお金を地方自治体が自分たちの裁量の余地が大きい分野により重点的に投じていくというような役割分担というものに、学級規模ないしは教職員の配置というような部分にも、いきなり左側から右側にというのはできませんけれども、中長期的にはそういう方向に動いていくと、学級規模に関しても、国が決めたけれども、その財源的裏づけが云々というようなことにならずに済むのではないかなと思っております。

 私からは以上です。どうもありがとうございました。

【木村主査】  土居先生、ありがとうございました。いかがでございましょうか、ただいまの先生のご発表についてご質問等ございましたらお願いしたいと思いますが。どなたでもどうぞ。

【小川副主査】  一緒じゃないですか。

【木村主査】  失礼しました。赤林先生から御発言を頂いた後にご意見、ご質問をいただきます。すみません、では赤林先生、同じく少人数学級・少人数指導等の取り組み及びその効果の観点について、 20分ほどでお願い致します。

【赤林氏】  ご紹介いただきました慶應義塾大学の赤林でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、学級規模縮小の教育効果、経済学的アプローチというテーマでお話しさせていただきます。少し資料を多めにつくりましたので、はしょりながら進めさせていただきます。

 私の専門は教育の経済学です。本日は経済学者が 2人参加しておりますが、私は、学校単位あるいは生徒単位といった、ミクロ的なデータを可能な限り利用しまして、学級規模縮小を含め、さまざまな教育政策の効果を、経済学的な手法により分析をしています。

 経済学的手法と言いますと耳なれないかもしれませんので、まず簡単に、それがどういう概念に基づいて行われているのかを説明し、学級規模縮小の教育効果について分析した既存の研究を紹介いたします。教育政策の分析においては、政策評価の難しさがかなり集約されておりますので、教育政策の効果の推計を意味あるものにするためには、どういう点をクリアにしなければならないのか、という点も強調したいと思います。最後に、最近日本経済学会で発表しましたオリジナルの研究、すなわち、横浜市のデータを利用して学級規模縮小の教育効果を分析しました結果を紹介したいと思います。

 結果を先取りいたしますと、小学校の国語のテストの点は、学級規模を縮小したほうが向上するように見えます。しかし算数ではそれが統計的に有意には見られません。中学校に関しては、どちらの科目でも統計的に有意な効果は見られなかったという結論でございます。

 まず「はじめに」になりますが、既に土居さんからお話がありましたが、学級規模縮小の効果の研究と論争は世界中で行われておりまして、その多くを経済学者が手がけております。ところが、我が国においてはこれまで必ずしも諸外国の動向を踏まえた有益な研究が行われておらず、単なる相関係数か主観的評価のみの評価研究がほとんどでございました。その結果、我が国では、学級規模縮小にはどの程度の教育効果があるか、結論は出ていないと理解しております。しかしここ数年、データの蓄積も海外の研究紹介も進みまして、我が国でも学級規模縮小の教育効果に関する有益な研究が実施されております。ここではその一部を紹介するという流れになります。

 では教育の経済分析というのはどういうものか、これは教育の効果を学力向上や生活習慣の改善などで計測し、経済学的な視点から代替的な教育政策ツールを比較する、すなわち、費用対効果の観点を重視する、ということになります。その背後では、教育政策として教育に投入される要素と、教育の成果=アウトカムの間には何らかの関係があるという想定をしています。それを「教育生産関数」と呼びます。「生産」というと何かちょっと非人間的な響きがしてしまうのですが、何らかの関係があるという前提でなければ研究は進みませんので、これは当然のことだとご理解ください。諸外国では、学力指標を中心にさまざまな教育政策の効果が計測されております。念のためですが、教育の成果をお金ではかるだけではありませんので、ご注意ください。

 繰り返しになりますが、教育生産関数とは、教育の成果とそれに影響を与える可能性のあるさまざまな要素を関数関係で結びつけただけのものでございます。教育の成果はテストスコアでも、教育達成度でも、最終的に社会に出た後の何らかの指標、例えば賃金等を入れても構いません。

 一方、教育に影響を与えるものとは何か、ですが、これはありとあらゆるものを想定することが可能でございます。その中には、家庭での投入物、子供の属性、住環境、そして政策上もっとも重要な要素として学校での投入物があります。学校に何年行ったか、教育の質、その中にクラスサイズもあるかもしれませんし、教員の質もあるかもしれません。これらの間に定量的な関係があるという前提で我々はその大きさの推計をするわけですが、観測不可能な投入物もあるでしょうし、個人差もあります。また、大きな影響を与える投入物であっても、家庭環境のように政策的に変えられないものもあります。それを前提とした上で、我々は可能な限り精密に政策効果の推計を行うわけでございます。

 教育生産関数の推計の歴史は非常に長く、おそらく教育の研究をされた方であればだれでも名前を聞いたことがある「コールマンレポート」、これはむしろ教育社会学の分野で有名ですが、ここから始まっております。繰り返すまでもないかもしれませんが、コールマンレポートでのメッセージは、学校の特性や教育の質は生徒の学業達成度にほとんど影響を与えない、かわりに影響を与えるように思われるのは家庭環境や社会環境である、というものでした。先ほど土居さんの報告でも少しそれに近い結果がありましたけれども、このような結論は多くの分析で必ず出てくる結果です。このレポートにより、教育に資源を投入すればいいという主張から、その結果を検証すべきであるという形で議論の焦点が移ったことが最大の功績であります。ただ、後々の研究を踏まえますと、学校や学級が観測不可能な部分で同質ではなく、その同質ではない部分により、見かけ上、政策効果が存在するように見えたり、あるいは効果がないように見えたりというような、統計学上の非常に困難な問題が未解決になっています。

 それを踏まえてハヌシェックという経済学者が、コールマンレポート以降のさまざまな分析結果を総括し、単純な回帰分析ではなかなか政策と効果の因果関係というのはわからないということを言っております。

 このように学級規模の縮小政策は、いかにも教育効果がありそうであるにもかかわらず、その発見が困難であったのですが、その背後には、先ほど言いました非同質性の問題があります。例えば、少人数学級を実施している学校と実施していない学校というのは、政策的に選ばれている可能性があります。教育政策担当者から見れば、柔軟な学級規模の配置をするのであれば困難な学校から優先的に、という配慮が当然あるわけです。そうしますと、もともと条件が悪いわけですから、ある時点の成果を見ても必ずしも良くない。ところが、それは出発点から考えれば改善している可能性もあります。ある時点の学力の水準だけを見て、高いか低いかを議論しても仕方がないということでございます。

 そのような問題を解決するために、さまざまな統計的な因果関係の識別の手法が進歩してきました。そのためにもデータの利用も拡大しなければいけなくて、社会実験であるとか、大規模で長期間のデータの利用などが諸外国では蓄積されてきたわけでございます。

 政策評価一般についてはあまり時間を割けませんけれども、主に社会実験的な手法と、それに近い手法、そして単純な相関をとる分析がございます。多くの方は、「単純な相関分析というのは因果関係を示さない」ということをご存じだと思いますが、従来の教育政策研究のほとんどすべては、コールマンレポートも全国学力調査の分析も、そのような分析にとどまっています。結果的に、因果関係の識別は困難というわけです。

 実験というのは、ある特定の政策を割り当てるグループと割り当てないグループをランダムに分けるという方法です。生徒を対象に実験を行うことは、おそらく教育心理の分野ではかなり行われていると思いますが、現実の政策でそういう差別的な取り扱いをするのは非常に難しい。特に日本では非常に困難があるわけです。

 一方擬似実験的な方法というのは、一定の条件の下で現実の政策の中にある種の実験的な状況を見出して、政策の効果に関する情報をそこから抽出するという手法でございます。これが近年非常に発達しておりまして、今日ご紹介する我々の研究もその手法に基づいています。 

 では、学級規模論争に戻りますが、そもそも、ほとんどの教育関係者が信じている学級規模縮小の教育効果が、なぜデータではっきりあらわれないのか。一つの見方は、既に申し上げましたように、もっぱら分析方法の問題だとするものです。因果関係がわからないような分析方法をしているから悪い、あるいは計測方法が悪い、データがちゃんととれていないからだ、つまり、それらを改善することで必ず学校規模縮小の教育効果は見つかるはずだ、という考え方です。これが、学級規模縮小に賛成する側の基本的立場です。

 それに対し、学校規模縮小に反対する側の主張は、諸外国の政策論争においては次のように要約できます。まず、学級規模縮小の効果というのは非常に小さいか、限定的である。皆無とまでは言わないけれども、ある特定の状況でしか出てこない。その理由は、学校内の資源は効率的に利用されていないからだ、と主張されます。例えば、少人数学級にするのであれば、それにふさわしい指導法が採用されていなければいけない。これはおそらく我が国の教育関係者の方も既に議論されている点だと思います。しかし、現実の学校では、必ずしもそのように柔軟な対応ができていない。そもそも公立学校では、教育目的達成のために資源を有効に利用するようなインセンティブや制度設計がないのではないか、と主張します。実際、すべての学校が少人数学級にふさわしい指導法を採用する意欲と力量があるとは限りません。例えば、同じドリルだけを繰り返しやるような授業であれば、学級が 40人であろうと 20人であろうと何も変わらない、と想像できるわけです。それを考えると、学校内の資源を増やすのが優先ではなく、学校内資源を効率よく利用するために、ガバナンスやインセンティブの改善のほうが先決ではないのか、という主張でございます。

 分析方法上の問題に戻り、政策効果の分析において間違えやすい例を紹介します。批判的な言い方で申し訳ないのですが、自治体のレポートでよくあるのが、「少人数学級導入後、クラスが落ちつくようになった」といった記載です。本日もそのような記載がありましたら申しわけないのですが、これは、観測できないトレンド(第 3の要素)の変化を無視しており、政策評価の方法論から見ると批判の対象になります。他にも、「少人数学級を導入している県は成績がよい」という主張も、既におわかりのように、単純な相関関係だけでは分からない、県固有の事情を無視している、という批判を受けることになります。

 もし、少人数学級を導入した県が導入していない県に比べ、不登校生徒比率が減少しているということであれば、比較対照群を設定していることになり、先に挙げた2つの例よりは正しい因果関係に近いです。ただし、少人数学級を導入した県とそうでない県が事前に同質であるという保証がなければ、厳密に言うと政策効果を正確に計測できていない、という批判は残ります。

 前置きが長くなりましたが、最近我々が行いました実証研究の紹介を、残り 5分ほどでお話ししたいと思います。これは、私と慶應義塾大学博士課程の中村亮介による共同研究で、 2カ月ほど前に学会で発表したものでございます。近々慶應義塾大学のグローバル COEのディスカッションペーパーになる予定です。

 これは、日本の学級編制制度の非連続性を利用した学級規模の教育効果の分析です。その際に、先ほどから問題になっている学級規模の大きい学校と小さい学校の非同質性の問題に配慮し、政策効果の因果関係を識別するような努力を行ったものです。さらに、資料に「付加価値モデル」と書いておきましたが、一時点の学力ではなく、同じ学年の間での 4月から 2月または 11月までの学力の伸びをデータで見ております。ですから、出発点の差を踏まえた上で、少人数学級とそうでない学級の間に、どれぐらい学力の伸びに差が生じるかということを分析しております。最後に、この分析は、横浜市から依頼を受けたわけではなく、完全に独立して行っている政策評価という意味でも一定の意味があるかと思っております。

 実は我々の分析には先行研究があります。イスラエルでも伝統的に学級規模は 40人が上限と決まっており、それを利用した研究が 10年ほど前に発表されております。 1学年の人数が 40であれば 1学級ですが、 41になったとたん 2学級になり、平均学級規模は 20.5となります。ここに大きな非連続的な変化があるわけです。この変化というのはおそらく偶然の産物でしょう。ある学年が 1人多いか少ないかというのは、意図的に操作できるものではないので、一学年 41人の学校と 40人の学校とでは、他の条件に関しては事前に何の差もない、すなわち「同質」であると考えます。もちろん、 40人の学校と 120人の学校では、都市規模が違うでしょうし「同質」とは言えませんが、 40と 41では事実上差がない、あったとしても誤差であろうと考えます。にもかかわらず、 1人多いだけでクラスサイズの大きな変化がありますので、ここで学力の伸びに変化は起きていないか調べるのが、今回の手法になります。

 関連する日本の先行研究として幾つか紹介します。まず、今回と同様な手法を使った研究として、北條先生の研究、そして北條先生と小塩先生の共同研究がございます。ただし、彼らの研究は TIMSSという国際比較データに基づいており、データの取られた地域が特定できておりません。我々は横浜市の学力調査を使っておりますので、例外的な学級編制をしている学校もすべて特定できます。つまり、 40人ルールの下で少人数学級ができているのか、 35人ルールの下でできているのかというのは、データごとにすべてわかります。学級編制ルールが厳密に識別でき、その帰結も厳密に識別できるというのが我々の研究の特徴です。

 使いましたデータは横浜市の学力調査と全国学力調査の横浜市分です。この2つはちょうど実施時期がうまいぐあいにずれておりまして、全国調査はご承知のとおり 4月ですが、横浜市の学力調査は中 3を除いて 2月です。ですから、ちょうど 1年近くの学力の伸びがわかるという手はずになっております。

 ちなみに分析に使いました学校別テスト結果データは、情報公開請求により入手させていただきました。テストデータの開示には賛否両論ありますけれども、やはり客観的検証のためにはデータの公開が必須であろうと我々は考えております。

 横浜市の学級編制制度は多くの自治体とほぼ同様だと思います。すなわち、基準は 40人ですが、 35人以下の学級編制も研究指定校で実施し、かつ学校の実態に応じて、校長判断により市に申請があって、そして弾力的な学級編制が実施されます。私たちはそれらをすべて確認いたしまして、そのような例外的な学校をデータに含めた分析、含めない分析等々をやっております。学力データは小学校 6年生と中 3に限りまして、標準化されたスコアの伸びを利用しております。

 次のスライドから4枚ほど続く図が、非常に重要な図です。まず、横軸は学校の学年在籍生徒数、縦軸が平均的なクラスサイズです。ごらんのとおり在籍が 40人までは、平均的なクラスサイズが 40までまっすぐに上がりますが、 41になったとたんがくんと 20に下がる。次に在籍者が 80まではずっとまた上がりますけれども、 81になったとたんがくんと下り、3クラスで各 27人ぐらいになります。すなわち、このぎざぎざで表される線は、学年在籍生徒数とその学校の平均的なクラスサイズに関して、制度が予定している線だと言えます。その上で、○や+のマークであらわされているのが、現実の学校のデータの点です。ですから、この予定線から少し外れている点が、例外的に 35人ぐらいでクラスを分けている学校だと認識することができます。この図は小学校 6年生ですが、中学校 3年生も同様です。

 我々が知りたいのは、このようにクラスサイズが大きく変わる前後で大きくテストの点が変わっていないかということです。それをあらわしているのは次の図です。これは縦軸に小学校 6年生の国語と算数の学校平均点を、横軸を在籍者数にとってプロットしたものですが、クラスサイズの予定線とテストの点が逆相関であれば、クラスサイズが小さいほうがテストの点が高いということになります。どう見えますでしょうか。何となく逆相関にあるようにも見えますけれども、でも本当はどうかな、という感じだと思います。中学校になりますと、やはり逆相関が見える部分もありますが、そうでない部分もあると思います。

 今お見せしたのは、 2月の横浜市のテストの成績水準でプロットしたものです。次に、テストスコアの伸び、 1年間の伸びを縦軸にプロットしたものを見てみます。最初は小学校についての図です。かなりきれいな逆相関が見られるのがわかると思います。中学校になりますと、小学校より相関が見えにくいかと思います。

 こういうふうにグラフを見ると、もしかしたら少人数学級の効果はあるかなという気がするわけですが、これをきちんと統計学的に検証するのが計量経済学の役目になります。詳細は省略いたしますけれども、実際に推計を行いますと、小学校の国語だけは統計的に有意に、クラスサイズの減少によって成績が上がる効果が見られますが、算数については見られません。中学校についても、効果の方向は小学校とおおむね同じですが、その効果は非常に小さく、かつ統計的にも有意ではないというのがこれまでの結果です。小学校の国語に見られた学力効果も、効果の大きさという点からから言えば、残念ながら大したことはありません。学校単位で見た学力の分布を描き、標準偏差を計算しまして、学級の人数を一人減らすことの学力効果が、標準偏差に比べてどれぐらいの上昇かというと、 0.01ほどです。それを大きいと見るか小さいと見るかは判断の問題ですが、私は決して大きいとは言えないと思います。

 以上の結果はいろいろな解釈ができるのですが、次のスライドにそのいくつかを書いてあります。ご覧の通り、塾の効果が混じっている可能性、少人数指導が算数にはもう既に入っているため学級規模の効果が算数ではあまり出てこない可能性など、さまざまな解釈が可能です。

 ここでまとめさせていただきますと、以上の分析を踏まえると、学級規模縮小が学力に効果があるとしたら、中学校ではなくて小学校、特に国語であろうと思います。ただし、その効果というのは大きいとは言えないと思います。また、低学年については、まだ分析を行っていないのでわかりません。

 補足ですが、現在ほかの 2つの自治体についても、同様に全国学力調査等のデータを使って分析していますが、暫定的な結果としては、全体の傾向として中学校よりは小学校のほうが効果は出るという結果を得ております。

 最後に「議論のため」にというスライドで総括をしたいと思います。少人数学級の教育効果の分析は始まったばかりですが、現状では、必ずしも大きな効果を期待できるものではありません。もし期待できるとすれば小学校であろうと思います。ただし問題は費用対効果だと思います。学級規模縮小だけに議論と予算を費やすことは無意味であろうし、ほかにやるべきことがないか、ちゃんと考えるべきであろうと思います。

 念のため付け加えますと、今回の分析で学級規模縮小の効果が見えないと言いましても、学級規模縮小がどのような場合にも絶対に意味がない、ということではありません。すぐ考えられるように、特定のグループ、特定の地域、あるいは特定の条件のもとでは、少人数学級は教育効果が高いかもしれません。我々はそれをきちんと検証していかなければいけないと思っております。

 以上です。

【木村主査】  ありがとうございました。

 なかなか考え方が難しい問題でありますが、以上、土居先生と赤林先生からプレゼンテーションいただきましたので、少し時間をとってご質問あるいはご意見をちょうだいしたいと思います。どなたからでも結構です。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

【中川委員】  よろしいでしょうか。

【木村主査】  どうぞ、中川委員。

【中川委員】  土居先生の 16枚目のTPですけれども、非常に興味持ったんですけれども、これはこんなふうな解釈でよろしいでしょうか。現在、教員の国庫負担を上限まで使わなくて、返してでも交付税を教育費に使わないというような県が増えてきていると。今では 20県ぐらいになっているというようなことを聞いているんですけれども、そういうことがこのことにより防げるというような解釈ができるTPでしょうか。

【土居委員】  よろしいでしょうか。

【木村主査】  お願いします。

【土居委員】  ここで厳密に言うと、一般財源といいましょうか、ひもなしの財政移転なので、どこまでひもがついたような説明をするかというのはなかなか、できる面もあるしできない面もあるんですが、私が申し上げたかったことは、特に、いわゆる三位一体改革のときに国庫負担 2分の 1から 3分の 1にするというところ、私も中教審でプレゼンテーションをさせていただいて、 3分の 1にするのはいかがなものかということを申し上げていたりしたんですが、つまり、もちろんそれは教員人件費の面にクローズアップした話ではあったわけですが、それ以外でも、人件費を財政的に支えることを通じて学級規模に対して間接的にクラスサイズを小さくするということにつながる話にはなると思うんですが、結局のところ、今 3分の 1になってしまって、その分、 3分の 2は地方自治体が負担しなければいけないわけですけれども、それを当然ながら交付税の助けなしで全額賄えるというほどの税収がない自治体が多いということだとすると、もし交付税の影響を受けると、それだけ何か別の財源を地方で賄わなければいけなくなってしまうと。そういうようなことにならないように、しかもそれは国が、例えば 35人学級ということで、ネイションワイドにやると決めて、それでやるならばきちんとその分についての財源を国からも担保できるような仕組みに、いきなりは難しいかもしれないけれども、行く行くはそういう方向に持っていくということでもって、地方で財源がないからそんなことはできないなんていうような話にならないようにしていくべきだろうという、そういう意味の意図であります。

【木村主査】  どうぞ。

【中川委員】  よくわかりました。それに、 35人学級をどんどん拡大していって、やっぱり教員の人件費は確実に担保できるというようなシステムになるといいなと思いました。

すみません。

【木村主査】  ありがとうございました。ほかにございませんでしょうか。いかがでしょう。どうぞ、貞広委員。

【貞広委員】  ありがとうございます。非常に興味深いご報告をいただきましてありがとうございます。私も土居先生と同じデータを使って各県のもろもろのデータと順位相関をとって同じような分析をした経験があるんですが、やはり要保護率であるとか失業率であるとか離婚率であるとか、社会的な背景と学力の相関が高かったということなんです。どれだけお金を公的に払っているかということも関係ないと。クラスサイズもあまり関係ないという結果になってしまったんですけれども、それと赤林先生のお話と考え合わせたときに、赤林先生、一番最後に少人数学級の効果がある対象グループというのがあるんじゃないかというお話をされていたかと思うんですが、その少人数学級が一体だれに効果があるのか。実はグループを絞ったら効果があるという可能性があるんじゃないかということです。

 例えば今、土居先生のご発表との関係で言うと、要保護率の高い学校で、または離婚率の高い学校、そういう社会的に厳しい学校であれば少人数学級の効果があるんじゃないかというような可能性を示唆されたのではないかと思うんですけれども、今の時点で何かおわかりになっていることがあったら教えていただきたいということと、そうしますと、そういう考え方を適用しますと、どこに、例えば、学校によって、ここの学校は少人数にするとかここの学校は少人数にしないなんていう考え方が入ってくると思うんですが、そういう考え方と土居先生がご提示されたナショナルミニマムという考え方の関係、何かアイデアのようなもの、または関連づけのようなものをお持ちでしたら教えていただきたいと思います。

【木村主査】  ではお願いします。

【赤林氏】  僕からですね。貴重なご質問ありがとうございます。非常に重要なポイントだと思いますが、私はこの学校データを行政の外部の立場で取得しておりますので、例えば、学校ごとの要保護率とか、給食費を免除されている児童の比率とか、そういった、学力との関係でしばしば話題になるようなデータは到底手に入れられません。これが自治体と協力して分析を行うか行わないかで発生するジレンマです。地域や家庭の深い背景まで突っ込んだデータを使い、どのような層にターゲットを当てれば最も効果があるのか、という研究をするためには、やはり自治体との協力関係が必要だと思います。私たちの研究にご理解をいただき、同時にそのような問題意識がある自治体があれば、ぜひ協力していきたいと考えております。

 現時点では、一般に手に入るデータ、例えば、必ずしも正確とは言えませんが学校が存在する地域の地価を家計資産の指標として利用し、地価が高い地域と低い地域で少人数学級の教育効果に違いが出るか、といった問題設定を考えております。ただし、まだそこまでやっておりません。

【木村主査】  では土居先生。

【土居委員】  ご質問ありがとうございます。私のプレゼンテーションを端的に短く要約してしまいますと、ネイションワイドでやるべきだと。やらない自治体、やらない県とかやらない市町村があるということはあり得ないというスタンスで臨むならば、それは国が制度も決め、そしてお金も出すと。別にそこまでは、地域のニーズでそれぞれにお決めになってやられればいいのではないでしょうかというものについては、これは極端に言えば国はお金はそこは出さないで、地方自治体それぞれに税なり財源を確保してご自由になさったらいいだろうと。それが、そこまで本当は現実は白黒つけられないんですけれども、単純に言えばそういうことです。

 今おっしゃった話で言えば、これは地域差ではなくて、全国的にそういう少人数学級の効果が観察される、そういうある特定の児童なり生徒なりの集団があるということであるならば、それは全国的に観察されて、全国的にやったほうが効果が上がってくるということであれば、それは国費できちんと財源を賄うという必要が出てくるでしょうと。いや、どうもそれは、極端に言えば、例えば北海道だったらそうだけれども、九州では必ずしもそうでもないかもしれないと。でも北海道でやったらそれはそれで効果があるんだからやったらいいんじゃないか、そういう場合は、それは、もちろん国は何らかのサポートはあってもいいわけですけれども、別に九州でやってもあまり効果がないということなので、九州の納税者にもわざわざ税金を負担してもらって国費でやるというのも受益と負担との関係でマッチしていないという面もありますから、それは、例えば北海道で効果があるということであるならば北海道でやったらいいだろうと。北海道の税金でやったらいいだろうと、こういう言い方ができるんではないかと思います。

【貞広委員】  ありがとうございました。

【木村主査】  ありがとうございました。どうぞ、小川委員。

【小川副主査】  赤林先生にちょっと教えていただきたいんですけれども、赤林さんがこの疑似実験モデルで行ったような少人数学級の効果については、たしか数年前に、国研の山森研究員を中心にして、同一学年とか同一学級の 2つの時点の間の学力や社会性育成の測定を試みた同じような調査結果があったように記憶しています。その調査でもやはり微妙な評価というか、効果はないとは言えない、一定度あるというふうな非常に評価の微妙な結果が出ていたと記憶していますが、赤林先生の同様の疑似実験のモデルでもなかなか評価が非常に微妙だなというふうなことを一つ確認させてもらいました。

 その上でちょっとお聞きしたいんですが、日本の学級規模の効果を検証する際に、学力のみだけピックアップして見るというのやはりなかなか難しいし、また、日本の学級規模の効果を評価する際には不十分なのかなとずっと考えています。というのは、アメリカと違って日本の場合には、学級というのは学習指導集団だけではなくて、いわゆる生徒指導というか、生徒が生活し、そこで社会的規範を身につけたり、いろいろな学級づくりの中でさまざまな社会性を身につけるという生活指導、生徒指導的な要素も日本の学級というのは持っていますよね。

 ですから、学力というふうな面だけで学級の規模の効果を見るということではなかなかその辺のところの成果が見えにくいと思いますので、 33ページの 3にも書いているとおり、不登校等についての影響も調べる必要があるというのはまさにそのことにも関係していて、学力のほかにそういう社会性とか社会的規範性の育成という視点で少人数学級の効果ということを検証した上で、そうした社会性とか社会的規範性と学力の相関を見るとか、そういうふうな分析の視点というのはどう考えたらいいんだろうかというのを少し教えていただければと思うんですが。

【赤林氏】  おっしゃられたことは、当然重要なポイントだと思います。最終的に教育の目標は何なのか、あるいは教育後の人生の目標は何なのか、というところまで議論しなければいけないかもしれませんが、おそらく学力というのは教育の目標の一部であるのは間違いないと思います。もしかしたら学級規模の縮小は、学力以外の部分で大きな効果として出てくるのかもしれませんが、やはりそれは、同様の検証を通じて確認していくべきものだと思っております。不登校の学校別の人数といったデータは、おそらく情報開示請求をしても出てこないではないかと現段階では理解しておりますが、もし分析できるのであれば是非ともやってみたいと考えております。

【木村主査】   どうぞ、ほかにございませんか。どうぞ、久保田委員。

【久保田委員】  大変ありがとうございました。ちょっと統計のほうが弱いものですから、とらえ方があいまいですけれども、今の赤林先生のお話の中で、例えば 5年生のときに 40人に近い学級編制であった。ところが、転入生が入ってきて 6年生になったときに学級規模が小さくなった。そうすると、伸び率というのは大変ありがたいとらえ方だと思いますけれども、 5年生のときの伸び率よりも、その学級規模が小さくなった 6年生のときの伸び率の効果も、今先生がお調べになった効果と同じで、こういう結果であるととらえていいということですね。そこまでは言えないですか。

【赤林氏】  このデータではそこまでは言えません。同じ子供の伸びを 2回計測したデータではないからです。ただ、あと 1年分のデータがあれば可能です。横浜市は小学校 1年生から 6年生までテストを行っておりますので、同じ子ども集団の前の学年からの連続のデータを使えば、同じ学年内の伸びというわけには行きませんが、前年の 2月から今年の 2月、それから次の 2月までの伸びという形で測ることはできるかと思いますし、やりたいと考えております。

【木村主査】  ありがとうございました。ほかにございませんか。どうぞ、白山委員。

【白山氏】  先ほどの小川先生のご質問といいますかご意見とほとんど近いものがあるんですが、それに加えて赤林先生に、この後も継続してご研究なされるということでございましたので、希望的なお話しさせていただければと思います。

 最後の「議論のために」というところでの項目を読みまして少しほっとしているわけですけれども、いずれ大都市部と地方との違いというふうな社会的な条件がやはり大分違ってきているところがあります。そういったようないわゆる学校の置かれている立場、先ほど家庭環境のお話もなさいましたけれども、そういったところの比較というふうなものもこの後数字でこういう形で分析していただければ、また違ったものが出てくるのでないかなと思ってございます。特に先ほど、不登校とか、いわゆる生徒指導的な部分、こういったことにも実は少人数学級というふうなものの効果というふうなものが我々地方では十分あるものとまず経験上見ておりますので、そのあたりにつきましてどうかこの後も分析していただければというお願いでございます。よろしくお願いします。

【木村主査】  ほかにございませんか。よろしゅうございますか。

 個人的な経験について少し話しをさせて頂きたいと思います。 78年にケンブリッジへ行って、子供たちを地元の学校に入れました。そこは非常に先見的な地域で、少人数クラスを積極的に導入していました。 20人ぐらいだったと思います。何度も授業を見に行きましたが、校長と後で話す機会がありましたので、少人数クラスってとてもいいですね、一人一人先生が面倒見られるからと申しましたら、校長は喜んでいられないんですよと言っていました。というのは、急にクラスサイズが小さくなったので、先生が一人一人の子供に手をかけ過ぎてクラスルームティーチングが崩壊してしまったというのです。ですから、先程土居先生がご指摘になりましたが、クラスサイズは変わっても、教え方というのはほとんど変えていない。その辺のことも相当いろいろ今後考えていかないといけないんではないかと思います。

 それからもう一つ、経済格差の問題というのはものすごく大きいと思います。悉皆の学力調査が行われましたときに、結果を 4つのカテゴリーに分けて発表しました。大都市部、中小都市、僻地部等の 4つです。データによると僻地部と差がなかったので、さすが日本は大変なものだなと思って、これを外国であちこち宣伝し困りました。ところがあるときに、東京都教育庁の幹部に注意されました。東京のデータを見てからにしてくださいというので、東京の中での差はものすごいんですね。とても全国の比ではないんです。全国の倍以上の格差を出している。やはり教育の問題というのは経済格差の影響を考えていかないといけないということを思い知らされました。なかなかこれだけのご研究されても、どちらの方がいいのかわかりませんが、はっきりした結論が出てこないのはそういうことも関係しているのかなという気がしました。

 さてそれでは、よろしゅうございましょうか。両先生、本当にありがとうございました。またこれからもぜひひとつよろしくお願いをしたいと存じます。ありがとうございました。

 それでは、引き続きまして次のヒアリングに進みます。ここで土居先生がこの後少しご用事がおありになるので退席をされるとのことでございます。どうもありがとうございました。次は兵庫県の皆様でございます。お見えいただいておりますのは兵庫県の教育委員会、それから小野市の教育委員会、兵庫県高砂市立荒井小学校の皆様でございます。トピック、お話しいただくのは、弾力的な学級編制、教職員配置の推進の観点についてでございます。

(ヒアリング出席者入れかえ)

【木村主査】  よろしゅうございますか。ご発表いただく順番ですが、まず兵庫県の教育委員会からです。ご発表いただくのは兵庫県教育委員会事務局次長の大久保様と、それから同じく事務局学事課長の小川様です。それから、ついでに、小野市の教育委員会は発表者が陰山教育長、それから兵庫県高砂市立荒井小学校は校長の衣笠先生ということになっております。兵庫県まとめて 40分という予定にしておりますが、よろしくお願いいたします。それではどうぞ、大久保様から。

【大久保氏】  兵庫県教育次長の大久保でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、私からは兵庫県におきます 35人学級編制を初めといたしまして弾力的な学級編制等の状況について説明をさせていただきます。本県では、不登校やいわゆる学級崩壊等の問題を踏まえまして、子供たちに学ぶ喜びを実感させる指導方法の工夫の必要性、そして、基礎・基本の定着、適性等に応じました教育工夫の改善の必要性などから平成 11年度調査研究を開始いたしまして、現在に至っておるところでございます。

 この実施に当たりまして各学校におきましては、子供たちの実態や地域の実態に応じまして教科担任制や同室複数指導、弾力的な学習集団の編成等を行うなど新しい学習システムの研究開発に努め、学ぶことの喜びや達成感、成就感を実感させる教育を実践することなどの報告がなされたところでございます。

 この調査研究を踏まえまして平成 13年度から、児童生徒の発達段階や教科の特性等に応じまして、より柔軟に多面的できめ細かな指導を推進しているところでございます。この取り組みの中で、平成 16年度から研究実施校といたしまして、小学校 1年生には 35人学級の導入を開始いたしました。以後順次導入して、平成 20年度に、小学校 4年生まで 35人学級導入に至っております。

 この新学習システムのメニューといたしましては、小学校 1年生、 2年生は 35人学級編制と複数担任制の選択実施、ただし 23年度からは 1年生は基礎定数で実施しております。 3年生、 4年生につきましては 35人学級編制と少人数学習集団の選択実施、 5年生、 6年生では、少人数学習集団の実施と兵庫型、後ほど説明をさせていただきますが、教科担任制の実践研究の選択実施を、中学校全学年には少人数学習集団によるきめ細かな指導の推進を行っているところでございます。

 まず小学校 2年生から 4年生におきましては、 35人学級編制と複数担任制、少人数学習集団の編成との選択となりますが、この弾力的な取り扱いの具体例、理由といたしましては、まず都市部、郡部とも特別な配慮を要する児童が多数在籍するために複数担任制を選択するケース、また、 1学年当たりの人数が多い場合は少人数学級の効果が小さいため少人数学習を選択する場合がございます。これは特に都市部に見られるケースでありますが、例えば 1学年 261人の場合、 40人編制とすると 7学級で 1クラス当たり 37.2人になりますが、 35人編制といたしましても 8学級で、 1学級当たり 32.6人ということで、あまり大きな変化がないというようなケースでございます。また、 3番目に、教室が不足しているなどのことによりまして複数担任制を選択するケースもございます。

 この件につきましては、後ほど高砂市の荒井小学校の事例を衣笠校長のほうから報告をさせていただきます。学校現場の状況によりまして、 35人学級を選択するより少人数学習あるいは複数担任制を選択するほうが学習効果が高い場合がございます。という意見をいただいております。

 また、次に、 35人学級編制と複数担任制に関する学校へのアンケート結果を紹介させていただきたいと思いますが、このアンケートは、本年、 23年 1月末から 3月にかけまして翌年度の授業充実のために実施したものでございますが、まず、「基礎・基本の確実な定着を図り、一人ひとりに応じた学習指導ができるか」という質問に対しまして「そう思う」と回答したのが 35人学級編制の実施校におきましては 87.1%、複数担任制の実施校におきましては 82.1%とほぼ同程度で、いずれも高い評価をしております。

 次に、「学習面でのつまずきのある児童に素早く対応できるか」という質問に対しましては、「そう思う」と回答したのが 35人学級編制で 80.6%、複数担任制の実施校におきましては 94.7%ということで、複数担任制のほうが 35人学級編制よりも 14.1ポイント高い評価を得ております。

 次に、「入学当初の児童の心の安定など、一人ひとりに応じた生活指導ができるか」という質問に対しましては、「そう思う」と回答したのは 35人学級編制の実施校におきましては 83.1%、それから複数担任制の実施校におきましては 68.4%。この点につきましては、 35人学級編制のほうが複数担任制よりも 14.7ポイント高い評価をしております。

 最後に、「個別に指導を要する児童に対して、授業中に指導時間を確保できるか」という質問に対しましては、「そう思う」と回答したのが 35人学級編制で 42.7%、複数担任制で 71.6%と、複数担任制のほうが 35人学級編制よりも 28.9ポイント高い評価になっております。しかしながら、いずれの質問に対しましても、「どちらかといえばそう思う」というのも含めますと同程度で高い評価をしているというような結果でございます。

 今後さらに詳細な調査分析が必要と考えておりますが、以上の結果から、一般的な課題に対しましては 35人学級編制の効果が大きく、一方で、特定の課題には複数担任制のほうの効果が大きいということで、弾力的な学級編制が学校現場の課題対応に有効な手段であることの一つのあらわれではないかと考えております。

 次に、 35人学級編制の状況につきましては、ごらんの表のとおりでございますが、既にご説明をさせていただきましたが、 35人学級編制の実施は弾力的な取り扱いとしており、現場の実情を考慮したものとなっております。小学校 1年生は、今年度法改正によることもございますが、例年の傾向としまして学年が進行するにつれまして実施率は下がる傾向にございます。平成 23年度は、 1年生で実施率が 99.4%、 2年生で 89.9%、 3年生では 88.5%、 4年生で 81.8%となっています。これは、学習内容が徐々に高度になる 3年生、 4年生では、基礎学力の定着に重点を置きたいという理由から少人数学習が選択され、学力面をより重視した取り組みが増えているためであると考えております。

 次に、定数改善の効果でございますが、今年度は 1年生 35人学級対象校 164校のうち 163校が 35人学級編制を選択し、ほぼ全校で 35人学級を実施するということになりました。昨年度は 1年生の選択率が 89.7%でございました。また、例年 90%前後であったということから考えますと、やはり法改正の効果の大きさを実感しているところでございます。

 現段階では、複数担任をせずに 35人学級を選択した学校において特段の支障は聞いておりませんし、法改正によりまして学級数増による競争意識の高まりなど 35人学級編制に対する保護者の期待もございます。また、今年度複数担任制を選択した 1校につきましては、特別な配慮を要する児童が多数在籍するということが理由でございます。今後、法改正によりまして 2年生以上に 35人学級編制が導入された場合には教室不足等の課題が懸念されるところでございます。

 平成 23年度の定数改善につきましては、小学校 1年生の 35人学級はもちろん、その他少人数学習、兵庫型教科担任制で活用をさせていただいております。この本県独自の取り組みであります兵庫型の教科担任制について説明をさせていただきたいと思います。

 兵庫型教科担任制といいますのは、平成 21年度から研究実施をしておりますが、 5年生、 6年生で、学力の向上や中学校への円滑な接続を図る観点から教科担任制と少人数学習集団の編成を組み合わせたもので、現在指定校での実践に取り組んでいるところでございます。

 兵庫型の教科担任制は、学級担任制のよさを生かしつつ、教科担任制と少人数授業を組み合わせまして複数の教員が指導をするというものでございます。教科担任制では、国語算数、理科、社会の中から 2教科以上を選択しまして、担任の交換授業を原則として実施いたします。これにより、学年全体で子供の学習状況や生活状況を共有し、組織的・協力的な指導を効果的に推進しようとするものでございます。

 また、少人数授業につきましては、このうちの算数と理科で行っております。具体的には、イメージ図をごらんいただきたいと思いますが、 6年生の 2組のケースでございますが、まず教科担任制によりまして各担任が国語と算数の授業を交換します。 1組の担任 Aさんが国語、 2組の担任 Bさんが算数を受け持つと。次に、算数については、新とありますが、これは先ほどの新学習システム担当教員のことを意味しておりますが、指導方法の工夫改善の加配でいただいた教員でございます。この人と 2組担任の Bさんで算数については少人数授業をすると。理科については、それぞれの担任、 Aさんと新学習の先生、担任 Bさんと新学習の先生が少人数授業をするというものでございます。

 この兵庫型教科担任制によって期待される効果といたしましては、子供の面からは、教員との人間関係や学習経験の広がりによる成長、教職員の面からは、多面的な児童理解に基づく組織的・協力的な指導の充実、学校の面からは、発達や学びの連続性を確保するための小中学校の円滑な接続という子供たちにとって優しいシステムの創造に期待しているところでございます。

 兵庫型教科担任制の具体的な取り組み状況につきましては、この後、小野市の陰山教育長のほうから説明をさせていただきます。

 以上、兵庫県では、個に応じました教育を推進するため、新学習システムによる学校や地域の実情を踏まえました指導体制の確立を進めていきたいと考えております。そのため 1つ目は、新学習指導要領に求める言語活動や理数教育等の充実への対応をしたいということ、 2つ目は、個に応じたきめ細かい指導により知識、技能、思考力、判断力、表現力、学習意欲をバランスよく育成すること、 3つ目には、小学校においても専門性を生かした教科教育を実施するとともに、小学校の学びを中学校へ円滑につなぐ体制の構築を図っていきたいと考えております。以上のことをしっかりと行っていくことで、確かな学力、豊かな心、健やかな体をあわせた次代を担う子供たちを育てることに全力で取り組んでいるところでございますので、今後ともご指導、ご支援をよろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

 引き続きまして、陰山教育長のほうから兵庫型の教科担任制の具体的な取り組みについて説明をさせていただきたいと思います。

【木村主査】  お願いいたします。

【陰山氏】  小野市の教育長の陰山でございます。

 小野市といいますのは兵庫県のちょうど中央部に位置しておりまして、人口 5万、児童生徒が 5,000、学校規模としましては小学校が 8校、中学校 4校、特別支援学校 1校という規模の小さな市でございます。

 私からは、先ほど大久保次長からありました小野市におきます兵庫型の教科担任制の具体的な取り組みについて説明いたします。兵庫型教科担任制とは、先ほどのご説明と重複しますけれども、小学校 5年、 6年生におきまして、学級担任による授業交換も含め国語、算数、理科、社会のうち少なくとも 2教科以上で教科担任制にするとともに、加えて算数、理科については加配の教員を配置して少人数授業を実施する教育システムでございます。

 小野市における兵庫型教科担任制のねらいといたしましては 3つございます。 1つ目は、児童の成長に応じた能動的な学びの支援でございます。小学校の 5・ 6年生というこの年ごろでございますけれども、 4年生までの受動的な学びから能動的、積極的な学びへと変わるときであるため、今までの学級担任 1人で教える学級担任制から、多くの教員による多面的でより専門的な教科担任による指導へと変えていこうというものであります。

  2つ目は、小学校教員にありがちな学級王国意識の払拭でございます。これは全国的にかなりあると思いますが、小学校の教育改革を阻んでいると考えられます学級王国意識、これを教科担任制を導入することで変化させようとするところであります。

  3つ目は、科学技術立国を支える理数教育の深化充実でございます。これは科学技術立国を生きる子供たちに対する理数教育を教科担任制により理数の得意な教員の指導に変えるとともに、さらに興味関心や理解を深めるために教員を加配して少人数授業を実施するものでございます。

 もう少し詳しく申し上げますと、 1つ目の能動的な学びの支援についてですが、東北大学の川島隆太教授によりますと、脳の前頭前野部は 10歳を超えたころ、つまり小学校 5年生になったころから再び急激に発達を始めると言われております。つまり、子供たちはそれまでは先生の指導を素直に受け入れ、言われたとおり学んでいくという受動的な学びをするのですけれども、 5年生あたりから子供たちの学びの姿勢が、自らの興味関心に基づいて積極的に学んでいこうとする能動的な学習へと変わっていくと言われております。こうした学びの変化に対応するために、できるだけ多くの教員による、より専門的で深みのある指導がこの時期には必要であるということで、兵庫型教科担任制を取り入れたところでございます。

  2つ目の学級王国意識の払拭についてでございますけれども、これは、小学校では今まで主として学級担任制によって、つまり一部の芸術の教科等を除き、いわゆる主要教科は学級担任が授業を行うという形で進められてきております。この授業のやり方は確かに今まで我が国の小学校教育を立派に支えてきた制度でございますけれども、一方では、教員がそれぞれの学級の独自性、独立性を重視するあまり、ややもすれば閉鎖的になり、新しいものを受け付けない、あるいは変化を好まない、そういった体質を生み出してきておりまして、これが今の教育改革を阻む大きな要因になっていると私は考えております。

 兵庫型教科担任制は、中学校と同じように教科ごとの担当教員が指導し、 1つのクラスを複数の教員で指導観察するものであり、今までの、自分のクラス、私の学級といった認識を変えていく手段であるととらえることができ、ひいては小学校教員の意識を徐々に変えていく、そういう契機になるものであると考えております。

  3つ目の理数教育の深化充実でございますけれども、一般的に言いまして小学校は文科系の教員が多数在籍しております。ですから、どちらかというと理数教科、特に理科教育を苦手とする教員が現実的に多く、子供たちに理科、科学の魅力を十分に伝え切れていない、興味関心を持たせるような授業が不十分であるという現実がございます。こういった小学校の現状を打開するためにも、兵庫型の教科担任制による算数、理科の少人数授業は非常に有効であると考えているところでございます。

 次に、小野市の教科担任制の歩みについて少しだけ触れておきます。小野市では、平成 16年度から県の教育委員会、教育事務所とともに、主として担任の授業交換を中心とした教科担任制を全小学校で試験的に実施し、その効果あるいは問題点等について研究してきたところでございます。県の教育委員会から少人数指導を組み込んだより積極的な兵庫型教科担任制のシステムが提示され、本市では、平成 22年、提示されたその年から市内全小学校で、その趣旨を十分理解した上で導入し、実施しているところでございます。

 その実施状況を 2つの学校を例にとって説明申し上げます。まず 1つは、単学級の中番小学校でございます。 5年生 1学級、 6年 1学級でございまして、その 5年生の担任が Aという先生、そして 6年生の担任が Bという先生とご理解いただいたらいいと思いますけれども、国語は 5年、 6年とも A、つまり 5年生の担任が持ち、そして算数は 6年生の Bという先生が 5年、 6年の算数を見る。そして、理科と算数につきましては、加配教員をここへ配置いたしまして、その学級担任と一緒に少人数授業を実施しております。算数につきましても、同じようにその加配教員と Bという先生が一緒に少人数教育を実施しています。このように中番小学校の 5・ 6年生は 5教科で専科となっているところでございます。

 続きまして、今度は小野小学校 5年生、 3学級クラスについて申し上げますます、 5年生 1組に Aという先生、 2組は B、 3組は Cという先生でございまして、 1組の A先生は 5年生の 3学級とも国語を持つ、そして 2組の B先生は 3学級とも社会と同時に図工の教科を持つ、そして 3組の C先生は算数を 3クラスとも持つ、こういうことでございます。そして、算数、理科につきましては、加配教員をそこへ投入いたしまして少人数授業をやっていくと、こういうことでございまして、小野小学校では 7教科が専科になっております。ただ、この場合、加配の教員が小野小学校の場合、常勤 1人と 15時間 30分の非常勤になっておりますので、算数につきましては週に 1回だけ、 1時間だけの少人数教育、つまり習熟度別に子供たちを分けて教える形をとっているところでございます。

 こうした取り組みについての評価でございますけれども、昨年度の学校評価によりますと、兵庫型教科担任制については、児童、保護者、教員ともに約 9割が肯定的な評価をしていることがわかっております。

 まず、児童の評価でございますけれども、少人数教育、そして教科担任制について、「詳しく教えてもらえるのでとてもわかりやすい」という評価でございます。また、教科担任制については、「多くの先生とかかわりが持てて話ができるのでいい」、あるいは少人数については、「手を挙げるとすぐに当ててもらえて、学習に参加しているという実感がわく」といった感想が聞かれまして、兵庫型の教科担任制により学習意欲が向上したり理解が深まって、それなりの効果がうかがえるところでございます。アンケート結果によりますと、そこに示してありますように、「とてもよい」と「よい」を合わせまして 91%の児童が肯定的な評価をしております。

 次に保護者の評価でございますけれども、少人数学習について、「丁寧にわかりやすく教えてもらえるのでうれしい」という意見、あるいは教科担任制については、教科担任制に慣れるので中学校へ行っても困らないだろう」、あるいは「何人もの先生に見てもらえるので安心である」といった感想が聞かれまして、小中の円滑な接続への期待や複数の教員が指導に当たる兵庫型教科担任制への期待などが感じられます。アンケート結果では 88%の保護者が肯定的な評価をしております。

 一方また教員でございますけれども、教員は、この兵庫型教科担任制につきまして、「自分の得意な教科で教えられるので不安なく指導に当たることができる」、「他のクラスの様子がわかり、学級経営のヒントが学べる」などよい刺激となっています、また、理科の担当ですけれども、「理科は複数で指導を行うので、実験をする際に安全面への配慮がしやすい」といった意見がございました。また、個に応じた支援でございますけれども、少人数教育をやっております算数、理科などにつきましては、「少人数で実施するので一人一人に目が行き届くといった感想が聞かれまして、兵庫型教科担任制の効果を実感している様子がうかがえます。アンケート結果を見ますと、 90%の教員が肯定的な評価をしております。

 先ほど 16年度から本市で担任の授業交換による教科担任制を実施していると言っておりましたけれども、これを導入した頃、教員は非常に戸惑い、反対の意見がございましたけれども、 5年も 6年もたちますとこのような評価となって返ってきているのがわかります。

 続いて、少人数で行っている算数、理科の変化でございますけれども、まず 1つは、算数におきましては、「一定の基礎学力を身につけた生徒が中学校へ来るようになったので、数学の指導が非常にしやすくなった」と、中学教員からの意見がございます。また、「理科の実験・観察などの充実などにより理科に関する興味関心が高まっているのが実感できる」というのが担当している教員の意見でございます。また、同じ校区の小中の教員が共同で教科等の研究を行うことができる、つまり、その教科の担当者と共同で研究をすることができ、小中の連続的な学びが展開されるようになった等の成果が上げられておるわけでございます。アンケート結果では、 93%の保護者からこういった質問に対して肯定的な評価を得ているところでございます。

 最後に、兵庫型教科担任制の課題といたしましては、文系教員の多い小学校におきまして理科の教科専門性の高い教員を確保することが一番に大事でありますし、また、そういう理科についての研修をさらに強化していくということが重要であると思っております。

 また、一つは、今までは小学校は一律で授業をやっていたわけでございますけれども、高学年の指導に適した教員と低中学年の指導に適した教員とのこの 2つに分けて、その配置を考慮に入れた人事異動を今後は行うことが必要になってきたなと感じております。

 さらに、これは言っていいのかどうかよくわからないところでございますけれども、この兵庫型教科担任制をやっておりますと、小学校の高学年、 5・ 6年生におきましては、先ほど言いましたように、小学校の先生は、一般的に教えられるのだけれども、広く浅いという傾向があります。ですから、中学校の教員が小学校へ行って教えることができれば、これは小学校 5・ 6年生に対してより専門的な教育ができるのではないかと考えます。しかしながら、今の制度では、中学校の免許だけ持って小学校へ行くことはできるけれども、そこでは担任を持つことができません。ですから、今後の一つの課題として、一つの要望というのか希望でございますけれども、中学免許だけでも小学校 5・ 6年、高学年においては担任を持つことができるような制度ができればさらに立派な小学校教育が実現できるのではないかと、実感しているところでございます。

 以上、兵庫型教科担任制についてるる申し上げましたけれども、今後もこの制度にのっとりまして県教育委員会と一緒に頑張っていきたいと思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。ありがとうございます。

【木村主査】  それでは、衣笠校長、よろしくお願いします。

【衣笠氏】  失礼いたします。高砂市立荒井小学校の校長の衣笠です。よろしくお願いいたします。

 まず、荒井小学校の沿革についてご説明いたします。高砂市は兵庫県の南部の播磨平野の中央部に位置しております。神戸市から約 35キロ西にありまして、お隣の姫路市はお城で有名な白鷺城のある市でございます。人口は約 9万 4,000人の町でして、小学校が 10校、中学校が 6校ございます。「高砂や、この浦舟に帆をあげて」という謡曲の高砂で知られていまして、白砂青松の風光明媚な泊として栄えてきました。その後、海岸が埋め立てられまして多くの企業が誘致され、播磨臨海工業地帯の中核として発展してきております。私の今勤務しております荒井小学校区だけを見ても、三菱重工さん、神戸製鋼さん、キッコーマンさん、サントリーさん等の工場が並びまして、海岸線を走っております私鉄の山陽電鉄という線があるのですが、その線は、通勤のサラリーマンのお客さんのために朝夕は特急が停車するようなところでございます。

 荒井小学校は明治 20年に民家を借用して尋常小学校として設立した大変歴史のある学校でして、現在は児童数が 848名、 27クラスの規模でございます。保護者の多くは会社勤めのサラリーマンが多くて、核家族が中心です。教育熱心で、学校に対しては協力的だと言えると思います。

 荒井小学校の本年度の状況ですが、 1年生が 145人で 5クラス、 2年生は 140人で 4クラス、 3年生 122人で 4クラス、 4年生 143人で 4クラスという状況です。ちなみに 5年生は 160人 4クラス、 6年生 130人で 4クラスです。

 先ほど県の教育委員会のほうからも説明がありましたように、 4年生までは 35人学級編制が可能なシステムになっておりますけれども、 4年生、見ていただいたらわかるように、学級規模 35.8人ですから、 35人学級該当なのですが、本校の場合は 4年生は少人数授業を行っております。そして、本来は効果的に少人数学習を実施し、確かな学力の定着、個性の伸長を図っていくところなのですが、学校規模の関係で、現在算数科の同室複数指導、いわゆるTTと言われる授業を中心に行っております。

  35学級編制が可能であるにもかかわらず少人数の授業を選択した理由の一つといいますか、このことが大きな理由なのですが、教室不足ということでございます。次の施設の状況のところを見ていただきましたら、荒井小学校の現在の校舎は平成 10年 9月に完成をいたしました。 3階建ての立派な建物で、まだ高砂市の財政がある程度余裕のある時期に建てたものでして、 4階部分に当たりますところには時計台がありまして、それが遠くからでも見えます。保護者の中には、この校舎にみせられて校区に自宅を建てたという方も何人かおられます。

 その校舎の教室が、クラスの数の増ということでやむなく年々普通学級に転用されております。状況を見ますと、平成 17年までは現校舎の教室を目的どおり活用しておりました。ただ、 17年から 18年になりますと特に児童数が増加をしまして、クラス数が 2つ増えております。そのときに、児童会室、子供たちが会議を行う部屋なんですけれども、それから多目的室、いろいろな学習の形態によって自由に学習ができる、じゅうたんを敷いたようなフロア、この 2つの教室を通常の教室に転用しております。それから、その次の年、 18年から 19年になるときにも 718名、 23クラス、このときも 2つクラスが増えまして、第 2理科室、理科室は 2つございましたが、その 1つを通常の教室に転用、それから、ワークスペースといいまして子供たちが作業学習をするスペースがあったのですが、そこも通常の教室に転用しております。次の平成 20年になるときも 803名ということで 1クラス増えました。そのときにも、視聴覚室という通常の教室よりも 1.5倍ほど広い教室で、テレビが 2台ほどありまして、クーラーのきく部屋なのですが、そこを通常の教室に転用しております。それから、その次に 21年、このときにも児童数若干増えておりますが、クラス数は変わっておりませんのでそのまま、そして、 22年になりましたときに児童数も増えまして、クラスが 1つ増えました。絵画室という教室を通常の教室に転用しております。かなり広い部屋ですので、真ん中にロッカーを置いたりして仕切りをつけ、使用しております。現在、 23年度は、教室は増えておりませんのでそのままの活用で行っておりますが、 1年生が 2名、 5年生が 3名増加した場合は新たに 2つの教室が必要になるという状況でありましたけれども、増えずに 22年同様 27クラスということでございます。

 教室不足につきましては、高砂市は、児童数が当然減少する傾向があると判断しておりましたので、予想以上に校区に転入者が来るということは考えていなかったように聞いております。実際平成 16年までは児童数は減少しております。最近の 4年から 5年間に、宅地開発等がありまして、校区への転入者が増えてきたということです。

 それからもう一つ、平成 16年から開始されました兵庫県の 35人学級編制というのは市のほうとしましても予想していなかったということで、子供たちの数が増える以上にクラス数がどんどんと増えていったということで教室不足という結果になってしまっております。

 このような状況ですけれども、現 4年生も単に算数の同室複数指導を行うのではなくて、 143人で 40人編制ですと 35.7名、 35人編制ですと 28.6名ということで、先ほど大学の先生が分析されておられたように、単純には考えられないかもわかりませんが、当然 35人学級編制ですときめ細かな指導が可能になるというふうに、教師の実感といいますか、主観でしか話しできませんが、そういうふうなことは言えると思います。ただ、複数指導のよさもあるのではないかということで考えてみますと、 3点ほど考えられます。

  1つ目が、一斉指導の授業での個別指導が可能になるということです。特に児童の実生活では出会わないような問題であるとか抽象的な問題、特に低学年そういった課題が苦手ですので、前で説明をしている先生がおられて、ちょっと首をかしげている子供のところに駆けつけて指導をするという場合は効果が出ております。

  2つ目は、補充授業がやりやすいことです。新学習システムの担当教員、先ほど県のほうからの説明がありましたそういうフリーの先生ですが、その担当の先生はクラスを持っておりませんので、昼休みに、「算数教室」を開いて、子供たちがわからないところを聞きに行ったりするようなこともできております。クラスを持っておりますと清掃指導であるとか給食指導等に追われますけれども、その先生はクラスを持っておりませんので、算数教室を開くことも可能になっております。

  3つ目は、保護者との連携をより充実することができるという点です。保護者との個別懇談会を開催しておりますときに、担任との面談の後に、学習面に焦点を当てた内容の相談を、別室で希望する保護者に対しての懇談を新学習システム教員がしております。これも好評でして、担任 1人でしたらこの個別懇談の席にいなければならないのですが、フリーの立場の教師がそういった学習面の懇談をするということで、そういうことが可能になっております。

 もう一つ、県のお話にもありましたけれども、特別な支援を要する児童の実態によりましては、特に低学年は複数担任制の選択があってもよいのかなというようなことを感じているところです。

 このように、学校施設の状況、また児童の実態を考慮しつつ、子供たちがよりよい状況で学習できるように努めているところですが、 35人学級編制を一律に実施するのではなくて、兵庫県では選んでもいいですよというスタンスで支援をしていただいていますので、私どものような学校現場の場合は、県から支援をしていただくシステム、ありがたいなと感じているところです。あと教師の声であるとか児童の声につきましては、もし時間がありましたら後でご紹介いたします。

 以上です。

【木村主査】  ありがとうございました。

 それでは、いかがでございましょうか、ただいまのプレゼンテーションに対してご質問等がございましたらお願いいたします。どうぞ、では小澤委員から。

【小澤委員】  では、すみません、質問させていただきます。まず、教室の不足なんですけれども、平成 24年度に、例えば、来年度、 2年生に対して 35人以下学級を実施した場合、兵庫県全体でどのくらいの教室の不足が生じるんですか。それがわからなかったら、現状で教室の不足、ほかの教室を転用してというお話がありましたけれども、どのくらいの規模でそういう状態が生じているのか聞かせていただければと思います。

 それから 2点目ですけれども、平成 23年度、今年度でしたら、 2年生から 4年生まで県単で職員の加配しているわけですよね。基礎定数が 1年だけですものね。

 県単独で任用していると思うんですけれども、全体でどのくらいの任用規模になっているのか、ちょっと聞かせていただければ大変ありがたいなと思います。

 それから、校長の意向によって、あるいは市区町村の意向によってそういう弾力的対応をしていると思うんですけれども、校長からどういう申請、例えば自分の学校が 35人学級選択するのか少人数選択するのか、その場合のどういう申し出を聞いているのか。つまり、現実的にこういう課題でこういう成果が期待できるので、そういう文書等を求めていると思うんです。そういう内容項目についてお伺いさせていただければと思います。

 もう一点なんですが、特別な配慮を要する児童、少人数指導というか、学級規模を縮小することによって特別な配慮を要する児童に対する指導の厚さというのが増えると思うんです。その辺のことでちょっとお聞きしたいんですけれども、特別な配慮を要する児童、全国調査では 6から 7%というデータがありますけれども、現実的に、私の地区の学校等を見てももっと状況としてはあるんじゃないかと思うんです。その辺のことを含めて、実際に兵庫県で特別な配慮を要する児童に対してどういう支援の手当てを講じていらっしゃるのかお伺いしたいんですが。すみません。

【小川氏】  よろしいですか。

【木村主査】  どうぞ。

【小川氏】  非常にお答えしづらいご質問なんですけれども、それでは順次。

 まず、教室不足でございますけれども、実は昨年度、先ほどの発表がありましたけれども、 1年生で大体 9割ぐらいの導入率だったわけです。したがいまして、十数校が 35人学級とらずに複数担任を導入しておりました。それが今回 1校になったということでございます。理由としましては、正直私ども聞いておるのは複合的な理由となっております。教室不足もございますけれども、先ほどの指導上の問題であるとか、あるいはクラスの割り方によって先ほどの 143人のような場合のケースもありますので、おそらくそのうち数%は教室転用をしているのではないかと想定します。しかしながら、それが何校かというのは、今把握しておらないところです。

  2点目は、県単の配置でございますけれども、先ほども申しましたけれども、基本的には指導方法の工夫改善の加配を使ってこの新学習システムを導入しています。ただ、それでは足りない部分について県単措置をしておりますけれども、この部分に何人というのは申し上げにくいところです。

 また、理由項目ですが、特別に学校のほうから要望があるときにどんなことがありますかということにつきましては、一つは先ほど言いました学校の状況、このような生徒がおりますから特別にこういった学級編制をしたいという授業上の面が一つと、やっぱり教育方針としましてここは複数担任でやりたいということが多い。表に上がってくるケースとしては、なかなか教室不足というのは全面には出てこずに、そういった教育上の複合的な面から出てくることが多いような状況でございます。

 あと特別配慮の 6%、 7%の話がありましたけれども、これにつきましても、これはどこまでどうかというのは学校現場によってそれぞれ違うと思いますので、統計的には今申し上げにくいことだと考えております。以上です。

【木村主査】  ありがとうございました。それでは長南委員。

【長南委員】  それでは 2つお願いいたします。

  1つは、兵庫県の教育委員会の資料の 2ページ目のところに、平成 13年度より児童生徒の発達段階や教科の特性等に応じてより柔軟に多面的できめ細かな指導を推進するという、このきめ細かな指導というのは、例えば具体的にどういった指導方法とか指導形態とか何かあるのではないかと思います。そのことをまず 1つ。

  2つ目は、 4枚目の資料の弾力的な学級編制の中の特別な配慮を要する児童が多数在籍するために複数担任制を選択する場合、この複数担任制というのは、まず何名の担任なのか。例えば 2名とか 3名いる場合には、その指導的な位置、または役割分担みたいな、そういったもの、何か決まりがあるのかどうか。それから、教科担任制とはこれは違うものですよね。 2つお願いいたします。

【木村主査】  では、お願いします。

【小川氏】  お答えいたします。

  1つ目のきめ細やかな中身でございますけれども、具体にイメージしておりますのは少人数教育をイメージしておりまして、それはどのような形で実施されるかということについては、学校現場においてそれぞれのケースがあろうかと考えております。

  2番目の複数担任制の教員の数でございますが、これは基本的に 2名でございます。役割分担、位置づけにつきましても、ここは、例えば成績評価とかその辺のことをおっしゃっているかと思うんですけれども、聞いておりますのは、一般的には主担任が複数担任、T 1、T 2があると思いますけれども、T 2から情報を得てT 1の方がつけるのが一般的ではないのかなと考えておりますが、その辺も学校のほうに結果的には運営上は任せておるというような状況になっております。以上です。

【木村主査】  ありがとうございました。ほかにございませんか。どうぞ、兵馬さん。

【兵馬委員】   2学級のお互いその授業を持ち合うわけですけれども、小学校の例で結構ですけれども、持ち時数は減少されているんですか。もっと違う言い方では、空き時間があるのかどうかお聞きしたいんですが。

【陰山氏】  先ほど出した中番小学校などの例でございますけれども、まず、持ち時間数の減少というのは、加配がありましても、それは減少することはありません。例えば先ほどのでいいますと、音楽、家庭が専科が入っていますので、その時間は時間があきますけれども、それ以外はあかないというのが現実の問題です。

【木村主査】  ありがとうございました。ほかに。

【宮﨑委員】  いいですか。

【木村主査】  どうぞ、宮﨑委員。

【宮﨑委員】   2点お願いします。 1点目は、兵庫の新学習システムということで 35人学級の導入が、 4年生までという考え方で 35人学級か複数担任制のどちらかをとっていらっしゃる、こういう理解をしたんですけれども、 5年、 6年は少人数学級集団で教科担任制で対応していると。考え方としては、どちらかというと学級編制というよりは学習内容を充実させるという考え方なんだろうと思うんですが、有意に 4年生までと 5・ 6年生で集団のクラスサイズというのが違っているかどうか。そのあたりがわかればお教えいただければと思います。 1点はまずそれです。

  2点目は、この小野市の教育委員会の中身、大変興味を持って見せていただいたんですが、教科担任制をとっている中で、中高の連続的な学びの展開をしていくんだというお話だったんですが、この中で 5ページ目の中に、高学年に適した教員と低学年、中学年の指導に適した教員というのがどうもあるようだと。これは実は世界的にそうなんです。教員の養成もそういう形を今とりつつあるということがヨーロッパなどは出ているんですが、このあたりで具体的に人事異動で考えるのか、教員養成としてやっぱり考えていかなければいけないことがあるのか、ここで見えてきた、雑駁な質問で恐縮なんですが、資質の中で、これは低学年に向いているんだというようなことが、こうした教員であったほうがいいというようなことがもしあったらお教えいただくとありがたいと思うんです。

 そしてもう一つは、前回に三鷹市の教育委員会から提言があったんですが、小中一貫校で、小中を併任発令をしているということでしたが、中学校の先生が教える場合に、小中との研修のあり方とか、そういうあたりで何か研究的なことをなさっているかどうかもあわせてお教えしていただければと思います。以上です。

【木村主査】  お願いいたします。

【大久保氏】  まず、 5年生、 6年制のクラスのサイズでございますけれども、これは 40人学級ということで、あとは教科担任を入れておると。

【宮﨑委員】  平均はどのくらいになっていますか。

【小川氏】  平均、クラスは今手元に持っていませんが、資料の 7枚目、 4ページ、平成 23年度の実施状況があります。この、 4年生が今 33校あります。

【宮﨑委員】  ありますね

【小川氏】  これが 5年生になりますと来年は 40人学級になりますので、ここは変わります。クラスが幾つあるかは今手元にございません。

【宮﨑委員】  はい、わかりました。

【陰山氏】   2つ目の小学校の高学年向きの教員と、それから小学校 1年生から 4年生の低中の教員ですけれども、これは、特に問題になっておりますのは、 40歳以上の教員に明らかに 2つに分かれる現実があると私は思っております。今やっておりまして、自分で切実に感じているのがその辺であります。だから、若い世代、 20代あるいは 35歳ぐらいまでのところは今からどちらでも研修によって養成することはできますけれども、もうでき上がってしまっている 30代後半から 40代以上の教員につきましては、明らかに低学年向き、この人は小学校 1年生、 2年生を持たせたらすばらしい学級経営をやるけれども、高学年になるとこれはもう一転だめだというのと、逆に 5・ 6年生向きの理科が得意だとか、あるいは社会が得意だとかそういうふうな人、そういうことで分かれてきます。ですから、先ほども申し上げましたように、できたら高学年については中学校の教員をというのはそういうところでございます。

 もう一つは、小中の連携でございましたけれども、これは先ほど、三鷹市ですか、ありましたように、我が市においてもいわゆる兼務発令を行いまして、中学校から小学校へ、特に理科あるいは数学、算数、その教科につきまして中学校から小学校へ行き、あるいは小学校で中学校の免許を持つ、そのかわり、小学校で中学校の免許を持っている家庭科の先生あるいは音楽の先生がその応援してもらった分だけ中学校へ行って教えると、そういう形態をとっております。

 これは実は新しいといいますか、教育効果というのは非常に高いものがありまして、中学校の先生が小学校で教えてくれています、今度その小学校の生徒が中学校へ行ったときに知った先生があると。あるいは教えてもらった先生があるということで、いわゆる中学拒否といいますか、そういったものがなくなってくるという効果も出ております。この程度でよろしいでしょうか。

【宮﨑委員】  ありがとうございました。

【木村主査】  ほかにございませんか。どうぞ、中川さん。

【中川委員】  先ほどのクラスサイズの件ですけれども、もう少しお聞かせください。 4年生までは 35人以下学級でいくと。 5年、 6年で 40人学級に変えると。ここのギャップが大きい場合、例えば 4年になって 40人近い学級になったというような、児童数が。その場合に何か問題点がないか。学校現場の先生方からは、やはり 35人学級がいいよねとか、あるいは、急にクラスサイズが大きくなってこんな問題点が出たんだよというようなことがあればぜひ教えてください。

【木村主査】  いかがでしょうか。

【陰山氏】  先ほど言われました、確かに 4年生ぐらいまで、あるいは 3年生、 1クラス 35人あるいは 30人クラスが次の年になりますと 40人学級になってしまうと、こういうことは現実によくありますけれども、確かに対応は難しいところもあります、教員のほうから考えますと。人数が増えますので。しかしながら、実際に教育効果がどうかというと、それほど大差はないと考えております。現実にそれはありません。それによって、ここが大変だから何とかしてくれというような要望は今まで聞いたことはございません。

【木村主査】  ほかに。どうぞ。

【小澤委員】  すみません、先ほど質問させていただいたご回答の 1項目なんですけれども、いわゆる加配定数を回しているというお話がありましたよね。全国の都道府県並べてみると本当に多種多様な人的配置しているんです。例えばある県、都道府県は、学級サイズは今の標準法の枠内でやると。しかしながら、加配定数を、例えば算数の少人数集団つくるとか国語の少人数集団つくるとか、そういう形でやっているんです。兵庫県の場合は、学級編制、これに回しているので、逆に言うとそういう部分の少人数指導とか、教科の少人数指導とか実施していらっしゃるんですか、小学校で。

【小川氏】  それはできていると考えています。 35人学級は、 1・ 2年生中心、 3年、 4年までいっていますけれども、それ以外でも加配メニュー、加配の定数はございますので、それで少人数学習集団は編成しておりますし、先ほど言いました 5年生、 6年生は 35人学級ではなくて少人数指導を行っておりますので、パーセント的にはそれほど問題があるということはないと考えております。

【木村主査】  ありがとうございました。ほかに。よろしゅうございますか。

 私も 1つ質問があるのですが、小野市の 3ページ目の上のスライドにありますように、理科は全授業について少人数授業をおやりになっているということですね。算数は週 1時間だけということなんですが、もっと算数も理科と同じようにしたほうがいいというふうな、そういうことはないんですか。

【陰山氏】  おっしゃるとおり、もっと加配が人数がありましたら、もちろん習熟度別にしましてさらに濃密な算数授業ができるのが今もちろん望ましいわけでありまして。

【木村主査】  望ましいんだけれども、そこまでは手が回らないということですね。

【陰山氏】  はい。今は与えられた分でやっておると。

【木村主査】  これは、理科については全授業少人数授業をやっておられるんですけれども、これは習熟度別ではないんですか。

【陰山氏】  それは、ありません。

【木村主査】  ただ分けただけだということですね。

【陰山氏】  はい。

【木村主査】  算数は習熟度別とおっしゃいましたが、そうですか。

【陰山氏】  はい、そうです。

【木村主査】  もし十分な人数があれば習熟度別で理科もおやりたいということですね。

【陰山氏】  少人数でやっていきたいと思っております。

【木村主査】  よろしゅうございますか。では、どうもありがとうございました。それでは、本日は長時間になっておりますので、ここで 10分ほどの休憩をしたいと存じます。今 12分ぐらいですから、 22、 23分ぐらいから始めたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

( 休憩 )

【木村主査】  それでは、お約束の時間が参りましたので、次に移りたいと思います。次は秋田県教育委員会と大阪府の教育委員会からのプレゼンテーションを続けてお願いをしたいと思います。

 秋田県は、秋田県教育委員会の白山次長、それから同じく義務教育課長の橋田様、それから同じく義務教育課の管理主事の和田様がお見えいただいております。

 それから大阪府は、大阪府教育委員会の小中学校の箸尾谷課長、同じく教職員人事課長の中野様、同じく教職員人事課総活主査の小澤様がお見えいただいております。

 秋田県は白山さんが全部おやりになるのですか。それか 3人でおやりになるのですか。

【橋田氏】   3人でやります。

【木村主査】  わかりました。それでは白山さんのほうから、よろしくお願いいたします。時間は 20分ぐらいで、ひとつよろしく。

【白山氏】  承知しました。秋田県教育次長、白山でございます。本検討会議のメンバーであります本県の米田教育長でございますが、教育長が欠けることができない県議会の日程の関係上、かわって私がご説明申し上げます。どうかよろしくお願いします。

 豊かな人間性をはぐくむ学校教育を推進している秋田県でありますが、その中核をなすポイントを、心身を鍛えること、基礎学力の向上を図ることとして掲げております。

 まず初めに、小・中学校におきまして、児童・生徒一人一人に対してきめ細かに指導するために行われている少人数学習推進授業の概要についてご説明いたします。まず本県の少人数学習推進事業の内容といたしましては、画面にもございますが、マル1小学校 1年生から 3年生と中学校 1年生を対象に 30人程度の学級編制により、生活集団・学習集団の少人数化を図り、基本的な生活習慣・学習習慣を身につけさせ、安定した学校生活を確保しております。

 マル2小学校 4年生から 6年生は、国語、算数、理科で、中学校二、三年生は、数学、理科、英語で 20人程度の少人数指導を展開し、基礎学力の定着・向上を図るものであります。

 本県の少人数学習推進事業のうち、県費による 30人程度学級は、小学一、二年生は平成 13年度から、中学 1年は平成 14年度から取り組んできており、今年度から小学 3年に拡充したところであります。その他の学年につきましては、国の指導方法工夫改善の定数を活用して、TTや習熟度別等の少人数指導ができるよう人員配置しております。

 次に、本県の 30人程度学級についてご説明いたします。一般に言われている 30人学級と本県の 30人程度学級とは違いがあります。 30人学級とは、 1学級当たりの人数の上限を 30人にするということです。つまり 31人になりますと、 16人と 15人の 2学級にしなければならず、学級としては小さ過ぎる状態になります。例えば、運動会あるいは合唱コンクール等の学校行事のほか、学級内の切磋琢磨や力強い学級集団づくりという点からも、これではあまりにも人数が少な過ぎます。 30人程度が適正であると考えます。本県が推進してきております 30人程度学級の理由はここにございます。

 続きまして、本県の少人数学級の配置基準についてご説明いたします。国の 40人の標準学級ベースから 1学級増とした場合、 25人以上の学級を含む学年は、実際に 1学級増することにしています。例えば、画面にありますが 73人の学年の場合は、 37人と 36人の学級となりますが、これに 1学級増やしますと 25人と 24人、 24人の学級編制となり、子供たちの少人数化を図ることができます。

 次いで、同じように国の標準から 1学級増とした場合、すべての学級が 24人以下となり、もとの学級に 1つでも 33人以上、中学校の場合は 34人以上ですが、この学級を含む場合には、学級増のかわりに非常勤講師 1名を配置しております。ただし、この基準は小学 3年生を除いております。

 人的配置について申し上げます。 30人程度学級編制において、学級増に対して加配しておりますが、学級増の学級担任には、原則として正規教員を配置するようにしております。また、事業の予算規模として、平成 13年度からの 11年間で 68億円余りもの県費を投入してきております。平成 23年度は小学 3年生への 30人程度学級拡充を含む全体の経費として 3億 8,930万円を計上しております。県の財政状況が大変厳しく、政策経費 20%削減の指示の中にあって、何とか前年度と同程度の額を確保することができました。

 さて、小学校の新学習指導要領が全面実施となる今年度、 30人程度学級を新たに小学校 3年生に拡充をしました。国の小学 1年の 35人以下学級実現に伴い、県費の少人数学級について、単に国費につけかえるのではなく、次の一手として教育条件の改善につなげることが大きなねらいであります。小学校 3年は高学年への基礎づくりが最も必要な学年であり、いわゆるギャングエイジへの対応として集団規律や規範意識の醸成に配慮が必要な学年であります。今後は教育条件の維持・向上のため、中学二、三年生への拡充など、さらなる改善を検討してまいりたいと考えております。

 少人数学習推進授業の展開に当たっては、それがより有効に機能するよう、指導方法の工夫改善が求められてまいりました。また、新学習指導要領が求める思考力・判断力・表現力等の育成にとっても重要な要素となってきております。これらの点につきまして、秋田県のこれまでの取り組みや現状についてご説明いたします。

 少人数学習推進事業を展開するに当たっては、その成果や課題を把握し、各学校における指導の改善・充実につなげていく必要があります。このため、本県では平成 14年から毎年、県単独の学習状況調査を悉皆で実施しております。県全体の児童・生徒の学力や学習意欲を調査し、県全体の義務教育の質の保障のための客観的なデータを確保しようとしております。

 また、平成 16年には、県の総合教育センターが少人数指導について研究をまとめております。当時、効果的な学習集団の編成や指導者間の連携や校内体制の確立など、 7つの課題を取り上げ、それらの課題を克服するための方策を提示したり、その後、研修事業にも取り組んできているところであります。

 さらに、県といたしまして、少人数指導を充実させるための取り組みとして、加配校から計画書と報告書を提出させ、成果と課題を明確にするようにしております。少人数学習推進のためのチェックポイントや実践事例集では、加配校からの報告書や指導主事等の訪問による検証によって作成したもので、本県のティーム・ティーチングを含む少人数指導に定評があるのは、こうした地道な取り組みがあるからこそと思っております。

 そして全国学力調査の結果では、組織として最も大切な学校目標の共有をはじめ、指導計画の作成、家庭学習の与え方などについて学校全体で取り組んでおります。教員集団の共同的な研究体制、まさにチームで仕事をするという文化が学校の中に育っており、少人数学級や少人数指導の取り組みにも重要なかかわりとなっているところであります。

 また、平成 22年度の全国調査から、授業において自分の考えを発表する機会が多い、学級の友達との間で話し合う活動をよく行っていると答えている児童・生徒は、全国に比べて多くなっております。本県では、子供たちがみずから考えることを大切にする授業が多く行われています。また、グループで話し合ったり、学級全体で意見を交換させたりする授業も盛んに行われています。子供の思考を促し、相互に深めさせていく授業は、教師の高い指導力が求められます。それゆえ、教師相互の質の高い共同研究が大切になってまいります。

 また、全国学力・学習状況調査の結果を学校全体で活用したり、授業の中で調査問題を活用している割合も高くなっております。本県が新学習指導要領の趣旨を踏まえ、全国や県の調査の結果を徹底して分析し、すべての教員が成果と課題を共有し、授業改善に日々努めているところであります。

 本県の特色ある取り組みの 1つに、PDCAサイクルの確立があります。中学校では全国調査と県学習状況調査をリンクさせて検証改善システムを構築したり、小学校では 1単元における指導改善PDCAに取り組んだりするなど、学校の実情に応じて工夫して取り組んでおります。

 平成 19年度からの 3年間の全国調査のデータをもとに、県の検証改善委員会が学力を支える関連因子を幾つか見つけ、平成 22年 3月に、「一人一人の学力を伸ばすあきたの学校~ 5つのエッセンス~」として発表しました。詳細につきましては、お手元の黄色い冊子ですが、平成 22年度学校改善支援プランの裏側をごらんください。画面にもございますが、これら 5つのエッセンスは新学習指導要領の求める思考力・判断力・表現力の育成等にも対応するものであり、特に教職員による共同研究を重視しているところであります。

 あわせて、授業改善については、お手元の「あきたのそこぢから」を作成しております。発問、板書、ノート指導等、教師が授業の基礎・基本に立ち戻るための参考にしたり、提案授業を考える際に職員室で話題にするなど、日常の場で活用されております。

 さらに、お手元の平成 23年度「学校教育の指針」では、新たに『「問い」を発する子ども』をキャッチフレーズにしております。これは公の場で自分の考えを積極的に発信できる子供の育成を目指すものであり、言語活動の充実を図り、思考力・判断力・表現力等の育成に取り組んでいきたいと考えております。

 それでは、少人数学習の効果について述べさせていただきます。全国学力・学習状況調査の本県の結果は、 4年連続全国トップクラスにあり、全国の平均正答率を小学校では各教科で 5ポイント以上上回っており、おおむね良好な状況にあります。課題として取り組んでまいりましたB問題につきましても、全国の状況を上回る傾向にあります。授業の理解についても、平成 22年度の全国調査によれば、授業がよくわかるという児童・生徒の割合が全国に比べて高いことがわかります。

 個別の問題の正答率を取り上げますと、画面にございますけれども、小学校 4年生の県学習状況調査の問題では、少人数学習推進事業の実施以降、加法と乗法の混合した計算の正答率が徐々に高まり、平成 22年度の全国調査では 9割を超える児童ができるようになっております。同様に、中学 1年生の理科におきましても、少人数学習推進事業の実施以降、音の大小高低と波形の問題の通過率が年々高くなってきております。

 また、小・中学校の児童・生徒 1,000人当たりの不登校数は、全国で一番少ない状況であります。また、暴力行為の発生件数も少ない状況にあります。

 これまで本県の少人数学習指導に関する取り組みや効果について、簡単に説明してまいりました。本県の場合、少人数学級、少人数指導と指導方法の工夫改善とが相まって、児童・生徒一人一人を大切にした指導と、基礎・基本の定着について教育効果を高めてきております。少人数学級は、児童・生徒が全体的に落ち着ける環境を保障したり、発言の機会や自己表現の場を保障する点で有効であるととらえております。他方、TT等の少人数指導は、生徒が個性を発揮して学べたり、理解の状況で進度や難度を変化させたりするなど、多様で柔軟な指導ができるという点で有効であります。

 教員にとりましては、授業そのものが他の教員との共同研修の場にもなっております。したがって思考力・判断力・表現力を重視する新しい学習指導要領等に対応して、まずは少人数学級の取り組みを拡充させるとともに、TTの少人数指導に係る人員も確実に措置することが重要と考えております。あわせて、それらが効果的なものとなるよう、教職員の共同研究体制、いわばチームによる授業改善に、これからも不断に取り組んでいく必要があると考えております。

 最後にその他の取り組みといたしまして、何点かご説明したいと思います。まず初めに教育専門監という制度が本県にございます。本県では、教科指導に卓越した力を有する教諭の資質能力を複数の学校に活用し、学校の教育力を高めるための教育専門監制度というものがあります。本務校及び兼任校でのティーム・ティーチングによる授業実践や教育実践の公開、市長村各種研修会等の講師などを行っています。県学習状況調査の結果では、 1年間の実践によって飛躍的に学力が伸びた学校もありました。なお、教育専門監の定数は指導方法工夫改善定数を活用しており、今年度は小中学に 25名の教育専門監を配置しております。

  2つ目でありますが、「小学校まなび・ふれあい充実事業」であります。これは小規模小学校における一部教科担任制の取り組みであり、現在、県独自予算で 11校に臨時講師を配置しています。具体的には普通学級を 6~ 7学級有し、学級担任以外の教諭が配置されていない学校に臨時講師 1名を加配し、専科指導を積極的に取り入れ、学習指導、生活指導、生徒指導、学校経営に関する改善を図ることをねらいとしております。その成果として、継続校の中には、飛躍的に学力が伸び、生徒に落ちつきが出たという学校が出てきております。

  3つ目でありますが、特別支援教育についてであります。本県では小・中学校と特別支援学校との人事交流を平成 14年から行っており、特別支援教育への理解が深まり、有意義な研修交流となっております。また、教育専門監を養護学校へ 4名、高等学校へ 2名配置し、小・中学校の支援にも活用しているところであります。特別支援教育センターとしての学校の機能の充実の観点からは、通級指導教室は県内に 23校、 34教室あります。さらに県内各地に 9名の特別支援教育アドバイザーを配置し、教育相談業務等に当たっております。さらに平成 16年度から幼児児童生徒学校生活サポート事業として支援員を配置しております。現在は市町村による配置となっておりますが、県としては支援員の研修会を実施するなどの支援をしているところであります。

 以上、本県における少人数学習の取り組み及びその効果等についてのご説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【木村主査】  ありがとうございました。ほかの方、よろしいですね。

 それでは、引き続きまして大阪へ参ります。よろしくお願いいたします。

【中野氏】  大阪府教育委員会教職員人事課長の中野と申します。よろしくお願いします。じゃあ座って失礼します。

 私どものほうからは、お手元に配付させていただいております資料に基づきまして、大きく分けまして 3点、ご説明をさせていただきます。 1点は児童生徒支援加配の配分方法なりその配置効果、 2点目は指導方法の工夫改善、加配の、配分配置効果、 3点面が少人数学級編制の効果、この 3点につき、ご説明をさせていただきます。説明のウエートといたしましては、前 2者の 2つの加配の配置効果等につきまして説明のウエートを置いております。今般、 23年当初の予算装置としまして、この非常な財政難の折に、小学校 1年生の少人数学級編制の推進着手をしていただきまして、非常に感謝をいたしております。今後もそちらのほうのご努力にご期待を申し上げておるんですが、それと並行いたしまして、この加配の必要性がなお十分ございますので、そこのところに力点を置いて説明をさせていただきたいと思います。

 それでは資料の 1枚をおめくりいただきまして 1ページ、これの上段をごらん願いたいと存じます。このペーパー、私どもの加配の配分の年度内の手続を示したものでございます。まず 1番目といたしまして、 11月から 12月ごろに、翌年度の加配の配置計画を市町村さんから上げていただきます。私どもの府教委のほうで、担当課によりまして、 2月ごろに市長村のヒアリングを実施いたします。そのヒアリングの結果に基づきまして、 3月ごろに教員加配の配当先を決定し、市長村、学校さんにお知らせをいたします。かつ、 4点目といたしまして、その当該年度の加配の活用におきまして、改善していただきたい点、国からご指導いただいた点なども含めまして、それらの周知を年度初めに行っております。その後、 4月から加配を活用して教育活動に従事していくと。 6点目といたしまして、活用状況の報告を七、八月ごろ、夏場に市長村を通じていただいております。そのご報告も参考にしながら配置校訪問を 11月ごろにかけていたしております。そこら辺で把握ができました改善を要する点、先進的な取り組みとして他の市町村なり他校にもお知らせしたい点を整理して、翌年度の計画づくりに反映をしていくといったサイクルで毎年度、動かしております。

 大きく加配の配置についてはこういった手順で行っておりますが、この後、児童生徒支援加配の配分状況等についてご説明をさせていただきます。

【小澤氏】  失礼いたします。それでは私のほうからは、代表的な加配項目、かつ大阪府といたしまして重要な加配項目と考えております児童生徒支援加配、それから指導方法工夫改善等につきましてご説明させていただきます。

 資料 1ページ目の下段ですけれども、まず児童生徒支援加配ですが、昨年 5月にも文部科学省財務課長様をはじめ、ほか 3名の方に大阪府の学校視察をしていただきまして、その際にご質問いただいた点等も含めましてお話させていただきます。

 まず児童生徒支援加配の配置基準なんですけれども、まず 3点ございまして、 1点目が児童・生徒の生活実態、要保護・準要保護率でありますとか、ひとり親家庭の率でありますとか、そういうところを見ます。 2点目につきましては、学校にあらわれる状況、いじめ、不登校等の件数ですね。それから 3点目は、これら一、二点を含めまして課題解決に向けた学校全体の取り組み状況、これら 3点を総合的に判断いたしまして配置校の決定をいたしております。

  2ページ目の下段をごらんください。大阪の現状という項目ですけれども、大阪府では生活保護受給率、あるいは離婚率などが全国でも非常に高いということからうかがえますように、経済的に不安定な家庭、あるいはひとり親家庭等、非常に厳しい生活実態の中に置かれている子供が多いという現状がございます。これらの生活実態が子供たちの成長に及ぼす影響は非常に大きいと考えております。例えば経済的に不安定なことから、家庭でのしつけや養育が行き届かず、子供に基本的な生活習慣が身につかないというような形があらわれておりまして、そのことが学校での生活指導面での荒れなどの形で学校ではあらわれてきております。特に暴力行為の発生件数につきましては、過去 5年間で公立小学校では 2.6倍、公立中学校では 1.5倍に増加しておりまして過去最高という件数となっております。また、全国学力・学習状況調査の結果につきましても、特に中学校においては依然として厳しい状況が続いております。

 このような厳しい背景を抱える子供たちにとって、家庭支援や環境改善も含めたきめ細かな支援は不可欠でございまして、平成 23年現在、大阪府では小・中学校合わせて約 1,500校あるわけですが、その中でもこのような子供が多数在籍している学校、あるいは特別な指導が必要な学校につきまして、重点的にこの児童生徒支援加配を配置し、有効に活用しているところでございます。

 続きまして資料 3ページの上段をごらんください。この加配を配置した効果の一例としまして、つけさせていただいている資料でございます。こちらは平成 21年度にこの児童生徒支援加配を配置した学校における暴力行為、いじめ、不登校について、前年度よりもこれらの問題事象の件数が減少した学校の割合をグラフ化したものでございます。配置しました小学校のうち、 7から 8割の学校で暴力、いじめ、不登校の件数が減少しております。また、中学校におきましても、 6割強の学校で同様の効果を上げております。配置した学校では、加配教員を課題解決のための中心的役割といたしまして位置づけ、校内の各分掌の有機的なコーディネートにより、校内指導体制を構築するとともに、必要に応じて外部機関、地域、保護者とも連携を図りながら成果を上げてきているところでございます。加配の配置は基本、単年度単位で各配置校の状況も見ながら、より必要な学校に配置変更を行うことも含めまして活用しているところでございます。しかしながら、課題を抱えた子供たちは年々増加しておりまして、恒常的に厳しい状況が続く学校も存在しております。児童生徒支援加配の存在は不可欠なものとなっております。

 続いて 3ページ目の下段をごらんください。こちらは全国的な問題であるとは思いますが、大阪府におきましても 5年前と比較いたしまして、日本語指導が必要な児童・生徒は約 1.6倍、在籍する学校数は約 1.3倍、対応する言語数も 1.7倍の 25言語に増加している状況でございます。大阪府におきましても、帰国・外国人児童生徒に対する支援のニーズは高まる一方でございます。このような中、全く日本語の話せない子供をスムーズに受け入れ、日本語指導はもちろんのこと日本の生活等への適応教育、あるいは保護者、家庭も含めたきめ細かな支援の中心的役割を果たす日本語指導対応の教員の存在はますます重要なものとなっております。

 また資料の中段にございますように、子供が先に日本語になれた中、親のほうが日本語が話せないという状況で家庭内での不和が起きるというふうなポイントを載せておりますが、この件につきましても市町村が独自で中国語などの外国語の話せる講師を配置いたしまして、日本語のみならず母国語の指導、いわゆる親とのコミュニケーションをとるために母国語の指導ということまでもやっておるという努力をしておるところでございます。

 このように児童生徒支援加配に関しましては、個別の対応が必要な課題が非常に多いことから、今後、少人数学級化が進展いたしましても、児童生徒支援加配につきましては継続・拡充のお願いをしたいところと考えております。

 続きまして資料の 4ページ上段をごらんください。指導方法工夫改善の定数につきましては、大阪府では、小学校 3年生から中学校 3年生までの少人数によります習熟度別指導への活用、もう一点は小学校 2年生の 35人以下学級に一部活用しております。習熟度別指導での配置の考え方は②のとおりでございまして、配置効果等につきましては、この後、別途説明させていただきますが、この加配につきましても、少人数学級化が進展いたしましても地域の実情に応じた学習指導方法を推進していくという意味で、少人数学級への加配の振りかえというは行わずに現状維持をしていただきたいと考えております。

 説明者がここから変わります。

【箸尾谷氏】  失礼します。小中学校課長の箸尾谷です。それでは私のほうからは、習熟度別指導の効果につきまして、まず資料を使って説明させていただきます。資料の 5ページ目をごらんください。大阪府では予算編成の関係で、平成 20年度の 9月という、年度途中の 9月より小学校 3年生以上の国語、算数と中学校全学年の国語、数学、英語で習熟度別指導を実施してまいりました。

 そのやり方ですけれども、下の習熟度別指導の実施例をごらんください。この例は全授業時数が 12時間の単元を例に、 2学級を 3つのグループに分割して実施した場合を考えております。このケースは 4時間の導入・展開を一斉指導の形式で行った後、確認テストを実施して子供たちの理解度を測定してまいります。その後、定着を図る取り組みを児童・生徒の希望や習熟の度合い等により 3つのグループに分けて担任 2名と 7次加配の教員 1名の計 3名で指導するという形にしております。

 このように大阪府では全授業を習熟度別に分けて行うのではなく、小学校の算数と中学校の数学、英語では、授業時数にしておおよそ 30%の授業を習熟度別にして行うように目標設定をしております。なお、国語につきましては、特に数値目標は設定しておりません。

 下のグラフは習熟度別指導の実施状況でございます。平成 21年度より習熟度別指導の実施割合は年々増加しており、 30%の目標は今年度達成する予定でございます。

 では続きまして、指導の効果についてご説明申し上げます。グラフは全国学力・学習状況調査、平成 20年と 21年度の両調査それぞれの対全国比を算出して比較し、 21年度の結果が 20年度の結果よりも改善した学校を習熟度別指導の実施校と未実施校で比較したものでございます。このグラフをごらんいただきますと、中学校数学のB区分問題を除きまして、習熟度別指導を実施している学校のほうが実施していない学校、未実施校に比べて対全国比が改善した学校の割合が高い傾向にあります。このように、知識の定着に関するA区分で、小・中学校ともに習熟度別指導を実施している学校において改善が見られる要因としましては、私どもの習熟度別指導は先ほど説明しましたように、習熟の遅いグループ、これを 20人以下にするなど、特に基礎・基本の定着に力を入れた、きめ細かな指導をするよう想定して人員を配置していることが考えられます。一方、活用に関するB区分では差はほとんどなく、活用の力を伸ばす習熟度別指導のあり方には課題が残っているととらえております。

  1枚めくっていただきまして、効果の 2つ目でございますが、平成 22年度末に各学校に対して調査を実施いたしました。その結果、小・中学校とも教員からは児童・生徒に対して細やかに対応でき、子供たちのつまづきが発見しやすくなった、児童・生徒からは自分のペースに合っているので授業内容が理解しやすくなった、保護者からは子供の学習意欲が向上してきたようだなど、いずれの質問に対しても習熟度別指導について多くの肯定的な回答が得られております。

 それでは続きまして、 35人学級の取り組みについて説明申し上げます。大阪府では平成 16年度より、小学校一、二年生に対して順次、少人数学級編制を実施し、平成 19年度にすべての小学校一、二年生で 35人以下学級編制を実現いたしました。その結果、平成 22年度は小学校一、二年生では 40人以下学級に比べて、それぞれ表にありますように 267学級、 2年生は 283学級の増加となっております。 1学級当たりの児童数は、学校全体では全国平均の 28人に対して、大阪府は 30.7人と高くなっておりますけれども、学年別で見ますと 35人以下学級編制を実施している一、二年生ではおよそ 28.3、 28.5とほぼ全国平均となっております。また、 1学級あたりの児童数別学級数を見ますと、小学校 3年生においては 30人以下学級が全体の約 4割しかないのに対し、小学校一、二年生では 30人以下学級が 6割を超えており、 3年生以上と比べ、よりきめ細かな指導ができる環境が整っていると考えております。

 次に少人数学級編制の効果でございますが、まず、少人数学級編制の効果としまして欠席者数の減少が挙げられます。府内の約 270校で、小学校一、二年生の、特に 1学期の欠席者率を調査しましたところ、制度導入以前の平成 15年度と比べて減少しておりまして、平成 15年度と 21年度とを比較しますと、欠席者が延べ約1万 8,000人減少したということになります。また、下のグラフにありますように、年間 30日以上の長期欠席者につきましても、平成 15年度を 1として、学年別に見ますと、少人数学級編制を開始した平成 16年度、 17年度を境に、小学校一、二年生の減少の割合が大きくなっております。このように、教員がしっかり話を聞くなど、一人一人の子供と向き合うきめ細かな対応をすることで、子供たちの安心感が増し、緊張感が軽減され、落ち着いた学校生活が送れるようになった結果として、欠席する児童が減っているものと考えております。

  1枚めくっていただきまして、 8ページでございます。効果の 2点目といたしまして、基礎学力の定着が上げられます。効果検証のために 35人以下学級編制導入前後で、小学校 1年生で同一問題のテストを実施している小学校が 62校ございます。その 62校の調査によりますと、導入後、基礎学力が定着した子供の割合が増加しております。

 下の表、例をごらんください。これはある小学校の 1年生の例でございますが、繰り上がり等の計算について、指導目標をクリアした児童が導入前は 91%しかなかったのに対し、導入後は 97%に上昇しております。同様に、ひらがなの読み書きは 94%から 97%、漢字の読み書きにつきましても 80%から 88%に上昇しております。

 このように導入前後で指導目標をクリアした児童数の割合が増加した学年をカウントしたのが上のグラフでございます。このグラフをごらんいただきますと、今の 3項目とも 8割近い学年で、導入前後で目標を達成した学年が増加しております。このように、習熟度によりきめ細かな指導をすることで、教員が児童のつまづきに早い段階で気づき、修正するなどの指導が可能となったことが定着率の向上につながったものと考えております。

 また、下のグラフでございますが、 3点目として、定性的な評価になりますが、教員や保護者の多くが 35人学級の導入について肯定的な評価をしております。抽出した 270校の教員を対象に、少人数学級編制の効果として考えられる項目について調査したのが上のグラフでございます。具体的には、一人一人の進みぐあいを把握しやすく、それに合わせた指導がしやすくなった、あるいは子供たちが落ちついて学校生活を送れているという質問に対して肯定的な回答が 9割を超えており、また、子供同士のトラブルが減ったなども 8割を超えています。また、下のグラフにありますように、保護者からも家庭連絡等きめ細かい対応をしてくれるという回答が 8割を超えており、子供は学校を行くのを楽しみにしているという回答も 9割を超えるなど、保護者から肯定的な評価を得ていると考えております。

 以上で効果についての説明を終わります。

【中野氏】  以上で大阪府の説明を終わります。ありがとうございます。

【木村主査】 ありがとうございました。以上、秋田県、それから大阪府からプレゼンテーションをいただきましたが、何かご質問、ご意見、ございますでしょうか。どうぞ、中川さん。

【中川委員】  大阪府の先生方に質問します。これ、前回、京都市の方にも同じ質問をしたんですけれども、以前あった同和教育加配、これが、今はそういう名称ではないわけですけれども、そのときに同和教育加配として配置されていた現状と今の現状とはどうですか。変わっていますか。具体的に有地区校に全部加配されていたわけですけれども、それは現状はどうなっていますか。

【中野氏】  以前、私ども大阪府におきましては、府単独の定数を持っておりまして、当時 1,000名強の府単独の同和加配というのを持っておりました。法期限切れを境に、財政問題もありまして、それらの加配を全廃しております。その後は国のほうからちょうだいする 6次改善、 7次改善の加配を活用しまして、諸問題に対応する必要度が高いところということの基準で全校を対象として参っております。

 数値でお示しできませんが、同和地区にお住まいの子供さん方の環境、先ほどご説明しましたが、いろいろな生活環境等しんどいところが現実にございますので、そういった学校に対して加配は比較的行っておる傾向にございます。

【木村主査】  どうぞ。

【中川委員】  ありがとうございました。今の、それも含めて今の加配で大体数は回っていますか。あるいはもっとこの辺が足りないとかということがありますか。教えてください。

【中野氏】  加配は正直申しまして、あればあるほどありがたいというのが正直なところではあるんですが、先ほどご説明いたしましたように、特に児童生徒支援加配、これがやはり我々としては今後も維持・拡充をしていただきたいという思いを強く持っております。最後の説明のところにも書いておりましたように、少人数学級編制でその効果も確かにあるんですが、その少人数学級化だけでは対応し切れない学校、地域というのはございますので、それら向けの加配というのはぜひとも必要であると考えております。

【中川委員】  ありがとうございました。

【木村主査】  ほかに、ございませんか。

【宮﨑委員】  よろしいですか。

【木村主査】  どうぞ、宮﨑委員。

【宮﨑委員】  ありがとうございました。秋田県の取り組み、ほんとうにますます充実をしているんだなと思って見せていただいたんですが、その他の取組の中で、小規模小学校への支援というのが県単で行われているんですが、この小規模学校と、それからごく前に書かれている学校との差異というんですかね、大体、小規模学校支援を受けている学校数というのはどんな程度、割合になるかというのを 1点、教えていただきたいというのがまず 1点目です。

  2点目は、特別支援教育の取り組みが秋田は大変充実をしていると見せていただいているんですが、特に私が見る限りでは特別支援学校の教員の教員免許状の取得率が極めて高いんですね。全国の中でもトップだと思っているんですが、認定講習などは各県での取り組みが行われているんですが、それ以外に、秋田はどんなような形で教員の免許状取得の効果を上げていらっしゃるのか。

 それからこの人事交流に関してですが、年間で 100名ちょっとぐらいの人事交流をされているんですけれども、これは全体の人事異動に占める比率というのはどのぐらいになるのかをちょっとお尋ねしたい。以上です。

【木村主査】  秋田県、よろしくお願いします。

【橋田氏】   3点、お答え申し上げます。まず 1点目の「小学校まなび・ふれあい充実事業」の対象校というのは、いわゆる少人数学習推進事業の恩恵を受けないような小規模な学校を対象にしております。現在、秋田県の小学校、 245校ございますけれども、そのうちの 11校が実際に対象になっているというところでございます。

  2点目の特別支援教育の関係では、免許状の取得率、これ全国 1位というところは私どもも当然把握しているところでございますけれども、ちょっと直接の担当でないので詳しい要因は分析できていないところではあるんですが、ご指摘のとおり免許取得率は高いというところが我が県の特別支援学校における取り組み、また特別支援学校を核にした小・中学校対象の特別支援教育の充実にもつながっているということで、我々としても大変助かっているというところでございます。

  3点目の人事交流に占める割合についてですけれども、その点についてはちょっとお時間をちょうだいして確認して、またご回答申し上げます。

【宮﨑委員】  ありがとうございました。

【木村主査】  ありがとうございました。ほかに。どうぞ。

【小川副主査】  秋田にちょっと質問ですけれども、少人数学級とか加配教員などにとどまらないで、教員の授業力向上のさまざまな取り組みも含めて、非常にバランスのよい取り組みをされているんだなと。これが全体としていろいろな成果を生んでいるんだなというようなことを学ぶことができました。ありがとうございました。

 その上でちょっと 2点ぐらい教えていただきたいんですけれども、 30人程度の学級が小 1、小 2、小 3と、あと中学 1年生で、あとは小学校 4年から 6年、中学校 2年以上が通常の学級編制に加配ということですが、その際、 30人程度なんで、例えば中学校 1年生の 30人程度の学級から中学校 2年だと 40近い数だとすると、 1学級の生徒数は単純でも 10名前後違いますよね。 10名前後違うというのはかなり学級づくりに関する個々の教員の能力がもろに出てきますので、例えば、 30人程度の学級と、あと小学校 4年以上、中学校 2年以上の通常の学級を担当する教員を配置する際には、何らかの工夫とか配慮というのは意識されてやられているんでしょうか。ストレートに聞くと、中学校 2年、 3年の学級担任については、そういう学級経営の能力の非常に高いベテランの先生を配置するとか、何かそういうふうないろいろな工夫をされているのかどうかということが 1つです。

 もう一つは、これはさすがだなと思ったのは、小規模小学校への支援ということで臨時講師を 1名加配して、ほかの先生方のいろいろな工夫や教育活動をするための時間を確保できるよう配慮しているという取組みは、非常に細やかな支援であると思います。その臨時講師はどういうふうな資格の方、例えば退職教員の方が中心なんでしょうか。

 いろいろな自治体とか学校を調査したことがあるんですけれども、加配の先生を学級担任にするか、或いは、少人数学級やTTにするかというような選択が出来る方法を採っていても、あまりこれは表だって言えないことなのですが、加配されてきた先生の授業力とか学級経営力が非常に低くて、本来であれば少人数学級をしたいんだけれども、そういう加配された先生の能力等を見ると学級担任をやはり任せられないで、ある意味では仕方なくTTを選択するとかというふうな自治体や学校も結構あったんですが、そういう点では加配教員の授業力とか学級経営力というのは支援の際の非常に大きな条件にもなると思うんですけれども、秋田の場合にはこの小規模小学校への支援での臨時講師というのは、どういう資格の方なのかというのをちょっと教えていただきたいんですが。

【木村主査】  じゃあ、よろしくお願いします。

【橋田氏】  まず 1点目の部分ですけれども、いわゆる 30人程度学級からもとの標準法上の学級への境目という部分につきましては、我々も大変気を使うところでございます。特に中学校の場合は、中学校 2年に向けていろいろな問題行動がまた出てきやすいところでございますので、各地区、学校によってかなり力のある先生を配置するということとあわせて、学校全体としても 2年生、中学校であれば 2年生をまず軸足として力を入れてやっていくというところで配慮しているところでございます。

  2点目の小規模学校の支援の部分の臨時講師の部分ですが、秋田県の場合はどちらかというと退職者の方というよりかは 20代、あるいは 30代前半の教員採用をまだ通っていなくて臨時講師をされてという方が割合的にはかなり多い状況でございます。実際そういった先生方が、この場合学担を持つというよりかは教科専門的に、例えば理科ですとか数学ですとか、そういった特定の教科にかかわって、それ以外の教科もあわせてやることもありますけれども、一部専科担任制のような形でやっているという取り組みでございます。

【木村主査】  よろしいですか。ほかに。どうぞ、小澤委員。

【小澤委員】  じゃあ最初に秋田県についてちょっと確認させてください。すみません。小学校 1年生から 3年生まで少人数学級でということでございますよね。そのねらいの中に生活習慣・学習習慣の定着をよく統合して示されているということは、 3年生まで、こういう項目についての指導が必要であるから、小学校中学年である 3年生まで少人数学級を実施しているというとらえ方をしてよろしいんでしょうか。

【橋田氏】  はい。ご指摘の点について、もともと小学校一、二年のところでは、この基本的な生活習慣・学習習慣の定着というところで、今回、小 3に拡充した部分については、 1つは新学習指導要領の対応という部分もございますけれども、高学年に進む基礎づくりとしての学習習慣、あるいはギャングエイジの対応ということで、集団規律、規範意識の醸成ということで、生活習慣面での配慮が必要であるということで、これは小 3部分もかかるというところでこのくくりにさせていただいております。

【小澤委員】  私も単に低学年だけじゃなくて、接続期である中学年にそういう構成をさせると、そういう指導を重点的に取り組ませるために学級編制を考えていくというのは賛成です。すぐれた実践だなと思いました。また、少人数の学級編制を単なる学力という項目だけではなくて多変量で、多くの項目でこういうふうに成果を見切っていくということが重要なのかなと思いました。

 大阪に、引き続いて質問させていただきます。欠席者数の減少というのがございましたね。データで。これ、ちょっとわかんないんですけれども、少人数学級を実施したことによって、なぜ欠席者数がこういうふうに減少するのか説明いただいてよろしいですか。

【木村主査】  お願いします。

【箸尾谷氏】  欠席者数の減少、 1学期のほうのことを例に挙げますと、やはりこのごろの子供たち、特に就学前の子供たちというのは、核家族化等で人とのつながりが薄まっているということで、大阪の場合、特に小学校 1年生の段階で集団行動になじめずに、いわゆる小 1プロブレムというような状況が起きてきております。そういう中で、やはり 35人学級ということで、実質的には平均しましたら 28人程度の学級編制になっておりますので、担任の教員が一人一人の子供たちに毎日のように声かけをする中で、子供たちの自己重要感といいますか、そういうようなものが満足されていって、特に小学校 1年生、 2年生の学級に根づくまでの段階での欠席者が減ってきていると考えております。

【小澤委員】  もっと現実的な姿で言えば、学級の子どもの数が減ることによって、どういうんですかね、不登校といいますか、登校しぶりの初期の段階のときに、教師が保護者とか子供へ、少人数学級にすることによって、その学級担任 1人当たりの持っている子供の児童数が減ることによって、より対応しやすくなる。その結果として学年当初の欠席数が減るんだと、そういう見方をしてよろしいですか。

【箸尾谷氏】  はい。もちろんそういう面もあると思いますし、まあ言えば家庭訪問も、人数が多いときよりも、単純に言いますと回数が行けるようになりますので、今おっしゃっていただいたことも十分考えられます。

【木村主査】  ありがとうございました。どうぞ、貞弘委員。

【貞弘委員】  ありがとうございます。秋田県さんのご報告にも関連するのですが、大阪府さんにお伺いしたいと思います。それは少人数学級の効果の持続性という観点なんですが、今もお話に出ました少人数学級編制によって長欠が減少するという問題です。これ 7ページ目のところの資料のちょっとグラフを私、これは拝見してもちょっと判断できなかったのですけれども、これは一、二年生で少人数学級編制をされて、長欠が減ったこの効果というのは、その学年進行で、 3年生以上で大きな学級になるわけですけれども、少人数を経験した 3年生以上の児童にも長欠の減少という形の効果として持続するのか、と判断するのか、それとも大きな学級になってしまったら、その一、二年生のときの効果というのはなくなってしまうのか。それは今後、 3年生以上、学年進行で学級規模を縮小するかどうかということを考えていくに当たって重要な観点かと思いますので教えていただきたいと思います。

【箸尾谷氏】  このグラフでごらんいただきたいのは、平成 17年、 18年のところで特に太線になっております小学校一、二年生で、長期欠席者が他の学年に比べてやはり大きく減少しているという意味で、私どもは小学校一、二年生について、やはり少人数学級編制についての効果というのは考えております。ただ、今ご質問がありましたような 3年生以上につきまして、これは全体的な長期欠席者との関係もありますので、数値的にはやはり今後検証していかなければならないと思いますけれども、我々教員の経験からいいますと、やはり小学校の場合、一、二年生で一定学級に根づいて学校生活に溶け込めるようになった子供というのは、 3年生以上についても長期欠席、不登校になる確率というのは減るだろうというふうには考えます。

【貞弘委員】  ありがとうございました。

【木村主査】  ありがとうございました。よろしゅうございますか。どうぞ、久保田委員。

【久保田委員】  大阪のほうにちょっとお伺いしたいと思うんですけれども、少人数学級にせよ加配にせよ、学校のほうから見た場合には教員数が増えるということで、これはさまざまな教育活動の点でありがたいことになってくると思いますが、その意味で、この生徒支援加配、ついた場合に、この教員は授業は持つんですか、持たないんですか。

 それからもう一点ですけれども、習熟度別指導で 30%目標であるというふうにされていますが、それ以外の 70%の部分は、それぞれの学級なり教科担当がやっているということになると、その間は生徒への働きかけが、そこで浮いた分ができていくというようにとらえていいのかどうか教えてください。

【中野氏】  まず児童生徒支援加配の配置教員につきましては、基本的には授業を持っております。申すまでもなく授業に参画することによりまして、子供たちとのかかわりができて、生徒指導面でも効果が期待できますので、基本的には授業を持たせております。

【木村主査】  よろしゅうございますか。

【箸尾谷氏】  それから習熟度別指導の 30%以外の部分ですけれども、この場合、TTでありますとか、あるいは単純分割というような形でご指導いただいていると考えております。

【木村主査】  よろしゅうございますか。

 さきほどの貞弘先生のご指摘ですが、例えば 1年生のときにこういう状況だった学生が 2年生になったらどうなったのか、 3年生ではどうか、それを調べていただくと効果がわかりますね。科学技術離れの調査を、以前に内閣府がやっていたのですが、年に若者で興味を持った者が急に減ったんですね。そうするとそれがずっと後まで影響してくるというデータがあります。ばさっと切るのではなくて、 1年生がこうだった、その 1年後にその子たちがどうなったか、 2年後どうなったか、そういうデータを作っていただけると非常に参考になると思いますので、ぜひお願いしたいと思います。

【中野氏】  また、提出させていただきます。

【木村主査】  お願いいたします。よろしゅうございますか。

 それではありがとうございました。どうぞ。

【橋田氏】  申しわけございません。先ほど宮﨑委員から確認がありました総異動件数に占めるこの特殊との交流者の割合ですけれども、単年度ベースで見ますと、 1,805件のうち 9件と、単年度ベースで見れば異動件数としてはそういう形になります。

【木村主査】  ありがとうございました。

 秋田県の皆様、それから大阪府の皆様、ありがとうございました。大変貴重なお話をお聞かせいただきました。今後ともひとつよろしくお願いいたします。

 それでは、先を急ぐようですが、最後のヒアリングに参りたいと思います。最後は、この検討会議の委員でもいらっしゃいます東洋大学の文学部教授の宮﨑氏から特別支援教育の観点について、やはり 20分ほどお話をいただいて、意見を交換したいと思います。それでは、恐れ入りますが宮﨑委員、よろしくお願いいたします。

【宮﨑委員】  それでは特別支援教育の観点から適正配置を考えるということで、意見を発表させていただきます。若干これまでの少しエビデンスベースという観点からすると私の話は主観的なところが多くなるかと思いますが、お許しいただければと思います。

 現在、全国の情緒障害教育研究会、あるいは全国コーディネーター研究会で全国的な調査の資料を収集中でして、今日に間に合わなかったものですから、また、改めてそのあたりについて、私が話をさせていただく全国の調査のことについては次回以降、ご報告をさせていただきます。

 さて、昨年の中教審の初中分科会で、今後の学級編制及び教職員定数の改善についての審議が行われました。その際に特別支援教育については、障害者の権利に関する条約に示されたインクルーシブ教育システムの理念を踏まえて、特別支援教育のあり方についての中教審の特別委員会の審議・検討がなされているので、そこで追加的な措置が必要とされる場合には適切に対応することが必要というようなお話があって、この点が今回のところでも検討していただけるということになろうかと思っているところです。

 近年、インクルーシブ教育の仕組みが世界的な潮流になっているわけですけれども、そういう意味では、世界的に言うと障害のある子供だけではなくて、その国の標準語を使えない子、他民族国家にどんどんなっているので、母語としてなかなか使えない移民のお子さんたちの教育をどうするのかというのも、この特別ニーズ教育という視点で今、世界的な動きはあると。こういったようなことは今後、日本でも起きるだろうと思いますし、そのあたりについての検討も今後はされていかなければいけないのではないかなと思いながらいるところです。できるだけ一般の子供たちが受けている教育をそうしたお子さんたちが受けられるようにするということがインクルーシブ教育システムということになるかと思います。

 日本の場合には戦後の特殊教育の時代がずっと長くて、 1979年に養護学校の義務性が整備をされたと。この間に、かなり特殊教育については充実をしていただいたところです。ただ、考え方としては、障害児に場を規定して教育をするという基本的な考え方があったわけですが、 2007年からは特別支援教育ということになったと。通常学級に在籍する発達障害の子も含めた支援をしましょうということと、特別な教育的ニーズを把握するという仕組み、こうしたことが制度上整備をしていっていただいているというふうに理解をしております。

  2007年以降、着実な特別支援教育体制の歩みが整備をされていると考えております。学習指導要領の改定では、幼・小・中・高とそれぞれの発達段階に合った学校においても、特別支援教育の趣旨に沿った総則の書き込みが行われるようになったということ。それが特別支援教育の改善の基本方針として示されているということがあります。

 それから 2番目に校内支援体制の整備や指導の充実、交流及び共同学習といったようなことについても学習指導要領上に書き込みがされました。 2ページ目の下段のところでございます。特別支援教育の在り方に関する特別委員会がスタートをすることになりました。これは特殊教育から特別支援教育への転換がなされて、 4年が経過して 5年目に入っているわけですが、先ほど申し上げたような整備が進んでいる中で、昨年の 6月に障がい者制度改革推進会議が第一次意見を政府に提出をいたしました。政府では最大限この第一次意見を尊重するというようなことになっておりまして、文部科学省としてその意見を踏まえて、障害のある子供が障害のない子供とともに教育を受けるという障害者権利条約の示されたインクルーシブ教育システムの理念を踏まえた体制面、財政面も含めた教育制度について、 22年度内に障害者の基本法改正をするので、その方向での検討をしなさいということになったと。これが私ども中教審の中に位置づいた特別委員会に課せられた課題です。

 昨年の 12月に、この特別委員会が障害者の権利条約の批准に当たって特別支援教育をどう考えていくかというようなことについて論点整理をしたということでございます。この論点整理の中身を 3点入れておきました。 1つは世界的な傾向、潮流になっていることに関して、その理念ということについては、特別委員会としても方向性、プロセスであるという考え方に立てば、同じ方向を向いているという視点では賛成であると。同じ場でともに学ぶことを追求するということは非常に重要な視点であると。と同時に、お子さんがその時点での教育的なニーズを最も的確にこたえる指導を提供できる多様な柔軟な仕組みを整備することが重要であるということを申し述べさせていただきました。

 そして 2点目のこの連続性のある多様な学び場として用意をするということの考え方ですが、これは障害者の権利条約に関する 24条に位置づいているんですが、 1つはあらゆる段階で包容する教育制度、インクルーシブ・エデュケーション・システムについての考え方と、それから障害学習についてきちっと実現をするようにということと、合わせてダイバーシティーというんですか、人間の多様性の尊重ということと、それに加えてその時点での精神的及び身体的な能力等を可能な限り最大限発達させるということが 1の項目にあるということから、私どもは多様な学びを用意するという仕組みを提案させていただきました。

 日本における義務教育段階の多様な学びの場の連続性というのを、これは現在ある日本の制度上の視点を入れたものですが、実は 1969年にアメリカでこのインクルージョンの論議が高まってきたときに、レイノルズという学者さんが提起をしたカスケードという考え方なんですが、それを踏まえて多様な学びの場の連続性という提案を論点整理ではさせていただいているところです。

 これが現在、さまざまの各県の取り組みの中で位置づき始めていることにもなろうかと思うんですが、この充実がすごく重要だと思っております。小・中学校の通常学級、通級による指導、特別支援学級あるいは特別支援教室といったようなものを整備することで多様な学び場を用意しておくことが必要だ。それとあわせて、ここに域内の教育資源の組み合わせ、スクールクラスターという中身を提出、論点整理では紹介をしているんですが、これは教育事務所管内に、例えば小学校が 10校で中学校が 6校あると、すべての学校が同じような仕組みで整備をされるということではなくて、それぞれ特色を生かすような仕組みをつくったらどうかという考え方です。域内でそれぞれの資源を活用する。特に特別なニーズのあるお子さんがそういうところに通って学ぶ学びを充実させるというような仕組みを考えられるんじゃないかという定義をさせていただいております。特別支援教育の委員会で整備をして提出したのはそんなような中身を報告させていただいております。

 この観点から少し、具体的に今日もいろいろご報告があったことと関係して少し話をさせていただきます。 5ページ目です。少人数学級を進めることの重要性、私は子供、保護者と向き合う時間を確保する観点からも重要ではないかと考えました。平成 19年度以降、小・中学校で学習障害や注意欠陥多動性障害、高機能自閉症といった発達障害への、これまでもなされてきたわけですが、さらに充実した学びがこの子たちができるようにという仕組みに変わったということです。要するに校内支援体制を整備し、さまざまな角度からこれらの子供が通常学級の中で支援を受ける体制を整備するということになったわけですが、さりとてなかなかそういったことがじゃあ十分にできているかというと、そうではないというところがあって、十分対応し切れていない、どうしたらいいかわからないという戸惑いといったようなことから不適切な指導として、現実にはなかなか難しいということが言われてきているわけです。ただ、最近では各県とも特別支援教育の研修会等がかなり充実をしてきているということも伺っております。

 文部科学省が平成 14年に調査した発達障害の疑いのある子供は、下の図を見ていただければわかるわけですが、 6.3%。圧倒的多くが通常学級に在籍するわけですが、 40人学級でありますと、大体 2.5人、二、三人はいる。 30人学級でも大体 1人から 2人程度在籍している。このお子さんたちへの支援というのが、大変状況としては 1人の先生で対応し切れないという問題が出てきていると。ですから、そういう意味では校内支援体制の整備、あるいは複数の担任制、あるいは少人数の支援体制が必要になってくるのではないかということです。そういう意味では、少人数学級化ということがすごくこの視点からも必要であると思いますし、 35人学級から始めるという方向性は、この観点からも賛成できるのではないかと思っております。秋田県がおっしゃったような 30人程度学級といったようなことなども視野に入れられるとさらにありがたいかなという、この視点からは考えられるということです。

  6ページ目ですが、学級編制と学籍の問題なんですが、学習指導要領の総則の中で、交流及び共同学習の一層の推進ということが加えられたわけですが、あわせてインクルーシブ教育システムを考えたときに、ともに学ぶという共生社会の形成という視点から考えても、この推進は大きな意味を持つものと考えております。そういった意味で、この交流及び共同学習のプログラム、これは障害理解教育というのが最近大きなテーマになって、さまざまなところで実践されるようになっているんですが、この視点からもぜひこの検討がされるといいのかなと思っています。

 この交流及び共同学習を、例えば東京は副籍、埼玉では支援籍、神奈川では副学籍といったようなことで、かなり各県ごとに多少の違いはありますが、実践として始まっております。こうしたことを全国に広げるというようなことができていくといいなと。ただ、この、例えば埼玉の支援籍ですと、週に 2回学校に通うというときに、どちらの、基本は、例えば特別支援学校のお子さんが通常学級にいるときに、学級編制基準としては特別支援学校になるわけですけれども、この二重のカウントや、あるいは特別支援教室を考えたときに、支援の籍をどうするかというようなことが今後大きな課題になってくるだろうと思われます。その視点から柔軟な検討がされるといいなと思っております。

 特に就学先の見直しというのが今後、就学相談や就学決定のところで出てくると、保護者との連携という視点でいくと、このあたりが実はすごく大きな課題になっているものですから、このあたりをどんなふうにしていくかというのは、特別委員会としても検討しなければいけない課題だと思うんですが、そのときの学級編制の見合いを少し検討する必要があるのではないかと思います。

 それから、病気のために長期に入院している子供の途中転学というのが、実はかなり教員配置の関係からきちっと受けとめができにくい問題があるんです。これは何かといいますと、 5月 1日現在で学級編制というのは確定をするので、その後に移った場合のことを考えると、きめ細かに対応ができにくい問題点を実は病弱の子に関しては抱えているわけです。そういう意味では、転学に関する対応の柔軟化というようなことなどは、今後、検討をさらにしていく必要があるのではないか。昔は 5月 1日現在、それから 7月、たしか 10月だったかというふうに、少しこのあたりは弾力的に学級編制基準を考えながら整備をしていたところがあったと思うんですけれども、そのあたりが 5月 1日で確定ということになってしまったので課題が残っているということです。

 それから、学級機能の検討による定数配置と加配のことなんですが、これはどんなことかといいますと、前回、私が少しこだわった面なんですが、生活集団と学習集団の機能を考慮して弾力的な運用をしていくという必要性が、特別支援教育の観点からもすごく重要になるのではないか。今日の県の発表の中にもたくさん出てきたことなんですが、日本の基本的な学級集団の構造は、生活集団と学習集団が一体化する形で学級編制の基準を決めて教員配置をしてきた。しかし、加配定数などで少人数指導のあり方などがどんどん整備されてくるというようなことになると、学級の機能を上手に按配しながら整備をしていくことが必要になるのではないか。

 そういう点では、今日もいろいろなところで先生方がご質問されたような中身と関係しますが、生活集団の機能として考えると発達障害や、あるいは障害のあるお子さんが通常学級で学ぶときに一番保護者が願っていることというのは、まず一緒に生活をすることが大事だという意見が圧倒的に多いんですね。小学校の低学年までは何とか位置づいている、その視点で考えると、継続して安定させるという視点で生活集団の機能を上手に活用した学級集団というのが低学年では重要じゃないかと。そこから後というのは、今度は学習集団の機能をともに学ぶという視点で考えると、学びの場というのはさまざまに工夫をしながら対応をしていく。

 これは今回の学習指導要領の改訂の中に、個別指導やグループ指導、繰り返しの指導、学習内容の習熟の程度や、あるいはさらに興味・関心に応じた指導、補充的な指導など、そのほか発展的な学習などという、実はこれまでされてきた活動を整理して書いているようなんですが、実際にはこの意味というのはすごく大きいのではないか。この充実こそが、実は小学校・中学校の学習集団を考えたときに大きなポイントになるのではないかなと思って、これを挙げさせていただきました。学習指導要領と解説は釈迦に説法なのでやめたいんですが。

 フィンランドの特別ニーズ教育の例をちょっと出しました。実はこの 20%と書いてあるのは、イギリスもそうなんですが、特別ニーズ教育を受けている子供たちはイギリスでも 20%いると言われています。そのときに一番ポイントになるのが、学習のおくれのある子供への対応をどうするかというのが一番ポイントになっていて、それとパートタイムの特別ニーズ教育、これは通級による指導とか、あるいは今後、充実をしていく必要性がある特別支援教室などの構想も、このあたりに対処するものとして私は位置づけたらどうかと思っているんですが、それでも 6%、これはいわゆる日本における特別支援教育に相当する子が 6%ほどフィンランドでもいると。この人数からすると、日本は今やっと 2.6%ですから、ほとんど 3倍近くのお子さんがそういった対象になるのではないかと思っているわけです。

 そこで通級指導教室の充実のことを述べさせていただく。もう時間になりますので、もうすぐ終わりますが、特別支援教室の設置と教育支援員の配置、これもほんとうに努力をしていただいているところですが、できることならばこうしたことができる対応の教員を各学校 1人程度整備していくという、今後の大きな課題だと思いますが、その教員がコーディネーターを兼ねたり、リソースルームの対応ができるような先生になってくれるといいなというようなことがあります。

 最後に特別支援学校のことですが、非常にセンター機能の役割が大きくなっておりまして、さまざまに小・中学校の支援等に活用していただいている回数も増えつつあります。そういう意味ではコーディネーターの配置をさらに支援をしていただくとありがたいと思っておりますことと、それからセンター機能の観点からは、これは関係団体から必ず言われていることですが、教員だけでそういうことができるというにはならないと。できるだけ外部人材を活用することが必要ではないかということが言われておりまして、このあたりを仕組みとしてつくっていく必要性がある。

 最後、大規模化に伴って、これは前回、兵馬委員からお話があったことと関係するんですが、校長、副校長や主幹の配置、あるいは養護教諭の配置等に今後、大規模化に伴う配置をぜひお願いできればということです。

 ちょっと出てしまいました。ありがとうございました。

【木村主査】  ありがとうございました。何かご質問、ご意見、ございますか。よろしゅうございますか。どうぞ。

【白山氏】  ちょっと質問ではないのですが、先ほど逆に宮﨑先生から秋田県の特別支援教育の免許取得率の高さについてというご質問がありまして、まだお答えしておりませんでしたが、今ちょっと電話で調べましたので、それをお答えしたいなと思います。秋田県の特別支援教育の免許取得率は、確かに 96.4%、非常に高いものがございますが、その理由は、まず 1つ目は、昭和 61年度の教員採用試験から免許取得していることを志願の条件としていると、これが 1つです。それから持っていない方もいらっしゃいます。持っていない方と言えば、県立の学校の高校との人事異動で入ってこられる方もいらっしゃいます。それから小・中学校での人事交流、これが盛んに今、行われておりますから、この方々も、数としてはそちらの小・中学校の先生が多いんですが、その方々も持っていない方が多いです。

 その方々に対しまして、強制ではありませんけれども、取りませんかという促しをするというようなことをしております。その結果、中には、例えば県立高校に戻るにしても、あるいは小・中学校に戻るとしても、現在、発達障害の子供をはじめとする特別支援教育を必要とする子供たちが増えています。そういった実態を知っていらっしゃいますので、そういった中から、多くはございませんけれども、そういった先生方の中から、いわゆる毎年行われる認定講習、これをやはり中心にしながら、取得していこうという方々がいらっしゃると、こういうことでの高さだということでお答えしたいと思います。

【宮﨑委員】  ありがとうございました。

【木村主査】  ありがとうございました。よろしゅうございますか。

 今日は大変長丁場でございましたが、非常に有意義な議論ができたと思います。それでは、これで閉じたいと思いますが、今後の日程等について、谷合企画官、よろしくお願いいたします。

【谷合企画官】  ありがとうございました。それでは、資料がもう埋もれてしまっているかもしれないんですが、資料の 3というのが次回の日程でございます。次回、第 4回会合は 7月 15日金曜日、 13時から 16時まで。場所は文部科学省東館 3階の特別会議室でございます。次回も今回に引き続きましてヒアリングを予定しています。国立教育政策研究所ほか資料にある方々からヒアリングをお願いしております。

 なお、次々回、第 5回は 7月 25日月曜日の 13時から 15時でございます。第 5回からは、ヒアリングを踏まえました審議を予定しておりますけれども、今日、先ほど宮﨑先生からご発表いただいて思いましたのは、やはりこの学級編制あるいは教職員配置の問題というのは、学校種や学校段階によってやはり特性というものがあるんじゃないかと。やはり小学校は小学校、中学校は中学校、特別支援学校は特別支援学校の特性というものがあるんじゃないかということを思っておりまして、今日、宮﨑先生から先ほどお話を伺いましたので、次は同じような形で小学校、そして中学校のご関係の方からお話を伺うことも少し考えさせていただきたいと思っております。以上でございます。

【木村主査】  ありがとうございました。次回が 7月の 15日金曜日の 13時~ 16時、それからその次が 7月の 25日月曜日の 13時~ 15時ですね。ということでよろしくお願いいたします。

 では本日はどうも、長時間にわたりありがとうございました。また次回、よろしくお願いいたします。

―― 了 ――

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