公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議(第2回) 議事録

1.日時

平成23年6月24日(金曜日) 10時~12時30分

2.場所

文部科学省東館16階特別会議室

3.議事録

【木村主査】  おはようございます。時間でございますので、ただいまから公立義務教育諸学校の学級規模及び教職員配置の適正化に関する検討会議第 2回を開催させていただきます。

 本日は、主としてヒアリングを伺うことになっておりまして、1部と 2部に分けてあります。1部ではお三方からプレゼンテーションいただきました後、少しだけ時間をとって、質疑応答とはまいりませんが、何かご質問がございましたらお受けしたいと思います。第 2部では4方からヒアリングをしていただく予定になっております。よろしくお願いいたします。

 時間の関係もございますので、早速始めたいと存じます。最初は、本検討会議の委員でもいらっしゃいます清原三鷹市長より、新たな時代に求められる授業改革の在り方、地域連携の推進の観点からお話をいただきたいと思います。

【谷合企画官】  資料の確認を。

【木村主査】  ごめんなさい。時間がないので焦ってしまいました。すみません。

【谷合企画官】  失礼します。資料の確認をさせていただきたいと存じます。資料をごらんください。資料 1でございますが、本検討会議の名簿でございます。資料2でございますが、本日のヒアリングにお越しいただいている方のお名前でございます。恐縮でございますが、時間の関係上、資料の配付をもってご紹介にかえさせていただきたいと存じます。そして、資料 3でございますが、本検討会議、前回第1回の議事録でございます。

 そして、資料4でございますが、資料4を少しごらんいただきたいと存じます。本検討会議におけるヒアリング等の予定でございます。ヒアリングにつきましては、ヒアリングの観点について主査ともご相談いたしまして 5つ設定をしてございます。少人数学級・少人数指導等の取り組み及びその効果、弾力的な学級編制・教職員配置の推進、新たな時代に求められる授業改革の在り方、地域連携の推進。学力の状況及び学力向上施策、諸外国の少人数指導と学級経営、そして特別支援教育、この 5項目に従って、これに沿った形でヒアリングを予定してございます。

 具体的な日程につきましては、以下、ヒアリング日程にございますとおり、第2回、本日でございますが、 6月24日、そして裏をごらんいただきますと、第 3回、第4回の予定がございます。

 そして、次の3ページにございます(2)でございますが、これは文書にてこの学級編制、あるいは教職員配置についてご意見を提出いただくことをお願いしている団体のリストでございます。そして、資料 5以下でございますが、5-1から5-7までございます。これらは、いずれも本日ヒアリングにお越しいただいている方から提出いただいた資料でございます。

 なお、このほか委員の方には机上にこの分厚いファイルを置かせていただいておりますが、これは前回の本検討会議の配付資料をファイルしてございます。

 資料の説明は以上でございますが、不足等ございましたら事務局にお申しつけください。以上でございます。

【木村主査】  よろしゅうございましょうか。大変失礼いたしました。本日は午後、教育委員会連合会が予定されておりまして、時間的にタイトなスケジュールとなっていることもありまして資料の説明を飛ばしてしまいました。

 それでは、清原市長、よろしくお願いいたします。

【清原委員】  皆様、おはようございます。東京都三鷹市長の清原慶子でございます。私からは、これからの学級規模の在り方と教員の適正配置を考えるための 1つの視点ということで、三鷹発コミュニティ・スクールを基盤とした小・中一貫教育の実践から問題提起をさせていただきます。

 私は、平成15年4月 30日から三鷹市長を務めておりまして、その三鷹市の面積でございますが、16.5平方キロメートル、人口は約 18万人、世帯数は約8万9,000、市制施行日は昭和 25年11月3日で、昨年、市制施行 60周年を迎えました。平成23年度の一般会計予算は約 650億円でございまして、特別会計を合わせまして約1,000億規模の自治体で、経営改革に努め、地方交付税の不交付団体を堅持しております。実は私が 8年前、初めて市長になりましたときのマニフェストの1つが小・中一貫教育の実現でございました。公立学校の設置者として三鷹市の公立学校の教育理念について改めて教育委員会に検討を求めつつ、三鷹市としても自治の取り組みを進めました。

 16.5平方キロの狭い市でございますので、学校自由選択制ではなくコミュニティ・スクールを、質の高い教育をどの学校においても保証する、すなわち小学校と中学校 9年間に義務教育として教育委員会と連携しながら、市長としてもしっかりと責任を持つ。この取り組みを進めてまいりました。そして、市民の皆様に保護者以外にもかかわっていただく、地域全体でともに子供の育ちを支える方針を明確にしております。平成 18年に施行しております三鷹市自治基本条例の第6章には参加及び協働が明確に示され、また、自治基本条例には学校を核としたコミュニティづくりの推進が明確に示されております。

 三鷹市において公立教育で小・中一貫をするについては、まずしっかりとした教育ビジョンをつくっていただきたいということで、教育委員会にお願いいたしました。実際のモデル校は平成 18年4月にスタートしておりますが、市民の皆様の声、そして保護者、教員等の声、専門家のご意見を集めましてゼロ歳から 15歳まで責任をとる取り組みを明記し、安心と信頼のある学校、自律した学校、地域とともにつくる学校、情報共有のためのモニタリングシステムという 4つの柱に分けて個別的に公立学校の責任とともに保護者、地域の皆様と目指すべきビジョンを明確にしたものでございます。

 三鷹市立の小・中一貫教育校は7つの学園として 7つの中学校区で整備をいたしました。7つの中学校区に 15の小学校がございますので、連雀学園は1中学校に 3つの小学校ですが、あとは1中学校に2つの小学校がそれぞれ連携をし合いながら、 7つの学園をつくっております。平成18年に、最初に、にしみたか学園、平成 20年に連雀学園、東三鷹学園、おおさわ学園。そして平成21年に三鷹中央学園、三鷹の森学園、鷹南学園とそれぞれコミュニティ・スクール委員会が運営し、名称も学校の子供たちの声も集めながら、それぞれユニークにつくってもらいました。

 さて、その中の大きな特徴は、小学校と中学校の相互交流でございまして、小・中学校の教員には全員小学校教員と中学校教員の兼務発令をしております。小学校と中学校の教員が相互に交流するということは、実は意外に難しい。少なくとも私が市長になる前までは、はっきりと小学校と中学校の教員の間に壁があり、小学生は中学校に上がると途端に衝撃を受け、いわゆる段差が存在しました。でも、せっかく公立学校として小・中学校の責任を持てるのであるならば、まず教員が交流し、そして児童生徒が交流するという仕組みといたしました。おかげさまで教員たちが改革の魂を持って取り組んでくれておりまして、適切な児童生徒理解をもとに特に学力の面プラス相談機能の充実と丁寧な支援によって、児童生徒が活発に交流し、小学校の授業に中学生が参加し、中学校の授業に小学生が参加するということが当然のことながら自然に行われております。

 しかし、これは当初、私としては容易なことではないと考えましたので、学園の小学校、中学校をつなぐ小・中一貫コーディネーターを配置することを決断いたしました。市独自の予算による非常勤講師の配置です。学園開設に向けて開園前 2年と開園後1年間はコーディネーターを任命し、そのコーディネーターの後補充の講師を配置することとしたものです。ここに予算の推移がありますのは、学園の開園時期がずれているからでございまして、当初は平成 18年度開園のモデル校前に600万円程度ですが、やがて開園前 2年、後1年ですから増えてまいりまして、平成 21年度はピークでございました。私は、ただコーディネーターがいなければ小・中一貫教育は絵にかいたもちとなると考えて、私自身、覚悟して一般会計から非常勤講師の金額を出したわけですが、これは今後、小・中一貫教育を進めていくときには 1つのヒントとなる費用の目安として出させていただきました。6年間で総計 1億2,000万円余でございますが、人に対してお金を出さなければ小・中一貫教育は成り立たないと考えたわけです。

 また、相互乗り入れ授業が有効でございますので、後補充の講師についても市独自の予算により非常勤講師を配置していただいております。この講師の配当時数は週 10時間45週で22校に交通費を出しておりますので、年間は 2,400万円余となります。すべての学園が開園した平成21年度以降も経常的経費として三鷹市では各校に週 10時間分の後補充講師を配置しております。これは小・中一貫教育のメリットがあると判断したためでございまして、これもまた金額の目安として見ていただければと思います。

 さて、このほかに教育活動支援員を配置しております。これも市独自の予算によりまして教員免許を保持する支援員を特に平成 17年度から小1支援員として配置しました。 1学期のみでございますが配置してまいりまして、いわゆる小1になったときの 1年生の心理的なギャップ、そうしたものを克服するために各小学校の1年生には担任以外に学年に 1名を配置し、必要な支援を行っております。また、通常の学級で特別に支援が必要な子供のために教育活動支援員の配置もしてまいりまして、これらはきめの細かい子供たちへの支援に必要な配置だと認識しております。

 次に少人数学級の集団による指導でございます。これはここに木村委員長がいらっしゃるのですが、都が負担していただきましてほんとうにありがとうございます。指導方法を工夫し、改善をするための教員加配でございまして、全小・中学校に都の正規教員として少人数指導実施のために 27名が加配されており、成果を上げております。例えば、ごらんください。東京都の児童生徒の学力向上を図るための調査、学習に関する意識調査の結果でございますが、三鷹市では顕著な成果が上がっておりまして、少人数・習熟度別学習の効果で、算数の場合、コースに分かれた少人数の学習があるからと評価する値が平均値よりも大変高くなっております。数学についても、理解の程度などによるコース別の学習があるからと、その効果を答える者が多くなっております。中学 2年生は、ほかの回答とあまり差がありませんが、しかし、東京都全体の平均から見て三鷹市では特にこの少人数・習熟度別学習の効果を児童生徒が意識しているということを強調したいと思います。

 そのほかサポート隊の活動をしていただいているのが三鷹市の大きな特徴で、専門的には学習支援にはゲストティーチャー、環境支援には施設メンテナー、一般的に学習支援に学習アシスタント、また、環境サポーターをお願いしておりまして、ほんとうはお時間があれば具体的な例もお話ししたいのですが、きょうは時間がございませんのでまとめて申し上げますと、コミュニティ・スクール委員会、サポート隊、学校支援ボランティアは平成 22年度、延べで何と7,835人が授業等をサポートしてくださいまして、これは年間予算は市民の熱意によりゼロ円でございます。

 次に学生ボランティアは交通費補助がある場合と交通費補助なしでございますが、1校当たり年間 19日分配当しておりまして、さまざまなサポートをしてもらっています。交通費だけ出しておりますが、これは学生本人にも効果があり、実は意欲ある教員志望者等を中心にこの交通費がなくなっても支援活動を展開してくれておりまして、この継続的な支援活動が教員志望の学生にも効果があることが伺えます。

 さて、三鷹市では特別支援教育推進計画を、実は「特別」を取りまして教育支援プランとしております。障害のある子もない子も学校・家庭・地域の力を得て、次代を担う人として育っていくことを支援するために三鷹市では特別支援ではなく、教育支援プランに基づき、さまざまな支援をしておりますけれども、教育支援にかかわる人材として同じく市独自予算によりまして非常勤の職員をお願いしております。介助員は固定制教育支援学級 1学級に1名。また、学習指導員は、5名の学習指導員が 22校を巡回して指導しております。また、スクールカウンセラーは都費のスクールカウンセラー未配置校に 8名のスクールカウンセラーを1校、週2日配置しておりまして、実は都費では週 1日なので、未配置校のほうが回数は多くなっておりますが、こうした取り組みによりまして約1億 3,000万円かかっているわけですが、これはほかの自治体でも取り組んでいらっしゃると思いますが、大変重要な教育の質の向上に資する人材です。

 さて、まとめに入らせていただきます。私はコミュニティ・スクールの成果は学校・地域・保護者それぞれが必要とされ、自己実現する存在になっていること。できることを惜しみなく力を出し合っていること。子供のいない地域の人たちが学校にかかわることのメリットも大きいと思います。それは地域を活性化し、学校教育を充実し、いわばスクール・コミュニティを創造しているのではないかと認識しているところです。

 そこで、質の高い教員はもちろん必要でございますが、そして学級定数を基準に学級数を考えますと、都市部では正直申し上げまして、教室を増やす施設のゆとりがない場合もあります。そこで新校舎建設が必要となる場合もあります。教員のみならず、施設・設備に補助枠の拡充も課題となってまいります。また、過疎地では児童生徒数が少ない場合、他の地域との交流も含めた教育活動が求められます。定員増とならない学校も多いと想定され、過疎地加配等、別の配慮も必要となると考えられ、実は学級定数の問題は都市や過疎地という極端な例にかかわらず、地域の実情に沿わないと効果が上がらないと認識しております。

 また、1年生入学当初は複数の教員配置が有効ということを検証しております。きめの細かい指導や学力向上には少人数学級が有効であり、教員数の確保が必要です。また、教育支援には教員以外にも介助員やカウンセラー等の職員の配置が必要です。大きなフォントにさせていただいたのは、私自身、公約として、マニフェストとして小・中一貫教育をコミュニティ・スクール型で進めさせていただいて、まず子供の学力向上、そして不登校の減少という効果を経験しております。そのコミュニティ・スクールを有効に推進するためには、教員や事務職員等の適切な加配が必要です。

 定数改善は必要であり、大いに賛成でございますが、地域の実情に応じた柔軟な教員職員等の配置ができる方向性が求められておりまして、教員を増やすことが効果的な場合もありますが、教員は増やさなくても別の職員や、あるいはコーディネーターを増やすことが極めて重要だということになってまいります。教員の量的拡大と教員の資質向上とは同時に求められなければなりません。その意味で、初中局で教員の資質向上に関しても検討がされていることは、ほんとうにありがたいことと思います。教員の適切な養成、採用、研修がなされなければなりません。今、巷間、小学校の教員になるのは今がチャンス、競争率が低い。このようなことが公務員の競争が高くなっている今、教員だけに語られるのは残念です。

 量の拡大を図るとき、質の高い教員の数を確保するための仕組みづくりが不可欠です。コミュニティ・スクールの教育現場にいる大人としては、教員だけが必要とされているわけではありません。保護者や地域の専門家、商店の人、お医者さん、税理士さん、あるいは会社の社長、そういう人たちが勤労者ともども現場に来てくださることが重要ですが、多様な人材が参加できるためには、コーディネートできる教員の養成と加配が求められます。ただ教員を増やせばよいのではない。やはり質との兼ね合いが重要。あわせて、コーディネート能力がある教員がさらに求められています。どうぞ三鷹市のコミュニティ・スクールの実践をヒントにしていただきまして、教員の事柄につきましては各地域の実情に応じた柔軟な対応ができる仕組みづくりを提案する会になれば幸いだと思います。委員の 1人としてヒアリングの対象にしていただきましたこと大変光栄に思います。ご清聴、ありがとうございました。

【木村主査】  ありがとうございました。

 東京都でも三鷹市の取り組みに対しては大変注目をしておりまして、何度か現場に伺い、どういうことをやっておられるかを詳細に伺っております。

 それでは、引き続きまして、足立区教育委員会の鈴木学校教育部長からプレゼンテーションをお願いします。冒頭申し忘れましたが、事務局から予め、御願い申し上げたと思いますが、 15分程度でお願いしたいと思います。どうぞ。

【鈴木氏】  それでは、発表の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。早速、ご説明に入らせていただきます。

 資料は5-2でございますが、記載のないところ、人口は 4月1日現在67万人でございます。一般会計が歳出決算ベースで約 2,400億ですが、きょうは低学力対策といいますか、基礎学力がなかなか身につかない子供たちへの取り組みということを中心にお話しさせていただきますので、あえて今、民生費の話をさせていただきました。資料が多くて大変恐縮でございます。まずは資料の 1-1をごらんいただきたいと思います。これが現在の足立区の子供たちの就学援助と参考に区民の方々の所得を載せてございます。中学校になりますと、残念ながら 45%近い就学援助率ということでございまして、例えばなのですが、小学校で一番高いところは60%を超えています。中学校で一番高いところは 7割に近いという状況がありまして、その同じ地域に同じ小・中学校が並んでいるという状況があるということでございます。

 資料1-2をごらんいただきますと、この間、私どもの足立区に都から配置されました教員なのですが、ここで少しご紹介したいのは、やはり新規採用教員の配置がかなり多いということでございます。そのうち期限付き任用の教員も毎年 50人以上入ってきているということで、23区の中で比べますと同規模の、私どもより若干児童生徒が多い江戸川区さんの数字よりはかなり大目に入ってきているということで、現場ではなかなか授業力についても不安が出ているという状況があるということでございます。ちなみに、今回、おかげさまで 35人学級になって、当区では7校で5月半ばに学級分割を行いましたが、その 7校とも期限付き任用の教員が配置されたというところで、その7校につきましては区独自の副担任講師を配置して支援をしているという状況でございます。

 資料1-3でございますが、これは1学級当たりの子供の数と学力のあくまでも平均点での関係を確認しているものでございます。当然、児童数と点数とのつながりと単純に比較できませんが、当区の場合、平成 21年、22年度とこういった傾向があるということです。主に 25人から29人、あるいは35人から 39人のあたりが学級数としてはほぼ200ずつありますから、この辺が 1つ参考になるのかなと思ってございますが、若干、22年度になりまして、少し少ないほうのところでの効果があらわれてきつつあるというところでございます。

 次の資料1-4、1-5、 4ページ、5ページはそれぞれ小・中学校の就学援助認定率と学力調査とのある程度の相関をあらわしたものでございます。

 続きまして6ページをお開きいただきたいと思います。平成 20年度から基本的には低学力といいますか、なかなか基礎学力がつかない子供たちへ集中的に支援をしてきているという状況なのですが、 20年度からというのは1つのきっかけがございまして、私ども学校教育部の職員が指導室長を除いて全員新しくメンバーが入れかわったということと、ちょうどこのときに「 9-6」がわからない中学生が実は都内にいるんですよといったリーフレット、これは民間の事業者がお配りになったリーフレットでしたが、よもやうちの区の話ではないでしょうねという話をしたら、実はそうですという話がありまして、ほんとうにそうなんですかという話のあたりから丁寧に子供たちの学力を 1人1人確認していこうよというところで学力調査もあえて工夫した問題を入れずに、全く平均的な問題でやっているというところです。

 小学校の場合は70%以上とれてごく求められる水準のレベルですよという問題のつくり込みをしています。中学校の場合は大体 6割とれれば、一応、水準に来ていますよということなんです。この6ページの表を見ていただきますと、左側ですと全体的には少しずつですが上昇はしていますが、小学校のほうは残念ながら小 2から小6まで、算数については7割、標準を超える子供たちの数が学年進行とともに下がっているという状況がございます。中学校のほう、下段でございますが、これについても大体全体で見ると少しずつ上向きつつあるのでございますが、中 1から中3の特に数学を見ると極端に下がっているし、学年進行とともに低下をしている。事実、こういう状況があるということです。こういうところについては、やはり算数の基礎が身につかないまま中学校へ行って数学の勉強に入ってつまずいてしまうというのが顕著に出ているというところでございます。

 7ページの資料については、仮にこの区がやっています学力調査の関係で半分に満たなかった児童生徒の割合をあらわしたものでございますが、右側 2つの表をごらんいただきますと、平成21年、 22年ともに基本的には数学が極端に中学になると厳しい状況になっているというところでございます。

 8ページ、9ページをごらんいただきたいと思います。これにつきましては、ちょうど小学校が 72校ですから1割、上下とってみたときの点数区分での子供たちの分布でございます。右側の 9ページが同じく中学校は37校ございますので、 1割とったところの分布でございまして、やはりどうしても課題のある子供たちが、中学校がかなり厳しいということと、いずれにしても学力が低位の学校においてはかなり深刻な状況に来ているということです。こうした評価につきましては、全体的に少し上向いてきている中で、なおかつ課題がある学校が厳しい戦いをしているという状況でやっぱり、狭いエリアではございますが、区の中でも学校によってはかなり学力格差が出ていると思わざるを得ないという現実があるということでございます。

 次に10ページでございますが、これは、すみません、資料については申しわけございませんが、私が庁内で説明したりするときにつくったものでございますので、正確性や、決して外にオープンに出しているものではございませんが、きょうは事前にお配りしてよろしいかということで事務局のほうにはお伝えしてありますので、その点はご容赦いただきたいと思います。

 こういう形で特に課題のある子供への対応をどうしていくかということでずっと取り組んできましたが、とにかく小学校 1、2年生には区独自の副担任講師です。昨年度実績で約 196名の副担任、これは週30時間支援をしてもらうということで講師を入れてございます。特に 1年生についてはということでやってございますが、つい前までは学校長の判断で好きな学年で活用できますよということでやってきましたが、昨年度は 1年生に集中的に配置をしてほしいというお願いを各学校にしまして、1年生に基本的には充てていただいたと。中学校については、基本的にはどの学年でも自由に使っていいですよということでやっています。

 校長会とよくずっとこの間、話をしてきておりますが、なかなか子供たちの、特に課題がある子供たちへの対応が、学校レベルではよく校長先生方はおっしゃるんです。うちの先生方は非常に放課後補習を積極的にやってかなりいい効果を上げていますよ云々、でも、それが組織の力として、学校全体の力として十分発揮できていますかというとなかなか、できていますというところと、いや、ちょっと厳しいんですという話がありました。

 厳しいのであれば、教育委員会としてまず算数、少なくとも四則演算をきちんとマスターして中学校へ行かしましょうよということで、土曜日に民間事業者にお願いしまして小学校 72校全校で実施をしました。約2,000人の子供たちが参加しましたが、やった後の評価については、お母さん方に聞きますと半数のお子さんは多少自宅で学習をというのにつながるのですが、なかなか残念ながら半数のお子さんはそれにもつながっていないということがありますが、この基礎計算の補習授業も時間を追うごとに、最初は夏だけ、今回は春もやる。今年度は春、秋、冬と。しかも、学年を 3年生に下げて基本的にはやっていくということで対応をしてございます。

 特に今年度、土曜授業を実施しまして、毎月第2土曜日を授業にしましょうということです。これまでの例えば 2期制の導入、あるいは夏休みの1週間短縮等々によって小学校につきましては約 30時間ぐらいの余裕があって、この土曜授業を入れたことでプラス30で、小学校については 60時間というスラックが出ましたので、そこについては個別指導を徹底してやりましょうということで、校長会と 1年間議論をしながら、この4月を迎えたというところでございます。しっかり対応できているところと、やっぱりなかなか課題があるところというところで悩ましいところはございますが、そういった形で進めています。

 もう一つは、私どもには開かれた学校づくり協議会というのがあります。109校、一貫校もございますから、 107つで地域の方が約3,300人、協議会の会員として学校の支援、特に土曜の授業も含めてですが、算数検定やら国語検定、漢字検定も含めて積極的な支援、それから、子供たちの体験等々もやっていただいていますが、なかなか最近、ここへ来て、もう少し踏み込んで地域の方々にということでお話をしてきて、今週火曜日ですが、コミュニティ・スクールとしてもっと積極的に学校にコミットしてほしいという話をしましたら、 8校の学校が、では、推進しましょうということで推進校という指定でやっていますが、さまざま地域での仕事、あるいは課題も抱えながらそれに対応しつつ、小学校、中学校を支援していただいていますからなかなか厳しいのではございますが、事子供たちの学習のため、基礎学力をつけるためということでお話しすると、大体ほとんどの方が積極的に協力していただけるということで、そういった形で現在は展開してございます。

 12ページをお開きいただきたいと思います。これが先ほどとダブるかもしれませんが、基礎学力定着のための取り組みとして上段が 21年度から実質的にはやってきた取り組みでございます。最初は中学校も小学校もそうでございますが、希望制にしていましたが、やはり全校で一緒に実施しましょうということでやっています。特にサマースクールは一昨年までは教育委員会の事業として民間事業者を活用しましたが、昨年度から各学校が地域、あるいは中学生と一緒になって子供たちの課題をつぶしていくということで対応してくれております。学校によっては、近隣の中学生ができ上がったプリントの採点をする。開かれた学校づくり協議会の部会の皆さんが机間指導と同じような形で子供たちの個別の質問などに答える。そういう形での展開を 72校すべて最低10日間はやりましょうということで、昨年度からやって今年度も引き続きやっていることでございます。

 また、モジュール授業にも今年4月からは全校で一斉に、ただ、残念ながら学校によっては週 1回のところと週6回のところということで若干温度差はありますが、基本的には繰り返し学習によって、まず基礎基本をということでやってございます。右端に大きな字で「子ども元気基金助成事業」というのがございますが、これは昨年、区長にお願いしまして、 3カ年の限定ですが、これは実は3年かけて子供教育委員会というものをずっとやってきまして、子供たちからさまざまな提案や課題等が出されて、それらを改めて学校現場から提案をいただき、それを施策化しましょう。 3年間、3億だけは確保しましたので、途中で切れるということはありませんよというようなことでやってまいりましたが、その中の幾つかの事業が今年度事業としてスタートするというところでございます。

 それでは、2のマル2のレジュメのほうの就学前教育というところで、資料の 14ページをお開きいただきたいと思います。私ども子供たちの基礎学力をつけるときにという話の中では、中学校に入ってから極端な例ですが、九九を教えるのはしんどいですよねと。これは中学校の校長会の総意でございまして、であるならば小学校で必ずすべてをつぶしていくためには、ほとんどの経営資源は小学校へ投入しますというような形で、大分小学校のほうに手厚く、それは中学校校長会も了解をしていただいているのですが、さまざまやってきましたが、もう少し年長時のところを積極的に連携をとっていかなければいけないだろうということで、 14ページにあるような資料4のところをやってきたところです。ごらんいただければと思いますが、そして 15ページにはこの4月から「あだち5歳児プログラム」ということで、まずは 46ある公立保育園でこの取り組みをスタートし、少しでも小学校を見据えた形での、あるいは意識した形での取り組みをやっていただくということで取り組んでいるところでございます。

 それでは、すみません、あと時間がもう迫っていますので、13ページをお開きいただきますでしょうか。今、今年度の取り組みとして新たにやったものでございます。どうしても全体的に上がる中でもやっぱり厳しい学校があるところについては、今年度から校長経験者といいますか、校長先生でおやめになった方々をお 1人1校担当してもらって、現任の校長先生の経営計画のもとに一緒になってサポートをするという形で、今、 7人の退職校長先生方には7校に入ってもらっている。中にはかなり課題のあるお子さんを自分が取り出して直接指導するというような形で取り組まれている方も、校長先生方もいます。算数強化モデルについては、何%、何%という分析まではほとんどの学校はするのですが、個に対する情報がきちんと共有されていないということで、ポートフォリオまではいきませんが、少なくとも子供の個々、 1人1人の子供の状態、状況をきちんと把握して、それを学校全体で共有しましょうよという取り組みをやっている。

 さっき基金でやったのは記載のとおりでございます。若干、国語についても一応、特殊音節の多層指導モデル―― MIMを少しモデルで入れてみようということで、これについてはやはり国語のつまずきが当区の場合、小学校 2年生ぐらいから出てくるという傾向がございますので、1、 2年のうちにもしそういった形の対応、早期発見が可能であれば、それはひいては全体の学力の底上げになるだろうということでやっているところでございます。時間がなくて大変申しわけありませんが、こういった形で、とにかく個に応じた対応をしている中で、やはり加配については、できれば私どもとしては低学力対応といった視点で、やればやるほど個に応じていかざるを得ない。

 もちろん、財政的な縛りがありますからなかなか厳しいということもございますが、基本的にはそういった形で加配の在り方、もちろん、制度面での学級、 35人学級、30人ということについてはあれですが、ただ、バランスよく配置となったときのそのバランスのとり方が多分、恐らく同じ東京都下の中でもほんとうに学力格差がついている、あるいは所得格差が極めて高く出ているところとそうでないところ、あるいは全国で見ればまさに東京都、それ以外ということがあるのかもしれませんが、そういった点をぜひ含めて引き続きご検討していただければ。

 私どもとしては、現在、副担任講師だけでもやっぱり厳しいながらも約5億の経費を投入していますので、ただ、生活保護が今年度も当初予算で 80億増えているという実態がありますから、少なくとも我々、生活保護費の1割ぐらいは教育に投下したいよねという話で取り組んではいますが、なかなかそこまでお金が回ってくるという状況にもないものですが、あらゆる資源を活用しつつ、とにかく低学力の対応を何としても負の連鎖を断ち切る意味でも積極的に取り組んでまいりたいと考えておりますので、どうぞ検討会の各先生方にはご支援をいただければなと思ってございます。

 すみません、若干時間が超過して申しわけございません。

【木村主査】  ありがとうございました。

 おっしゃりたいことがたくさんあるので、15分という時間では難しいですね。中教審等でヒアリングをやっておりますが、やはり 15分というのは短いんですね。

 それでは、引き続きまして玉川大学教職大学院教授の小松先生から諸外国の少人数指導と学級経営の問題ということで、 15分程度でお願いいたします。

【小松氏】  皆さん、おはようございます。玉川大学教職大学院の小松でございます。実は私は平成 20年度から足立区教育委員会の教育委員もしておりまして、鈴木部長と今一緒に足立区の教育改革に取り組ませていただいておりますし、三鷹市も貝ノ瀨教育長のもとでいろいろお手伝いをさせていただきました。きょうは 2つ話をしたいと思います。お2人の方と違って、私はきょう数字的なものは出しておりませんので、大変恐縮なのですけれども、ですから、逆に 10分もかからないで話ができるかなと思っております。

 まず1つ目は、実は小川副主査が代表でやりました文科省の委託研究、少人数教育に関する調査研究の中で、私は海外調査班の班長を引き受けまして、そこに書いてありますようにアメリカについては 7州、イギリス、フランス、ドイツ、フィンランド、韓国、シンガポールを調査する調査チームの一応責任者をいたしました。貞広委員も実はアメリカニューヨーク州で調査をしていただきまして、この分厚い報告書にまとめられております。きょうはその中から簡単にまとめたことを申し上げたいと思います。 1つ目は、基礎的な調査として各国の教員の定数とか学級定数についての、いわゆる統計的なデータを各国間の比較ということを 1つやりました。なかなか難しい地域もありましたんですけれども、できるだけそういう統計的な基礎データと比較をすると同時に、おかげさまで調査費がありましたので、とにかくできるだけ現地に行って聞き取り調査、それから、学校訪問をして学校のクラスの中の様子を見ようということで、今申し上げましたような国に行きました。

 大分法制度的な定数などについての情報は、今ですとネット上などでも、あるいはいろいろな形で手紙等で、あるいはメール等で資料は得られましたのですが、やはり実際に学校やクラスの授業の様子を見ますと、どこの国でも、どこの学校、クラスでも具体的な場面ではかなり違った様相になってきていて、非常にさまざまな工夫が各国、各学校でなされているのだということを私たちは学ぶことができました。そういう面で言うと、私たちもよりきめ細かく柔軟性のある教職員定数の在り方を国としても考える必要があるでしょうし、現場にできるだけそういう面では裁量権を与えて柔軟な学級編成をする必要があるのではないかということをこういった調査から学ぶことができました。

 それから、国によって若干差がありますけれども、多くの国で子供の教育にかかわるもの、いわゆる教員だけではない、さまざまな人材が多様にかかわっているという実態が出てまいりました。この辺は、いわゆる正規教員だけをきちっと増やすということがいいのかどうかということを改めて考えるきっかけになったかなと思います。私も幾つかの国へ行きましたけれども、結論的に言うと残念ながらどこの国からでも、これぐらいの学級規模であればうまくいくとか、教職員の配置についてはこうしたほうがいいという標準的なモデルというのはなかなかないのではないだろうかと。最終的には政治的な判断、あるいは財政的な事情を踏まえた総合的な判断で、要するによりよい教育環境をその国が、その社会が整備しようというふうな観点があるかないかということだと思います。

 例えば私が特に調べていますイギリスで、ご存じのとおりブレア政権のもとで、30人学級ということでマニフェストに書きましたけれども、これについても厳密な調査研究があって、 30人にすれば必ず成果が上がるという形の議論よりは、むしろ政治的にやっぱり教育にお金をかけることが社会全体にとって意味のあることだというふうな政治判断があったというふうに伺っております。そうは言いながらもやはり学級の人数というのはかなり教育の成果に一定の効果があるというふうに皆さん方からいただいた各国の報告書の中からも言えるので、そういう点で言うと、いわゆる先進国の中で日本の現在の学級定数というのは、かなり国際的な常識からすると多いのではないかと思います。

 もう一つ、私がかかわった、前の職場の国立教育政策研究所時代に、いわゆる学級崩壊と言われるものですけれども、正式には学級の機能変容に関する調査というのを、これも文科省の委託で 2年、その後、科研費をいただいて3年ぐらい調査をいたしました。そのどちらの調査においても、学級がうまくいくというふうなことは単純に人数が少なければいいというわけではないということです。しばしば新聞記者の皆さんにも学級がうまくいくには何人ぐらいがいいのだというふうな質問を受けましたけれども、そのことだけで学級がうまくいく、あるいは学級がうまくいかないということは、残念ながら、約 200を超す学級について割合丁寧に聞き取り調査等いたしました。

 その後、かなり大勢の小学校の教員、それから、小学校5年生の約 5%の児童に関する調査もいたしましたが、子供たちにとって何人であれば学級がうまくいくというふうな形での単純なデータは出てこなかったのですけれども、あえて人数について申し上げれば、私たちが調べた限りにおいては、 26から30人ぐらいの規模が1つの、まあまあ、教員にとっても児童にとっても比較的学習や生活がしやすい規模ではないだろうかなと思います。ただ、その学級規模の大小については、先生方が、担任の先生がより柔軟な学級経営をしていければうまくいきますので、規模そのものは大きな原因にはなりますけれども、大勢だからといって学級が荒れるとは限らない。日本の学校では学級の状況は人数だけではなくして教師の指導力その他さまざまなことを総合的に校長が判断をして学級の編成を決めていきますので、そういう点で言うとかなり校長のリーダーシップ、マネジメント力がそこで問われるのだろうなと思っています。

 私たち、この平成10年度、11年度のあたりもそうでしたけれども、かなり学校を取り巻く、あるいは子供たちを取り巻く社会の環境の変化、子供自身の育ちの変化、あるいはいろいろな特別な、あるいは個別の支援が必要な子供たち、それから、保護者の意識の変化、それから、学校に対するいろいろな期待やら学校自身が抱えるさまざまな問題、それから、先生方のいわゆる多忙感というふうな、いろいろな、一言で言うと複合的な要因で学級がうまくいかない状況が私たちはいつでも、どんな学級でも起こり得るというふうな観測といいますか、見解を持ちました。逆に言うと、学級が多くても先生方がかなり学校としてまとまっていたり、先生自身の指導力があればある程度うまくいくでしょうし、その辺のところで言うと、いろいろな要因のかけ算みたいなものとして、学級がうまくいく、いかないという状況が出てくるのだろうなと思っています。

 もう既に10年以上たったわけですけれども、最近、学校を回ってみますとかなり、このところの状況と実は似てきております。私自身の仮説でしたけれども、特に社会経済的な困難な状況が深刻化すればするほど、それはまず親御さんにあらわれてきますけれども、やがて数年後に子供たちにあらわれてきて、それが学校の荒れとか学級の荒れにつながるというふうに思われます。社会が安定し、安心して親が仕事ができ、生活ができ、そうしている社会、家庭だと子供たちも学校に来て安心して勉強ができるというふうな点で言うと、残念ながら今のままで言うと学級がうまく機能する状況が少し厳しい状況にあるかなと思っています。

 もう一つ、レジュメに書きませんでしたけれども、私は実は東京都杉並区が独自に行ってきました杉並師範館での教員養成に設立当初から 5年間、理事としてかかわってきました。この3月で残念ながら閉館になりましたけれども、 5年間で120人の杉並区の独自の区費教員を採用し、大体、杉並の小学校の 12.3%の教員の配置ができるようになりました。5年間かかわって大変財政的にも厳しい中で、よくこういうことをやられたなということを思いました。そういう面で言うと、教員の定数というのは教育の質の向上という点で極めて重要なものだというふうに思っています。

 ついでにもう一つ、木村先生がいらっしゃるので、きのう実は義務教育学校ではないですけれども、都立高校にお伺いしまして、都立高校でも少人数指導、習熟別をやって成果が今徐々に出てきているという話を伺ったりしました。やっぱり学級規模、あるいは教職員の配置というのは教育の質にとって一番のキーになる要素であることは間違いないので、ぜひ皆さん方のところで議論をしていただければ、学校や子供たちにとって、より質の高い教育が保証されるのではないかと思ってございます。

 以上で私の話を終わります。

【木村主査】  ありがとうございました。

 小松先生のご協力によりまして、当初、若干時間をオーバーするかなと思っておりましたが、少しだけ時間が残りましたので、お 3人のプレゼンテーションに対してご質問、ご意見、ございましたらお願い致します。

 どうぞ、小川委員。

【小川副主査】  小松先生と足立の鈴木さんに簡単に質問なのですけれども、諸外国の動向で、私、 1つ注目しているのは、イギリスで数年前ですか、教員の負担軽減ということと教員が教科指導以外の業務に忙殺されないような条件整備ということで、支援スタッフを拡充するというような取り組みが始まりましたよね。その現状とか成果みたいなものがあれば少し教えていただけないかというようなことです。

 足立区の鈴木さんへの質問なのですけれども、低学力にターゲットを絞った加配については、足立の場合には今でも区独自で指導工夫改善教員を百数十名ぐらい配置されていると思いますけれども、今の指導工夫改善加配ではなかなか低学力の子供への支援の手を差し伸べるというところ、どういうところが難しいのかということと、低学力の子供にターゲットを絞った加配といった場合に、その加配、そういう低学力の子供への支援を中心的な任務とする加配教員の仕事の中身というか、職務の中身とかというのは、どういうふうなことをイメージされてそういうご提案をされているのかというのを少し聞かせいただきたいのですが。

【木村主査】  では、お願いします。小松先生から。

【小松氏】  では、私のほうから。まず、現状ですけれども、かなりティーチングスタッフの数は増えてきています。教員の数もかなり増やしましたけれども、それ以上にサポートスタッフが増えてきていまして、例えば教室に掲示物を張るときにお手伝いしてくれる人とか、特別支援の必要な人たちを非常勤で雇ったりとか、この数は正規教員の数が増えるよりも倍ぐらいの割合でかなり増えているという状況があります。成果ですけれども、ご存じのようにイギリスはナショナルテストをやってきまして、当初のころから比べると、大体今 10ポイントぐらい上がってきているのですけれども、ある程度上がってしまったものだから、このところ大体横ばいになってきてしまっていて、そういう面で言うと、多分、違う施策を出さざるを得ないということが 1つ。

 それから、今は財政難の問題でその辺のところがどこまでサポートできるかなというような感じですけれども、私がメンバーでもありました校長会での議論などを聞いていると、いろいろな形で多様化がしてきて、それをかなり校長に裁量権があるのは、校長たちの立場からすると歓迎されているようであり、今のところ成果、特に学力面の成果は一定のものが上がっているというふうに、批判する人は国のテストが易しくなったのではないかとか、いろいろなことを言いますけれども、私が見る限りにおいては、もう 30年近くイギリスの学校を見ていますけれども、かなり落ち着いた授業ができていますので、そういう点で言うと、先ほど言ったブレアの 30人学級政策も含めて、私はイギリスの子供たちの学力というか、かなり落ち着いた勉強する環境は増えてきているなと。それに対して国民の皆さんからの評価は高いというふうに私は思っています。

【木村主査】  では、鈴木さん。

【鈴木氏】  まず、指導加配教員については当区も大体1校に 1人、ちょうど配置されています。そういった中でも課題のある、ある意味、72校すべて小学校、課題はたくさんあるのですが、そういったときにより具体的に、個に応じたところまではなかなか難しいのですが、より小集団にしてほんとうに丁寧な指導をといったときに、現状でもほぼきゅうきゅうしている状況です。副担任講師という週 30時間、あるいは15時間を2人と選択はできるのですが、それで補ってはいるのですけれども、例えば 2クラスを4展開したいとか、あるいはせざるを得ないみたいな状況があったりという中で、ほんとうにどうやって活用するのだという話で今はやっています。

 ですから、1つは、今は、昨年は1年生に集中して充ててくれといったら、今年かなり不満が出まして、実は夏休み過ぎればとか、あるいは 4月、5月、6月を過ぎれば別な学年でもっと使いたいんだという要望がかなり出ました。特に 6年生でも活用したいなんて学校が最近出ていまして、ですから、そういった意味ではベーシックな部分はきちっと対応しつつも、その学校、地域の状況によっては 4月からずっと1年間同じなわけが当然ありませんので、その状況の変化に応じて弾力的な活用が、あるいはその特定の地域で特定の課題が出る、基本的には学力向上のためにしか認めてはいないのですが、個別に相談いただいたときは、一応、私どもストックで多少予算的なものを留保していますので、人さえきちんと探し切れれば追加で配置するよということも実際やっています。

 ですから、そういった意味では、動いている学級の状況、学校の状況に応じた対応を学校長の判断でスピーディーにやっていくというような形でできればいいなと特に思っています。そういった意味では、仮にですが、低学力対応のための加配ということになれば、既に当区でやっています副担任講師が正規にかわったときに、同じような弾力的な運用が可能なのかどうか。あるいは当初申請した申請どおりではないとやはり現実はなかなか難しいのか。そのあたりの自由度が広がれば、今と全く同じような活用がかなり可能になりますし、学校現場としては大きな力になるのだろうと、そういうふうに考えてございます。

【木村主査】  ありがとうございました。

 ほかにご質問等ございませんか。どうぞ。

【藤崎委員】  質問ではなく藤沢市の現状をきょうの発表を聞きまして、皆さんに知っていただきたいなと思いまして意見を述べさせていただきます。

 まず、三鷹市、大変うらやましく思いまして、藤沢市の場合、55校、小・中特別支援学校がありますが、そのうち今年からコミュニティ・スクール 2校設置を目指して研究が始まるといったところです。35人学級につきましては、 35校の小学校のうち、今年度から9学級、おかげさまで増えまして、全校 35人学級、小学校1年生、実現できました。来年、これが小学校 2年生に拡大されますと12学級増える予定で、全学校が実現可能となる予定です。ただし、これ以上増えますと、三鷹市でもおっしゃっていた教室の確保という問題が出てくるような現状です。藤沢市といいますと、 40万人都市で恵まれているように思われますが、やはり生活保護、児童生徒がいるような学校が30%以上の学校もあります。学力調査などを行いましても、経済的に豊かな学校と難しい学校では 18点ほど差が開いているような状況でして、非常に市の中での地域間格差があります。

 将来的にちょうど小松先生のご発表にもあった学級崩壊状況ですが、教室に入ることができていない児童が、視察をしていますと増えています。発達障害等が疑われるのですが、教員からすると発達障害の子供の実際の指導を勉強する時間がなく、例えば診断してアスペルガーですよとか、そういうふうに診断されると、その診断で安心してしまって、だから、もう教室に入れて指導することはできない。実際に教員が勉強する機会や、また、そういった余裕がないというのが実態で、ぜひこの 35人学級というものをより広めていくということに力を尽くしていかなければいけないなと思っております。

 以上です。

【木村主査】  ありがとうございました。

 ほかに。どうぞ。

【中川委員】  鈴木部長さんの発表でびっくりしました。これだけの保護率の高い地域があるのか。学校によっては 7割を超える地域がある。このことを聞きながら、前回、木村先生がロンドンの立て直した学校のことを教えていただきましたけれども、そんなことも思いながら先生の話をお聞きしていたんですけれども、我々はこの生活保護の率が 20%、25%ぐらいになると、学校、いろいろしんどいことが起きるななどいうことは、よく学校現場から聞くのですけれども、これだけの数、何か我々の想像できないようなことがあるのかなと思ってみたり。

 それから、今、小松先生の最後の発表の中で、社会経済的な困難がやがてこういう崩壊を生んでくるというようなことを思うと、これは大変な状況だなと思いました。平成 19年1月でしたか、教育再生会議が第1次の発表をしたと思います。あのときに私は腹が立ったんですけれども、公立学校がもうだめだと。公立学校を立て直さなければということが、これは一体どこの話なんだということで思ったのですけれども、鈴木部長さんは、ああいう第 1次の発表などはうなずくことができますか。

【鈴木氏】  すみません、その前に誤解があるといけませんので、きちんともう一度。就学援助比率が 7割ということで、生保については全国的に各自治体いろいろ基準をつくっていますけれども、私どもは生保の 1.1倍を基準としています。ですから、ほとんど23区内でも 1.2ですとか、1.3とか緩やかなところはあるのですが、まあ、 1.1。ただ、全国的に見ると生保基準イコールで就学援助を適用している自治体もありますから、そういったところのご苦労は大変だと思いますが、ただ、そうは言っても、結構、足立の子供って明るくて活発なんですよ。ですから、ただ、つらいのは中学校 1年ぐらいに、全員ではない。たまにそういうお子さんの話を聞くと、いや、僕はもういいんだよ、上の学校にはとか、逆にお母さん方が、いや、うちの子はもういいんですよ、勉強はという話が出ると、やっぱり十二、三歳ぐらいで将来に対して、もっともっと明るく確かな目標を持ってもらいたいと思っていますので、そういうところはちょっと気になる。実はたくましく強い子供たちなのですが。

 ご質問の点については、私も特に足立区、私が仕事をしているようなところに行くと、今、中川先生がおっしゃったとおりで、まさに公立学校の役割ってそこにあるのだろうと思っていますので、これだけ特に所得再分配後の格差が広がっていると言われているような状況下においては、ますます私どもの公立学校は、足立の学校はやっぱり相当、もっともっとパワフルに子供たちに施策展開しないといけない。まさにそこに区立学校、地域立の学校の意義があると思っていますので、正直、 19年1月の云々につきましては、中川先生と同じような感想を持ってございます。

【中川委員】  ありがとうございます。大変失礼なことを聞いて申しわけなかったです。

【木村主査】  ほかに。どうぞ、宮﨑委員。

【宮﨑委員】  ありがとうございました。私は三鷹市の取り組みについて少し補足でお聞かせいただければ大変ありがたいと思っているのですが、 6ページのところにサポート隊の活動、特にコミュニティ・スクールの動きというのは大変感じ入って聞かせていただいたのですが、ここにサポート隊のこと、それから、 8ページに三鷹の特別支援教育とおっしゃっていらっしゃるそうですが、ここに例えば介助員とか学習指導員などの配置など、丁寧になさっていると思っているのですが、課題は学習のアシスタントですとか、あるいは学習指導員などを束ねるというんですか、コーディネーター役、教育委員会にそういった全体を統括するような組織というのがどうしても必要だと思いますし、学習アシスタントに対する支援ですとか、あるいは研修の在り方というのが今後ますます重要になってくると思うのですが、そのあたりの取り組みはどんな形でされているのかを少しお聞かせいただきたいと思います。

【木村主査】  では、清原市長。

【清原委員】  ご質問、ありがとうございます。具体的なことをつまびらかに市長が知っているかというと少し不安もありますけれども、私の考え方としては、特に三鷹市では私が市長になる前から、それぞれの小学校で地域の方にクラブ活動を見てもらうとか、あるいは授業にサポートに入ってもらうとかということをオープンにする、そういう事例が積み重ねられておりました。実は NPO法人もつくって、そこでNPOの活動として学校ときちんと契約を交わしてサポート員を出したり、あるいはクラブ指導しているところもあります。

 それが全市的に展開しているかというと、必ずしもそうではありませんけれども、しかし、地域の皆さんが例えば地域子供クラブの指導ですとか、あるいは長年にわたって三鷹市では青少年対策協議会の委員というのを各小学校区にお願いしているんですね。あるいは交通安全対策地区協議会、交通隊というのも、これも各小学校区すべてありまして、保護者でなくても地域の子供たちにかかわるという風土が実は長年にわたってあったということ、それから、いまだに子供会の活動もあるということ、そうした風土があってコミュニティ・スクールの取り組みができています。

 その中で今、資質向上のための研修ということについては、ご指摘のように例えば教育支援学級の場合の介助員であれば、やはり障害種別に応じた介助をお願いしなければなりません。このことについては採用のころから一定の教員資格であるとか、あるいは保育士とか幼稚園教諭とか、あるいは社会福祉に関する資格などについてもお持ちいただいている方にお願いしたり、あるいはもちろん研修ということについてもお願いしながら進めております。

 また、その皆さんを支える組織として、例えば教育支援学級の子供が学童保育所を利用する場合、移動が必要な場合にはファミリーサポートという組織もございまして、これは利用会員と支援会員によってつくられている組織ですが、その支援会員がお手伝いをしてくださるということなどもございます。ですから、多様な人材を基本的には学園長、あるいは学校長がコーディネートし、そして適切に教育委員会が助言、指導していくというような仕組みが、もちろんほかの地域と同じようにあるわけですが、風土として地域に保護者以外の大人がかかわる、あるいは子供がもう卒業した後も保護者がかかわり続けるということがあったということが大変功を奏しているというふうに市長としては認識しているところです。

【宮﨑委員】  ありがとうございました。

【木村主査】  ありがとうございました。

 ほかに。どうぞ。少し時間が押していますが続けましょう。私、途中で切るのが嫌いですから。

【小澤委員】  すみません。今の三鷹の市長さんからのお話で、私、この三鷹の取り組みの中で、現場の学校から言うと、小・中一貫校を立ち上げるとき、その前後を中核的にやっているわけですけれども、いわゆるコーディネーターの教員を配置したということ、人的な配置とともに、その人的な配置をコーディネートする人材の配置がないと、結果的に現場ではどういうことが起きるかというと、副校長にすべて業務が集中するんですね。副校長の業務時間が 1日12時間近い業務、土曜、日曜出勤も含めてという状態が現出してしまうんですね。そういう意味でやっぱり、人的な配置とともにコーディネーションする、そういう人的な要素、そういう部分も補完することは極めて重要だと思いました。

【木村主査】  ありがとうございました。

 どうぞ。

【貞広委員】  ありがとうございます。私も三鷹市の清原市長にご質問申し上げるのですが、小・中一貫校の導入という特殊な事情があったにせよ、そのプラスアルファ、配分する教員を手挙げ式や学校のニーズに応じてというのではなくて、かなり一律にという形で配置をしていると思うのですけれども、この点は強く意識された点かということをお伺いしたいと思います。

【清原委員】  ご質問、ありがとうございます。私の考え方では、小学校と中学校をつなぐということは、同じ建物にすれば比較的楽かもしれない。でも、三鷹市の場合は同じ建物にしませんでした。中学校と学園を構成する学校は、近いところは隣にあるところもありますが、離れております。しかし、カリキュラムも児童生徒の交流も、教員の交流も一貫校としてやってほしいと思いましたので、そうであるならば、そうした条件がどうであろうと、すべての学園に一定のコーディネーター教員、そしてその後補充はしなければいけないというふうに市長として判断しました。

 もちろん、これは教育委員会のご意見もいただきましたけれども、ただし、だらだらしてはいけないと思ったので、つまり、特別なことに三鷹型コミュニティ・スクールをしてはいけないので、前 2年の後1年としたのは、一般財源から出すとなると、私たちも生活保護の受給者は増えておりますし、ほかにもいろいろしなければいけない。学校も耐震化しなければいけない、エアコンも入れたりとか、いろいろ欲張りで市長は考えますので時限は切りました。ただし、相互交流の教員の後補充については、経常業務としようということは実践の中から判断したわけです。

 ですから、もちろん各学校や学園、校長からの問題提起、教育委員長、教育長をはじめとした問題提起は謙虚に受けとめつつ、市長として人件費は出そうと判断したわけで、ほんとうは東京都に加配をお願いしようと思ったんですけれども、いろいろほかにもお願いしていることがあったりしたので、でも、これは効果がありますので、いずれの地域に加配していただいても大丈夫だと思います。

【木村主査】  東京都のことを申し上げて恐縮ですが、小 1プログラムと中1ギャップ解消のための定員増については、私が知事に直訴談判して決めていただきました。

 ありがとうございました。少し時間が過ぎましたが、大変有意義な議論ができたと思います。初めの計画では 5分休憩をするということになっていますが、議論が盛り上がっておりますから、そのまま続けさせていただきます。第 2部ということでヒアリングを始めたいと思います。小松先生と鈴木さん、どうもありがとうございました。

(ヒアリング出席者入れかえ)

【木村主査】  コミュニティ・スクールについては鈴木副大臣も金子郁容先生と共同で推進に努められましたが、私も教育改革国民会議で金子郁容先生と一緒に推進役を受けました。それでだけでは済みませんで、文科省が取り上げ、私、分科会長をやらされた上、法案にするときには国会の参考人として呼ばれました。参考人として意見を述べたときにほとんどの政党が賛成しないのには驚きました。この法案はコミュニティ・スクールを推進するためのものではあるが、地方を強化するための 1つの方策なのだということを強調して、最終的にある程度の賛成は頂きました。ここまで来たのは私も感無量な気がいたしますので、恐らく鈴木副大臣もそうだと思います。

 それでは、よろしゅうございましょうか。引き続きヒアリングを続けたいと思います。第 2部、最初は山形県です。

【長南委員】  よろしいですか。

【木村主査】  どうぞ。

【長南委員】  山形県教育委員会の長南と申します。よろしくお願いいたします。最初の予定では 20分で中身を考えてきたために、私の分は省略をして義務教育課長から詳しい話をしていただくようにしたいと思います。今から 10年前、法律の改正によって少人数指導から少人数学級、40人の標準を下回って都道府県の判断によって少人数学級ができるという法律改正がありました。そのときに山形県が 21から33人の少人数学級編制をしたいということを文部科学省にお話をしたところ、「それはできないことですよ」ということを言われまして、それから約半年にわたっていろいろと話し合いを重ねました。その結果、もう 10年たっていますけれども、かなり成果が出てきているんですね。その成果を上げるためには特別の仕組み、取り組みがあるのだということを現義務教育課長から具体的に説明をしていただきたいということで、きょう参りました。よろしくお願いいたします。

【木村主査】  それでは、よろしくお願いします。

【酒井氏】  山形県教育庁義務教育課長の酒井智子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。これから「教育山形さんさんプラン」についてご説明申し上げます。

 今、山形県の教育の現状として、次の 3点を挙げたいと思います。1つは新学習指導要領が改訂されまして、小学校は今年度、中学校は来年度から完全実施となり、教育内容が整理されたということです。 2つは平成14年度に小学校1年生、 2年生、3年生から導入された「教育山形さんさんプラン」が今年度で中学校 3年生まで拡充となり、少人数学級編制の人的教育環境が整備されたということです。3つは、子供の思考力、判断力、表現力や豊かな心を育むためには、人とのコミュニケーションが最も大切だという視点、平成 19年度からあらゆる教育活動にコミュニケーションを核として取り組むという事業を展開しまして、その成果として教育方法が改善されたということです。そして、この 3つのことは、学校生活全体を通して行われる学級経営と授業の中で着実に実践していこうという確認をしているところでございます。

 山形県が「教育山形さんさんプラン」で目指すものは、大きく 2点ございます。1つは少人数学級編制で行うきめ細かな指導です。具体的には深い子供理解に基づき、集団、グループ、個に応じて適切な支援や指導ができること。そして、必要なときに必要な子供に対して必要な支援ができることであります。これは学力の向上と生徒指導上の問題や不登校、いじめの未然防止にもつなげるためのものでありまして、教員の加配など施策として取り組んでおります。 2つは指導方法の工夫、改善です。具体的には少人数学級の利点を生かして、子供同士が精いっぱい考え合い、表現し合う授業づくり、そして教師が教えたいことを子供が主体的に学ぶ授業づくりに努めることであります。人的環境を最大限に生かし、子供の学力を高めるための教師の資質向上についてさまざまな授業の中で取り組んでいるものです。「教育山形さんさんプラン」は、この 2つのことを一体として進めてきたところに大きな特徴がございます。

 少人数学級編制を取り入れたことによる成果は幾つか挙げられます。まず、学力面です。小学校の標準学力検査、 NRTテストの結果を追跡調査してみますと、平成13年度の導入前と比較して導入後の平成 14年度以降、国語も算数も学力偏差値が高くなっております。特に国語の伸びが顕著でした。中学校では導入前の平成 16年度の中学1年生と比較して導入後、平成 17年度の中学1年生、平成18年度の 2年生の学力がやや高い結果となっております。

 次に中学校における年間30日以上欠席の不登校生徒数の推移を見ますと、導入前は 963名でしたが、最近4年間は873名、 867名、828名、769名と着実に減少しております。昨年度は小・中学校合わせて 1,000人を切ることができました。また、いじめの件数も最近5年間の推移を見ますと、小・中学校とも年々減少しております。これは少人数学級による 1人1人へのきめ細かな指導により、子供たちが抱える問題や困り感に早期に対応できたことによるものととらえております。また、各学校も担任を中心に組織的に取り組んだ成果であるととらえております。

 次に、課題についての現状と今後の取り組みについて説明いたします。課題は大きく 4点挙げられます。1つは、減少しているとは言うものの、まだ 900名を超す児童生徒が不登校でいるということです。

 2つは、校内暴力の件数が少しずつ増えているということです。中学校では平成 20年度は7件でしたが、平成21年度は 12件と5件増えました。社会情勢が非常に不安定な中で、子供たちが抱える問題も多様化、複雑化しておりまして、不登校や問題行動の原因が特定できない状況が数多くございます。子供をよりよく育てるという視点で、生徒指導に一層力を入れていく必要があります。

 3つは、発達障害を含む特別な支援を要する児童生徒が増加しているということです。現在では各学級に複数名いる場合も非常に多く、担任は個別の対応に追われて授業の進展にも影響が出ている状況です。また、不登校になったり、暴力行為を起こしたりする児童生徒の中には、少なからず発達障害の 2次障害と思われるケースも見られます。このようなことから、今後は特別支援教育についての理解促進と具体的対応の実践化がますます必要になってきます。

 4つは、思考力、コミュニケーション力のさらなる向上です。本県の子供たちは、全国学力テスト等の分析から、問題を整理して論理的に考えるということに課題が見られます。また、多様な言語活動を通してコミュニケーション力をさらに伸ばしていきたいとも考えています。これらは日々の授業の中で意図的に仕組んでいかなければなりません。これまで挙げてきた課題の解決に当たっては、それぞれ単独で取り組むものではなく、一番子供と一緒にいる時間が長い、学級担任や教科担任が教師力として 3つの力を身につけ、同時に発揮するものだと考えています。今後はそのような教師力の育成に努めていきたいと考えています。

 本県がとらえている教師力について、もう少し説明いたします。まず、「生徒指導」、教育活動全体を通して子供たちの生きる力を伸ばすために行うものであります。特に学級担任は生活の母体となる認め合い、高め合う学級集団づくりを行う中で、 1人1人の子供のよさを伸ばすという原点、そういう視点を大事にします。友達から認められ、支えられていると感じることで子供たちは持てる力を大いに発揮できるはずです。ここで言う生徒指導は、良好な人間関係を目指すものであり、いじめ、不登校の未然防止も含めた積極的生徒指導のことを指します。

 次に、「特別支援教育」ですが、教師は特別な支援を必要とする子供の困り感がわかり、その子の教育的ニーズに応じて適切に対応できることが求められます。例えば整理された教室環境、わかりやすい板書、枡目の大きいノート、時々の声がけなど、障害特性に応じた具体的な対応策を身につけなければなりません。また、中学校にあっては各教科担任が個別の対応を共通理解しておくことも必要です。そして、教師はこれまで述べてきた生徒指導や特別支援教育の視点を常に持ちながら、十分な教材研究のもとにわかりやすく楽しい授業を心がけることが大切です。そこには子供たちが認め合う生活集団としての学級で学ぶことの大きな意義があり、友達や教師から認められることで 1人1人の学ぶ意欲が引き出され、ひいては学力の向上につながるはずです。まさに少人数学級だからこそ、生活と学習が一体となった教育ができるのです。

 実際に授業で発揮する「生徒指導」の力について具体的に説明しますと、例えば 1人1人のよさや興味、関心を生かす。児童生徒が考えを交流し、互いのよさに学び合う場を工夫する。児童生徒が主体的に学ぶことができる課題の設定を工夫する。学び方について、みずから選択する場を工夫するなどが挙げられます。これは生徒指導の 3機能と言われている自尊感情を高めること、共感的人間関係を育成すること、自己決定の場面をつくることを授業でも積極的に考えていこうとすることです。集団としての機能が高まっている学級ほど、考えの交流や認め合い、支え合いが授業の中で自然に行われ、学習効果も大きくなります。

 「特別支援教育」について、教師、特に学級担任や教科担任が身につけておきたい力を具体的に挙げてみますと、特別支援教育の知識・理解がきちんとある。発達障害がある、あるいは特別な支援を必要とする子供の困り感に対応できる。その子のよさを伸ばすことができる。自分だけで悩まずに教育相談にかけ、チームで対応することができる。保護者と定期的に話し合いができることなどが挙げられます。校内での積極的な研修とともに、教員同士の情報交換、ケース会議等、学校組織を挙げて取り組むことが望まれます。また、特別支援教育に関する専門性の高い教師の配置も欠かせない条件になります。これまで述べてきた「生徒指導」、「特別支援教育」、「授業」を一体のものとして考えていくために、山形県では、今年度、「授業改善プロジェクト事業」や「担任力育成プロジェクト事業」を立ち上げております。

 1人 1人の子供の教育を考えたとき、私たちは例えば不登校になっている、あるいは学習でつまずいている目の前の子供に対して、 10年後の社会を支えていく資質や能力を十分に育てられるように今何をすべきかを真剣に考えていかなければなりません。そのためには、小・中学校が一貫してそのことを念頭に置き教育していく必要があります。あわせて、幼稚園や保育園との連携や高等学校との連携も当然大切になってきます。そして、子供の未来に責任を持つということが、今、教育に問われている最大の課題でもあると認識しています。少人数学級の中で 1人1人の子供の社会を生き抜く力をこれからも丁寧に育てていきたいと考えております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【木村主査】  ありがとうございました。

 それでは、引き続きまして京都からのプレゼンテーションをお願いいたします。まず、京都府教育委員会からお願いしたいと存じます。よろしくお願いします。

【小橋氏】  京都府教育委員会教育企画監の小橋と申します。それでは、お手元に配付させていただいています資料に基づきまして説明させていただきます。京都府における少人数教育の取り組みでございますが、資料の 1ページの上のほうに「京の子ども・少人数教育推進事業」という事業がございまして、これを柱に取り組んだところでございます。この事業につきましては、昨年度、小学校において一応完成をいたしまして、今年度から中学校において着手したというところでございます。また、小学校 1、2年生におきましては、学校生活の初期の段階で学習習慣をしっかり身につけさせるというために、複数教員による指導、いわゆるティームティーチングに重点を置いた授業を府独自で実施しているところでございます。

 少人数教育の実施方法につきましては、他府県さんと同じように少人数授業、あるいはティームティーチング、それから、少人数学級などを実施しているところでございますけれども、京都府におきましては現地現場主義という考え方のもとで市町村教育委員会が学校の課題等に対しまして、より主体的、あるいは柔軟に対応できますように少人数教育の実施方法に工夫を凝らしているところでございます。こういった京都府の取組の特徴を中心に説明をいたしたいと考えます。

 まず、資料の1ページの下のほうに定数配置の考え方とございますが、その中に 30人程度学級という言葉がございます。これにつきましては、その表にございますように小規模な学校を除きまして 1学級の規模を児童数18人から35人の範囲になりますように努めたものでございまして、例えばその表でごらんいただきますと、 1学年の児童が仮に100人といたしますと、その場合、従来の 40人学級でしたら3学級となりますが、この京都式の 30人程度学級では4学級と算定をいたします。

 従来は学級数に応じた定数と、いわゆる加配定数というのを別々に算定いたしまして、学校にそれを配当していましたが、現在ではこの学級数分と加配分を分けずに、この 30人程度学級の基準より算定した学級数に見合う定数を市町村のほうに一括して配当する、そういう方式をとっております。この 30人程度学級を実施するための必要な定数につきましては、国からいただいています定数を上回っておりますので、その不足する分につきましては京都府独自に定数措置をしているということでございます。

 次に、定数配当の方法についてでございますが、資料の 2ページでございます。先ほどの30人程度学級により算出した定数につきましては、市町村に一括して配当いたしまして、市町村が学校の状況等を勘案する中で自由に学校にその定数を配当できる、そういう仕組みにしているところでございます。

 2ページの中央のこの図にございますように、従来は府のほうが直接各学校への配当数を決定いたしておりましたが、現在は市町村が学校への配当数を決定するということにしておりまして、これによりまして学校の状況とか、子供の状況に応じまして市町村がより柔軟に必要な定数を学校に配置できるというようになったところでございます。市町村におきましては、これらの定数を活用しまして、例えば 40人を超えない範囲で市町村独自の学級編制基準を定めることも可能でありますし、また、市町村が年度当初にすべての定数を学校に配当しないでプールした状態にいたしまして、年度途中で課題の大きい学校に配当する、そういったことも可能となったところでございます。

 また、配当された定数の活用につきましては、市町村、あるいは学校のほうがその学校の状況、児童生徒の状況に応じまして少人数授業、あるいはティームティーチング、少人数学級というのを自由に選択いたしまして実施できるようにしているところでございます。こういったどのような手法を選択するかにつきましては、各学校に少人数教育推進担当という教員を校務分掌上に位置づけておりまして、この方が中心になりまして学校内でのいろいろな連絡会議を開きまして、その学校に合った手法を選択する、そういう方法をとっているところでございます。

 次に少人数教育の選択状況についてでございますが、 3ページでございます。その図にございますように、配当定数の活用状況につきましては、合わせますと約 8割の学校が少人数授業、ティームティーチングにその定数を活用しているということでございます。また、合わせますと約 6割の学校が少人数学級を実施しているということでございます。加配を活用しまして少人数学級のみ実施している学校は、 19.7%でございますが、こういう学校におきましても、そのうち約半分が加配定数はないわけですけれども、例えば教務主任等がそこに加わりまして、独自に少人数授業などを実施している、そういう例もございます。

 この少人数授業につきましては、特に習熟度別の少人数授業といいますのは、教師間の連携とか、あるいは新たな教材をつくる。そういった面で教員への負担というのが大きくなる。そういう傾向がございますが、京都府におきましては従来からこういった習熟度別の少人数授業の研究を進めておりまして、こういった成果を広く波及いたしまして、現在も多くの学校で実践されているということでございます。

 その中央にございますように、主な選択の理由につきましては、これは先ほどの少人数教育推進担当から聞き取り調査をしたものでございますが、特に低学年の学習習慣の定着につきましては、いわゆるティームティーチングが有効だろうと。また、生徒指導を含む学級経営の観点からは少人数学級がよいのではないか。また、学力に課題のある児童生徒へよりきめ細やかな指導をする際には少人数授業とかティームティーチングが多く取り上げられている、そういったような結果が返ってきたところでございます。

 続きまして4ページでございます。少人数教育の成果ということでございますが、児童生徒の学力の変化につきましては、これはさまざまな要因がかかわっておりまして、この少人数教育がどれだけ効果をもたらしたかというのは、なかなか現実に検証するのは難しいという状況がございますが、そういった中、京都府におきましては、この少人数教育が進められてきましたこの 10年、20年の間に学力がどのように変化したのかということの検証の試みを行っていました。

 京都府におきましては、毎年、府独自の学力診断テストというのを実施しておりまして、その中で児童生徒の学力の状況を把握し、その結果を日常の学習活動等に活用しているところでございますが、しかし、学力が伸びたかどうかにつきましては、試験そのものの難易度が変わりますので、なかなか経年で比較するというのは難しいということがございました。そうしますと、経年比較を行うためには、この尺度を等しくする、そういう作業が必要になってくるわけであります。

 そこで、昨年度末から今年度にかけまして学力の経年比較に関する調査研究を実施しまして、尺度を等しくする中で長期的なスパンにおいて学力がどのように変化したのか、それを検証することといたしました。京都府の学力診断テストにつきましては、平成 3年度から小学校4年生と6年生の全児童を対象に毎年 4月に実施しております。その実施しました20年間の全データについては保管をしているところでございます。

 今回の調査研究といいますのは、今年度新たに 6年生になる児童の中から30校、約700人を抽出いたしまして、平成 4年度と13年度と22年度の過去の問題を解答してもらいまして、その解答データを統計学の理論、これは項目反応理論ということらしいのですけれども、そういう理論を用いまして過去の問題の難易度等を推定いたしまして、それを物差しとして用い、過去のテストの受験者の学力を推定するという手続を踏んだものでございます。

 この調査研究といいますのは、統計学の専門家の指導のもとで実施いたしまして、その調査研究の概要、これはまとまったものがございますが、本日はそのリーフレットを添付させていただいていますけれども、統計学上の理論はなかなか難解でございますので、本日は、その中身の詳細の説明は省略いたしますけれども、今後さらにこの 20年間のデータを国立教育政策研究所さんと共同して分析調査をやっていきたい、このように考えているところでございます。

 そこで、小学校におけるこの調査研究の結果をごらんいただきますと、 4ページの中ごろでございますが、小学6年生の国語と算数につきまして、それぞれ平成 4年、13年、22年の学力診断テストの理論上の平均値の比較データでございますけれども、これをごらんいただきますと、国語も算数も伸びているわけでございますが、そこでこの間、約 20年間の学校現場の状況を考えてみますと、下のほうの参考のところにもございますように、この平成 4年度の6年生といいますのは、いわゆる週6日制のもとでありまして、平成 13年度については4週6休制のもとで、それから、 22年度につきましては完全学校週5日制のもとで学習していた子供たちでございます。

 この間、参考のほうの下にございますように、授業時間数につきましても学習指導要領の改正により減少しているということもございます。こういった授業時間数が減少する中で学力状況はどうなったかと見ますと、平成 4年を50点と置きますと、その平均の推移は国語も算数も平成 4年度と比較しまして、やや上昇したという結果になっております。特に右側にございます棒グラフにありますように、上位層のほうが増加する一方で、下位層についても減少しているということでございまして、いわゆる学力の二極化というのが進行したことはないということが推測できます。この学力がやや上昇したというのにつきましては、さまざまな要因がございますのでなかなか断定できませんが、その中の大きな要因としましては、いわゆる少人数授業など指導方法の工夫・改善が学校現場におりてきたということが大きいのではないかと考えております。

 この定数改善につきましては、平成 3年度に第4次改善ということで40人学級が完成いたしまして、平成 5年度から第6次改善、これにつきましては指導方法の工夫・改善のための定数ということでありまして、このころから学校現場にティームティーチングによる授業が多く取り入れられました。さらに平成 13年度からは、第7次改善でございまして、引き続きティームティーチングとか、あるいは少人数授業のための定数が配置されまして、京都府におきましてもこういった改善定数を活用いたしまして、少人数教育を積極的に実施し、 1人1人にきめ細やかな指導を行ったということでありまして、いろいろな取り組みがございましたけれども、恐らく他のどの取り組みよりもこういった少人数教育が学校現場に与えた影響が大きいのではないかと考えております。

 したがいまして、断定はできませんが、こういった少人数教育の取り組みが、一方、授業時間数が減少したにもかかわらず、全体として基礎学力が低下せずに、むしろ向上させたと考えているところでございます。また、合わせまして下のほうにございますけれども、不登校の関係です。生徒指導上も小学校における不登校児童の出現率が一時上昇しておりましたが、ここ 10年間、減少傾向にあります。これも少人数教育等によりまして児童1人 1人にきめ細やかな指導を行ってきたということも1つの要素ではないかと考えるところでございます。

 次に5ページでございますが、こういった少人数教育の成果につきまして、先ほどの少人数教育推進担当教員からアンケート調査を今年行いました。これにつきまして、まず学力面につきましては、ティームティーチング、少人数授業、少人数学級、どの手法をとりましても非常に効果的であると。特に学力に課題のある、授業につまずく児童につきましては、ティームティーチングや少人数授業が特に効果的というような意見が出ております。また、生徒指導、いわゆる学習規律の確立という面につきましては、少人数教育の取り組みが特に効果的であるというのが左側の表で出ておりまして、また、そういった学級経営面におきましては、少人数学級は適しているというような回答が返っております。さらに教員の指導力アップにつきましては、他の教員と連携して取り組んでおりますティームティーチングとか、あるいは少人数授業がより効果的でありまして、教員の負担軽減という側面では少人数学級が効果的だというようなデータが出ております。

 さらに参考でございますが、6ページに、 21年度に小学校の児童に対してこの少人数教育についてのアンケート調査を行っております。これをごらんいただきますと、約 8割の児童が少人数授業や少人数学級について、授業がよくわかる。この2番目でございますけれども、約 8割がそういう回答になっています。特に少人数授業については、授業が楽しい、勉強にやる気が出る、 1番と4番ですけれども、そういった回答がなされております。

 以上、京都式少人数教育の取り組み、あるいはその成果についてご説明いたしましたが、各市町村教育委員会や学校がそれらの学校の状況に応じて、こういった少人数教育をうまく取り入れて、創意工夫をしながら実践をしていくということは、これは児童生徒の学力向上のみならず、教員の資質向上にも寄与するものと考えているところでございます。今年度、国におかれましては小学校 1年生から35人学級の編制が可能となる定数配置を実施されたところでありまして、また実施に当たりましては配当定数を都道府県、あるいは市町村の判断により弾力的に活用できる、そういった措置をいただいたわけでありまして、非常にありがたいことと感じてございます。学級のスケールをただ画一的に下げるのではなく、配当された定数を創意工夫しまして柔軟に活用する中で学校の活性化が図られると考えるところでございます。今後とも引き続き定数改善を推進いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 最後でございますが、お手元の資料の 7ページ以下に小学校の専科教育にかかわる新聞記事を2枚おつけしております。これは小学校に音楽や図工の専科教員を、これは小学校に配置するのではなくて、中学校、あるいは高等学校の音楽、美術の教員が管内の小学校に出向いて授業を担当する。そういった新たな専科教育の制度を始めました。これにつきましては主に小学 5年、6年を対象に今年度から実施しております。場合によっては中学校の教員が小学校 5年、6年、中学校の3年間、こういった授業を一貫して受け持つというようなこともございますので、モチベーションのアップにもつながればと考えてございます。

 京都府からは以上でございます。ありがとうございました。

【木村主査】  ありがとうございました。

 では、引き続きまして京都市の教育委員会からお願いいたします。少し時間が押していますので、よろしくお願いします。

【生田氏】  京都市教育委員会の教育政策監の生田でございます。本日は、このような機会をいただきまして非常にうれしく思っております。まずは 30年ぶりに学級規模を縮小する法改正が行われたということで大変うれしく思っております。京都市におきましては、公教育の責任を果たしていこうということで、すべての学校の教育力を上げようと、教師、学校自身が徹底的に意識改革、行動改革する。同時に地域ぐるみの教育を行ってまいりました。そうした意味で、門川市長が教育長時代から中教審を始めまして、二度にわたる衆議院の意見陳述の機会等通しまして、国によります教育条件の整備、とりわけ教員定数の増、処遇の改善を訴えてまいりました。そんな中にあって、現実は児童生徒数の減少以上に教員数を減らす。そんな状況が続きました。そんな中にありまして、まずは京都市として現行制度の枠内でできることをやり切る。

 そして、制度の壁があれば特区等活用してそれを乗り越えようということで少人数学級の実現に取り組んでまいりました。まずお手元の本市独自の取り組みであります。平成 12年度から30人学級を展望した少人数教育と銘打って実施しました。当時、指定都市といえども、独自に給与を負担して教員を配置するということはできませんでした。したがいまして、週 26時間の非常勤講師を小学校30校に配置する。学級編成は 40人のままで教科によって学級の枠を超えて少人数の学習集団を編成して習熟度指導等を行うということでありました。総額 1億円、京都市指定都市の中でありましても財政は極めて脆弱であります。現在も平成21年から、市長から係員まで全給与カットをしているというもので選択と集中で、当時の桝本市長の決断をいただいて実施できました。国全国への問題提起の意味も含めて、あえて 30人学級を展望したと名付けたところでもあります。

 しかし、前の学習指導要領の実施に当たりまして現場から悲鳴が聞こえてまいりました。週 5日制の同時実施で授業時間は減るものの、一方で指導内容の工夫、改善、もとよりきめ細かい指導は不可欠でありますし、体験的活動の充実も必要であります。何とか現場を支援できないか。ちょうど当時、国で特区制度が創設される。それなら特区を活用して 35人学級を実施しようということで、まず最初に手を挙げたところ認めていただき、「京(みやこ)の人づくり推進特区」ということで実施いたしました。

 しかし、全学年で実施しようということになると 10億円かかる。どの学年で実施するのか。当時、学習指導要領の改訂に際し、京都市におきましてさまざまな課題について学校現場、保護者等も含めて教育改革推進プロジェクトをつくって検討しておりました。そのプロジェクトチームでかんかんがくがくの議論をする。当時、既に小 1ギャップが大きな課題でありました。低学年では、とりわけ保幼との小規模な集団の円滑なつなぎであり、特に学習集団と生活集団をまずは一致させることが重要であるという意見が強く、平成 15年には小学校1年生で35人学級、翌年に 2年生に拡大しました。

 この特区の取り組みを認めていただきまして、平成 18年には市町村立学校の給与負担法が改正される。市町村の教員任用が可能になったところであります。 1学年当たり35人前後の常勤講師を任用し、 1億7,000万円を投入しております。ちなみに、京都市では当時、小・中一貫教育または不登校生徒のための特区の中学をつくろうということで、 3つの特区活用を行いました。その後すべて、いずれも特区を使わなくても実施できるということで一般化されたということはほんとうにうれしい限りであります。小・中一貫教育も現在すべての中学校区を単位に施設一体型であり、あるいはまた施設併用型、あるいは分離型、連携型等で、すべての中学校区でやろうということで取り組んでいるところでもあります。

 3点目、中学校 3年生の30人学級であります。これは平成18年、校長会や PTA等から中学校3年での30人学級を求める強い要望が出されました。京都市におきましては、国がかつて 30年代、40年代、学力テストを中止された後でも戦後一貫して教科の研究会が中心になりまして、悉皆で学力定着調査を実施してきました。平成 14年、学力問題が非常にクローズアップされた時期でありましたが、その当時、比較可能な20年間のデータをもとに、京都市では少なくとも学力低下はないということも報告としてまとめて、市民の方々に安心いただいたところでもありました。

 中学校では、それをさらに発展させて、新たに平成 18年から学習確認プログラム、これは中1から中 3まで7回のテスト形式で、学力実態の把握だけではなしに、子供自身が自学自習を進められる。そうしたシステムを導入しました。こうした取り組みも含めて、義務教育段階の最終段階、出口である中学校 3年できめ細かい学習指導、進路指導をやろうということで、平成19年から 30人学級を導入しました。他府県市等では中学校1年での実施が多いようですが、現在でも 3年で導入しているのは京都市ぐらいかなと思っております。当然ですが、必要教員数は増えてまいります。 1学年で約90人、5億 5,000万を投入しているところでございます。

 裏ページ、京都市におきます学級編成の全体像でございます。小 1、小2は当然35人、中 3は30人、小3から中 2にかけましては40人学級を編成基準としながら、先ほど京都府さんのほうから説明がございましたが、学校の教育課題、教育効果を踏まえ配当された定数を活用して学校裁量で少人数学級を展開しております。小 1は国の加配で37名、小2では市費で 35名、中3は86名、小 3から小6は30人程度学級のための府の加配、あるいは国の指導改善をいただくということでトータル 75人。中1、中2は 9名ということで、総計242人を加配しているという状況であります。トータルとしまして、表の一番下にありますが、基準配当定数 4,717人+加配総数909人を超えた5,626人という配置状況であります。

 その結果、1学級当たりの児童生徒数で見ますと、この 5月1日現在で、小学校で28.3人、中学校では 31.4人となっておりまして、教員1人当たりの児童生徒数で見ますと小学校 16.8人、中学校13.9人と政令指定都市中でトップであります。学級規模の状況もそこにございますように、 30人以下学級の比率が小で62.3%、中で 51.4%。31人から35人の学級が小で 30.4%、中で18%。36人以上が小で 7.3%、中で30.6%となっております。全国状況と同じように中学校で学級規模の大きい学級の比率が高くなっているということでございます。

 このほか小学校におきまして京都市の自立措置として 6年生で専科教育(教科担任制)を実施しております。159校に専科のための非常勤講師、京都市ではスクールサポーターと呼んでおりますが、音楽、図工、理科などの教科を中心に中学校免許を持つ専門性の高い人材を任用する。また、中学校の教員が小・中連携で兼務をしている学校は 14校ございまして、それらを合わせまして全校で専科教育を実施しているところであります。また、先ほど説明が京都府さんでございましたように、小学校 1、2年段階でのTTのための非常勤講師の配置もいただいており、これらも合わせ、できるだけ子供の実態に即したきめ細かい指導の充実に取り組んでいるところでございます。

 また、さらにこれは別途措置いただいております特別支援教育の特別支援員、あるいは理科支援員、学校運営協議会に伴う配置等々、現場にとりましては大きな支援でありまして、理科支援、残念ながら仕分け対象になっておりますが、大変現場ではありがたがられております。基礎定数、加配定数、その他のサポート体制を含めまして、組織体としての学校力、マネジメント機能を最大限に発揮できる教員配置の在り方をぜひご検討いただきたいと思っております。少人数学級の効果という点でございますが、これは京都市では先ほど申し上げましたように、市民、保護者の強い要望がございました。学校現場からも熱望されておりました。実施後も大変保護者の方に喜ばれております。教員からもきめ細かい指導といった教科指導の側面だけでなく生徒指導、向き合う時間の確保等々、言われているようなことで期待もされております。

 学力面ということになりますと、これはトータルとしまして、京都市も含めた京都府全体が全国でもトップクラスを占めるということの要因の 1つには、当然、少人数指導、少人数学級があろうと思います。また、不登校の状況、資料は挙げさせていただいておりませんが、小学校で見ますと、京都市では平成 12年から15年の間は0.41%という比率で横ばいでございましたが、小 2で35人学級を導入しました平成16年以降、一貫して減少する。平成 22年段階では0.23%までに減少しております。中学校も同様であります。もともと低学年は不登校率は、当然低いわけですが、学年別に見ましてもすべてで減少しています。とりわけ平成 17年度以降で見ますと、5、6年生の減少率が非常に高い状況がございまして、これらも低学年段階からのきめ細かな指導の積み上げが効果を発揮してきているのではないかなと考えております。

 ただ、学力であり、不登校であり、教育効果を検証するための変動要因が多過ぎます。かつて京都市も国立教育研究所の調査に協力させていただきましたが、児童生徒の実態であり、教師の指導力、学級規模、小・中一貫、さらには家庭の教育力等々さまざまな要因が絡み、統計的に有意な結果を求めることはなかなか困難でした。個人的な考えではありますが、学級編成基準、基礎定数の問題にかかわる部分については、直接的な教育効果ということよりも前提として必要なのだというコンセンサスを進めることが、まずは必要なのかと考えております。とはいえ、エヴィデンスベース、極めて重要でありますし、本市としても学習確認プログラム、あるいは小学校のジョイントプログラムというのを実施、豊富なデータもございますので、今後も詳細な分析を行っていきたいと考えております。

 最後に、現場の立場から申し上げますと、基礎定数の改善と同時に京都市も就学援助率 8割という学校がございます。生徒指導であり、発達障害への支援であり、また、174校のコミュニティ・スクールがある。地域連携、さまざまな教育課題の解決のための教員配置も不可欠であります。定数を取り巻く状況が大震災もあり、また、後年度負担の問題など重々承知はしておりますが、加配定数の充実も欠かせません。仮に今後、小 2等へ拡大していけるとしましても、今年度のように指導方法の工夫、改善、加配の活用が同じように行われるということについては憂慮するところであります。

 学校総体としてのマンパワー、学校力を高めることが必要であります。京都市では総数は小・中学校全体で 30人程度学級を実施できる数をいただいているわけですけれども、現実の配置の中で、現在実施しております習熟度、あるいは TTをすべて削って30人学級に注ぎ込むということは事実上不可能であります。学校の裁量が十分に発揮できるのは当然ですし、それと同時にやはり定数の一定の拡大というのは不可欠であります。とりわけ中学校での対応は喫緊の課題であります。中学校の学級規模が大きいことは全国共通でありますが、新学習指導要領のもとで必然的に授業時間数増への対応も求められます。基礎定数と新たな加配措置も含めて、どう組み合わせていくのかという点についての具体的な検討が必要になってこようかと考えております。

 最後に、いつも市長が申し上げておりますが、教育が真に尊ばれる社会をともにつくり出す。そのために学校現場のモチベーションを高める。同時に組織体としての学校力を高めることができる観点から、学級規模、教員配置の総合的な検討をお願いして終わらせていただきます。以上でございます。ありがとうございました。

【木村主査】  ありがとうございました。

 それでは、最後になりますが、向日市立西ノ岡中学校長の盛永先生からプレゼンテーションをお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【盛永氏】  向日市立西ノ岡中学校で校長をしています盛永です。向日市は今ご説明があった京都市に隣接しておりまして、 54,000人ぐらいの市です。

 それでは、説明させていただきます。最初に、1「本校の生徒数と少人数学級」についてご覧ください。 (1)「生徒数の推移」は、表のとおりです。私は21年度から着任しており、今、2年と3カ月たっております。( 2)は「本年度の生徒数・学級数」です。先ほど京都府教育委員会から説明された京都式をどのように活用しているかということですが、この間、少人数学級を選択しています。本校は 120人ぐらいの規模が毎年続いておりまして、そういう中で少人数学級を活用することにより実学級の規模は、1年生は 38.7人が29.0人に、2年生は 39.7人が29.8人に、3年生はそのままで 35.3人というクラス規模になっております。

 その表の下に写真がありますが、左側は、3年生の学級の様子です。右側が、約30人の学級です。本校では、6人で班をつくっているので、真ん中があいています。6人×5班になっていて、教室内はかなりゆったりとした空間になっています。

 次に、2の「京都式少人数教育による指導方法の工夫」ですが、先ほど京都府の説明がありましたが、京都式をどのように活用しているかという学校現場の実際です。最初、本校は、数学、英語を、習熟度による2学級3展開の少人数授業として進めておりました。その際、生徒の希望を加味したクラス編成を実施していました。ただし、希望を加味することで、純粋に習熟度に分かれないという課題もありました。また、本校の規模ですと、2学級で 80人程になるわけですが、その80人を3コースに分けると、平均して1つのコースが 27人と多く、人数だけでいえば、少人数学級とほとんど変わらないということがありました。

 そういう中で、生徒指導上、厳しい状況でもありましたので、21年度から少人数学級、それと、ティームティーチングを組み合わせて取り組んでいるところです。数学、英語ともTT指導をやっているわけですけれども、TTは、必要に応じて、1学級2展開できるメリットもあります。単元によって、また、進行状況によって、普通教室の隣にある少人数教室も活用した授業が可能で、非常に柔軟な対応ができます。本校では、さらに、持ち時間の少ない実技教科の先生も、数学、英語の授業に入り、学習支援を行っています。また、学生ボランティアも活用して学習に苦戦している生徒への支援を行っています。一番下の写真は、TTの様子です。

 続けて裏面をご覧ください。3の「効果と課題」です。こうした京都式による少人数教育で、学校現場では一体どんな効果があったのかということですが、 (1)「生徒指導上の効果」は随分あったなと考えております。アの「不登校生徒の変化」ですが、 22年度には20年度の出現率の3分の1以下となり、全国平均の 2.8%を大きく下回ることとなりましたので、少人数学級をベースにした少人数教育の推進はかなり効果があったと考えています。

 それから、「暴力行為の発生件数」ですが、ご承知のとおり、暴力行為には、対教師、生徒間、対人、器物物損と4つあるのですが、 20年度は、残念ながら対教師暴力が多い年となりました。意図的なガラス等の器物損壊も多い年でした。その後、徐々に落ちつきまして、 22年度は、遊んでいてガラスを割ってしまったという器物損壊も含めても発生件数は大きく減少しました。これも少人数学級の効果のひとつだと考えています。

 次に、(2)の「学習指導上の効果」です。効果を検証する方法の1つは、全国学力・学習状況調査や先ほど京都府教育委員会の説明がありました学力診断テスト、また、 CRTとかNRTといった標準学力検査等々で見るわけですが、受験対象者が違うということもあり、少人数教育のどの指導方法・指導体制の効果なのかは、判断が難しいところがあります。

 自校での定期テストや各教科の評価・評定の分布については、当然、これは自分たちが毎年実施しているものですから、学力が伸びていることを実感しています。

 あと、中学校ですので、当然、進路のことを意識しています。例えば、定時制、通信制、就職、進路未定者の総数の推移ですが、この2年間で半減いたしました。京都府の調査では、定時制、通信制、就職、進路未定者の大きな理由が、不登校、学力問題、生徒指導問題という調査結果もありますので、ある意味、学校の状況を反映した指標になります。進路面の結果からも学校の実態に即した京都式の組み合わせが成果をもたらしているということになります。

 続けていきます。(3)の「学級経営上の効果」も見られます。先生方のアンケートからは、生徒・保護者との懇談、相談が非常に増えたことがわかります。まさしく「子どもと向き合う時間」が増えたと思います。また、担任の先生方に、 40人と30人で何が違うのかと聞いたら、「責任とゆとり」を強く感じるようになったと言われました。 40人の時よりも30人の時の方が、子どもたちに対する責任感を強く感じると言われたことが印象的です。併せて、すごくゆとりが生まれたといわれました。当然、ゆとりの中には事務量の軽減もあります。本校のような 120人ぐらいの規模の学校では、少人数学級を適用すると40人が 30人になるわけで、物理的な面だけでなく、精神的な面でも随分効果があるということを感じます。

 次に、(4)の「生徒アンケートの結果」です。3年生の卒業時に、習熟度の少人数授業と少人数数学級&ティームティーチングの両方の指導方法を経験した生徒約 120名に簡単な質問と自由記述から構成されるアンケートを実施しました。その結果、25%の生徒が少人数授業(習熟度)がよかったと振り返りました。少人数学級とティームティーチングがよかった答えた生徒は 70%、どちらとも言えないのが5%でした。私が、全員の自由記述を読んで一番印象に残ったのは、多くの生徒が、少人数学級&ティームティーチングのよさを「質問がしやすい」と回答したことでした。思春期の子どもたちにとって、T2の先生に、わからないことをすぐに聞けるということは、大きな意味を持っているということに気づかされました。わからないことをそのままにすることが学力の低下をもたらすとしたら、少人数でしかも質問がしやすいのでよかったということを多数の生徒が書いていることに注目したいと思います。そうした子どもたちの思いを含めて少人数学級またはTTの複数指導の意味合いがあるのかなと感じました。

 それから、(5)「教員アンケート」も実施しました。 21年5月、22年 5月です。本校の職員数は30名弱なのですが、自由記述で分類したら、アの「生徒の変化」(学習意欲、授業への参加・集中度、学習規律、質問や発表者の人数、教え合い、教員と生徒及び生徒間のコミュニケーションなど)、イの「指導方法の変化」(机間指導、個に応じた指導、言語活動の充実など)、ウの「教室使用方法の変化」(空間のゆとり、机のレイアウト、掲示物の工夫など)のいずれも、プラス面の成果がみられ、すべての教員が京都式の工夫で助かっているという回答が得られました。

 次に、(6)の課題ですが、アの「学力向上の検証方法」に難しさがあります。大きな学力調査は、一時点での定点観測というか、スナップショットのところがあって、経年比較や追跡調査が難しい。それと、本校の生徒規模ですと、例えば下位層の生徒が数人受験しないだけで平均点がかなり変化します。そういうことでなかなかデータを示すことが難しいなと感じます。また、当該学年の通塾率等の差異が影響している可能性なども考慮すると、疑似相関のこともあり、簡単に因果関係を示せないと感じます。

 あと、イの「少人数学級を選択した時の、教員の持ち時間の増加の問題」です。数学や英語は加配措置されているのですが、それ以外の7教科の先生方は持ち時間が増加します。つまり、本校は、1・2年の2学年が少人数学級を実施している関係で、例えば国語や社会などの先生方の持ち時間が大きく増加し、軒並み 20時間以上の授業を担当しています。その中で、日々頑張ってくれているのが実態です。

 あと、4の「少人数学級等を選択した理由」を説明します。京都式少人数教育で、なぜ、現在活用している指導方法・指導体制を選択したのか、ということです。先ずは、何と言っても、 (1)本校の「生徒の実態と生徒数(学年規模)」です。もし、本校が120人規模でなければ、今の指導方法・指導体制を選んでいたかどうかはわかりません。ですから、現場に自由な裁量権があるというのは非常にありがたいことです。

 それから、(2)「人的資源(スタッフ)」という人の問題です。1時間に2学級3展開というのは、3人の教員が同時に授業をしているということになります。いろいろな学校があると思うのですが、同一時間にそれぞれ、基礎、標準、発展を教えることのできる指導力のある教員が3人いたら成立するのですけれども、なかなか難しい実態もあり、教員の力量を見定めての判断になります。

 それから、(3)「自校の課題解決」ですが、先ほど言いましたが、生徒指導上の厳しい状況を優先的に解決したいということで、少人数学級等を活用したことになります。

 次に、(4)「学力が低位な生徒への対応を含めた学力向上」ということですが、数学、英語は少人数学級とTTを組み合わせました。少人数学級の選択は、あとで気づくのですが、数学、英語以外の7教科、つまり、国語、社会、理科等も、すべて少人数で授業していることになります。つまり、どの教科も、 40人ではなく30人で授業しているメリットがあります。

 それから、(5)「生徒と教員の意見(モチベーション)」というのは、常に、生徒の意見や思い、教員の意見をモニタリングし、アンケートなどをとりながら進めている結果だということです。生徒や保護者の思いやニーズに即し、また、教員の当事者意識、モチベーションを高めながら進めることで、少しぐらい持ち時間が増えても頑張ろうという気持ちにつながっていると思います。

 それから、(6)「学級を基盤とした弾力的な学習集団編成の意義」ですが、学級集団の状態は非常に学力に反映します。そのため、学級の機能を生かしながら、特にクラス編成で工夫した点を生かしながら、少人数学級をベースに、複数指導、1学級2分割などの組み合わせを考えています。

 また、(7)「先行研究を参考」にしています。国立教育政策研究所の山森主任研究官の研究報告等は、非常に実践的で参考になり、それを校内研究会で学習しながら、来年度はこういう構想で具体化しようかなどと議論しています。

 (8)は「校長が柔軟に選択・判断できることの意義」ですが、京都式のおかげで、実態に即した柔軟な対応、人的資源の組み合わせを校長に委ねてもらっていることの意義は極めて大きいです。当然、市町教育委員会との協議の結果ですけれども、このことの意義は強調したいと思います。判断した結果は、校長が最終責任をとらなければなりませんが、子どもたちのためにいろいろな組み合わせができることのメリットは大きいです。

 あと、特別支援教育の関係です。先ほどの発表でもありましたけれども、通常の学級にも発達障がいの子どもたちがいます。こうした生徒への指導で、TT等が非常に効果的に作用していることに気がつきました。 (9)として書くなら、通常の学級における発達障がい生徒への対応が非常に有効だということだと思います。

 最後の5ですが、来年度、中学校は新学習指導要領が完全実施されます。とりわけ言語活動の充実を通して思考力・判断力・表現力を育成することが重要視されています。それから私たちが東日本大震災から学んだことの1つに、正解がない、正解はひとつでない、変化の激しい社会での対応力・問題解決能力などの力をどのように育てるのかということが喫緊の課題であることを明らかにしたことだと思います。そうした力をつけるためには、ある程度クラスサイズが小さくて、大学で行われているゼミ形式みたいな学習スタイルも重要になってくると感じています。 100人のゼミはやっぱり考えられない。少人数での授業で、こういう思考力・判断力・表現力、そして想定外を乗り越える力をつけていかなければいけないのではないかなと思います。ちょうど時間かと思います。どうも失礼しました。

【木村主査】  ありがとうございました。

 以上でヒアリングを終わります。大変多様なプレゼンテーションがございましたし、いろいろなことを考えさせられました。御質問、御意見等ありましたら、時間が多少残っていますのでどうぞ。小川先生。

【小川副主査】  たくさん質問したいのですけれども、時間がないので 1点だけ。京都府教育委員会の提出資料の3ページの京都式少人数教育の選択状況に関係して少しお聞きしたいと思います。この作業部会では、定数とか加配を弾力化する場合、どういうやり方があるのかを検討することも 1つの課題としてあると思っていますが、京都府のこのように市町村に一括配当して、その配当された中で市町村が自由裁量でどういうふうな活用をするかという、こういう手法は恐らく定数や加配の弾力化をする際に考えられる方法の一つかと思います。常識的というか、私の最初の予想は、日本のような教科学習と生徒指導を一緒にやる形態をとる日本では、基本的にはそういう加配が来たとき、自由に使っていいという定数が来たときには、学級集団をきちっとつくっていくということなので、学級規模を減らしながら、しかし、それだけでは学力には直接結びつかないので、学級を小さくしながらいろいろな少人数とか、 TTとかということをやるのが一般的かなと。大体それが常識的な選択肢かなと思って見ていたんですけれども、そうしたら 3ページのところは、そういう予想と全く逆で、少人数学級のみが19.7、 TTと少人数学級双方を選択したのが39.4で、あと少人数授業、 TTということで少人数学級を選択しないのが40.9、この 2つが出てきて、これは私の予想と全然違う結果なんですね。それで聞きたいのは、少人数学級のみを選択した 19.7%と少人数授業、TTのみを選択した 40.9、この2つの間で地域とか学校が抱えている問題とか特徴というものが何か見られるのでしょうか。

【木村主査】  いかがでしょうか。

【小橋氏】  少人数学級を選択する場合は、これは小学校のデータですけれども、生活習慣、学習習慣が確立していない子供たちがいて、なかなか授業が安定しないという場合に選択する場合が多いのですけれども、ただ、地域によってはかなり低位層といいますか、課題の大きい子がいる場合は、単にスケールを小さくするだけではなかなか難しい。その場合はティームティーチングの先生をつけて個別に指導する必要があるということがありまして、必ずしも、学級経営が大変だから少人数学級にするだけではなくて、いろいろなケースによって選択している、そのように考えております。

【木村主査】  ほかに。どうぞ、小澤さん。

【小澤委員】  京都府の京都府、京都市の実践からまず少しお聞きしたいのですけれども、全国連合小学校長会でもそれぞれの該当の校長先生方からいろいろな同様の状況を聞いておりますが、この京都府の実践の中で現地現場主義、 1つの言葉で表現すればそういうお話がございましたね。結局は、これは子供の状況、それから、いわゆる各学校に配属されている教師の指導力、これをそれぞれの状況の中で校長ないしは市町村教育委員会が、その様子を見ながら加配等配置していく、そうとらえてよろしいのでしょうか。

【小橋氏】  かつては、この加配につきましては、京都府教育委員会は市町村からヒアリングをしまして、どの学校にどういうスタイルの加配をつけるかを決定して配当した時代がございました。そうではなく、定数を一括して市町村に配当いたしまして、市町村と学校間で、それぞれの学校でどういうスタイルが一番いいのかということを考えていただくということがありますので、一旦配当しますと府教委は関与しない。できるだけ現場に近いところで判断いただく、そういう考え方でございます。

【小澤委員】  はい。

【木村主査】  どうぞ。

【小澤委員】  私、今日の言葉の中で、キーワードとして弾力的な運用という話がありましたけれども、この弾力的な運用の中身は、今、京都がやられているような実践が非常に大きいのではないかなと思います。 1つは、学力面だけではなくて、各学級、あるいは学びの集団である子供の生活指導等も含めて、これに対して少人数学級等どうやって運用していくか。それに当たっては校長、市町村教委の判断が非常に大きいのではないかなと思います。現場の状況を知っているのはその 2つのマターしかないと思うんですね。

 続いて、山形県の状況について質問していいでしょうか。この山形県のさんさんプラン、これについても成果について県の校長のほうからも聞いておりますが、きょうの資料の中の 2ページの新学習指導要領で教育内容が整備された。これとのさんさんプランなのですが、いわゆる新学習指導要領の主軸というのは言語活動を中核とした、いわゆる国語科、中核教科である国語科をもとにした言語活動の推進にあると思うんですね。言語活動の推進、新学習指導要領の趣旨、これを推進するためにさんさんプランが非常に有効であるというような見方でよろしいのでしょうか。

【木村主査】  いかがでしょうか。

【酒井氏】  結論から申しますと非常に有効であると思っております。先ほどの発表の中にもありましたけれども、学級母体の人数が少ないことによって、また、発表がしやすい学級のピークがあることによって、より多くの発言が引き出せますし、あるいは子供たちの伸び伸びとした表現、そういったことも引き出すことができると思います。それは国語教科にとらわれず、各教科の中でも非常に子供たちが心を分かち合って発言をし、思考力を高めていく、そういった面から見てもぜひ少人数が有効であると考えております。

【小澤委員】  はい。

【木村主査】  どうぞ。

【小澤委員】  私も同様に思っておりまして、前回の本会の議論でもありましたけれども、いわゆる新学習指導要領の趣旨を徹底するために、これを推進するためにはどうしても少人数指導の中で表現力とか思考力とか、そういうものを試す場面を設定せざるを得ないと思います。

 もう1点、山形県のこれだけの成果が上がるというのは、教員の質があると思うんですね。教員の質で、山形県総体としては例えば小学校の教員の新規採用教員数というのはどのぐらいなのか。それからもう一つは、教職経験年数の平均経験年数、どのくらいの数値データなのか少しお聞きしたいのですが。

【木村主査】  おわかりでしょうか。

【酒井氏】  昨年度の小学校の新規採用は 90名でございました。それから、経験年数ですけれども、平均年齢で申し上げますと48歳、 50歳近くになっているところでございます。

【木村主査】  どうぞ。

【小澤委員】  東京都の場合は小学校だけで毎年 1,700人以上の小学校教員を採用しておりまして、平均年齢が40歳以下になりつつあります。そういう状況の中でも、逆に言えばそういう状況であるからこそ、少人数学級、極めて教師の負担をそういう意味で少なく、向き合う時間を確保するためにということもありましょうし、今お話があったように平均年齢 48歳というと、多分、教職経験年数20年近いと思うんですね。この集団の中でこそ、やはり少人数の成果がこれだけ上がる。その両方の要素というのはやっぱり見ていく必要があるかなと思っています。

 以上でございます。

【木村主査】  ほかに。多少時間を延長してもよろしいと思いますので、どうぞ。

【藤崎委員】  質問なのですが、盛永校長先生のお話を聞いて、すみません、藤沢市の実態ですと、実は主任を置いておりませんで、小学校において校長先生がリーダーシップを発揮するのが非常に難しい状態になっています。例えば授業の方向にしてもすべての教員と等しく話し合いをして方向性を決めるというような状況が今後も見込まれるのですけれども、小・中とは少し違うかもしれませんが、少人数学級を実現した場合、教員の数が増えます。そういった中で校長先生に問われるそのリーダーシップとか、あるいは現場でこのようなことを努力されたとか、そのような点を教えていただければありがたいなと思います。

【盛永氏】  難しいんですけれども、私は学校を前進させるのは、やっぱり、今ご指摘のとおり、校長の責任と覚悟なのだろうなと思っています。ですから、それぞれの現場の子どもの実態とか、職員の思い、それから、保護者の思いを重ね合わせて、当然、学校づくりを考えるわけですけれども、ますます、校長のリーダーシップが必要になっていると思います。本当に覚悟を決めて臨まないといけないなということを常日ごろ思っております。

【藤崎委員】  ありがとうございます。

【木村主査】  ありがとうございました。

 どうぞ。

【中川委員】  加配教員定数についてですけれども、かつては京都府では同和加配という加配が相当数あったと思うのですけれども、現状はどうなんでしょうか、教えてください。

【小橋氏】  同和加配につきましては、国からの同和加配の定数と京都府単独での定数をつけておりましたけれども、現在はその府単費につきましてはすべてなくなってございまして、国からいわゆる支援加配をいただいていますので、それを活用して一般対策の中で対応している、そういうことでございます。

【中川委員】  まだ配当されているわけですか。

【小橋氏】  いえ、同和加配という形で特定したものはございませんので、いわゆる生徒指導を含めての支援加配というのがございますので、それを活用して一般対策の中で対応しているということでございます。

【木村主査】  ありがとうございました。

 大変多様なお話がございました。多分まだご質問もたくさんあろうかと思いますが、時間が参りましたので本日はこれで終わりたいと思います。今日質問したかったけれども出来なかったという委員の方は事務局に文面で出していただければと思います。個々にプレゼンテーターにコンタクトされるとややこしいことになりますので、事務局でまとめていただいて、それをプレゼンターの方に送っていただいてお答えをいただくというふうにしたいと思います。

 それからもう一つ。お話しだけでデータがないケースがありました。プレゼンテーションがございました。小松先生のプレゼンテーションにはデータがはありませんでしたし、京都市の発表にしてもありませんでしたので、後日ぜひデータを出していただきたいと思います。後日、皆で考えるときの参考になろうかと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、少し時間が過ぎまして、ほんとうはもう少しやりたいのですが、私の後の予定が詰まっていますので恐れ入りますが、これで切らせていただきたいと思います。それでは、谷合さん、事務連絡がありましたら、お願いします。

【谷合企画官】  それでは、先ほど冒頭ご説明しましたが、資料 4に次回以降の予定が掲載されております。資料4の 1枚目の裏側をごらんいただきますと、第3回とございまして、次回は 7月1日、金曜日。時間は13時から 17時ということでございまして、本日は時間が足りなかったのですが、次回はかなり長時間をいただいているところでございます。なお、場所が本日と異なりまして、三田共用会議所第三特別会議室を予定しています。次回もヒアリングを予定しております。

 以上でございます。

【木村主査】  次回は4時間?

【谷合企画官】  はい。

【木村主査】  ということで、よろしくお願いします。それから、今、小川先生とお話ししたのですが、中教審では何時でも短時間にヒアリングを詰め込む傾向があります。そうするとなかなか議論ができないので、その辺はぜひ考えていただきたいと思います。そうすると会議の回数が増えるという問題はあるかと思いますが、この問題は非常に重要な問題ですから、徹底的に意見を戦わせたほうがいいと思います。恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。

 それでは、本日はどうもありがとうございました。また次回、よろしくお願いいたします。  

―― 了 ――

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