キャリア教育における外部人材活用等に関する調査研究協力者会議(第3回) 議事要旨

1.日時

平成23年4月21日(木曜日)10時~12時

2.場所

中央合同庁舎7号館西館9階903号室

3.出席者

委員

鹿嶋委員、渡辺委員、生重委員、岩田委員、長田委員、江川委員、清川委員、清水委員、竹花委員、西山委員、野上委員、廣田委員、星野委員

文部科学省

山中初等中等教育局長、德久大臣官房審議官、白間児童生徒課長、春山児童生徒課課長補佐、藤田生徒指導調査官、堀江指導調査係長、酒井指導調査係専門職 他

オブザーバー

厚生労働省・浅野室長、厚生労働省・伊藤室長補佐、経済産業省・林企画官、文部科学省・袖山高校教育改革PTリーダー

4.議事要旨

(座長の御発言-□ 委員の御発言-○ 事務局(オブザーバー)の発言-●)

(1)  キャリア・コンサルタントによるキャリア教育の取組について

  • 資料1-1、資料1-2をもとに江川委員からキャリア・コンサルタントによるキャリア教育の取組事例について説明がなされた。

質疑応答の概要は以下の通り。

○私自身も、校内ハローワークということで、毎年30業種の方をお呼びして、同様な形のものを行っている。こういった施策とうまくマッチすれば良い。
 学校側の問題ということで指摘があったが、学校側のキャリア教育に対する理解度に随分格差がある。学校側がキャリア教育を理解していないということは指摘のとおりかもしれない。ただ、うまく整理をしていくと一生懸命やっていたことが実はキャリア教育だったということに気づいて、組織が動き出すということがある。
 また、外部から見て、学校組織に入り込みにくいという指摘があった。例えば進路指導主任会でアナウンスをするなど、中長期的に入っていかないと、飛び込みでは難しい。

○キャリア・コンサルティングの方が企業などで活躍されるというのは、企業側の方で仕事について悩まれている方、将来のことを考えながら不安を持って迷っている方がキャリア・コンサルタントの方に相談していくという場合が多いかと思う。キャリア・コンサルティングのキャリア教育へのかかわり方を考えていかないと、学校へのアプローチはうまくいかない。我々も10年前から経験しているが、中小企業が学校へ行っても、「メッキのことなんてわからなくてもいい」「医者か弁護士かが良い」「メッキ屋さんは危ないから結構です」などと言われた。世界の頂点をきわめた方や特別な方ばかりを教室に招いて、そういう方々がすごいんだということを強調してしまう。であれば「うちのお父さんや隣のおじさんはどうなんだろう」となってしまい、「その人はすごくない」ということになり兼ねない不安がある。世界の頂点をきわめた方や特別な方にやっていただくのも重要だが、「うちのお父さんも隣のおじさんの工場もすごいんだ」という、身近で目立たないけれども、私たちのためにすごいことをしてくれているおじさんがいるんだというところを見せていかなければならない。逆に、ちょっと悩んでいる方、これからの将来をどうしようかなと思っている方が、将来的に学校の講師になっていくような機会がどんどん増えていくと、子供たちの仕事観というのが育つと思う。迷っている大人をどんどん少なくしていく機会につなげていけるではないかと期待する。

□このキャリア教室で、キャリア・コンサルタントの方々は、どのような役割を果たしたか。
○司会進行。司会をして、時々インタビューをし、「なぜこの仕事を選んだか」とか、「この仕事をしてよかったなと思う点は」などといった質問を投げかけるといった役目をした。
○大阪では、一つの学校に、1か月に14日間、キャリア・コンサルタントに、生徒のキャリア・カウンセリングや先生のサポートという形で入っていただいた。キャリア・コンサルタントという職業柄、様々なノウハウを駆使して、その学校の地域のネットワークづくりに入ってもらったり、子供たち一人一人に寄り添って、子供たちのキャリア形成に支援をするという形で入ってもらったりした。その中の仕事の一つとして、外部人材を招へいしての講演会の開催もされ、コンサルタントの意義がわかった。そういう意味で、江川委員は一部の活動を御発表されたと思うが、このようなイベント的なものへの関与以外にも、学校の中に入っていって、学校の組織体制も含めて人的な関係も構築していくようなノウハウをもお持ちだと思うので、学校側もキャリア・コンサルタントの方々をもっと受け入れるような仕組みづくりが必要と感じている。
 後で生重委員の話もあると思うが、このようなコンサルタントの資質を持った方がコーディネーターとして活躍されれば、より活動が前に進むのではないかと思っている。

○学校側はキャリア教育を理解していないという指摘は確かにそうだと思う。先生方が多様な理解をされているので、理解していないという指摘も事実である。だから、これは私どもがもっと頑張らなければならないと思うが、キャリア教育への認識があいまいな学校に、キャリア・コンサルタントの方々が入っていくために特例講習をやっていらっしゃると伺うが、その特例講習の具体的な中身を教えていただきたい。また外部から人が入っていくとき、支援なのか協働なのか連携なのか、どのような立場でキャリア・コンサルタントの皆様が学校に入っていくべきだと、特例講習では指導しているのか。
○特例講習とは全く別で、全く別の技能検定に絡む講習の会場に標準レベルのキャリア・コンサルタントの方たちが大勢集まるので、併せてアンケートを実施したということ。

○なぜこのような質問をしたかというと、キャリア・コンサルタントというのは、もともと、対象が大人であるということ。
○産業界から見ると一番もったいないと思うのが、七五三現象。ようやく社会に出ても、3年以内に職業を変えてしまう。企業にとっても大変なことだと認識している。ただその原因をたどると学校における人材育成が重要だとも考えている。

○キャリア・コンサルタントは、小学校に対するキャリア教育でのメニュー、中学校でのメニュー、高校でのメニューなどという一つのメニューをお持ちか。社会の中で生き抜く力などを、児童生徒を相手に育てるということの中に、江川委員の団体があると思うが、いかがか。先ほど、司会などがキャリア・コンサルタントの役割なのだとおっしゃったが本当か。司会であるなら、別の適当な人をおいておけば良いと思う。キャリア・コンサルタントの対象は本来社会人だったと思うが、児童・生徒のキャリア発達段階や学校と社会との接続などについてどのようにお考えか。
○キャリア・コンサルティング協議会は、養成講座などを行っている団体であり、我々自体でそのようなプログラムを用意しているわけではない。個々のキャリア・コンサルタント方々と連携しながら、個々に対応している。

○そうすると普遍性はないということで個々の能力に任せられているということなのか。
○しかり。今のところ、各団体でメニューに当たるようなものはあるかもしれないが、キャリア・コンサルティング協議会としてのノウハウはない。

(2)  キャリア教育コーディネーターによるキャリア教育の取組について

・  資料2をもとに生重委員からキャリア教育コーディネーターによるキャリア教育の取組事例について説明がなされた。

質疑応答の概要は以下の通り。

○こういう組織があるということについて、認識不足がある。御提供いただいた「みんなの生涯学習」という中に都内の幾つかの高校の取組も書かれているが、キャリア教育コーディネーターの方がいて、どのような役割をしているのかということを、都内の高等学校や様々な機関が知っているかというと、そこにまず問題がある。
○私はキャリア教育コーディネーターとして都内で23校に関わったが、都立杉並高校の場合は、技術者が立ち上げたNPOの方たちが深く関わっていた。その他にも、幾つかの団体や個人が、キャリア教育コーディネーターとして都立高校に入った。ただ全都的に考えると全ての高校にキャリア教育コーディネーターが入ったわけではないし、都の3か年の施策で予算がなくなり、今は、個人的な先生との信頼関係のもとで支援をしている。様々な企業を御紹介するなどしてきたが、全ての高校でそのようにできているわけではない。
○今回の御発表で意義としては非常によく理解した。キャリア・コンサルタントの話もあったが、我々はそのような様々な機関があるということをよく知らない。だから、それを教育委員会等で周知していただければ、キャリア教育などをやっていこうと考える際に、まず相談していけると思う。本日のお話を伺って、非常に重要な御指摘を頂いた。学校のニーズや実態に合わせて、そして、学校に寄り添ってということであれば、是非様々な形で活用させていただきたい。現場の先生方としてもいろいろと悩んでいる部分があるし、また親御さんもいろいろな力を持っている。また、地域でも様々な関係機関や企業などが協力したいとおっしゃっている。それらを結びつけてくれる方々がいらっしゃるということは、極めて重要だと思う。是非広げていってもらいたい。

□東京都の高校は今、奉仕体験をすべての高校で1週間程度取り組むということとなっていたかと思うが、杉並高校では、奉仕体験の生徒の体験場所は、今まで先生方が自力で開拓したということか。
○職員が教育委員会へ行ったり地域の関係機関へ行ったり、あるいは企業に行ったりして、できるところを探している。先ほど御紹介いただいたような機関があるということで、大変有り難い。生徒の活動にマッチするようなコーディネートをしていただければ、東京都としては大変有効に機能していくと思う。

○教えていただきたいが、キャリア教育コーディネーターの組織は、民間の組織として立ち上げたということか。
○しかり。

○もともとは経産省の事業としての3年間の仕事があって、その後民間として始められたと解釈していいか。
○いや、逆に、委員会が立ち上がって全国の研修が始まる前に、地域自立型のキャリアを理解していくような取り組みとして、地域自立民間活用型プロジェクトということで、全国28地域で経済産業省が、産業と子供の学びというところで取り組みをされた。
 その中で、学校との信頼関係がうまくできていく中で、やはりキャリア教育は必要であり、そこから生まれた声が、こういうものをつないでいく人材が必要であるということ。このような気運が経産省で高まってきた。一方、文科省型の地域の学校支援のNPOを通して、地域の学校の支援本部をやってきているという、その両方がマッチして、3か年において、キャリア教育コーディネーターというのはどういう人材を目指せばいいかということの実証や検証を、経済産業省からやらせてもらった。経産省から最初に言われていたことは、予算事業が終わったらもうなくなるというのではなく、自分たちが地に足をつけて日本の教育に寄与できる人材を育てなさいということ。その上で、研究を3年間重ねて実証して、この認定を民間でつくるというところに至った。
○わかりました。

○今の御発表のとおり、キャリア教育コーディネーターは全国で展開されていて、大阪にも3つのそういったキャリア教育コーディネーターの研修団体がある。やはりそれぞれに特長があって、1団体は企業向けにも強く、1団体は大学生を活用したキャリア教育であり、また1団体は、小学校・中学校に根差した教育という形で、それぞれ特長を生かしたコーディネーター研修をされている。今まさに、その機運が醸成していて、我々自身もキャリア教育をうまく遂行するためには、学校と企業を取りもつ橋渡し役が必要であり、それがまさにキャリア教育コーディネーターであって、この有用性について痛感している。
 ただ、この人たちが、今、53名おり、今年は60数名が認定を受けられて、どんどん増えているが、これらの人を受け入れるマーケットがあるかと言われると、それはキャリア・コンサルタントもそうだが、マーケットの創成というのがそれに追いついていない。マーケットはあるが、そのマーケットの所在が実際はあるのに、そこに情報がいっていないので、それがマーケットとして認識をされていないという現状がある。この現状を打破するためには、行政がトップダウンで行うという方法もある。ただ、学校はトップダウンには抵抗があるというお話が先ほどあったが、それは行政と、今まで御発表のあった民間で動いている我々がうまくリンクをしてやっていかないといけない。その一つに、学校支援地域本部というような新しい文科省の動きもあるので、そのあたり、やりたい、やるべきである、やらねばならないという当事者がここに集まっている。素材はたくさんあるので、それを整理して、どこに何をやればいいのか、そして、それを動かすためにはだれが動くべきなのか、そのあたりをうまく整理できれば、今持っているいろんなノウハウが円滑に動いていくのではないかと、御発表を聞いて感じた。

○先ほどの御発表の中で、例えば、学校教育の場合、地域には教育委員会があるが、教育委員会はどういう役割を果たすのか、いろいろな団体との関係というのはどのようにお考えになっているか。
 もう1点は、イギリスの場合は、学校の教師がキャリア・コーディネーターとしての訓練を受ける。ところが、日本ではそうではない。今、伺っていると、キャリア教育コーディネーターは53名とのこと。関心のある人や地域の人がやってくださるというのは有り難いし、地域が学校と一体化するというのも重要だし、地域の人とPTAが一緒になっていく、この理念はとても重要なことなので、別の人が行ってはならないとは思わないが、とりあえずキャリア教育の概念から言うと、学校の教師が動かないとならない。教師をキャリア教育コーディネーターとして育てるということはお考えになっていないのか。
○1名だけ、中学校の先生が現在の資格認定者の中にいるが、できれば学校の先生にも、我々のキャリア教育コーディネーターの概念を学んでいただいて、企業の方たちとも出会っていただけるような、そういう研修や資格の出し方もやっていきたいと思っている。私の発表の中にも何度も出てきたが、教育の現場は、学校の先生がやはり主でやるもの。これを大事にした上で、地域の中に眠っている様々な素材を情報化、体現化していき、それをつなげていきたい。学校の先生方が学校教育に特化できる安心した場をつくるというのが学校支援地域本部の機能であり、先生の相談相手になったり寄り添うパートナーになったりしながら情報を入れていくことができる、そして、人との出会いをつくっていくということでキャリア教育コーディネーターが存在すると考えているし、また先生自らがキャリアアップのために我々のような資格を取ってくださるのは、とてもすばらしいことではないか。

○キャリア教育のことを学ぶというのは、キャリアアップのためではない。教師が教師であるためにだと思う。
○そういう意味で、教育大学とか教職課程になぜキャリア教育に関する科目設定がないのか。教科教育についてはプロとして一流の実力をつけているが、それを教科横断的であったり、横断的に考えるキャリア教育であったりというものを学ぶ機会が、大学生の時代、あるいは大学院生の時代に、果たして科目設定としてなされているのか。その段階で学生が、キャリア教育を自分たちの仕事の中の一部であるという認識を持って卒業できたら、我々外部の人材が入っていくときにより入りやすいのではないかと考えている。
○御指摘の通りであり、既存の教員養成の中にキャリア教育というのがどれだけきちんと位置づけられているか、それから、その中に何を含めているか。多分、キャリア教育のことを一言も語らずに終わるということはないはず。ただ、その中でどういう内容を含めていくのかというところの発想は、いまだに、進路指導的、出口指導的な発想が余り入れかわることなく授業が構成されていて、学校現場に出ていくことが現状としてある。そのあたりのところをもっと構造的に入れていかなくてはならない。具体的には、コーディネート機能というような能力が求められるということを入れていく必要があると思う。
 私が担当している教職大学院などは、新構想という発想もあるので、新しい今のありように応じた授業内容になっている。しかしながら、必ずしもそれが教員資格という部分で統一されているかというと、大きな課題である。

○今のやり取りを聞き、日本には日本型のキャリア教育の姿があっていいと思っている。過年度、若者自立挑戦プランというのがあり、例えば、農水だとか内閣府だとか、従来、人材育成に直接かかわる文科省と厚労省、経済産業省以外にも、日本の将来を担うべき人材育成には社会を挙げて総がかりでやっていこうということを目指した。その根底はキャリア教育だった。過日も清川委員がおっしゃったが、社会を挙げてだと、「協力」とかそういう言葉では御し切れない。「協働」していくシステムを創っていく必要がある。目の前の生徒をどうするかというテーマだと、社会の話をしなくてはならないが、社会経験が少ない教員の補完部分を、我々産業界などがやる必要がある。一番のポイントは、PTA。けがをするようなところには子供を出すなという親や、教員が「このお子さんはこういう特質を持っていて、こういう特性を持っているから、デザインを学ばせてはどうか」と言っているのに、「役所へ行け、銀行員になれ」と言う親がいる。このあたりの原因を考えると、やはり教育界と地域・社会や産業界が協働していかなければならないと感じる。社会総がかりでやって行く必要があるとなれば、その最初の精神は「協働」。「協力」とか「支援」ではないというところを、この場で確認しておきたい。

(3)  主な論点(座長提案)について議論

・  資料3をもとに、座長から座長提案という形で「主な論点」について整理がなされた。

その後の自由討議の概要は以下の通り。

○野上委員がおっしゃったことと全く同感だが、キャリア教育というのはだれがやるのか、だれの責任なのか。学校だけではないと思う。産業界、企業は、次の世代の産業を担っていく人材をどういうふうに育成するかについて、当然無関心ではあり得ないし、職場体験活動やインターンシップというのは、企業の社会的な責任として、企業の事業活動の中で行っていく。ここで書いてあることは、すべてとても大事で、議論しなくてはならないが、全て学校からの視点で整理されているので、主体はもちろん学校、教育委員会ではあるが、同時に企業、産業団体であり、そしてキャリア・コンサルタントやキャリア教育コーディネーター、その他専門的な人たちがというように、少しスコープを広げた方が面白い議論ができると思う。
□今、とても大事な指摘を頂いた。私が教育関係者なので、論点について、学校の立場から整理をさせていただいたが、今御指摘のように、キャリア教育は学校だけが行うものではないということも、是非重要な視点として入れていきたい。

○学校の中で学校がどういう部分を担うかということを明確にしていかないと、何がどれぐらい足りなくて、どのような体制にするかがやはり見えない。そういうことで言うと、例えば、教員養成の中に、どれぐらいのキャリア教育の情報が盛り込まれているのが好ましいかというところを整理しておくと、教員養成などを行っているところで活用できると思う。
○キャリア教育については、いろいろな立場の方がおり、皆が賛成というわけではない。一つの勢力は、教育学の専門家。こういうことは学校で教えるべきことではないというふうに強く主張されておられる方々が、多分まだ教育学者の主流を占めているのではないか。
 もう一つは、キャリア教育をして子供たちはどのようになるかということも、よく議論しなければいけないと思う。確かに企業からすると、今の学校は信頼できない、我々にも議論に参加させてもらいたいという要望があるのは事実だが、企業が少しやってみて、子供たちがどのようになるのか、ということをよく考えてみないといけない。
 何よりも大事なことは、今の子供たちが、キャリア教育をどう受けとめてくれるか。その前提として、子供たちの現状を見る限り、まずは勉強が大事。小学生でも塾に行って、東京都内では勉強ができる人が私学に行く。そして、親御さんは、いい高校に行かせて、いい大学に行かせる。そうすれば、いい企業に入れる、あるいは役人になれる。この前提は、社会全体としては崩れつつあるようだが、親の意識としてはほとんど崩れていない。そういう中で、子供たちはやはり勉強して、勉強ができるようになるということが最も重要。恐らく学校の中でもそのように思って勉強していると思う。
 そうすると、勉強ができない子は、「社会で役に立たない子」という意識を持つ。そのような子供たちに、一体私たちは親としても社会としても学校としても、どういうメッセージを今投げているのか、これまで投げてきたのか、これから投げていかなくてはならないのかということを考えないといけない。今のままでは、多分親も子供たちも納得して、「これは面白い、これでいろいろ、自分が社会に出てからのことを考えるきっかけにしよう」とはならないのではないかと思う。それを考えて位置づけさせていくには、やはり文部科学省の力が必要で、企業が幾ら頑張ると言っても、それは言っているだけにすぎない。文部科学省が本当にキャリア教育を生かして、現在の教育活動を見直す視点とするためにはどうするのかということを示してもらわなくては困る。すべての子供たちがそういうメッセージを受けとめてない。そういうのを幾らやってみても中途半端になってしまう。文部科学省が一体この問題を本気になって、どのように考えるのかということが、かなり大きな比重を占めるような気がしてならない。
 これらのことも議論するということを踏まえて、当座として有用な方法という具体的な視点が大事で、今の生重委員や江川委員の努力を全国に広げるにはどうしたらいいのか。学校のイニシアチブという点もそうだし、企業のイニシアチブという点がうまく融合するような仕組み、全国に幾つか、皆様方のコーディネーターやコンサルタントの力量がうまく集約されていって、学校が、あそこへ相談してみようというようなものが2つ3つでき上がってくれば、これはかなり大きく違ってくる。このような機関がまた公的な援助というか、支援のもとにあるということで、学校の方でも信頼をして相談をしていける。そういうような大きな仕組みが全国に幾つかでき上がることが大事だと思う。そういう仕掛けを早めに構想してみて、今の根本的な議論もしつつ具体的な議論もしていかないと少しも進まないのではないかという気がしている。教育学にとっても教育行政にとっても大きな問題である、民間の企業が子供たちを育てていくのにどう関わるのかという点についても、非常に大きな取組のように思えてならない。是非とも中途半端に終わらせないようなものになればと思う。
●国の立場として、「中学校のキャリア教育の手引き」、「小学校のキャリア教育の手引き」、教育委員会に対するパンフレットなども作っている。
 今年の1月の中教審答申「今後の学校におけるキャリア教育、職業教育の在り方」で、今の日本の学校にとってキャリア教育は非常に重要だというメッセージを伝えている。
 我々としても10年ぐらい言い続けてきており、その中で小学校ではこうして欲しいとか、中学校、高校でも言ってきた。また「総合的学習の時間」が小学校、中学校、高校でつくられたり、高校の総合学科で「産業社会と人間」という科目があったりして、文部科学省の立場からいくと、これでもう学校現場の中からキャリア教育をやらなきゃならない、やろうというのが盛り上がるはずだが、盛り上がらないのはなぜなのか。
 中学校で1週間以上は是非、職業体験を地域の中でしてほしいとしており、2割は実施しているが、8割は実施していないということも現実。問題はどこにあるのか。
 それから、外からの働きかけに対する対応。窓口になるのは教育委員会であり、学校であり、学校の先生だが、教育委員会については、例えば、都道府県の教育委員会などは、それぞれの県で連携をする組織ができている。市町村の教育委員会もできる。また学校の中にも多分つくっている。でも、実際先生がそれに対応して動いているかというと、課題がある。
 今までの教育だけではもう駄目で、外部の方の力を使った教育を展開しないと今の子供たちの教育が十分できないという警鐘は鳴らし続けているが、それがなかなか実際の学校の教育で分かっていただけない。あるいは、はねつけられている。そういう状態があることは現実だから、中から我々も変えようとしているし、これらのことで一生懸命考え方を変えてくれということを言い続けているが、そこが変わらない。

○逆に聞くが、中学校で職場体験やキャリア教育、企業の出前授業は、どの科目でやれと言っておられるのか。今、それぞれの授業時間というのは決められていて、学校のやれる範囲というのは極めて限られている。確かに、いろいろな資料が文科省から出ているが、キャリア教育についてだけではなく、ほかにも多くの資料が出ている。その中で、こういう中身で、総合的な学習の時間を使って、1年に3回でもいいからやりましょう、そういう指導がなされているとは思えない。そういう指導がなされれば、文科省が言えば、言うことを聞くと思う。でも、そういう指導は一切なされてない。ほかにもたくさんやることがある中で、あれもこれも大事と言っているから進まないというのが本質だと思う。そこを文科省が、まずはっきりと認識しなければ、この話は先に進まないと申し上げている。
●まさに総合的な学習の時間が若干削られたが、ここの時間を使って、恐らく多くのところがキャリア教育をやっている。ただ、消費者教育の会議も、国のレベルの会議がある。消費者教育の会議に行けば、消費者教育でやれと言う人がいる。環境教育の会議もある。環境教育のところに行けば、環境教育もやらなければならない。金融教育が必要だと言えば確かにそのとおりで、多くのものを総合的にやらなければならない。単元ごとの、教科ごとの教育じゃない教育をしなければならないというのはあるので、おっしゃるように、キャリア教育というのをもう少し、消費者でも環境でも奉仕活動でも、すべてをのみ込むような概念として捉えることはできないか。例えば高校では、今、総合学科にしかない「産業社会と人間」というのを、全部の普通科の生徒にもやらせるということで埋め込むとか、小・中でも、総合的学習の時間というものを、それぞれに任せるというよりは、ある時間帯は必ずやるようにするとかすれば、皆さん真面目なのでそのようになると思う。だから、逆を言えば、中からの要求が盛り上がってこない、盛り上がらざるを得ないようなものをつくり出した方がいいのかどうかということを考えなければならない。

○ただ、今までのキャリア教育というのは、必ずしも総合的な学習の時間だけではなく、ものづくりは理科教育を中心に行われているので、それは決して否定されるものではないだろうと思う。今、局長がおっしゃったように、何か新しい、例えば、「社会との協働教室」とか、そのような一つの科目を設けてしまえば、現場は一気に大きく変わるだろうと思う。しかし、学校の現場でそうしたものがやれるような余裕があるのかどうか。せっかく勉強の時間を増やそうと言ったのに、またこれも増やすのかということになる。そうなるとやはり現場の先生方も厳しいだろうから、はっきりしたことが申し上げられない。しかし、どこかで何か、学校がやらざるを得ないような仕掛けをつくらないと、これ以上広げるのも難しいのではないかという気がしてならない。
●関連情報について、サイドデータとして報告する。
 小学校、中学校、高等学校とも特別活動の時間というのがある。文科省としては、週に一度必ず学活(学級活動。高校ではロングホームルーム)の時間を開設しなさいと言っている。その中で中学校では、全部で18項目、必ずフォローしなくてはならない項目がある。その中に学業と進路という柱があり、その柱については、すべての学校で必ずやることになっている。それについて時間の設定はないが、週に一度学活を行う中でカバーする項目として義務づけている。
 だから、中学、高等学校については、学業と進路という柱について必ずやることになっているということが建前の一つとしてある。ただ、十分な時間がそこに設定されているかどうかはわからない。
 また、職場体験活動だが、今、局長から説明したとおり、学校の裁量によって様々な柱立てがあるが、現状としては、8割以上の中学校が、総合的な学習の時間を活用して職場体験活動を行っている。

□竹花委員から御指摘があった非常に大きな問題、これは従前から学校の進路指導、キャリア教育が抱えてきており、今日的に見てもなかなか解決に至ってない。このようなことを念頭に置きながら、当面取り組むべきことも大事だという御指摘もあった。そのことも含めて、次回以降、6月には中間的な取りまとめをすることを視野に御議論を頂きたい。

 

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

電話番号:03-5253-4111