学校ネットパトロールに関する調査研究協力者会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成22年10月6日(水曜日) 10時30分~12時

2.場所

文部科学省 旧庁舎第2議室

3.議題

  1. 座長の選出について
  2. 会議運営規則(案)について
  3. 諸課題に関する意見交換について
  4. その他

4.出席者

委員

藤川座長、大久保委員、角田委員、竹内委員、水木委員、水谷委員

文部科学省

磯谷児童生徒課長、郷治生徒指導室長、清重児童生徒課課長補佐 他

オブザーバー

勝山青少年課長、三好視学官

5.議事要旨

開会

議事

(1)座長の選出及び会議運営規則(案)の了承があった。
(2)諸課題に関する各委員からの意見交換があった。

1.会議運営規則について

【委員】協議の結果、会議については、基本的に公開することとする。ただし、人事に関する事項、座長の選任等を含め、公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると座長が認める場合には、非公開とする場合がある。また、会議の傍聴を希望する方は、あらかじめ登録をいただく。
 配付資料は、原則として配付するが、公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると座長が認める場合には、全部もしくは一部を提供しない場合がある。座長は会議の議事要旨を作成し、公開することとする。

2.意見交換

(1)事務局説明

【事務局】近年、携帯電話が子どもたちの間にものすごい勢いで普及し、また、インターネットの技術も進歩したことを背景に、いわゆるコミュニティサイトをはじめとするサイバー空間の状況が多様化をしている現実がある。
 数年前には、いわゆる学校裏サイトや掲示板に、特定の子どもに対する誹謗中傷が書かれるケースなど、ネット上のいじめがクローズアップされた。これを受け、ネット上のいじめとはそもそもどのようなものか、あるいは、実際に起きたときの対処法に関するマニュアルや啓蒙・普及のためのパンフレットを作成し、各学校に配布してきた。その結果、いわゆる掲示板における誹謗中傷に関する学校側の認識も浸透し、保護者を含め、子どもたちも意識をするようになり、全体としてはおさまってきている印象を持っている。
 一方、技術が進歩し、例えばSNSのような非公開系のコミュニティサイト、あるいはプロフの問題など、従来のように発見次第削除するといった対応ではとらまえにくい問題が出てきている。あるいは、プロフに個人情報を安易に流すことで、子どもたちが犯罪行為や違法行為に誘引されるという可能性が高まるという危険性も指摘されている。
 こうした新たな課題が生じていることにより、学校現場が苦労している状況を踏まえて、本調査研究協力者会議では、いわゆる学校ネットパトロールについて現状と課題を整理いただきたい。
 合わせて、表面的な対応や問題が起こってからの対処ではなく、もう少し問題を構造的にとらえていただき、例えば、巡視、発見、対処、教育・啓蒙といった4つの観点から整理いただき、提言をお願いしたい。
 例えば、巡視については、いかにして効率のよい効果的な巡視ができるのか、について検討をお願いしたい。発見については、SNSのようなものについてどのように発見していくか、各都道府県での取組なども参考に有効な手だてについて検討いただきたい。対処については、様々なケースを想定して、都道府県の取組も参考に、対処方針を作っていただきたい。そして、教育・啓発については、子どもたち自身、保護者、教員、さらには地域社会で、ネットあるいはサイバー空間におけるいじめの問題、犯罪行為の防止等も含めて、どのように教育・啓蒙を図っていくかについて検討いただきたい。

(2)委員からの意見発表

【委員】2007年度から、文部科学省の取組である「ネット安全安心全国推進会議」に関わり、様々な取組をしてきた。当時と比較すると、さまざまな対応が進んできたが、トラブル、犯罪がなくなったわけではなく、新しい問題も出てきている。平成22年3月には、「青少年が利用するコミュニティサイトに関する実態調査」を行い、その結果、さまざまな問題のある投稿が見られることが分かった。特に、いじめだけではなく、自傷・自殺行為についての書き込みや、顔写真、個人情報等を不用意に載せているものが非常に多いこと、あるいは、子どもたちが飲酒・喫煙をしている様子が写真入りで掲載されているなど、生徒指導にかかわる重要な問題が見られた。
 これは学校だけの課題ではないと考えるが、携帯・ネットの問題は家庭に任せればいいという状況ではない。学校における指導を基本として、生徒指導上、授業では賄えない部分について、各地でさまざまな試行錯誤の中、ネットパトロールが行われていると聞いている。今回は、学校現場の事情に詳しい方から、現場の生の状況をお出しいただき、また、学校あるいは教育委員会側からは見えづらいことについては、ご専門の委員からご示唆をいただきたい。
 また、総務省や警察庁を含め、内閣府の取りまとめにより、青少年インターネット環境整備法の見直しに向けた議論も進んでいる。この場だけで解決できない問題については、例えば総務省に検討をお願いするなど、問題提起できればと思っている。

【委員】インターネットの相談に長く携わってきた。子どもの相談は5年ほど前から受けており、昨年は、東京都からの委託を受け、電話相談も請け負ってきたので、ネットのトラブルについては相当の話を聞いてきた。学校現場には詳しくないと思われがちだが、年間数十回の講演の際、校長や副校長、生徒指導主事、養護教諭、児童生徒、保護者の生の声を聞くことがあり、「先生には言えないけど」ということで、教員が知らないようなSNSを見つけるといったケースもある。そのうち、半分以上はアドバイスをしてすぐに解決するが、単に個人情報を削除して解決とはならない、インターネットの問題ではない現実の問題が残っているケースもあり、それにどう対応するかは教員の腕の見せどころである。
 今年の取組では、読売新聞と協力して「ネットトラブル克服手記コンクール」を実施する。11月に受賞作品を発表するが、相談もできない中、書くことで自分の思いをつづる、こういった取組は来年以降も続けたいと考えている。また、今年度は経済産業省からの委託で、ネットのトラブルの事例、プロフのDVD上映、フィルタリングの必要性について全国でセミナーを開催することになっている。

【委員】子どもたちは何かトラブルがあっても、教師に相談する割合が非常に低い。もちろん改善も必要だが、非常に重要な点である。
 また、簡単に解決する問題もあり、何もかも深刻にとらえる必要はないわけであるが、一方で、ネットだけの問題ではなく現実のトラブルの問題が残っているという指摘も重要な点である。生徒指導上の問題と捉えた場合、当然、学校の人間関係の中で起こっている問題であり、ネットだけで区切れる問題ではない。ネット以外の面も含めて、問題解決にどうつなげたらいいのかについては、深めていくことが必要だろう。

【委員】教育委員会で、ネット安全パトロールに関する委託事業を担当してきた。事業に取り組む中で、教育委員会だけでネット安全パトロールをやってしまうと、何か犯罪性のあった場合に、教育委員会から警察へ、あるいは学校から警察へという連結がうまくいかないという点が重要であると感じた。和歌山県では、県警の中にある青少年課とサイバー犯罪対策室が協力してやっていく形を取っているため、学校に通う子どもだけではなく、18歳未満の青少年を対象としているのが特徴であるが、幾つかの部局を越えた協力体制で青少年のネット上でのいろいろなトラブルとかを発見しながら解決していくことをしていかなければいけない。
 また、プロフやブログの中でも会員制のSNSのようなものに対して、どうしても外から入っていくということができなかった。運営会社に連絡して調査を依頼しても、そこまではできないという回答が返ってきてしまう。このような点は、今後の課題だろう。
 もう一つは、ネット上のトラブルの根っこには、学校生活の中での人間関係が起因していることが多い。校長など、先生方には、学校内での子どもたちの人間関係をよく見て欲しいとお願いするとともに、先生方には携帯電話を使って実際に体験してもらっている。その結果、こんなことができるのか、という現場の声が出てきて、何も知らなかった先生が状況を知って、子どもたちへの指導につなげることができた。こういった取組は効果的であった。

【委員】個人持ちの携帯電話でパトロールする場合が多いのだろうが、どこまで個人の責任でやるべきことなのか、難しいところがある。実態として、それぞれの地域で特に会員制のSNSのパトロールをどのように行っているのかについては、率直に出していただきたい。

【委員】平成18年まで中学校で生徒指導主事を勤め、翌年から市の教育委員会に入り、生徒指導全般を担当してきた。教育委員会への保護者からの相談は、学校だけではなかなか解決できない事例が多く、また、その半分以上に携帯電話が何らかの形で絡んでいたことに問題意識を感じ、携帯電話についての委員会を平成19年に立ち上げた。アンケート調査を実施し、例えば携帯電話の所持率は、中学校3年生の女子では9割超、男子では6割程度であるという実態が分かった。そのことで、所持率が9割を超えているのに、携帯電話の所持を認めていないからと言って十分な実態を調べないというわけにはいかないのではないか、という判断から対応を始めることができた。続いて、フィルタリングに関する調査も行い、その結果、平成19年で中学生の実施率は12%であった。これは、全小中学生へのプリント配布、教職員に対する研修会等を毎年実施してきたが、それでも実施率は現在でも5割強である。ある携帯電話会社が公表した数字によると、中学生のフィルタリングの実施率は約68%とされており、我が市では極端に低いのかと思って調べたところ、子どもは親の携帯を勝手に使っており、それが数字にあらわれていないことが分かった。携帯電話会社は中学生と名乗って契約している子どもの携帯について、数値を出しているが、実際、子どもたちは親の携帯を使っている。例えば、緊急調査の結果によると、中学2年生の女子では1割超、小学校3年生、4年生では、女子・男子ともに4割近くの子どもが親の携帯を使っていた。単に数字だけで判断することにも課題があるだろう。
 それから、先生に相談できない子どもがいるということは、よく耳にする。なぜ相談できないのかと言えば、先生方は過剰に反応してしまい、親へ連絡され、携帯を取り上げられるなど大変なことになるので言わない。つまり、子どもたちの情報を仕入れるためには、安心して相談してもらうための教員の一言が必要であることが分かってきた。
 また、フィルタリングや、ネット上のなりすましメールができない設定など、様々な対応をしたが、結局は心の問題で、子どもたちの心にどうアピールしていくかだと感じる。一方、子どもたちは、携帯電話のいい事例もつらい事例もいっぱい知っている。そこで、子どもたちの活動として、中学生サミットを開き、携帯電話の問題に取り組んでいる。子どもたちの目線を入れずに、大人が勝手にこれはだめ、これはいいという判断をすると、間違った方向に行くのではないかと危惧している。

【委員】親の携帯という論点は重要。また、ネットパトロールについて中学生や高校生の意見も何かうまい形で聞ければ、より効果的な方法が見つかるのかもしれない。

【委員】平成17年まで中学校の現場で勤め、平成18年からは神奈川県警察に出向し、2年間、少年の健全育成に携わってきた。横浜では、平成17年の後半あたりから、生徒指導主事の協議会で掲示板におけるトラブルが報告され始め、暴力に発展するような行為や、背景にある携帯のネットの問題について、現場の学校の先生と警察の連携から取組がスタートした。また、平成18年7月に、出会い系サイト等対策プロジェクトが神奈川県警察の少年育成課の中に発足し、出会い系サイトの対策・取組と、掲示板の問題の二本柱で対策を進めてきた。これは学校と警察の関係者が集まって協議する会議で、学校の先生が誹謗中傷事案で被害をこうむった子から相談を受けた場合に迅速に対応できるよう、削除要請のための具体的なマニュアルを平成18年10月に出し、平成19年の春には、プロフィールサイトでのトラブルに対応するマニュアルを出した。平成19年あたりから学校と警察の連携の中に市教委も加わって、現場の学校、県警察、市教委と、現場レベルから連携の輪がだんだん大きくなっていった。
 市教委が平成19年11月に実施した、小学校4年生以上中学校3年生までの児童生徒と保護者を対象にしたアンケート調査によると、中学生で携帯電話所持率が8割、小学生が5割であり、フィルタリングの普及は、中学校で約3割、小学校で5割ういう状況であった。ただ、この当時、横浜では掲示板サイトは下火であり、プロフィールサイトの問題が中心になっており、ますます見えにくくなってきた部分があった。そこで、携帯ネットの問題は学校、警察、教育委員会だけの対応では解決できる問題ではなく、社会全体で考え、子どもたちが正しい使い方をしっかりできるような枠組みをつくっていこうということで、「携帯ネットから子どもを守る連絡会議」を立ち上げ、社会を構成する大人が、それぞれの立場でどういう役割を果たすべきかという提言を出した。中身は保護と育成の二本柱で、保護の面ではフィルタリングの普及促進、育成の面では情報モラル教育の推進の取組を進めている。フィルタリングの普及推進については、夏休み前の対応が重要で、保護者と子どもと担任の面談の場で、教員の先生方にローラー作戦的に協力していただいて、非常にいい結果が出た。実態調査によると、学校での教育・啓発があった場合、チェーンメールや個人情報の掲載といった部分についても、正しい認識が子どもに広がっているという結果も出たため、情報モラル教育の推進も大きな効果があることを確認した。ただし、情報モラル教育の推進については、学校側も経験がない、教材がないということで、市教委がさまざまなNPO団体であるとか事業者に働きかけ、教材や授業の進め方に関する講師を派遣し、現場の先生方一人一人にノウハウを持ち帰っていただくといった取組を進めてきた。結果として、携帯の問題、ネット絡みの問題が大きな問題に発展して、市教委のほうに寄せられることは、実感としては減ってきているというふうに感じている。
 もう一つ、先生に相談できないという話に関連して、横浜では、生徒指導の中心になっている生徒指導専任教諭に対して、夏休み2日間の研修を行っている。その内容は教育相談であり、危機管理演習と、ロールプレーを中心にしたカウンセリング演習を2本柱として、携帯の問題に限らず取り組んでいただいている。子どもたちの相談の中からこういう問題が把握できるようになってきたと我々もとらえているが、一方、実際に相談で吸い上げることができているのかには不安もある。ここでの議論を現場の先生方にフィードバックしていきたい。

【委員】平成21年度まで県教育委員会に在籍していた。三重県では、県の取組として、約1,000万を投じて民間委託での検索を行った。委託先からデータをもらい、県の教育委員会では実際に検索し、学校別に問題を出して、学校で解決できない場合はカウンセラーと警察OBである生徒指導特別指導員を派遣して対策を取ろうと考えていた。
 検索結果としては、三重県だけで1万件、全ての公立の中学校と高等学校において非公式サイトを発見できた。これをランク分けして削除依頼をしていくが、業者に依頼できないものがあり、15%程度は削除できなかった。また、掲示板タイプの書き込みは減っていったが、プロフに付随する書き込みは減っていなかった。また、先ほどからのパスワードの問題については、パスワードがかかっているのは小さな仲間うちでの書き込みであることが多く、先生はクラブ活動も含めて学校で見てくださいと言っている。
 また、プロフサイトの問題が大きくなってきており、リストを出して、すぐに学校に送り、保護者に見せるようにしている。早期に止める対応をしないと、過激な画像を出すことでポイントがたまるようなサイトがあるため、これは偏差値の高い学校にも随分広がっている。
 悩みとしては、いつまでも検索し続けなければならないのかということ。今年も公費を使っており、来年も県費をつけていくことを見込んでいるが、永久にお金を使っていかなければならないのかは考えている。人権教育に力を入れていたある市の例として、子どもたちからの訴えには決して怒らず、非公式サイトに行っていることを責めずに相談に乗っていたところがあり、その市だけはひどい書き込みがゼロであった。あらかじめ教育・啓発をするということと、先生が解決してくれるという認識を子どもが持つことが重要であると、先生にはお願いしているところである。
 最後に、講演を行う際には、具体的な質問に答えられる者でないと効果が薄いため、現場を知っている者を必ず連れて行くことが大切であると感じた。
 このほか、子どもの携帯依存について保護者からの相談が多い。これは実態が分からないので、アンケートを取って、何らかのプログラムを作ることを考えている。

【委員】過激な画像でポイントがたまるサイトの話があったが、どういう類のサイトで問題が起こりやすいか、パトロールをする人たちが知識を共有することも意味がある。
 それから、携帯依存症については、ネットパトロールに直接かかわるかどうか定かではないが、関連する問題として視野に入れていかなくてはいけない。

【委員】続いて、事務局より検討事項の確認を改めてお願いしたい。

【事務局】この問題はさまざまな観点からご議論いただく必要があるが、考え方の整理の一案として、いわゆる巡視、発見、対処、教育・啓発という一つの縦軸の流れを考えている。これ以外のご意見もいただき、また、縦軸に対する横軸の関係についてもご検討いただきたい。
 例えば巡視については、いわゆる外部の民間企業やNPO団体が担っている事例、教育委員会で独自に専従の方を雇っている事例、各学校でお願いしている事例など様々あり、また、取組を全くしていない例などもあるため、何らかのモデルがないかというご要望もある状況である。
 事務局からの提案としては、本日いただいたご意見に加え、更なる情報収集の観点からヒアリング等も加えることも考えられる。たとえば、実際に監視活動を行っている民間企業や、そういった企業の連絡組織、教育・啓発に関する教材を作成している事例を紹介できる方などからお伺いしてはどうかと考えている。また、教育委員会に調査をかけた結果、収集した事例なども並行して分析いただけるとありがたい。何かご意見があれば事務局までご連絡いただきたい。

閉会

 

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室