暴力行為のない学校づくり研究会(平成22年度)(第6回) 議事要旨

1.日時

平成23年2月22日(火曜日)10時から12時

2.場所

文部科学省5階 5F4会議室

3.議題

  1. 協議

4.出席者

委員

尾木座長、石橋委員、桶谷委員、木村委員、佐々木委員、中村委員、西山委員

文部科学省

磯谷児童生徒課長、郷治生徒指導室長 他

5.議事要旨

開会

議事

【委員】暴力行為のない学校づくり研究会の報告書には、三つの意味があると考えている。これまでも文科省の様々な資料の中に暴力行為のことが盛り込まれてきたが、今回、まとめて取り上げるということは、一つには最近の暴力行為をめぐる新しい傾向が出てきており、例えば、低年齢化ということで、小学校における暴力行為が大きく問題として取り上げられるようになった。また、言葉の暴力、ネットを通じての暴力も新しい傾向として取り上げられている。そうした最近の状況を受けて、暴力行為のない学校づくりをいかに進めるかについて、最近の状況の分析も含めて、この報告書の中で提示するというのが一つの意味だろうと思う。二つ目の意味は、生徒指導提要がまとめられたことを踏まえ、小・中・高の接続を重視する指導や新しい状況を踏まえた学校の指導体制の在り方などについて、若い先生方にとって指導の手掛かりになるような情報提供ができればよい。三つ目は、1980年代の後半から90年代にかけて、日本の多くの学校で暴力行為の対処に苦慮する学校が出現した時期があった。その時期は各学校が一枚岩になって、あるいは学校全体に規律を確立してというような言葉のもとに生徒指導の充実を図った。それは非常に効果を上げたが、開発的な生徒指導に結びつく面が弱かったのではないのかと今思っており、そのことがいじめや不登校の深刻化という問題に関わっていったのではないかと思っている。できれば本報告書の中では、暴力行為のない学校づくりについての現在の状況に対する問題提起や示唆を盛り込むと同時に、そのことが開発的生徒指導に結び付くということも盛り込めればと思っている。

【委員】「はじめに」の部分について、今、新しい先生が相当増え、昭和50年代の荒れを実感されていない先生方が大勢を占めてきた中で、共通理解であるとか、一枚岩であるとかを言葉で言っても先生方になかなか呼応してもらえないことがある。そういった中で、求めていくべきことを、単に暴力防止ではなく、本来の学校の姿はどうあるべきなのかということも踏まえた中で表せたらよいのではないかと感じた。

【委員】暴力行為の背景の「その背景には、児童虐待、インターネット、携帯電話の普及に伴うトラブル」という記載について、ピンポイント的というか、虐待だけを特化して挙げるのはいかがか。

【委員】暴力行為の背景で一番大きいのは生育、生活環境の変化である。そうした一般的なことを触れた上で、最近の傾向として児童虐待やデートDVなどの記載が必要かどうかも検討する必要があると思う。

【事務局】「4年連続で増加」という表現は、平成18年度から18、19、20、21と、3年連続増加という見方もあるので、「平成18年以来、連続して」とか「増加傾向が続く」などにしておかなければならない。

【委員】本研究会の流れを要約した内容を第2段落で書いているが、暴力に至る児童生徒の抱える問題であるとか、暴力行為の発生した学校における要因についても検討協議しているので、そこは少し丁寧に記述した方がよいと思う。

【委員】第3段落の「発達障害を抱える児童生徒」という表現は、発達障害だけを取り出す形にするより「発達障害など配慮を要する」というような表現の方がよい。

【委員】発達障害の診断が出ないケースが非常に多いので、「発達の課題を抱える支援の必要な子ども」や、「配慮の必要な子ども」といった表現がよいかもしれない。

【事務局】発達障害を使う場合は、「発達障害のある」という表現が無難かと思う。

【委員】用語として発達障害が一般的に発達障害という意味概念を伴った言葉として使われており、「発達上の課題」といった言葉が広い概念になると思う。意味内容の範囲に応じて、用語は厳密に使った方がよいと思う。

【委員】ここは広く「発達上の課題」という用語にして、そこに発達障害も含めて、後で具体的に発達障害についても触れるという方向がよいと考えるが、どうか。

【委員】実際、暴れている子どもは、学校の教員が発達上の課題があるのではないかと推測する子どもであって、発達障害の診断がされているケースはむしろ少ない。今は発達障害自体が限定されていることもある。「発達上の課題」というような広く捉えた表現の方がよいのではないかと思う。

【事務局】「生徒指導主事」の表現について、小学校の生徒指導を主に担当する教員に合わせていただいてよいか。

【委員】主事がいるところはいいが、必ずしも主事がいなくて、いろいろな方が担当することが多いので、国立教育政策研究所では生徒指導主担当者という言い方をして注をつけており、その方がよいかと思う。

【委員】「生徒指導主事」の表現について、国立教育政策研究所が「生徒指導主担当者」としたのも、それまでの通知や法規法令を吟味して整合性をとっているわけではなく、内容が「生徒指導主担当者」というのにふさわしかったから。文科省から出すものであれば、法規法令などと整合がとれればいい。無理に国立教育政策研究所の表現に合わせるのは少し慎重にした方がよいと思う。通知文の表現は、大抵「生徒指導主事等」となっていたように思う。

【委員】「生徒指導主事等」と書くにしろ、「主担当者」と書くにしろ、小学校において生徒指導の中心になって、ここで書かれているような役割を担うような、中心的な役割を担う者という注が必要である。

【委員】「等」とせず、ちょっと踏み込んで注記をしていただけるとよいと思う。

【委員】特に経験の少ない先生に知ってほしいのは、暴力行為を起こしている児童生徒は、その暴力行為を通して何かを語っている、あるいはサインを発している、自分の中にある課題を暴力という行為で表現している面があるということ。暴力行為という目に見える行為だけではない、様々な課題についても、やはりしっかり捉えて指導していく観点が必要である。それが、教育相談の重視や関係機関との連携に結び付いていくと思う。例えば、学級担任の指導と役割のところに、特に暴力行為の発生に関しては、児童生徒の抱える問題、あるいは暴力行為を通して訴えかけている点について、的確に把握することが求められるというよう文言を補って、暴力行為が発生した場合の指導において、暴力行為そのものに対する指導と同時に、踏み込んだ指導が重要だということを記述した方がよいと思う。

【委員】暴力行為が、児童生徒の発信するSOSともとれるという考え方だと、教育相談担当者とのタイアップということを何らかの形で含めておいた方がいい。それから、学校現場は生徒指導と教育相談が対立の構図になることがあるので、むしろ、協働することがよいということを示唆する感じの方がよい。

【委員】被害を受けた子どもの心理的なケアがないと、加害児童生徒の指導では不十分ではないか。被害を受けた子どもの痛みを加害児童生徒に理解させ、自分のやったことは大変な痛みを与えたということをしっかり認識させることこそが暴力行為をやめさせる最大の教育の手掛かりではないか。被害児童生徒のケアと、その痛みを加害児童生徒がよく理解するというプロセスの指導も必要だと思う。

【委員】非常に単純化して言うと、暴力行為が発生すると、その指導対応は、加害児童生徒への指導と被害児童生徒への指導と周辺にいる児童生徒への指導、それから、保護者に対しても、加害児童生徒の保護者に対する連携、被害を受けている児童生徒の保護者との連携、それから、周囲の保護者との連携が考えられる。その辺の区分けができていないと校内暴力が起こったときに学校の対応が混乱する。

【委員】そのことを「深刻化を防ぐ指導の展開」の「児童生徒への指導」の中に入れるのはどうか。ここには関連周辺の児童生徒の対応などが具体的に書かれている。

【委員】「暴力行為を起こした児童生徒」の「起こした」という表現は加害と被害が一緒になっているので、「暴力行為を起こした」と「暴力行為を受けた」という表現で書いて、暴力行為を受けた児童生徒への指導対応にも触れて、少し丁寧に書くとよいかもしれない。

【事務局】被害者に対する心のケアも含めて、加害者に対する指導、被害者に対する指導、その周辺に対する指導と分けた考え方を書いていただくことでよいか。

【委員】「保護者、地域、家庭機関との連携」のところにも、今の関連のことを少し書いた方がよいと思う。学校で暴力を受けた子どもの保護者が学校の指導に不満を持って、その後、尾を引くケースが意外に多いので、保護者に対しても十分な理解を得て、子どもに対する指導と同時に保護者に対する指導についても少し触れた方がよい。

【委員】被害を受けた子どもは怖くて学校に行けないのに、何で加害の子が学校に行っているんだ、学校は出席停止すべきではないかという論法で、保護者の方が訴えてくるケースが増えている。

【委員】一つの案としては、「保護者・地域・関係機関との連携」のところに、特に暴力行為を受けた児童生徒の保護者に対しては、学校がその子にどういう指導対応をし、どういった配慮をしているかを伝え、一体になって指導、対応に当たることが重要であるという文言を補うと、今の指摘に合う記述になると思う。

【委員】例えば子どもが眼鏡を割られた。その眼鏡の弁償をさせるべきだと保護者が訴える。学校はそれに応じて加害者に対して支払うように言うと、またそれがトラブルになる。学校は、加害者と被害者の間のトラブル対応を抱えている。

【委員】これは報告書なので、具体的なケースの記述は難しいと思うが、少なくとも今のようなことが起きていて、保護者の心情に立って学校で対応するとかなりの部分を防げる。ところが、こじれたケースではそれができていない。

【委員】被害を受けた子に対してのきめ細かい指導が意外に落ちていて、後でこじれるケースがあるので、保護者の立場に立っての対応が重要だということに少し触れていただくとよいと思う。

【委員】子どもたちの暴力には、虐待だけでなく、もっと幅広く、親子関係や家庭での要因・背景が学校に持ち込まれて表現されている。虐待に限らず、一見ちゃんとして見える親子であっても大きな背景になっている。

【委員】特に、経験年数が比較的少ない先生方は、目の前の暴力や器物損壊には目が行くが、その背後に今のような課題があることがよく見えない。それから、以前に比べると小さくなったが、中学生や高校生の場合は地域の若者などの交友関係が背後にあったりする。だから、今の子どもの課題が示されていると、特に校内研修などで、先生方が今までの指導はこうしなくてはいけないということにつながっていく。そのような記述になるといいと思う。

【委員】「課題を抱える児童生徒に対する指導の在り方」で「現代の子ども像の変容」とあるが、どのように、なぜ変容するのかが書かれ、どのような課題があって子どもが変容していくのかが分かった上で、「児童生徒への対応は年々難しくなっている」とつながるとよいのではないか。さらにそれが、次のアからエの各項目の中に重要な度合いに応じて記述されると先生方の指導に有効になるのではないか。

【委員】例えば、暴力を起こしたのは発達障害のある子どもだが、実はその背景で執拗にその子をからかった周囲がいて、被害を受けた本人が、実はその引き金を引いていたというときに、被害者、加害者、周囲の生徒というシンプルに分けただけの表現にせず、それに加えて、その背景をしっかり見ないといけないということを入れておかないと、これをマニュアル的に使って若い先生方が動かれるとまずいのかなと感じる。

【委員】発達障害のある児童生徒の対応や、学習への不適合の記述はとても重要だと思う。今、多くの学校にそういった児童生徒が入ってきており、ベテランの先生方でも対応をしたことがないので非常に戸惑いを感じている。

【委員】虐待でも、親が養育をしっかりしないと放任やネグレクトになり、いわゆる愛着障害で子どもが試し行動をしたり、発展して挑戦性反抗障害という暴力行為に広がっていくといことがある。発達障害の子どもと虐待の子どもは、現象面では非常に見分けにくい。虐待の記述の中に、いわゆる愛着障害的な記述も少し入れていただいたらと思う。

【委員】虐待について、身体的虐待から性的虐待という四つに分類された虐待のみという思い込みが入ってしまうと思うので、不適切な養育といった内容に少し広げた方がいいという印象を持った。

【委員】最近の子供たちの遊び方が非常に暴力的になっている。これは学校が学級経営なり生徒指導の中でしっかりやらなければならないと思うが、それをあおるようなマスコミや番組があり、学校としてはどうしようもない。そういう傾向があるので、どこかで触れてた方がいいのか、そこまで触れなくてもいいか。

【委員】家族関係の背景から来る暴力行為のところに、家庭の中で見ている親の振る舞い方等と併せて、見ているテレビ番組のことなども入れたらよいかと思う。

【事務局】例えば、「暴力行為のない学校の状態を維持していくため」の後半の記述に、統合的なバランス感覚を持てるような、人間関係づくりや集団づくりなどが、暴力を再び起こさない学校環境を維持するために必要だということも入れていただけると非常によい感じがする。

【委員】現在、笑いの文化が随分変化をしてきている。おもしろければ何でもいいというテレビ番組などの影響があるのかもしれないが、その辺に言及できたら、先生方にも考えてもらえる機会になるのではないかと思う。

【委員】もう一つは例えば「社会で許されない行為は学校でも許されない」という記述があるが、社会では許されているが、学校では許されないことがある。ゲームやテレビ番組等でなされていることが、そのまま学校に持ち込まれてはいけないということを具体的に書かないと、先生としては指導し切れないかもしれない。

【事務局】積極的な生徒指導が求められるという意味で、人間関係づくりや集団づくりが必要であるし、そういったことに地道に取り組むことによって、暴力行為の抑止力になるということも書ければよいかと思う。

【委員】遊びに暴力的・差別的な傾向があったりせず、本当の楽しい遊びは何だろうという指導を行う必要がある。その意味で学級指導や学級経営、特別活動などの領域に入ってくるかもしれないが、特に、幼稚園、小学校低学年からの積み重ねが非常に大きいと思う。

【委員】お願いしたいのは、発達障害がイコール暴力行為の原因のように思われないようにしてほしい。二次的に起きる一つのトラブルであり、障害の特性そのものがイコール原因ではないということ。

【委員】開発的な指導などに関わってくると思うが、「教科や道徳の授業及び学級経営の充実」のところにも特別活動の記述を加えるとよいと思う。

【委員】中高連携の記述があるが、高等学校の生徒指導の校内研修では、まず一つは学校差が極めて大きいのに驚く。生徒指導の話題が全然違う。それから体制も全然違う。関心が低い学校と、生徒指導を軸にして学校運営が回っている学校もある。そうした様々な学校に、我々が提案する内容を受け入れてもらうためには、中高連携を実効あるものにするのがかなり有効だと思う。それで、生徒指導だけをテーマにして中学と高校の生徒指導担当の方が集まって協議をすると、6~7割の確率で高校の先生から中学の先生に対して、課題のある生徒に進路指導を適切にすることが必要ではないかという発言を聞く。中高連携が重要であるということと、その工夫として、例えば、地域ごとに中学、高校の先生と保護者の代表や関係機関の代表も加わって、中学と高校のそれぞれの課題を情報交換し、課題の検討をするような体制づくりが重要であるという記述も少し加えていただくとよいと思う。

【委員】「学校種間の連携を図るためには、教職員一人一人が幼稚園段階から」とあるが、幼稚園と小学校の円滑な連続といったことは書かれていないので、そこも触れるとよいと思う。幼稚園と小学校の円滑な接続、連続を持たせるような指導について触れられると分かりやすいと思う。

【委員】高校段階での暴力行為について、方策としてソーシャルスキルトレーニングが挙げてあるが、好ましい行動をどのようにアウトプットしたらいいかということを学ぶと同時に、自分の中にたまっているストレスをどのように健全に表現したりするかというストレスマネジメントもあるとバランスがとれてよいと思う。生徒指導提要にも載っていたので。

【事務局】事例については、モデル案として一般化はできなかったため、事例に見る経過をまとめた内容になっている。事例を分類した方が見やすいという意見も前回いただいたが、分類はうまくいかなかった。背景や困難に至る過程については、どこで失敗したか、あるいは地域的な背景などで少し分類できたが、方策については総花的な記載になったので、どの方策が効いたかは、見ていただいてそれぞれに選んでいただくしかない状況であり、分類するのは難しかった。

【委員】事例集には、暴力行為がある非常に困難な学校が改善されたというものを基本的に取り上げるのか。

【事務局】事例集についてはそのように考えている。

【委員】困難から立ち直った事例が当然中心に来るが、そのほかに、暴力行為を生まない学校にはこういう取組が重要だという観点が示されている事例についても、事例の最後にこれはこういった点で参考になるということを加えて取り上げて、活用のヒントになればよいと思う。

【委員】困難から立ち直った学校と、予防・開発的に努力している学校の両方挙げたらいかがか。

【事務局】前回の会議の意見を踏まえ、困難から立ち直った事例に絞ったが、モデル案の内容を見ると、改善後落ち着いた校内環境を維持する方策の部分が一番薄くなっているので、予防・開発的な部分については本文で引用していただくなり、事例として両方挙げていただければと思う。また、事例の最後にコメントを加えるなどして、本文、モデル案、事例集の構成が緊密になる構成をとれればと思う。

【委員】冒頭にも申し上げたが、昭和50年代の後半から60年にかけて校内暴力が非常に重要な課題になり、それを行政、学校が努力して克服したわけだが、多くの学校が校内規律の確立と、整然と授業ができるようになることに重点を置き、保護者や関係機関の協力を得ながら指導を進めていった一方、そういった指導は、児童生徒自身が社会生活・学校生活の中でどうあるべきか、という自発的な、自己指導能力に結びつくための指導という点では、必ずしも十分ではなかった。それが、後にいじめや不登校の問題に結びついた面もあるのではないかと思う。また、当時、大変困難な課題に数年かけて取り組んだ学校において決め手となったのは、暴力行為対応の学校づくりの中で、児童生徒に対し、主体的に学ぶことや集団の中での自分などについて考えさせるような指導をいかに進めていくかということ。それから、校内暴力に取り組んだ学校の中にも、児童生徒が自分の考えや状況を言葉で表現し、交流することで校内秩序を高めるような指導が重要だとしているものもある。今回の報告書が、そうしたことも視野に入れながら、単に校内暴力を起こさない学校ではなくて、一人一人の自己指導能力、あるいは社会性を培うということに結びつくような報告書になればよいと思う。

閉会

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室