資料2 これまで(第1回~第4回)の主な意見

学校評価の現状と課題について

1.学校評価の現状

  • 学校評価はかなり定着してきており、教育委員会のサポートも大変充実してきている。
  • 学校評価を実施した成果として、学校の課題や目標を捉えて改善の取組を行うことができるようになるとともに、学校・家庭・地域のつながりが強くなっている。
  • 設置者で学校評価のスケジュールや評価シートを提示したり、評価委員の研修を行ったり、学校評価結果に基づく指導・助言・支援を行ったりしているケースが見られる。

2-1.学校の課題

  • 学校評価がうまくいかない学校では、1.抽象的な目標が多い、2.プロセスな設計があいまい、3.一部の教職員だけ頑張っている、教職員が相互不干渉になっている、という実態がある。

教職員の意識

  • 学校には学校評価に疲労感ややらされ感、マンネリ感を多く感じており、学校評価に費やすコストを上回る成果実感が得られていない。
  • 評価する側、される側という意識が学校の中にあり、学校関係者評価では「保護者からいろいろ言われないように頑張りましょう」というレベルで終わっていた。
  • 教職員が毎年変わるため、取組が継続せず、学校改善につなげるまで教職員のモチベーションがもたない。

目標の明確化と共有

  • 学校評価における目標は具体的に設定し、全教職員で共通理解を図らなければならないが、教職員全体で学校評価に取り組めていないのが現状。
  • 目標が抽象的で何をいつまでに行うのかが 不明確であったり、達成不可能な内容を掲げたりすると、評価を行う際、日々の教育活動との関連が不明確になる。
  • 評価項目が網羅的になると、統計を取るだけで大変な時間がかかり、学校運営への改善まで評価活動が持続しないおそれがある。

評価方法

  • 2つのことを同時に聞いたり、知らない人には答えようがないことを聞いたりするようなアンケートが多く見られる。
  • アンケート結果を成果指標に位置づけていたりアンケートの位置づけが高すぎたりするため、学校が持っている学力調査や体力調査のデータ、図書の貸出冊数等の様々な事実データがうまく学校評価の中に位置づけられていない。

情報提供・報告

  • 学校評価を行う外部の評価者は常に学校にかかわっているわけではないため、自己評価の結果が重要な評価材料となるが、学校が学校関係者評価委員に対し、評価を行うための十分な情報提供ができていない。
  • 学校から教育委員会に上がってきた報告書を見ると「概ね達成できた」と記述することで、改善策などを白紙の状態で提出している。学校関係者評価委員会でも保護者・地域住民から高い評価を得ているため、学校としての説明責任は十分果たせているが、そこからさらに一歩進んで新たな取り組みとかいうことがなかなか見えてこない。

改善への取組

  • 評価結果を分析し、成果や課題、改善策についてしっかり協議したいが、時間的余裕が無く、学校改善に十分結びつかないことがある。特に中学校では、生徒指導の問題が生じるとそれに力が注がれて、学校評価に力が入れられない。
  • 評価をしても手ごたえが持てないまま、弱点ばかりが見えてきて、暗くなってしまうという悪循環が起こっている。
  • 学校関係者評価ではプラスの評価が比較的多く、辛口の評価を言ってくれる人が少ない傾向がある。
  • 評価結果を受けた改善策が具体的でなく実際の改善に結びつかない場合が多い。

学校種・設置形態による差異

  • 地域人材の積極的活用について、小学校は非常に多くの地域からの関わりが見られるが、中学校や高等学校においては地域と関わることに限界がある。
  • 私立学校においては教職員のマネジメントに関する関心が低く、理事長・校長が孤軍奮闘している学校が多い。

2-2.設置者の課題

設置者の教育ビジョン

  • 都道府県や市町村の教育ビジョンがあいまいであると、各学校が目標や課題を重点化しにくくなる。

評価結果を受けた支援

  • 学校から設置者へどのように評価結果を報告することが望ましいか、設置者が評価結果をどのように指導や支援(人事面・財政面)につなげていくかが明確になっておらず、適切な支援が行えていない実情がある。
  • マネジメントスタッフ
  • マネジメントスタッフ(特に校長)の在任期間が学校評価システムの構築を左右する。それまでうまくいっていても校長が変わる度に学校評価システムが変わってしまい、うまくいかなくなるケースが多い。

2-3.国の課題

学校種・設置形態に対応した状況把握

  • 私立学校の学校評価においては、評価結果を設置者である学校法人の理事会に報告している。理事会や評議員の構成の中に、現役の教職員、卒業生、保護者が入っている私立学校が非常に多い。また、私立学校は建学の精神、独自の教育理念があり、常に世間の批評、選択にさらされている実情があり、公立学校における学校評価の在り方と大きく異なる。

実効性の把握

  • 文部科学省の学校評価等実施状況調査によると、99パーセントが「学校関係者評価を実施して学校運営の改善に役に立った」と回答しているが、少し聞き方を変えると、文部科学省の指定校でさえ、「学校評価が学校運営・活動の改善につながっている」と回答しているのは、大体6割から8割ぐらいであり、指定校以外については、これよりも低い数字になると考えられる。

実効性のある学校評価の実施

1-1.実効性の捉え方

  • 学校評価は評価自体が目的ではなく、学校を良くするためのツール、地域とのコミュニケーションツールとして考えるべき。
  • 学校が元気になる、応援団が増える、子どもが元気になる、いじめもなくなる、という目標に向かって行うのが学校評価で一番大事な点。

1-2.実効性の把握の方法

  • 学校評価の「実効性」は、学校に対する保護者の満足度、教職員の意識向上、生徒の自律性・自発性を踏まえて検討することが必要。
  • 学校評価の「実効性」は、評価結果に基づく学校や児童生徒の変化によって把握することが一般的。

2-1.実効性を高めるための学校の取組

  • 学校評価システム全体の質を充実させるには、自己評価の質を高めることがポイント。

教員の意識

  • 学校改善を目的として行うことが、やりがいや充実感につながる。学校として果たし得る最大の効果を出すためには、組織分析をして学校の強みや課題を明らかにし、改善につなげていく必要がある。
  • 学校の改善や保護者との関わり方等、学校評価の成果や手応えが感じられることが必要であり、そのためには、日頃の会議などの中で意識的に見える化を行うことが重要。

目標の明確化と共有

  • 一部の管理職だけで学校評価に取り組むのではなく、全教職員で評価結果を議論し、改善策を検討することが重要。学校の課題と解決策を明確にして、改善に結びつけていくのは校長のリーダーシップであるが、それらを個々の教職員に落とし込むことが必要。
  • 目標を達成するための具体的方策を教職員に考えさせ、教職員の学校経営への参画意識を育てることが重要。
  • 学校評価がうまく機能していない場合、まず何から取り組んだら良いのか、その次のステップにどう進むかという段階的なモデルを考える必要。好事例も最初からうまくいった訳ではなく、身近なところから実践できる取組をだんだんと発展させている。
  • 学校評価の対象を重点化し、まずは学校の課題とその解決策に限定して評価を行うことが必要。
  • 成果指標に子どもの姿を具体的に描き、職員アンケートや話し合いによって手だてを位置づけ、取り組み指標に位置づけることは重要。

評価方法

  • アンケートを行う場合は、誰に何を聞くのか明確にし、学校評価の評価項目に関係するものに精選する必要がある。
  • アンケートの結果と客観的な事実データを相対化できる視点を持つことが必要。
  • 評価を行う際には、数値だけではなく、自由記述の内容も踏まえることが大切。
  • 時間が限られている中で、会議に費やす時間やアンケートの作成や集計に費やす時間、労力といったものに対してどのぐらいの効果があるかということについて、よく考えてみる必要がある。

情報提供・報告

  • 学校・保護者・地域住民が共通の目標を立て、その実現に向けて何をすべきかそれぞれの立場から学校関係者評価委員会で議論するなど、学校だけでなく、保護者・地域住民も当事者意識を持てる学校評価システムにしていくことが必要。
  • 事務職員の参画の下、予算運営、施設設備、安全管理など、管理運営面についての目標の設定・評価を行うことにより、学校評価の情報量や説得力が増していくことで、説明責任を果たし保護者や地域住民の信頼を得られるようになる。
  • 保護者や地域住民にありのままの学校の現状を見ていただき、運営に参画してもらうことで、建設的な評価が可能になる。
  • 問題が生じた時こそ、学校と保護者・地域住民とが一緒に取り組んで行かなくてはならない。現在の学校は、外部からの協力を得なければやっていけない。学校は何か問題があったら、直ちに情報を公表すべき。
  • 取組や成果を地域や保護者と共有しながら、それぞれの具体的な役割や責任の分担を考えていくことが重要。特に中学校の生徒指導の課題は、中学校単独で解決することが難しいからこそ、小学校時代から問題に向き合い、地域や保護者と取り組むことが必要。
  • 子どもたちの成長を保護者に見せることが学校教育の成果を伝える最良の方法。

改善への取組

  • 「実効性」の高い学校評価を行うには、評価結果が学校運営へ反映され、改善が実感できることが重要。
  • 学校評価を組織的な授業改善やカリキュラムマネジメントと連動させることが重要。
  • 学校評価による説明責任と改善は、プラスとマイナスのような対立軸にあるのではなく、説明責任が果たせなければ改善に結びつかない。
  • できていないことをできるようにするよりも、できていることを足場にしながら次へと向かっていくというステップが、現実的な学校経営において重要。

学校種・設置形態による差異

  • 小学校では、児童の年齢幅があるので、子供同士の縦のつながりをどのように強化をしていくかが課題としてあるが、分掌や学年会等を通じて複数の学年で取り組んでいくかということが重要。一方で、中学校・高等学校では教科ごとの独立性が高いため、教科でまとまって組織的な改善が進めやすいが、教科の枠を超えて全学校として学校評価にどう取り組んでいくことが重要。

2-2.実効性を高めるための設置者の取組

評価に有用な情報提供

  • 各学校における学校評価の取組の参考になるよう、設置者から優良事例の情報提供や評価に関する統一的なフォーマットの設定などを積極的に行っていただきたい。

評価に関する人材の育成・確保

  • 学校評価の意義や目的を全教職員に浸透させるミドルリーダーの育成が重要。
  • 学校評価に関する研修会や地元大学からのアドバイザーの派遣は、学校評価の意義や方法を理解し実践する上で大変有効。
  • 学校評議員や学校運営協議会委員を学校関係者評価委員とするなど、既存の制度と連動させることで学校評価の実効性を高めることができる。

学校間連携の促進

  • 小中連携のため、接続する学校の教職員を学校関係者評価委員にすることが有効。また、他校の教職員を学校関係者評価委員とすることで、学校関係者評価に専門性を持たせることができる。
  • 財政が厳しい中でも、例えば学校間連携での授業改善は大きな財政負担がなくできるし、全国学力・学習状況調査をはじめ、個々のデータをうまく使っていくことが重要。

評価結果を受けた支援

  • 学校評価を実効性のあるものにしていくためには、設置者が支援のしやすい評価が報告される同時に、それをしっかりと受けとめ、適切な支援を行う設置者側の責任もある。

2-3.実効性を高めるための国の取組

  • 専門家による第三者評価が全国的に行われれば理想的だが、現在の財政的制約、人的制約を考えると、まずは学校関係者評価の質をどのように高めて、評価結果を学校運営の改善につなげるのかが大きな課題で、工夫・改善の余地がかなり大きい。

お問合せ先

初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

若林・中村・志村
電話番号:03-5253-4111(内線3705)
メールアドレス:hyo-ka@mext.go.jp

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)