学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議 学校評価の在り方に関するワーキンググループ(第4回) 議事要旨

1.日時

平成23年10月5日水曜日15時~17時

2.場所

中央合同庁舎第7号館西館(金融庁)9階903号会議室

3.議題

  1. 有識者へのヒアリング(武蔵村山市教育委員会教育指導課長 小寺 康裕氏、社団法人日本PTA全国協議会副会長 冨川 芳人氏、京都市立高倉小学校校長 林 正幸氏)(五十音順)
  2. その他

4.出席者

委員

天笠主査、小松副主査、木岡委員、小林委員、實吉委員、松尾委員、三塚委員、柳澤委員

文部科学省

下間参事官、田中主任視学官、松浦企画官、廣野参事官補佐 他

5.議事要旨

事務局から資料についての説明があった後、小寺康裕 武蔵村山市教育委員会教育指導課長、林 正幸 京都市立高倉小学校校長、冨川芳人 社団法人日本PTA全国協議会副会長より、学校評価の現状と課題について発表があった。その概要は以下の通り。


(●は委員からの発言)

武蔵村山市教育委員会教育指導課長 小寺 康裕氏 発表

本日は各学校の学校評価に関するPDCAについて、教育委員会の指導・助言のあり方と、それらを踏まえた行政支援の具体策等について、東京都武蔵村山市の現状と課題を報告させていただく。

本市が他の自治体と比べて特別や先進的な取組を行っているわけではないと考えているので、本市の教育委員会と学校が目指しているところを、そのままお伝えさせていただく。

武蔵村山市は東京都の西部、立川市の北、埼玉県所沢市の南に位置する、人口7万1千人の小規模市である。

学校数は小学校8校、中学校4校、平成22年度に開校した施設一体型小中一貫校が1校の合計13校、児童・生徒数は合計約6,500人、教職員数は約350人となっており、小規模市の利点を生かして、学校と教育委員会が一体となって互いに近い関係で教育活動の改革を進めている。

教育委員会の平成23年度の7つの重点項目のうち(5)「1校1研究による学校特色化の推進と学校評価の充実」及び(6)「小中連携教育・コミュニティ・スクールの推進」について説明をさせていただく。

(5)について、全校2学期制である武蔵村山市では、中学校の学校選択制を基盤として、1校1研究の趣旨で行われる校内研究の取り組みにより、目指す特色のある学校像の実現に努めている。すべての小中学校が文部科学省、東京都教育委員会、あるいは武蔵村山市教育委員会のいずれかの研究奨励校、推進校、指定校等の指定を受け、それぞれの教育課題について研究を深め、その成果を市内全校に還元することにより教育内容の質的向上を目指している。これらの研究活動と、全国学力学習状況調査等の結果を踏まえ、児童生徒の変容を検証し、教育活動の成果と課題を明確にするためにも、学校評価は大切な役割を果たしている。

(6)について、武蔵村山市は小中一貫校の村山学園における実践を市内全校に還元することにより、小中連携教育を推進することを目指している。そのために村山学園においては通常の学校評価に加えて、別組織により小中一貫教育の検証を行っている。また、当該学園が本年度よりコミュニティ・スクールとしての指定を受けたことを皮切りに、平成26年度までに市内全校をコミュニティ・スクール化する計画となっているため、コミュニティ・スクールにおける学校評価の方法や組織について検討していくことも、重点項目の一つである。

学校評価の方法とスケジュールについては、4月の定例の校長会において教育委員会より、文部科学省の学校評価ガイドラインや東京都教育委員会の資料に基づき、学校評価の意義、方法、スケジュール等を提示し、このときに、教育委員会への評価の提出日や保護者・地域等に対する学校だよりでの公表やホームページの掲載日などの学校評価に関する年間スケジュールについても全校一律で示している。学校評価の統一様式や、学校関係者評価委員会の選任についての共通確認事項も同時に提示する。

5月には各学校から様式に基づいた学校評価計画表及び評価表を、教育委員会事務局に提出することになっており、提出を受けた事務局ではこれを確認し、場合によっては指導・助言を行い再提出を求める。特に昨年度の評価結果を踏まえた内容になっているか、教育課程届け出時に確認した改善の内容を踏まえているか、校内研究を通して目指す児童・生徒像を明確にしているか、などの視点で評価計画を確認している。評価計画の提案・説明のために、6月に第1回学校関係者評価委員会を開催して、1学期末に当たる9月には保護者アンケート等を踏まえて中間評価に当たる自己評価を実施する。

10月には第2回学校関係者評価委員会を開催し、この結果を教育委員会事務局に報告する。この中間評価を踏まえ、教育委員会は次年度の各学校の予算案を検討する。特に校内研究に係る諸事業については、教育委員会から学校にさまざまな情報提供をしながら校長の次年度の学校経営方針案に基づいて、奨励校、推進校、指定校の申請事務等を進めていく。さらに1月には年度末の自己評価を行うとともに、2月には学校関係者評価委員会報告書の提出を受け、各学校はこれらを3月の指定日までに教育委員会に提出することとなっている。提出を受けた教育委員会事務局は、これらの内容を精査し、全校分を冊子にまとめて改めて全校長に配付するとともに、受け付けをした次年度の教育課程とともに定例教育委員会に報告し、協議をしていただく。定例教育委員会では学校評価の結果が次年度の教育課程に反映されていることなどを確認し、教育課程の受理の決定をする。

学校評価の具体的方法について、各学校は教育委員会が示した学校評価計画表の様式に従い、中期経営目標、短期経営目標、具体的方策、努力指標、成果指標を設定することとしており、教育委員会では特に校内研究のテーマや目指す児童・生徒像にかかわる事項を重点的に取り上げるよう、指導・助言している。

自己評価表の様式には、評価指標と目標値について記載し、年間2回の自己評価時に達成値をはかって記載するとともに、年度末には目標値と達成値との比率から達成度を数値として評価して算出することとしており、さらに分析コメントと改善案を記載して年度末に提出こととしている。

市教育委員会では、学校関係者評価委員会設置要綱の例を示しており、これをもとに各学校で要綱を定め、校長が年度ごとに委員を委嘱することとしている。

学校評価のPDCAにかかる日常的な教育委員会の役割については、小規模市としての環境を生かして、日常的に指導主事をはじめとした教育委員会事務局職員が学校を訪問し、教育活動等を支援している。その他にも、年度当初の学校訪問時に昨年度末の評価結果を踏まえた本年度の評価計画について、校長等に助言をいたしたり、評価計画策定後の5月以降の学校訪問では教育実践による成果等が努力指標や生活指標に対する進捗状況はどうなっているかといったことを確認したりする。

10月以降の次年度の予算編成時には、次年度の研究計画について助言するとともに、奨励校、指定校、推進校等の情報提供を行う。年度末には評価計画を保護者、地域の方々に公表・説明することに加えて、教育委員会では評価結果をホームページで公開することを義務づけており、各学校では保護者会での説明や資料配付など、さまざまな工夫をしていり。何が成果で何が課題か、その課題を解決するために次年度はどのように教育活動を改善するかを、わかりやすく説明することが大切な視点であると考えており、学校に対しても指導・助言を行っている。次年度の教育課程受け付け時には、学校評価結果を踏まえ、それに基づく改善の具体策が明示されていることを確認する。こうした学校と教育委員会の信頼関係に基づく、年間を通した一連の指導・助言により、学校の教育活動の改善を図ることが、学校評価の有効な活用方法であると考えている。

コミュニティ・スクール構想と学校評価について、武蔵村山市におけるコミュニティ・スクール設置の基本方針は、これまでの学校評議員制度や学校関係者評価制度を包括する形で、学校運営協議会を設置するとともに、地域の願いや思いを学校改善に結びつけることができる、より実効性の高い学校評価制度を研究することを重要視している。

本年度コミュニティ・スクールの指定を受けた村山学園について、本校は施設一体型小中一貫校ではあるが、学校教育法上は小中学校それぞれが設置されていることになっていることから、学校運営協議会の組織も別々に設置し、一体的に運営することとしている。組織体制については、大きく4つの部会を設置し、その1つに学校評価部会を位置づけ、従前の学校関係者評価委員会の役割を担うこととした。当該部会設置から6カ月がたったが、部会の委員の方々は、日常的に学校を訪問し学校の様子や児童・生徒の実態を確認するとともに、さまざまな支援・協力を通してよりよい学校づくりに大きな力をいただいている。

村山学園の小中一貫教育検証委員会の役割について、当該委員会は小中一貫校の教育活動について、学校運営、カリキュラム等の実践についての成果と課題及び改善方法について検討する目的で設置されている。この委員会は前述の学校運営協議会の学校評価部会における学校評価とは別の視点から、市の施策としての小中一貫教育のあり方についての評価を得るために、教育委員会が委員を委嘱して設置したものである。検証期間は村山学園開校の平成22年度から24年度までの3年間で、大きく7項目それらを細分化した37の検証項目についても当該委員会で決定をした。検証方法としては、児童・生徒、保護者、及び教職員を対象としたアンケート調査、並びに教職員、事務職員やスクールカウンセラー、用務主事等も含めた教職員を対象としたヒアリング調査により実施することとした。37の小項目ごとにそれぞれ3年生から6年生までのアンケート、7年生のアンケート、小学部保護者アンケート、教員アンケート、生活指導主任ヒアリング、管理職ヒアリングなど、回答者と質問方法を個々に設定し、第1回目となる調査を平成22年12月に実施した。この時点で幾つかの項目については成果と課題が明確になりつつあるととらえている。市としての大きな施策の検証については、各学校における学校評価との連携を図りつつ、教育委員会として別組織等により客観的に評価することも必要であると考えている。

こうしたさまざまな方法による学校教育活動の評価と、それに基づく確実な改善のPDCAサイクルの構築が、保護者、地域、市民と共同した新しい公共型の学校づくりにつながっていくものと考えている。現時点で、説明したすべてのことが確実に実施され、理想的な改善に結びついていると言える状況に至っているわけではなく、日々の課題に直面しながら、思うように成果が上がらないというのが現状であるが、武蔵村山市教育委員会としては、今後とも学校と力を合わせて、よりよい学校評価のあり方を研究していきたいと考えている。

  • 学校評価計画表はその一部をここに示したのか、これがすべてか。

【小寺 武蔵村山市教育委員会教育指導課長】 
基本的にはA4判で1枚にまとめるように例示している。

京都市立高倉小学校校長 林 正幸氏 発表

京都市立高倉小学校は京都市内の中心に位置し、町なかの学校で、児童数が減少していた。中心部には全校児童数が100名に満たない学校が増えていた。もともとは明治2年からの番組小学校からの流れのある学校ばかりで、地域の方の学校に対する思い入れが大変強い学校であったが、断腸の思いで統合に踏み切り、平成7年に5つの小学校が統合して高倉小学校になった。

統合したときは、全校児童数が420名程度で各学年が70名程度であったが、高層のマンションの建設等により住民が増えたことにより、現在の児童数は583名まで増えた。

学校運営協議会は平成15年にその前身である姿でスタートし、法令に則った形では平成16年11月にスタートした。高倉小学校では学校運営協議会をスマイル21プラン委員会と呼んでいるので、スマイル21プラン委員会における学校関係者評価について説明する。

京都市では学校運営協議会を学校関係者評価委員会と位置づけ、平成21年度から取り組んでいる。学校関係者評価は自己評価結果に対する評価の実施ということで、学校運営協議会または学校評議員が中心となった委員会を組織して行っており、評価にとどまらず、課題の改善策、地域・保護者の支援策等を協議している。

スマイル21プラン委員会は、理事会と推進委員会という組織でスタートした。理事会は7つの学区の自治連合会会長、学識経験者、生け花の家元、PTA会長以外の保護者から選出されるスマイル委員長で構成される。推進委員会には7つの部会を設け、実際に子供たちのために動いてくださる応援団のような形になっている。

年齢層の高い理事会と保護者世代の推進委員会をつなぐために、スマイルの委員長、推進委員会の7部会のそれぞれ部長、学校の教職員から構成される企画委員会を設けた。

加えて、連絡調整やスマイルだよりの発行などの広報を行う組織として、今年から事務局を設けた。

推進委員会の7つの委員会は人・まち部会、TAKAKURAコミュニケーション部会、読解・表現部会、学力向上プラン部会、高倉文化部会、体力向上プラン部会、それから評価部会である。

今年度のスマイル21プラン委員会は、子どもたちや学校の実態等から「Goodコミュニケーション~豊かなつながりが、生きる力を育てる~」というテーマを掲げている。そのテーマを受けて、今年度は基礎体力、最後まで粘り強くやり遂げる力、コミュニケーション力という3つの重点課題を設けている。

また、理事会と7つの部会の評価部会で、学校評価の年間計画を設けており、年間2回評価を行い、京都市教育委員会に報告している。教育委員会では報告の統一様式を作成しており、特に改善に向けた支援策を必ず記入するようになっている。平成22年度末に本校が教育委員会に提出した学校評価表では、スマイル21プラン委員会の理事会で行った学校関係者評価の評価結果と、改善に向けた支援策を記入している。改善に向けた支援策には、「学校は、地域に遠慮をすることなく、協力して欲しいことを伝えていくようにする。地域の力でできることであれば、惜しまず協力する。学校が主体となってどんな学校づくりをしていくのかを明確にして、学校・保護者・地域の意思統一をしっかりと図り、取組を進めていくようにする。」とした。

学校運営協議会も設置以来年数を重ねて、かなり円熟した形にはなってきたと思う。そんな中で地域からは、「ほんとうに努力は惜しまないよ」、「何でも学校から要請があればやりますよ」ということを言っていただいているが、学校は教職員の入れ代わりなどもあり、「こんな子供たちに育てたいんだと」いうビジョンをアピールできていない点が課題である。地域からも、「ビジョンを出してくれないと我々は動けない」ということをいつも言っていただいているのが大変ありがたいと思っているので、今後は学校関係者評価をスマイル21プラン委員会の活動に更に生かしていきたいと思っている。

理事会・評価部会で保護者を対象として子供につけたい力のアンケートを実施した結果、「楽しく学校へ通っている」、「家庭での会話ができている」、「早寝早起き、朝ご飯などがきちっとできている」といった点が重要度が高く実現度も高い本校の特色として把握できた。重要度は高いが実現度が低い課題として、「自分に自信を持つ」といった自尊感情や「能動的に学ぶ姿勢を持つ」、「自分の考えを表現し、他人に伝える」という点が明らかになった。また、理事会・評価部会で24のキーワードを出して、その中でどういう力を子供たちにつけたいかアンケートをとった結果、思いやり、学力、礼儀作法、コミュニケーション力等が上位に上がったことを受けて、スマイル21プラン委員会では子供たちの豊かな学びにつながる取り組みを検討した。

スマイル21プラン委員会の活動について紹介すると、本校では年間7回、土曜日の午前中に希望する親子を対象として、親子トイレ掃除を実施している。7部会の取組について、人・まち部会ではスマイルマップという地域にいろんな力を持った達人の方のハンドブックを作成して地図に落としている、TAKAKURAコミュニケーション部会は当初、幼・小・中・高の連携のコミュニケーションを図るためにスタートしたが、小中一貫教育も軌道に乗ってきた今は、外国の方々とのコミュニケーションに力点を置いている。読解・表現部会では特に身体表現の取り組みを行い学力向上プラン部会では、子育て対談や座談会と実施して本校の校区にある堀川高校の校長と対談を行った。高倉文化部会では地域の仕出し屋さんでの就業体験や校区の文化的なことに触れていく取り組みを行った。体力向上プラン部会では運動会やアウトドア体験等、普段子供たちがあまりできないような部分を補っている。評価部会では、子供にどんな力をつけたいか、どんな学校にしたいかをスマイル委員、つまり学校運営協議会の委員にアンケートをとり、年度末にはそのスマイルに参加したきっかけやスマイルに自分自身として貢献できること、スマイルに期待することについてアンケートをとった。また、年に1回、7部会の取り組みを一堂に集めて行う「スマイルたかくら」では、評価部会がスマイルたかくらラリーの各部会の評価者になって各部会の評価を行い、最後に称賛していく取り組みを行った。

今後の課題として、地域の方との交流をさらに深めることが必要であるとともに、取組の精選と整理を行い、長いスパンでの目標や展望を持つことがあげられる。

長年、学校運営協議会や学校評価に取り組んできた成果として学校・家庭・地域がともに高め合う関係になってきたと感じている。それぞれの活動を通して学校運営協議会の委員の学校に対する理解が深まり、より能動的に取り組んでいただけるようになった。まだまだ課題はあるが、これからも一所懸命取り組んでいきたい。

社団法人日本PTA全国協議会副会長 冨川芳人 氏 発表

保護者の立場で17年PTAにかかわってきた経験から、学校評価や学校の情報提供についてお話しさせていただく。

私の子どもたちが通った萩市立明倫小学校は毛利藩の萩藩の明倫館の跡に建った小学校で、吉田松陰の教えを長く受け継いだ学校で毎朝朗唱を行い、1学期に1つずつ言葉を覚えていく教育を行っている。現在も木造校舎で児童数が736名、普通学級23、支援学級が3の萩市内で一番大きな小学校で、地域住民の多くはこの学校の卒業生である。

同じ校区の萩西中学校は明倫小学校の校区から7割から8割の児童が進学し、白水小学校という学校から子供たちが、2割から3割進学する、生徒数が339名、普通学級が11クラス、支援学級が2クラスの萩市内で2番目に大きい中学校である。

学校から提供してほしい情報について、主観的な言葉になるが、保護者に対しては当然のことながら学校の目標であったり、その目標に沿った具体的な取組を示したりしていただきたい。また、学校行事の内容や全国学力・学習状況調査の等の学力に関することが非常に気になるところである。子どもたちに直接かかわる先生方について、時々お休みになる先生や指導力のことについても保護者としては聞きたい。一番保護者が聞きたいのは、おそらく学校での子どもたちの様子であろう。非常に落ちついた学校であるが、いじめや非行について、また、携帯やゲームについて我が子以外の状況で、例えば学校で行ったアンケート調査結果、また進学やキャリア教育、健全な体と心に関する情報等も欲しい。

学校から地域に対しては、学校行事が、いつ、どういうものがあるか、参加可能な運動会、体育祭、文化祭、オープンキャンパス、バザー等の日時を示していただきたい。また、現在の学校の課題や地域住民に支援してほしいことについて具体的に示していただけるとよいと思う。明倫小学校と萩西中学校については今申し上げたことについては概ね情報提供はされていると思う。具体的には校長先生の指導のもと学校だより等が毎月発行されており、全国学力・学習状況調査の結果や学校評価の内容、中学校の部活動の成績が掲載されている。加えて、学年だより、保健室からの便りがある。明倫小学校と萩西中学校の異なる点は、明倫小学校では特に地域への情報発信のためにPTAの校外指導部員を活用し、回覧板を通じて地域住民に情報提供がされている。萩西中学校ではその情報提供が行われていないため、体育祭や文化祭等の情報が足りないと思う。一方で、萩西中学校では学校での出来事や生徒への指導等、生徒指導にかかわる便りが、ほぼ毎日発行されている。

学校の自己評価に関する情報提供の状況について、明倫小学校では前期と後期の2回、教職員、保護者、児童アンケートを実施し公表している。また、教育目標や重点目標が具体的に示されており、保護者や地域住民にも公表されている。保護者アンケートには自由記述欄も設けており、その内容についても抜粋した上で保護者に公表されている。明倫小学校は学校評価書が非常に細かい記述であるため、そのまま公表はせずに抜粋した形で公表されている。萩西中学校では自己評価を年に1回実施して、学校評価書まで保護者にも公表されているが、地域には残念ながら公表されていない。

学校関係者評価者の構成について、明倫小学校は学校評議員(元校長、元教頭、元本校のPTA会長、元PTAの副会長、児童クラブ)、校長、教頭で構成され、萩西中学校は、学校評議員、PTAの副会長、校長、教頭で構成している。

学校関係者評価に関する情報提供の情報について、個人的な意見になるが、学校評価を行う外部の評価者はいつも学校にかかわっているわけではないため、自己評価の結果を参考にするしか基準がない。評価基準を数値化した時に、達成されている項目が多いが、時に達成されてない項目に関して理由を文章で表記していただけると、より評価をしやすいと思っている。

また、学校の登下校や普段の様子を保護者ではなく地域住民の目から見た評価も欲しい。

萩市では特色ある学校づくりのために拠点校(コアスクール)とういう構想を実施しており、特に特徴のある学校づくりやその学校の課題や問題点等をテーマに掲げ、それがどこまで達成されているかという基準も学校評価の中に加えられている。

第三者評価にも平成19年度から21年度まで委員としてかかわったが、記述欄が多く最後のまとめが非常に難しかった。結果として、多くの学校で同じな問題点や評価内容を記述しなければならなくなり、どのように書けば良いのか難しかった。

最後に日本PTAの「22年度教育に関する保護者の意識調査」の結果を報告する。学力問題で、学力向上のために学校に求めたいことについて、小中学生の保護者の3分の2が習熟度別の学習の促進と挙げている。また、学習指導要領の改訂を64%の保護者は知っていたが、情報源としては新聞・テレビが77%で、学校からの説明は31%にとどまっており、改訂の内容としては、授業時数の増加、外国語教育の充実が上位であった。教員に求めるものとしては、人間性84%、指導力70%という数字が挙がっている。学校支援地域本部事業の認知度は、平成22年度は36%で21年度の43%から減っており、コミュニティ・スクールの認知度も知らなかったという保護者が92%に上っている。

学校関係者評価委員の認知度については、知らないという保護者が81%に上っている。学校の情報提供で不十分なところについては、いじめや暴力行為、不登校などの生徒指導上の課題の現状という項目があげられている。学校評価報告書を読んだことがある保護者も28%にとどまっている。保護者と教員のコミュニケーションについては、まあ十分、まあとれているというのが65%で、機会としては授業参観やクラス懇談が43%。個別懇談が31%、学校だよりが13%となっている。

次いで発表に関して、質疑が行われた。小寺 武蔵村山市教育委員会教育指導課長の発表に関する質疑は以下の通り。

( ●は委員からの発言 ) 

  • コミュニティ・スクールを平成23年度から1校で取り組んで、その後26年度までに市内すべての学校で取り組む予定だというお話があったが、その背景を教えていただきたい。

【小寺 武蔵村山市教育委員会教育指導課長】
本市のコミュニティ・スクールについては、教育改革国民会議で最初にコミュニティ・スクールという提案がなされた時点で、地域の方々あるいは学識経験者によって構成される「21世紀における学校のあり方に関する懇談会」で、本市としても将来的にはなるべく全市規模でコミュニティ・スクールの取り組みを行っていくべきだという声が上がっていた。本市の状況として、学力や生活指導の問題等、課題が多くあった。地域の力を借りてそうした課題を解決していくことが大切だという視点から、小中一貫校の開校とコミュニティ・スクールを車の両輪として長い時間をかけて検討してきた。その後、さらに全市に広げていくという流れができた。

  • 学校評価の結果を予算等に反映させているという話があったが、予算の総額はどれぐらいで、学校間でどれぐらいの額の差が出てきて、各校の予算額を決定するときにどのような手続きをとっているのか、例えばヒアリングがあるのか否か等、教えていただきたい。

【小寺 武蔵村山市教育委員会教育指導課長】
予算化と申し上げたのは、校内研究にかかわる奨励校等の指定等のことである。例えば文部科学省の事業、東京都教育委員会の事業、本市の事業、合わせて補助金という形で予算化して各学校に歳出するということ。その時点でどんな研究をしていきたいか、そのためにはどういった奨励事業を来年度以降実施していくか、基本的に教育委員会が情報提供しながら校長の意向を聞いて、それを申請していくという進め方である。そのため、市の予算を学校に重点的に配分するというよりも、研究奨励のための補助金を活用してもらうということである。

  • つまり、必ずしも評価結果から見えてきた改善課題等に対して予算を重点的に配分するということではなく、研究活動に対して補助金を傾斜配分するということか。

【小寺 武蔵村山市教育委員会教育指導課長】
基本的にはその通り。ただし、本市の学校評価の中では、校内研究にかかる児童・生徒の変容という項目を重点化しているので、いずれの学校でも、校内研究を通しての変容は必ず評価に盛り込まれている。したがって、例えばその結果、言語能力をもう少し身につけさせる研究をしていきたいという結果が出ると、そうした研究にかかる事業を次年度以降進めていくということで、教育委員会としては配慮していくことになる。

  • 3点お伺いしたい。
    1点目は、お話を伺っていると、学校運営協議会を設置している学校(コミュニティ・スクール)と設置していない学校とで、学校関係者評価の位置づけが異なるように思われた。コミュニティ・スクールであろうとなかろうと、小学校・小学校間、あるいは小学校・中学校間での相互評価というのは不可欠だと考えるが、実際はどうなのか。
    2点目は、武蔵村山市が作成した学校評価のリーフレットを拝見していると、「否定的な事柄を肯定的に考える」、半分できていなかったというよりも、半分できていたというふうに肯定的に考えることの必要性ということが記述されている。私もそのような姿勢は重要だと思う。どういう視点でこうした考えを提示されたのかということを伺いたい。
    3点目は、評価表の「成果指標」という欄を見ると、「~と思う児童が○%」といった指標が示されているが、これは結局アンケート結果にすぎない。アンケート結果を指標として位置づけているのは、どういう考えに基づいているのか。本来は、成果そのものを直接捉えることができる客観的なデータがあってこそ、こういうアンケートは位置づくと思うが、その点をどうお考えなのか。

【小寺 武蔵村山市教育委員会教育指導課長】
1点目の、コミュニティ・スクールに指定された学校と他の学校の学校評価の違いについての質問だが、現時点ではまだ学校運営協議会ができて半年であり、まだ一回も最終的な評価が行われていない。基本的には他校で行われている学校評価と同じシステムで行う。学校運営協議会の中の部会が評価主体に位置づけられているということを除けば、現時点で明確な違いはない。

  • 小学校・小学校間あるいは小学校・中学校間での相互評価についてはどのように考えておられるのか。

【小寺 武蔵村山市教育委員会教育指導課長】
小中連携教育という形で、施設は別々だが同じテーマで研究をしたり、日常的に行き来をしたりしている。したがって、例えば中学校のPTA会長が小学校の学校評価委員会の委員に入っているというようなことがある。しかし、学校評価における学校間連携のあるべき姿については教育委員会としてまだ十分に示せていないというのが現状。
2点目の、リーフレットの「否定的な事柄を肯定的に考える」という記述の背景にある考え方についてのご質問だが、本市の各種委員会で学校評価の課題を検討していた中で、やはり子供たちのよさを改めて見直して、そうした部分をより伸ばしていくという視点から、特色のある学校づくりを進めていきたいということになった。こうした地域等の声を踏まえて、リーフレットにこのような記述を示した。

  • 私がそのように捉えることが重要だと考えているのは、できていないことをできるようにするよりも、できていることを足場にしながら次へと向かっていくというステップが、現実的な学校経営において重要だと考えているため。

【小寺 武蔵村山市教育委員会教育指導課長】
3点目の、アンケートの結果をそのまま評価表の成果指標としているということについてのご質問だが、指標設定の在り方についてさまざま議論をするなかで、客観的なデータのみで測ることは実際難しいということで、アンケート等の結果を数値化しているという状況。これについては今後、研究・検討していきたいと考えている。

  • 2点ほど伺わせていただきたい。
    1点目は、学校の特色づくりは色々なスタイルがあると思うが、あえて1校1研究ということで特色づくりを行おうとした背景を教えていただきたい。また、そのことが学校評価という観点からどういうメリットがあるのか教えていただきたい。
    2点目は、スライドの12ページ目、「コミュニティ・スクール設置の基本方針」の2ページ目に、「コミュニティ・スクール制度の導入に当たっては、各校の校長の学校経営権を尊重し、学校経営を支援することを重視した上で、制度導入を行うことを基本とする」という記述があるが、こうした記述の背景、及び学校評価の観点から見たメリットを教えていただきたい。

【小寺 武蔵村山市教育委員会教育指導課長】
1点目の1校1研究という名称だが、現在では複数にまたがって研究しているような学校もある。しかし、スタートの時点では、各学校が1つの指定・奨励等を受けて、最低1つの、毎年発表を行うような研究を行っていこうという、教育委員会の1つの標語だった。教育課題がたくさんある中で、各学校でさまざまな専門的な研究を行い、それを全校に共有・還元していく。その還元する役割を教育委員会が担っていくという施策をとっている。研究発表のときに、成果と課題を学校評価のなかに位置づけて、このように児童・生徒が変わったということを明確にしたいと考えている。一所懸命やっている学校の取り組みを、学校評価を通じて示すことで、地域にもご理解いただくという趣旨も含まれる。
次に2点目のご質問についてだが、基本的には教育の専門家である校長の学校経営方針に基づきながら、地域の方々にさまざまなご支援をいただく形でのコミュニティ・スクール化を今、推進しているところ。コミュニティ・スクール導入の際も、校長を中心に据えた地域参画を目指すべきという地域の声があったため、このような形になっている。

  • 例えば電子黒板やコンピューターの導入等、教材に関する使用状況について、先生方から評価を受けるような項目はあるか。

【小寺 武蔵村山市教育委員会教育指導課長】
武蔵村山市では、電子黒板を各校に設置し、毎年少しずつ数を増やしている。その他、IT化の推進ということで、学校支援システム等も含めて、市としてのIT化を年次ごとに進めている。それについては、毎年、各学校に利用状況や利用者の意見を確認している。

  • 小中一貫校でコミュニティ・スクールが導入されたということだが、一貫化する前の小学校・中学校で行われていた学校関係者評価と一貫校になったあとの評価はうまく連続しているのか。連続性が生かされて自然とコミュニティ・スクールになっていったのか、それとも政策的にコミュニティ・スクールありきという形で進んでいったのか。

【小寺 武蔵村山市教育委員会教育指導課長】
元々、子供たちの9年間の学びを保障してほしい、という地域の声があった。同時に、施策的に推進していったという経緯もあり、どちらかということではない。一貫校開設前の学校評価では、将来的に一貫校になるということがかなり前から意識されていたので、例えば中学校1年生がスムーズに中学校生活に適応できているかという視点での評価もされていた。それを踏まえて一貫校が推進されているので、評価の連続性を確保している。

林 京都市立高倉小学校校長の発表に関する質疑は以下の通り。

  • 評価表を拝見していると、評価指標欄には判断の根拠となるような明確な指標が出ていないように思えるが、評価指標とはどのようなものと捉えられているのか。

【林 京都市立高倉小学校校長】
1つは保護者や子どもたちからの評価、教職員の自己評価等の結果を評価指標として用いている。
もう1つは、アンケートによらず、数値化にあらわれないが実際に子どもたちの様子を見ることでわかることを判断の材料としている。

  • 評価材と評価指標が区別できていないのではないか。

【林 京都市立高倉小学校校長】
実態を直接的に捉えることのできる評価指標を設けることについて、それぞれの部分では、こうなればというふうなことは考えてはいる。

  • この表には載っていないのか。

【林 京都市立高倉小学校校長】
載っていない。

  • 京都市では全部の学校が学校運営協議会を設置しているわけではなく、設置しやすいところから設置しているというお話があったが、学校運営協議会を設置しにくい学校はどのような課題があるのかお聞かせいただきたい。

【林 京都市立高倉小学校校長】
京都市の場合は、全市一斉に学校運営協議会を設けたわけではない。地域と学校が非常に密着している地域、特に旧市内、京都の真ん中のあたりの、いわゆる番組小学校というふうな形で学校がスタートしているような地域は、地域の方の学校に対する思い入れが非常に強い。そのような学校では学校運営協議会が早く立ち上げられたが、市周辺部の場合、新しい住民の方が集められてできたようなニュータウンがある。そうした地域コミュニティーが十分ではない学校は、学校運営協議会をつくっていく地域の力が熟成していない。そうした力が育ってきた段階で学校運営協議会を設けていく。

  • 2つほどお聞きしたい。
    スライドの2ページ目で、「学校運営協議会または学校評議員が委員会を組織して行う評価を『学校関係者評価』とする」という記述があるが、その理由は何か。
    もう1点は、スライドの9ページ目に「改善に向けた支援策」とあるが、この支援策というのは、学校関係者評価を行った委員が実施する支援策を指すのか。

【林 京都市立高倉小学校校長】
まず1点目のご質問について、学校関係者評価はどの学校もきちんと実施しなければならないが、アンケートや教職員の自己評価は当然もとにするとはいえ、学校の子どもたちの現状を十分に把握していない方が評価者になるよりも、学校に出入りされる回数も多く、学校の実態に詳しい地域の方、保護者の方に、学校関係者評価をやっていただくことになった。学校の運営の仕方、子どもたちの今のありようなどについて、全ての学校で運営協議会または評議員が委員会を組織して学校関係者を行っていただく形になっている。
2点目の、学校関係者評価の評価結果と改善に向けた支援策についてのご質問だが、本校の場合、学校関係者評価を行っていただいた理事会(学校運営協議会)で話し合っていただいた内容を抜粋して記入している。

  • 学校要覧(机上のみ配付)の14ページに書いてある、組織の違いをご説明いただきたい。図によると、学校運営協議会である理事会が13名で、全体の一番上に位置している。その下に、100名の企画委員会・推進委員会あるいはそれを含めた113人のスマイル21プラン委員会があると理解してよいか。また、一般の保護者の方が当然いらっしゃると思うが、学校関係者評価における組織関係や権限関係はどのように整理されているのか。
    また、この学校評価システムについて、最寄りの御池中学校との間である程度共通しているのか。高倉小学校の児童は自然と御池中学へ行くわけだから、保護者の方にとってみれば、小学校と中学校で同様の学校関係者評価をする方が、長いスパンで課題を考えることができる。このように評価システムの開発そのものにも長いスパンで保護者・地域の方たちに関わってもらおうと考えたときに、小中連携の問題はどのように理解されているのか教えていただきたい。

【林 京都市立高倉小学校校長】
実際に学校関係者評価をしていただくのは理事会だが、推進委員会の中の評価部会で評価方法等の原案を考え、それを企画委員会で検討し、理事会の承認を受けて、理事会で評価をしていくという形になる。このようなプロセスのなかに一般の保護者の方々が参加している。
2点目の中学校との関係についてのご質問については、小中一貫教育という形で取り組んでいるが、学校運営協議会も、小学校2校、中学校1校のそれぞれに設置されている。3つの学校運営協議会で共通の取り組みもあるが、3校が1つの学校運営協議会を設けているわけではない。しかし、地域の代表の方は重複して学校運営協議会の委員になっている場合がある。

  • スライドの3枚目と4枚目の図を見ると、推進委員会の下に7つの部会があるが、この7つの部会は保護者の方々が中心に活動していて、教職員は企画委員会のほうに参加しているということでよいか。

【林 京都市立高倉小学校校長】
学校要覧の14ページをご覧いただきたい。推進委員会のそれぞれの部会で、どういう方が所属しているかが書いてある。PTA、保護者の代表の方もそれぞれの部会に参加しているし、地域代表、公募委員という方々も入っている。したがって、どの部会も保護者は参加している。教職員も7つの部会の中に入って活動している。

  • 先ほど、保護者からの協力は非常にあるが、学校側は、教職員の入れかわりもあり、子供像について学校側からのアピールが弱いというようなお話があったが、この7つの部会全てに教職員が入っても、当然異動もあるので、部会の中でも情報を共有して継続性を保っていくことが難しいように見えた。推進委員会の活動の学校側での情報共有についてはどのようにお考えか。

【林 京都市立高倉小学校校長】
もちろん学校の職員会議の中で、スマイル21プラン委員会の活動をどのように進めていくかについて、共通理解は図っている。今年は特に教職員の異動も多かったので、評価表にも書かれているように、もっと学校の願いを強く出してほしいということを特に強調している。それぞれの部会において、学校や子どもの様子はこうあるべきというご意見を言ってくださる地域の方が増えてきた。学校は、地域の方から「こういう取組もできますか」と聞かれたときに、その都度受動的に対応するという構図になっており、危惧している。もっと学校側から、こんな子どもたちにしたい、だから地域の力を貸してくださいと能動的に働きかけ、逆の構図にできるように、それぞれの部会で4,5名ずつメンバーとなっている教職員には常々言っている。

  • スライドの5ページ目や6ページ目に、「テーマ」と「重点課題」という見出しがついているが、これはスマイル21委員会が掲げているものか。校長先生がつくる学校の方針との関係はどうなっているのか。もう1点、一般的に保護者アンケートは学校が保護者に対して出していることが多いが、高倉小学校の場合、スマイル21委員会が保護者に対してアンケート調査をして、それをもとに学校に対して要望を出すという形になっているという理解でよろしいのか。

【林 京都市立高倉小学校校長】
保護者アンケートを実施する際、学校教育目標と、それに基づく4つの「目指す子供像」が実際に実現できているかを保護者の方に聞いているので、学校の教育目標と子供の実態の双方を踏まえたテーマ設定になっていると思う。
また、保護者アンケートは、スマイル委員会が主体になって実施するというよりも、学校が主体となって実施している。その項目の検討については、評価部会の中でも検討はさせていただいている。

冨川 社団法人日本PTA全国協議会副会長の発表に関する質疑は以下の通り。

  • 私はアンケートに偏した学校評価について極めて否定的。というのは、いくつかの学校のアンケートを見ていても、社会調査法に基づいたつくり方がされておらず、例えば2つのことを同時に聞いてしまっていたり、知らない人には答えようがないことを聞いていたり、あるいは尺度構成法をちゃんと守らずに4段階とか5段階にしてしまっていたりという問題がある。PTA、保護者という、アンケートに回答する側の立場から、学校が示すアンケートについて、どのように受けとめていらっしゃるか伺いたい。また、明倫小学校のアンケートの処理の仕方を見ていると、ちょっと肩すかしと思える回答があるが、学校のフィードバックのあり方についてどのようにお考えか。

【冨川 社団法人日本PTA全国協議会副会長】
正直なところ、私もそこまで深く考えてアンケートに答えることがない。ただ、例えば、明倫小学校の保護者アンケートを見ると、4、3、2、1の4段階で当てはまるものに丸をつける形になっていて、特色ある学校づくりについての設問は全回答の平均が3.3となっている。こうした保護者アンケート調査の結果は学校評価に反映されている。4段階の選択肢についても、それぞれ基準がある。肩すかしとおっしゃったのがどの部分なのかがわからないが、どのように評価をしていけばいいのかというのが本当に難しい。私はこのやり方がおかしくはないだろうなと思っているが、選択肢が4段階でいいのか、もう少し細かく分けたほうがいいのか、あるいは記述回答を求めて補ったほうがいいのか等は検討の余地がある。

  • 保護者の立場で学校関係者評価にも第三者評価にも携わったということだが、第三者評価が専門的な評価であるのに対し、学校関係者評価は少ない情報の中で自己評価を中心に評価しなければならないという制約がある。学校関係者評価を第三者評価のように学校に対して効果的なアドバイスができるような評価にするためには、何をしたらいいと考えるか。

【冨川 社団法人日本PTA全国協議会副会長】
私の場合、学校関係者評価については、学校評議員としてその学校に長くかかわってきていたから、学校のクラスの授業風景も全部見て回っていたし、様子が大体はわかる。ただし、学校のことを知っている分、先入観はどうしても入ってしまう。第三者評価のほうは、逆に全く知らない地域に行って評価をするため、先入観なく評価できる。地域の方や先生方からヒアリングをするなかで、先生方の答えにくい部分をいかに引っ張り出せるかが、第三者評価で重要なことだと思う。役職のある先生方のなかには型どおりのことしかおっしゃらない方もいるが、若い先生方からいかに本音が引き出せるかが大事だと思う。

  • 2点ほど伺いたい。
    配付資料にある社団法人日本PTA全国協議会「平成22年度 教育に関する保護者の意識調査」では、コミュニティ・スクールについて「知らなかった」と回答した方の割合が92%もあるが、アンケートの対象者となった保護者は、PTAの役員ではない保護者なのかというのが1点。2点目は、同調査の「学校の情報提供で不十分なこと」という設問で、「いじめ、暴力行為、不登校など生徒指導上の課題の現状」と回答した方が60%にのぼり、2番目の「学習状況の評価方法」が29%となっているが、このほかにも様々な項目があるのか、それはどういう傾向を持っているのか。

【冨川 社団法人日本PTA全国協議会副会長】
まず1点目のご質問だが、調査の対象者は、全国で小学校5年生、中学校2年生、そしてその保護者それぞれ2,400名に配付した。回収率が約80%なので、それぞれ約2,000の回答をいただいた中での子どものアンケート、また保護者のアンケートの結果である。
質問の2点目の「学校の情報提供で不十分なこと」については、2番目に回答が多かったのが「学習状況の評価方法」、つまり自分の子供の学力をどういうふうに評価しているのかということ。3番目に「各教科、科目の指導計画などの学校の教育活動に関する計画書」があり、これが22%。このあとは急激にパーセントが下がっていく。

  • 1点目の質問は、例えばPTA会長であれば大抵コミュニティ・スクールのことを知っているはずだと思うのだが、このような結果になっているのは、PTA役員などを務めていない保護者の方が対象の調査だったのかという意味。

【冨川 社団法人日本PTA全国協議会副会長】
このアンケートは各学校に配るので、回答者の役職等は限定していない。むしろ役職についていない一般の保護者が主な回答者だととらえていただいてよい。

  • 学校から提供してほしい情報について、例えば学力調査の結果や教員について、もう少しちゃんと情報提供してほしいという声が強いように思われるが、現実にはほとんどそれがなされていない。なぜ学校評価のときに、学力の状況を学校はなかなか提供していただけないのか。ご自身がPTA活動をしている学校も同じ状況だと思うが、PTAの立場から見て、どういうふうに受けとめていらっしゃるか。

【冨川 社団法人日本PTA全国協議会副会長】
全国学力・学習状況調査の結果については、私はもっと公表すべきだと思う。学校の順位が出てもいいぐらいだと思う。いくつかの基準があって、この学校はこのランク、この学校は一番下のランクにある、というぐらいのことを示さないと、保護者に危機感が与えられない。平均点より少し下回ったとか、上回ったとかとか、その程度のことではなく、なぜ秋田や石川の全国学力・学習状況調査の結果がいいのか等をしっかり分析しながら、それらを目標として向かっていかないと何の意味もない。むしろ、自分たちが位置しているランクを明確にした上で、保護者に対してみんなで学力を上げていこうとか、そういう方策を一緒にやっていく必要があると思う。したがって、私はもう少し全国学力学習状況調査の結果を具体的に出したほうがいいと思っている。

最後に自由討議が行われた。概要は以下の通り。

( ●は委員からの発言 ) 

  • それぞれの学校が地域や保護者の意向を取り入れながら、学校づくりを進められようとしているということは、よく伝わってきた。ただ、アンケートの位置づけが高過ぎてしまって、学力調査の結果、体力データ、図書の貸出冊数等、学校が持っている様々な事実データをうまく学校評価の中に位置づけられていない。そのため改善に向けた手だてが明確になっていかないという悪循環をたどっているように思える。そうした悪循環を超えていくためには、もう少しアンケートを相対化できる視点を持つ必要があると思った。

 

  • 先ほど「肩すかし」という表現が何を指しているのか分からないとのご発言があったが、例えば明倫小学校のアンケートでは、「休日に行事を行い、平日に代休をとるのはやめてほしい」という要望に対して、学校の回答は、早目に情報を提供しますという内容になっている。この要望を書いた人は、おそらく休日に働いていて休めない環境にあって、平日開催を求めたのだと思うが、学校はそうした状況に対し正面から答えていない。アンケートではこのようなずれがどんどん起こる。学力調査の結果についても、公表を求める立場もあれば、そうじゃない立場もあると思う。そうした家庭ごとの背景を抱えながら、実施することの難しさがアンケートにはあると思う。

 

  • 小寺課長の発表では、武蔵村山市教育委員会は1校1研究という取組をされていて、学校評価のなかでも教育的な面の評価を重点的にされている印象を受けた。例えば、子供の生活環境としての学校という視点では、どのような要望が学校から上がっているのか、またどのように今後支援に取り組まれていくのか関心を持った。
    林 京都市立高倉小学校校長のご発表では、地域の方々が熱心だというお話をいただいた。学校評価の目的は学校をよくしていくことだが、保護者がこうあってほしいと思う子ども像と、教職員が望む子ども像をリンクさせるのが難しい。教職員側からそういう像を出していくようにしたいというお話があったが、では現状なぜそれができていないのか。今後どうしたらできるようになるのか。また、7つの部会全てに教職員が入るというのは難しいように感じられた。これらを今後どう克服されていくのか関心を持った。
    冨川 社団法人日本PTA全国協議会副会長のお話を聞いて考えたことだが、学校の教職員というのは、学校の中のことに対する客観的な視点がなかなか持てないので、外部の方からぽんと言われたことにかなり動揺する。先日も、私の勤務校で学校運営協議会が子どもたちから学校への要望をヒアリングする会議を開いたが、そこでPTA会長から、子どもたちから要望を聞いたのであれば、それにきちんと回答できる人間を協議会の側でもそろえなければいけない、というご指摘を受けた。このように、非常に簡単なことでも、教職員だけでは見えていないことも多いので、学校の中からはなかなか見えない視点を積極的に出していっていただきたいなと感じた。

 

  • 私も修学旅行で萩市に自校の生徒を引率をして行ったことがあり、小学校の生徒さんが「松陰教学」の朗唱をしていることに非常に感動した。朗唱の文章をいただいて、本校でも使わせていただいている。
    本ワーキンググループにおいては、学校評価を実施する際の学校の先生方の苦労、疲労感等について議論しているが、学校現場で学校評価に対してどのようなご反応があるかをお聞かせいただけるとありがたい。
    学校と保護者、地域住民が持っている子ども像はそれぞれ異なる。そのずれをどう修正するかが大事なことだと思う。公立学校にとって大変なご苦労があるとは思うが、学校評価ガイドラインで示されていることに加え、これからの評価の項目の中にもそのようなことについて項目をつくる必要があると思う。

 

  • 高倉小学校では100人もの人が企画推進委員会に入って学校の運営にかかわっているというお話を聞いて大変驚いている。地域が学校運営に積極的にかかわって、学校に対して様々な要望をしていくというのは、これからの1つの新しいモデルになりえると思う。これは、高倉小学校は京都の町なかにあって、そこに住まわれている方が元々地域にかかわっている方が多い、いわゆる職住接近であるという特殊な事情が大きいのか、それとも徐々にそうした活動が積み上がってきて、地域の活動というものが蓄積されていったのか、どちらの要素が大きいのかを教えていただきたい。

 

  • 2点申し上げたい。
    1点は、学校評価におけるアンケートの偏重が私も非常に気になっている。アンケートそのものもかなり精選されなければいけないということについても全く同感。このことについては、本ワーキンググループでも、根本的に議論する必要があると思う。
    2点目は、評価書の書き方、分析の仕方について。例えば武蔵村山市の資料4を見ると、経営理念の1つに「秩序づくり」が掲げられており、そのなかに「マナーとルールを身につける」という中期経営目標があり、さらにそのもとに3点、短期経営目標として、「時間を守らせる」「清掃をやりきらせる」「あいさつをさせる」と書かれている。これらの短期経営目標の主体は教師ということになると思うが、方策や評価指標のところへいくと、項目の設定の仕方が適切なのか少し疑わしい。例えば「時間を守らせる」という短期経営目標を達成するための方策が、「教師が率先して時間を守り、規範を示す」となっているが、これは適切なのか。さらにその評価指標として「音楽を聞いて教室へ帰った児童の割合」と書かれているが、これで時間を守らせているかどうかということの評価が可能なのか。「清掃をやりきらせる」という短期経営目標も、「教師が一緒に清掃を行う」とか「無言で清掃を行う」ことが目標達成のための方策として適切なのか。やりきらせると言うからには、例えば小学校で言えば児童会の美化委員会が全部の教室をチェックして、オーケーが出るまでは児童を帰らせないなどの方策のほうがよいのではないか。
    萩西中学校の学校評価書を見ても、例えば「重点目標の達成状況の診断・分析」として、「昨年度より学習時間が増加した生徒の割合は73.1%で目標の80%を下回っており、学習意欲の低い生徒に対する対応を家庭と連携して進める必要がある」とあるが、このように診断・分析したにも関わらず、右側の学校関係者評価の欄で「家庭と連携し家庭学習を一層充実させてほしい」と極めて抽象的な評価をしている。学習意欲の低い生徒はどのような生徒で、そういう生徒の家庭はどういう家庭が多いのかというところまで、重点的に絞った形での評価分析をして初めて、私は対策として言えるようになると思う。自己評価で分析した事柄が関係者評価で議論が進んでいかないのだとすれば課題だと思う。

 

  • 本日は特に保護者の方の生の声が聞けたのがとてもよかった。先ほどお二人の委員の方から保護者のアンケートについてお話があった。学校評価の中で、学校にとって保護者アンケートは重要な位置を占めており、その結果に一喜一憂したりする。ただ、既に指摘があったとおり、アンケートの中身によっては保護者が評価しにくいものもあるということが、1つの課題として挙げられる。もう1つ、保護者の方は評価を行う際、学校全体ももちろん見ていただいてはいるとは思うが、やはり我が子と担任の先生との関係の占めるウェイトが非常に大きいため、その関係が良好だと非常に良い評価になり、その逆もまたしかりということで、聞き方によっては実態を反映した評価が得られないこともある。究極的には、子供たちが変容した姿を保護者に見せられることが成果を伝える最良の方法だと感じた。

 

  • 2点ほど申し上げたい。
    1点目は、実効性のある学校評価を目指そうとしたときに、網羅的な評価から重点化した評価へという転換が必要になる。その際、学校が力を入れた取組の評価が大事になる。例えば、今日は1校1研究という事例があったが、学校が今年特に力を入れたこと、またその成果や手ごたえを学校評価とリンクさせることで、先生方や地域の方にも見える形で示せるようになり、その成果を他校に広めていけるようになるサイクルができ上がるとよい。
    2点目は、どういう方に学校関係者評価の評価委員になっていただくといった問題がある。評価者にもある程度の力量が求められるとすれば、あるいは日頃の学校活動への関与度の高さが前提になるとすれば、今日のご発表にあったように、学校評議員あるいは学校運営協議委員会の委員の方が学校関係者評価委員になっていただくといったように、こうした制度とうまく連動させることで、学校評価の実効性を高めていく方法が考えられる。保護者や地域住民の方の関与度を高める、あるいは高い関与度を持っている方々を学校関係者評価委員になっていただくという仕組みをどうつくっていくのかが大きな課題。

 

  • 設置者に学校から学校評価の結果を報告するというフィードバックが、どのようにされるのがより望ましいのかというのは、現在のところ暗中模索の状況。各学校の評価結果は教育委員会に届くが、それをどのように処理すればよいのか。ましてや、評価結果を次年度の予算にどう反映していくかというところについては、ほとんど手つかずのような状況になっている。このあたりを整備していくということも、学校評価の大切な課題。

【林 京都市立高倉小学校校長】
本校は110名以上の方が運営協議会の委員を務めており、その方々が夜7時から集まられる姿にはいつも感動させられる。580人の子供たちのために、100人以上の大人の方が熱心に議論をしてくださっている、その姿こそが、学校評価の1つの在るべき形なのだと感心している。今年のテーマは「つながり」と「コミュニケーション」がキーワードだが、先ほどのご質問にもあったように、新しく私どもの校区に転入してこられた方が大変多い。今はそういう方々も古くからの住民と非常にうまくいっている。日本各地から来られる新しい住民の方々が、昔から住んでいる方から地域の重要な役どころを引き継いでいる。PTAの場合、自分の子どもが卒業したら役員の職から離れるが、学校運営協議会は子どもが卒業してもずっと委員のまま。そのようにして、地域のリーダーの方が育っていると思う。そうした意味で、学校運営協議会自身が学校評価をしている姿は大変うれしい。

【冨川 社団法人日本PTA全国協議会副会長】
私は萩市という封建的な土地柄の学校で活動しているので、大きい問題というのはなかなか起きにくいが、そういう地域だからこそ、外部に出しにくい情報は学校から出てこないことがある。PTA会長をやっていても、問題行動の情報等が私のほうに入ってこないことがある。ほかの保護者からこういうことがあったということを知って、校長や教頭に聞いたりして、やっと情報が手に入る、ということがある。しかし、問題があるからこそ、学校と保護者・地域住民とが一緒に取り組んでいかなければならないので、学校には問題があったらとにかく教えて欲しいというお話をさせていただいている。学校というところは、昔はもっと閉鎖的なところだったと思うが、今は先生の資質のこと、いじめのこと、またいわゆるモンスターペアレンツのこと等、いろいろな情報を出してもらわないとやっていけないような状況になってきている。

別の話になるが、明倫小学校では「松陰教学」を朗唱しているものの、朗唱しているだけで終わりになっていた。そのため、昨年、学校評議員会の中で、朗唱の中身を子どもたちに教えることができないだろうかという話になった。4年生、5年生、6年生になると朗唱の文章がすごく難しくて、何のことかわからないまま朗唱しているというのが実情だった。例えば「万巻の書を読むに非ざるよりは、寧んぞ千秋の人たるを得ん」という言葉があり、それは本をしっかり読むということが大事だという意味なのだが、それを具体的な教育活動にしていこうということになった。具体的には、子どもたちに朗唱のひとつを自分の目標として掲げさせて、朗唱とのかかわりをつくる取り組みを始められた。私たちも子どもたちが健全に成長していくことが願いなので、そうした活動に関わっている。今後とも学校評価を通して学校がよくなっていくように、是非検討を進めていただきたい。

【小寺 武蔵村山市教育委員会教育指導課長】
評価項目の立て方、方策や指標の設定の仕方については、今後私どもも研究していかなければならないということを実感した。数年前までは、地域・保護者の方からは、学校は何をやっているのか、というような声を多くいただいていた。しかし、学校評価を推進している中で、少しずつ、むしろ学校はこれだけ努力をしているんだ、私たちはこういう形で協力していきたい、という声が寄せられるようになってきた。学校評価の一義的な目標は、学校の実態をまずすべて俎上にのせて、改善策を検討していくこと。それに加えて、地域が学校を応援していく環境づくりをしていくこと。それが教育委員会としての役割であり、そうした取り組みが学校や教員を支えていくことになる。評価のための評価ではなくて、学校がやっていることを保護者・地域の方々に適正にご理解いただくための学校評価の構築に向けて、努力をしてまいりたい。

事務局から今後の会議の予定及び事務局体制の変更について説明があり、閉会した。

お問合せ先

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若林・中村・志村
電話番号:03-5253-4111(内線3705)
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(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)