※ 各事業の課題を洗い出し、課題を克服して「新しい公共」型学校につなげるための方策を検討。
○ 地域と連携した学校づくりの進展
(主な取組・制度)
1. 学校運営協議会(コミュニティ・スクール)
・ 保護者や地域住民が学校運営協議会を構成して学校運営に関与する制度
・ 平成16年に法制化
・ 平成22年4月1日現在、全国で629校が指定
2. 学校支援地域本部
・ 学校・家庭・地域が一体となって地域ぐるみで子どもを育てる体制を整えるため、地域のボランティア等が、学校の教育活動(学習支援や部活動等指導、環境整備等)を支援する仕組み
・ 平成20年より事業実施
・ 平成22年5月現在、全国で2,528本部実施
3. 放課後子ども教室
・ 放課後や週末等に小学校の余裕教室等を活用した居場所を設け、地域の方々の参画を得て、学習活動、地域住民との交流活動等の機会を提供する仕組み
・ 平成19年より事業実施(平成16年~18年は「地域子ども教室推進事業」として実施)
・ 平成22年度、全国で9,280教室実施
4. 学校評議員等
・ 校長が保護者や地域の方々の意見を幅広く聞くための制度
・ 平成12年に法制化
・ 平成21年3月現在、全国で36,075校の公立学校に設置
○ 地域と連携した学校づくりの成果と課題
1. 成果
・ 地域による学校運営への参画や学習支援の推進などを通じた学校・地域間の信頼関係の構築と協働による課題解決が促進された。
・ 地域との連携と子どもたちの学力の関係については、文部科学省が実施する全国学力・学習状況調査の結果において、子どもの学力が高い学校の方が低い学校より「PTAや地域の人が学校の活動にボランティアとして参加している」、「地域の人材を外部講師として招聘した授業を行った」と回答している割合が高い。
・ 学校支援地域本部事業に取り組んだ効果として、約7割の学校が「様々な体験や経験の場が増え、学力や規範意識、コミュニケーション能力の向上につながった」、約4割の学校が「地域住民が学校を支援することにより、教員が授業や生徒指導などにより力を注ぐことができた」と回答。
・ 教員が地域の参画による教育活動や子どもたちへの効果を実感し、地域との連携の促進に向けた意識改革につながっている。
・ 地域住民が学校と関わることで、自身の生涯学習、生きがいづくりにつながるとともに、地域のコミュニケーションの活性化に貢献している。
2. 課題
・ 学校側は課題を抱え込み地域との連携を重視する意識が薄い一方、保護者や地域の側も子どもの問題は学校に任せてしまうなど、学校と保護者・地域の意識に距離感があることが指摘されるため、当事者間の意識改革が必要。
・ 取組の初期には学校の負担が増大することも指摘されているが、軌道に乗った後は学校と地域とで役割を分担し、結果的に教員が子どもと向き合う時間の確保につながるような工夫が必要。
・ 一部の学校の好事例が近隣の学校へ広く展開していかない。他の良い取組を「学ぶ」取組が進まない。教育委員会(教育長)がこのような取組をプラスに評価していくことが必要。
・ 地域の学校運営に対する参画意識を引き出し、学校課題を共有しながら学校と地域が一体となった解決を進めるための校長のマネジメント能力向上が必要。
・ 教育委員会の方針や、地域住民等の遠慮や抵抗感などを背景として、学校と地域がともに良い学校をつくっていくという学校運営協議会の本来の役割が十分に発揮されていない状況が見られる。
・ 学校運営協議会の運営費やコーディネーターへの謝金など継続するための費用負担の問題。将来に渡って継続できる仕組みが必要。(例:設置者による支援、基金の設置など)
・ 取組に関わる人が入れ替わっても、取組が継続されるような仕組みが必要。(例:支援組織のNPO法人化など)
・ 地域ぐるみの取組が長期的に行われるために、小学校と中学校との連携した取組が必要。
・ 行政内の各部局間(学校教育部局、社会教育部局、福祉部局、まちづくり部局等)の連携が必要。
・ 学校運営協議会委員、学校評議員、コーディネーター、ボランティアの人材不足、または充て職などで限られた人に依存している場合も多いため、新たな掘り起こし、養成、きっかけづくりが必要。
○ 地域(コミュニティ)の現状と課題
・ 新興住宅地や都市部を中心に、地域の人の繋がりが希薄化している。
・ 子どものことを全て学校任せにする傾向が見られる。
・ 地方公共団体としても、地域活性化施策を行っているが十分ではなく、地域自体も弱体化しており、その活性化が必要。
・ 今後地域への参画が望まれる団塊世代の住民などの協力を得ることが必要。
地域(※)との協働により、すべての子どもに「生きる力」を確実に身につけさせるとともに、地域を活性化させる「場」としての学校
※ ここでの「地域」とは、近年のグローバル化、情報通信技術の発達、少子高齢化、核家族化、価値観の多様化などといった社会環境の大きな変化を踏まえて、地縁等に基づく昔ながらの共同体のみならず、地域住民、学生、大学、社会教育施設、商工会、企業、町会、民生委員、NPO、文化施設、スポーツ施設、福祉関係部局、まちづくり関係部局など地域の実情に応じた幅広い関係者を想定。
1 【幅広いネットワークを活かした充実した教育の場の提供の視点】
多様な教育課題に対して、学校だけではなく、関係行政機関、保護者や地域等の幅広いネットワークを活用した協働が行われることにより、子どもたちに様々な大人が関わり、開かれた教育の場を提供。その際、地域全体の教育を良くするという視点から、例えば、学区内の小中連携による取組など一つの学校にとどまらない視点が重要。
【ねらい】
○ 社会全体で子どもの学びを支える環境の醸成
○ 保護者や地域のニーズを学校運営に反映
○ 地域の参画による学校機能の強化
○ 地域特性や児童生徒個々人の状況に応じたきめ細かな対応
○ 教員の負担軽減や子どもと向き合う時間の確保 など
2 【大人の生涯学習の場としての視点】
子どもたちにより良い教育を提供するために学校・家庭・地域が力を合わせて取り組むことで、教職員・保護者・地域住民が互いに学び合い、そこで形成されたネットワークや学びの成果が新たな活動へとつながる、生涯学習の場としての役割。
【ねらい】
○ 子どもだけでなく、教職員・保護者・地域住民ら大人たちの学び合いと成長
○ コミュニケーション・協働する力の育成
3 【学校を拠点とした地域づくりの視点】
様々な関係者が学校に集い、協働することを通じコミュニティの再構築を図る拠点としての役割。
例えば、総合的な学習の時間等で行われる野外活動への支援を通じて地域の里山の保全、環境問題への取組につながる等、学びの支援を媒介とする様々な波及効果が考えられる。
【ねらい】
○ 地域住民の「公共」を担うという意識の醸成
○ 地域コミュニティの絆の構築
○ 人づくりを通じた地域づくり
○ 地域の活性化(学校を媒介とした地域課題への対応)など
1 地域住民等との協働を進めるための戦略的なマネジメント(外部からの人材登用含む)
2 学校と地域で熟議し、その結果を学校運営に反映する関係づくり
3 地域住民等をひきつけ、参加や学習活動を促進するための工夫
4 地域の幅広い支援ネットワーク
5 地域全体(例えば、中学校区など)の課題解決や活性化に資する取組
6 ICTの活用などによる交流の活発化、業務の効率化、授業改善などの取組
・ 平成22年度(2010)
学校運営協議会、学校支援地域本部、放課後子ども教室、学校評議員の成果と課題の整理
・ 平成23年度(2011)~
○ 全国の地域状況を考慮し、パターン(推進方法など)と地域特性(都市部/地方部など)に応じて10~20カ所程度の地域における持続可能なマネジメントモデルの総合的な開発研究
○ 上記の事業成果を踏まえ、全国的に普及するための推進方策、制度改正等について検討、実施
初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付