学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議(第8回) 議事要旨

1.日時

平成23年6月7日(火曜日)13時~15時

2.場所

中央合同庁舎第7号館(金融庁) 9階 共用第一会議室903号室

3.議題

  1. これまでの議題のまとめについて
  2. その他

4.出席者

委員

天笠座長、小松副座長、奥村委員、貝ノ瀨委員、勝方委員、小林委員、佐藤委員、竹原委員、松尾委員

文部科学省

山中初等中等教育局長、中岡初等中等企画課長、下間参事官、田中主任視学官、松浦企画官、廣野参事官補佐、坂東生涯学習政策局長、伊藤審議官、作花生涯学習総括官 他

5.議事要旨

 座長から、今後の議論の進め方について確認があった後、事務局より、資料2「地域とともにある学校(仮)づくり(課題)(素案)」、資料3「コミュニティ・スクールの考え方(検討用資料)」についての説明があり、それぞれの資料について議論が行われた。その概要は以下の通り。

●:委員発言  なし:事務局発言

  • 社団法人日本PTA全国協議会「平成22年度学校教育改革についての意識調査教育に関する保護者の意識調査報告書」によると、コミュニティ・スクールを知らない保護者が91.7%(小学校5年生の保護者で93%、中学校2年生の保護者で90.5%)であった。このように、現場の保護者にはコミュニティ・スクールという言葉自身が認知されていない。
  • コミュニティ・スクールを普及させるためには、こうした現状を前提とした上で議論を進めていく必要がある。
  • 学校の子どもの学びの場以外の側面をもう少し強く出せないか。生涯学習の観点から見れば、保護者として学校教育の中にかかわることを通して、子どもが育つだけではなく、保護者自身も成長する。学校が、大人が成長する場、学びの場、あるいは大人同士つながる場といったイメージがもう少しあっていい。
  • また、「地域とともにある学校(仮)」という表現は、学校と地域が一緒にあるというだけに感じられるので、人を中心に考えて、子どもの育ちの場以外にも大人の学びの場であることが伝わる表現にしたい。
  • 大人が成長する場という表現にもう少し工夫がほしい。大人の成長の場という表現は、見た人が人ごとのような感覚になってしまうと思う。また、この言葉自身に反発を感じる可能性もある。また、なぜ学校が地域づくりの中核になり得るのかという点をしなければならない。小中学校は全ての大人にとっての共通体験の場であり、さらに数の面、地理的な面でも身近な場である。また、一定のスペース、人的資源、物的資源を持っている。大人と同時に子どもも成長する場という特性もある。
  • 大人が学校とかかわることについては、もう少し説明を加えてもいい。学校にかかわることで大人が社会的なつながりを持つようになる。そのことがひいては子どもの教育の場をより豊かなものにしていく。
  • これまでの経緯について、基本法の改正の話が中心になっているが、新しい公共を1つの象徴として、学校の立ち位置、あるいは学校へのかかわり方が変わっているという時代描写についても書いたほうがいい。また、これまで子育てというと母親が中心だったが、今は、父親も母親も学校にかかわって子育てを一緒にやっていくなど、親世代の意識がかなり変わってきた。このような今の時代の親の変化をもう少し入れたほうがいいと思う。
  • これまでの背景として、10年ぐらいのスパンで振り返ってみるぐらいの視野が必要。21世紀に入ってからここ10年ぐらいのどういう動きの中で、本協力者会議の提言があるんだという立ち位置について、さらに整理して打ち出してもいいと思う。
  • 地域にいる大人は保護者だけではない。さまざまな大人たちが地域社会にはいるので、もう少し地域を広く考えたい。キャリア教育などでは子どもをともに育ててもらうし、何かあれば駆けつけてくれる、何かしてくれるという存在でもある。
    また、「地域とともにある学校づくり」という表現はインパクトがないので、今の時代にふさわしい表現にする必要がある。
  • 学校と地域の人々が協働することによって、子どもたちの学びが非常に広がったり、豊かになっていくということを強調したい。キャリア教育のように、学校の中だけで学ぶことが難しいものを、地域の人たちと協働することによって、豊かな学びが実現するというように、学びの構造が変わってくる。学校教育中心主義だった20世紀型の教育の内容や方法が変わるのだということを強調したい。
  • 地域と学校との目標の共有というのは簡単なことではない。大変な作為や努力が必要。かつて、私は、市民との間で教育についての共通理解を得るために、我が町はどういう子ども像を目指すか、どういう人間を育てるのか、その仕組みとしてどういう学校教育があったらいいのかということについて、市民の皆さんとの意見交換が20回にも及んだ。そのプロセスの中でだんだん共通理解を得て、コミュニティ・スクールについても、具体的に役割や責任に関する共通理解ができた。教育のビジョンをきちんと定めること、また、そのビジョンについて共通理解が前提にあって、目標の共有ができる。
  • コミュニティ・スクールを浸透させていこうと取り組む一方で地域とともにある学校という新しい概念が出てくると、多くの方が整理ができなくなり、理解の浸透がさらにおくれる懸念がある。
  • ある学校では、期待される子ども像・教師像を考えたが、子ども像をつくるのが大変だった。子ども像を共有するという表現だと、既に子ども像が何となくあって、それをいきなり共有してしまう感じがする。また、目標や子ども像は、共有しやすいものほど抽象的になってしまう。逆に、具体化するといろいろな意見が出てきて共有しにくくなる。
  • 関係者が当事者意識を持って熟議を重ねるようになるためには仕掛け・作為が必要。関係者が当事者意識を持って熟議を重ねられるような仕組みをつくっていくことが必要である。我々はこれまで地域づくり、まちづくりイコール学校づくりという観点で議論してきた。東日本大震災の被災地でも、まちづくりが論議される際には、当然学校づくりの観点が入ってこなければならない。しかし、被災した地域の人々がどんな地域を望んでいるのかがほとんど聞こえてこな地域から学校像を論議ようなシステムが働かないものかと思う。
  • 学校の先生の中心的な専門性は授業である。先生が豊かな授業を展開していくために保護者、地域住民がどのように支援していくのかが言及されてよいと思う。
  • 教育ボランティアや学校支援ボランティアの方が先生の専門性を最大限尊重した上で部分的にでも支援をしていくと、成果として、学校評価の精度が上がってくる。保護者や地域住民にチームティーチングのような形でボランティアに入ってもらうと、1年目は先生のいいかげんな部分やあらが目につくため、ボランティアの方の学校評価は大変厳しい意見が出てくる。それゆえ、先生方からは、親が学校に入ってくることに対して非常な反発がある。しかし、2年目、3年目になると、チームティーチングで入ることが、先生の仕事の大変さ、その中で非常な力を発揮していることに納得するし、リアルで建設的な評価が出てくる。
  • 新たな学校と地域との関係づくりという中で、防災教育や環境教育など、新しい教科横断的な取り組みについての展開が出てきてもいいと思う。
  • 教育振興基本計画には、コミュニティ・スクールの設置促進ということが盛り込まれているが、今後5年、10年を見越したときに文科省としてコミュニティ・スクールをどういう形で進めていくのか、現段階で考えがあれば伺いたい。

現行の教育振興基本計画においても設置促進を図るということが盛り込まれており、今後もその立場は引き続き維持していくものだと考えている。ただ、地域とともにある学校づくりの中で、促進していくのが学校運営協議会のみなのか、それともいろいろな形があるのか、また、コミュニティ・スクールの拡大の仕方、数値目標をどうするのかなどについては委員の皆様のご意見をいただきたい。

  • 狭義のコミュニティ・スクール、広義のコミュニティ・スクールという言葉使いについて、今の説明では、学校運営協議会がある学校が狭義のコミュニティ・スクールであって、学校運営協議会の有無にかかわらず保護者や地域の方が幅広く参加している学校が広義のコミュニティ・スクールということだと思う。しかし、運営協議会をすぐに置くことは難しいので、その前段としてさまざまな学校と地域とのかかわり方があって、そうした活動によって信頼を築いていくなかで運営協議会に発展をしていくという流れが妥当だと思う。それを狭義、広義という言葉で表すと、広義のほうが良いもので、狭義のほうは矮小化された学校という感じがする。
  • コミュニティ・スクールや地域とともにある学校の設置促進は基本的には望ましいが、実態を見ると非常に地域的に偏りがある。設置者によってもかなり温度差がある。
    よく聞くのは、例えば人事の問題について保護者、地域からあれこれ言われたらたまらないという意見や教育委員会が責任を持って教育活動を行い、保護者や地域の人たちは何となく応援してくれればいいという意見である。そうすると、パートナーシップをつくり、責任もある程度共有していこうというコンセプトにそもそも問題があるのか、それとも誤解があって、コンセプトの説明の仕方に工夫が必要なのか。コミュニティ・スクールが制度化されて6年目、7年目に入っているにも関わらず広がりを妨げている要因が何なのかということの分析をする必要があると思う。
  • コミュニティ・スクールが広がらないのには誤解があるからだと考える。日本の今のコミュニティ・スクールは、地教行法の中で、校長先生の経営権をちゃんと認めている。また、区市町村の教育委員会の内申権も厳然として残っているため、例えば学校運営協議会から都道府県教育委員会に人事の希望が出されたとしても、市区町村教育委員会の教育長が別な考えを内申として都道府県教育委員会に上げることもできるし、都道府県教育委員会はそれらを含め総合的に人事を決定することになる。したがって、地域のボスに人事が振り回されるといった懸念はあたらない。
  • コミュニティ・スクールに限らず、振興計画はできるだけ数値目標を設定したほうがいい。コミュニティ・スクールをどこかの町で教育委員会が1校指定するだけでも校長先生方や教職員、PTA、地域の方に相当な理解をしていただく必要がある。数値目標を設定していかなければ、結局、自分の問題としてとらえられないと思う。
  • 数値目標を入れるのは賛成だが、そのために文部科学省や教育委員会の役割や責任を明確にする必要がある。単に現場にやれと言っても現場は動かない。
  • 各地で一斉に実現しようとしてもうまくいくところばかりではない。地域内にモデル学校を指定して、そこでの成功例、失敗例を段階を追って周りに広げていくという形のほうが一斉に指定するよりもプロセスとして望ましいと思う。
  • 市町村教育長に対する促進策の一環として、研修会等の実施も考えられる。
  • 長いスパンで考えるなら、市町村教育長だけでなく現場の理解を得ることが一番大事。管理職研修、新任研修、中堅研修など、すべての教員養成の段階でこういうことを理解できるようなプログラムがあると望ましい。
  • 推進していく上での課題例としていくつかあげられており、また、目指すべきは学校への在り方として地域住民との目標の共有や学校運営への参画があげられているが、恐らくすべての出発点は、地域の人々が学校を理解することであるといえる。学校関係者評価では、地域による学校への支援の現状、先生方の勤務実態など、学校の実態を理解できるような形にしていくことが必要。
  • 学校は教員限り、保護者限りの情報のやりとりが多い。例えば学校だよりを保護者以外の方の目に触れるように、地域の町会の掲示板に掲示したり、関係機関に配布する等して、広く情報が伝るようにする必要がある。学校の様子を知ってもらうには、学校の中に入ってもらうのが一番いい。そういう中で学校の様子がわかっていると評価も極めてスムーズになるし、市民の皆さんの学校に対する理解も進む。そういう意味では、もっともっと学校が開かれなければならない。学校の中でも差し支えない限りは大勢の方が入って、子どもを育て、見守っていくというような、そういう雰囲気が仕組みとしてできてくれば非常にいい評価が出てくると思う。
  • 学校評価ガイドラインの形成過程で、自己評価、学校関係者評価、第三者評価という、積み重ねの中で学校評価の在り方を追求してきた。また、説明責任との関係の中で学校評価が出てきたが次第に学校改善との関係で学校評価ということが議論されるようになった。そういうプロセスがあった中で、学校関係者評価が地域との関係構築という形で位置づけられているが、まだ学校評価そのものの在り方を議論すべき余地があるのではないか。
  • 既に行われている学校評価の中身を見ると、関係者評価以前に自己評価そのものが課題を抱えていて、きっちりと保護者の方に説明をする形の内容のものになっていない。自己評価が充実していないと、関係者評価はできない。まずは自己評価そのものが充実、改善されていかなければいけない。
    その前提として、設置者としての教育委員会自身が、町としてどういう学校をつくりたいのか、どういう児童生徒を育てたいのか、自分のところの教職員には何を期待するのかというビジョンが明確でなければならない。また、市の教育ビジョンを校長が自分の学校でしっかりと実現し、かつそれを保護者、地域の方に説明をしていくというふうな仕組みの充実がないと、地域とともにある学校というのができなくなるし、学校評価そのものが形骸化してしまう。
  • 最近地域の方々から、最近の保護者はPTAのことは一生懸命やってくれるがなかなか地域の中に参画してくれない、というご意見をよくいただく。この中にも、保護者の方が地域の中に入っていくということを入れていただきたい。
  • コミュニティ・スクールには学校運営協議会委員に対する報酬など、財政的な出動が伴う。コミュニティ・スクールの設置を推進するとなると誘導的な仕組みが必要なわけだが財政的な援助をきちんと位置づけるべき。
  • 本当に必要な人員配置をしていくためには、学校としてどういう仕事をどれだけの時間でやるかという標準的な時間というのを設けることが必要。
    学校運営の効率化は今いろいろな都道府県で進められているが、校務分掌の中に、業務改善の部門や職種を位置づけていく必要がある。そうしなければ、二、三年で教職員が異動してしまうと元に戻ってしまう。
  • 震災復興に向けての支援が、地域とともにある学校づくり全体の方向性とできるだけ融合した形になっていくことが重要。推進目標5が他の目標と別々の話ではなく、一体として組み込まれていくことが必要。
  • 教師、保護者、地域の方々、設置者、それぞれの人にとってこの新しい学校の在り方がどういう魅力があるのかを明確にしたい。例えば教師にとっては、先生方の仕事が軽減されるというだけではなく、キャリア教育などの場面でより豊かな教育を子どもたちのためにできるようになる。
    財政面の話に関して、コミュニティ・スクールになれば自治体から補助金が出るということだけでなく、例えばコミュニティ・スクールになればスクールファンドがつくれるようにするなどの施策も考えられる。
  • ある地域の教育長が、我が市は住民の意識が低いのでコミュニティ・スクールをつくる予定はないと言っていた。しかし、コミュニティ・スクールのように市民と一緒に学校づくりをするプロセスのなかで、学校と市民が考えをまじりあわせ、お互い成長していくものである。また、復興構想会議の提言の中にこの会の議論を盛り込んでほしい。
    東北地方には学校支援地域本部は相当数あるが、コミュニティ・スクールはほとんどない。地域とともにある学校という、21世紀のモデルとなるような学校が東北で作られ、それが全国に展開されていくという、教育改革プランを復興プランに取り込んでいただければと思う。
  • インセンティブはきわめて重要。保護者を中心になってまとめている人に1,000円でもいいので国が支援を行うなど、具体的な方策を考えていく必要がある。

事務局から今後の会議の予定日時について等の説明があり、閉会した。

お問合せ先

初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

電話番号:03-5253-4111(内線3705)

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)