学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議(第7回) 議事要旨

1.日時

平成23年5月20日(金曜日)10時~12時

2.場所

中央合同庁舎第7号館西館(金融庁) 9階共用第一会議室 903号室

3.議題

  1. これまでの議題のまとめについて
  2. その他

4.出席者

委員

天笠座長、小松副座長、貝ノ瀬委員、勝方委員、金子委員、木岡委員、小松委員、佐藤委員、竹原委員、松尾委員

文部科学省

尾崎審議官、中岡初中局企画課長、下間参事官、田中主任視学官、、松浦企画官、廣野参事官補佐、作花生涯学習総括官、村田生涯学習官 他

5.議事要旨

事務局から、事務局の体制の変更について説明があった。

座長から、今後の議論の進め方について確認があった後、事務局より、資料2「これまでの議論のまとめ」、資料3「これまでの議論から得られた推進方策のアイデア例」についての説明があり、それぞれの資料について議論が行われた。その概要は以下の通り。

●教育基本法や学校教育法、教育振興基本計画、また、学習指導要領の中で、学校と地域や保護者との連携ということが既に盛り込まれており、この会議における議論も、そうした教育改革の大きな流れの中に位置づいていることを書いておく必要がある。

●まとめの中に今回の災害のことを触れることはできないか。地域に開かれた信頼される学校づくり、地域とともにある学校の姿は、特に大きな災害のときにあらわれ、実感される。

●地域の拠点、地域の砦としての学校が機能するためには、学校と地域の人との一体感やコミュニケーション、協働が必要。運営は地域住民が担い、ルールをつくる過程でどのような協議、意思疎通があるのかを明示していく。

●3月11日以降の状況はこの会議の議論にも大きく影響を及ぼしてくるのではないか。その上で、震災を踏まえた上でまとめていくということが我々に課されている。

●学校が抱えている課題の中で、これまであまり問題がクローズアップされていないものがある。1つは、学校は経験してきたことには強いが、経験していないことには極めて弱いということ。また、今後10年を見越したときに、今、30代、40代が希薄な中で、どう管理職を確保するのかということ。それらを踏まえたときに、これまでの管理職養成の仕組みが妥当であったのかどうか、また、学校にかかわるさまざまなスタッフのあり方やリクルートの仕方についての議論がまだ十分されていない。

●コミュニティ・スクールの発展形態として、地域ぐるみで子どもを育てることにとどまらず、お年寄りも含めた地域の大人たちの学びの拠点となること考えていく必要がある。その際、教員が地域の大人たちを教えるということではなく、地域の大人たち自らが学びを創っていくことに力点を置くべき。

●地域の大人たち自らが学びを創っていく過程で、地域にかかわる人たちが主体性のある市民として、また、共同体意識を持った市民として、人間的に成長していくということが期待される。それは、よりよいまちづくりのための担い手が増えるということにつながる。

●地域にかかわることで、たくさんのさまざまな人との合意形成の仕方や一緒に仲よく活動するやり方、信頼関係の結び方を学ぶことが一番大きな学び。

●被災地の避難所運営でも、市民がうまくマネジメントをしたところはとてもうまくいくと聞いた。しかし、自分たちが担い手であるという意識を持ってマネジメントをすることは、簡単ではなく、日ごろから、さまざまな人とコミュニケーションをとり、時にはトラブルを乗り越える等、さまざまな体験を積むことが必要。

●今回の震災では地域のコミュニティの力が問われていて、東北地方はその力がかなり強かった。地域の中での助け合いがあった。

●学校をコミュニティに対して開くことが、子どもの教育にも、地域にとっても大変いいことだと、理念としてはわかるが、具体的にどのように進めていくのかという段階では、現状と理想の間にすごく大きな格差がある。その差を越えていくために、学校は、子どもの教育という閉じた空間ではなく、地域で子どもの教育を考えて支えていくための機能的空間であり、物理的空間であるという位置づけを示していくということが必要。

●(震災を踏まえて、まとめていくことでいうと、)例えば(3)学校の可能性の一番上のところで、日本の公立学校は社会のインフラだと書いてあるが、これだけ書くと、一方的な自己宣伝に見えてしまうので、震災のときのことや日頃から地域に貢献していくという文脈で書くことで、メッセージが伝わりやすくなる。

●記述的な部分と目標を設定する部分を具体的に書くことが必要。例えば、資料3の1は、コミュニティ・スクールの数値目標について具体的なイメージを出す。2は、学校関係者評価をどういうふうに実施していくかということについて書くべき。3は、都市部と過疎地では、同じ方法ではうまくいかず、いろいろな方法を考えなければいけない。その際の「制度的な課題」をもっと具体的に書くといい。

●学校を地域の拠点として使っていくのに、コミュニティハウスというやり方もある。その担い手は、市の職員がやる必要はなく、コミュニティハウスの職員でも良い。

●学校を地域で活用することでコミュニティができる。例えば、ふだんから学童保育と保育を一緒にやっていると、いろいろな人が学校に集ってくるようになる。そこに、たまには学校の先生も顔を出すといったようなことが必ず力になってくると思うので、そういうことが進むような具体的な方策も加えていくとより良い。

●「地域とともにある学校」というのも大方異論はないと思うが、「地域とともにある学校」の輪郭をもう少し明示していく必要がある。

●学校のスタッフの在り方も、学校の在り方や地域の在り方を考えるに当たって、もう一度考え直さなくてはいけない。これからの学校のスタッフの在り方として、ただコーディネーターを設ければ良いだけではなく、もう一度、組織の構造自体も見詰め直さなくてはいけないところがある。

●今、学校の校長の裁量権が拡大されており、教育委員会の学校に対する関与は弱くなっている。そうしたとき、学校に対してどこかがモニタリングしていく必要性は出てくると思う。学校自身は、ある意味で独善的になる可能性もあるので、地域、あるいは保護者が学校に対して、モニタリングという何らかの形でかかわるという観点も必要。

●「子ども像」を勝手につくられて教育がされていいのかという疑問もあるので、もう少し、やわらかい表現がいい。

●ここで語られていく学校というものが、一つ一つの学校にまだとどまっているようなところがある。それぞれの学校の持つよさをうまく組み合わせていくような前提で、学校間連携も示されていったらいいと思う。

●学校が組織としての力を発揮するためのマネジメントという話では、学校の最高責任者である校長のリーダーシップの問題が問われる。学校自身が自主的・自律的に意思決定をどうできるのかについて考えをまとめておく必要がある。

●教育委員会と学校の関係、学校の内部組織での意思決定の在り方で、特に校長の責任と権限をどうするのか、判断力をどう高めるのかということも課題になってくる。

●コンセプトとして、ともにあるとか、協働というのは、非常に結構だと思うが、それを踏まえて、国がどのように関与した形で進めるかについて具体的な提案が必要。それがなければ、この場をシェアしている価値が少なくなってしまうと思う。

●コミュニティ・スクールをいかに拡大していくかということでの創意工夫が必要。全国コミュニティ・スクール連絡協議会が発足し、全国のコミュニティ・スクールを設置している教育長がそれぞれの課題を共有しながら、拡大、そして、そのためのいろいろな隘路について議論している。

●学校運営の改善の議論を総合的に踏まえた一つのビジョンを復興の教育モデルとして、実際にプランニングしていくことが、日本全体の教育改革のプランにつながっていくと思う。

●学校は一番安全な場所にあり、防災の拠点として地域における避難所としても位置づけられている。また心のよりどころとしての小学校区というまとまりもあり、単に財政論で学校を統廃合するということは、実際に避難所や防災の拠点、また、学びの拠点としての学校の機能を考えたときに、疑問がある。

●1つのシステムが成立するのには10年かかると言われている。コミュニティ・スクールはまだ5年、道半ばにおいて、その是非を評価する段階ではないと受けとめている。その一方で、住民自治性を強化していくという方向において、コミュニティ・スクールは、大いなる実験として意味あることだとも受けとめている。

●ソーシャルキャピタルは相当に上がってきている効果が見られるが、ガバナンス改革としてはまだまだ課題を残している。ただ数を増やせばいいというわけではなく、ガバナンス改革に対する見通しもあわせてここで示すことができればよい。

●コミュニティ・スクールには地域的な偏りが非常にあるが、コミュニティ・スクールがないところでは地域との連携がないわけではなく、非常にある。コミュニティ・スクールの在り方について、地域の人たちに理解をしていただくということとあわせて、地域特性を踏まえたいろいろなコミュニティ・スクールがあっていいということを示していくことが必要。数と同時に、日本全体のバランスが悪いのが非常に気になるので、その辺をどう解決したらいいの工夫したらいい。

●コミュニティ・スクールの多様性をどう理解してもらえるのかも、すそ野を広げていく上で大切な要素であると思う。

●多様性ということでは「人事や予算の規定にこだわらず柔軟なあり方があるということを「地域とともにある学校」という言葉使って、もう少しやわらかく、広げていくことが必要。

●東北地方に伺っても実態としては、かなり学校と地域の関係が成熟しているというところも少なくない。そういう実態をとらえていくと、もっと点が多くなる可能性を持っている。そこへどう手を差し伸べていくかについて、方策やアイデアが必要。

●既に地域と連携のできている学校は、別にコミュニティ・スクールにならなくてもいいじゃないかということを言っているが、コミュニティ・スクールになって学校評価等の学校運営に携わることがきっかけになっていろいろなことが話し合える。それから、今まで学校になじみのなかった地域の方も、これで意見が言えるという新しい展開があると思う。

●国の力で全部をコミュニティ・スクールにしろということはなじまないが、コミュニティ・スクールにはいくつかのタイプがあると、例えば国のパンフレットなりで具体的に示せば、学校もどのタイプを選択すればよいか決めやすくなる。

●コミュニティ・スクールに限らず、地域とともにある学校というのは、確かに日本では多いと思うが、中学校では少ない。小学校は明治以来の歴史の中で、地域と一体化した村の学校としての地位を持ってきたが、中学校のほうは戦後の学校として、どうしても地域と遊離してしまっている。さらに高校まで考えていくと、とても地域とともにあるということのイメージが具体化できないといったことに対して、どういう手を打っていくのかということがさらに求められる。

●区市町村の教育委員会が小学校と中学校を両方設置しているので、教育委員会にとっても中学校区での連携という形は、非常にやりやすい。義務教育9年間を通して我が町ではこういう教育をやりますというと、必然的に中学校区単位になってくる。

●ただ、小学校からきれいに1つの中学校に進学するケース以外に、接続の仕方が非常に複雑なケースがあるため、トータルでこの町の義務教育として15歳までにすることを示すことも非常に重要なテーマ。

●数値目標には、プラス面とマイナス面があり、マイナス面は、ただ数を達成すればいいということになってしまうおそれがあること。それから、数字が先にあるから、つくれというプレッシャーになっていくことがある。しかし、何県に何校つくれということではなく、全体として何時までに何校まで増やしていこうという目標ができれば、むしろ、文科省に対するプレッシャーとなってよい。

●ある教育雑誌で、保護者が学校に参画していく意識が根付いていない日本で無理してコミュニティ・スクールをつくれば、モンスターペアレンツと教職員組合に乗っ取られてしまうという文章を読んだ。そういう不安もやはりあるので、最終的な責任はどこが持つのかということを明文化しておく必要がある

●ガバナンスの部分があいまいなままだと、コミュニティ・スクールを皆さんつくりましょう、頑張ってくださいよという、精神主義とで終わる懸念がある。この問題にどんどん踏み込んでいくと、教育委員会のありよう、国と各学校の関係のありよう等々まで果てしなく発展してしまうが、できる限り具体的な形で、単に精神主義で終わらないものをつくっていく必要がある。

●中学校区を運営単位とするということについては、いろいろなやり方があると思う。そういう意味では、参考の明示の仕方は、もう少し幾つかの姿を示してもよいと思う。

●これまで1校の学校単位でやってきた日本の学校の長い歴史からすると、周囲の学校とつながりながらやっていこうということ自体、ある意味で画期的なことになる。中学校区での連携がうまく生かされるよう、明示の仕方に工夫がほしい。

●例えば、小学校2校と中学校1校が集まると、校長、副校長が6人いるが、6人全員が管理職でいる必要は必ずしもなく、中学校の校長が学園長になった時に、学園長が小学校何をできるか、職務分担や6人の配置を自治体が決められるようにならないか。

●過疎地では、学校が維持できるかどうかという課題があるため、ある程度の予算を必要に応じて追加し、実質的な加配を行ったり、中高一貫で連携型にする場合には、スクールバスを使ったりコーディネーター加配をしたりするというインセンティブをつける。

 

●学校の中にあるコーディネーター機能というのがマネジメントの中で位置づけられないと、元気な先生やよくわかっている方が個人として動くことになってしまうので、校務分掌や学校のマネジメント上のどこに位置づけて、どのような権限で行動をしていくのかを明確にしておく必要がある。

●教員養成、教職員研修、地域とともにやる研修を大事なこととして位置づけていくことが重要。「管理」から「マネジメント」への意識改革には、マネジメントの組織のつくり方と研修のあり方というのが大きな柱になる。

●学校の様子をよく知ってもらった上で評価をしてもらうためには、やはり学校が開かれて、教育ボランティアや教育支援、学校支援が頻繁に行われていることが重要。コミュニティ・スクールで風通しがよくなるということがあればこそ、実効性のある学校関係者評価ができてくるといえる。

●マネジメントについては、筑波の教員研修センターで、若手の管理職とか管理職候補を集めて研修を行っているが、全国小・中学校だけでも3万校以上ある中で、年間1,000人程度集めても限界がある。マネジメント力をつけようということであれば、出前研修を行って地区ごとにマネジメントの研修をしていったり、有効なマネジメントのプログラムができているならば、それを全国で活用してもらうようにしなければ実効性が確保できない。

●学校関係者評価については、これまでも事例集や参照書が作成され、それが学校に配られているが、そこでとまってしまっている。あるいは学校組織マネジメント研修も、確かに筑波の教員研修センターで指導者養成を行ってきて、受講者たちが今度は講師となって各県の研修を担っているが、一体どの水準にあるのかという検証がどこまでなされているのか疑問がある。これまでやってきたことについて、もう少し踏み込んだデータや、根拠を持って提起されるべき。

●管理であれ、マネジメントであれ、実は中身は同じであり、どういう場面でのどんな働きをもって、マネジメント力と言っていくのかを問わなければいけないのに、「マネジメント」という言葉が万能のように使われてしまっているということにも疑問を感じる。

●学校関係者評価について実効性を考えると、今行われているのは、ほとんどが保護者等にアンケートを配るだけのものである。保護者会を活用したり、日常的に保護者とか地域から声を聞いたりすることも、実効性のある形として示せないか。

●確かにアンケートというのは数字でるが、その数字で学校は何か改善できるのということが実はよくわかっていない。限りなくほとんどのところで学校関係者評価を行い始めている段階に来たので、実効性のある評価について具体的に提案をしていく必要がある。数字さえ上げればいいという形になっているところに教育改革のいびつなところがある。

●学校関係者評価は、まず制度化して導入したが、学校のマネジメントの一環として使いこなせていないという状況の中にある。マネジメントの一環として、改めてマネジメントの研修の中で、学校関係者評価を含めた学校評価の習熟が必要。これまでの組織マネジメントにかかわる研修プログラム等々が、そういうものたり得ていたのかどうなのか「検証」が必要。

●学校評価は形をつくるところまでは来たけれども、その形が実質、改善につながっていくという点については、まだ十分手が差し伸べられていない。何をどうすることで、状況を動かしていくか、その「何を」というあたりが提起できればと思う。

●関心がある保護者なり、授業参観をきちっとしてくれる保護者等を、学校モニターという形で選抜するやり方もある。もっと絞れば、学校評議員制度がかなりの学校で活用されているし、もっと言うと、学校運営協議会がまさに関係者評価の一つの柱になっていく。そうすれば、コミュニティ・スクールということと関係者評価とがちゃんとつながってくるし、実効性という点でも、いろいろな形のステークホルダーを設定できるので、関係者評価がかなり突っ込んだ形で実施してもらえる。

●学校のマネジメント力をどう高めていくのかといったときに、今の校長相手に高めようという発想ではとても追いつかない。マネジメント力を持った校長をリクルートしていくというところに視点を置けば、まずは教職大学院のありようが議論されるべき。一体どういうカリキュラムが教職大学院において、スクールリーダーコースの中で展開され、どんな効果をもたらしていっているのかということから、具体的なありようを考えていけるだろうと思う。

●校長会や教頭、副校長会などが、まさに専門職集団として、自律的な職能開発に向かって動いていけるような支援を果たしていくということも求められる。こうした各段階におけるマネジメント力の向上が、学校関係者評価にとどまらず、戦略的な将来に向けた学校づくりを生み出すものだと思う。

●コミュニティ・スクールは、選択的な制度であるが、地域の方が学校運営にかかわるというのは、ほとんどの学校で行われるような方向にこれから向かわざるを得ないと思う。

●学校関係者評価が行われるとき、必ず意見を交わすような場を設けることが重要で、そうでなければ、お互い不信感を生むこともある。評価結果が妙に低かったが、それはどうも誤解に基づいていた、というようなことが結構あるので、意見を交換するような会をセットで設けるようなことも必要。

●中学校区に関して言うと、1校の小学校から3校の中学校に分かれてしまうようなところでは、中学校単位というのはぴんこない。地域によってはぴんこないところもあるので、そういったところも配慮が必要。

●学校は、企業とは違い、グッドプラクティスがなかなか普及しない点が問題と思っていている。学校選択制等の競争原理を入れたらどうかという提言を産業界からはしているが、どうもうまく動いていないというのが実態。そう考えると制度的な枠組みをきちんとしていくことが重要となり、そういう意味でも、今回、コミュニティ・スクールという方策をきちんと打ち出して、地域に開かれた学校というものを制度的に位置づけていくという方向は、非常に正しいと思う。

事務局から今後の会議の予定日時について等の説明があり、閉会した。

お問合せ先

初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

電話番号:03-5253-4111(内線3705)

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)