学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議(第6回) 議事要旨

1.日時

平成23年3月4日(金曜日)13時~15時

2.場所

中央合同庁舎第7号館東館(文部科学省) 3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 地域と連携した組織的な学校運営について
  2. 学校長のマネジメント能力について
  3. その他

4.出席者

委員

天笠座長、小松副座長、奥村委員、貝ノ瀨委員、勝方委員、金子委員、木岡委員、小林委員、佐藤委員、竹原委員、松尾委員

文部科学省

山中初等中等教育局長、尾崎審議官、中岡初等中等教育企画課長、下間参事官、田中主任視学官、廣野参事官補佐、日向教育改革調整官、安彦教職員課長補佐、板東生涯学習政策局長、伊藤審議官、作花生涯学習総括官、塩見社会教育課長 他

5.議事要旨

  • 事務局から、資料1「第2回コミュニティ・スクールの在り方を考える「熟議」結果概要」についての説明があった。
  • 座長から、今後の議論の進め方について確認があった後、事務局より、資料2「第6回会議でご議論いただきたい事項」、資料3「今後の検討スケジュールについて」についての説明があった。
  • 事務局から、資料4-1「地域と連携した組織的な学校運営のイメージ」、資料4-2「地域と連携した組織的な学校運営(検討用資料)」についての説明があった後、自由討議が行われた。その概要は以下の通り。

(●は委員からの発言、○は事務局からの発言)

● 前回までの議論は、学校運営のこれまでの在り方の転換を図るために、近未来的な見通しを持った議論であった。ところが、今回から現行制度下において展望できるという前提に立つとすると、今、どのように学校の組織運営がされており、どんな問題があり、それをさらに地域にどう広げていくのかという順序性で考えていかなければいけない。

● 地域と連携した組織的な学校運営が行われているにもかかわらず、学校の内部において組織的な運営が行われていないということはあり得るのか。

○ 地域と連携した学校運営に当たっての教職員への負担感や、学校運営そのものに残っている課題をさらに抽出し、深く掘った議論をしていただきたい。

● 学校と地域の関係を考えたとき、地域は学校にとって非常に重要なステークホルダーではあるけれども、あくまでもステークホルダーのワン・オブ・ゼム(one of them)だと思う。学校にとって、地域との連携というのは目的の一つではあるが、主たる目的ではないのではないか。学校としてのある目的や機能を果たすために地域との連携が必要になることはあるけれども、必要でないこともあるかもしれない。

● 「より良い学校づくり」には、より良い地域づくりや地域の活性化も非常に大事なことである。地域は、学校のステークホルダーであったり、オーナーシップを持っている。自分たちの地域をより良くするためには、学校も良くしなければならない。学校の教員は数年で異動するので、地域自身が学校をしっかり見守り、関わったりしていかないと、いい学校は長く続かない。より良い学校づくりをしてほしいのはだれかと考えたとき、それは地域、保護者や子ども自身であるから、なぜ学校と地域が連携しなければいけないかということを、メッセージとしてもう少しはっきりと出したほうがいい。

● 私が以前、校長をした私立の小学校の例でいうと、私立学校は地域との関係はほとんどない。学校の近隣から来る子どもは一部で、地域との恒常的な協力関係を持つことは難しい。しかし、地域は学校にとって大きな資産であり、一緒にやるべき大きな活力であるから、連携を考えるのは当たり前のことである。特に公立学校の場合は、地域と一緒に、地域の力を借りるとともに地域に貢献することが大きなかぎである。
 これまで学校は、地域からどうやって支援をもらうかということばかり考えていたが、学校から提供するものもあるということも考える必要がある。 

● 19世紀、20世紀の公立学校は地域をあまり意識しなくても成り立っていたが、公立学校のこれからを考えたときは地域の力、地域の支えが重要なファクターになるのではないか。
 これまでの学校は、学校から協力を求める形の関係づくりをしてきたが、これからは学校から地域への関係づくりとして、どのような関係づくりがあるのかということを議論する必要がある。
 この10年間を振り返ると、学校評価や学校評議員制度が制度化されたが、もう一度改めて、学校と地域との関係づくりの観点から、これら組み立ててきたものを現場サイドに立って、点検することが必要なのではないか。 

● 現場に携わっている立場からすると、学校と地域の連携は当たり前であり、これ抜きでは教育はできない。つまり、地域の中に学校があるわけで、宙に浮いているわけではない。「より良い学校づくり」と「より良い地域づくり」は密接不可分である。「より良い学校づくり」をするのは学校の先生に限るとか、「より良い地域づくり」は市民や保護者に限るというイメージで見てしまうと、なかなか前へ進まない。
 20世紀は先生の言うことが絶対だったから、子どもも親の言うことは聞かなくても先生の言うことは聞くという感じだったが、今はそうはいかない。
 学校と地域とが機能的に相互交流をし、地域ぐるみで一緒に子どもを育てることは、結果的に地域もよくなっていくことにつながり、地域がよくなれば学校もよくなるという好循環になる。しかし、機能的な面で分担をどうするかというのは次の課題である。 

● 難しいことであるけれども、我々としては、学校は地域と連携しなければいけないというメッセージを出すのが一つの仕事であり、文科省にはそれを実現するために何をやるのかということを打ち出してもらいたい。
 そのためには、ヒト・モノ・カネの環境をどうやって整えていくかが非常に大事であり、その中でも特に、ヒトである教員や校長に着目すべきである。校長も教員も公募制を幅広く導入し、希望によって長く同じ学校に留まれるようにする。特に校長は定年まで一つの学校で勤務するということでもいいのではないか。必要な法改正なり通達が必要なら、文科省が行うという覚悟があれば、うまくいくのではないか。 

● 「企業市民」という言葉があるが、「学校市民」という言葉はない。学校も地域の一員であるという視点で動き出したときに、地域とともに動く学校の役割と、地域はこれから何ができるかという整理が必要である。
 地域や学校によって、組織的に学校運営をする方策やプロセスは異なっていても、共通項として地域とともにやっていくというビジョンのところでは一致してやっていきたい。 

● 資料4-1に関して、「学校」と「地域」の他に、「行政」の役割も書くべきではないか。行政の役割は、学校が、生徒、保護者、近隣学校から担っている様々な期待を整理していくことだと思う。
 学校と地域とが連携するとなると、その際やその前後にはいろいろな課題が出てくる。連携前ならば、学校関係者評価は年1,2回だけでいいのかとか。連携するときや連携後には、その結果の責任については行政側が負うことなどもも含めて行政の役割は大きい。 

● 資料4-2に関して、「目指す姿」が1から5まであるが、順序性も加味して、並べかえたほうがいい。
 地域とあまり関係を持っていなかった学校が何かのはずみに地域に連携を迫る場合は、その前の段階で情報を公開したり、交流したり、何かしらのステップがある。その場合、どのような手順で進めるのかということを示されるような形で並べたほうがいい。 

● 前回の議論でも出てきた、学校と地域の関係を循環でとらえていくという発想がより必要になってきた場合、循環を生み出すリーダーシップや循環を進めていくキーパーソン、あるいは人と人との関係づくりのところに、これからの新しいマネジメントやガバナンスのあり方が関わってくると思う。

● 保護者の感覚からすると、保護者の中に、学校のことはやるけれども、地域のことはあまりやりたくないという人が増えてきている気がする。地域のことをやりたくないから子どもを私学に通わせているという話も実際聞く。子どもが学校を卒業した後は、保護者を地域にかかわらせる流れができれば、地域力も今後上がっていくだろう。

● ある都区内では中学校を新設するにあたり、幾つかの学校を統廃合したことで、かかわる町内会がかなり増えた。このため、まず町内会の中でのかかわり合いをどうするか決めないことには、学校へのかかわりはできないという話がある。
 保護者は直接的に学校にかかわっているが、そのまま地域住民として同じぐらいな形で地域にかかわってくれるかどうかは非常に怪しい。学校の地域活動への参加についても、小学校はまだいいが、中学校になると、学校側にとっても迷惑であり、子供もそのようなことにあまり関心がないという話になるのではないか。しかし、キャリア教育みたいな形であれば、中学校でもかなりできる。
 資料4-1の下図では、学校と地域の間に、子供はどのような形で存在してるのかをイメージ化、見える化して、書くべきである。子供は生活面では地域の中にあるが、児童生徒としては学校の中にみずからの存在があるわけで、子供のイメージ、保護者のイメージ、地域住民のイメージ、あるいは地域の中のいろいろな組織のイメージを書いていかないと、具体的な方策も整理できないのではないか。 

・事務局から、資料5-1「中央教育審議会 教員の資質能力向上特別部会 審議経過報告」、資料5-2「校長の専門職基準〔2009年版〕」資料5-3「教職員等中央研修の見直し」についての説明があった後、自由討議が行われた。その概要は以下の通り。

○ これからの学校像として、地域と協働することが学校教育の質を向上するために不可欠ということになってくると、それをマネージする校長に求められる資質能力の中に、今まで求められていた学校教育の担い手としての姿とともに、地域との協働をする能力が必要になってくる。
 現在、教員は50代が4割を占めている。今後10年でその方たちが抜けていくが、これはある意味でチャンスであり、これから校長になる方たちにその能力が付けば、10年間で学校が大きく変わる可能性もある。 

● 現代の複雑な社会の中で、地域とのコミュニケートをうまくとって、その力をかりて学校運営をしていく教師像を広げていかなければいけないと思う。
 研修については、一方通行ではなく、例えばネットを利用して、双方向の形態で、校長たちが自分たちの意見を出し合い、実践例や問題点を報告し合う場があればいいと思う。 

● 学校と地域を結んでキャリア教育を推進したり、総合学習をまとめたりする実体験ができているのは、現在のミドルリーダーの教員である。そのような小さな成功体験をたくさん持った教員が校長になったときには、マネジメントに関するレクチャーを受けたときも理解が深まって、すとんと落ちるだろう。教員がそのような小さな成功体験を重ねられるような仕組みを作っておくことが大切だと思う。今まで地域と一緒にやってよかったという体験をして、これはプラスなんだという体験を確実に持っている方は、地域との関係づくりが比較的上手な校長先生である。

● 開かれた学校、地域と連携した学校の校長先生の多くは、教育委員会などの学校外部での勤務経験がある。教育委員会やその他の行政部署では、日々大人と接しているために、大人とのコミュニケーション能力が高まるのではないか。
 マネジメント能力を向上させるためには、大人と積極的に交流する要素が必要である。 

● 学校と地域が連携するためには、それを上手く進めることができる校長が求められる。地域のマネージャーとしての力を持ち、地域の方の声や親の願いを実現させることができる校長。地域の願いとは、別の言い方をすれば、市民感覚のことである。
 そのためには、校長になる前の段階、それこそ教諭の後半や副校長の段階あたりで研修をしなければいけない。例えば、教育以外のその地域を担当する行政職員としての研修を行うことが考えられる。つまり、地域と密着した仕事をしている市の職員との交流を積極的に行うことが大事である。場合によっては、もっと早い段階でもって管理職、マネジメントを担える人を養成するということも考えたほうがいいかもしれない。
 中央研修を見直すことについては賛成であるが、できるだけ多くの人にこのようなチャンスを与えることが必要である。一箇所に全員集めることは不可能なので、研修のソフトを市区町村に配布して、それを活用できるようにしたり、講師を各地に派遣するということも考えられる。
 人材確保については、日常的に地域と接してきている行政職員を校長として任用してもいいだろう。また、教員には、地域からの評価を業績評価の中に入れてインセンティブを与えるとか、時には海外や大学院で1年ぐらい学ぶことができるサバティカルを与えるとか、一定の成果を上げたら、大学教授になれる道を用意するインセンティブもあればいい。 

● 現状を踏まえて、3点述べたい。1つ目は、ミドルリーダー層に重点を置いたマネジメント研修を進めても、管理職が変わらないと、ミドル層にストレスが相当かかるという問題がある。また、研修を受けたくても、現状の厳しい学校運営の中では、ミドル層に抜けられると困るために、なかなか校長からの許可を得られないこともある。
 2点目は、指導主事からの相談内容として、自分たちは管理職経験がない中で、管理職に対する指導をしなければならない状況が出てきたということである。幾らマネジメントについて学習したところで、実践の場でマネジメントの経験もないのにと管理職から言われた途端に、指導が通用しなくなるというものである。政策的に何とか措置をしないと、指導主事が育っていかない。
 3点目としては、すぐれた校長とすぐれたミドルリーダーがマッチングしたときに、すぐれたペアリングになるかというと、相殺し合うこともあるということである。そのようなことは、県単位では把握できないと思われるので、県が全ての教職員を学校まで配置せずに、市町村単位に総数として配置すればいいと思う。教員を学校に配置するマッチングはそれぞれの市町村が責任を負って行う仕組みにするならば、もっときめ細やかな組織編成も可能になってくるのではないか。 

● 地域の方々なども組織化した学校運営を行うにあたっては、その時々に必要な人たちを集めて、人的資源の管理や時間の管理が当然出来なくてはいけないし、リスク管理についても学んでいく必要があると思う。
 また、座学だけでは学ぶものは少ないので、体験型の研修も入れていく必要がある。何事も成功したらモチベーションが上がり、失敗したら改善点が見つかるわけではない。その経験をどうやって次につなげていくのかというのを体験していかないといけない。
 また、資料5-2、5-3の中でリーダーという言葉が出てきているが、マネージャーというのかリーダーというのかも考えるべきである。マネージャーはマネジメントに特化する一方、リーダーはマネジメントも当然するが、プレーヤーでもある。今のほとんどの校長先生はプレーヤーの部分が非常に多い。本当の意味でのマネージャーになっていかないと、これからの組織運営は難しくなっていくのではないか。
 管理職に対しては行政事務の習得をきっちりさせるべきである。学校の中で行政事務は非常に大きいウエートを占めており、何も知らないままで仕事をしていることによって、無駄な仕事が結構出てきている。特に教頭の役割としては、ビルド化された仕事を積極的にスクラップしていく音頭をとっていくべきである。 

● 教員にはいろいろなことを経験してもらうことが大切である。
 神奈川県藤沢市には、住民が市政について自由に議論するネット上の掲示板である市民電子会議室という仕組みがあり、私も長い間かかわってきた。市民からのいろいろな意見や苦情などの矢面に立った担当職員は、その後とても成長する。いろいろな苦労をしながらも、市民から褒められる経験をすることもあり、そのような経験も大切である。
 そのような「ナマ」の経験をする方法の1つとして、熟議があると考えられる。そのような機会を日常的に設けることが大事であると思う。 

● 全国から教員が集まり、県を越えていろいろな交流をし合うことによって、日本の公教育全体の質のレベルアップにつながる中央研修はとても大切である。しかし、今年度の中央研修の受講定員が2,000人のところ、実際には1,600人しか受けていない分析をまずは行う必要がある。
 例えば校長研修であれば、校長会とかの場で、仲間同士の中で専門的に鍛え合うシステムを作るべきである。現状の管理職の組織は、行政の下請みたいな形になっており、校長会は、集められて、教育委員会の説明を聞いて学校現場へ戻って説明する役割にとどまってしまっている。イギリスの校長会では、パスワードをもらうと、何万人ものメンバーの校長同士で、こんな問題があるんだけれども、どういうふうにしたらいいということが、ネット上で相談できる仕組みがある。
 地域からの期待に応えられる校長をどう育てるか。今はたたき上げの現場から校長へという伝統的なスタイルが多いが、これからは、民間人や多様な行政経験をした人を校長に登用したり、校長本人に対して多様な経験を積ませることを手法として取り入れたらいいと思う。 

● 校長のマネジメント研修について、中身を見つめ直す必要があることは共通の認識だと思う。ただ、そこでとどまらず、中堅教員のあり方や研修についても検討する必要がある。
 

  • 事務局から今後の会議の予定日時について等の説明があり、閉会した。

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初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

電話番号:03-5253-4111(内線3705)

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)