学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議(第5回) 議事要旨

1.日時

平成23年1月18日(火曜日)17時~19時

2.場所

中央合同庁舎第7号館東館(文部科学省) 16階 16F特別会議室

3.議題

  1. 「新しい公共」型学校について
  2. その他

4.出席者

委員

天笠座長、小松副座長、奥村委員、貝ノ瀨委員、勝方委員、金子委員、木岡委員、佐藤委員、竹原委員、松尾委員

文部科学省

山中初等中等教育局長、中岡初等中等教育企画課長、下間参事官、田中主任視学官、岡本参事官補佐、板東生涯学習政策局長、伊藤審議官、作花生涯学習総括官、上月政策課長、塩見社会教育課長 他

5.議事要旨

  • 事務局から、資料1「学校・家庭・地域の連携協力の推進等」についての説明があった。
  • 事務局から、資料2「「新しい公共」型学校の創造について(案)」についての説明があった後、自由討議が行われた。その概要は以下の通り。

(●は委員からの発言、○は事務局からの発言)

資料1について

● 管理職等のマネジメント力の向上における研修は、現時点でどのようなことを考えているか。

○ 学校が地域と協働する形での広い視野からマネジメントする体制づくり、スキルを含めてよく分析をし、具体の研修プログラムなり情報なりに集積していきたい。

● 学校事務職員は、学校の窓口になることも多く、地域との連携における役割は大きいと思う。

資料2について

● コミュニティ・スクールを設置している教育委員会の意見とすると、それにしてはここに書かれているコメントは他の市町村とそんなに変わらない。特に何がという特徴的な意見が出ているとはちょっと感じられなかった点が印象深い。

○ もともと積極的な内容が書かれた案になっているからではないかと考える。
 教育行政を担う立場として、子どもたちの教育をどう考えるべきかという視点からの意見があったのではないか。

● 「新しい公共」型学校について一つの定義づけを示したのは良いが、ねらいと課題と視点の関係が分かりにくい。
 このねらい部分は、いかに地域が学校を支援していくかという学校支援の要素が重点になっており、コミュニティ・スクールの理念にもともとある地域住民の学校運営への参加という要素があまりないので、運営参加についても書くべきではないか。

● パートナーシップについて、アメリカの「学校と家庭と地域のパートナーシップ」という本の中では、理論的には以下の3つの段階があるとされている。第一段階は、それぞれのパートがまず自分がやるべきことをきちんとやること。つまり、学校は学校、家庭は家庭、地域は地域でやるべきこと。第二段階は、共通の目的を共有し合って、力をあわせて協働してやるということ。第三段階は、時系列的にパートナーシップをつくっていくこと。
 それぞれのパートがしっかりそれぞれのやるべきことをやることがまず重要である。また、第三段階の子どもの成長に応じて、連携が少しずつ変わっていき、発展していくということはおもしろい観点だと思う。
 一般的には、第二段階だけがパートナーシップととらえがちであるが、第一段階と第三段階も意識する必要がある。

● パートナーシップは、学校と地域おいて時間的な経過の中で互いにつくられていくというプロセスも強調してもいいのではないか。

● 学校運営協議会の立ち上げに一番重要なことは、校長のリーダーシップである。うまく回り出せば、反対する人はいなくなっていく。強引に話を進めるのではなく、協議の過程が大切である。地域の方と学校と保護者が話し合いして、その地域に合ったものをつくっていくというのが望ましい。

● 全国の校長で、地域との連携を正面から否定する方は今はまずいないが、本音は学校を支援してほしいけれども口は出さないでほしいというもの。しかし、それでは学校はよくならない、つまり子どもがよくならないということが具体的にわからない限りは、口で言ってもなかなか難しい。
 学校支援地域本部、学校評議員制度、地域子どもクラブというものも広く拡大しながら、最終的には例えば、コミュニティ・スクールや「新しい公共」型の学校というふうに、最終的なゴールをある程度示しておくことは必要。
 コミュニティ・スクールに指定しても時間が経つと、地域の方々も学校支援のほうに傾いてくる。学校の運営についていろいろな突っ込んだ話し合いをするとか、校長の方針に対して議論をするとかいうことについてはどうしても薄くなる。
 コミュニティ・スクールになっても、経営の主体としての校長の立場は変わらないんだということを強調していかないと、コミュニティ・スクールにすると地域に乗っ取られてしまうと言う人もたくさんいる。

● 学校と地域の双方にある抵抗感をどう乗り越えていくかということの記述が弱い。抵抗感をどう超えていくか、突破口があるのかということを記述、提起できるとよい。

● 「新しい公共」型学校というのは将来のビジョンなのか、それとも具体的なモデルなのか、それともすべての学校をこういうふうにしなくてはいけないのかが分かりにくい。
 ねらいのところでは、大きな課題を提起している。たとえば、「学校だけで子どもたちを抱える多様な問題に対処するのは難しい」と言っているが、すべての学校でそのことに十分に対応すべきという趣旨なのかどうか。
 学校側からすると、これまで学校について言われてきたことと何が違うのか十分に理解できない可能性がある記述もあるようだ。理念のところの「すべての子どもたちに『生きる力』を確実に身につけさせる」ということは理解できても、「関係する方たちの成長も促し、地域を活性化させる『場』となる学校」ということは、どう対応してよいか分からないという感想をもつのではないか。
 書いてあることはすばらしいと思うが、もう少し、誰に対して何を伝えたいのかをはっきりさせる方がよいのではないか。

● 「新しい公共」型学校というものが、新しい公共に乗っかっているのか、新しい公共を生み出すのかということが不分明である。
 また、地域からの支援ということが強調され過ぎており、保護者が登場せずに単なる学校支援論になってしまっている。

● 学校への意識が地域への意識へと発展するという図式が描かれているが、これからは逆の発想が必要なのではないか。地域を良くするために学校に目を向けることが重要。

● また、多様な外部人材との触れ合い等を通じて「生きる力」を身につけさせるというくだりについて、地域住民を外部人材と言いかえているが、地域とのかかわりよりも、むしろ様々な職業の人々を学校の中に取り込みたいという意味合いになってしまっている。

● 人材という言葉は、地域の人を資源としてしか見ていない感じがするので、人材という表現は用いない方がよい。
 継続的な取組や多くの人々の参画を促すためにはコーディネーターの役割が重要なので、位置づけを明確にする必要がある。

● 「現状と課題」の部分が課題ばかりなので、意義や成果についても記述すべき。

● 「新しい公共」型の学校は全てコミュニティ・スクールとして取り組むべきなのかがはっきりしない。現実的には色々なやり方を含めて考えていくことになると思うが。

● マネジメント能力を身につけた校長が必要だとされているが、そのような校長がいない現状の中で、一体どうやって生み出すのかという議論も必要。
 また、学校づくりは校長だけが担うものではない。ミドルリーダーや若手教員も含め、それぞれ何を担っていくのかも考えるべき。

● コミュニティ・スクールには、学校運営に地域がかかわるという制度の枠組みがあるが、コミュニティ・スクールではない「新しい公共」型学校を考えたとき、学校運営に地域がどのように関わるのかがはっきりしないので、、どうしても支援のところに止まってしまうのではないか。

● 「新しい公共」型の学校について、制度化を目指すのか、「できる規定」で、このようなやり方もあるから考えてみましょうという提案にするのか、方向性をはっきりさせたほうが良い。

● 制度化を目指すのではなく、「できる規定」にするべきだと思う。学校の主体性や地方分権といったことを踏まえ、各地方や学校が、それぞれの実情に応じて、自分のところに合うやり方を考えていくことが重要。
 また、「新しい公共」型学校が全てコミュニティ・スクールである必要はなく、コミュニティ・スクールは1つのモデルとして位置づけるべき。五ヶ瀬町の例が示すように、コミュニティ・スクールでなくとも、下手なコミュニティ・スクールよりも積極的な保護者の参画を得ている学校もある。

● 地域住民による学校運営への関わりにはいろいろな段階がある。コミュニティ・スクールのような、学校に対して意見を出したり、意思決定をしたりというのは、多分、一番抵抗感のあるところ。単に学校に意見を言うことや学校を支援することには比較的抵抗が少ない。権限の行使というイメージに対する抵抗感が強いのではないか。

● 公立学校は100%税金で運営されている以上、保護者や地域は納税者として、地域にある公的組織に意見を言ってもいいのではないか。行政と教員だけで学校の在り方を考えていくのではなく、保護者などに参加してもらい、場合によっては責任を持ってもらうという、まさに「新しい公共」とした構造にしなければならない。

● 当初は、「新しい公共」という言葉を見て、全く新しいものがつくられるというイメージを持っていたが、既にある地域のスポーツ活動やPTA活動を生かして、「新しい公共」の趣旨に沿う活動ができると思う。既存の活動に、より多くの方に参加してもらうという観点で進めるべきではないか。

● この会議としては、学校運営の改善のプランをきちんと示すべきである。

● 学校は「新しい公共」に乗っかるのか、つくるのかという話があったが、私はつくるほうだと思う。すでによい取組をしている学校は多い。みんながやっていることが、「新しい公共」をつくっていくんだと言うことは大事だと思う。
 この会議の報告では、そのためにはどうすればいいのかということを、これまでの様々な事例を分析しつつ、きちんと示していく必要がある。

○ 「「新しい公共」型学校の創造について」の中でも、マネジメント能力というものが一つのキーワードになっている。 今後の会議の進め方としては、学校のマネジメントについての基本的な考え方をある程度明らかにしたところで、個別の論点や各種制度などをマネジメントのためにどういうふうに活用していくのか、あるいは見直しが必要なのかといった各論に入っていきたい。

● コミュニティ・スクールは、学校の組織体そのものが従来型とは違ったものととらえることができる。そのような組織体がつくり出すマネジメントというのは、どういうものなのか。

● 「学校運営」、「学校マネジメント」、「学校経営」と様々な言葉が使われているので、その意味を整理する必要があるのではないか。

● 学校運営の改善のためには、それを担う人材の育成が重要であり、研修の充実が求められる。
 つくばの教員研修研修センターは事業仕分けの対象になったが、これはとんでもない話である。また、研修の質の向上のための調査研究機関がないことも問題。地方でも、県の教員研修センターの人や事業がどんどん削られている。

● 人材育成や研修の問題を考える上では、教員の年齢構成というものも考慮する必要がある。今後10年で3分の2の教職員が入れ替わる中で、どういう人を中心に学校づくりを進めていくのかを考えることが必要。

● マネジメントの向上も大切だが、校長のモチベーションをいかに上げるかが一番大切なことではないか。

● 地域住民の立場で見ると、学校は組織として動いていない印象がある。特定の教員が頑張っていても、全体として組織化されていないことが多い。学校が組織としてまとまったときにモチベーションが上がるという実例を見てきているので、そういう方向性の議論も重要であると思う。

● 教員にいくら精神的に頑張れと言っても、モチベーションは上がらない。明確な目標があり、それに向かって前進している実感があるときにモチベーションは上がると思う。
 教師を信用できるかというアンケートでは、担任などの身近な教師は信用できるが、教師を全体として見ると信用できないという結果がある。

● 教育改革国民会議で提起された問題の1つに、学校にマネジメントを取り入れるというものがあり、それを受けて、組織マネジメントに関する一連のプログラムがつくられ、つくばの教員研修センター等で行われるようになったが、十分な成果検証がなされていない。

● ワークショップ的な研修形態は、既にどの県においても常識になっているし、ビジョンづくりを核としたマネジメント像を描かれるようになっている。
 問題はそこで描いているものを現実に適用しようとすると、学校の数だけマネジメントの実際があることになり、具体的な適用がうまくいっていないという印象を受ける。

● 校長は3年ぐらいで、教員も5、6年で替わるという人事サイクルの下では、どうしても無難な運営になりがちである。
 しかし、1年で出せる結果もあるはずであり、結局のところは校長としての戦略を描けないことが問題。管理職には何が必要で、どういう発想をするべきかということを研修し、同時に研究もやらなければいけない。
 イギリスでは国が責任を持って、かなり体系的な校長養成プログラムの開発を行っている。一方、日本では、教育法規と人事管理、危機管理が中心になっている。本来はカリキュラムと教職員のマネジメントが重要なのに、教育課程を編成するマネジメント能力が、管理職にすら欠けている。学校全体でカリキュラムを見ることが学校の中で行われておらず、校長や副校長、教務主任ぐらいのところだけでカリキュラムをつくっている。さらに、カリキュラムマネジメントについて指導・助言する立場にある指導主事の力量が落ちていることは深刻な問題である。

● 校長に向いていない人もいる。また、現状では校長になるまでに非常に多くの段階を踏む必要があり、やっと校長になったときには燃えつきている人もいる。早い段階で教員の資質を見抜き、それを鍛えていくとことが必要ではないか。

  • 事務局から、資料2については事務局にて整理したものを後日改めて出すことと今後の会議の予定日時について説明があり、閉会した。

お問合せ先

初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

電話番号:03-5253-4111(内線3705)

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)