学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成22年11月2日(火曜日)13時~15時

2.場所

三田共用会議所3階 大会議室 (東京都港区三田2-1-8)

3.議題

  1. 有識者へのヒアリング(宮崎県五ヶ瀬町教育長 日渡 円氏、滋賀県湖南市立岩根小学校校長 宮治 一幸氏)(五十音順)
  2. その他

4.出席者

委員

天笠座長、小松副座長、貝ノ瀨委員、勝方委員、小林委員、佐藤委員、竹原委員、松尾委員

文部科学省

山中初等中等教育局長、尾崎大臣官房審議官、中岡初等中等教育企画課長、下間参事官、上月政策課長、山下社会教育課地域・学校支援推進室長 他

5.議事要旨

 (1) 滋賀県湖南市立岩根小学校の宮治一幸校長から、学校・家庭・地域の連携促進に関して意見を聴取した。主な意見は次のとおり。

● 岩根小学校は前校長の時にコミュニティ・スクールの指定を受け、それを自分が引き継いだ。元々中学校の教員であった自分が小学校の校長になるのは異例だが、前校長と学校運営協議会の要望として実現したと聞いている。

● 本校ではいわゆる子どもたちの荒れの問題や、外国籍の子どもたちの急増に伴う言葉の問題などから、授業が成立しない状態があった。
 このような状況下で、保護者からは「先生がもっとしっかりしろ」という意見があり、他方で教職員の間には「こんなに頑張っているのに」という思いが強かった。そこで、前校長はコミュニティ・スクール制度を生かすことで、学校と地域がより近づいての子どもの学び支援ができないかと調査研究事業を受けた。2年間は教員の加配があったので基礎固めには非常に役に立ったが、調査研究期間終了に伴い加配も引き上げられたので、校長の負担が大きくなった。このため、学校支援地域本部事業を受けて地域コーディネーターを配置したが、こちらの事業も本年度までなので、その後をどうするかを関係者で協議しているところ。

● コミュニティ・スクールの課題としては、地域の方に普通の学校との違いを理解してもらうことが難しいことが挙げられる。子どものためであれば市がお金を出すのが当然ではないかという意識がある。
 また、地域コーディネーターに、人と人とをつなげる力量のある人材を選ぶことも課題である。

● 本校は、人が入れ替わっても継続可能なコミュニティ・スクールを目指しており、学校運営協議会の理事会のほかに事務局を設けている。

● 本校では今年度から二つの取組を本格的にスタートをさせた。
 一つ目は「土曜教室」。学力が二極化している中で、家庭環境が難しい子どもたちを地域のボランティアで支えていく取組である。教師の中には、自分の教え子を他人に見てもらうことに抵抗を感じる者もいるが、私が保護者と話をして、最終的には保護者の願いということで開始した。
 二つ目は「コミュニティ・スクール支援委員会」の立ち上げ。これは、来年度から学校支援本部地域事業の助成金が受けられなくなることから、これまで進めてきた取組を継続していくために、経済的なバックアップと地域コーディネーターの確保の観点から立ち上げたもの。本年度から個人会員と賛助会員という2種類を設け、個人や企業に寄附を募っている。

● 子どもたちについては、大人になったときに、学校なり地域への愛着を持った子どもたちを育てていきたいと思っている。自分が所属する集団なり、自分が住む地域というものを、自分との関係でどうとらえていくのかが大事だと思っている。

● 教職員の側にも、必要な支援を必要なところにしていくことが大事だという意識が芽生えてきている。

● 学校運営協議会の理事など、地域から参画してもらう人については、当初からの方針として充て職は置いていない。地域推薦をしてもらう場合でも、自治会の役員などをしていない人をお願いしている。地域との連携状況においては、コーディネーターの役割が非常に大きい。校長や職員が分担を受け持ってやっているよりも、コーディネーターという学校と地域と結ぶ柱が存在することが、地域の事情を反映したコミュニティ・スクールの運営には重要だと思う。

● 校長については、地域とのかかわりを学校への批判や介入ととらえるのではなく、地域は学校と一緒に子どもを育てていこうとする協力者であるととらえる考えが必要だと思う。
 

(2) 宮崎県五ヶ瀬町教育委員会の日渡円教育長から、学校・家庭・地域の連携促進に関して意見を聴取した。主な意見は次のとおり。 

● 私が五ヶ瀬町の教育長に着任してすぐに町内の全校長を呼び、学校の課題について一人ずつヒアリングを行った。校長たちは皆、学力向上が課題だと答えたが、その原因についてはきちんと分析できておらず、人口や立地など地域性のせいだと考えていた。私は、小さいということは弱みではないと考えており、これを強みにしていくよう、この3年間取り組んできた。  

● 全国を見ても、学校はどうしても行政を向いていて、地域を向かずに長年やってきた。しかし、今の時代で子どもたちがどこで育っているかということを考えると、学校は地域を向かないといけない。

● 学校の意識を地域へ向かせるために、平成19年4月20日に「五ヶ瀬教育ビジョン」を作成し、「町づくり委員会」、「学校づくり委員会」、「学校システム委員会」の3つの委員会を設けた。この委員会には、地域住民、教職員、行政から委員を公募し、それぞれの分野でこれからどのような教育が求められるかを考えて欲しいとお願いした。この三つの委員会の下に、昨年度は17の作業部会を設け、教職員が5~6人でチームを作り活動している。

● 学校づくり委員会は、授業方法の刷新と学校制度の変革が二つの柱になっている。学校制度の変革というのは、小中一貫を軸に、町内6つの小中学校を緩やかな一つの学校とみなし、町内全体を見ながら色々なことを進めている。

● そのひとつが学校目標を学校独自で持たないようにしていること。小さな町なので、みんなで一つの目標を作り、組織やカリキュラムの統一を図っている。

● 今年度は9年間の一貫カリキュラムの完成を目指して取り組んでいる。義務教育9年間の出口でつけたい能力を明確に意識し合い、9年間の授業がそれぞれどのように関連しているかというものを意識した上で、年間授業計画をつくる段階まで来ている。

● もう一つが、授業方法の刷新。これは明治以来今まで、教室を単位に授業をしてきた教師文化を変えようと、教える内容ごとに何人に対して教えるのが一番効果があるのかという方法に変えた。教える内容ごとに、これは1対1、これは1対50ということにして、最適な人数による授業方法を取っている。

● あと一つのまちづくり委員会については、例えば、図書館のグループは、町に図書館がないので図書館を作ろうと集まった作業部会。一つの建物に本をいっぱい並べるという概念を変え、病院、警察、商店、学校など、いろいろな公共施設に自分たちで作った本棚を置いて、町の図書館として、いつでもどこでも借りられる図書システムをつくった。他にも、健康なまちづくりのためのグループや、文化力向上グループなどが活動している。

● 今までの学校支援地域本部事業というものは、学校に対してボランティアをお願いするというものだったが、老人が多い町では逆に「助けてほしいのは私たちだ」と言われてしまう。五ヶ瀬町では、福祉の担当課が、3年前に時間通貨というものを作った。これを持っていると、例えば、庭の草が生えているけど腰が痛いので取れないという時に、だれかに頼み、60分働いてもらったら、ありがとうと言ってこれを渡す。これをもらった人は、今度はこれを自分の不得意なことを得意な人に頼むことができる。
 しかし、助けを必要とする人と助ける気のある人を結びつけるシステムを作っていなかったため、上手くいかなかった。

● そこで、学校支援地域本部事業を立ち上げるときに、この時間通貨を3,000時間分、学校に渡し、それを学校に対してボランティアをしてくれた人に配ることにした。

● 学校が使った時間通貨は、学校側からのボランティアや、体育館の開放など学校の開放を通じて回収し、この時間通貨の流通を通じて学校とコミュニティを結びつけている。  

● また、学校のコーディネーターは学校へのボランティアだけでなく、住民同士のボランティアのコーディネートも担っている。学校に行くと、「困っていることはありませんか」とか「助けることはありませんか」という黒板があり、そこに書き込むと、学校のコーディネーターが手配をしてくれるという形になっている。この取組を通じて絶えず学校に地域の人たちが集まっているような社会というのを目指している。なお、コーディネーターの補助金がなくなることを見越し、学校の事務職員がコーディネーターをするようにしている。

● また五ヶ瀬町は過疎な町であり、公共交通機関が衰退している。そして、老人が多いために、自分で役場まで行くことができない。そのため、町内に6カ所バランスよくある学校を役場の出先にできないかということを検討している。将来は、学校で住民票の発行等、役場機能の一部ができるようにすることも考えている。

● 学校給食は自校調理なので、給食室を活用して独居老人の昼ご飯を提供するためにデイサービスグループを作った。有償だが、事前に申し込んでもらえば、学校に来て子どもたちと一緒に給食を食べられるというシステム。

● 学校の予算については、今までは再配分されるものだったが本年度から学校が目標とリンクした予算編成を行い、財政当局に要求するシステムに変えた。個人的には、日本の学校は予算や人事に関する技術がなく、目標を立てられない、あるいは目標を立てても実現することができない組織だったことが最大の問題だと考えている。このため、執行型から編成型の学校に変えていくことを目指している。  

● 五ヶ瀬教育ビジョンの中では学力向上という言葉は一言も使っていないが、結果的に学力は非常に向上している。学力についても、旧来の手法よりも、視点を変えて子どもたちや教職員にどういう刺激を与えるかということを通じて、結果的に向上するということがわかった。

● 学校をコミュニティの中に置くということは、地域住民と正面から向き合うことになる。今まで行政や法律に守られていたが、これからは学校が前面に出る時代がやってくる。そのためには、学校を支援をするだけではなく、学校に財政や人事も任せるなど、制度上できる限りのことをしないと、期待だけで放り出される学校は大変なことになるのではないか。
 

(3) (1)、(2)に関して、質疑・自由討議が行われた。その概要は以下のとおり。
    ( ○は委員からの発言 ) 

○ 「コミュニティ・スクール支援委員会」を立ち上げられたということだが、「コミュニティ・スクール」という名称に関係者からの抵抗は無かったか。また、この名称を提案したのは誰か。

【宮治校長】 抵抗はあったが、「コミュニティ・スクール」が何か、なぜ必要かを関係者に説明するよい機会になったと思う。

○ 日渡教育長にご説明いただいたアイディアや取組は、教育長が自ら問題提起して進めたものなのか、地域の方々から要望があって進めたものなのか。

【日渡教育長】 多少強引にでも、私自らスピード感を持って推し進めている。

○ 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」)に基づく学校運営協議会制度を意識して取り組んでいるのか。

【日渡教育長】 地教行法に基づく「コミュニティ・スクール」の取組は、学校と地域の関係がもっと成熟してから進めるべきと考えている。
 地教行法に基づく「コミュニティ・スクール」は全国の学校で設置されているが、法律の趣旨をきちんと理解して取り組んでいるのか疑問を感じることがある。

○ 五ヶ瀬町における教職員の年齢層、在職期間、出身地について教えていただきたい。

【日渡教育長】 教職員の年齢層については、30代と管理職に二分化している。また、宮崎県における人事異動ルールでは、五ヶ瀬町の教職員の異動サイクルは3年となっている。地元出身の教職員はゼロである。

○ 早く異動したいという教職員もいれば、もっと宮崎県で働きたいという教職員もいると思うが。

【日渡教育長】 3年未満で異動することは無いが、長くいたいという教職員については、県を説得して残ってもらうようにしている。

○ 学校と地域との関係が成熟していないにも関わらず、コミュニティ・スクールを設置するとどのような問題が起きると想定されるか。

【日渡教育長】 学校がやらされ感を感じることや、法律やルールに頼って、問題が生じても解決方法を主体的に考えられないということが考えられる。

○ 教職員の人事に関して、都道府県教育委員会あるいは市町村教育委員会との関係で工夫していること、苦労していること、教育委員会に対する要望はあるか。

【日渡教育長】 宮崎県は全国と比較して、人事に関する都道府県ルールが強いと思われるが、私の場合は事前協議制を最大限に活用している。また、町内での配置については独自に再配置を行うなど、自由度を高くさせてもらっている。

【宮治校長】 地域との連携に意欲的な教職員の配置をお願いしたいと考えるが、個人的な要望は教育委員会に出していない。

○ 地域との関係を構築しても人事異動によりコミュニティ・スクールやこれまでの経緯について理解していない方が来られる場合もあると思うが、異動してきた教職員に対して、地域と連携した学校づくりに関する研修は行っているか。

【日渡教育長】 人事について町全体の学校を視野に入れて校長会に素案を作らせるようにしている。この作業は直接の研修ではないが、研修的な効果があると思う。
 なお、先日の「コミュニティ・スクールの在り方を考える『熟議』」にオブザーバーとして参加した際、他の教育長にコミュニティ・スクールには人事権があった方が良いのではないかと聞いてみたが、皆さん反対されていたので、人事権については考え方にかなり差があると感じた。

【宮治校長】 コミュニティ・スクールであるかどうかにかかわらず、地域と共に子どもを育てることは重要と考えるが、法律や制度があることで、個人的な思いのレベルではなく、組織として展望を持ってやっているという説明ができているように思う。

○ 教職員は転勤族であり、異動のたびに研修を行うことを考えると、市町村教育委員会が独自に人事権を持ってよい場合があると思うが、山間部である五ヶ瀬町においてはどのように考えるか。また、宮治校長は校長の立場としてどう考えるか。

【日渡教育長】 基本的に、人事権は市町村教育委員会に委譲すべきと考えるが、教職員の人事を行うためには、数千人程度のある程度の規模がないと難しい。よって、もし委譲する場合は、各自治体が地方連合を組み、人事構想を各グループが共同して作っていくという方法をとるというのが落としどころではないかと思う。また、コミュニティ・スクールに人事権を付与すべきという私の考えは、人事の一切をやらせるのではなく、市町村教委の内申権の委譲というイメージ。

【宮治校長】 自分の学校のことだけを考えてはいけない。中学校区、市全体の学校の状況を見た上で人事を行うべきと考える。

○ 配布資料に、「アンケートを地域で実施」とあるが、結果はどのようなものであったか。

【宮治校長】 校舎の耐震工事に際して、校舎の在り方についてアンケートを行った。地域からは、木の香りのする温かみのある校舎にしてほしい、コミュニティ・スクールを意識して住民が使える部屋を設置してほしいという要望があった。これを踏まえ、本校では、校舎を全て木造にし、コミュニティ・スクールの事務室を設置した。さらに、土日、夜間でも全ての住民が和室や家庭科室を利用できるよう工夫し、住民が活動するエリアは校舎内でシャッターで区切るなど、セキュリティ面での対策も行った。

○ 学校、地域、行政それぞれに学校はこうあるべき、こうあって欲しいというイメージがあると思うが、それぞれが持つイメージにずれはあるのか。

【日渡教育長】 調べていないのではっきりとは言えないが、学校と地域の持つイメージは相当ずれていると感じる。行政と学校もずれていると思う。行政は地域に根ざしているので、行政と地域の持つイメージは近いが、学校は乖離している。学校は自分たちの言葉や文化で地域に接することが多いと感じる。

【宮治校長】 地域と接し、地域の人から学ぶことで教職員は人間の幅を広げることができる。学校と地域でずれているところがあるとすれば、地域には学力向上に対する思いが強いが、学校は人間性や健やかな体づくりなど基礎的な部分を重視するということはあるように感じる。

【日渡教育長】 地域が教育については学校に全て任せしてしまっている印象がある。地域がどんな子どもを育てたいかを自主的に話し出すようになって初めて、地域と学校の関係が成熟したと言えるのではないか。
 また、五ヶ瀬町では、まちづくりを教職員が行っている。町の実態を知らなければ、同じ言葉でも子どもたちとイメージするものが異なることがある。教職員にまちづくりをさせることにより、地域の実態を理解させるようにしている。

○ 湖南市においては、経済的なバックアップのため「コミュニティ・スクール支援委員会」を立ち上げたとのことだが、具体的にはいくら必要で、目標額を集める見通しはあるのか。
 また、五ヶ瀬町では事務職員が地域コーディネーターを担っているとのことだが、多忙の中今後どうのようにやっていくのか。また、その人件費の現状と見通しを教えていただきたい。

【宮治校長】 目標額は100万円としたが、実際にどのくらい集まるかはわからない。今年度集まった分は基金とし、助成金のなくなる来年度からは、一年毎の会員制にしているので、会員を募ることでやりくりしていこうと考えている。

【日渡教育長】 多忙と言っても、業務をきちんと仕分ければ必ず余力はある。問題は、県費負担教職員制度のため、教職員は町の職員であるにも関わらず、県の職員のような意識を持っていること。町の職員としての意識を持たせることが重要だと思う。

○ 地域コーディネーターには謝金が支払われるのに、ボランティアに謝金が支払われないため、地域コーディネーターが非常に心苦しい思いをするという話をよく聞くが、どう考えるか。

【宮治校長】 地域コーディネーターは毎日学校に来て働いているため、謝金については、ボランティアと分けて考える必要があると思う。ただし、学校運営協議会からも交通費くらいはボランティアに支払うべきという意見があるため、その費用の捻出が今後の課題になると思う。

【日渡教育長】 五ヶ瀬町では事務職員が地域コーディネーターの役割を担っている。学校も行政の一つであるというのが、五ヶ瀬町の基本構想であるため、行政が地域コーディネーターの役割を担うことは当然と考えている。

○ 地域コーディネーターはどこで執務しているのか。また、具体的にどのような仕事をしているのか。

【宮治校長】 職員室に席がある。仕事は会議の日程調整、案内文書の作成、当日の要項づくりを行っている。また、子どもたちが地域と触れ合う機会には、写真撮影や活動のまとめを作成する。「コミュニティだより」という新聞を全戸配布で年間3回発行しているが、これも全てコーディネーターが作っている。

【日渡教育長】 五ヶ瀬町では、学校のことは学校が自分でやるべきという気持ちが教職員に強く、ボランティアの受入は残念ながら私の期待するレベルには至っていない。

○ 先ほど、学校、地域、行政の持つ学校のイメージにずれがあるという話があったが、地域はなかなか変わらないという実感はあるか。

【日渡教育長】 地域はまだまだ学校を積極的に受け入れるほどにはなっていない。学校に対する不信感があるわけではないが、地域の学校というところまでは至っていない。

○ 運営にコストがかかるということが、ボランティアの取組が広がらない要因になっているのか。

【宮治校長】 本校では子どもの教育に関わるところに限定してボランティアをお願いしている。教師と地域だけの、大人だけの関わりで終わってしまってはいけないと考えており、地域の方にも学校のねらいをきちんと説明して、来てもらっている。

○ 先に学校運営協議会を設置したところよりも、地域が学校を支える活動や組織があり、その上でさらにコミュニティ・スクールになったところの方が活発に活動しているという印象がある。

○ 私のところでは新設の中学校をコミュニティ・スクールとしてスタートしたので、先に学校運営協議会があり、数年してから学校支援地域本部ができたが、形から入らないように試行錯誤してきた。

○ どのレベルになれば学校と地域との関係が成熟しているといえるのかという問題はあるが、コミュニティ・スクールを設置していても成熟と呼ぶには難しい場合もある。子どもを中心に据えて、子どもの成長と共に教師や地域住民も人間的な成長を遂げていくということが理想であり、そのためには一緒に歩み出すことから始めなければいけない。ある程度整ってから衣替えするのではなく、一緒に試行錯誤しながら地域に当事者意識を持ってもらってもらうようにしていくことが重要。

○ 学校にはある種の保護者不信や地域不信のようなものがあり、自分たちの論理で考えることが多い。成熟というのは、質的に学校運営が本当に良くなることであり、地域は学校の当事者だと皆が認識すること。学校関係者評価というものもそういう考え方から作られたものだと考えている。

○ 五ヶ瀬町ではコミュニティ・スクールというものをどのように位置づけるのか。また、岩根小学校のような取組について、湖南市全体に広めようという動きはあるのか。

【日渡教育長】 コミュニティ・スクールを使うのは学校と地域の関係が成熟したときと考えている。地域が学校について当事者意識を持って自らしゃべり出す時が、成熟といえる時期ではないか。我々は学制ができて以来、学校優位の中で暮らしてきた。今は相対的に地域が力を付けただけであって、まだ学校と地域の間には絶対的な距離がある。成熟度合いをはかる手だては二つあると思う。一つは、学校の目標が地域を意識しているということ。もう一つは、教育課程の編成に地域の意見が反映されているということである。

【宮治校長】 教育長は岩根小学校がコミュニティ・スクールのモデルになって欲しいという思いがある。もともと地域の関心が非常に高い土壌なので、さらに充実した取組を行っていきたい。

○ 学校と地域の距離感が依然として大きいことをあらためて感じたが、学校から地域に飛び込んでいくという試みが見られ、大変力強く感じた。

○ 当事者意識を持つことがキーワードであったが、どこの地域でも様々な工夫があり、試行錯誤していることが分かり、よい勉強になった。

○ 教職員の意識改革については、意識が変わらないから新しい取組をして変わるのか、意識が変わったから新しい取組ができたのか、捉え方が難しい面もあるが、具体的な成果を聞かせてもらえたことは良かった。

○ 成熟というキーワードがよく使われたが、関係者の間で成熟についてのイメージが共有されないと到達が難しいのではないか。また、学校と地域の連携の取組は、地域コーディネーターやボランティアの責任や権限を明確にしないとなかなか普及していかないのではないか。

○ 学校と地域の関係には大きく二種類あり、一つは昔ながらの学校が優位にある地域、もう一つは都会的で市民意識が高く、様々な活動がすでになされている地域である。問題はその中間にある地域であり、新しい人が増えているが地域社会ができていないところ。ここにコミュニティ・スクールをどうやって形づくるかがポイントとなる。

○ 日渡教育長は成熟という言葉で学校と地域の距離感を表していたが、教育長のリーダーシップで遠からず成熟を見ることを期待している。宮治校長の取組はまさに全国のモデルとなるものだと思う。

○ 国として何をすべきなのか、あるいは何をすべきでないのかを考える必要がある。教育基本法に、学校・家庭・地域の連携が記述されたにもかかわらず、意外に浸透していない。文部科学省は様々な形で教育委員会や学校を支援していく必要があると思う。また、社会全体で子どもを育てると一言で言われることがあるが、様々な関わり合いが求められる中で、学校運営や教育活動についても、新しい視点で取り組んでいく必要があると思う。

・事務局から今後の会議の予定日時について説明があり、閉会した。

お問合せ先

初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

電話番号:03-5253-4111(内線3705)

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)