資料1 常用漢字表改定に伴う学校教育上の対応に関する専門家会議(第1~3回)における主な意見

1 常用漢字表改定に伴う「読みの指導」の見直しについて

(1)中学校における常用漢字の「読みの指導」について

○ 中学校の現場では、漢字指導の時間がなかなかとれず、増えた常用漢字について指導するのは難しい現状にある。

○ 中学校において常用漢字をどのように指導するかについては、教科書に委ねている現状がある。

○ 子どもたちは学校教育の場以外のところでかなり常用漢字外の漢字に触れているが、一般的によく使う「訃報」や「補填」という言葉が読めていなかったり、「理由」や「玩具」について、「わけ」や「おもちゃ」と答える誤答が正答よりも多かったりする。中学生が、どの程度正確な音訓で読めているのかということを慎重に調査した上で、議論を深めていく必要がある。

○ 読むことについて、単体で読むのか、文脈で読むのかによって正答率が異なる。文脈の中で読ませたり、振り仮名によって目に触れる機会を増やすことにより単体でも読めるような形にできる。

○ ワープロを使って漢字を書く場合、読むということとのつながりの中で、読めれば大体ワープロを使って書けている。このため、小中学校において読みの指導を多くすべきである。

○ 義務教育終了段階までに常用漢字の大体を読むことを指導することが適当である。

○ 中学校での「大体を読むこと」と高等学校の「主な常用漢字を書くこと」といった示し方については、現在の子どもたちは、教科書以外でも読み書きを学ぶ機会が多くあることを踏まえ、現状のままとすることが適当。

○ 中学校で読む漢字の字数が増えても、生活の中で使われていたり、漢字は形声文字でできているものが非常に多いので、漢字の構成要素等について指導すれば、その知識に基づいて読みを類推することもできるので、十分対応できると考える。

○ 小学校段階でも振り仮名を付して漢字で表記されたものを全教科を通じて触れる機会もあるし、また、授業以外でも様々な機会で漢字を使ったり、漢字に接したりすることも多いので、中学校で読む漢字の字数を増やすことによって、指導に多くの時間を必要とすることはないと考える。

○ 中学校各学年で読む字数の配分について、第2学年では授業時数以上に内容がかなり増えていることを考慮する必要がある。

○ 中学校各学年で読む字数の配分について、各学年50字(第1学年50字程度増、第2学年50字程度増)増やし、中学校修了段階までには追加191字を含めて読んでいくという見通しでどうか。

○ 字種が示されていなかったり、振り仮名を付した漢字も教科書に出てくるとすれば、1年で1000字、2年で1500字、3年でその他常用漢字の大体を読むというように累積的な示し方の方が妥当なのではないか。

○ 小学校では学年別漢字配当表により、各学年ごとに読む字数が示されていることを踏まえると、小・中の継続性の観点から、累積的に読む字数を示すことは難しいのではないか。

○ 中学校の読みの字数の割り振りについては、現行の考え方を踏襲し、中学校で新たに学ぶ漢字の字数を学年別に割り振っていくべき。

○ 中学校では、文字の種類を少し意識した割り振りを考えてもよいのではないか。(例えば、都道府県の漢字や生活の中でよく触れるような漢字など)

○ 読む字種の中学校各学年への配当については、現状では教科書会社ごとに独自に判断し、本文教材やコラムのような形で使っているため、これを変更することは困難ではないか。

○ 中学校の読みの字数の割り振りについては、学年別漢字配当表(1006字)以外の常用漢字について(1130字)、週当たりの授業時数(1年:4時間、2年:4時間、3年:3時間)の割合で均等に割り振るべき。

○ 中学校1年生では小学校で学んだ漢字の復習を行うこと、また、新学習指導要領で授業時数が増加した2年生に対して1年生の時間数は変わっていないことを考えると、中学校の読みの字数の割り振りは第2学年より第1学年を少なくするべきである。

○ 新学習指導要領においては、中学校第2学年の授業時数は増加しているが、これまで第3学年の内容としていたものが第2学年に入ってきており、第1学年と比べて余裕があるわけではない。このため、追加字種の割り振りについて、特定の学年の負担を考慮し軽重をつけるよりは均等に割り振っていくべきである。

○ 追加字種の割り振りについては、必ずしも均等に割り振ることがすべてではなく、中学生の現状の語彙力や読書量を踏まえて考える必要があるのではないか。

○ 学年別漢字配当表の漢字については小学校段階でしっかりと定着を図り、中学校で復習するという負担を軽減できれば、中学校第1学年で400字程度、第2学年で400字程度、第3学年でその他常用漢字の大体として330字程度という割り振りができるのではないか。

(2)高等学校における常用漢字の「読みの指導」について

(3)追加字種の音訓及び追加音訓の指導の在り方について

○ 改定に伴い付表に追加された熟字訓(尻尾、真面目など)についても、教えるべき学校段階の配当をすべきではないか。

○ 追加字種等の音訓の割り振りを考えるに当たっては、改定常用漢字表において情報機器の普及を踏まえた改定が行われていることを考慮すると、平成3年の音訓表の割り振りの基準に情報機器の普及の視点を加える必要がある。

○ 高校入試の観点から、音訓の取扱いは大きな意味をもつため、現場を経験した者の意見を入れながら作っていくことが重要。

○ 追加音訓のうち、学年別漢字配当表の中の漢字については、小学校に割り振るべき。

○ 追加字種のうち、文脈上中学校段階では出現しにくい漢字は、必ずしも中学校で読む必要はなく(常用漢字の大体を読むと解釈して)、音訓を高等学校段階に割り振るべきである。

○ 中学校が義務教育の最終段階であることを考慮し、追加字種の音訓は形式的であっても中学校に割り振っておくべきである。

2  常用漢字表改定に伴う「書きの指導」の見直しについて

(1)高等学校における常用漢字の「書きの指導」について

○ 中学校での「大体を読むこと」と高等学校の「主な常用漢字を書くこと」については、現在の子どもたちは、教科書以外でも読み書きを学ぶ機会が多くあることを踏まえ現状のままとすることが適当。(再掲)

○ 高等学校教育においては、常用漢字表のすべての漢字を手書きできる必要はないという改定の趣旨を踏まえてほしい。

○ 改定常用漢字表が情報環境の変化に対応して改定されたことを踏まえれば、高等学校においてもこれを踏まえた書きの指導が求められ、読めて情報機器で入力できればよい漢字を示すべきではないか。

○ 書けなくてもよい漢字の字種を具体的に示すことが可能かどうかは分からないが、高校を卒業した後は、手書きの機会が非常に減ってくることを踏まえると、読めて識別ができることが基本的な力として求められている。

○ 高等学校には多様な生徒が在籍し、その実態に応じて各学校現場では指導の工夫が行われているため、今後も「主な常用漢字が書ける」といった示し方にするとともに、その範囲も示すべきではない。

○ 高校生は基本的に教材(教科書)に出てくる漢字は全て読み書きができて使えるものとして学習しているため、表内漢字で書けなくてよい漢字を決めることは、表外漢字でも古文・漢文で出てくれば書く学習をすることとの間で齟齬を生じるのではないか。

○ コンピュータ上で書けるのと、手書きとでは異なるため、書くことを指導する字数を厳密に示すことは難しいのではないか。

○ 書けなくてもよい漢字の字種は、具体的には決めにくいのではないか。したがって、大学入試において、常用漢字表に載っているどの漢字から書きの問題が出題されてもおかしくないので、すべての常用漢字を書くということを前提に物事を考えていく必要がある。

○ どういう読みの力や書きの力が今求められているのかという理念をきちんと示し,発信することが大事なのではないか。

○ 高校生は難しい字を読めるものの、簡単な字が書けないという現状がある。また、熟語を書く場合に意味を意識せず誤字が多い。訓読みがしっかりできて書けるように指導していくべきである。

3 常用漢字表改定に伴う学校教育での筆写(手書き字形)の取扱いについて

○ 字体や手書き文字についての方向性に触れる場合は、現場が混乱しないよう周知徹底を丁寧に行っていく必要があるため、慎重に審議を行う必要がある。

○ 字体に許容の幅があり、教科書、参考書、問題集、テストなどで字体が様々に出ると生徒の学習の際に混乱をきたすこととなる。

○ 常用漢字表の改定により追加された漢字には、「しんにゅう」や「しょくへん」など従来の常用漢字表内の字体と異なる字体が入っており、「謎」や「餅」のように小学校でも教えていいような字が含まれている。指導上の混乱を生じないためにも、目安ではなく規範を示す必要がある。

○ 初出の漢字を指導する場合は、標準字体あるいは教科書体に合わせるべきである。また、手書き文字を評価する場合の基準としては、止めやはねなどの字体の細部にこだわらずに柔軟に対応すべきである。

○ 字体のデザインや、明朝体と筆写の楷書との関係についても検討を行うべきである。

○ 指導者や学習者の立場を考慮すると、手書き文字の標準を明示する必要がある。特に追加された196字については指導上の基準が必要。

○ 追加字種について、筆写文字としては、現行の表内漢字において同一の部分を持つ漢字に合わせる形で示すことになると考える。

○ 一般社会で目にする文字と教科書で目にする文字が異なることは避けたほうがよい。

○ 教科書上の文字(教科書体)については、教師が指導や評価を行う際の標準的な文字となるので、出版社の方できちんと定めていただきたい。

○ 「しんにゅう」を教科書で用いる場合には、「一点しんにゅう」でそろえる方が子どもにとって覚えやすい。

4 その他、常用漢字表改定に伴う漢字指導の在り方について

(1)学年別漢字配当表について

○ 学年別漢字配当表にない都道府県名の漢字の取扱いについて、子どもに対する学習負担や何学年に配当するかなどの検討を十分に行う必要があるため、当面は現状のままでよい。

○ 小学校の教科書は検定を終え、発行の時期にきているので、小学校で学年別漢字配当表の1006字を読むことを変更することはできない。

○ 小学校における漢字の指導字数を増やす必要はないが、現実には子どもたちは情報機器を扱う機会や読書、様々な教科等における調べ学習などを通じて多くの漢字に触れており、それが中学校段階における読みの学習へとつながっていく。

○ 小学校現場においても、パネルや情報機器、パワーポイント等を使用した発表などが行われ、子どもたちは見慣れない漢字でも自然に読めるようになっているが、書くとなると難しい。こうした漢字をどのように扱っていくのかが問われている。

○ 小学校における読み書きの取扱いについて、平成23年度からの新学習指導要領の全面実施及び教科書の対応状況や子どもの実態を踏まえると、学年別漢字配当表の1006字を6年間で読み、6年生の漢字は中学校までを通じて書くという現状の取扱いを変えるべきではない。

○ 学年別漢字配当表の漢字を増やすと、中学校における書くことの負担が増える。読むことよりも書くことの方が負担が大きいことを踏まえると学年別漢字配当表の漢字を変えるべきではない。

(2)国語科以外の各教科における対応について

○ 子どもの学習負担を考えるとき、国語科だけでなく学校教育全体、社会全体で対応するという視点が必要。

5 常用漢字表改定に伴う学校教育上の取扱いに関する指導及び周知について

○ 現場における指導にとっては、できるだけ早めに改定常用漢字表の扱いを明確にし、学校に提供する必要がある。

○ 読む力を付けることによる理念を明確にし、書くことには自分の考えを自分の言葉で記述することが重要。改定常用漢字表に対応する指導と評価の在り方を、読む力と書く力との関係で再構成する必要がある。

○ 今回、追加字種を教科書の本文中に反映させるには時間がかかるので、例えば、国が追加字種の小冊子を作成し配布することができないか。

○ 国が補助教材を作成し配布するよりは、教科書に位置付ける方が、現場ではスムーズに指導していくことができる。

6 常用漢字表改定に伴う教科書上の記載の在り方について

○ 少なくとも中学校教科書については、すみやかに新しい方向性を踏まえたものになってもらいたい。

○ 教科書などの表記について、追加漢字を含め、常用漢字を積極的に振り仮名付きで示すことは、漢字の習得において効果が高い。

○ 30年前の漢字表の改定の際には、漢字の指導について改正した学習指導要領の実施年度である昭和57年度においては、教科書における追加漢字の出現箇所を各学年ごとに示した表を配布し、58年度は、教科書における表記の変更、巻末に常用漢字表を添付、新字体への変更を行った。

○ 平成24年から改定される教科書に、新しい常用漢字表が反映されることが望ましい。

○ 追加字種を中学校の教科書に反映していく場合、見本本であれば今年の秋までに音訓の割り振りが示されなければ困難。供給本について言えば、追加音訓のうち使用頻度の高い漢字(他、中、全、私、関など)の表記の変更をするとなれば、いったん検定が終わったものに対して、改めて前ページについて訂正申請をしなければならない。このため、30年前の改訂のときに比べ今回の教科書の対応は非常に大変な状況にある。

○ 改訂常用漢字表を受けた指導上の取扱いと教科書の対応の関係を考えていく場合、追加字種の196字のうち、どの程度をいつの時点から教科書に反映できるのかがポイントとなる。

○ 供給本の段階で、本文中に追加字種が表記できなくても、巻末などに漢字の学習を行うページを追加するのであれば教科書の中に位置付けることは可能ではないか。

○ 改訂常用漢字表を踏まえた教科書は次期検定の機会に対応することとし、それまでを移行期間として、音訓の割り振り表や将来の学年別漢字配当表についての検討を進めることとしてはどうか。

7 常用漢字表改定に伴う高等学校及び大学の入学者選抜の対応の在り方について

○ 前回は、改定後の一定期間は大学入試や高校入試における配慮を行っており、今回も同様の対応が必要ではないか。

○ 大学入試センター試験は、教科書における使用状況や高等学校の学習指導要領に即した学習の到達段階に配慮しているので、常用漢字表のすべての漢字を出題範囲としてよいという考え方にはならない。一方、個別大学の入試での出題は、各大学の入学者選抜方針に基づくため、制約をかけることは困難であろう。

○ 今回の常用漢字表の改定では、活字体と筆写体で字形の異なるものが多く含まれているため、大学入試においては、弾力的な採点基準を設けて対応すべきである。

○ 高等学校では、常用漢字というよりも大学入試にどのように出てくるのかを意識している。

○ 高校入試への対応については、新しい教科書で学んだ中学校1年生が、3年生になるまでは配慮が必要。

○ 大学入試センター試験については、入学志願者の不利にならないように、新たな高校の入学者が卒業する段階で改訂常用漢字表に対応していくことになると思う。個別の大学の入試については、前回と同様に、文部科学省の通達の方針に沿って行われるようになるのではないか。

○ 大学入試や高校入試への対応については、30年前と比較して追加漢字が多いことや字体の問題を考慮して、時間をかけて対応していく必要がある。

○ 高校入試や大学入試への対応については、文部科学省からの通知により示すべきである。

○ 点画の止めはねなど手書き文字をどのように評価、採点していくのかという問題も含めて入試への対応を考えていく必要がある。

○ 大学入試における対応を考えるに当たっては、改訂常用漢字表において削除される5字の取扱いについても考慮する必要がある。

○ 改訂常用漢字表において削除される5字の入試での取扱いも、文部科学省の通知により示すことが適切である。

○ 高校入試への対応についても、教科書や指導上の基準となる音訓の割り振り表をいつの段階で示すことができるのかということが関係してくる。

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