常用漢字表改定に伴う学校教育上の対応に関する専門家会議(第1回) 議事録

1.日時

平成22年7月7日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省第2講堂(旧文部省庁舎6階)

3.出席者

委員

吉田(裕)主査,髙木副主査,飯田委員,金武委員,小森委員,佐藤委員,柴田(悦)委員,柴田(洋)委員,杉戸委員,武元委員,千々岩委員,積山委員,長野委員,宝官委員,村越委員,村山委員,吉田(和)委員 (計17名)

文部科学省

金森初等中等教育局長,德久大臣官房審議官,伯井教育課程課長,森教科書課長,倉見学校教育官,氏原主任国語調査官ほか関係官

4.議事録

〔配布資料〕

1 「常用漢字表改定に伴う学校教育上の対応に関する専門家会議」実施要項(平成22年6月25日 初等中等教育局長決定)
2 常用漢字表改定に伴う学校教育上の対応に関する専門家会議の公開について(案)
3 検討事項(案)
4 文化審議会答申「改定常用漢字表」について
5 漢字の指導に関する学習指導要領上の取扱いについて(抜粋)
6 新旧学習指導要領における漢字の取扱い
7 今後の開催予定

〔参考資料〕

1 新学習指導要領 実施スケジュール(概要)
2 義務教育書学校教科用図書検定基準新旧対照表(漢字関係抜粋)
3 平成23年度大学入学者選抜実施要項(平成22年5月21日 文部科学副大臣通知)(抜粋)
4 当用漢字表から常用漢字表への変更時の対応
5 常用漢字表の制定に伴う学校教育における漢字指導の在り方について(昭和56年8月31日 教育用漢字調査研究協力者会議のまとめ)
6 小学校,中学校及び高等学校の学習指導要領の一部改正について(昭和56年 10月1日 文部事務次官通達)
7 「漢字の習得度調査」及び「教科書の用語用字調査」の概要
8 学校教育における漢字の音訓の取扱いについて(平成3年3月11日 文部省初等中等教育局長通知) 

〔経過概要〕

1 事務局から配布資料の確認があった。
2 事務局から吉田(裕)委員を常用漢字表改定に伴う学校教育上の対応に関する専門家会議主査に指名し,了承された。
3 吉田(裕)主査が髙木委員を副主査に指名し,了承された。
4 事務局から配布資料2「常用漢字表改定に伴う学校教育上の対応に関する専門家会議の公開について(案)」の説明があり,専門家会議を原則公開することが確認された。
5 金森初等中等教育局長から挨拶があった。
6 事務局から配布資料の説明があった。
7 事務局の説明に対する質問を含めつつ,配布資料3「検討事項(案)」について意見交換を行った。
8 次回の日程について,7月26日(月曜日)10時~12時に開催することが確認された。
9 質疑応答及び意見交換における各委員の意見は次のとおりである。

【千々岩委員】

 検討事項(案)の4番目のところに,「その他,常用漢字表改定に伴う漢字指導の在り方について」の黒丸の一つに,学年別漢字配当表についてというのがありますが,先ほどのご説明をお聞きしますと,今回はこの学年別漢字配当表の字種選定をことさらにするわけではないと考えていいんでしょうか,それはまた別途時間をかけてやるということなんでしょうか。

【伯井教育課程課長】

 すいません,それも含めたご議論の結論の結果ということになろうかと思うんですけれども。前回,先ほど説明いたしましたように,前回はかなり現状の調査も含めて時間をかけてやっておりますし,私どもも学年別漢字配当表の見直しというのは,それなりの準備と手間暇と時間をかけて周知しないとこれはできないのではないかと,事務局としては考えておりますので。そういう意味では,常用漢字表改定に伴ういろんな影響はあろうかと思いますので,その辺の確認のチェックは必要かなと,あるいは将来に向けてこうすべきだというような議論は必要かなと思いますが。喫緊の課題としては,局長が説明いたしましたような事柄でございます。

【吉田(裕)主査】

 ご説明のあった,前回の昭和56年の常用漢字表に至る会議の前例が参考資料4に示されています。長期的な対応としては,今,千々岩委員がお聞きくださったようなことへも及ぶかもしれないと思います。

 ほかにありましたら,どうぞ。今のご質問は,今後への私どもの課題みたいなところもありました。いかがでしょうか。

【武元委員】

 もし,今考えをお示しいただけるのなら,ぜひ伺いたいと思っているんですけれども。今,特に中学校の教科書,国語教科書,検定中でございますけれども,その中学校の教科書に,さっき伯井課長からもお話がございましたけれども,どの段階でどのように示すのかということについて,一番影響の大きいのが中学校の教科書でございまして。それを,どの段階でこの教科書上に反映させるのかについてのお考えが,今おありになるのかどうか。それとも,課題としていることの検討の進みぐあいによってそれが決まるとお考えなのか,もし今お示しいただけるのなら,お示しいただきたいということでございます。

 それからもう一つ,細かいことですけれども,熟字訓が6つ増加しておりますので,これもやはり学校配当を考えないといけないんじゃないかと思います。

【柴田(洋)委員】

 今の質問と関連するのかもしれませんけれども,参考資料1で,新しい学習指導要領のスケジュールをお示しいただきましたけれども,前回がどうであったのかは指導要領の改訂と連関したのか,またこれとは背景としてはあるのかもしれないけれども,必ずしもということなのか,ちょっと教えていただければという。参考資料1の性格について,ご説明いただければと思った次第です。

【伯井教育課程課長】

 教科書上の記載につきましては,まさにこの会議で,現場のニーズとそれから教科書の編集,著作,検定,採択というスケジュールがありますので,それと訂正申請手続とか,具体の制度的な対応できること,できないことがございますので,その辺をすり合わせながら,どの段階で適応していくのが妥当であるかというのをご議論いただきたいということでございますので,あらかじめ私どものほうで,この段階からこうしようという答えを持っているわけではないんですけれども。ただ,まあその場合には,当然現実的にできることとできないことがありますので,その辺はよくそれぞれご議論をいただきたいなと思っております。

 それから,前回は参考資料の4にございますが,前回の常用漢字表の内閣告示が昭和56年で,その次の指導要領が平成元年3月の指導要領改訂で,この元年改訂がたしか平成4年の実施でありましたけれども,常用漢字表の改定と学習指導要領の改訂のスケジュールというのが,前回もそうなんですが,今回もそうですが,必ずしもそれを意識しながら,実は常用漢字のほうが改定されるというわけでもございませんので。今回は常用漢字表の改定の時期と新学習指導要領の実施の時期が,ある程度クロスオーバーはしているんですけれども,必ずしもそのことを意識しながら文化庁のほうで作業を進めているわけではないと承知しております。

 我々の議論としては,新学習指導要領の実施スケジュールはもうそれで決まりですね。教科書の一番主たる教材である教科書の著作,編集の作業というのも,ここで少し小学校,中学校,高校と,この検定のスケジュールなんかも出ておりますが,実際使用開始される3年前以上から編集作業に入るわけでもございますので,その辺も含めて具体的にどういう対応をとるのかと。教科書で対応できなければ,何か別途の代替的な措置があり得るのか,ないのかということも含めまして,ご議論いただければなと思っております。

 ちなみに,今から前回のことでいいますと,前回はそういうことだったので,とりあえず必要最小限のといいましょうか,当用漢字が常用漢字に改まったことに伴う必須の改定は,学習指導要領の一部改正という形で既にスタートしている学習指導要領について部分改正のようなことを,最小限のことですけれども,行って,さらにその配当漢字の見直しのような,先ほど言いました,かなり時間をかけて審議する必要がある,調査審議する必要があることにつきましては,次の改訂まで,平成元年の改訂まで時間をかけて議論をして,そして対応したというのが前回の経緯でございます。

【倉見学校教育官】

 もう一点でございますが,机上の配付資料の改定常用漢字表の170ページをごらんいただきたいと思いますけれども,ここに常用漢字表の付表についてということで,真ん中辺に,ご質問がありました「鍛冶」だとか,それから「固唾」とかいったような漢字につきましても,これにつきましても今回どういうふうに取り扱うかということの対象になっていると考えております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。3件ありましたけれども,学習指導要領との対応,あるいは教科書への波及,それが1件と,それと今の付表について,熟字訓のことについてのお答えでありました。基本的には既に定まっているものということではなくて,基本的にこの学校教育への対応についてはここで審議するということが,基本的な姿勢だったかと思います。

【武元委員】

 たびたびで恐れ入ります。建前からしますと,来年中学3年生になる生徒は,新しく加わった漢字を,1や2の考え方によって変わってくるとは思いますけれども,ひとまずは学習して卒業していかなければならないという前提で考えるべきなのかどうか,それについてちょっとお伺いしたいんですけれども。

【倉見学校教育官】

 そういうことも含めまして,この新しい改定された常用漢字表をいつからどのように学校教育に取り入れていくのかといったことも含めまして,いろいろご意見をいただければと思っております。

【吉田(裕)主査】

 よろしいでしょうか。いつからというのを,ほんとうははっきりしたいところがあるかもわかりませんが,それを含めてこの会議にゆだねられているということのようです。したがって,実質的に私どもが議論するところがこの問題を解決していくところのスタートであり,またその解決にもなっていくということかと思います。今のことは,ご説明の中にも述べていらっしゃったことではないかと思います。

 ほかにありましたら,どうぞ。説明の資料が多岐にわたっておりましたので,いろんなところで,これはどうだというようなことがあろうかと思います。

【吉田(和)委員】

 中学校としましては,かなり大きな課題かなと思うんです。私も,前の学習指導要領の改訂及び教科書採択の関係のときにも経験はしていますけれども,今回学習指導要領の改訂に伴って,前とかなり違う部分が学校現場ではあるわけです。それは,非常に速やかに移行措置に従っているということなんです。ですから,もう前倒し的に,学習指導要領が実施されているんです。したがって,国語においても,この学習指導要領の規定に基づく方向で,漢字だけではないんですけれども,現場としては指導を進めつつあるということです。そういうことを前提として,前の改定のとき,あるいは改正のときと比べての違いみたいなものがかなりあるだろうということで,現場としてはできるだけ早目に,いろんなものが提供される必要があるだろうと思います。

 それからもう一つは,この漢字の今度,学習指導要領の特に高等学校のほうは読みなれるというふうな言葉が出ていますし,書く方向については使いなれるという新しい形が出ている。まあこれは,書くよりもよりきちんと使いなれるというふうなことなんだろうけれどもと思うんですけれども,こういうふうなものが出てきている以上,やっぱりこの指導がより明確になってきていると思われます。したがって,配当漢字が,常用漢字が変わってくるに従って,やっぱりこの配当についても,小学校はもう既に教科書採択もすぐできてしまうわけですから,今さらこれはどうしようもないと思うんですが,中学校においては少なくとも,こういう新しい方向についての教科書になってもらわないと,それを使う現場が非常に混乱をすると思われます。

 したがって,ゆっくりと少しずつというのもあるんですけれども,早目に出していただくのが現場にとってはプラスになると思います。どのみちやるということになるなら,それに従うのが現場でございますので,できるだけ早目に,きちんとした2,136字の扱いを明確にしていただければと思っておりますが。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。ご意見ということでしたけれども,今のはひょっとしたら,私たちの内部でも急ぎましょうと,こういうことでしょうか。一応ゴールがこの秋から冬にかけての内閣告示ということになるので,それまでに向けて,現場としては,早く対応しようということでしょうから,できるだけ提供を早くというご意見だったと思います。

【杉戸委員】

 全く別の観点から,一つお願いになっていく質問を申します。

 資料6の新旧学習指導要領での漢字の取り扱いの対照表の中で,これは前々から私など気にしていたんですが,中学校の中で出てくる「大体」というその言葉です。これについて端的に申しますと,「大体」ということが現状でどのような範囲のものとして意識されて,学校教育で行われているか,意識されているか,一つ。

 それからもう一つは,その「大体」を読むということが行われた中学校,あるいは高等学校を卒業した後の実態として,どれくらいの意識を一般の国民,特に若い世代が持っているか,あるいは持てているかということについての実態ですね。この2つのことがわかると,この点についての先ほど来のご質問,あるいは今後の検討の課題として指摘されていることについての議論の基礎情報になるだろうと思います。それで,学習指導要領について検討することに参加する機会を,わずかですがあった立場でも,この「大体」というこの2文字が気になって仕方がないというのが続いてきます。ということを申します。

 2つのことを申しました。1つは学校教育の現状としてどういうふうに意識されているか。これは教えていただきたいということです。何かデータとか調査とかあれば,教えていただきたいと。もう一つの修了後,卒業した後の一般成人も含めた次の段階での実態がどうかという,これは最初に資料の4に基づいて氏原調査官のほうからご説明のあった,最近22年の2月に行われた意識調査ですね,国民への意識調査,あれが特に追加したり削除したり,候補の漢字についてが中心でしたけれども,それについてルビをつけたほうがいいと思うとか,漢字で書いたほうがいいと思うとかという,そういう意識調査として特に増えたり減ったりする文字についてを中心に調査が進んでいます。

 ちょっと長くなって恐縮ですが,これが,先ほど来申しましているこの「大体」ということについての,一般成人の現状の一面をつかむデータになるだろうと,私など思います。逆にいうと,それしか今,我々はそういうデータを持っていないんじゃないかと,議論のよりどころにすべきデータがないんじゃないかという気がします。この2点について,最初に申しましたように,質問とお願いというような,そんな趣旨で申しました。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。検討事項として,資料の3に事務局から案が示されていますけれども,その中でも常用漢字表改定に伴う読みの指導,書きの指導と,これは基本的に1,2というぐあいに挙がっています。現行のものですと,そこに「大体」という言葉がよく出てきています。このことはこの後の審議,あるいは議論にも影響が及ぶだろうと思います。「大体」ということの解釈です。どのように今受けとめられているのか。これはだれが受けとめているのかという観点からも考えられます。ご質問としては限定があるんでしょうか。

【杉戸委員】

 学校教育に直接携わられる先生方。

【吉田(裕)主査】

 先生ですね。

【杉戸委員】

 はい。あるいは,もう一つは教科書編集の立場ということにも関係してくると思います。

【吉田(裕)主査】

 わかりました。ちょっと限定されたと思います。教師,あるいは教科書を編集する側ということです。直ちにこれに答えられるかどうかはわかりませんけれども,資料等がございましたら,その範囲でお答えをお願いします。

 それから,もう一つは,成人の調査があればということです。先ほど資料の4を用いて,3つ目ですよね,平成22年2月に意識調査が行われて,全国16歳以上の男女,約4,100人から回答を得たというのがあります。このあたりで,その「大体」にかかわるような中身が出てくるかどうかと,可能かどうかということを含めてお答えできる範囲でお答えいただければと思います。よろしくお願いします。

【倉見学校教育官】

 まず,今中学校の3年生の読みでございますけれども,その他の常用漢字の大体を読むということになっておりますが,この「大体」ということの考え方なんですが,指導要領上はこの「大体」の範囲は示されておりません。参考資料として配付しております参考資料の8でございますけれども,平成3年に出されております学校教育における音訓の取り扱いについての通知,学校段階別に音訓の読みの割り振りをさせていただいておりますが,目安ということで通知が出されていますが,指導の現状といたしましては,字種として見た場合に,常用漢字のすべての漢字につきまして,いずれかの音訓を中学校までに学習することになります。同一字種で複数の音訓を持つ漢字につきましては,一部を高等学校で学ぶと,この音訓で割り振りしていますが,現在このことを「大体」と考えているところでございます。

 2点目につきましては,この調査がこの「大体」とどの辺でどうつながっていくかについては,こちらで今ちょっと答えにくいといいますか,その辺についてはむしろご意見をいただければなと思いますが,事務局のほうで特段,そこについての関連性について考えていることというのは,今のところ特段ございません。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございます。よろしいでしょうか。

 質問あるいは意見というのを取りまぜて頂戴していますけれども,今日は第1回目ということもありまして,検討事項の案は資料3で事務局から示していただいていますけれども,こうした事項を次回から一つずつ取り上げてということになろうかと思います。今日は,事務局の説明に基づいて,いろんなところからご質問,ご意見をいただいて,次回に備えていく。今日は概略をつかむという第1回の会議でしょうか。「大体」についてという,非常に難しい,微妙なところについて,ご質問とお答えがあったと思います。

【佐藤委員】

 希望的な,お願い的な意見になろうかと思いますが,中学校の学校現場では,現状でも漢字の指導というのはかなり時間をかけたいところなんですが,なかなか思うように時間がとれないというふうな現状がありまして。新しい学習指導要領で,新設になっている従来の言語事項のところに,伝統的な言語文化というふうなところも入ってきまして,書く領域の指導と,この言語事項のところに入っている指導は,かかわらせて指導していくというふうなことになっています。

 そういう中で,常用漢字がさらに191字増えて,合わせますと1,130字ほどを中学校3カ年の中で,今話題になっている大体を読むということになっているんですが,義務教育の段階として,その大体の中の目安といいますか,網羅的に指導するのはかなり厳しいかなと思いまして。より共通性の高い漢字等を,義務教育ではこのあたりをというふうなことで,先ほどの参考資料の8の中をさらにもう一息,最低限といったらちょっとあれなんでしょうか,どういうふうに表現していいかわかりませんが,学習者の負担が少し軽減されるような形でお示しをいただけるとありがたいかなということを思います。

 それから表記のほうについては,新しい191字を含めて,常用漢字を子供たちの前に,より多くルビつきで示すということは貴重なことかなと思います。理由は,過去文科省のほうで,特定課題の調査ということをしていただきました。子供たちの漢字の習得の状況が,より多く普段目にしている漢字はよく読めるというふうなことが出ておりましたので,結果として,ルビつきで積極的に子供たちに漢字を見せていくというのは,習得のほうにも効果があることで,好ましいことかなと思いますが。指導上のことで言いますと,かなり厳しい現状があるということを,ちょっとお話をしておきたかったので,意見を申し添えました。よろしくお願いいたします。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。ご意見ということで。ご要望もあったかと思いますけれども。中学校における実態,中学校に多く課題がありそうだという状況かと思います。漢字指導に時間はかけたし時間はなしという,そういう実態が報告されたと思います。このあたりをどのように円滑に,あるいは効果的に展開するかというのが,中学校に求められるかと思います。そういう例えば「大体」の解釈だとか,あるいは「大体」を示せるならば,この半年くらいの短い間に,どれだけ議論できるかということにかかっているかと思います。

 これまでご質問,ご意見をいただいたところは,検討事項の1「常用漢字表改定に伴う読みの指導の見直しについて」,あるいは一部2の「常用漢字表改定に伴う書きの指導の見直しについて」に大きく関与していますし,また影響が及ぶかと思います。そういう具体的な協議の一部に入っているかと思います。

【村山委員】

 よろしくお願いします。ただいま,中学校の現場でということがありましたが,私,小学校という立場で,今回のこの改定に伴って何が問題なのかなということを考えてみまして。まずはやはり,都道府県名が新しく入ってきているということと,それから学年別漢字配当表に入っていない……,入ってはいましたけれども,読みが入っていなかった,例えば大分の「いた」ですとか,そういうところが具体的にかかわりがあるのかなと思いました。

 学校現場でも,もう来年度から,今度の4月から学習指導要領全面実施ということで,もう着々と準備が進んでおりまして,学年別漢字配当表も変更はなしととらえて準備をしているわけでございます。現在の都道府県名の学習につきましては,社会科のほうで振り仮名を振って学習しております。

 結論から言いますと,現行のままで進めていただきたいなということが,私の希望,意見でございます。やはり新しく都道府県名として11字,まあ13字ほど入りますけれども,これをすぐ学年に入れるということは無理があるでしょうし,実際問題,子供たちの学習の負担が非常に大きいですし,何年生に入れるかということも,これからたくさん検討していかなければいけないと思いますので,その点を申し上げたいなと思って述べさせていただきました。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。小学校の立場からのご意見だったと思います。小学校は,ご承知のように平成23年,来年から新しい学習指導要領が全面実施されます。一部移行措置という形で実施されているということで,今,社会科に入っている都道府県名は,現行振り仮名だけれども,現状で進めてほしいというご要望でありました。それも,おそらくここで議論という形になるんではないかと思います。

【長野委員】

 まず,昭和56年に当用漢字から常用漢字になりまして,そのとき私現場におりまして,初中局長名でかなり厚い,1字の改定の「燈」が「灯」になると,字体が変わるということで受けまして。現場において,国語科主任をたしかやっていたと思いますので,その日に部会を開きまして,こういうのが通達があったということで,学校内ですけれども,国語科で確認をしたという覚えが,たしか海部俊樹文部大臣のときだったと思います。そのときは,ある意味では1字の極めてわかりやすい,この「燈」が「灯」になるということでしたけれども。

 今度の資料4の幾つか丸があります,その印刷字体を手書き特有の字形云々ということがございますけれども,ここになりますと,かなり小学校の先生のご意見もありましたけれども,字体というか,手書き文字をどうしていくか,そういう方向でこの審議をするかどうかは別として,かなり慎重な審議と,それから具体的には丁寧な国民への通知ということをしないと,ここにマスコミの方がおられますけれども,常用漢字を発表しても,ただ増えただけで学習負担ということが新聞に載ってしまったと。それは文化庁として,国民の漢字教育というか,漢字のトレンドとして示したということであって,何も学習負担をあえてやったわけではない。それで,取材しているところが学習塾の先生とかなんていうことで,極めてこうある意味でゆがめられて,文化庁の今度の196字が何か報道されているような感じがしてならないんですね。

 やっぱりこれだけ情報化時代になってきて,漢字が増えていくという,漢字の持つ情報量というのは,前の中教審の先生方の意見なんかも,漢字の持っている情報量というのはすごいということも,たしか何かご意見にもあったと思います。ですから,そういう意味では,手書き文字まで云々ということになったときに,やはりその審議内容については先ほど2つの論点ということで,中学校,高等学校ということですけれども,小学校も含めて手書き文字の方向に何か触れるようなことになりますと,やはり周知徹底ということを丁寧にやっていく必要が。意見として,かなり事務方のほうでスケジュール等を,とりあえず12月までということでございますけれども,次の学習指導要領改訂,あるいは配当漢字等のことも,ここで審議することではないとは思いますけれども,そういうことも,手書きということになりますと,かなり関連してくると思いますので。意見でございますけれども,何かこう,我々手書き文字をどういうふうにしたかといったときに,かなり世間からたたかれてしまうかもしれませんけれども,でもやはり,混乱しないということが一番大事なことだと思いますので,その辺,事務方等も含めて,よろしく進行していただきたいと思います。意見でございます。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。話題は字体のところに来ました。先ほどの村山委員も小学校の状況を踏まえて字種の問題でした。字種の問題が,特に社会科の都道府県名との関連で出てきました。今,長野委員からは字体の問題として,印刷字体と許容字体を示すということで出てきました。字種,字体,そして検討事項の3番目に,筆写,手書き字形のことが課題として挙がっています。

 このあたりでしばらく事務局のほうに振りませんでしたので,事務局のほうで,何かありましたら,よろしくお願いします。はい,どうぞ。

 今,急に言ってもあれですよね。例えば,今の字種の問題だとか,あるいは字体の問題だとかというのが,今出てきておりますけれども。

【倉見学校教育官】

 特に,今事務局のほうでやっております小学校での今の指導の現状とか,それから手書きについても,現場のことをよく考えて審議していただきたいというご意見をいただいて,大変ありがたいと思っております。

【村越委員】

 高等学校の現状を少しお話ししないといけないかなと思っています。ここにある,先ほど資料をいただきました高等学校での割り振りとなって,文字に丸がついていますけれども,現実の問題として,高等学校で意識するということは全くないと言っていいかと思います。実際には,国語の教員がこれを意識してやっているということはないだろうと思います。小中で学習してきているという前提でやってはいるわけですけれども,一方では高等学校ではかなりの学校で漢字の学習に力を入れているということも間違いないと思います。

 私が教員の授業を随分見ていますけれども,一番目につくのが,書き順がむちゃくちゃになっているということですね。ただ書き順も,たった一つではないはずだろうと。だから,これが一概に間違いなのかなと思いながら見ていることもあります。

 それでもう一つ,私が気になっているのは,さっきありました手書きの文化です。字体の違いですね,画数が同じでも字体が変わってくるという問題が出てくる。高等学校では,そういう問題のほうがむしろ大きいのかなと思っています。あとは,どうしても大学入試問題に高等学校は影響されてくるということが言えると思います。

 小中の先生にお伺いできるとありがたいんですけれども,不勉強でして,この常用漢字が教科書の中に全部網羅されてきちんと出てくるものなのかどうか,どういう扱いで順番にきちんと出てきて教えていくのかということが,実は高等学校は理解をしてないんですよね。どういうふうに教わるのか。

 それから,国語の中に書写という授業がありますが,それがどういうふうに行われているのか。手書きの文化で今敏感になっているのは,書道の先生なんです。東京都には書道の専任は1人しかおりませんけれども,講師が研究会をつくって活動していまして,書道の中で,文字を書くということをどうやって教えていくかということを勉強しています。そういうことも含めて参考にできればと思っております。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。高等学校にお詳しい立場からのご発言でした。一部,私ども内部へのご質問もあったかと思いますけれども,主としてご意見を賜ったということにさせていただこうと思います。これに関して,こんなことが考えられるというようなことが,委員の方々からありましたらちょうだいしたいと思います。いかがでしょうか。

【積山委員】

 失礼いたします。現場のほうからの声ということで,発言をさせていただきます。中学校の教員をしております。先ほど来,中学校現場のほうで非常に漢字指導に時間をかけることが難しいというようなご発言の中でお聞きをしておりまして,実際時間数の関係でそういった現状はあろうかと思います。ただしその中で,どのように常用漢字が出てくるのかということについては,やはり教科書にゆだねているというところが,中学校の現場では現状だと思います。

 今回,今の議論を聞きながら,追加の196字について,私,学校のほうでちょっと子供たちにやらせてみたんです,読みが読めるのか読めないのかと。ということをしてみますと,やはり考えられることが,子供たちは学校教育の場以外のところでかなり常用漢字外の漢字に触れていると。かなりの,全部できるわけではないんですけれども,読めなかったのが,「訃報」という漢字が一般では使うけれども,中学生の段階ではほとんど読めていない。「補填」という言葉が今読めていないと。それ以上に課題に感じましたのが,やっぱりいろんな読書だとか本を読みながら,「理由」と書いて「わけ」とルビが振ってあるときがございますね。「玩具」という読みを出したときに,誤答のほとんどが「おもちゃ」と書いてしまって,正答率よりも高いと。

 いろいろなことを今後まとめていく中で,やはりそういった現場の今の中学生が,どの程度正確な音訓で読めているのかということを慎重に調査した上で,私たちの議論を深めていく必要があるのではないのかなということを,今感じておりました。すいません,以上になります。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。具体的な字種の音訓についてでした。この字種の設定の是非というのは,それらをどのように実際に学校教育,学習指導の場で適用していくか,これが私たちへ課せられた新しい課題であろうと思います。具体的なお話をどうもありがとうございました。

【吉田(和)委員】

 中学校では基本的にどうしても高校入試とか,それから義務教育の最後の3年間であるということを意識します。つまり,どういう子供たちを外に出していくのかということを,やっぱりどうしても考えるんですね。

 そういうふうな中で考えますと,やはり私思うんですけれども,読むことと書くことと使うことって,若干違うだろうなと思います。それから,読むにしても,最近読んだ新聞で,東京の小金井第一小学校が調査をしているんですね。例えば「崖」という字がありますけれども,崖という字は単体ではほとんどの子が読めなかったり,読めるんだけれど書けなかったりするんですね。だけど,「○の上」という形で,「崖の上」と書くと,ほとんど読めるんですね。

 したがって,漢字というのは,ある意味で読むときにはコンテクストというか,文脈の中に依存していくことがあるんです。生活にかかわる漢字であるとか,それからよく頻繁に出てくるもの,県名なんかもそうなんですけれども,ほとんど正答率が高いという調査が,私は目にとめたんですね。だから,この読むということについても,それを単体で読むのか,それとも文脈で読むのかによってもかなり変わってくると思います。

 この「大体」の規定を,もし単体の漢字が読めるということで規定すると,相当に読めなくなってしまいます。ですから,それでも文脈の中で読ませていったり,文脈の中でたくさん出会わせていく,振り仮名,私はルビと言いますけれど,そういうふうなものを使って,たくさん接していると,読むことについてはかなり習得できていく可能性が高いと思います。

 読むということについて,指導の時間はあるんですけれど,やはりそれはもう少し日常の中でルビとか,それから文脈の中で読ませることとするとかということで,少しずつ単体でも読めるような形にすることができるんではないかなと思うんです。

 ただし,書くことについては,今の書くという,いわゆる手書きをどこまで書くとするのかということです。今,ワープロソフトで,子供たちも実際にコンピューターを使って文章を作成していることが多い状況もあります。そういう中では,意外とみんな結構書けるんですね。そういうことだと,使うということと,書くということはちょっと違うんではないかと思うんです。使いなれるということになると,完全に手書きでも,すらすらと書けなればいけないということになるんでしょうけれども。

 多分,「憂鬱」なんていう言葉を子供は使いますけれども,これ手書きできる人というのはほとんどいないだろうと思うんで。でも,子供たちは「憂鬱」という言葉を知っていますし,それをコンピューター上では書いています,現実に。そういうことになると,きちんと書くというのと,読むということとのつながりの中で,読めれば大体書く可能性が出てくるわけですから,読みの指導というのはかなり僕は強化していただかないと,これは小学校からよく強化していただかないと,その上に立って書いたり使えたりすることはできないと思います。

 多分,手書きで正確に書くということになってくると,かなり習得率は下がると思われます。今調査資料を持ってないんですけれども,漢字検定の調査では,ほんとうに習得率80%以上という生徒は少ないというようなこともわかりますし,我々自身もそうだと思います。そういう意味で,中学校の場合には読むと書くのバランス,もう少し,読むことをたくさん指導してもらいたいし,より多く読めてもらいたい。それは,他の教科書,例えば内容教科である理科とか社会は非常に多くの語彙を持っていますし,そこで使われる漢字は国語の漢字をはるかに凌駕しているんです,実際には。ですから,そういうものが読めないと,国語で何を指導しているのとは言わないまでも,そういうことになってくるだろうと思われますので,やはり読めることがすごく大事ではないかと思うんです。

 それから書くということについては,そんなような字体だったなということがわかれば,ある程度コンピューター上では書けるようになってくると思いますが,手書きになるとまたちょっとこれは別だろうと思います。そういうふうに考えると,何字というのを厳密に示すというのが,なかなか難しいんじゃないかと思うんです。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。「大体」というところ,今回も使うか使わないかということも含めて,非常に基本的なご指摘だったと思います。資料6「新旧学習指導要領における漢字の取り扱い」で,「読み書き」,それから「使いなれる」という術語が挙がっています。これらについてまた,私どももこの会議で踏襲するかどうかも含めて,議論の大事なところになっていくかと思います。

【吉田(裕)主査】

 かなりご議論いただく形になりました。今,委員の方々から,ほんとうに建設的な,あるいは今後の審議,議論をどのように進めていけばいいのかという,こういったあたりのことについてご意見をいただいたように思います。事務局が検討事項の案として資料の3に掲げていますけれども,大体これらがほぼ網羅されているかなと思いました。今行っています自由討議の時間が大体残すところ15分強ぐらいだと思いますので,まだご発言をいただいていない委員にご感想,ご意見等を中心にしてご発言いただこうかと思います。

【飯田委員】

 私ども小学校現場なんですけれども,ほとんど村山委員がおっしゃったこと,そのとおりでありますけれども,何分にも今度は少し増えていますので,小学校にどのぐらい影響があるかというところが,かなり問題だと思っていますけれども。小学校現場においても,先ほど中学校の委員がおっしゃっていましたけれども,かなり情報の中でいろいろパネルで発表したり,それから情報機器,パワーポイント等を使っての発表なども,もう小学校現場では当たり前のようにやられるようになってきました。

 その中で,いろんな今見なれないような漢字を,子供たちも自然と読んでしまっているというところが,実はあるんですね。そんなところをどう取り扱っていくのかというところは,非常に今問われているのかな,そこは難しいからやめたほうがいいとか,そんなところもあって。さあ,じゃあ書くとなると書けないというのが現状ですけれども,そこのところをここまではきちんと書かせたいというこの学習指導要領の方針には,現場等では非常に,高学年になるとなかなか漢字にも十分時間をとれないわけですけれども,1つ1つ低学年のときからへんやつくりから始まってやっているわけですけれども,到達的なところを明らかにできていけばいいかなと思っているんですけれども。よろしくお願いします。

【金武委員】

 金武でございますが,マスコミ関係からの委員は私だけだと思いますので,その立場からちょっと意見を申し上げます。

 まず,新聞,放送は,当用漢字のときから読者や視聴者のことを考えて,できるだけその範囲で文字を使ってきました。したがって,一般の出版物と比べれば,新聞というのはほとんど常用漢字の範囲内で書かれています。常用漢字以外のものはルビをつけるか,あるいは言いかえるというようなことをずっと実施してまいりました。

 そこで,今回も同じように,これが告示された場合には,新聞としては対応していこうと思うんですが,当用漢字から常用漢字に変わったときと比べて,今回の変わり方のほうが激しいものがあると感じております。といいますのは,字種の数が常用漢字になったときは95字増えた,今回196字ですから,倍以上増えているということで,新聞の書き手としては非常に便利になったかもしれないけれども,これをこのまま新聞で自由に使ったら,確かに一般の人といいますか,特に中学生ぐらいじゃ読めない字がたくさんあるんじゃないかということを心配しております。

 それからもう一つは,追加されたものの字体について,この資料4にもありますように,しんにゅうとかしょくへんが2種類になったといいますか,常用漢字体ではないもののほうが加えられました。それから,ここに挙げていない字についても,印刷標準字体に基づいておりますので,前回の当用漢字から常用漢字になったときは字体が常用,いわゆる当用漢字の略字体といいますか,それでそろえられたんですが,今回はこのしんにゅう,しょくへん以外にも,そろえられていない字がたくさんあります。

 そういう点については,私,実は今回の常用漢字改定のほうの委員にも参加しておりましたので,2回にわたるパブリックコメントを読ませていただきましたけれども,特に一般国民といいますか教育関係者からは,字体は常用漢字体に統一してほしい,要するに,教育のときに非常に教えにくいというような意見が多かったので,新聞としましても,第1回のパブリックコメントのときには,新聞協会として,追加文字は常用漢字体の字体にそろえるべきであろうということを要望いたしました。

 ただその後も,結果的には,やはり決まっている表外漢字字体表というものを変えたくないという意向が国語分科会のほうでは強くて,この5字について一応併記する形になった。このときも,最初は例えば「遡」のしんにゅうの二点が先に本表に入って,一点のほうは備考欄に小さく載っていた。ですから,私どもとしては,これはどちらも使えるということであれば,同じように並べるべきであろうということで,まず本表に入り,そして本表に入って字の大きさも同じになりました。で,新聞の中では,いろいろ意見は分かれておりましたけれども,大勢としては,ほんとうは一点しんにゅうのほうが先に出て,二点しんにゅうが括弧に入れば,一番国民にはわかりやすいだろうという意見が強かったんですが,国語分科会で採用するには至りませんでした。

 そこで,新聞協会は2回目のパブリックコメントでは,字体というものが今までの常用漢字では規範になっていた。つまり統一されていて,常用漢字表の中ではすべてその字体で教えることができたし,一般の出版物も新聞はもちろんですが,すべてそれに統一されていた。しかし今回は,統一されていないのであるから,規範性が薄れた。 やさしい略字体で統一されていた常用漢字表に,難しい康煕体が追加されたのはなぜか,学校現場はもちろん,国民一般にもわかりやすい説明が必要であろうと申し述べました。ただ,幸い「遡」などの5字,そのほかについても,196字の中の字体の難しいものは,今のこの学年別配当表に入れる可能性は少ないのではないか。つまり,難しいものが多いですから,とは思っておりますが,例えば「謎」とか「餅」なんかは小学校でも教えてもいいような字だと思います。その場合にどういう形で教えるかということは,非常に教育関係者の方は悩んでいらっしゃるのではないかと思いますので,当然この会議においては,そのところの基準がはっきりしなければ教えにくいのではないかと思っております。

 私ども一般社会人としては,日本の漢字の字体が複数あって,それぞれのメディアで統一されていれば問題ないだろうと思っておりますが,教育のことを考えると,やはり目安ではなくて,ある程度の規範が必要でしょう。新聞も,「教育に新聞を」というNIE運動というのを進めておりまして,年々教材に新聞を使っていただける学校が増えておりますので,新聞としても教科書の表記方針と,できれば食い違いたくないという気持ちがあります。したがって,ここの会議でその点のところが,なるべく国民にわかりやすい形でまとまっていければ大変ありがたいと思っております。以上です。

【宝官委員】

 失礼します。高等学校の教員をしておりますので,その関係で一言申し上げます。

 今,字体が複数あるというお話とかがあったんですけれども,先ほど村越委員がおっしゃいましたように,高等学校で教える際,あまり常用漢字というのは意識しておりませんで,どちらかというと大学入試でどういうふうに出てくるかということについてはでも,生徒のほうも反対に今,とても神経質になっておりまして。ですから,字体がこれもいいし,これもいいしという形になって,あるいは教科書,参考書,問題集,それからマスコミとかで出る活字,それからテストの問題,模擬テストの問題等のところで,字体がさまざまな形で出てきますと,どれがいいんだということについては,非常に生徒のほうは神経質になるかなと思います。

 古文,漢文になりますと,かなり難しい字も出てきますので,そこで生徒が見るものについて,いろんな字体が使われていると,生徒のほうは混乱するんじゃないかなということは感じています。

 それから,先ほど難しい字も結構読めるというお話があって,それはほんとうに確かにそうだと思うんですけれども,案外簡単な字が書けなくて。それは,何か音のほうで生徒は漢字を,何となく音を当てて読んでいて,意味はあんまり意識していないことが多くて,熟語を書かせたときに発音だけで漢字を当てて書いてくるので,とんでもない誤字があるというようなことが見受けられまして。それが,ほんとうに漢字を読めているんだけれども,使えているということにはならないんじゃないかなというようなことを感じています。訓読みが,だから苦手だと思いますし,その辺がちゃんと読めて書けるようになるというのが,漢字が増えていく中で指導というのはなかなか大変だなと感じています。失礼しました。

【柴田(悦)委員】

 失礼いたします。私,8年前まで高校の実際に現場におりまして,今は高校教育課というところに行政の立場でいるのですけれども,今おっしゃっていただいたとおり,高校の教員でいたときには,常用漢字表はほとんど意識しておりませんでした。現場は実際そうだと思います。もちろん,大学入試ということはあるんですが,基本的には,出てきた漢字についてはすべて読み書きできるようにしようという思いでいたのではないかというふうに,自分自身振り返っております。たまたま今,中高の接続というところで,つまりはっきり言えば入試,高校入試というところで携わっている部分もあるものですから,そういった観点からいきますと,やはりこの参考資料8の音訓の取り扱いですね,この表というのが非常に大きな意味を持ってきているということを常に感じております。

 この会議自体が今後どう展開していくのか,ちょっと私自身が,はっきりまだイメージできていないですけれども,私の中ではこの参考資料の8をつくることが目的ではないのかもしれませんが,それをつくることを意識して議論していくのかという思いを持っております。非常に大事な,そういった意味では非常に大事なこの配当表を,現場を知った人間の意見も入れながらどうつくっていくかというのが,非常に大事な観点だと思います。

 それからもう一つ,先ほどから出ている手書きの字形という問題がありますけれども,今の立場で言いますと,この三,四年で非常に中学生も含めて,あるいは保護者も含めたこの手書きの字形ということについて,ものすごく意識が高まっていると感じております。非常にそれに関する質問が多くて,昔はここまで質問がなかったのに,なぜ入試が終わった後に,ここまで手書きの字形について質問が来るんだろうと思う現状が,実はあります。ですからそういったこと,つまり小学校,中学校でどのように指導されているかということも含めて,意識をしながらこの会議を進めていかなければいけないという感想を持ちました。以上でございます。

【小森委員】

 小森でございます。私の受けとめ方ということで,発言させてください。

 学習負担ということが話題になりましたけれども,この課題は国語科だけで対応するものはない。学校教育全体で,また社会全体で対応しないと乗り切れないのではないか。氏原調査官のお話,説明をお聞きしながら,今までの考え方を少し変えないと,これは対応できないのではないか。特にその指導のあり方は,国語科だけではない,社会科のすべての教科・領域で対応しないと時数が足らないということで,指導のあり方を変えなければいけない。と同時に,何を評価するのか,評価の仕方も変えていかなければいけない。

 つまり,先ほど読み書き分離のことが話題になりましたけれども,読む力をつけるということがどういうこと,どういういいことがあるのか,やっぱり理念をはっきりさせていく必要があるのではないか。書くということも,ただ196字を全部書けばいいということじゃなくて,自分の考えを自分の言葉で記述する,表記するときに書く力を発揮すると。ですから,この新しい常用漢字表に対応する学校教育の指導と評価のあり方を,やはりもう一度吟味し直していく必要がある。そのとき,字形とか字体のことが話題になりましたけれども,そうなるとこれは,書写,指導も少し変えていかないと対応できないのではないか。

 そう考えますと,学校教育とともに,いろいろな教育機関と連携をしながら,読む力,書く力,それとの関係で再構築していく必要があるのかなと。で,私も先ほど来,局長の説明された課題と参考資料の8を重ねながら,ここら辺から突破口が見えるのかなと,そういう勝手な感想を持ちました。以上です。

【吉田(裕)主査】

 ありがとうございました。

 最後のほうはちょっと急ぎ足になりましたけれども,ご協力ありがとうございました。全員の委員の方に,第1回目ということもあって,ぜひご発言いただきたいと思いましたので,そのようにさせていただきました。

 まとめる時間を持ち得ませんけれども,今まで発言としていただいたものは,資料3として事務局が配付してくれた検討事項の案,まさにそれらを網羅した形になりました。その1から1,2,3,4,5,6,7の項目,そしてとりわけ波線が施されている部分は,今秋,あるいはこの冬に向けて解決しなければいけない,ある意味で喫緊の課題です。これらについて,委員の方々からたくさんのご意見をいただいたように思います。次回からの課題になろうかと思います。第2回からの会議でよろしくお願いいたします。

 さまざまなご意見をいただきましたけれども,時間が参りました。本日はこのあたりということにさせていただきたいと思います。

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