コミュニケーション教育推進会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成22年5月26日水曜日 17時~19時

2.場所

文部科学省東館3F1特別会議室

3.議題

  1. 座長の選任等について
  2. 自由討議

4.議事要旨

(冒頭は人事案件等につき非公開)

【平田座長】  平田でございます。ご指名ですので、座長を、微力ながら引き受けさせていただきます。このコミュニケーション教育推進事業、私、申しおくれましたが、内閣官房参与もあわせて務めさせていただいておりますが、先般、鳩山総理が新宿区の花伝舎稽古場施設に、施設見学に行かれた際にも、このコミュニケーション推進事業が鳩山内閣の目玉政策の1つであるということをブログにも書いていただきました。ぜひ、この事業を発展させ、日本の子どもたちの創造力、そして国際競争力、異文化理解能力などが身につけるような事業にしていければと思っております。よろしくお願いいたします。

 引き続き、もう私が議事を進めてよろしいですか。それでは、まず、冒頭、鈴木文部科学副大臣よりごあいさつをいただきます。よろしくお願いいたします。

【鈴木副大臣】  ありがとうございます。文部科学副大臣の鈴木寛でございます。このたびは、皆さん、ほんとうに大変お忙しいところ、コミュニケーション教育推進会議のご趣旨にご賛同いただきまして、そして委員就任をご快諾をいただきましたことを心から感謝を申し上げたいと思います。改めまして、この会議の趣旨についてご説明を申し上げたいと思います。資料1にございますように、多様な価値観を持つ人々と協力、協働しながら、社会に貢献することができる創造性豊かな人材を輩出するため、コミュニケーション能力の向上が求められており、そのための教育を推進するということは、民主党のマニフェストにも記載をされておりますし、加えまして、鳩山総理も、国会の答弁の中でも、何度となく答弁をさせていただき、今、平田座長からお話もいただきましたけれども、国会外でもさまざまなご発言をされているところでございます。そういう意味では、私どもにとりましては、待ちに待った、このコミュニケーション教育推進会議の開催と申し上げても過言ではないと思います。

 加えまして、今般、新しい学習指導要領を改訂をいたしたわけでございますが、その学習指導要領では、すべての教科にわたって、言語活動の充実というものを重視をいたしております。子どもたちのコミュニケーション能力を高めていくということは、こうした文脈においても、大変重要視をされているところでございます。こうしたことを受けまして、文部科学省におきまして、今回の会議を設けることといたし、特に学校教育におけるコミュニケーション教育の趣旨や意義、推進方策、普及方策などについて検討を進めていただきたいと思っております。

 また、ご検討に当たりましては、この会議と連動いたしまして、文化庁の、子どものための優れた舞台芸術体験事業の中で、本年度より、292の学校で演劇、ダンス等の表現手法を用いた、計画的で継続的なワークショップを実践する取り組みを実施をいたしております。こうした取り組みの成果、課題を、この事業とこの会議が、まさに連動しながらご検討をいただければ、大変ありがたいと思っております。この会議での具体的な検討事項でございますけれども、配付資料の3に案を用意させていただきましたが、大変盛りだくさんの検討事項となっておりますけれども、学習プログラムの開発でありますとか、芸術団体等との連携・協力の方策、あるいは諸外国の取り組みなどの専門的な事項につきましては、必要に応じてワーキンググループも設置をしていただいて、ご検討を深めていただければと思っております。今後の進め方といたしましては、まず、検討事項を固めていただいた後に、事業の経過や学校の現状などを見ながら、1年程度、丁寧に審議を進めていきたいと考えておりますと同時に、こうした活動を社会に普及、理解、促進を深めていくということも、あわせて皆様方にリードをいただければと思っておりますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 ありがとうございます。

【平田座長】  ありがとうございます。それでは、事務局のほうから、もう既に進んでおります事業もありますので、本会議で今後、検討を進めていく事項や、もう既に進められている関連事業などについて補足説明をお願いいたします。

【伯井課長】  教育課程課長の伯井でございます。資料を簡単にご説明をさせていただきます。資料1は、先ほど副大臣からありました、この会議の設置要項、副大臣決定でございます。資料3が、この会議の検討事項の案でございます。学校におけるコミュニケーション能力の育成、コミュニケーション教育の趣旨でありますとか、学力や学習意欲との関係、あるいは学習指導要領との関係。2といたしまして、コミュニケーション教育の推進のあり方、具体的な推進方策、とりわけ、演劇、ダンス等の芸術表現を用いたコミュニケーション教育推進のための、教育課程上の学習プログラムの開発、あるいは劇場等との連携・協力の推進方策など。3といたしまして、コミュニケーション教育の学校や保護者への理解の促進方策、広く普及・展開をするための方策などについて、検討事項の案を整理させていただいております。このことにつきまして、幅広くご議論を、今回の議論でいただければと存じております。資料4でございますが、先ほど副大臣からもご説明がありました、児童生徒のコミュニケーション能力育成に資する芸術表現体験の具体的な事業でございます。資料4、クリップを外していただきまして、概要というのとあわせて見ていただきたいと思います。文化庁の、子どものための優れた舞台芸術体験事業の中での一メニューとして、この事業を展開しているわけでございまして、国語、音楽、体育、総合学習等の中で、計画的な指導を行う。演劇、ダンス等の表現手法を用いたコミュニケーション能力を育成していくというものでございます。具体的には、芸術家等を学校現場に派遣いたしまして、担当教師が連携して、実技指導、講話、実技披露、成果発表等の計画的、継続的なワークショップを実施するというものでございます。今年度から190の自治体、45都道府県でございます。292校、内訳は下の表のとおりでございますが、国公私立各種の学校で実施をするというものでございます。予算額は1億9,600万円余ということで、学校に派遣する芸術家等の講師謝金、旅費等がその内容となっております。分野で見ますと、(1)の表にあるとおり、演劇、ダンス以外にも、伝統芸能、大衆芸能、その他の分野でこれを実施していくこととしておりますし、2ページでございますが、教科につきましても、総合的学習の時間、音楽、国語、特活と、各教科にわたって展開している学校があるというものでございます。具体的な実施校につきましては、4ページ以下に、これを実施する学校の一覧を掲載しているところでございます。

 資料5でありますが、現行の学習指導要領、新学習指導要領における資料でございます。学習指導要領につきましては、机上に小パンフレットを配付しておりますので、またごらんいただきたいと思いますが、ご案内のように、国の教育課程の基準でございまして、21年に告示いたしまして、来年度、23年度から小学校で完全実施していくというものでございます。その中におきまして、言語活動というのを今回の学習指導要領の改訂の柱として充実し、各教科にわたりまして考え、説明するとか、あるいは、友人と話し合ったりするとか、まとめたものを表現したりするといった言語活動を充実したところでございます。添付しております資料が、具体的な学習指導要領の記述の例でございまして。国語はもとより言語活動充実の基幹教科でございますので、国語以外の各教科における言語活動の充実例を記しております。後ほど、この点に関しましては、髙木先生のほうからまたご紹介いただけるものと存じております。資料5-2が、演劇・ダンスということに限った新学習指導要領における記述の例を整理したものでございます。小学校の国語の低学年で、物語を演じたりすることを言語活動として、新規に盛り込んでおります。体育においては、従来から表現運動等を指導することとしておりますし、総合的学習の時間、特別活動などにおきまして、伝統文化などの学習活動。特別活動では、文化や芸術に親しんだりするような活動を行うということを記載しております。中学校におきましても、国語科におきまして、場面の展開や登場人物などの描写に注意して読むとか、登場人物の言動の意味などを考えるとか、そうした記述を新規に強調しているところでございますし。4ページの、保健体育の中で、ダンスを今回、今まで選択的に実施しておったのを、1、2年生の間で必修しているというのが今回の改訂でございます。高校におきましても、国語総合、これはすべての高校生が共通に必履修する科目でございますが、文章を読んで脚本にしたりという事柄を新たに盛り込んでいるということでございます。以上が、学習指導要領における位置づけでございます。

 資料6が、「コミュニケーション能力」に関する諸答申の抄でございます。簡単にご説明いたします。今回の指導要領の改訂のベースとなりました、20年1月の中央教育審議会答申におきましては、記載にございますように、友達や仲間のことで悩む子どもが増えるなど、人間関係の形成が困難かつ不得手になっているという子どもたちの現状と課題の指摘のもと、今回の改訂を行ったという資料でございます。3ページの、現在、中教審で行っております、キャリア教育・職業教育の在り方についての検討の中でも、子ども、若者の現状等を分析する中で、コミュニケーション能力、対人関係能力の不足についての指摘が、るるございます。5ページがデータでございますが、高校を中途退学する理由といたしまして、もともと学校生活に熱意がないであるとか、人間関係がうまく保てないといったことを中退の理由としているものが、合わせて約2割存在するというデータでございます。また、下の資料は、大学生ですけれども、約8割の大学等において、対人関係に関する相談内容が増加しているという回答が増えているということを示すデータでございます。最後に、6ページが企業側に、経団連の資料でございますが、今年度の採用選考活動の具体的内容として、選考に当たって特に重視した点を複数回答で求めたものでありますが、コミュニケーション能力というものが上位トップであると。選考時に重視する要素の上位の推移を見ましても、過去7年間連続でコミュニケーション能力というのがトップでございまして、さらに上昇傾向にあるということでございます。以上、とりあえず我々で、手元にあるデータを整理したものでございます。

 私からは以上でございます。

【平田座長】  ありがとうございました。今の、事務局からの説明に関しまして、ご質問などございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 経団連のアンケート調査はすごいですね。コミュニケーション能力は、語学力の約30倍求められているので、時間数でいうと、英語の30倍ぐらい時間をとらないと。少なくとも、私は大学の大学院におりましたが、社会のニーズと学校教育が相当ミスマッチになっているということは間違いないだろうと思います。そこら辺のところを、この会議で、ぜひご検討いただければと思います。本日は、第1回の会議ですので、皆様の自己紹介とあわせて、コミュニケーション教育についてのご意見や取り組みについて、5分ほど、短くて恐縮ですが、まずご意見、あるいは発表いただいた後に、質疑応答を含めて自由討議を行いたいと思います。副大臣からもお話がありましたように、この親会議のもとに、おそらくワーキンググループをつくって、そこで、できるだけ実務的な話をしていくということになるかと思います。もちろん、この本会議でも、実務的な話もどんどんしていただいていいのですが、理念的なことも含めて、ぜひ皆さんのご意見をちょうだいできればと思います。なお、本日、中村委員におかれましては、ご都合により早めにお帰りということなので、最初にご発表いただきます。それから、吉本委員からイギリスのコミュニケーション教育について、それから、私から韓国のコミュニケーション教育について、先行して同様の取り組みを諸外国でしておりますので、そこに関しては少し長めの時間をちょうだいして、発表させていただきます。

 それでは、中村委員、よろしくお願いいたします。

【中村委員】  慶應義塾大学、中村伊知哉と申します。申しわけありません、所用で後ほど中座をさせていただきます。私は、デジタル技術と子どもに関するプロジェクトを幾つか進めておりますので、今日は3つばかり簡単に紹介をいたします。これは、文部科学省の別の会議であります学校教育の情報化に関する懇談会で議論をしていることなのですけれども、すべての子どもたちが、デジタル教科書や教材を持てるような運動を、今、進めようとしております。これは、デジタルの技術で学力を向上させるだけではなく、創造力や表現力、あるいはコミュニケーション力を高めることができるのではないか。それは、デジタルの技術、コンピューターが、計算機ではなくて、オーディオビジュアルの機械に進化してきたことによるわけですけれども、そこで、そういった運動を推進するためのコミュニティを産学官でつくろうということで、準備をしております。デジタル教科書教材協議会という名前なのです。実は、あした実質的に活動をスタートさせることになっておりまして、正式には2カ月後の7月27日に発足、設立をいたします。東京大学の前の総長の小宮山宏先生に会長を務めていただこうということで、今、進めているところであります。

 2つ目は、しかしながら、こうした新しい技術、携帯やインターネットというのは、子どもたち、青少年にとって危険なものではないのか、規制すべきではないのかという議論もこれまでございました。これに対しまして、安全にもっと使うということで学んでいくのがよいのではないかということで、呼びかけをいたしまして、安心ネットづくり促進協議会というコミュニティを2年前に発足をさせました。私、呼びかけ人となりまして、この委員会の委員でもいらっしゃる鷲田阪大総長に会長を務めていただいております。これは、産学によるコミュニティによって、情報リテラシー教育を広げていこうという取り組みでございます。

 3つ目は、問題は、そういった新しい技術を使って子どもたちが何をするのかということであろうと思います。そこで、皆様のお手元にも、資料やパンフレット、冊子などをお配りしていると思いますけれども、今から8年前に、CANVASという名前のNPO法人を立ち上げまして、これは、創作活動、コミュニケーション活動のワークショップを展開するという活動を進めております。これは、学校現場といいますよりも、課外活動としてワークショップを開発して、展開するというものでございます。例えば、デジタルの技術を使ってアニメをつくったり、音楽をつくったりします。あるいは、電子新聞をつくったりします。すべての子どもたちがこういったことを身につける。同時に、それだけではなくて、お絵かきをするとか、粘土で工作をするとか、あるいは演劇やダンスといった、デジタルではない、体を動かす活動にも非常に力を入れております。これまでのところ、この8年間で、日本でいいますと20の地域で618種類のワークショップを開発をして、1,240回提供してきております。毎年、全国各地で行われているワークショップ、こうしたワークショップを一堂に集めるイベントも行っておりまして、今年は2月末に、慶應大学の日吉キャンパスで開催いたしました。今回は80のワークショップが集まって、2日間で3万5,000人の親子が参加をいたしました。これは、毎年どんどん大きくなってきておりまして、そういった活動に対するニーズは非常に高まってきていると思うのですけれども、圧倒的に供給が不足をしております。我々も、こうしたイベントを毎年開催しているのですけれど、大赤字でフーフー言いながらイベント開催をしております。ただ、一方で、先日とりまとめられました知財計画2010の中でも、私はそこでのコンテンツ分野のとりまとめ役をしているのですけれども、今後の目標として、こうした子どもたちの創作ワークショップへの参加者数を35万人にする。このワークショップコレクションの10倍に当たるわけですけれども、そういう目標を掲げられましたので、ぜひともそういった方向で実現をさせていただければと考えております。

 ひとまず以上でございます。

【平田座長】  ありがとうございました。先に申し上げておけばよかったのですが、この現在の取り組みは、演劇、ダンスなどとなっておりますが、既に音楽等の授業も実施しておりますし、ぜひこういったメディアアート系、アニメの製作とか、そういったものも含めて、ごめんなさい。どの範囲までこれを広げていくのか、どの範囲に適用するのかということも、本委員会でぜひご議論いただきたいと思っております。

 それでは、この後は50音順にお願いいたします。

 浅川委員、お願いいたします。

【浅川委員】  皆さん、こんにちは。浅川です。よろしくお願いいたします。そうそうたる方がいらっしゃいまして、大変緊張しておりますので、私としては、この会議に出て、子どもたちのために、それから教員のために、何か私の力が発揮できることがあればと思って出てまいりました。よろしくお願いいたします。

 お手元の資料をお読みください。まず、私は昨年、富士見丘のほうに着任いたしました。それ以前から、本校は、コミュニケーション能力を育成というところで研究を進めておりましたので、そのあたりをご説明することから始めたいと思います。

 本校の取り組みとしては、演劇を取り入れた総合的な学習の時間の創造というところで、研究指定校として、平成16年からスタートいたしました。その3年間の中で、特に6年生全員を対象とした、その都度、演劇体験授業ということを通して、そこにありますように、コミュニケーション能力を育てるというところから4つ実証されてまいりました。その演劇体験授業、実証をするとともに、そのほかにも、後ろのほうのお手元に、3年間の研究のまとめとして、「研究のあゆみ」という冊子をコピーしたものをつけてありますが、1つは、コミュニケーション能力を育成するための構想の明確化ができたと思います。それから「対話・会話」、このあたりを特に国語科で取り入れながら、有効に指導するという指導の系統表もつくりました。それから3年間、各学年、研究授業を通して検証してまいりました。それから、さらにコミュニケーション能力を育成するにかかわる教材分析をしたり、それから、総合的な学習の時間と国語との関連づけた指導のあり方、それから6年間の集大成として、6年生の演劇プロジェクトを確立したということ。そのほかに、6年生にとっては演劇体験ができるわけですが、ほかの1年生から5年生については、演劇ワークショップをまず実施して、少しトレーニングをしていくということ。それから、本校は、通級学級の指導がある教室がありますので、そこでのコミュニケーション能力の育成の位置づけというものを、3年間を通して、学校としてまとめたものが、お手元の資料についております。その3年間の研究指定校を受けた後、平成19年から、今度は校内研究で、国語科を通して対話・会話を有効的にした単元を取り入れながら、例えば説明文を通して、物語文を通してということで校内研究を進めてまいりました。平成19年度、前任の校長のほうで、演劇活動百年宣言というのをいたしております。ですから、このあたり、百年宣言をしたものですから、私としては、この100年を続けていかなくてはならないという、非常に責任を感じております。

 それから、平成19年、杉並区のほうで、特色ある学校づくりということで、プレゼンテーションをして、そして予算をいただくということが始まりました。本校では、16年から始まりました、このコミュニケーション能力を育成するということを学校づくりの特色として、区のほうには出しております。本校で、杉並区では、師範館といいまして、区独自で教員を養成するというようなシステムがあります。その中の区費教員を1名、特色づくりということで配置していただいて、コミュニケーション専科というものを設定いたしました。その専科の役割としては、6年生、1年間通しての演劇プロジェクトのコーディネーター役、担任とともにコーディネーター役をやる。それから、1年生から5年生のワークショップのコーディネーター役。それから、1年生から6年生まで、国語科を通して、効果的なTT指導を進めるということ。それから、英語活動の推進役という、この4つの仕事を持ったコミュニケーション専科というのを設定しております。それから、先ほども言いましたように、特色ある学校づくりとして、区から査定を受けて、予算をいただいているということが始まっております。

 次、6年の演劇活動のあゆみ、これは例年、平成16年から1年間、6年生としての6年間のまとめとして、卒業公演というのを2月に設定しております。その卒業公演での演劇の題名を挙げておきました。昨年、私は1年間、6年生とともに演劇活動を体験し、そして2月に卒業公演も体験しました。「ここは牛肉特売タウン」、非常に奇妙な名前で、一体どんなことがあるのだろうということなのですが、大きく言えば、家族のきずなを大事にしようということなのですが、子どもたちの柔軟さというか、奇想天外なものの考え方で台本づくりが進んでいくのを、私も非常に楽しみながら、卒業公演は無事に終わることができました。

 平成22年度、今年度ですが、そこにあるように、めざす学校像を設定しております。そして学校教育目標は、「かしこく やさしく たくましく」というところで、本校の特色であるコミュニケーション能力というのは、「やさしく」に位置づけております。そこにもありますように、言葉の持つ大きな力と、人としてのぬくもりである思いやりの体得をということを全職員で考えながら、子どもたちに、いかにこれを指導していくかということで、4月からスタートしております。具体的に今年度として取り組むことについては国語科を通して、それから演劇ワークショップ、今までやりました、1年生から5年生までのワークショップですね。今までは、多少、やはり講師の方の力に頼る部分が多かったものですから、今年度はやはり担任、それからコミュニケーション専科が主体となって、「単元 えんげき」というものを創造していくということで考えております。それから、例年行っている6年生の演劇体験活動、それから、今回応募して決まりました、そこにあります、子どものための優れた舞台芸術体験事業、これについては2年生から5年生までが受けられることになりました。それから、日々のいろいろ鑑賞指導、それから交流ということを考えております。それから読書活動、いろいろ、学習の中での外からの出会いということも大切にしたいと考えております。それから、そこに最後に書いてあるように、歌声を響かせ、このあたりは非常に、やはりコミュニケーションにとっても大事なことだととらえて、私は思っておりますので、ぜひ子どもたち、大いに歌声を響かせたいと考えておりまして、月に1回の児童朝会は、季節に合った歌を私も歌うことにしております。多少、下手な校長が歌うのが、子どもには効果的なのかと信じて続けておりますが。そんな形で、「かしこく やさしく たくましく」の「やさしく」の中に位置づけて、今年度もスタートしております。

 具体的に、平成16年からの取り組みとして、成果と上げられることはそこにあるような4つ、課題については3つ。それから今後、今年度からは、本校のコミュニケーション能力、第2ステージととらえて、昨年度の秋から地域運営学校にもなりましたので、新たなものを目指して取り組み始めたところでございます。

 以上です。

【平田座長】  ありがとうございました。大変、現場の実績に根差した、心強いご発表をいただきまして、ありがとうございます。ここは若干、私もかかわっておりまして、日本劇作家協会との二人三脚でここまでやらせていただきました。それから、座・高円寺という、杉並区の演劇専用施設ができるということで、私たち、劇作家協会としては、それのプレ事業としての取り組みでもあったわけです。後で、高萩委員からもご発表があるかと思いますが、世田谷とか杉並とか、先進事例はとてもすばらしいことをやっているのですけれど、世田谷、杉並だけでいいのかということが問題なのだと思うのです。そうすると、地方の子どもたちと、ますます格差が出てしまうのではないか。そこら辺のところも、ぜひご議論いただきたいと思います。ちなみに、百年宣言は、前任の校長先生が卒業公演か何かであまりに感動して、100年やりますと言ってしまったことから始まったと伺っております。ありがとうございました。

 それでは、髙木委員、お願いいたします。

【髙木委員】  横浜国立大学の髙木展郎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。大学での専門は、教育方法学とか、実際の小学校、中学校へ行って授業をどうするかとか。さらには、もう少し絞り込んでいきますと、国語科教育というのが専門で行っております。私は、それぞれの委員の方々のご経歴を拝見しまして、学校教育を、大学教育の中から、特に横浜国大は教員養成学部でございますので、そういったことも含めながら、この会に参加していきたいと今、思っております。先ほど紹介がございました経団連のアンケートで、コミュニケーション能力、一番上なのですが、とても悲しいことに就職のときは所属ゼミとか研究室は0.8%でほとんど関係ないなとか。少しうれしいのは、先ほど出た語学の上に、出身校が3.9%、学校教育はともしますと、高校入試であるとか、大学受験であるとか、何々大学に何名入ったとかということが、学校教育の学力として考えられている今日的な状況もあります。ぜひ、こういったことから、学力というものをコミュニケーションで定位した、そういったものになればいいという立場で、これからお話を申し上げます。

 先ほど、浅川先生から、学校教育の具体的な内容をお話いただきました。私は、少し状況論をお話ししたいと思っております。特に、学校が今、少し変わりつつあります。特に、学力ということが、なかなか世間的には認知されませんで、昨今もゆとり教育ということを言っておりますが、我々の世界、特に学校教育の関係では、ゆとり教育ということは一切、今まで、内部的には使われてきておりません。ゆとりと充実という言葉が出たのが、昭和52年版の学習指導要領、そこではゆとりと充実、個別化、個性化ということがそこから始まりました。なかなか、教育というのは、自分が受けてきた教育の原体験を超えるということが難しいものですから、皆さん、自分の体験で学校教育を、どうしても見がちである。私が小学校のときは、私が中学校のときは、という形で学校教育を見ますので、学校教育が変わっていくスパンが10年、20年の単位であります。この後も少しお話いたしますが、例えばパンフレットに出ています、この「生きる力」というのは、実は平成8年7月の答申でいわれてきている言葉でありまして、もう10年以上、こういったことがなかなか、学校教育の中に定位していかないという状況もあります。今回の学習指導要領を含めて、今、学校教育の中では、思考力、判断力、表現力という学力を育成しようという流れにあります。その中で、思考力、判断力、表現力ということを一言で言ってしまえば、考えるということだと私は思っておりますし、ものを考えるためには、常にその背景に言葉がある、ノンバーバルなコミュニケーションもありますが、しかしその表現活動の背景には、言葉が含まれていると考えております。そして、その言葉ということを考えると、今回の学習指導要領の中には、各教科等における言語活動の充実。この各教科等の、「等」が非常に意味が含まれておりまして、教科だけではなくて、領域、特別活動であるとか、そういったことも含めて、学校教育全体にわたって、言葉の教育ということが考えられてきたということです。

 今回の学力に関しましては、私のレジュメの1ページの2のところに、「学校教育法」の30条の2項という、今、これから日本の学校教育が果たしていかなければいけない学力が、学校教育法で3つほど示されてまいりました。今般変わりました学習指導要領でも、3番のところでございますが、総説の中で、特にこれからの学力ということで、OECD等は、キーコンピテンシーであるとか、リテラシーということを言っておりますが、学校教育の主となるのはリテラシーということで、そこに読解力、実はこれはリーディングリテラシーという訳でございますが、そういったことを通して、思考力、判断力、表現力を育成していく。さらに、単純に思考力、判断力、表現力だけではなくて、そのもとになる知識、技能ということも大事にしていこうということになっております。レジュメの2枚目にいきますと、一番上のところに、先ほどお話いたしました読解力、これはPISA型読解力でありまして、今まで学校教育の中で、明治、大正期から行われてきている読解力とは少し内容が異なるものであります。

 さらには、3番目として、自分への自信の欠如、自己肯定感、居場所、こういった問題が、学校の中のいじめとか不登校とも関係してきている問題であります。そしてそれが、「生きる力」といって継続的なんですが、このパンフレット、今もう一回見ると、なかなか含蓄がありまして、私が言うのもなんですが、2ページ目に「生きる力」をはぐくむという理念は、これまでもと書いてあって、ずっと継続的であるということ、平成8年から行っていることがなかなか学校教育の中に定位しないという現状も含めて、考えていかなければいけないと思っております。

 そういった中で、4番として、学習指導要領の基本的な考え方、特に学力の要素を3つ規定しております。1、2、3、特に学習意欲も学力であるという考え方になっております。知識を覚えるだけではない、受験学力ではない、こういった学習意欲ということが非常に大事だと、私も思っております。

 さらにその後、「生きる力」についての中教審答申の文言をそこに引いてまいりましたが、6番目のところへいきまして、今回の学習指導要領改訂、先ほど伯井課長も申し上げていらっしゃいましたけれども、平成20年1月17日の指導要領のもとになる答申におきましては、今回の改訂で充実すべき重要事項の第一に、各教科等における言語活動の充実が挙げられたということです。確かにこれまで、日本の教育、2番目にあります理数教育ということが多く挙げられてきておりますが、それにも増して、今回はこの言語活動ということで。

 では、その言語活動とは何かというと、同じ答申の中で、7のところに言語活動の充実について書いてあるものをお示しいたしました。少し長い文章ですが、その中を斜めに読んでいきますと、まず言語という、国語を初めとする言語は、コミュニケーション、さらには感性・情緒の基盤であるということを述べた上で、4ページ目、4枚目のところに、それぞれの教科の問題について述べております。特にここでは、国語科だけではなくて、国語科で培った能力を基本にして、さらには、この知的活動の基盤というところが大変大事だと思っております。知的活動の基盤として、そこに、黒いポツで示している内容が示されている。このあたりに、中ほどには体験から感じとったことを、言葉や歌、絵、身体などを使って表現する。この委員会での主な点になるということも書かれておりますし、さらには、その少し下にも身体表現ということが書かれております。こういったことは、実は今、教育界では、カリキュラムマネジメントということが大変大事になっておりまして、学校教育、例えば1年間だけではなくて、小学校6年間、中学校3年間、高等学校3年間という学校教育、大学も入れればもう少し長くなるわけですが、そういう中で、一番最後の下から3行目ぐらいのところに、こういう言葉が書いてございます。そのためには、学校が各教科等の指導計画にこれらの言語活動を位置づけ、各教科等の授業の構成や進め方自体を改善する必要がある。いわゆる覚える学力から、考える学力、コミュニケーションを中心とした学力にするには、一朝一夕にはそういった学力の養成ができません。長いスパンの中で、コミュニケーションをカリキュラムマネジメントの中に位置づけた学校教育が、今、求められていると私は思っております。

 以上でございます。

【平田座長】  ありがとうございました。大変端的にまとめていただきまして、この会は座長が、非常に適当な人間がやっているものですから、ぜひ今後も、髙木先生にぎゅっと締めていただいて、よろしく、教育界のほうからご指導いただければと思っております。

 それでは、高萩委員、よろしくお願いいたします。

【高萩委員】  東京芸術劇場の副館長をしております高萩と申します。私、東京芸術劇場に来る前までは、世田谷パブリックシアターという世田谷区にある公共劇場の制作課長、制作部長をやっておりました。世田谷パブリックシアターは1997年に開場したのですけれども、公共の劇場として、貸し館ではなく、創造型というか、劇場として、何かものをつくっていく劇場としてスタートをしました。創造型の劇場としてまず何ができるかということを考えたときに、演劇・ダンス系の劇場でしたので、演劇・ダンスを好きな子どもを増やしていきたいと思いました。学校時代に演劇鑑賞とかで無理やり見せられたりすることで、演劇やダンスを嫌いになってしまう人が多いという話を多く聞きました。劇場としては、演劇好きな人を育てようということが最初だったのです。学校にぜひ表現の時間とかそういう時間をつくってくれないかということを1997年のころお願いしたときは、「まずとても学校は忙しい。来てくれても、とても時間はありません」と言われました。その後何回も、同じ世田谷区立ですので、教育委員会の人とも話をしたり、先生方の国語研究会とかというところに行ったりもしました。教科書の中に戯曲とか載ったりはしているのですけれども、「外部から人を呼ぶなんて無理です。カリキュラムをこなすだけで大変なのです」と言われていました。それが、途中で総合の時間を使って、特色のある教育をしなければいけないということになってきて、そういう時間が少しできてきました。ほんとうに1997年、1998年のころは、文化祭というのも毎年やっていたのが体育祭と交互になるとかでした。その流れが変わってきて、2003年ぐらいからは学校のほうから、「少し時間がとれるので、もし劇場のほうから人を派遣してくれるなら、何かやってもいいですよ」ということが言われるようになって、何校かずつへ、行くようになってきました。その後、世田谷区は日本語特区というものを申請しまして、日本語特区ということで、小学校から中学校までの間に、2時間から4時間ぐらい別に時間をとって、表現とかコミュニケーションを勉強しようとなってきました。その中の表現の中で、学校で行くことになっていきました。

 どんなことをやっているのかわからないと思ったので、私の資料を少し見ていただきます。これは世田谷がセプトエデュケーションというのでまとめた本のコピーなのですけれども、体を使った表現というのはこんなことをやっていますというのを少しだけご説明します。最初に、2枚先にめくって、子どもの絵がかいてあるところを見ていただきます。学校へ行くときは大体1クラスが対象です。学校の全員なんかあり得ないです。30人前後のクラスに、ファシリテーターという指導役というか、進行役という人間が1人と、そのサブがついていって。最低でも3人、インターンがついていったりするので4、5人で行ったりします。だから、1人の先生が教えているより、はるかに多い人数が教室に入ってきて、教えるという格好になるのです。指導して何かをやらせるというよりは、こういうことをやってみませんかと言いながら、どんどんやっていく。

 最初の図でシェイプというのは、「何か形になりましょう」というものです。子どもにボールとバットになりなさいと言ったら、ぱっとボールとバットの形になる。「相手と2人組になって何かやりなさいね」と言ったら、相手がボールになったらバットになるという風に、どんどん形をつくっていきます。何か正解があるということではなくて、何らかの形になるということです。「はいっ」と言ったら真っすぐぱっとやる。人によって少し違っているということで別に構わない。何が正解かを絶対に言わないでやっていくという感じです。

 次のページを見ていただきます。全員で何かの形をやってもらいますといって、まず1人の発想でやっていく。そのうちに何人かでやってくださいということになります。隣の人と一緒に何かやらなければいけない。さらに、具体的な楽器になってください、みたいなことを言っていく。今度は、グループに分かれて、「グループで発表してください」というと、何人かの人たちが集まって、グループで発表する。それに、自分たちで音まで出してくださいというと、みんなで体を使って、声を使って、何かになっていく。これは別に、ほんとうに正解があるわけではないので、いろいろな形を子どもたちがやるということです。

 次のページを見ていただくと、スペースと書いてありますけれども、集団で発表する。大体、5、6人のグループに分かれてもらって、何かの形をみんなで考えて作っていく。子どもたちがその形を、いろいろ工夫してつくってみる。それを、発表してもらって、ほかのグループの人たちが当てていくということをやっていく。これは、やっていると、体を使ってやるということもあって、非常にお互いに、話し合いをしなければいけないとか、いろいろな形でコミュニケーションがよくなってくるのです。それからだんだんに、物語をつくっていくとか、それを構成していくとかということに発展していくということもあるのですけれども、基本的にはこのような形のことをやっていくということです。

 最初に、表紙に戻っていただきますと、ファシリテーターが学校へ行ったときの先生の感想が書いてあります。これの2枚目のところの、真ん中の下のあたりです、坂本先生という先生ですけれども。「以前、このワークショップで「何が育つのか?」と私にも疑問が多少あったのですが、メンバーの方から「コミュニケーション能力」というお話があったのです。同感でした。子どもが自分の考えていることを表現し、それを館の人が見て、館というのは世田谷パブリックシアターですが、その人が見て感想を述べるというやり取りがあったり、グループで1つのものをつくり上げていく途中で、自分の思いを友達に伝えたり、同時に友達の思いも受けとめながらつくっていく。そういう能力が育っていくと感じられます。まさに「コミュニケーション能力」と言っていいでしょう」体を使って表現するということは、小学校、中学校の教育の中では、課程としてはとり上げられていなかったのだと思うのです。幼稚園まではお遊戯の時間とか、みんなで体を動かすということがあったと思うのですけれど、小学校になると、教科の中に入ってこない。教科の中だと、国語なのか、音楽なのか、体育なのかわからないみたいなことで、多分、そういうことを教えるというところから落ちてしまったのだろうと思うのです。先生方のほうも、いつもお1人で30人、40人教えるというのは相当難しいだろうと思います。私たちのほうは、公立の劇場でしたので、劇場のほうからそういう人を派遣するという形で始まりました。週に1回とか、その週に1回を3回続けるぐらいのことで、毎日いる必要はないのかもしれない。それか、学年のどこかでやることによって、ほかの能力も高まるとか、いろいろな形で使い道があると思っています。今現在では、世田谷の多分3分の1ぐらいの学校には必ず行って、やっています。ただ、先ほども少し中村先生のほうからお話があったように、やれる人の数が非常に不足しておりまして、演劇とかダンスとかというと、自分でやるということはできるのですけれど、それを教えるというか、一緒にやっていく、こういうことを指導していくというか、こういうやり方で子どもたちと何かをやっていくのだということについての、やれる人が非常に不足しているということが現状です。先ほど言いましたように、学校教育と絡むとなると、やはり学校側のほうが受け入れ態勢をとってくださらないと広がりません。学校はほんとうにお忙しいというか、カリキュラムがあって、学校の行事の中には縛られていますし、何らかの形で、学校教育の中に、こういう時間のとり方みたいなことを決めていくと、もっと盛んになるのではないかと思っております。よろしくお願いします。

【平田座長】  ありがとうございました。講師の育成の問題、非常に、この会議でも中心の話題の1つになるのではないかと思っています。ちなみに私、このシェイプというのでよくやるのは、国語の授業と連動して、小学校1、2年生に漢字をつくらせるんです、3、4人のチームで。ものすごく学習効果が高まります。ほとんどの漢字、一遍に覚えます。大体、国語の授業なのに体育館に行くというと、それだけで子どもは喜びます。これは非常に、モチベーションも上がります。

 それでは、田中委員、よろしくお願いいたします。

【田中委員】  失礼します。四国の愛媛県からまいりました、西条市教育委員会教育長の田中明でございます。西条市、秋川雅史を生んだ町ということでございますけれども、皆さん方のご指導をいただきながら、西条市の子どもたちの教育を、より充実したものにしたいという思いの中で、会に参加させていただいております。よろしくお願いをいたします。

 ここで、皆さんのお許しをいただきまして、まずは若干ですが、西条市のPRをさせていただけたらと思います。西条市、平成16年11月に2市2町が合併しまして、市の面積、509平方キロメートル、人口が約11万5,000人の町となりました。生産量が日本一の愛宕柿であるとか、裸麦、春の七草、こういったもののほか、多くの品目で収穫量が県下一を占める複合農業地帯となっております。また、あわせまして、四国有数の約8,500億円の工業製品出荷額を誇る大工業地帯をあわせ持つ、一大産業都市でございます。さらに、背後には、西日本最高峰の標高1,982メートルですけれども、石鎚山と、それに連なる緑深い山々がそびえておりまして、そこを源とする河川が平野部を涵養しており、うちぬきと呼ばれる自噴水が市民の生活用水となっております。この「うちぬきの水」が名水百選にも選ばれておりまして、きき水大会でも全国1位となりました。さらに、そこから瀬戸内海へと開け、全国的にも貴重なカブトガニの生息地となっている海岸もございます。語れば長くなりますので、詳しくは、お荷物になるとは思いましたけれども、お手元に資料を取りそろえておりますので、ぜひごらんいただきたいと思います。

 現在、西条市には、小中学校が36校、児童・生徒の数が9,612人でございます。西条市教育委員会では、子どもたちの生きる力を育てることから、まず、防災教育を切り口に、12歳教育推進事業を平成18年から継続して実施しております。その中で市内全小学6年生参加のもと年1回、防災サミットを実施しておりますし、子どもたちの体力向上を図るため、元気アップ!西条っ子体力づくり推進事業や、子どもたちの学ぶ意欲や自立心、思いやりの心、規範意識などをはぐくむため、ふるさと生活体験推進事業を実施するほか、西条市の子どもたちは、他の都市圏と比べ、非常に芸術・文化に触れる機会が少ないことから、国の昨年度までの「学校への舞台芸術家等派遣事業」を積極的に活用させていただいておりまして、昨年度は巡回事業が6校、派遣事業では14校が実施をいたしております。また、そのほかにも食育、あるいは人権・同和教育等々についても力を入れておりますほか、盛りだくさんの事業を実施しているところでございます。なお、ハード的には、約1,200の客席を設ける文化会館の施設がございますし、また西日本最大級の屋内運動場、名称をビバ・スポルティア西条と申しますけれども、これを建設して、それらの体育施設での次世代スポーツ支援事業の実施や、昨年の6月には、人づくり、まちづくりという切り口で、新図書館をオープンさせました。今のところ、1年間で約50万人の入館者を数えておりますけれども、これらも、資料の中に入れさせていただいておりますので、ごらんいただきたいと思います。

 そして、今年度でありますが、西条市の子どもは、素直でおとなしいと評価されている反面、地域性からか、積極性やたくましさに欠け、自己表現能力や社会性に乏しいことへの対応策としまして、昨年度の事業のほかに、今回の児童生徒のコミュニケーション能力の育成に資する芸術表現体験事業を取り組もうという教育委員会からの声かけでもって、各学校が趣旨賛同の上、7校が申請をして、受理されたところであります。既に、現在まで、3校で5回開催されておりまして、子どもたちから、また教師からも非常に好評を得ておるところでございます。市では、教育委員会及び開催校、芸術団体、この3者の連携を密にしまして、運営を行っておりまして、まずは、昨今の学校事情をかんがみ、主には、学校の負担を減らすという取り組みとしております。実施内容を、地域の事情に近い内容にし、継続性を視野に入れ、実施運営にかかわることについての協議を、開催校と芸術団体とともに行っております。また、市民への周知、広報にも力を入れておりまして、開催の様子を映像記録に残し、市のホームページ等で情報発信も行っていきます。西条市におきましては、児童生徒に対してのコミュニケーション能力育成は、非常に重要であり、急務であると考えます。さらには、保護者の方、あるいは地域の方、さらには教師へのコミュニケーション能力の育成も必須条件であるのではないかと感じておりまして、このような方々に対するアクションも不可欠であるという認識をいたしております。しかしながら、西条市では、都市圏と比べ、その実施に当たっては、芸術家の移動時間であるとか、交通の面等々の問題点、あるいは予算的にも地方財政が逼迫する中で、非常に厳しい状況にございます。こうした観点から、ぜひとも地方都市にありましても、このような事業を享受できるよう、国の支援の継続、さらには拡充をお願いいたしまして、少し長くなりましたけれども、終わります。ありがとうございます。

【平田座長】  ありがとうございました。西条市に関しましては、この実施状況をまとめて、速報のものをつくっていただきまして、これは大変よくまとまっていると思います。見ていただくとおわかりのように、非常にきちんと事前のミーティングを、アーティストと学校側がして、進めていって、1つ、これは今後の指標になるのではないかと思いますので、ぜひ後でごらんいただければと思います。

 それでは、最後になりました、米屋委員、よろしくお願いします。

【米屋委員】  私は、正式名称、日本芸能実演家団体協議会、通称、芸団協といっておりますが、そこに勤めておりまして、ここは、演劇、音楽、舞踊、演芸、伝統芸能など、いわゆるパフォーミングアーツの実演家やスタッフの専門組織、協会組織、71団体で構成されている団体です。そこで、私は研修事業や調査、研究、政策提言などをしておりますのですが、芸団協で仕事を始める前に、私自身、イギリスやアメリカに留学していたことがございまして、そこで芸術政策、アーツマネジメントなどを学んでいたことがありますのですが、イギリスは、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、ドラマという科目がありまして、ドラマティーチャーという方々がいらっしゃいます。また、私がいたころは、ちょうど教育部門、芸術団体の中にエデュケーションオフィサーでありますとか、教育部門というものを置いて、芸術教育を広げていくということを、かなり熱心に広げようとしていた時期でしたので、そういった中で、芸術と教育というのが、文化政策の中で非常に重要なテーマであるということを学んでいたわけなのですが。それで、芸団協で仕事を始めましたときに、そこでも実演家の方々が、芸能と教育というのが非常に大事であるということをずっと議論していて、芸能と教育をテーマにしたセミナーを幾つかやっておりました。そんな中で、イギリスでやっているようなドラマ教育というのを日本でもできないかということを考えまして、2000年に、ちょうど指導要領が変わるという前々年なんですけれども、実演家よ、学校へ行こう、ということを合言葉にしまして、実際に、学校でそういったワークショップをやれる人材を育成していこうという事業に着手しました。最初のころはほんとうに手探りでやっていたのですが、だんだんやるにつれて、実演家というのは、少しトレーニングをすれば、そういった活動をわりとできるようになるものだなということがありまして、実際、私どもの研修を受けて、現在、高校で教えるようになったとか、各地でワークショップをやっているという方がいらっしゃるわけなのですが、いかんせん、学校の中で先ほどもご指摘くださった方がいらっしゃいましたけれども、先生方の受け入れ態勢が整っていないとか、それから来てくださっても謝礼が用意できないとかということがあって。こちらも無償でずっと実演家を送り込むというのも、とても大変なものですから、ほんとうに研修の一環として行けるという中で、細々と続けてきたということがございます。

 そういったことを始めて、かれこれ10年ぐらいになるのですが、実際にやってみて、幾つか課題があるかと思うのですが、大きく分けて4点あるかと思います。1つ目は、実演家、芸術家の資質、適性の問題です。これは、適応力が高いといっても、だれでもすぐにそういったことができるわけではありませんで、向いている人と向いていない人というのが確実にあるかと思います。それから、コーディネーターの課題です。アーティストがやりたいこと、アーティストが得意なことというのと、学校が欲していること、学校でやってほしいと思うこと、それから先生方の、学校の中の文化と、アーティストが日ごろ行っている行動という間には、大きな隔たりがあります。そこをすり合わせるという作業がどうしても必要ですので、そういったときに、間に人が入って、両方の立場を勘案しながら調整をしていくという人がいるほうが、とてもスムーズにいきますし、成果も上げやすい。また、先生も忙しいのですけれども、実演家のほうもとても忙しくて、スケジュールを合わせるのだけでも結構大変なものですから、やはり調整役というのは必要かというのがあります。3つ目が、教員の課題です。先生といっても、ほんとうにいろいろな方がいらっしゃいますので、演劇的な手法を用いた、そういったコミュニケーション教育というのを熟知していらっしゃるとても熱心な先生から、全く関心のない方までいらっしゃいます。実際、学校に行きますと、同じ学年で熱心な方と全く関心のない方が担任で隣り合わせになっていたりということがありまして、そういう中で、子どもたちに向かっていくといったときに、やはり先生方とどうコミュニケーションしていくかというのが、こういった事業の中ですごく大事になってきますので、先生方の中で、芸術家に対する固定観念ですとか、あるいは芸術家とどう接していったらいいかというところに、学校の中に経験値というものがまだないものですから、そういったものを培っていかなければならないのかなということは、課題として考えております。最後、4点目は、これは2つに分けるべきかもしれませんが、今年からコミュニケーション能力に資する活動というもののサポート体制をとってくださったわけなのですが、それで、今まで手弁当でやっていたものが、支えられるというのは朗報なのですけれども、そういったものを申請していく手間ですとか、そこが、学校が主体になっているということで、そういった手続の簡素化であるとか、あるいはそこを、どこが担うべきなのかということと、もう一つはやはり評価の問題かと思います。要項を決めて、実施できて、子どもたちが楽しんでいた、よかったというところで終わってはいけないわけで、やはり次に続けていくためにも、そういったことの評価というのが必要なのかと思いますので、手続と評価を合わせた仕組みの課題という4点、あるのかと思っております。細かいことは今後、いろいろご議論していただければと思いますが、初回としましてはその点を指摘させていただきました。

【平田座長】  ありがとうございました。いずれも大事な点だと思います。特に、仕組み、制度づくりについては、急いでつくっていただいた制度ですので、今年この委員会、特にワーキンググループで、ゼロベースでがしがしやっていただいて、やはり学校と、それから派遣するNPOや公共劇場、劇団などが、両方が使いやすい制度を一からつくっていくつもりで、皆さんにお願いしたいと思っております。

 それでは、吉本委員に、イギリスの制度についてご紹介いただきながら、少しご意見もいただければと思います。

【吉本委員】  吉本でございます。ニッセイ基礎研究所というところに勤めておりまして、私は、専門は文化政策なのですけれども、最近、芸術や文化というのは、必ずしも文化のためだけではなくて、さまざまな社会的な課題、ソーシャル・アジェンダというものに非常に有効であるということが各地での取り組みで明らかになっております。事務局から今回のコミュニケーション教育の推進に関して参考になる海外の情報を提供してほしいというご要望をいただきまして、今、平田座長からイギリスのということがあったのですが、それ以外の国についても、手元にある資料をまとめて今日、提供させていただきました。その中で、イギリスの事例を、後で映像でごらんいただきたいのですけれども、その政策的な背景を先にご説明しておいたほうがいいかと思います。資料の目次の次のページをめくっていただきますと、イギリスの政策の流れが書いてあります。

 皆さんご存じのように、サッチャー政権が1979年から長く続いて、イギリスはさまざまな改革が行われました。いわゆる、ニューパブリックマネジメントということで、これは実は、非常に、小泉政権の時代に近かったと思うのですけれども、その後登場したブレア政権が、文化政策等、かなり大幅に拡充されて、そうした中で今日ご紹介するクリエイティブ・パートナーシップというプロジェクトもスタートしております。1997年以降、実はその1997年というのは、民主政権が誕生した今の日本の状況に非常に近いと思うのですけれども、さまざまな政策文書が発表されておりまして、ここに主だったものを書いてございますが、この中で非常に重要なのが、2000年に出ました「All Our Futures:Creativity,Culture and Education」というものです。これは、イギリスの未来にとって重要なのは、創造性と文化と教育だという政策レポートでございまして、詳細のものは多分、百二、三十ページあると思いますが、その要約がこういう形のもので出ておりまして、非常に広く配布されました。これがなぜ重要かといいますと、お手元の資料にありますように教育技能省、つまり教育省と、それから文化省、つまり教育と文化の両方の立場から、こういったクリエイティブな教育が重要だということを、さまざまな角度から議論して、政策レポートとしてまとめたわけです。その中に、さまざまなキーワードがあるのですけれども、創造力は、経済発展に取り組むために基本的な力だと考えられるということで、この中で、イギリスの経済や産業振興のために、創造的な教育が重要だという考え方が示されました。その後、2001年に、「文化と創造性、これからの10年」という政策レポートが出まして、その中で、トップページにブレア首相のサイン入りの前文があります。この政府は文化やクリエイティビティが重要であることを知っているという文章から始まって、最後、この自由な精神において、芸術は政府のシナリオの核心部に位置しているという、ブレア首相の自署入りの政策文書が出ました。ですので、この推進会議のとりまとめが最終的にどうなるかわからないのですけれども、ぜひ鳩山首相にも、こういう強いメッセージを出していただけたらと思います。その政策レポートの中で、3つの大きな事業が掲げられたのですけれども、その1つが、今からビデオでごらんいただく、クリエイティブ・パートナーシップというプロジェクトでございます。これは、アーティストだけではなくて、さまざまなクリエイティブな活動をする実践家を、学校に派遣をしまして、かなり長期にわたってワークショップ型の授業をするというものです。子どもたちの創造性を育成しようということが第一の目的なのですが、その究極の目的は、学校の教育そのものを創造的なものにしていこう、教育そのものを改革していこうというになっております。

 ビデオ、全部ごらんいただくと長いので、後半、10分程度抜粋したものを今からごらんいただきたいのですが、これは音は出るようになっていますでしょうか。すぐ流してよろしいですか。それでは、ごらんください。

(DVD上映)

【吉本委員】  少し長かったのですけれど、いろいろな効果が非常によくまとまっていると思いますので、ごらんいただきました。それで、この事業をやった成果というのが、大規模なリサーチ結果として発表されていまして、お手元の、私の配付資料の2ページの中段をごらんいただきたいのですけれども。2002年から2008年までに1.5億ポンドをつぎ込んで、かなりの学校でこの事業を行いました。その成果として、1万3,000人の生徒に追跡調査をしているのですけれども、このクリエイティブ・パートナーシップの授業を受けた子どもたちのほうが、英語や数学、理科の点数が高かったという結果が出ていたり、あるいは、この事業を受けた校長への調査、その下にありますけれども、自信の向上、コミュニケーション能力の向上、学習意欲の向上、私、一番重要なのは多分、学習意欲の向上ではないかと思うのですけれども、そこに非常にポジティブな成果があったということが報告されております。こうした成果を踏まえて、2009年からイギリスでは、さらに新しいステップに進みまして、全小中学校で、週5時間の芸術授業を始めるというプロジェクトが始まっております。それのタイトルが、この辺が非常にうまいと思うのですけれども、Find Your Talent、才能発見という授業になっております。

 その授業は、3ページの上のほうにありますけれども、学内だけではなくて、学外にも出かけるような形で、これは先生がかなり選択肢を持っていらっしゃるということですけれども、週5時間、さまざまな芸術的なアクティビティを行うということで、今、10地域でパイロットプロジェクトとして始まっているそうです。ただ、保守党になったので、このあたりがどうなるか、不透明な部分もあるのですけれども、その下に長い文章が書いておりますが、これはFind Your Talentの政策文書の冒頭にある文章です。そこには、これからの産業・経済を牽引するのは創造的な産業で、創造的な産業の原材料はアイデアであって、木や鉱山の中から生まれるものではない。なので、そのアイデアをはぐくむことがイギリスの経済や産業を支えるのだと、いうようなことが書かれております。つまり、芸術的な教育を行うということが、将来のイギリスの国家そのものを支えるという、非常に大きなビジョンに基づいてこういった事業は行われているということです。今のビデオの最後のほうに、女の子が何か、リスクをとりたいという発言をしていましたけれど、今、日本でリスクをとれるリーダーがいないと、非常に大きな課題になっているということも聞きますので、まさしくこの英国の戦略は日本の参考になるかと思います。このコミュニケーション教育をぜひ推進をしていただいて、それが日本全体に、さまざまな意味で活力を与えるような、そういう政策になってほしいと思って、報告させていただきました。

 今の詳しい取材の資料がお手元の8ページ以降にありますので、よろしければ後でごらんください。

 以上です。ありがとうございました。

【平田座長】  ありがとうございました。これ、僕はこのDVDを前にも見せていただいて、ぜひ最初の会に皆さんに見ていただきたいと思って、お願いをいたしました。できれば、川端大臣にも見ていただいたほうがいいのではないかと思っておりますので。

 それから、吉本委員が、諸外国のことを総務省管轄の財団法人地域創造のほうの、私も一緒に委員をやっていたのですが、そこで調べてくださった資料がいろいろありますので、今後もご報告をいただくのですが。地域創造、先般、事業仕分けの対象にもなりまして、どうにかして、社会的な意義のある財団だというのを示さなければいけないので、理事長からは、すべての資料をこちらで使っていいという許可を得ておりますので、ぜひ有効活用したいと思っております。

 それでは、最後、時間も押しているのですが、私、駆け足でやりたいと思います。すみません、今、電源が途中で切れてしまったものですから、先に話をさせていただきます。韓国に全く同じ、芸術教育振興院という、韓国はやはり、文化省と教育省の共同で独立行政法人をつくって、全く同じようなスキームの作業をしております。おそらく、イギリスを研究してつくったのではないかと思われます。そのことについて、後で発表させていただきますが、先に少し、理念のことをお話させていただきますと、もう皆さんのご発表にもあったわけですが、先週まで、国土交通省の成長戦略会議の委員をしていまして、私は観光部会の座長もしていたのですけれども。そこで出てきた、主な成長戦略というのは、やはり基本的には改革、開放であるということでした。要するに、おそらく数年後とか、うまく改革が進めば、日本の上場企業の3分の1ぐらいが外資になるかもしれません。少なくとも、社長は外国人になるかもしれない。しかし、そのかわり、競争力のある日本企業は、ノキアやサムスンのように海外に出て、活躍することもできる。そのこと自体は、おそらく小泉さんの経済改革と変わらないと思うのですが、民主党政権、どこが違うかというと、2点あると思うのです。1つは、社会的な包摂、セーフティーネットをきちんとつくる。それから、地域を見捨てないということ。もう一つが、やはり教育だと思うのです。私はよく、最近は、開国に耐える日本人をつくるということだと言っています。あるいは、経済改革だけだと、それは企業が国際競争力を持つということですけれど、ほんとうに大事なことは、日本人一人一人が国際競争力を持つということなのだと思うのです。もう一つは、日本にたくさんの外国の優秀な方に入ってきていただかなければならないので、そのときに、やはりフェアな社会をつくる。それから、異文化をきちんと理解できる社会をつくるということが大事なのだと思うのです。例えば人権感覚、グローバルな基準からいくと、日本の人権感覚は非常に、別に日本人が差別的だというわけではなくて、なれていないことによって、非常にこの人権感覚なんか弱いと思います、外国人に対して。そういった国際社会に耐える日本人をつくるということは、1つ重要なのではないかと。

 すみません、出ましたので、先に説明します。すみません、翻訳が間に合わなかったので、ハングルなのですが、これは先ほど言った教育院の名前です。それで、韓国では今、予算が600億ウォンですから、大体60億円です。それから、講師が4,156名、5,436校、それから130万時間の実施をしております。これの内訳ですが、ここが今言った、予算はさらに増えていて、今625億ウォンです。これが学校数で5,436校、時間数とか講師数になっているのですが、見ていただきたいのは、予算が去年からいきなり増えているのです。この2009年、2010年のところでいきなり増えています。これは、韓国の場合には、文化省主導で始まって、それが非常に効果があったので、昨年度から教育省が俄然、注目をし始めて、予算が2009年で3倍増になったということです。実施している数ですけれども、これが小学校、中学校などです。

 これが、講師の派遣数です。4,156名、ここが社会教育も同じ独法でやっているので、社会教育関係。それから、あとは芸術施設等です。講師の数が、一番上が5,256名というのが、普通の学校、小中学校に行く講師たち、それから真ん中の100名が芸術施設で、要するに芸術施設で主にワークショップをする、芸術施設に所属する、それから一番下が今、韓国が非常に積極的に取り組んでいる多文化教育ということで、これは帰国子女の方とか、外国人もいるそうなのですが、例えばアメリカからの帰国子女で演劇をやっているような人に、英語教育とアメリカ文化を教えるような教育を、ワークショップ型でやるという専門の教員を育成して、これが54人いるそうです。

 これが、アンケート調査です。満足度、いろいろな満足度がある、これは対象ごとに分かれています。先生とか、実施者、それから父兄など、ほとんどが90%に近い満足度を、いずれも示しています。これもイギリスと同じような数字だと思います。

 これが、実施している学校数なのですけれど、今、全国の小中学校の63%で実施されています。もう半数を超えているということです。それから中学校は29.1%、大体3分の1で行われています。高校は21.6%、これに関しては、やはり大学入試があるので、高校ではなかなか受け入れてもらえないということでした。これは日本も同じような事情があるかと思います。この委員会は、もちろん初中等局がやっているわけですけれど、やはり本丸は、企業もコミュニケーション能力が必要だと言っている、初等中等教育でもコミュニケーション教育だと言っているので、そうすると、大学が今、関所みたいになってしまっているのです、あるいは大学入試が。ここをやはり、将来的には改革の必要があるのではないかと思います。それから、下から2番目が、これは、デアンハッキョというのは、大安学校と、多分書くのだと思うのですが、フリースクールとかではないかと思います。これが40%以上、ここにもこの教育院から派遣をしています。最後が、特殊学級ですね。この特殊学級については、もう6割が既にこういった芸術教育を行っているということです。それで、講師、どういう人を派遣するかということなのですけれど、2010年までは、140時間の研修を受けた芸術家を派遣しておりました。ただし、これは140時間受けたら、一応、全部免許証みたいなものは、よほど問題がない限り出して、そしてまず行かせるそうです。行かせて、現場で何か不満が出た人は、ブラックリストに載って、もう二度と行けないようになると、非常に韓国らしい、大ざっぱなやり方をしていていい、日本ではこれは無理だなと思いましたが。ただ、クリエイティブ・パートナーシップにも出てきたと思うんです。最初のうち、ぱっと出てきたから、皆さん聞き漏らしたかもしれませんが、事後評価と言っているんです。これが日本でできるかなと思うのです。やはり日本は、制度設計を非常に重んじる国なので、ほんとうはやはり、これは芸術教育なので、1回やってみて、だめな人が淘汰されていくようなやり方、もちろんセーフティーネットはつくらなければいけないし、子どものトラウマになるようなことは困るのですけれども。とりあえずやってみて、だめな人はもう二度と行かせないぐらいの、あるいは研修期間をつくるとか、日本型の制度をつくっていけばいいと思うのですが、今までのようなガチガチの制度設計では、このプロジェクトは進まないのではないかという印象です。それで、韓国の場合には、これを140時間、今まで研修時間が140時間だったのが、180時間に延ばして、さらに120時間の試験過程をつくって、それで合計300時間の講師養成に当てる。140時間というのは、例えば私事になりますが、大阪大学と青山学院大学で今、ワークショップデザイナー養成講座というのをやっていて、これが120時間ですから、大体、こんなものかなと。こういうものができれば、非常に、人材育成としてはいいかなと。ただ、この制度設計、それから予算組みをどうするかということも、この委員会でご討議いただきたい内容です。こんなところです。

 DVDとかをすごくたくさんいただいたのですけれど、今日は時間がないので、割愛いたします。もう、予定の時間を大変押してしまっているのですが、委員の先生方から何かご意見とかご質問など、お互いの発表についてあれば、どうぞご発言ください。

 髙木先生、何かコメント。

【髙木委員】  そうですね。吉本委員の、非常に興味深く、最初のほうでオフステッドが出ましたけれど、あの辺が、日本の学校でも評価を、学習評価というのを非常に今、大事にしてきているのですが、その辺が今、このCPとの関係でどうなっているか、興味は持っていたのですが。

【吉本委員】  評価は、2006年だったと思いますけれども、何年かの成果を踏まえて、たしか4種類の評価の調査が行われておりまして、今日ご紹介したのは、子どもたちの追跡紹介、それがオフステッドだと思います。それから、校長先生向けの調査など、4種類の評価調査が行われています。実は、その調査自体が非常にユニークで、今日の私の資料の、12ページ、もとの雑誌のページだと68ページになると思うのですが、右上のほうに小さいイラスト入りの写真があると思うのですけれど、子ども向けのアンケート調査というのが、イラスト入りで書くのが非常に楽しいような形になっているのですね、まず。それで、きちんと調査をとっているということと、あと、アンケートのフレームなんかを見ますと、要するに、やる前にその事業をどういう期待感を持って受けとめていたか。それで、やった結果、どうだったかということを聞いていまして。同じようなことを教師、それから校長に聞いています。やはり評価というのは、現場に行けばいろいろなことがわかるのですけれども、それを数字として、きちんと統計的にとっていくためには、そういう設計はあらかじめ織り込んだ形でやっていかなければいけないのではないかと思います。先ほど、平田座長からご紹介いただいた、財団法人地域創造の調査でも、これは、コミュニケーション教育ということではなくて、いわゆるアウトリーチというので、アーティストが学校に出かけてワークショップなどを行う事業をさまざまやっておりまして、その事業に参加した子どもたち向けのアンケート調査、それから教師向けのアンケート調査というのをしました。私の資料の最後のほうで、A3で折り込みで入っているものがあるのですけれども、ここに概要がありまして、やはり受けた子どもたち、あるいは担当の教師の先生方からは、非常にポジティブな評価をいただいておりまして、この地域創造の事業は1回限りの事業だけなのですけれども、もっと継続すると、さまざまな効果があるということも出ております。ですので、このコミュニケーション教育の中で、まさしく髙木委員のおっしゃったような評価をどうやっていくかということも、非常に重要なポイントだと思いました。

【平田座長】  ちなみに、韓国の場合は、子どもは全員喜ぶので、最初、とっていたのだけれど、あまり意味がないので、もう大人だけにしたということでした。非常に韓国らしいなと思いました。

 ほかのご意見。

【鈴木副大臣】  これ、韓国のケースとイギリスのケースと、両方教えてほしいのですけれど、それぞれ、平田さんと吉本さんに。今回も私たち、募集してみて、すぐ手が挙がって、もう1回目で完売というか、なので、やはり現場ではそういう声というのが高いということを、改めて痛感したのですけれども。ただ、おそらくこれは、日本の場合は、60%とか、あるいはイギリスでも3分の1とか、そこまで手が挙がるかどうかというと、クエスチョンなのです。お伺いしたいことは、これは、要するにやりたいところはどんどん手が挙がってくると思いますけれど、まさに、冒頭、座長がおっしゃったように、多くの学校に、このすばらしさというものを理解した上で広げて、積極的に、何か押しつけではなくて、そういうふうにもっていきたいと思っているのですけれど、そこをどうしているのでしょうか。これは要するに、知らない人は何か、よくわからないから、何だそれという、多分、今、状況で。知っている人は、あるいは少しでも触れた人は、ぜひということだと思うのですけれど、そこの工夫。

【吉本委員】  まさしく、今、鈴木副大臣のおっしゃったことは、イギリスもやっていまして。今日ごらんいただいたDVDというのは、成果を評価するためにさまざまな記録をとっているのですけれども、それをダイジェストして、これは多分、アーツカウンシルからイギリス政府にこれが重要だということを訴えるためのDVDだと思うのですけれども。そうした資料を、ほんとうに山のようにつくっているのです。行ったら何かもう、こんなに山のようにもらって、持って帰るのは嫌だというぐらい資料を提供してくださるんですね。韓国もそうだと思うのですけれど。それを何に使うかといいますと、今、鈴木副大臣がおっしゃったように、経験のない学校に対して、これがいかに重要か、あるいはいかに意味があるかということを説明する活動もさまざまやっております。イギリスの場合は、全国に幾つかの、いわゆる地域事務所のようなものをつくりまして、クリエイティブ・パートナーシップを推進するための。そこが、ある予算をもって、専門の職員を抱えて、そこはコーディネーター役で、学校とアーティストをつなぐようなことをやっているのですが、そういうことをやりつつ、並行して評価をするためのリサーチを行い、それと並行して、やっていない学校に広めるというのですか、それを全部、3つですね、現場仕事と、評価の仕事と、普及のようなこと。それをやっていますので、そういう活動も合わせて、取り組んでいくということが必要ではないかと思います。

【平田座長】  韓国も全く同じですが、もう一つ、韓国は、ご承知のようにクリエイティビティ熱というか、何かもう、創造力が国力だというブームのようなものがあって。ちょうど今、今週末ですか、ユネスコ主催の世界芸術教育会議も韓国が誘致しましたし、非常にそういうことが国を挙げてのブームになっているので、もうこのまま、おそらく来年度か再来年度には、小学校に関しては、もうほぼ100%になるのではないかと、非常に自信満々で。委員長は、多分私と同い年か1つ上ぐらいの、演出家出身の、前からの知り合いなのですけれど。40人ぐらいの前からのスタッフが独法を全部、天下りのあまりない国ですから、やっていて。非常に活力があるものでした。それで、ものすごくビデオとか、やはりもう、あらゆるグッズを、手帳とかペンとか、もうこんなことを日本でやったらすぐ仕分けされてしまうというものをたくさん用意して、宣伝普及にも回っているという状況でした。よろしいでしょうか。

【鈴木副大臣】  はい、ありがとうございます。ぜひ、ここの会議では、こういうものと少し縁遠い学校現場の人たちにやってみようという仕掛けとか、やり方とか方法というのもご議論いただければと思います。

【平田座長】  わかりました。もう時間になりましたので、まとめに入りたいと思いますが。まず、副大臣、もうお話いただいたのですけれど、政務官、副大臣、ご感想をいただいて、それから事務的なことをお話をさせていただきます。それでは、高井政務官から。

【高井政務官】  ありがとうございました。大変おもしろかったです。私も学生のときに、芝居にとりつかれて、卒業論文はシェイクスピアにしたのですけれども。やはり、そのよさをわかった人からどんどん広めていく作業とともに、やはり、芸術家の側の方々も、今まではやはり、政治に対してアプローチがほとんど、政治をばかにしているとまでは言わないですけれど、接点がうまくなかった。学校や、芸術家や、地域や、まさにいろいろなものを接続するということが足りなかったのではないかと思いますが。鳩山政権になって新しい公共という名のもとに、やはりいろいろな力を集めて、それこそ、少しずつでも興味がある人からぐいぐい引き込んでいって、一拠点広がればどんどん広がっていくような、四国の西条ですら、たくさんいい試みをやってくださっていて、私も徳島なので、これは頑張らなければと、かなり触発をされました。

 ほんとうに、今日はありがとうございました。

【平田座長】  では、副大臣お願いします。

【鈴木副大臣】  ありがとうございました。CPのプレゼンテーションにほとんどのことが含まれたと思いますけれども。やはり、コミュニケーション教育をやる、あるいは、そこに演劇とかダンスだとか、メディアアートなんかも入ったと思いますけれども。これはやはり、先ほど髙木先生からおっしゃった、学ぶ意欲をかき立てるというところにものすごく直結をしているという、もちろん、ほかにも既に議論されていることはあるのですけれども。やはり今の日本の教育の最大の問題点は、私はそこだと思いますので。先ほど、まさにビデオの中で、学校に戻したというか、復帰させたと、学びにもう一度、リスタートをする大きなきっかけとしての意義というものを、改めて感じさせていただきましたし、そういう、これからコミュニケーション教育をやっていく意義というのを、世の中に、そういうことも含めて、もっと発信していきたいと思いました。よろしくお願いいたします。

【平田座長】  ありがとうございました。私の経験から言いましても、このワークショップ型の教育は、特に今、副大臣からもご指摘があったように、どちらかというと低学力というか、よく最近言われる、底が抜けてしまっている、そちらの、授業になかなかついていけない子どもたちにとって、まさにその居場所や出番を非常につくりやすい事業なのです。そういったところの力というのを、まずアピールしていくということが非常に重要なのではないかと思っております。

 本日いただいたご意見を踏まえまして、資料3でお配りした検討事項案を、さらに追加修正しまして、次回お示しをいたします。これは私と事務方のほうで進めさせていただきます。

 また、次回の会議では、本日ご欠席の委員のご意見、それから吉本委員から、ほかの諸外国の取り組みなどについてのご報告もいただき、また今日、大体もう問題点、議論しなければいけないことが出てきたと思いますので、さらに突っ込んだ議論を進めていきたいと思います。

 それから、冒頭にもありましたように、検討事項が多岐にわたりますので、今後、専門的な事項につきましては、本会議にワーキンググループを設置して、審議を深めてまいりたいと思います。ワーキンググループの委員の人選につきましては、これは人事のことですので、さすがに公開でというわけにはいきませんので、皆様方から推薦をいただきまして、次回までに私のほうでメンバーをまとめて、ご提案をさせていただければと思います。この1週間ぐらいの間に、各委員からご推薦をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 そのほか、副大臣からもご指摘がありました、広報活動というのは非常に大事だと思いますので、まずその一環として、会議のメンバーで学校に視察に行って、課題や効果を共有したい。できれば、私、実際に授業をさせていただいて、見ていただきたいと思っておりますので、ほかの実施している学校にも行っていただいて、見ていただく。それから、今日出てきたところで言うと、イギリスや韓国ほどの立派なものはつくらなくても、広報用のDVDなんかもつくっていいかもしれません。そういったことも検討させていただければと思います。

 それでは最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。

【倉見学校教育官】  次回の会議の予定でございますが、6月中を目途に、座長とご相談の上、また皆様方にご連絡をさせていただきたいと思っております。また、冒頭にお決めいただきましたように、議事要旨を作成いたしまして、各委員の先生方にご確認いただいた上で公開させていただきますので、ご承知おきください。

 なお、お帰りなのでございますが、この時間、既に2階の玄関が閉まっておりますので、ご面倒でも1階まで下りていただいて、1階からお帰りいただければと思っております。すみません、よろしくお願いいたします。

【平田座長】  ワーキンググループを早くスタートさせて、エンジンを回転させていかなくてはいけませんので、近いですが6月に、ぜひ第2回目を開きたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは本日は、これで閉会させていただきます。皆さんお忙しいところ、遅くまでまことにありがとうございました。お疲れさまでした。

―― 了 ――

 

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