全国学力・学習状況調査における対象教科の追加について

平成22年12月17日
初等中等教育局参事官付学力調査室

文部科学省では、全国学力・学習状況調査における対象教科の追加について、別紙のとおり取りまとまりましたので、お知らせします。

 文部科学省では、現在、 「全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議」を開催し、平成23年度以降の全国的な学力調査の在り方について、検討を進めております。
 このたび、同会議において、「全国学力・学習状況調査における対象教科の追加について」が別紙のとおり取りまとまりましたので、お知らせします。

全国学力・学習状況調査における対象教科の追加について

平成22年12月17日
全国的な学力調査の在り方等
の検討に関する専門家会議

 全国的な学力調査には、義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図り、そのような取組を通じて、教育に関する検証改善サイクルを確立するという役割とともに、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てるという役割が期待されている。このことを踏まえ、これまでの「国語」、「算数・数学」に加え、対象教科を追加することを検討していくことが適当である。

 あらかじめ、文部科学省(国立教育政策研究所)において、問題作成の体制づくりを行うことが必要となること、通常、問題作成に1年以上かかること等を考慮すれば、教科の追加は早くても、平成24年度調査からということになる。

 小学校の「社会」「理科」、中学校の「社会」「理科」「英語」の各教科について、対象教科に追加することの意義や課題等について検討した結果、平成24年度から追加を検討する教科については、小学校及び中学校の「理科」とすることが適当であると考えられる。

 「理科」における教科の特性を踏まえ、出題方法等の具体的な方策については、問題作成の過程で検討することが適当である。

 なお、「社会」「英語」については、理科における具体的な方策の検討状況や準備状況を踏まえつつ、改めて検討することが適当である。

1.対象教科の追加について

○ 平成19年度の全国学力・学習状況調査の発足時においては、対象とする実施教科について、まずは、小学校の国語・算数、中学校の国語・数学とすることが適当であり、その他の教科については、将来的な検討課題とされたところである。
 これは、本調査により、国の責務として果たすべき義務教育の機会均等その水準の維持向上という観点からの学力等の把握が必要であること、大規模な調査を確実に実施する必要があるといったことに加え、
 ・読み・書き・計算など、日常生活やあらゆる学習の基礎となる内容を教える教科であること
 ・本調査発足前の時点までの国際学力調査や教育課程実施状況調査の調査結果においてあきらかとなっていた課題(読解力の低下等)
等を考慮したものである。

○ 全国的な学力調査は、義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図り、そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立するという役割とともに、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てるという役割が期待されている。このことを踏まえ、平成23年度以降の全国的な学力調査の在り方を検討するにあたって、望ましい対象教科を考えた場合、国語、算数・数学のみならず、他の教科(社会、理科、英語)についても、対象とすることを検討することが適当と考えられる。

○ 都道府県が独自に行っている学力調査においては、社会、理科、英語といった教科について実施している例が相当数あるので、これらの教科の学力等の状況について把握したいというニーズが存在するものと考えられる。        

○ あらかじめ、文部科学省(国立教育政策研究所)において、問題作成の体制づくりを行うことが必要となること、通常、問題作成に1年以上かかること等を考慮すれば、教科の追加は早くても、平成24年度調査からということになる。

○ 以上のことから、対象教科は、これまでの「国語」「算数・数学」に加えて、小学校は「社会」「理科」、中学校は「社会」「理科」「英語」を追加することを検討していくことが適当であるとしたところである。

○ その上で、これらの教科を追加することについて、教科ごとに意義・効果及び各教科における問題作成の課題等を総合的に検討した結果、平成24年度から調査に追加することを検討する教科については、小学校及び中学校の「理科」とすることが適当であると考えられる。

2.「理科」の追加について

○ 平成24年度調査から「理科」の追加を検討すべきこととした背景としては、
1  「知識基盤社会」において、次代を担う科学技術人材の育成がますます重要な課題となっており、新学習指導要領において、国際的な通用性、内容の系統性の観点から理数教育の授業時数及び教育内容の充実が図られたところであること
2 さらに「理科」については新学習指導要領において、科学的な見方や考え方の育成、科学的な思考力、表現力の育成、科学を学ぶ意義や有用性を実感させ科学への関心を高めることなどの観点から充実が図られており、その方向に沿った学習指導の充実が求められていること
3 児童・生徒の「理科離れ現象」が指摘されていることを踏まえ、学力や関心・意欲・態度など学習状況を把握・分析し、実態の把握や課題の改善に向けた取組につなげていくことが必要であること
4 政府の新成長戦略において「国際的な学習到達度調査において日本がトップレベルの順位となることを目指す」とされ、具体的な目標も示されていることから、その実現のため、TIMSSの「理科」、PISAの「科学リテラシー」と関係が深い「理科」を対象教科とすることは有意義であること
などが挙げられる。

○ 「理科」においては、観察・実験が重視されるが、その測定にあたっては、実技面に焦点を当てた「パフォーマンス・アセスメント」を実施することが想定される。その場合には多大な労力を必要とすることから、大規模学力調査に馴染まないことや、調査の結果得られたデータの妥当性・信頼性の確保に留意する必要がある。これについては「特定の課題に関する調査」などの異なる方式の調査を充実し、全体として目的の実現を図っていく必要があると考えられる。

○ 「理科」における教科の特性を踏まえ、また、児童生徒や学校の負担増への配慮から、理科については、国語、算数・数学のように「主として『知識』に関する問題」と「主として『活用』に関する問題」のように分けて問うのではなく、一体的に問うことや、一度の調査ですべての領域について出題するのではなく、領域を限定して出題すること、また、他の教科の調査時間等の見直しなどの工夫を検討する必要性が指摘されている。これらを含め、「理科」における出題方法等の具体的な方策については、問題作成の過程で検討することが適当である。

○ なお、「社会」「英語」については、理科における出題方法等の具体的な方策についての検討状況や準備状況を踏まえつつ、改めて検討することが適当である。

○ 「理科」を追加する場合においても、全国的な学力調査により測定できるのは学力の一部分であることについて引き続き留意が必要である。

3.実施頻度等について

○ 「理科」を追加する場合、実施頻度については、国語、数学・算数のように、毎年ではなく、3年に一回程度とすることが、実施面からも妥当と考えられる。また、解答類型の設定や採点上の検証等の予備調査を行うことも考えられる。

○ 対象教科については、今後の調査の基本的な在り方(調査目的や調査方式等)についての議論を十分踏まえる必要がある。今回の整理は、当面、平成22年度調査と同様の調査を継続する場合を前提としていることに留意する必要がある。

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