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資料1-2 これまでの委員からの主な意見

全国的な学力調査の在り方等に関する専門家会議(第1回~第8回)における各委員の主な意見等

1.調査の目的

○調査目的の検討に当たっては、この調査が単なる行政調査ではなく、子どもの学力を向上し保障する仕組みとして考えられ、そのことが多くの国民の支持を得て実施されてきた経緯を踏まえる必要がある。

○できるだけ幅広い教育内容・成果を把握できる調査、信頼できるナチュラルな回答が得られる調査、年次変化をみることができる調査、の3要素は全国的な学力調査に不可欠の要素である。

○3年間の悉皆調査は、国が学力に関する成果指標を手に入れるという、第一段階としての重要性があり、様々な意見がある中で調査を実施すること自体に意義があった。これからは「第二ステージ」に入るべき時期であり、新たな調査を検討すべき時期である。

○第二ステージにおける新たな制度設計をどうするかという根本を議論する際、これまでの調査で設定した様々な目的を一つの調査で達成することは不可能であることを十分に踏まえる必要がある。
 その上で、全国的な学力調査は、国の主要な任務である義務教育の機会均等の確保や全国的な実態把握により重点を置くことが適当である。

○現在の調査の目的について「評価している・問題ない」という市町村教育委員会が約8割に達している。教育関係団体も、「教育施策の成果と課題を検証しその改善を図る」、「教育に関する検証改善サイクルの確立」、「児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる」など、教育改善に役立てるという視点の重要性を指摘している。

○教育委員会等の要望に応えるという配慮は一つの視点にすぎない。検討にあたっては、国が国のために実施する調査として、何を目的とするのか、それにふさわしい調査はどういうものなのかという観点が重要である。

○教育課程の大綱的基準としての学習指導要領の実施、検証及び改訂が国の本来の任務であることを踏まえ、今後の全国的な学力調査は、学習指導要領の検証・改善に力点を置くこととしてはどうか。

○本調査は、学校の授業を役に立つ、面白い授業に改善していくためにはじまったものである。第二ステージにおいても、学校の教育の発想を変えるために調査を実施するという意義はある。

○全国学力・学習状況調査、学習指導要領、教科書が一体となって、教育委員会や各学校が指導改善を図り、生徒の学習に対する関心・意欲を高めていくという視点が重要である。

○進むべき方向の一つは、国として、ある時点における学力の水準とばらつきをモニターする。それができるだけでなくて、学力の時系列的な変化を明らかにできるような調査にしていく方向である。

○時系列データを見る調査を第一に考え、次に学力格差を広く把握するために、学力の識別力を幅広く捉える調査、施策の検証ができる調査を考える必要がある。これとは別に、一定期間ごとに観察実験などの重要性を現場に発信していくサイクルが考えられる。学力の複雑さを考えるならば、様々な調査を組み合わせるなどの思い切った設計を考えるべきである。

○日本では、都市とへき地の格差が縮んでいる一方で、別の学力格差が生じている。学校間格差もあるが、その中で頑張っている学校もある。今後、国が行う調査は、それを捉えられる調査とする必要がある。家庭格差、男女格差、外国籍の子どもの学力の問題を検討する際の基礎データが得られる調査とする必要がある。

○調査結果を現場が受け止めて授業の改善に生かすことは、この調査の大きな柱である。そのために、これまでも調査結果を踏まえた授業アイデア例や取組事例集が教育委員会や学校に向けて発信されているが、今後も各学校が現場で生かせる調査としていく必要がある。

○平成22年度調査の目的、特に後段の「学校における児童生徒への教育指導の充実や学習指導の改善等に役立てる」という視点は、極めて重要であり、今後もこれを踏襲すべきである。

○本調査が児童生徒にフィードバックされる調査であることに加え、教員の指導力向上につながる調査であることの重要性を強調する必要がある。

○調査結果を活用して改善を図る方向は、教員の指導力の向上に尽きる。行政は地域の実態、子どもの実態より指導者である教員の実態に焦点を合わせるべきである。研修は足らざる者が足りている者に教えを請う事が原点である。それを阻害する情報公開との折り合いが問題だが、どこでも同じサービスが受けられるという点で問題となるのは教員の指導力である。

○多くの市町村教育委員会や学校の期待を反映して、約75%の中学校が抽出対象校として、あるいは希望して調査を受けている。調査目的にある教育指導の充実や学習指導の改善等に役立てるという視点は重要である。

○希望利用を希望する学校数は多かったといっても、実際の利用の仕方は様々であるので、教育委員会や学校が一律に従前のような調査を必要としていると捉えるべきではない。

○全国的な学力調査が外発的なモチベーションとなり、却ってデメリットが生じる場合もあるかもしれない。生徒への還元は非常に重要だが、その役割は全国学力調査を全国一律に実施しなければ担えないというものではない。検討に当たってはその点を踏まえる必要がある。

○全国的な学力調査を実施する上で、1 実態を捉える実態把握の視点、2 テストを指導に生かす教育評価の視点、3 社会に対する説明責任の視点、4 イギリスのように全体の学力を競争的に引き上げていく視点、の4つの論理がある。これらの内、1 を最重要視すべきで、3 がそれに続く。2 は日本の伝統として学力調査により学力モデルや指導モデルを提示してきた重要性は考慮すべきだが、国よりもローカルなレベルで追求すべきである。4 は否定すべきであると考える。

2.対象学年・実施時期について

(対象学年)

○対象学年を追加すれば関連する業務量も増える。教科の追加を目指すのであれば、対象学年は当面、現状のまました方がよい。

○市町村教育委員会のアンケート調査の回答状況(速報)においても、対象学年については、小学校6年生が69%、中学校3年生が64%と、従前の対象学年を踏襲すべきだという回答が最も多く、他の学年とすべきだという回答は、複数回答によっても30%台にとどまっている。

○学力には、試験で測ることが可能な学力と測ることができない力があるが、試験学力が形成されてくるのが、小学校6年、中学校3年である。大学入試センター試験でも、ある時期から学力とは呼びがたいある種の「試験学力」が形成されることがわかっているが、試験学力に基づいて施策や指導法を考えることとならないよう、学力を測定する必要がある。
 対象学年については、これまでの議論においても小学校5年、中学校2年とする案もあったが、様々な制約があり小学校6年、中学校3年となった経緯がある。学力の本質にかかわる問題なので絶えず検討対象とする必要がある。

○国の施策の検証・改善という観点からは、高等学校教育を全国的な学力調査の対象に含めることについても検討する必要がある。初等中等教育局全体を見渡すと、高等学校教育は抜け落ちやすい。多様化が進んで以降、おそらく学校段階ではもっとも散らばりが大きいのが高等学校と考えられるので今後の検討課題とすべきである。

○高等学校の授業改善に資するよう、児童生徒が小・中学校の学力調査の結果を高校生になったときにどう生かしているかという視点は重要である。高校で授業改善を図った生徒が大学生になったときにどのようなパフォーマンスを示しているかという調査もある。

○高等学校を調査対象とすることについては、高等学校は学校間の差が大きく問題作成が非常に難しい。高等学校は、センター試験の影響も大きく、高等学校でB問題をやっても、センター試験の内容と異なれば、特に進学校からは相手にされない可能性がある。センター試験も含めて考えないとダブルスタンダードとなりかねない。

○個人の発達の積上げとして、小中高の学力の発達が積み上がるのか、途中で抜けるのか、ライフサイクルの中で学力がどう変容するのかを見ておく必要がある。コア部分で時系列的設計をするのと、個人の発達を追う調査が全国的な学力調査としては重要で、あとはアドホックに指導上有用なデータを得るための調査を定期的に行うのが望ましい。

○行政調査としての役割では、学年を統一する必要があるが、個々の子どもに生かす視点では、進級するたびに子どもの変化の様子を把握し、指導等に生かす必要があることが課題である。

(実施時期)

○実施時期については、児童生徒の学習改善に役立てるため、調査の対象となった児童生徒の結果を本人にフィードバックする必要性を考慮すれば、これまで同様、年度の早い時期に実施することが適当である。

3.対象教科 (別紙参照) ※下にスクロールしてください

4.調査方式

(調査方式)

○個人に返すのか、集団としてどうなっているかという二つの目線を使い分ける必要がある。個人に返すのも大切だが、集団としてどこが強く、どこが弱いのか知る必要がある。ルールスペース法や推算値は集団としてどこでつまずいている確率が高いのか見る方法である。現場の先生は子どものことをよく考えており、一人一人がどこでつまずいているか知りたいと願っている。それは現場の先生の感覚と外れていないと思う。全国的な学力調査ではそれに応える仕組みも作る必要がある。

○国の政策に資する形の調査なのか、個々人の児童生徒の学習にフィードバックできる調査なのかという点からは、抽出調査という形になったときに問い直されなければならない。国の施策に資するという点においては、時系列な分析が可能な調査形態をもつ必要がある。

○全国学力調査については、指導に重点を置くシステムと、政策立案のためのシステムの二つの目的を切り分け、それぞれに沿った調査を複眼的に考えた方がよい。

○抽出調査に切り替わったことで、学校での学力向上のための熱意が低下しつつある。平均値で語られても、それに合う学校は少ない。自校のデータで自校の把握をし、学校評価とのからみで自分の学校をこうするという授業や経営改善のためには悉皆調査が必要である。エビデンスベーストの改善のためには学校が自校のデータを得て改善できるようにする必要がある。3年に一度程度は、悉皆調査を実施することを検討する必要がある。

○例えば、悉皆調査は数年に一回とし、その間、理科の実験などいろいろなテストを順繰りにするなど機能分化が必要である。機能分化しないと、二兎を追う者は一兎をも得ずということになる。

○調査方式の切替えの趣旨からは、将来、一定期間が経過した後は、3年間の悉皆調査などこれまでの調査により蓄積されたデータの更新が必要であり、その方策についても考える必要がある。

○4、5年に一度程度は、昨年度まで実施した悉皆調査を実施する必要がある。これは、全国的な教育の機会均等の観点で評価をするために実態を把握することや、教育格差の問題にも光を当てるべきという考えからである。

○個々の学校、児童生徒の状況を把握してフィードバックするならば調査方式は悉皆になるが、そのようにすると問題を公開しなければならないので、時系列比較ができない。調査にはいろいろな目的が考えられるが、それらを一つの調査で達成しようとすると矛盾が生じる。
 すべてを一つの調査で把握するのではなく、異なる調査方式の複数の調査により目的を達成するという考え方もある。

○調査の目的は、行政の評価と各学校での学力向上の取組の検証改善の二つがあるが、これからは発展的に切り分け、アメリカを参考にした高度な調査と、イギリスのような学校の指導改善のための調査の二つの調査として実施すべきである。後者の調査としては、悉皆調査を検討する必要がある。

○全国や都道府県の状況把握は抽出調査で足りるが、悉皆調査では、健康診断に例えると、個人レベルで子供の症状を把握することができる。医者であれば目前に症状をもった患者がいればなんとかする。この患者は高血圧であると…、同様にこの子は分数が理解できていないと、そういう時に、指導方法はもっと切実になる。悉皆調査では、このような使命感・義務感的な雰囲気が醸成されてくることが貴重である。

○国が各学校の検証改善サイクルの確立を悉皆調査として保障することが、学力向上のために効果的である。抽出データだけでは大きな施策は捉えられるが、各学校や子ども、家庭の取組にまではなかなか影響を及ぼしにくいというのが実態である。

○子どもに負担をかけないことと、詳細に学力を把握することとは相容れない。調査は抽出方式がよい。様々な目的を達成するための調査として全米学力調査(NAEP)が参考となる。NAEPでは、そのときのトピックに合わせたメインNAEP、基本的な部分を経年的に追うロングタームNAEP、また、ステイトNAEPというかなり抽出率の高い調査を各州で実施し、これらを組み合わせることで問題を解決している。

○アメリカでは、3種類の調査の組合せにより、複数の調査目的の実現を図っているが、イギリスでは悉皆調査が行われ各学校の調査結果が公開されている。オーストラリアのように悉皆調査ではあるが州によって非公開のところもある。韓国では、韓国教育開発院(KEDI)が30年前から作問の研究評価や調査を活用する研究を継続的、組織的に行ってきている。このような海外の学力調査の取組状況を調査して参考とする必要がある。

○調査の対象となる教科が増えることで、児童の学習負担や学校の業務負担への影響も心配される。このため、今後の調査では目的・内容を絞って数か年でいくつかの視点で実施し、数か年のサイクルで全貌が把握できる調査の形も検討する必要がある。

○今後の調査については、4~5年を一つのパッケージとして、何年かに1回は悉皆調査を実施し、その間は小規模の精密な調査により課題に解決に取り組むこととしてはどうか。

○4年に一回は悉皆調査を行いしかも教科を増やすこととしてはどうか。その間は、10%程度の抽出調査を毎年度実施するようにすれば、ちょうど小6で対象となった児童は、4年後には中3となって再び悉皆調査の対象とすることができる。悉皆調査による各学校のPDCAサイクルの支援を実施しないと、学校は当事者意識を失いかねない。抽出調査との組合せ方式で調査目的を達成するという考えもある。

○「継続的な検証改善サイクルの確立」は、本県に課せられた使命であるが、全国学力・学習状況調査が抽出方式となったことで提供されるデータが限定され具体論では苦しんでいる。

(希望利用方式)

○希望利用は、現時点においては最善策ではあるが、例えばB問題については、全国の抽出調査の採点基準と地方独自の採点基準にズレが生じる可能性が高いなどの課題がある。このような点も含めて、調査の質保証のためのPDCAとなる自己点検の仕組みの確立を検討する必要がある。

○記述式問題の採点は大変な作業であり、業者委託など採点基準を統一するための配慮が必要なことは理解するが、他人任せでは授業改善には結びつきにくい。希望利用方式を継続するのであれば、現場の先生に丁寧に説明して、採点の経験を積んで貰った方が授業改善の力につながると思う。

○今年度調査では、希望利用が非抽出対象校の6割に達したが、希望した学校のみの調査結果を集計したのではデータが偏り一人歩きする恐れがある。各都道府県が域内の全学校を母集団とする独自の標本抽出を行うなどの方法により、各地域のデータも国全体と同様に可能な限り自然なデータを得られるようにする必要があるのではないか。

○先般、学校評価における第三者評価の在り方について検討結果がとりまとめられ、第三者評価については学校・設置者の判断に委ねることされた。そのような文脈における全国的な学力調査の捉え方は一つのテーマとなる。全国的な学力調査により、市町村教育委員会や学校が自ら日頃の姿を見直すという視点は重要である。
 希望利用方式により、悉皆調査にはなかった設置者の意思や学校の主体性の要素が登場したことの意義については丁寧に取り扱う必要がある。

(調査の精度)

○悉皆調査は負担が大きく抽出調査に切り替えられたことは改善と受け止めているが、全国的な児童生徒の水準の把握は必要としても都道府県別に一定の精度のデータが必要かどうかについては検討する必要があるのではないか。

○市町村教育委員会のアンケート調査の回答状況(速報値)では、調査の精度については、都道府県の状況が分かる程度までの精度が必要との回答が30%、市町村の状況が分かるまでの精度が必要との回答が45%であるのに対して、全国の状況が分かる程度との回答は19%であった。

○「知識」を問うA問題については、県独自調査でも把握可能であるし、基礎学力の定着に関しては現場の先生方も大体把握できているので、国が行う悉皆調査は、「活用」を問うB問題中心で4教科、5教科まで拡げ、質問紙調査も簡素化することにより負担軽減を図ることもできる。分析ツールの改善が更に図られれば、希望利用の学校でもPDCAサイクルがまわせる。

(当面の調査)

○当面、全国的な学力調査を継続していくとしたことは評価すべきことである。調査を継続しながら、再来年以降の調査の在り方については時間をかけて十分に検討していく必要がある。

5.実施頻度

○調査の実施頻度については、市町村教育委員会のアンケート調査に対して、約60%が毎年実施を求めている。国語、算数・数学については、毎年度調査を実施する必要がある。

○イギリスでは20年前にナショナルカリキュラムと悉皆調査であるナショナルテストが導入された。調査結果は学校別、地域別に公表され、予算にも反映され、競争状況となる。すべて組み合わされると怖い状況となる。それを避けるためには、例えば5年に1回程度とし、県や市は状況に応じて独自に必要なテストを行うこととしてはどうか。

6.教育課程実施状況調査との関係

○教育課程実施状況調査は行政のための調査であり、全国学力・学習状況調査と統合すると、客観的なデータの把握・検証が阻害される懸念がある。全国学力・学習状況調査は、より純粋に、より公平な立場で、国の教育水準、到達度に関して測定データを積み重ねていくべきである。

○教育課程実施状況調査において、これまで公開していた問題を非公開とした上で最新の技術を導入した調査を実施することとして住み分けを図ってはどうか。 全国学力・学習状況調査は、学校の教育指導を変えていくという目的を実現するために調査問題をある程度開示していかないと意義ある調査とはならない。

7.経年変化の分析や教育格差の分析を重視した新しいタイプの調査方式の開発や地 方独自の調査との役割分担

(新しい調査方式の開発)

○全国学力・学習状況調査は、目的の一つである学校における教育指導の充実や調査結果を学習状況の改善等に役立てることについては、悉皆調査を行い、子どもたちに個票を返すことで実現してきたが、もう一つの目的である教育施策の検証改善と継続的な検証改善サイクルの確立の観点からは、悉皆調査であろと抽出調査であろうと経年比較を見るための調査とはなっていない。出題範囲も数十分の調査では、1学年の学習内容を全てカバーすることは不可能である。この目的の達成のためには、PISA、TIMSSを支えるような国際水準のテスト技術の導入が必要であり、そのための研究開発を進める必要がある。

○等価、対応づけ、項目反応理論、重複テスト分冊法などの最新のテスト技術を全国調査に導入することで、経年変化の分析を重視した調査、地方独自の調査や教師作成テスト等との役割分担など、これまでの調査をよりよく改善していくことが可能である。

○これまでの全国学力・学習状況調査においては、過去の調査で課題の見られた内容に関係する類似の問題を出題し、改善の状況を検証するなどの分析は行われてきたが、時系列変化を捉える設計とはなっていなかった。今後は、時系列比較をするための抽出調査を志向する必要がある。

○最先端で進められている学力調査の方法論は、その多くが全米学力調査(NAEP)を通じて開発されたものであることから、全米学力調査(NAEP)が、アメリカにおける教育測定、学力調査の技術的な開発、方法論の開発にどのような寄与をしてきたかを知ることが重要なポイントとなる。

○全米学力調査(NAEP)発足時に主要な役割を果たしたラルフ・タイラーは、学力調査には、1 個人を単位とする調査、2 授業のためのクラス単位の調査、3 学校調査、4 地域や国の調査があり、全米学力調査(NAEP)は第4の調査として計画され実施されたものである。

○全米学力調査(NAEP)では、項目反応理論(IRT)を用いて経時変化をみていくために、設問項目の3分の1は公開されるが、3分の2は非公開である。個人の学力評価にアプローチしない理由の第一として挙げられるのは、たった1回の調査が特定個人の学力評価であったり、教員の能力評価として短絡的に一人歩きすることを避けるということがある。

○全米学力調査(NAEP)では、アメリカ全体の学力レベルを把握するために、ETSが開発したアイテム・マトリックス・サンプリングにより行われる。これにより、可能な限り短い時間の調査で、より多くのコンテンツを得て、国及び地方の政策への還元を図っている。

○日本の学力調査が素朴なテスト観で行われてきたことには同感であるが、教育課程実施状況調査に関わった経験では、3種類の問題冊子をつくるのにも大変な労力を要した。考え方は理解できるが作問コストとの関係でどの程度までが実現可能性があるのかということとのバランスを考慮する必要もある。

○テストを積極的に使って自分の能力を引き出すチャンスにするという考え方が必要である。PISA調査の枠組みも参考にしつつ、将来、コンピュータ化してアイテムバンクをつくり、いつでも実施可能な調査とすることなどにより、子ども自身が自分の分からない点や世界のスタンダードとの関係が分かる調査で、学校にフィードバック可能な調査など、全く新しい視点で測定することを検討してもよいのではないか。

○検討する際には、項目反応理論(IRT)を導入した場合に想定されるデメリットについても検討する必要がある。

○調査としての側面に加え、エビデンスベーストで保護者や地域に説明責任を果たすため、現場目線の調査も大切である。日本の全国学力・学習状況調査は、現場へのメッセージのための調査という側面があり、政策立案のための調査に特化している全米学力調査(NAEP)とは異なる。ただし、1つの調査で何でもやろうとすると無理が出て、進学適性検査や昭和30年代の学力テストの轍を踏むことになる。

○日本には、専門機関がなく専門家も少ない。専門家をいかに養成し確保するかが課題である。教育調査、教育測定、教育統計、情報処理技術やICTを含めた学力調査の陣容を整えるための人材の養成と確保を計画的に進めなければならない。

○新しいタイプの学力調査を導入する場合に、我が国ではこの分野の専門家、専門組織が未発達というのは重要な指摘である。第三者評価についても専門機関や人材が不足している。専門家の育成に早急に取り組むことも大きな課題である。この会議からもその芽が出てくるといい。

○新しいタイプの調査方式の開発は、しっかりと時間をかけ予算を確保して取り組むことが重要である。また、開発に注力できるような仕組みを構築する必要がある。

(地方独自の調査との役割分担)

○学力の維持・向上に資するという調査の目的は動かない大きな目的である。しかし、その手段については、最新のテスティング技術では、全国調査と地方独自の調査の両者を対応付けることで、地方独自の調査の結果と全国調査の結果を比較することも可能である。国が悉皆調査を行わなければこの目的が達成できないということではないことに留意する必要がある。

○地方が独自に実施する学力調査は、長年にわたり様々な地域で行われている。そのような伝統ある調査と全国的な学力調査を組み合わせて、児童生徒や教員の資質向上に資するシステムを構築していくことは有意義である。

○これまでの調査は、1 教育施策の検証と改善、2 継続的な改善サイクルの確立、3 学校の指導や児童の学習状況の改善の三点を目的としているが、国、自治体、学校の役割が不明確なままで、相互に重なり合っている感が否めない。
 互いの役割を明確化するとともに、必要に応じ国が自治体を援助するなど、支援の在り方を工夫していく必要がある。

○全国学力・学習状況調査と都道府県の学力調査、市区町村の学力調査があるなど、多いところでは三つの調査を実施している。秋田県では先進的に県の入学試験まで含めて関連性をもたせて実施しているとのことだが、多くの調査を乱立させるのではなく、関連性、系統性をもたせることが重要である。

○全国的な学力調査、自治体独自の調査、教師作成テストの役割分担を明確にする必要がある。最新のテスト技術を応用し、必要に応じてこれらを相互に結びつける工夫をする必要もある。

○調査の視点からは、抽出調査の方がよいが、指導の視点から見ると悉皆調査の方がきめ細かに見ることができる。教育については、各自治体にやり方は任せ、国は財政支援をするという方法もある。

○行政でいわれる「Near is better」の考えは教育にも妥当する。学校は、教師が個々の児童生徒に応じたピンポイントの指導ができる調査を行い、自治体は、地域の実情に即した悉皆調査を行う。国は、学力の全体像を掴むための抽出調査を行うこととしてはどうか。

○Near is Better という指摘のとおり、指導評価に結びつける調査は、国よりも、県、市、あるいは学校レベルでかゆいところに手が届く範囲で行う方がよい。

○指導にあたる者が指導しようと思っている問題を作成できるようにすることが重要であり、国に良問をつくってほしいという考えは、却って指導力の低下に結びつくのではないか。

○本県では、平成14年から県が独自でじっししてきた抽出調査を悉皆調査に改め、毎年12月に実施している。4月の全国調査で明らかになった課題等をメインとして指導改善に当たる。それを12月の県独自の調査で検証する。さらに、高校入試でも点検する。それをまた4月に向けるというサイクルとして位置づけている。このように本県では全国学力・学習状況調査がうまく機能している。

8.調査結果の取扱いに関する配慮

○これまでの調査で、県ごとの「学力」順位が定まった感ある。県内各地区の順位すら「定説」になったところもある。序列化が有形無形に子どもたちの郷土意識を蝕んでいくのではないか。結果がふるわない原因の分析と改善対策を指示された学校もあると聞く。

○調査結果の開示・公表に関し、各校長には本来、悉皆調査により自校の結果を把握し、教育指導の充実や児童の学習状況の改善に役立てたいという思いがある。しかし、ここ数年、市区町村レベル、各学校レベルの一方的な開示が避けられない事例が頻発する中で、地域や学校の序列化が先行し児童が愛着・誇りを失うのではないかというマイナス面が心配されるので、抽出調査もやむを得ないと考えている。

○調査結果の公表の仕方によっては、調査結果が学校・地域の学力そのものであると短絡的に捉えられるおそれがあるので、今後の全国的な学力調査においても、調査結果の取扱いに対する配慮事項は明記していく必要がある。

○調査結果の公開に関しては、数字が一人歩きするのではなく、知事、政治家、行政官を含め統計数値がきちんと読め理解できるようにする努力が大切であり、単に公開すればよいというものではない。

○報道機関や地方行政機関の中において、平均正答率のみが注目される傾向があるが、学校によって生徒の状況は様々であり、100人前後若しくはそれ以下の学校規模も多い中で小規模校の平均点にどのような意味があるのか疑問の声もあがっている。

○特に悉皆調査のデータは、多額の予算をかけて得られた貴重なデータである。現時点では、様々な制約があり、個別情報を含むすべてのデータを公開することが困難であることは承知しているが、データで教育を語ることができるよう、研究目的に利用できるデータベースを作成して提供するようにするなど、一定の条件の下で公開することを検討していくべきである。

○限られた範囲でよいのでデータを一層公開して、調査で蓄積されたデータを活用していくべきである。教育の論議があまりにデータのないところで、意見や勘でものを言うことが積み重なってきている。貴重なデータをより効果的に生かせる方法を検討する必要がある。

9.その他

○調査目的を達成するためには、学校や教育委員会がアクションを起こす必要がある。このため、これまでも調査問題の解説資料、調査結果の概要、授業のアイデア例などを発信してきているが、関係者に一層歓迎されるものとなるよう、学校や教育委員会等に解説資料等の検証を依頼することとしてはどうか。

○各学校で調査結果を一層活用していくために、各学校に提供される分析支援ツールを一層改善していく必要がある。例えば、佐賀県、石川県における結果チャートの活用や福岡県のグラフ化システムなど多くの取組事例があるので、そのような分析支援システムの利用状況の把握や、国として分析支援システムを改善するための研究開発に取り組む必要がある。

○学力調査により学校の実態がフィードバックされ、学校評価の取組として評価され、学校改善に向けた取組の定着を図っていくことが重要である。

○学力調査と学校評価が一体的な扱いとなっていくことが大切である。学校評価、学校改善と学力調査を整合させる見取り図を明示する必要がある。

○現場で指導する側から考えると、まず教員にこの調査のねらい、意義を理解してもらい、保護者への説明、地域の受け止めも必要になる。校長自身が筋が通ったものとして受け止め、本気にならないと、調査結果も受け止められない。

○イギリスの学力調査の活用のように、指導者(ボランティアを含む。)が調査を受けた子どもに教科毎に助言を行うなど、個々の子どもに返すシステムづくりを整える必要がある。

○都道府県や市町村では、調査結果の分析をして、各学校の課題を明らかにして改善に取り組んでいるところがある。少なくともこうした取組を都道府県、各学校に求めていくべきである。

○各学校に配布されている調査結果の冊子は、よい考察がされているが冊子の厚さもあり十分な状態とはかんがえられない。内容の周知を都道府県、区市町村、各学校に図っていくべきである。

○教科における活用の仕方の具体例を文部科学省では示しているが、授業改善に資するように、都道府県、区市町村、各学校に周知する方法を十分に検討する必要がある。

○良問であるため、授業における指導教材として、調査問題を工夫活用している教員もいる。こうした取組を推進していく必要がある。このことは、教員の資質・能力の向上に資すると考える。

○今後の調査では、思考過程を詳細に把握・分析できる調査となるよう問題の精度をたかめていく必要がある。

○調査を実施した後にデータを分析し生かしていく体制づくりが大切である。PISA、TIMSSのような大規模テストでは、テクニカルレポートによる事後評価により品質保証について理解が得られている。本調査もそのような方向に進んでいく必要がある。

○全米学力調査(NAEP)の場合、実施法に関して専門家のグループが外部評価を行い、適切なサンプリング分析が行われているかのチェックレポートが必ず出るようになっている。

○教育の改善に資する調査とするために、明確な改善指標を確立し導入することを検討する必要がある。改善指標が曖昧な従前の仕組みでは、全体の中での順位が問題となり、生産性のないラットレースを惹き起こす懸念がある。

○問題を作るプロセスが大切。よい問題を作る先生は指導力がある。国が作問するとその力を吸い上げることとなり、各地方の作問能力が育たないのではないかと懸念している。

○学力調査は大切だが、そこで自己完結する世界を構築すると入試とのダブルスタンダードが不可避である。授業だけでなくセンター試験も含めた入試問題への反映を要望する方向性が必要である。

○保護者の関心は、我が子がどのくらいできるかということに偏りがちで視野が狭い傾向がみられる。子どもの学ぶ喜びや学習意欲を大切にしようとする保護者、社会の土壌を築いていく必要がある。学力調査で啓発を図っていきたい。(国が考える生きる力か一部の保護者が考える受かる力か)

○子どもの指導に生かすという立場からは、調査の実施から学校・子どもへの返却の期間をなるべく短くする工夫を図っていく必要がある。

○PISA2009の結果に小学校における全国学力・学習状況調査がどう影響しているかは明らかではないが、ここ数年、朝読書はほぼ全校に普及し、校内研究のテーマや指導の重点も、読解力や思考力、さらに活用する力や表現力などにシフトしてきている。反面、全国学力・学習状況調査が国語・算数中心であることによるドリル的な学習への傾斜も懸念されている。

○国としての学力調査とその活用は、学校の問題意識と重なって初めて実効あるものとなる。教員の指導改善もしかりである。調査で何を見取り、どう改善につなげていくのか十分議論を尽くしていくべきである。場合によっては校種により異なる調査内容・方法となるかも知れない。

○かつては、学校数、学生数、教員数を挙げてこれをどう整えるかが教育行政の主眼でもあったが、これからは、そういうインフラの上にどういう学力水準を達成できるのかがきちんとした統計資料として捉えられなければ、教育行政も新たな教育施策の展開もあり得ないという時代になっている。

 

(別紙)対象教科に関する専門家会議における各委員の主な意見等

 (対象教科の追加)

○校長としては、教育課程が目指す学力の総体を対象に調査をすべきとの思いがある。特に、日本の子どもたちの課題である「思考力・判断力・表現力」は、理科、社会の学習で培われる面も大きいだけに、対象教科としてこれらの教科の追加が検討され、平成24年度に理科を追加することとしたことは喜ばしい。

○市町村教育委員会に対するアンケート結果では、教科の追加に係る要望は34%にとどまっているが、これは学校の負担増を考慮したものと考えられる。一方、多くの教育関係団体が新たな教科の追加を要望している。国語及び算数・数学以外の内容教科を新たな対象教科とすることには意義がある。本調査によって、子供の学力だけではなく、教師の教育力向上のためにも、どういう問題が適切なのかというモデルを示すという意味もある。

○国の政策への還元のためには、できるだけ幅広い教科をみる必要がある。国語、算数・数学のコア科目に関しては継続しながら、新しい教科については、一定の期間ごとに実施するというような工夫が必要である。

○教育基本法の改正、学習指導要領改訂の議論の中で、知恵の教育の大切さや、思考力・判断力の充実が課題となっている。それを担うのが理科、社会である。「問題解決能力」を高めるためにと考えられる。自然現象や科学技術に子どもの目を開かせ、人格形成や社会性の育成を図っていく必要がある。

○全国的な学力調査の対象教科を拡大し、その結果を踏まえて新学習指導要領の趣旨をよい方向に後押しすることは有意義である。

○対象教科の追加は時宜に適っている。国立教育政策研究所には、これまでも国語、算数・数学の良問作成に尽力しているが、新たな教科の基礎・基盤、活用力について、授業によい影響を及ぼすような作問や課題提示を望む。概念提示を正面から問うような良問作成に期待している。

○時系列変化を追う調査とする場合に、最も妥当な教科として国語、算数・数学が継続的に測るべき学力の中心を占めることについては、現行調査の設計の際に既に議論されている。時系列で調査計画を立てるときは限定的に考え、知能モデルの一般因子の部分を時系列的に把握していくことが重要である。他の教科については、何年かに1回、指導上有用なデータをとるということでよい。

○社会、理科、英語でも実験などが重要だが、調査で測れるものは限られるので、方法自体を変えて、トピック的に現場にフィードバックする調査を計画すればよい。

○各教科を追加すると、学校の負担が増える。自治体独自の調査への影響などデメリットの指摘もある。教科の追加は調査の目的の議論を踏まえて判断すべきである。

○学力格差の分析の観点からは、国語、算数・数学でみるのが妥当である。教科間の相関は高いので他の教科を強いて対象としなくてもよい。

○教科を追加することの意義はあるに違いない。それは3教科以外の教科にもいえる。この場では、全体の枠の中で何をどうするかという議論をしたい。PISA、TIMSS、教育課程実施状況調査、特定の課題に関する調査などがある中で、さらに調査を追加すると負担が増える。全国的な学力調査は、全国的な水準の維持向上や文部科学省の施策の検証に重きを置くべきである。

○これまで「B問題」は、算数・数学、国語の枠組みをベースに作成されてきたが、内容の解釈、評価となると内容教科の視点が不可欠である。理科に関して、他の教科や総合的な学習の時間なども視野に入れるという考えは重要であり、今後は、教科の枠組みを超えた新しいタイプの「B問題」を検討していく必要がある。

 (理科)

○「知識基盤社会」の時代においては、科学技術は競争力と生産性向上の源泉である。1990年代半ば以降、ライフサイエンス、ナノテクノロジー、情報科学等の分野で世界的な競争が激化し、この競争を担う人材の育成こそが国力の基盤であることが各国で認識され、国際的な人材争奪競争も現実のものとなっている。

○少子・高齢化といった我が国の人口構造の変化や環境問題、エネルギー問題等、地球規模の課題の中で、次世代への負の遺産を残さない、人類社会の持続可能な発展に科学技術の貢献が期待されている。

○それゆえ、次代を担う科学技術系人材の育成がますます重要な課題となっており、新学習指導要領においては、科学技術の土台である理数教育の授業時数及び教育内容の充実を図ったところである。

○このような経緯から、全国的な学力調査において「理科」を追加し、子どもたちが、より確実な資質・能力を習得できるよう、子どもたちの学力・学習状況について、把握・分析等を行っていくことが必要である。

○また、「理科」学力(知識・理解・活用力)が、「現代の基礎学力」の一つであるという認識は、国際的に認知されている。また、我が国を含む先進国では児童生徒の理科離れ現象が顕著である。理科に関する学力・学習状況の経年変化を把握する国内データが必要である。さらに、児童生徒の特性・属性にあわせたきめ細かい理科指導のあり方を提案し学力の定着につなげるためにも全国的な学力調査に理科を追加する意義がある。

○全国的な学力調査に理科を追加する場合、1 他の類似した調査との趣旨・目的等の整理・調整することが必要、2 学習内容が限定されているので、「知識」を問う問題は限られた問題にならざるを得ないこと、3 実験・観察を踏まえた作問について、出題・採点のコスト等も含めた検討が必要、4 理科の「活用」と捉えた場合には、技術・家庭科など関連する教科等も視野に入れることが必要、5 実施までにはある程度検討期間が必要、また、実施頻度については、3年に1回程度が妥当ではないかと考えられること、6 教育実践の現場へのフィードバックを一層強化することが必要、などの課題について、今後、検討する必要がある。

○理科の検討課題として、理科に関しては、既にPISA、TIMSSという国際学力調査があり、国内では教育課程実施状況調査、特定の課題に関する調査がある。全国的な学力調査に理科を追加する場合は、他の調査をよく研究し、しっかりとデザインする必要がある。

○実験・観察など技能の評価は確かに難しい。また、科学的思考とともに表現が新たに加わったので、思考・表現の能力把握が考えられる。他教科等との関連については、理科は環境教育と関係が深く、情報教育、食育との関係もある。

○新学習指導要領で追加された内容を踏まえた調査問題を作問すれば、国民に対する大きなメッセージとなるが、新たな内容は小6、中3に多い。小6、中3の4月の実施とする場合、実質的には小5、中2までの出題内容となることを踏まえる必要がある。観察実験が理科の本体という認識を広め、授業改善の方向を導く新しい理科の全体像を描く必要がある。

○理科では、知識だけでなく実験、観察が必要である。NAEPでは、実験セットを配ってパフォーマンス・アセスメントを行っている。特定の課題に関する調査においても同様の調査を実施したとのことだが、そこまで踏み込むべきかは論点となる。

○社会科にも通じるが、活用となるとペーパーテストでなく、何かをさせないと上手く見ることができない。コスト的な制約から大規模調査は諦め、ランダムサンプリングによるピンポイント調査で、国民にフィードバックでき授業改善につながる仕組みを検討する必要がある。

○理科についても重要な観点があり、学力調査のみならず学習状況についても分析する必要がある。理科は、実験器具、実験指導員など最もお金を必要とする。国や教育委員会における条件整備の状況と学校での子どもの学力や学習意欲の相関が見やすい教科であるので、理科が全国的な学力調査の対象として追加されれば、目的の一つであった国の政策の検証改善、条件整備にクリアにつながっていくのではないか。

○理科についても学習指導要領の改訂で授業時数及び内容の充実が図られた。授業改善を行い生徒一人一人に返すことを重視したい。実験観察をどうするのかというのがポイントである。全国的な学力調査が授業改善の契機となることを望む。

○国語でも、話すことや読書に関することは調査しにくい。海外では限定的であるが的を絞って少人数を対象とした調査がある。従来の「特定の課題に関する調査」に通じるような、限定的な目的のための調査を充実する必要がある。

○理科追加の背景として、科学技術の人材育成や、新成長戦略などばかりが挙げられていることで、日本の経済のためとみる人もいると思う。

○理科を追加する説明のしかたについては、状況論的、国策的評価に偏ることなく、教育の本質論から意義を取り出すべきである。

○理科の活用の問題について、他教科も視野に入れる必要があるという考え方は重要である。活用の内容の評価には内容教科の観点も必要である。問題について内容教科がどう関わるかも検討する必要がある。

○理科においては、観察・実験が重視され、パフォーマンスアセスメントを実施することが想定されるが、これには多大な労力がかかり、テストは限られた数の子どもへの実施になる。データの妥当性、信頼性にも課題がある。

○パフォーマンスアセスメントの採点は多くの労力を必要とするので、経年変化の把握よりも現場への波及効果への配慮を優先して、調査内容は公開するとともに、現場へのフィードバックを行うこととした方がよいのではないか。

○理科が加わって3教科となった場合、国語・算数数学と同じ時間をかけると子どもの負担が増える。3教科になった時にはどのくらいの時間配分をすればよいのか、理科については、ワーキンググループの検討においても、領域を限定して出題することや、他教科の調査時間等の見直しなどの工夫が必要だという意見があった。

 (社会科)

○社会科の課題として、グローバル化や規制緩和の進展、司法の役割の増大など、社会経済システムのあり方が変化する中で、将来の社会を担う子どもたちには、新しいものを創り出し、よりよい社会の形成に向け、主体性をもって社会に積極的に参加し課題を解決していくことができる力を身に付けさせることの重要性が指摘されている。

○これらの課題を克服するため、新学習指導要領では、1 基礎的・基本的な知識・概念の習得、知識・技能の活用、2 我が国の伝統や文化に関する内容の充実、3 諸外国についての基礎的な理解を習得させるための世界の地理や歴史の内容、4 社会形成に積極的に関わっていく社会参画の資質や能力の形成、に関する内容の充実が図られており、国として4つの力が子どもに身に付いているかどうかを検証していくことが必要である。

○全国的な学力調査に社会科が追加されることのメリットとして、1 授業の変革に結びつき、現場の教師に社会科の学力モデルを示すことができること、2 水準の高い調査問題を示すことで、社会科における様々なテスト問題の質的向上、ひいては授業の向上に資することができること、3 調査結果を児童生徒一人一人にフィードバックすることにより、個に応じた指導の充実が期待できること、4 国際的な学力調査への対応、が挙げられる。

○社会科は、社会事象について、原因結果の関係、とりわけ説明力が大きい原因結果の関係を理解する力を中核としている。説明力が大きい知識を理解するためには、事象を取り上げ価値判断することが必要であり、それが社会参画につながると考えている。それを把握できる学力モデルを考えることで、穴埋め中心の授業から質の高い授業への変革につながる。

○PISA調査の「読解力」の内容は、「社会」の学力と対応している部分が多い。「読解力」は言語の学力のみでは対応できず、全体構造、部分と全体、社会と個人、価値対立などについて、総合的な知識・概念・技能が求められる。社会科の授業は、まさにこれらの資質形成を目指して行われている。
 このような取組を進めていけば「国際的な学習到達度調査において、日本が世界トップレベルの順位となることを目指す」とした政府の新成長戦略の期待にも応えることができる。

○社会科の授業は教える内容が多く、教師中心、説明中心の授業が一般的である。生徒が主体的に考える授業がもっと広まる必要がある。総合的な学習の時間やキャリア教育ではそのような授業が広まってきているので、さらに数学Bのような調査問題が開発され、子どもが主体の考える授業が広まることを期待する。

○PISAの読解力や言語活動において、国語だけが注目され、社会科が取り上げられないことが問題と考えていた。ハンナ・アーレントが人間の条件で分類した基本的な活動力のうち、活動(アクション)の部分がひ弱になっている。ライトノベルズの普及の背景には社会性の欠落があるとの指摘もある。新聞を活用しない教師や生徒が増えており知識の詰込みが懸念される。社会科の学力モデルを示す意義は大きい。

○提言された学力モデルは、ペーパーテストでは測定が難しいコンプレックス・アチーブメントの評価・測定となる。これは、従前のB問題が抱えている問題でもあり採点結果にブレが生じる。社会科の導入を検討する際には、この点も検討することが必要である。

○かつて、学力調査が原因となって、おけいこやワークシート学習の蔓延が危惧されたことがある。全国的な学力調査は、学校現場の指導や教育課程に影響を及ぼす。社会科、理科では、指導法の根幹に何をどう考えさせるかを明確にしておく必要があり、そうでないとPISA型学力を伸ばす授業とはならない。社会科で培う学力については、提言いただいたような学力を測る調査が望ましい。

(英語)

○英語に関しては多様な目的によって多くのテストが開発されているが、適切な情報が得られているとはいえない。例えば、TOEFLEは熟達度テストであり、本来は英語圏での学術研究を英語で行う能力があるかを検証するテストであり、ある国の特定の英語教育が効果をあげているかを検証するにはふさわしくない。にもかかわらず、国別の得点を参考に我が国の成績がいかに低いかを公然と問題にし、あたかも我が国の英語教育が最低水準であるかのような議論もなされてきた。最近では日本のPBTの成績は中国、韓国を上回っているが、そのような結果は注目されない。

○英語教育の成果や生徒個人の英語学力を測定するための調査がなく、カリキュラムや英語指導を評価する判断材料となるデータはなかった。これを機に時系列でも把握でき、世界基準との関係を知るための調査ができるとよい。我が国では、数年前にようやく体系的な評価基準が設定され、目標準拠評価を行う試みがはじまった。英語でも多くの教員が関わり様々な試みがなされている。その際の成果を発展させ、全国的な学力調査に含めるには相応しい時期にある。

○EUでは「ヨーロッパ共通基準枠」などヨーロッパ言語に共通の絶対基準に基づいたレベル設定を行う試みがなされている。アジアではこのような取組は行われていないが、我が国がこのような基準の開発に貢献できる部分も大きい。世界基準に合致するテストの開発については、実用英語技能検定、TOEFLE、English for academic purposeなどから使えるものを利用しながら独自に開発するプロセスをとれば、夢のような話ではない。

○言語能力は多様であり一面的に捉えることはできない。語彙力、文法に関する知識、英語という言語に関する背景的知識、文化に関する知識、実際の場面における知識が必要なことはいうまでもない。しかしながら、社会や経済のグローバル化の急速な進展に伴い、異なる文化の共存や国際協力が求められている。また、人材育成面での国際競争も加速している。これら我が国をとりまく環境に鑑み、新学習指導要領においては、外国語(英語)の授業時数や聞く・話す・読む・書くなどの学習活動の充実を図っており、それに応じて学校単位で行われているテスト、考査においても、言語知識のみならず言語の運用能力を如何に測定するかが重要な課題となっている。

○したがって、全国的な学力調査に英語を追加し、子どもたちがより確実に必要な資質・能力を習得できるよう、子どもたちの学力・学習状況について把握・分析等を行っていくことが必要である。

○現状では、学校現場において、教員は言語の運用能力をテストするための適切で実行可能な道具と方法を手中に収めているとは言えず、理論と実践が乖離している印象を受ける。全国的な学力調査によって、英語教育の成果の検証にとどまらず、学習者と指導教員に現在の学力等とそれを向上させるための診断的情報の提供をも目的とすることにより、教員に授業で使える評価方法のモデルを提供する契機となるなど、理論と実践の橋渡しが期待できる。

○これまでに学術研究の分野で行われている言語運用能力のモデルを考察するのみならず、指導に直接関わっている教員の言語観、指導の観点なども考慮しつつ、信頼性、妥当性の検証が行われることを想定して調査細目(調査の青写真)を入念に作成することから始める必要がある。

○開発当初より考慮すべき事項として、1 相対的優位性(既存のものよりよいものであると使用者が認めること)、2 両立可能性(既存の価値観や過去の体験、ニーズに一致していること)、3 複雑性(新たな考えが単純で新技術・知識が必要ないこと)、4 試行可能性(イノベーションが小規模レベルで、手間のかかる準備をせずに分割試行できること)、5 観察可能性(イノベーションの成果を容易に見ることができること)がある。

○言語テストの波及効果に関する実証研究が世界各国で報告されているが、テストを開発して実施し、データを分析し、結果を公表するだけでは現場に反映されるとは限らない。パフォーマンステストをやっても先生の意識が変わらないと普及しない。調査の趣旨を教員、生徒、保護者、教育委員会などを含めた我が国全国民の共通理解とする必要がある。全国的な学力調査においては、さらに結果の意味、解釈のしかたなどについても誰でもわかる語彙を使いながら普及させるようすべてを同時進行で行うなどの配慮が必要である。

○小学校英語について、文部科学省が作成したCDがよくできており、リスニングでも子ども達が楽しんでいる。調査対象として検討してはどうかと考えたが、小学校の英語はそもそも「教科」ではなく、英語に慣れ親しむための「外国語活動」であって知識の定着を目的としないので、現在の取扱いでは調査対象として想定できない。

○世界共通基準となるような調査には、国を挙げて取り組むべきである。診断テストとして現場にフィードバックする視点も必要である。ただ、全国的な学力調査に英語が馴染むのかと思った例として、帰国子女がわざと下手な発音をすることがあった。帰国子女など外国語に馴染みのある子どもにどう対処するか念頭に置いて検討する必要がある。

○英語を使う能力、技能以外に、国際理解教育に必要だという観点もある。

○英語については、大規模ペーパーテストでは「書く」、「読む」が中心となるなど限界があり、そうなると授業が後退する恐れがある。各都道府県1校のみのサンプリングでよいので、「読む、書く、聞く、話す」を徹底的に検証する必要がある。昨今では企業が外国人を採用する傾向が出ているが、その理由の一つに日本の学生には語学力がないからという指摘がある。日本の英語教育の在り方を根本的に変える契機とする必要がある。

(学習状況調査)

○学習状況の調査結果をクロス分析することにより様々な情報が得られる。学習状況の調査についても、今後、きちんと検討を行う必要がある。特に、学校教育全体として何を身に付けるかという観点から、学習状況調査から読み取れるところが出てくる。

○家庭の状況は複雑化しており、地域と都市でその態様も異なる。学習状況調査の充実は重要である。

○国として、学力格差の状況を把握・分析するためには、教科の問題も大切だが、特に、学校、児童生徒の質問紙にどのような項目を入れ、分析していくかが重要である。そのような点から十分検討していく必要がある。

○生徒質問紙は、教科の学力と大きな関わりがある。子どもの睡眠や食事、読書、家庭学習等の環境が整うことは、基本的生活習慣が身に付くことであり、子どもの基礎学力の定着の上では必要不可欠である。
 教科とのクロス集計をした結果を各学校に十分周知し、各学校における取組が具体化するようにしたい。

○これまでの学校質問紙調査、児童生徒質問紙調査を根本的に見直して、最低限必要な調査項目とプラスアルファの項目に再構成して、プラスアルファの項目については、毎回テーマ的に変更するなどの工夫が必要である。

○今後は、教員に対する質問評価の導入も検討してはどうか。

○ある学校で、国語科の指導として音読、朗読をはじめたところ、学力との関係は未だ明らかとなっていないが、学校内の事故が激減したという話を聞いたことがある。こういう変化を拾い上げ様々な角度から分析できるよう、さらに調査内容を工夫していく必要がある。

○中学校では、パソコンや携帯電話にかかわってトラブルに巻き込まれたり、非行に走るという問題が生じている。発達障害についても学校では学級に1名該当する子どもがいるだけで指導に困惑するという実態がある。そのような問題に関わる調査項目は、もっときめ細かくみていく必要がある。

お問合せ先

初等中等教育局参事官付学力調査室

(初等中等教育局参事官付学力調査室)

-- 登録:平成23年03月 --