資料2 イギリスのナショナル・テスト(志水委員)

1.はじめに

イギリス=イングランド+スコットランド+ウェールズ+北アイルランド
 (本発表でいう「イギリス」とは、上記のうちの「イングランド」のこと)

 ■イギリス教育の歴史

1 ~1979 労働党政権 オールドレフト(福祉国家)

2 ~1997 保守党政権 ニューライト(新保守主義+新自由主義)

3 ~2010 労働党政権 ニューレフト(第三の道)

4 2010~ 連立政権 ?

 →2の時代(1988年教育改革法)に、ナショナル・カリキュラム(NC)とナショナル・テスト(NT)が導入。

 

2.NCとNTのなかみ

■ナショナル・カリキュラム

・イギリスの義務教育は、4つの段階(Key stages)に分けられている。

 KS1 Y1~Y2の2年間

 KS2 Y3~6の4年間

 KS3 Y7~9の3年間

 KS4 Y10~11の2年間

・教科・領域ごとにレベル(1~8まで)が定められており、子どもたちは義務教育段階において、それぞれのレベルを向上させていくことが期待される。

・達成を想定されているレベルは、KS1が2、KS2が4、KS3が5~6、KS4が8。

■ナショナル・テスト

・それぞれのKSごとに行われる。ペーパーテストと教師評価の組み合わせ。SATs(Standard achievement tests)とも呼ばれる。

・小学校ではテストをダウンロードし、年に数回校内で実施。

・KS3テストは、教員層の反対が強く、最近廃止されたと聞く。

・現時点では、KS2テスト(英語・数学・理科)とKS4テストの位置づけをもつGCSE(General Certificate for Secondary Education)が重要。

■リーグテーブル

・テストの結果は「リーグテーブル」の形で公表。地域・学校別に。
・「成績」のほかに、「伸び率」が算出されていることが特徴。
・この結果にもとづいて「学校選択」がなされ、子どもの数によって予算が配分。

 

3.労働党政権の学力政策

・巨大なデータベースを作成し、「水準」および「格差」についてのデータ分析。
・ここ数年は、「学力格差の是正」に最大のプライオリティー。
・成果はかなりの程度出たよう。
・ただし学校現場は、結果を出す・あげるために懸命。
 →新たな連立政権によって何が生じるか? 

 

4.イギリスの事例をどう評価すべきか

■日本の全国テストの目的規定

1)義務教育の機会均等と水準の維持向上のため、学力・学習状況を把握する。

2)教育施策の成果と課題を検証する。

3)継続的な検証改善サイクルを確立する。

4)教育指導の充実や学習状況の改善に役立てる。

イギリスの場合、上記の4つをすべて包摂している。 Cf. 「品質管理国家」
 日本が採るべき道とは思わない。

■全国テストの実施を正当化する論理 (志水『全国学力テスト』岩波ブックレット)

1 <実態把握>の視点 (上の1)と同じ)

2 <教育評価>の視点 (上の4)および3)と重なる)

3 <説明責任>の視点 (上の2)と関連する)

4 <競争主義>の視点 (イギリスに特徴的)

個人的には、全国テストは、上の1を最も重視すべきで、それに3が続く。4は否定すべきで、2は、よりローカルなレベル(地方・学校)で追究すべき。

 

5.ありうべき一つの選択肢

(1) 4年に一度、悉皆調査を行う。内容は現行のものに準じる。水準と格差の把握。

(2)「中間年」には、抽出調査で国語、算数数学のみならず、他教科のテストも実施。

(3) 学校調査、児童生徒調査の質問の再構成を図る。教師調査の導入も。

2008 GCSE and Equipment 5+ A-C inc GCSE English and Maths by Ethnic Group Gender and Free School Meals

School with highest levels of FSM have seen the biggest rise in %5+ A-C including English and maths between 1999 and 2009

Local Authority:Coventry01

Local Authority:Coventry02

 

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