資料2-5 全国学力・学習状況調査によって明らかになった主な事項

※3年間にわたる全国学力・学習状況調査の結果やその分析により、経験的に言われてきたことがデータ上確認されたり、新たなことが明らかになった。国における調査の分析の結果明らかになった主な事項は次の通りである。

1.義務教育の検証等

【教科に関する調査】

知識・技能の定着に一部課題が見られ、知識・技能を活用する力に課題が見られる。児童生徒の教科上の具体的な課題が逐次明らかにされ、学習指導要領の改訂等にも反映された。

【都道府県の状況】

都道府県のばらつきは全体としては小さいが、一部に差が見られる。各都道府県ごとの分析により、それぞれの都道府県の特性や固有の課題等が浮かび上がりつつある。

【地域の規模や学校間の状況】

昭和30年代に課題となっていた大都市と農村・へき地などの地域規模による大きな差は見られなくなった。また、学校間のばらつきについても、大きな差は見られない。これは、義務教育の機会均等を保障するための施策や学校、保護者、地域等における教育に対する取組の成果と考えられる。

【就学援助】

就学援助を受けている児童生徒の割合が高い学校の方が、その割合が低い学校よりも平均正答率が低い傾向が見られる。しかし、就学援助を受けている児童生徒の割合が高い学校の中にも、平均正答率が高い学校がある。このような学校は、「教員が学校外の研修や模擬授業・事例研究などに積極的に参加している」「地域の人が自由に授業参観できる学校公開日を設けている」「児童生徒に将来就きたい仕事や夢について考えさせる指導をしている」など、その取組に共通の特性が見られる。

2.効果的な指導方法

【習熟度別少人数指導の効果】

習熟度別少人数指導の効果が裏付けられた。例えば、低学力層の学習に対する関心・意欲・態度を高めることや、習熟度別少人数指導が低学力層を減らし、高学力層を伸ばす効果があることが確認された。特に、低学力層の正答率を上げ、無回答率を下げる傾向があることが明らかとなった。また、習熟度別少人数指導は、低学力層の自尊感情を傷つけたり、高学力層の自尊感情を歪めたりしないことが確認された。

【学力向上に有効な指導方法等】

「考えを引き出したり思考を深めたりする指導」「私語をしないなど学習規律の維持を徹底」「家庭学習の継続的な習慣付けを図るために家庭学習の課題を与える」などの指導上の取組が、学力向上に有効である。また、「学校司書」などが置かれている学校の方が、児童生徒の図書館の利用率が高い。

【国語の指導方法】

国語の指導として、「発展的な学習の指導を行った」「目的や相手に応じて話したり聞いたりする授業を行った」「書く習慣を身に付ける授業を行った」などの学校の方が、国語の正答率が高い傾向にある。

【算数・数学の指導方法】

算数・数学の指導として、「実生活における事象との関連を図った授業」などを行った学校の方が、算数・数学の正答率が高い傾向がある。

【無解答率の減少に効果がある指導方法】

「自分で調べたことや考えたことを分かりやすく文章に書かせる指導」「考えを引き出したり思考を深めたりする指導」「適切にノートをとるなど、学習方法に関する指導をしている」等の指導上の取組は、我が国の児童生徒の課題とされている記述式問題の無解答率の減少に効果がある。

【各学力層において効果的な指導方法】

各学力層毎に、より効果的な指導方法が異なる可能性が明らかとなった。例えば、「国語の指導において書く習慣を身に付ける授業」は低学力層を減らすのに効果があり、「職場見学や職場体験活動」が高学力層を増やすのに効果があることや、低学力層を減らし、高学力層を伸ばすためには、「学校図書館を利用した授業」や「放課後を利用した補充的な学習サポート」等の取組が効果的である。

3.児童生徒の生活の影響等

【関心・意欲・態度や生活習慣・学習習慣と学力との関係】

学習に対する関心・意欲・態度、読書・学習時間、基本的生活習慣、自尊感情・規範意識などの項目で、肯定的な回答又はその時間が長いと回答した小中学生ほど、学力との相関関係が高いことが確認された。

【生活・学習習慣と学力との関係】

家庭での生活・学習習慣の学力との関係等について、その影響の大きさを分析し「家で学校の宿題をしている」「朝食を毎日食べている」「学校に持っていくものを前日か、その日の朝に確かめている」などの生活・学習習慣に関する項目の影響の大きさを明らかにした。

4.委託研究の成果等

【家庭背景と子どもの学力の関係】

教員・保護者に対する独自の質問紙調査を作成実施し、全国学力・学習状況調査の結果と接合した結果、世帯収入が高いほど子どもの正答率は高い傾向が見られる一方で、親の子どもへの接し方や親の行動も子どもの学力と有意に関係していることが明らかとなった。

(※お茶の水女子大学において、保護者等に対する補完的な追加調査を作成し、5指定都市の100校を対象に、個人情報を保護した調査を実施。本補完調査のデータと「全国学力・学習状況調査」の結果を接合し、分析を実施。)

【「効果のある学校」の特徴】

教員・保護者に対する独自の質問紙調査を作成実施し、全国学力・学習状況調査の結果と接合し、不利な環境にある子どもの底上げに成功している「効果のある学校」を選びその特徴を探ったところ、効果のある学校には、学校における「学習規律の徹底」、「学校と家庭・保護者との関係」や、子どもの「学習習慣」、「自尊感情」、「規範意識」、「社会や地域への関心」等に特徴が認められた。

(※お茶の水女子大学において、保護者等に対する補完的な追加調査を作成し、5指定都市の100校を対象に、個人情報を保護した調査を実施。本補完調査のデータと「全国学力・学習状況調査」の結果を接合し、分析を実施。)

【教育の情報化実態等に関する調査との関連】

文部科学省調査「教育の情報化実態等に関する調査」と全国学力・学習状況調査を接合し、プロジェクタの整備・活用状況を指標として、普通教室におけるICT活用頻度や整備状況と学力や関心・意欲・態度との関係を見たところ、(1)ICTを活用した授業の頻度が多いほど、児童の正答率は高い傾向が見られる。また、(2)ICTを活用した授業の頻度が多いほど、児童の国語に対する関心・意欲・態度の肯定的な回答が多い傾向が見られる。さらに、プロジェクタが充実している場合、(1)(2)の傾向がより明確となることが認められた。

(※横浜国立大学において、文部科学省調査「教育の情報化実態等に関する調査」と「全国学力・学習状況調査」の結果を接合し、分析を実施。)

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初等中等教育局学力調査室

三宅、竹下、吉田
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