全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議(第4回) 議事要旨

1.日時

平成22年7月23日(金曜日) 9時30分~11時30分

2.場所

旧文部省庁舎6階 第二講堂

3.出席者

委員

相川委員、有馬委員、荒井委員、岩田委員、小川委員、梶田座長、柴山委員、清水(静)委員、高木委員、田中委員、根岸委員、耳塚委員

4.議事要旨

(1)事務局から「平成23年度以降の全国的な学力調査の在り方について(中間まとめ案)」について、資料1に基づき説明があり、その後、これらに関する意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

○新しいタイプの調査や追加教科など、新たなステージにおける具体的な検討を行うことについて予算事項に含める必要がある。

○今年度調査では希望利用が非抽出対象校の6割に達したが、希望した学校の調査結果ではデータが偏りそれが一人歩きする恐れがある。国全体と同様に、各地域のデータも可能な限り自然なデータがとれるようにするべきで、そのためには、各都道府県が域内の全学校を母集団とする独自の標本抽出を行い、それに基づき自治体に利用してもらう方がよい。 

○この調査が児童生徒にフィードバックされることと、教員の指導力向上につながることの重要性を強調すべきである。

○地方独自の学力調査は、長年にわたり様々な地域で多様に行われている。そのような伝統ある調査と全国的な学力調査を組み合わせて、児童生徒や教員の資質向上に資するシステムを構築していくことは有意義である。

○本調査の継続を来年度以降に向けて主張していくことは評価できる。

○希望利用が6割に達したとしても利用の仕方は様々である。一律に本調査を必要としていると捉えるべきではない。

○新しいタイプの調査についての研究開発には、しっかりと時間をかけ予算を確保して取り組むことが重要である。このことに注力できるような仕組みを構築すべきである。

○調査結果の公表の仕方によっては、調査結果が学校の学力そのものであるとか、地域の学力であると短絡的に捉えられるおそれがあるので、調査結果の開示など調査結果の取扱いについての配慮事項を明記すれば、全国の学校の安心材料となる。

○調査目的を達成するためには、学校や教育委員会がアクションを起こす必要がある。このため、既に解説資料、調査結果の概要、授業のアイデア例などが発信されているが、関係者が一層歓迎するものとなるよう、学校や教育委員会に解説資料等の検証を依頼することも課題として捉えるべきである。

○希望利用は現時点でにおける最善策である。しかし、例えば、B問題については、全国の抽出調査の採点基準と地方独自の採点基準の間にズレが生じる可能性が高いなどの問題があるので、そのような点も含め、全国学力・学習状況調査の質保障のための調査のPDCAとなる自己点検の仕組みを確立する必要がある。

○教科の問題作成は非常に重要でエネルギーを集中するが、それ以外にも、実施後のデータを分析し生かしていく体制づくりが大切である。PISA、TIMSSのような大規模テストでは、テクニカルレポートによる事後評価により品質保証についての理解が得られている。本調査においても、そのような信頼の下で次のステップに進んでいくという仕組みが必要である。

○アメリカでは3種の調査の組合せにより、複数の調査目的の達成を図っているとの指摘があったが、イギリスでは、悉皆調査が行われ各学校の調査結果が公開されている。オーストラリアのように悉皆調査ではあるが、州によって非公開のところもある。韓国では韓国教育開発院(KEDI)が30年前から作問の研究評価や調査を活用する研究を組織的、継続的に行ってきていると聞いた。 調査の在り方についての検討に当たっては、海外の学力調査の状況を調査して、メリット、デメリットをしっかりと整理する必要がある。

○各学校で調査結果を一層活用していくために、各学校に提供される分析支援ツールを一層改善する必要がある。例えば、佐賀県、石川県における結果チャートの活用や福岡県のグラフ化システムなどの取組事例があるので、そのよう分析支援システムの利用状況の把握や、国として分析支援システムを改善するための研究開発などに取り組む必要がある。

○調査結果を活用して改善を図る方向は、各教員の指導力の向上に尽きる。研修は、足らざる者が足りている者に教えを請うことが原点である。それを阻害する情報公開との折り合いが問題だが、どこでも同じサービスが受けられるようにという点で問題となるのは教員の指導力である。地域の実態、子どもの実態より、指導者の実態把握に行政は焦点を合わせるべきである。

○国語、算数にやや力点が置かれているので、対象教科の追加は時宜にかなっている。国立教育政策研究所は、ごれまでも良問作成に尽力されているが、理科や社会科においても、基礎・基盤、活用力をについて授業によい影響を及ぼすような作問や課題提示をお願いしたい。概念理解を正面から問うような良問を期待したい。

○英語については、大規模ペーパーテストでは「書く」、「読む」が中心となるなど限界があり、そうなると授業が後退する恐れがある。各都道府県1校のサンプル調査でもよいので、「聞く、話す、読む、書く」を徹底的に検証していただきたい。企業が外国人を採用する傾向が出ているが、その理由の一つとして、日本の学生には語学力がないとの指摘がある。日本の英語教育の在り方を根本的に変えるチャンスである。

○記述式問題の採点は、大変な作業であり、採点基準を統一するためにも業者に任せて行ってることは理解するが、他人任せでは授業改善には結びつきにくい。希望利用方式を継続するのであれば、現場の先生に丁寧に説明して、採点の経験を積んで貰った方が授業改善の力につながると思う。

○学力調査は大切だが、そこで自己完結すると入試とのダブルスタンダードが不可避である。授業だけではなくセンター試験も含めた入試問題への反映を要望する方向性が重要である。

○国語でも話すことや、読書に関することは調査しにくい。海外では限定的であるが的を絞って少人数を対象とした調査がある。従来の特定の課題に通じるが、そのような限定的な目的のための調査を一層充実する必要がある。

○学習状況の調査結果から、クロス分析により様々な情報が得られる。学習状況の調査についても、今後、きちんと検討を行う必要がある。

特に、学校教育全体で何を身に付けるかという観点から、学習状況調査を通して読めるところがあるのではないか。

○家庭の状況は複雑化しており、地方と都市で状況も異なる。学習状況調査が重要である。

○対象学年については、これまでの調査の当初、小学校5年、中学校2年とする意見もあったが、様々な制約条件があり、小学校6年、中学校3年となった。

○学力には試験で測れる力と測れない力があるが、その試験学力が形成されてくるのが小学校6年、中学校3年である。大学入試センター試験でもある時期から学力とは呼びがたいある種の「試験学力」が形成される。試験学力を把握しそれに基づいて施策や指導法を考えることとならないよう、全国的な学力調査では、学力を測る必要がある。対象学年をどうするかは、非常に本質にかかわるので議論の対象とする機会があるとよい。

 

(2)梶田座長より本中間まとめについては座長一任でとりまとめることとし、承認された。

 

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初等中等教育局学力調査室