全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成22年6月30日(水曜日)10時~12時

2.場所

中央合同庁舎 第7号館(金融庁)13階 共用第1特別会議室

3.出席者

委員

天笠委員、荒井座長代理、有馬委員、岩田委員、小川委員、梶田座長、小宮委員、柴山委員、志水委員、清水(静)委員、清水(哲)委員、高木委員、田中委員、土屋委員、根岸委員、耳塚委員、渡部委員

4.議事要旨

(1)事務局から資料1から資料2に基づき教育委員会等を対象としたアンケート調査の結果の報告が行われ、その後、質疑応答及びこれらに関する意見交換が行われた。主な意見は以下の通り。

○本調査により教師の指導力を向上させることは重要である。4月の調査実施後には解説資料が配られており、それを浸透させる方向で取組が進められている。

○調査を子どもの指導に生かすという視点は引き続き重視したい。

○国が行う調査として、どのような調査が望ましいのかという観点が重要であり、都道府県や市町村の要望に応えるという配慮は無駄ではないが、一つの視点にすぎない。

○これまでの調査は、実施すること自体に意義があったが、今後は、国として必要な調査を整理する「第2ステージ」と捉えるべきである。また、調査の在り方の検討に当たっては、教科等の追加は来年度は間に合わないので、再来年度以降を念頭に置くことが重要である。

○国の調査の在り方については、教育課程実施状況調査も一つの考えだが、時系列的比較をする抽出調査の方向を考える必要があるのではないか。

○目的を問い直した結果、国の政策に資する調査とするのであれば、時系列変化を追う必要があるし、特定教科だけではなく、幅広い教科を対象とする必要がある。時系列把握のためなら問題は公開できない。

○子どもに負担を掛けないことと、詳細に学力を把握することと相容れない。そのため、抽出調査で行うべきである。調査の種類を増やすことには禁欲的である必要がある。

○様々な目的を達成するための調査として全米学力調査(NAEP)が参考となる。NAEPでは、そのときのトピックに合わせたメインNAEP、基本的な部分を経年的に追うロングタームNAEP、また、ステイトNAEPというかなり抽出率の高い調査を各州で実施し、これらを組み合わせることで問題を解決している。

○教育課程実施状況調査は行政調査であり、全国学力調査と一緒にすべきではなく、全国調査は、より公平な立場で国の水準について測定データを積み重ねていくものである。

○国、算のコア科目は継続が必要である。

○第2ステージにおける新たな制度設計を議論し、調査の目的を再設定することが重要である。

○いくつもの目的を一つの調査で担うのは不可能である。そこで整理が求められるが、義務教育の機会均等の確保や全国的な実態把握を主な目的とすべきである。個人の指導改善、各学校のPDCAも大切だが、全国のテストで担うのはやりすぎではないか。

○イギリスでは20年前にナショナルカリキュラムと悉皆調査であるナショナルテストが導入された。調査結果は学校別、地域別に公表され、予算にも反映され、競争状況となる。すべて組み合わされると怖い状況である。それを避けるためには、5年に1回程度の抽出調査とすべきである。その上で、県や市は状況に応じて自前で必要なテストを行えばよい。

○学力格差の問題が重要。どのような問題を作るかも大切だが、学校、児童生徒の質問紙にどのような項目を入れ、分析していくか議論する必要がある。

○調査にはいろいろな目的が考えられるが、それらを一つの調査で達成しようとすると矛盾が生じる。

○個々の学校、児童生徒の状況を把握してフィードバックするならば調査方式は悉皆になる。そうすると問題を公開しなければならないので、時系列比較ができない。

○すべてを全国学力調査で把握するのではなく、全国学力調査ではコアとなる特定の目的に特化して中心的な事柄だけきちんと調べることとし、そこから派生する調査は別の調査で行うという方法もある。

○学力の維持・向上に資するという目的は動かない。最新のテスティング技術により、たとえば全国調査と地方独自の調査の両者を対応付けることで、独自調査の結果と全国調査の結果を比較することも可能である。

○問題を作るプロセスが大切。よい問題を作る先生は指導力がある。国が作問するとその力を吸い上げることにもなる。

○調査の視点なら抽出調査がよいが、指導の視点なら悉皆調査がよいというコンフリクトがあるが、後者は自治体に委ね、必要があれば国が支援をする形がよいと思う。

○テストという外圧によってモチベーションを高めることではデメリットが生じる可能性が高く避けなければならない。生徒への還元は重要だが、この調査でなければできないというものではない。その点を踏まえる必要がある。

○学力向上は学校で起きているところが大きい。学校でのPDCAサイクルを国が保証するのが学力向上のために大切。

○抽出調査では大きな政策は変えられるが、悉皆調査による支援をしないと、個々の先生は関心を持たない。

○抽出に変わり、調査に関係ない学校は、雰囲気がだれている。学力向上が盛り上がらなくなっているという厳しい現状を考えると、4年に1回は悉皆にして、しかも教科を増やすべき。

○県独自調査だけではB問題を開発する力はないし、全教員ががんばろうという意識が広まらない。A問題は県でもやれるので、B問題だけして、コンパクト化も不可能ではない。

○教育学的には悉皆が望ましいと考えている。全国および県別の状況把握では抽出調査でもよいが、悉皆調査では、個々の子どもの症状が把握できる。全体としての傾向ではなく、個人レベルで把握できる。それにより、義務感、使命感を醸成することが極めて重要である。教材研究も切実感をもって指導改善することが必要。

○希望利用により、悉皆調査にはなかった各学校や設置者の意思が登場したことの位置づけを丁寧に扱う必要がある。

○第三者評価の在り方について検討しとりまとめたが、第三者評価については、学校・設置者の判断に委ねるとしている。そのような文脈での学力調査の捉え方は一つのテーマとなる。学力調査により、市町村教委や学校が、日頃の姿を見直すという観点も重要である。

○国語教育の立場からは、役に立たないおもしろくない授業が多いという状況を改善するために本調査が始まったと捉えている。第二ステージとはいえ、学校の教育の発想を変えるために調査を実施する意義が現段階でもあると思う。

○いくつかの調査を組み合わせて、全体として調査を位置づけられないかと思っている。教育課程実施状況調査は学習指導要領のチェックのために必要である。特定課題の調査は精密検査にあたる調査だと思う。教育課程実施状況調査は教科の枠があるが言語活動はどの教科にもあてはまる。これがB問題の根拠である。全国学力調査は未来志向の先導的な意味をもたせ得るすばらしい調査である。三つの調査が束になることで子どもに力をつけさせたい。

○教科の追加の要望は、市町村教育委員会のアンケート結果は34%だが、教育関係諸団体からは多い。国語算数以外の内容教科も対象とすることは意義がある。問題のモデルを示す意義や教師の教育力を上げるための施策にもなる。可能であれば悉皆調査がよいと考えている。

○現場や各先生が結果をより活用できるような方法を検討すべきである。

○子どもがテストを受けることで、自分の能力を引き出されているという感覚が重要である。PISA調査の読解力や数学的リテラシーなどのように、新しい視点で測定することを考えてもよい。

○外国語については、語彙量のみを問うのは不適切。外国語をテストするのはそこが難しい。

○高等学校生徒を調査対象とすることについても検討するべきではないか。

○本来、校長は自校の各児童の状況を把握し、教育指導の充実や学習状況の改善に役立てたいという基本的な思いがある。しかし、3年間の悉皆調査で調査結果の一方的な開示を避けることができなかった。開示によるランク付けで子どもが自信を失うようになりかねないので、抽出調査はやむをえない。

○抽出調査では、個々の児童の状況の把握が難しいので、調査の目的から考え直した結果、国の主要な役割である学習指導要領の検証・改訂に役立てる調査としては、教育課程実施状況調査が行われてきたので、それをより精緻にしていく方向がよいのではないかということとなったものである。

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初等中等教育局学力調査室