【資料2-1】新学習指導要領及び解説等における幼小接続について

 

中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」(平成20年1月17日)(抄)

 

6.教育課程の基本的な枠組み

(4)発達の段階に応じた学校段階間の円滑な接続
○ まず、幼児教育と小学校教育の接続については、幼児教育では、規範意識の確立などに向けた集団とのかかわりに関する内容や小学校低学年の各教科等の学習や生活の基盤となるような体験の充実が必要である。他方、小学校低学年では、幼児教育の成果を踏まえ、体験を重視しつつ、小学校生活への適応、基本的な生活習慣等の確立、教科等の学習への円滑な移行などが重要であり、いわゆる小1プロブレムが指摘される中、各教科等の内容や指導における配慮のみならず、生活面での指導や家庭との十分な連携・協力が必要である。

 8.各教科・科目等の内容

(2)小学校、中学校及び高等学校

 5 生活

 (i)改善の基本方針
○ 児童を取り巻く環境の変化を考慮し、安全教育を充実することや自然の素晴らしさ、生命の尊さを実感する学習活動を充実する。また、小学校における教科学習への円滑な接続のための指導を一層充実するとともに、幼児教育との連携を図り、異年齢での教育活動を一層推進する。

 (ⅱ)改善の具体的事項
(オ) 幼児教育から小学校への円滑な接続を図る観点から、入学当初をはじめとして、生活科が中心的な役割を担いつつ、他教科等の内容を合わせて生活科を核とした単元を構成したり、他教科等においても、生活科と関連する内容を取り扱ったりする合科的・関連的な指導の一層の充実を図る。また、児童が自らの成長を実感できるよう低学年の児童が幼児と一緒に学習活動を行うことなどに配慮するとともに、教師の相互交流を通じて、指導内容や指導方法について理解を深めることも重要である。

 

新しい小学校学習指導要領(平成20年3月改正)及び解説(抄) 

※□囲みの記述は「学習指導要領」の抜粋、その他の記述は「解説」からの抜粋

1.総則

 第3 授業時数等の取扱い

1 各教科,道徳,外国語活動,総合的な学習の時間及び特別活動(以下「各教科等」という。ただし,1及び3において,特別活動については学級活動(学校給食に係るものを除く。)に限る。)の授業は,年間35週(第1学年については34週)以上にわたって行うよう計画し,週当たりの授業時数が児童の負担過重にならないようにするものとする。

*1 小学校の入学当初一週間程度は、学校、学級生活への円滑な適応に関する指導のための期間となっている。このため、第1学年は、他の学年とは異なり教科等の授業など(ⅰ)の教育活動を行うのは年間34週以上とされている。(前ページ中教審答申p31より)

 第4 指導計画の作成に等に当たって配慮すべき事項

1 各学校においては,次の事項に配慮しながら,学校の創意工夫を生かし,全体として,調和のとれた具体的な指導計画を作成するものとする。
(12) 学校がその目的を達成するため,地域や学校の実態等に応じ,家庭や地域の人々の協力を得るなど家庭や地域社会との連携を深めること。また,小学校間,幼稚園や保育所,中学校及び特別支援学校などとの間の連携や交流を図るとともに,障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習や高齢者などとの交流の機会を設けること。

・・・学校間の連携としては,例えば,同一市区町村等の学校同士が学習指導や生徒指導のための連絡会を設けたり,合同の研究会や研修会を開催したりすることなどが考えられる。その際,幼稚園や保育所,中学校との間で相互に幼児児童生徒の実態や指導の在り方などについて理解を深めることは,それぞれの学校段階の役割の基本を再確認することとなるとともに,広い視野に立って教育活動の改善充実を図っていく上で極めて有意義であり,幼児児童生徒に対する一貫性のある教育を相互に連携し協力し合って推進するという新たな発想や取組が期待される。
 学校同士の交流としては,例えば,近隣の小学校や幼稚園,保育所,校区の中学校と学校行事,クラブ活動や部活動,自然体験活動,ボランティア活動などを合同で行ったり,自然や社会環境が異なる学校同士が相互に訪問したり,コンピュータや情報通信ネットワークなどを活用して交流したり,特別支援学校などとの交流を図ったりすることなどが考えられる。

2.教科等

(1)指導計画の作成に当たっての配慮事項の具体例


<生活科>

 第3 指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(3) 国語科,音楽科,図画工作科など他教科等との関連を積極的に図り,指導の効果を高めるようにすること。特に,第1学年入学当初においては,生活科を中心とした合科的な指導を行うなどの工夫をすること。

・・・児童の発達の特性や各教科等の学習内容から,入学直後は合科的な指導などを展開することが適切である。例えば,4月の最初の単元では,学校を探検する生活科の学習活動を中核として,国語科,音楽科,図画工作科などの内容を合科的に扱い大きな単元を構成することが考えられる。こうした単元では,児童が自らの思いや願いの実現に向けた活動を,ゆったりとした時間の中で進めていくことが可能となる。大単元から徐々に各教科に分化していくスタートカリキュラムの編成なども効果的である。
 このように総合的に学ぶ幼児教育の成果を小学校教育に生かすことが,小1プロブレムなどの問題を解決し,学校生活への適応を進めることになるものと期待される。入学当初の生活科を中核とした合科的な指導は,児童に「明日も学校に来たい」という意欲をかき立て,幼児教育から小学校教育への円滑な接続をもたらしてくれる。

<国語> ※音楽・図画工作同旨

 第3 指導計画の作成と内容の取扱い

1 指導計画の作成に当たっては,次の事項に配慮するものとする。
(6) 低学年においては,生活科などとの関連を積極的に図り,指導の効果を高めるようにすること。特に第1学年においては,幼稚園教育における言葉に関する内容などとの関連を考慮すること。

・・・幼児期は体験活動が中心の時期であり,周りの人や物,自然などの環境に体ごとかかわり全身で感じるなど,活動と場,体験と感情が密接に結び付いている。小学校低学年の児童は同じような発達の特性をもっており,体験を通して感じたことや考えたことなどを,常に自分なりに組み換えながら学んでいる。
 このような発達の特性を生かし,生活科など他教科等との関連を積極的に図ったり,幼稚園,保育所,認定こども園における言葉に関する内容などを参考にして国語科の指導計画を作成したりすることが必要である。

(2)教科等の目標・内容の具体例

<国語>

 第2 各学年の目標及び内容

 〔第1学年及び第2学年〕

 1 目標
(3) 書かれている事柄の順序や場面の様子などに気付いたり,想像を広げたりしながら読む能力を身に付けさせるとともに,楽しんで読書しようとする態度育てる。

・・・児童は,幼児期に,家庭や幼稚園などで読み聞かせをしてもらっており,お話や物語によっては,その内容を既に知っていることも多い。小学校入学によって文字を習得し,今度は自分の力で本や文章を読むことになる。

<特別活動>

 第2 各活動・学校行事の目標及び内容

 2 内容
 〔第1学年及び第2学年〕
  学級を単位として,仲良く助け合い学級生活を楽しくするとともに,日常の生活や学習に進んで取り組もうとする態度の育成に資する活動を行うこと。

 学級活動の指導に当たっては,このことを踏まえ,学級集団の育成上の課題,いわゆる小1プロブレムなどの就学前教育との接続の課題,いわゆる中1ギャップや「学業と進路」にかかわることなどの中学校との接続の課題に即して,適切な内容を取り上げて計画的に指導する必要がある。

 第2 各活動・学校行事の目標及び内容

 2 内容
 〔共通事項〕
 (1) 学級や学校の生活づくり
  ア 学級や学校における生活上の諸問題の解決
   (以下、略)
 (2) 日常の生活や学習への適応及び健康安全
  ア 希望や目標をもって生きる態度の形成
  イ 基本的な生活習慣の形成
   (以下、略)

 

(1) 学級や学校の生活づくり

 ア 学級や学校における生活上の諸問題の解決
 ・・・児童は,幼稚園や保育所での折り合いをつける経験を基盤にして,各学年の発達に応じてこのような自発的,自治的な活動を積み重ねることにより,よりよい人間関係を築く態度を学び,学級における所属感を一層深めることができる。

(2) 日常の生活や学習への適応及び健康安全

 ア 希望や目標をもって生きる態度の形成
 児童が自分に自信をもち,現在及び将来の生活や学習によりよく適応し,自己を生かそうとする生活態度を育てることは重要である。また,いわゆる小1プロブレム,中1ギャップなどの集団の適応にかかわる問題に対応するため,円滑な学校間の接続に配慮した指導も必要となる。

 イ 基本的な生活習慣の形成
 持ち物の整理整頓,衣服の着脱,あいさつや言葉遣いなど基本的な生活習慣にかとんかわる問題は,幼稚園・保育所との接続に配慮し,児童の実態に応じて適切に指導することが大切である。

(その他)

第2章 特別活動の目標

第2節 特別活動の基本的な性格と教育的意義

 1 人間形成と特別活動

(3) 学校生活における集団活動の発達的な特質を踏まえた指導
特別活動は,集団活動を通して人間形成を図る教育活動であることから,発達課題について理解するとともに,幼児期の発達や指導の状況を理解し,次のような児童期の集団活動の発達的な特質を十分に踏まえて指導する必要がある。

 ア 低学年
児童は,まず学級生活を中心に新しい生活を始める。小学校への入学当初においては,幼児期の自己中心性がかなり残っており,学校の中の児童相互の関係は,個々の児童の単なる集合の段階にある。また,教師と児童との関係が中心で,児童相互の人間関係は少ない。さらには,行ってよいことと悪いことについての理解はできるようになるが,感情的,衝動的な言動が多く,入学期に小学校生活や集団生活にうまく適応できなかったり,このことによって授業が成立しにくい状況が生まれたりするなどのいわゆる小1プロブレムの問題も生じてくる。(略) そこで,教師は,このような低学年の学校生活における集団活動の発達的な特質を踏まえ,いわゆる小1プロブレムにかかわる課題に配慮し,就学前教育との関連を図りながら,例えば,幼稚園教育要領の「人間関係」の領域などの教育や社会性をはぐくむ幼児期の教育との接続を図って,小学校における集団生活に適応できるようにすることが大切である。
 そのためには,入学当初から徐々に大きな集団における幅広い人間関係の中で活動できるようにし,集団で活動する楽しさを味わわせたり,上学年の児童が温かく見守るようにしたりするなどして,安心して学校に通えるようにすることが大切である。

 

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初等中等教育局幼児教育課