【資料1】榎沢委員発表資料

幼児期の教育と小学校教育をつなぐもの

淑徳大学  榎沢良彦 

1.学びの面

(1)幼稚園教育と小学校教育における子どもの学びの相違

<幼稚園>

  • 幼児は状況の中で、それにコミットして学ぶ。
    コミットすること=実行すること・行動すること
  • 「経験知」「身体知」
    幼児は具体的状況に対処できる知識・身体技法を身につける。
    「生きる力」である。
  • これらは具体的な行動と一体となっているものであり、必ずしも言語的な知識として所有されているわけではない。
    具体的状況において行動で示すことはできても、そこから離れて言葉だけで説明することは難しい。

<小学校>

  • 教科学習は、知識が具体的状況から切り離され、抽象化された形でなされる学習
  • 「状況に依存しない学習」
    科学的概念の習得など

(2)験知・身体知から状況に依存しない学習(知識の獲得)へ

  • 経験知・身体知を土台として言語的な知識の体系を構築されていく。
    経験知・身体知はやがて克服されていくべきものではない。人間の発達過程において、それは常に重要な土台として存在している。

(3)言語の働き

  • 「話すこと」は経験知・身体知を言語に表現すること
    自分の体験したことを言葉に表現するとき、状況から離れ、知識を抽出(抽象)する。
    話すことは抽象力を高める。
  • 言語は単にコミュニケーションの道具ではない。それ以上のもの。
  • 話すことは単に情報の授受をすることではない。それ以上のこと。
  • 話す行為は身体全体で行う行為。→話せる身体であることが大事。

(4)幼稚園教育では言葉の表現を育てることを大事にしている

  • 園生活の至る所であらゆる機会に、表現として話すことを育むことが大事。
    生活の中での生き生きとした会話において、言葉の表現は育つ。
  • 表現しようとする意欲を育てることが大事。

2.環境・文化の面

  • 小学校に入学することは、新しい環境・文化にの中に入り、それになじむこと。
    幼稚園に入園したときも同様である。
     子ども達は新しい環境・文化に直面したとき、戸惑いながらも、保育者や保護者、仲間の手助けによりそれに適応してきた。
     小学校という環境・文化にも子ども達は主体的に適応しようとする。
  • 子ども達がそこに「住み着く」ことを手助けすることが必要。
     幼稚園に入園したとき、子ども達がそこに住み着くために教師はどのように配慮し、手助けしてきたのかは参考となるだろう。
  • 「住み着くこと」は人間にとって普遍的テーマである。
  • 子ども自身の主体性と、先に住み着いている者たちの手助けの両者が相まって子どもは新しい環境・文化に住み着ける。
     「子どもを如何に住み着かせるか」のみを考えるのではなく、「子どもがどのように新しい環境・文化に住み着こうとしているか」を考えることが大切。
  • 住み着くことで、子どもは幼稚園で身につけた力を十分に発揮する。

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