【資料2】押谷委員発表資料

幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続のために(若干の提案)

                             昭和女子大学 押谷由夫

1 円滑な接続に関して特に討論すべき幼児期教育の課題

(1) 幼児期教育の独自性を確立しながら、小学校教育との接続をいかに図るか

  • 平成元年の幼稚園教育要領の改訂を機に幼児期独自の教育・保育の確立を強調してきた(小学校教育の準備段階という意識からの脱却、領域概念の弾力化等)
    ※ 生活科の新設もあり、幼稚園教育からの発信を強調しすぎたのではないか

(2) 行き過ぎた知的早期教育にならないように留意しながら、子どもの発達の実態と小学校との接続を考慮した知的発達を促す教育をいかに充実させるか

  • 一部私立幼稚園の行き過ぎた取組や受験対策塾等に流されない教育・保育を強調してきた
    ※ 幼児期における知的教育への尻込みがあったのではないか

(3) 3歳児入園への対応、幼保一元化への対応を充実させながら、小学校教育との接続をいかに図るか

    • 3歳児に傾斜した幼稚園経営
    • 幼児期教育における保育的要素を重視
      ※ 小学校との接続という視点からの取組が弱くなっていたのではないか

2 円滑な接続を図るための若干の提案

(1)  かかわりを広げ深める活動や体験を充実・発展させ円滑な接続を図る

  • 幼稚園・保育所で求めるかかわり(先生や友だちと触れ合う、生活に必要な活動・病気の予防などに必要な活動を自分でする、友だちとのかかわり、自分の生活に関係の深いいろいろな人に親しむ、自然・物・動植物に触れる、絵本や物語などに親しむ、美しいものや心を動かす出来事に触れる、いろいろな素材に親しむ)
  • 生活科の目標(人々、社会、自然とかかわる体験を通して、自分自身や自分の生活を考え、生活上必要な習慣や技能を身に付け自立への基礎を養う)
  • 道徳の指導(自分自身、他の人、自然や崇高なもの、集団や社会とのかかわりを豊かにするための道徳性の育成)

(2)  かかわりの中から見えてくる芽生えを確認し、根を丈夫にするとともに、芽の成長を支える(ほう助する)という視点から接続を考える

  • 幼稚園教育要領に使われている「かかわりに関連する言葉」から考える
    (興味や関心をもつ→見る、触れる、聞く、親しむ、楽しむ、味わう、→感じる、気付く、発見する、共感する、考える→表現する、演じる、かく、つくる、試す、生活に取り入れる、大切にする、取り入れて遊ぶ、身に付ける)
  • その中で、ことばの認識、数の認識、他者の認識、自然や生き物の認識、集団や社会の認識、場の認識、自分の認識等を深めていくための環境づくり、働きかけを、遊びを中心として総合的に図るとともに、それぞれを意識して計画的に取り組む
  • 学年が上がるにつれて、協同活動、共有化を重視する(縦割り活動も工夫する)
  • かかわりを深める中で、思考力・判断力・表現力、社会性、道徳性などをはぐくんでいく。
  • 身に付けるとなっているものは、習慣化できるように指導する(家庭と協力して)
    (健康、安全な生活に必要な習慣や態度、社会生活における望ましい習慣や態度)

(3)「無自覚的学び」の中に「自覚的学び」を取り入れる(特に年長児に特化した指導計画の作成)

  • 年長になれば、あることにかかわって、興味関心をもったことを、調べたり、取り組んだり、振り返ったりすることを意識的に行うことによって、学びが自覚できるのではないか。
  • 例えば、年長の教室で、勉強の時間として毎日30分くらい設けてはどうか。そこでは、特に言葉の指導、数の指導、自然観察等を生活体験をベースとしながら計画的に行う。
    (特にすべての学習の基礎になる言葉の学習は、幼児教育修了段階で全員を一定の水準まで上げておく必要があるのではないか)
    (幼児は遊びの中ですべてのことを学ぶことができるが、小学校での教科ごとの勉強に違和感を感じるとするならば、幼稚園段階で勉強を意識させ、それは遊びと同じように楽しいものだと実感させることが大切。そのことで遊びの特質を教科の学びの中にも活かしてくれるのではないか)
  • 長期的にテーマをもたせた調べる学習やつくる学習などを行うことやその発表を行うことも考えられる(すでに部分的には行われているがそれを計画的に行う)
  • 家庭でのことば文化や学びの文化づくり、家庭環境づくりへとつなげる

(4)環境を通しての教育を連続化する

  • 環境を「幼児たちが創る環境」「幼児と教師がともに創る環境」という側面を強調すると、この環境を授業も含めてとらえれば、小学校とつながってくる。また家庭でも適応できる。

(5)小学校との交流体験を明確にする

  • 例えば、「年長クラスは、小学校と連携して10日間の交流体験を行うものとする」といった明確な指針を示す必要があるのではないか。

(6)見通しをもって生活し一日を振り返る訓練をする(道徳性の芽生えをうながす基本的取組でもある)

  • 朝の確認、帰りの振り返り
    (朝の確認のしかたや帰りの振り返りの方法を多様に工夫する)
  • 役割行動の認識、
  • 生活のリズムの確立
  • 家庭との連携

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