【資料1】奈須委員発表資料

幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について

 

上智大学 奈須正裕

 

1 幼保小連携を巡る4つの位相

a.カリキュラム1:「何を学ばせるか」「何が身に付くか」
      教育内容の水準:学習指導要領、幼稚園教育要領、保育所保育指針
b.カリキュラム2:「どのような活動を組織するか」
    教育活動の水準:年間指導計画、単元
c.教育方法:「何をどう支援するか」
    教師の振るまいの水準
d.教育観:「子どもをどのようにまなざすか」「学校(園)は何をするところか」
   教育理念・学校風土の水準
※4つは相互に密接、複雑に関連してはいるが、概念的には明晰に区分、整理しながら議論や作業を進めるのが得策では?

 

 2 「カリキュラム1」を巡って

  1. 学習指導要領、幼稚園教育要領、保育所保育指針の編成原理(特にスコープに関して)の明示化と共有化
  2. 個々の内容項目レベルでの照合による段差の有無(同一項目でギャップはないか)と接続(相互に対応する項目はあるか)の確認

※幼と小では項目の記述のきめ細かさが異なるので、子どもの姿で検討してみると・・・

 

兵庫県三木市立口吉川幼小の研究開発
環境(8)「日常生活の中で数量や図形などに関心を持つ」
実践記録の子どもの姿から、より詳細に子どもの学び、育ちを書き下してみると・・・
「生活の中で数の必要性や便利さに気付き、身近なものの数を数えたり、比べたり、分けたりする」
「身近な物の量を比べたり、自分なりに測ったりする中で、量への感覚を豊かにする」
「身近な物の色や形に興味を持ち、分けたり集めたりして遊ぶ」
ギャップはないどころか、十二分な学びを実現している!
もっと小学校に知って欲しい
その一方・・・「関心を持つ」でいいのか?
幼:文字通り「関心を持つ」に留まっている実践はないか?
小:誤解を生じる可能性、伝わらない幼保での豊かな学びの実相

 

3 「カリキュラム2」を巡って

  • 幼小における単元構成原理の違い
    幼:子どもの遊びや生活を基盤に、彼らの興味・関心から活動を組織し、活動展開の先で教師から見ても価値ある学びを生み出す
         子ども→活動→内容  という順序:「経験単元」的
    小:価値ある内容の実現に適した活動を教師が考案し、導入の工夫等によって、子どもにとっても意味のあるものとする
       内容→活動→子ども という順序:「教材単元」的
    ※この違いが2つの問題を生み出している
  • 1.幼小間での単元構成の在り方に関わる誤解や批判の解消
      小→幼:「遊ばしているだけ」「何も教えていない」
      幼→小:「教師主導」「教え込み」「堅い」

  • 幼:活動組織や環境構成を通して、さらに支援によって、子どもが「何を学んだのか」を丁寧に記述し、小学校にも伝えたい
  • 小:改めて幼児教育の教育方法に学びたい!

遊びや暮らしを基盤に学びを紡ぎ出すことを教育方法上の原理としている生活科の授業の質的向上にも大いに貢献
「探究」=「問題解決的な活動が発展的に繰り返されていく一連の学習活動」「物事の本質を見極めようとする一連の知的営み」は、ある意味で幼稚園的なのでは?
すべての各教科等の指導における、「もう一つの」教育方法の確立につながる

    2.一つの単元で実現を見込む内容が属する範囲(スコープ)の違いへの対応
    幼:活動→内容 なので、一つの単元で実現される内容は5領域をまたぐ
    小:内容→活動 なので、一つの単元で実現される内容は、原則として特定の各教科等の枠内に留まる

  • 小学校の単元構成では、「合科的・関連的な指導」がすべての各教科等について認められて(低学年では積極的に推奨されて)おり、すでに法令上は単独教科の枠内に学習活動を閉ざすようにはなっていない

→ 小学校における「経験単元」的発想の、なおいっそうの浸透が望まれる

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