幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議(第8回) 議事要旨

1.日時

平成22年7月16日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3階第1特別会議室

3.議題

  1. 幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について

4.出席者

委員

無藤座長、秋田副座長、岩立委員、榎沢委員、太田委員、岡上委員、神長委員、神村委員、岸本委員、木下委員、嶋田委員、角田委員、奈須委員、北條委員、山本委員

文部科学省

金森初等中等教育局長、德久大臣官房審議官、濵谷幼児教育課長、先﨑幼児教育企画官、梶山教育課程企画室長、津金幼児教育課教科調査官、湯川幼児教育調査官 他

オブザーバー

(厚生労働省)丸山保育指導専門官

5.議事要旨

  • 事務局からの配付資料の確認及び秋田副座長からの「幼児教育講演会 小学校への移行を保障する」の開催案内の後、幼児期の教育と小学校教育との接続に関して協議等が行われた。その概要は以下のとおり。

(1)幼小接続に関する論点について、本協力者会議におけるこれまでの主な意見を整理した資料を基に、協議が行われた。主な意見は以下のとおり。

○「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の重要性」に、「体系的な教育が組織的に行われることが必要」とあるが、「組織的」という表現が小学校は小学校、幼稚園は幼稚園という意味合いにとられるといけないので、「保育所、幼稚園と小学校との連携のもとで」などを加えて丁寧に表現したらどうか。
○「幼児期から小学校にかけて身に付けてほしい力」に、「幼児期から小学校にかけて一番重要なのは、子どもがどう意欲的に学習に向かってくれるようになるか」とあるが、何をもって一番というのかということがあるので、少しニュアンスを弱めたらどうか。
○学びの基礎力の構成要素として、興味、自己統制、気付き、協同があげられているが、子どもが自己表現できる部分も重要なので、その部分を入れるべきではないか。
○平成元年の幼稚園教育要領が小学校との接続や教師の指導性を低く抑えたという根拠はないのではないか。幼児教育の独自性を明確にし、今後の幼小連携への発展の基礎をつくったところを評価すべきではないか。
○自己統制という言葉は、自分を抑えるというイメージが強いので、例えば、集中する力や自尊感情など、もう少しプラスの自分を発揮できるような力といった表現があるとよいのではないか。
○小学校での小1プロブレムなどでも結局、いかに集団としての力を発揮できるかというところにかかっているので、指導方法、指導体制のところに、学級経営力、人間関係をつくっていく力を発揮していくことの必要性にふれてほしい。
○自己統制についてだが、自己発揮という言葉を入れたらどうか。また、「幼児期の教育と小学校以降の学校」という表現は、「幼児期の教育と小学校以降の教育」に修正した方がよい。
○幼児期の教育では規範意識の確立などに向けた集団とのかかわりが重要であり、小学校の学習や生活の基盤となるような体験を意識的に考えて実施していく努力が必要。小学校教育では、幼児期の教育の成果を踏まえ、基本的な生活習慣等の確立を図りながら、教科等の学習への円滑な移行をしていくことが必要。幼小のそれぞれの段階においてその役割をしっかり果たすとともに、それに加えて、幼小が互いに協力していくことが重要である。
○幼小の関係者間で議論が活発に行われるよう、接続期という用語をもっと使用すべきである。また、幼児教育と小学校教育の接続の原理や留意点を明確なメッセージとして提示することが必要と考える。
○人とのかかわりについては、集団で共通の目標をもって、子ども同士が協同していくことが重要である。ものとのかかわりについては、探究的な視点からの実践を深めること、問題解決的な活動の繰り返しを意識させて、学びを意識化していくことが大切である。
○自己統制については、子どもが我慢するというニュアンスで考えない方がよい。アメリカでは自分を調整しながら主体的に学ぶという意味でセルフレギュレーションという言葉が使われているのでそのニュアンスで考えればよい。うまくやれていないが、うまくやれるようにしようとする学びを幼児期でしっかりやろうということは小学校以降の学習にとっても大事なことであり、勉強は我慢するものだといった概念を変えていく意味でも大事である。
○幼児は互いに刺激しあって遊んでおり、協同的な状況ができている。興味についても、そうした協同的な生活の中で、みんなで興味をつくっている。子どもの協同性がどう育っているかを見ずに、先生がテーマを与えましょうとなると、幼児期の育ちとしてはよくない。幼稚園教育の中で実際に行われている子どもの育ちの捉え方をきちんと踏まえる必要がある。
○自己統制には、自己実現や自己主張の面も入ると思うが、ポジティブな面を強調することはよいと思う。協同の中に自己統制が含まれるとするのは難しいので、別に考えるべき。幼児期の無方向的にエネルギーが放出されていくことの大切さをうまく伝えられるとよい。
○単元構成原理についてだが、子ども、活動、内容という分け方で見るのは誤解が生じる。ねらい、内容、活動は、幼稚園でも小学校でもあって、それら全てに対して子ども中心に考えていくことがカリキュラムを考える上では必要である。
○幼小をつなぐときには、考える力や自分なりに表現する力を育成することの重要性を明確に打ち出していくべきである。
○接続期の具体的時期、特に始期については、各幼稚園等の実情に即したものを設定すべきであり、明確にいつからと示すのはどうかと考える。
○自己統制については、自分をコントロールするとともに、いろいろな状況をアレンジしたり、自分で考えながら調整したりということもあるので、自己調整という言葉も考えられる。
○探究心、興味の育成については、幼児教育のカリキュラムの中にしっかり入れていくことが必要。それが協同して学ぶことや自己統制力につながる。単元の構成や集団の捉え方は幼児期の教育と小学校教育とで異なっていると思うが、現場の先生方が受け止められるような言葉として整理することが必要である。
○学びの基礎力を考える上で、人とのかかわり、ものとのかかわりという視点は重要。特にものとのかかわりについては、子どもが探究的に物事にかかわっていくことが重要である。
○自己統制については、子どもが挫折感や葛藤を味わっても、もう一度気持ちを立て直して自分が実現したいことにかかわり続けるということが重要だと考える。
○子どもの興味は遊びや行動になって表れるものであり、こうしたことを幼児教育では大切にしている。接続期では、子どもの興味を幼小でどうつなげていくかを考える必要がある。
○単元構成原理というようなパターン化した表現は誤解を招きやすいので吟味が必要。小学校生活科で強調している気付きの質を高めていくことが幼小接続を進める上で重要である。

(2)小学校におけるスタートカリキュラムについて、事務局からの資料説明の後、協議が行われた。主な意見は以下のとおり。

○保護者の意識が子どもたちに与える影響はとても大きいものがあるので、スタートカリキュラムの取組において、保護者との連携を深めることを位置付けることは重要だと考える。
○スタートカリキュラムについて、小学校低学年全体の指導と幼児教育をつなげるという視点での取組はあまり見ない。スタートカリキュラムは適応指導を長くやるという意識からまだ出ていないのではないか。
○小学校にはスタートカリキュラムについて1週間で済んでいたものを1か月に延ばさないといけないというような意識があるのではないか。幼児期の学びの成果を小学校でいい形で花開かせるカリキュラムだというような考え方に変えていくことが必要。小学校の初期のカリキュラム全体を構造的に見直して、学びの打ち立て方を変えていくものだというようにしていくことが必要である。
○小学校では、幼稚園や保育所での取組を理解し、教科の学習指導や授業を変えていく努力が必要である。
○幼小の円滑な接続のためには、指導要録を活用するなどにより、情報をお互いに共有することが大切であり、いつどのようにしたらいいかということも考えていくことが必要である。

  • 座長から、本日の会議での御意見を含め、これまでの議論を整理した上で、検討作業を更に進めるため、本協力者会議にワーキンググループを設置することについて提案があり、資料3のメンバーによりワーキンググループを設置することが承認された。
  • 座長から、今後、ワーキンググループにおいて検討を進めることとし、このワーキンググループでの検討結果を本協力者会議で報告の上、それを基に協議を重ね、最終的な報告書にまとめていきたい旨、説明があり、閉会した。

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初等中等教育局幼児教育課