幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議(第4回) 議事要旨

1.日時

平成22年5月6日(木曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省3階 第1特別会議室

3.議題

  1. 幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について

4.出席者

委員

無藤座長、秋田副座長、赤石委員、岩立委員、太田委員、岡上委員、押谷委員、神長委員、神村委員、岸本委員、木下委員、河野委員、嶋田委員、角田委員、奈須委員、北條委員、向山委員、山本委員、湯川委員、若盛委員

文部科学省

金森初等中等教育局長、濵谷幼児教育課長、先﨑幼児教育企画官、梶山教育課程企画室長、湯川幼児教育調査官、津金幼児教育課教科調査官 他

オブザーバー

(厚生労働省)丸山保育指導専門官

5.議事要旨

  • 事務局からの配付資料の確認の後、幼児期の教育と小学校教育との接続に関して、委員からプレゼンテーションが行われた。その概要は以下のとおり。

(1)奈須委員から、幼児期の教育と小学校教育との接続に関して意見発表があった。その後、質疑応答が行われた。

(○は委員の質問、●は発表者からの回答)

○ カリキュラムの編成原理の明示化が必要とのことだが、例えば、台湾では子どもの行動水準を示しているし、韓国では「~ができる」という示し方をしている。現在の幼稚園教育では、心情、意欲、態度の育成を最優先にしているが、今後の方向性として、編成原理を文章で示すのと、「~ができる」と示すのとどちらがよいと考えるか。
● 我が国の場合、国レベルの示し方は豊かさと曖昧さを持っているが、このような示し方でも各園が工夫して実践し、幼稚園教育が成り立っているのであれば「~ができる」といったような変更は必要無いかもしれない。ただ、幼稚園教育要領の「関心を持つ」という示し方は、どんな作業や思考をしているのか、幼稚園関係者はともかく小学校関係者などには伝わらないので、もっと外に伝える努力をするとともに、示し方について検討の余地がある。

(2)湯川委員から、幼児期の教育と小学校教育との接続に関して意見発表があった。その後、質疑応答が行われた。

(○は委員の質問、●は発表者からの回答)

○ 幼稚園の教育時間が4時間を標準とされている経緯について教えてほしい。
● 資料2にもあるとおり、当初は昼休みを含めて5時間であった。明治44年に教育時間の規定が外れて以降、戦前は教育時間の規定は無かった。戦後も当初、教育時間は規定されていなかったが、小学校の授業時数が示されていることに合わせて、昭和27年の幼稚園基準で示されるようになり、その後、小1の時数も勘案しつつ、幼稚園教育要領でも教育時間が規定されるようになった。

(3)赤石委員から、幼児期の教育と小学校教育との接続に関して意見発表があった。その後、質疑応答が行われた。

(○は委員の発言)

○ 本日発表の幼稚園での実践は、小学校の生活科での身近な自然を利用して遊びや遊びにつかう物を工夫してつくる活動や図画工作での造形活動と相通ずるものがあると感じた。

(4)河野委員から、幼児期の教育と小学校教育との接続に関して意見発表があった。その後、質疑応答が行われた。

(○は委員の質問、●は発表者からの回答)

○ スタートカリキュラムの期間はどれぐらいか。また、資料4のp6のスタートカリキュラム例の中の「環境」は、幼稚園教育での環境とは異なると考えるがどうか。
● 市で作成した教育課程の編成要領では、スタートカリキュラムの期間は入学当初から1、2か月と示しているが、実際の期間は学校の実態に応じ設定しているため、各校で異なる。また、資料4のp6の「環境」は幼稚園教育での環境とは異なるが、小学校生活への円滑な適応のため、項目を立てて示している。
○ 市内に私立幼稚園が104園あるとのことだが、私立幼稚園との協力方策はどうなっているか。
● 市の幼児教育振興協議会に、私立幼稚園関係団体の会長が参加するとともに、公私立の保育所も参加している。幼児教育関係団体と協力しながら保幼小連携推進プログラムを進めている。
○ 小学校教員が幼稚園や保育所に派遣される研修はどのようなことをされているのか。小学校から幼稚園への派遣等の研修に関する調査をしたことがあるが、幼稚園や保育所に短期間派遣しただけでは取組を見ただけになってしまう。派遣前に研修のポイントを示すなどの工夫が必要ではないか。
● 公立幼稚園1園と小学校で人事交流を行っている。小学校から3年間幼稚園に派遣し、その後、小学校に戻って指導するというものである。市として研修の視点を示して、幼稚園や保育所でどんなことをやっているかを見てもらい、協議することが必要と考えている。

(5)各委員からの意見発表及び質疑応答の後、全体を通じた意見交換が行われた。その概要は以下のとおり。

(○は委員の発言(発表者への質問を含む)、●は発表者からの回答)

○ 資料2に複数のカリキュラム表が掲載されているが、これらは全て同じレベルのものか。また、資料2の表3の「第一保育期」の期間はどれくらいなのか。表中の第1週、第2週、第3週でそれぞれ作業時間が異なっているが。
● カリキュラム表は時代を経るにつれ、質的に深まりが見られる。指導計画的なものは「系統的保育案」からであり、それまでは週案レベルが作成されており、主題を決めて流れをつくっていたところである。第一保育期というのは、今でいう1、2、3学期のようなものであり、表中で週ごとに作業時間が異なるのは当該週のみならずその後の週も継続的に指導していくため、主題によって作業時間が異なっている。
○ 資料2の表1の保育課程表で数え方、読み方、書き方とあるが、これらはどのような内容を指導していたのか。また、過去には、日本では幼稚園に接続級を置き、欧米では、小学校に接続級を置いていたとのことだが、これは、欧米では、小学校教育の準備教育として接続級を位置付けていたということか。
● 数え方、読み方、書き方については、詳細までは分からないが、当時、幼稚園と小学校との教育内容の共通化の流れがあり、現在の小1当初くらいの指導はしていたと思われる。欧米の接続級については、幼稚園修了後、継続して徐々に小学校教育に適応するようにという考え方によっている。
○ 幼小連携は、子どもの発達やカリキュラムの研究実績から検討した上で、結果としてつながっていくものだと考える。連携ありきではないと思う。目の前の子どもの発達を大事にして連携の在り方を考えたい。
○ 小学校の幼稚園化が必要なのかどうか。幼稚園児や小学校1、2年生の頃は生き生きと学習に取り組んでいたのに、学年が進むにつれ、知的好奇心から離れていく現実がある。幼児の頃と同じように喜々として学ぼうとする意欲を小学校でどう持たせることができるか。義務教育である小学校でも生活科や総合的な学習の時間があるが、教育課程全体に占める割合は少ない。子どもの興味をどう伸ばすかが大切である。
○ ザリガニの絵を描こうという実践をしたことがあるが、4分の1の幼児がザリガニの絵を描きたくないのでいなくなってしまった。幼稚園の先生なら、1か月前から絵本を読んだり、お話をしたりして絵を描くに至るまでの導入をきちんとやって、幼児も「さあ描こう」という気持ちになる。こうした配慮は小学校に欠けている点である。子どものやりたい気持ちを大切にすることが小学校にも求められている。
○ 小学校の幼稚園化とは具体的に何を指しているのか。幼稚園も小学校も関係なく質の高い教育を保証するために、子どもが実施できる内容や環境を整えることが求められるもので あり、ただ単に低学年に遊びを入れればよいというものではない。また、領域「人間関係」の協同的な遊びだけに国立大学附属幼稚園が焦点化して研究を進めるのはどうなのか。一部分だけでなく全体を捉えて取組を進めるべきではないか。
○ 資料3-2のp2に、協同して遊ぶようになる過程が示されているが、小学校1年生では集団が変わるので、改めてこの図の第1期に戻り、第1期、第2期、第3期を再び繰り返すことになると思う。ただ、幼稚園で一度経験しているため、らせん状に学習が深まっていくので、全く同じことを繰り返すわけではないと考える。
○ 協同して遊ぶことが全てではないと考えているが、他者とのつながりが基盤にあると考える。子どもと環境をつなぐ可能性を議論したい。人間同士が集団を構成し、安心できる環境で子どもは集中して遊ぶことができ、友達と探究ができる。国立大学附属幼稚園の研究はこれが始まりであり、これから本格化していく。
○ 子どもの成長は幼稚園でも小学校でも決して相反していない。例えば数量等の概念を精緻にするなどは幼稚園教育らしくないと言われるが、子どもが自分らしくしていく、世界の精緻化を図るのは幼稚園とか小学校とかは関係ない。幼稚園と小学校の違いを対立的に捉えると子どもの実態から離れていくことになる。幼稚園では、情緒的、身体的なものを重視し、知的なことをあえて避けているが、生活を足場に学びを築いていくことなどを含め、子どもの成長の視点からは、幼稚園も小学校も同じ方向を向いているはずである。
○ 資料3-1の事例3の実践の写真に、文字がでてくるが、子どもは文字を理解できるのか。
● この実践は5才の8月であり、子どもは読むことに興味を持っている。絵本のことばの感覚は育っている。先生が読んだことをみんな言ってみたいと思っている。考えたことを文字と結びつけることができる環境を用意するため、□の欄はわざと空欄にしており、子どもが言ったことを先生が書き込めるようにしている。子どもは自分の考えが文字で表現できることをうれしいと感じる。
○ 幼稚園では文字を教えない印象があるが、文字を使うことにより言葉のイメージを共有化できると思う。
○ 本日発表があったように、カリキュラムを1と2に整理して考えていくことに共感する。幼稚園では、子どもの学びの姿はいくらでも言うことができるが、それがねらいだと言われると抵抗感を持つ人もいる。確かに現行の幼稚園教育要領のように「関心を持つ」では、抽象的で若い教員には伝わらないので、何か言葉をつくって、はっきり言わないといけないかもしれない。ねらいと言うとどうしても誰もがそこに達しなければならないという印象があるので、抵抗感があるのではないか。
○ 幼稚園と小学校の教師の専門性や風土の問題があり、その違いを克服するため、行政レベルでの言語をどのように示せば教育現場に浸透するかを考える必要がある。
○ 現場の実践の中で伝えていくことはできると思うが、行政レベルの言葉をどう変えたら、現場にうまく伝わるかはなかなか難しい。

  • 座長から次回の会議も引き続き各委員から幼児期の教育と小学校教育との接続についてのプレゼンテーションをお願いする旨、発言があった。
  • 事務局から次回の会議の開催日時について説明があり、閉会した。

 

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