幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議(第1回) 議事要旨

1.日時

平成22年3月19日(金曜日)15時~17時

2.場所

学術総合センター 2階会議室

3.議題

  1. 幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について

4.出席者

委員

赤石委員、秋田委員、岩立委員、榎本委員、太田委員、岡上委員、押谷委員、神長委員、岸本委員、木下委員、河野委員、嶋田委員、角田委員、奈須委員、北條委員、向山委員、無藤委員、柳委員、山本委員、湯川委員、若盛委員

文部科学省

金森初等中等教育局長、德久大臣官房審議官、濵谷幼児教育課長、先﨑幼児教育企画官、梶山教育課程企画室長、湯川幼児教育調査官、篠原幼児教育課教科調査官 他

オブザーバー

天野保育指導専門官(オブザーバー)

5.議事要旨

  •  金森初等中等教育局長から、本協力者会議の開催に当たって挨拶があった。
  • 濱谷幼児教育課長から、本協力者会議の実施要項について説明があった。
  • 事務局から、委員及び事務局のメンバーの紹介があった。
  • 本協力者会議の座長に無藤委員、副座長に秋田委員が委員の承認を得て選任された。
  • 会議の公開については、資料2「会議の公開の取扱いについて(案)」が案のとおり承認された。会議資料は原則として公開とし、会議の傍聴は、あらかじめ幼児教育課に登録すること等とされた。
  • 事務局から、配付資料の確認の後、幼児期の教育と小学校教育の接続に関する現状等について説明があった。その後、委員から幼児期の教育と小学校教育の接続について、それぞれ発言があった。
    その概要は以下のとおり。

(○は委員の発言)
○ 協同して遊ぶようになることについて、子どもと教師の双方向性を大切にした具体的な活動の記録を追って分析している。今後、幼稚園での活動が小学校の学習場面とどのように結びついていくかを整理したい。
○ 幼児期から児童期にかけて何を育てるかについて重要なのは、対象へと向かう基礎力となるわくわく感や楽しさなどの感情や動機付け、それから信頼から協同へという関係性をまず育てたい。幼児期から児童期はメタ認知のような力が育ってくるので、それらを生かした形で内容的にも学びが深められるのではないかと考える。
○ 小学校低学年の指導方法に問題がある。小学校低学年の担任教員が幼児期の子どもの指導法を学ぶことで指導法上、うまく小学校低学年につなげられる部分がたくさんあると考える。
○ 保育所、幼稚園、小学校の関係者の懇談で、小学校入学前の状況について、小学校の教員は子どもの状況もさることながら、保護者の状況について大きな関心があり、クラス決め等の参考にするとのことであった。保幼小の連携充実には、まず幼保の相互理解が重要であり、その上で小学校との連携がスムーズになればよいと考える。
○ 幼児期の教育と小学校教育との連携はいろいろな資料が作成されており、連携は既にできているのではないだろうか。幼稚園は幼小の連携について積極的に動いてきたが、必ずしも進んでいないというのであれば、その原因の一つは、幼稚園、小学校の教育課程の基準に、幼小の接続が具体的な形で位置付けられていないからではないか。
○ 教育基本法第11条で幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることが明記されているが、その具体化、つなぎ方が大きな課題である。小学校において遊びの要素を取り入れることは重要だが、幼稚園においても遊びの中で特にこの部分はしっかりやっていこうというような計画的な指導の実施が必要ではないか。
○ 幼児期から小学校にかけて育てておくべき力は自立と協同ではないか。幼児一人一人が経験していることなどを大切にする幼児教育と、それぞれの持っているものを刺激し育ちあいながら一つのものを作り上げていく小学校の授業風景はかなり異なる。しかし、5歳児でも自立と協同の姿が見られるので、その姿が1年生の学習にどうつながっていくのか共通理解を図ることが接続の上では重要である。接続期は、幼小の違いがあるからやらないといけないというより、むしろこの時期の取組を強化することにより教科学習が楽しくなるという視点から捉えるべきではないか
○ 5歳児の遊びを整理して、5歳児の教育課程を整えることが大切である。これまでの幼小の連携実践から子どもからの発信情報をきちっと受け取り、それによって教師自身が変わり、そして教師集団の意識を変えていく。それがあって初めて指導内容や指導方法が変わってくるのではないか。
○ 6年前から保育所と近隣の公立小学校とで独自の連携活動を行っている。その中で、保育所での遊びの体験が学びに対する意欲につながっている行動を多くの事例から見いだした。保育所で培った子どもたちの経験をいかに学びの意欲につなげていけるかは、教員と保育士の相互理解がないと進めていけないということが分かった。大人同士の連携がこの支えに影響していくのではないか。
○ 小学校教員をやっていたときには、授業中に子どもに遊んではいけないと伝えていたが、就学前において朝から帰りまで子どもと遊ぶということが理解できなかった。遊びの教育的価値を理解することは至難のわざかもしれないが、接続に関する教育課程をしっかり位置付けることができれば、遊びなどへの理解が進み、子どもの姿から学ぶことができるのではないか。
○ 3年前から保幼小連携の研究指定を受け、連携について取り組んでいる。そこでは、保幼小連携について入学時からチャイムや教科といった枠で捉えるのではなく、幼児期からの学びをうまくいかしながら、学校に慣れるように遊びを通して、時間を弾力的に運用する等の工夫など、研究成果を広めていこうとしている。
○ 教育要領や学習指導要領など基準上での連携接続はよくできているが、現場の実態としては相当乖離しているのではないか。幼小のギャップを埋めるための努力を具体的にしていかないといけない。5歳児の後半と6歳児の前半、このあたりを小学校教育でいえば、生活科だけで補うという考え方では通用しなくなってきているのではないか
○ 幼小連携は、これまでも研究開発学校で研究が行われ、その研究成果が生活科の創設にもつながった。研究開発学校の取組をもう一度振り返り、何が分かっていて、課題として何がまだ残っているのかなどを整理して検討を進めていく必要がある。
○ 小学校教育のスタート段階でのギャップにどのようなものがあるのか、子どもの経験のレベルで明らかにする必要がある。これは保育の実践記録や現場の実感等を積み上げて、保管していくことが大切だと考える。
○ 幼小の段差はあってよいと考える。5歳児の教育方法を教科学習的なものに変えていくということはやるべきではないし、やっても成果はあがらない。小学校1、2年生のあたりは教育方法の移行期だという認識を教員も保護者も持てるようにすることが大切ではないか。
○ 幼小連携では「家庭の保護者の問題」「教員の連携」「子どもの実態把握」の3つの難しさを感じている。幼稚園教育担当の指導主事をしたことがあるが、小学校教員でありながら、幼稚園の側から小学校を見るというのはこんなに景色が違うのかと驚いた。幼小連携といっても、その景色の違いを実感していない人たちが、特に小学校に多いのではないかと思う。
○ 私の小学校では1年生の接続を考えて、「入門期」という言い方で生活科の倍以上の時数をかけて総合的な学習を展開している。毎日、そうした学習の時間があるということで、入門期としてのふさわしい教育課程が編成できている。今着目しているのは、子ども自身が自分でこれをやりたいとか、これができたんだといった、自尊感情に着目した実践である。
○ 保育所でも、カリキュラムの接続が足りていないところがあり、接続はカリキュラムの連続性が大切である。現代の子どもや大人の姿から見える課題を踏まえた、育むべき子どもの姿が具体的でないところに課題があるのではないか。幼児期から子どもの成長を積み上げていくといった視点からの連続性を期待する。
○ 歴史を振り返ると、過去にも幼小連携接続の問題が取り上げられ、大正・昭和にかけては、実際にカリキュラムもつくられ実践されている。戦後もコアカリキュラム運動があったときに、連携カリキュラムがつくられている。しかし、それらの取組は実際には長続きしていない。どうして全体にそれが行き渡らないのか、うまく実行できないかといった問題を掘り下げて整理することが必要である。
○ いわゆる小1プロブレムの発生理由で、家庭におけるしつけが十分でないという調査結果があるが、これは学校から見たニュアンスだと思う。学校がどれだけ親身になって保護者への伝え方に取り組んでいるのか疑問である。これからは教員の相互理解、緻密な計画の下での交流の取組が必要になる。
○ 文部科学省のアンケート結果で「幼小接続を推進するため、特定の時期を接続期として捉え、双方が協力して教育課程を編成していることが必要か」という設問に、6%の市町村が「必要でない」と回答しているが、その理由に興味がある。
○ 幼保の立場の違いということであれば、日本には幼稚園、保育所、認定子ども園と3つの要録が存在するが、それがかえって混乱を招いているのはないか。
○ 小学校の授業研究を見たことがあるが、授業後、小学校の教員が指導案の指摘をしていた。私は子どもたち一人一人の表情や反応を見ていた。ここにまなざしの違いがあり、その違いが幼稚園・保育所で育ってきた子どもたちを小学校の中でうまくいかしきれていないのではないか。幼稚園と小学校の教員が一緒に連携の取組をどのようにしていくかというプロセスの在り方が接続を考えていく際に重要なのではないか。
○ 親が幼児期から学校に行くということはどういうことかを理解し、学校も幼小にどのような差異があるのかを理解することが大切である。接続に関する課題の中で最優先で取り組むべき課題は、県市の指導主事が幼児期の教育と小学校教育の両方が分かる力を身に付けることではないか。幼児期の教育が小学校教育の具体的にどのような学習活動の場面と結びついているのか。小学校の教科等の「等」に含まれる特別活動や道徳に幼児教育は大きく寄与しているのではないか。

  • 事務局から次回の会議の開催日時について説明があり、閉会した。

 

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