「今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する」意見(全国へき地教育研究連盟)

「今後の学級編制及び教職員定数の改善に関する」意見

全国へき地教育研究連盟
会長  梅木 登喜雄

 教育現場における教職員定数に関わる改善は、多くの教育関係団体から従来より要望があるように共通の願いである。今日、教育を取り巻く多くの課題解決のためにはまず物理的な面からの改善が何よりも必要であり、そのための人的配置の改善は、多くの課題に対応するばかりでなく、教育の質的な側面をも改善する大きな要素であることは間違いのないところである。

 また、義務教育を基盤とした我が国の教育の在り方を展望する時、現在、社会に生じている様々な格差を教育に反映することなく、義務教育の根幹である「機会均等」「水準確保」「無償性」を担保しつつ、国は責務として国家戦略に位置付けて取り組むことが大切である。

 現実には、教育費や教育条件整備に関わる諸問題が、各都道府県、各市町村等において温度差が生じている。また、都市部や郡部、離島間での格差も見られ、へき地における教職員の人事に関わる課題も尽きない状況である。

 こうした教育状況を背景に、ここでは特に、私ども全へき連が抱える課題の一つである「へき地教育や複式教育に関わる」視点から、いくつかに絞って意見を述べる。 

【全へき連としての見解】

(1)学級編制に関わって

 現行の複式学級編制基準は、

<小学校>
 ・複式学級~他の学年の児童と合わせて16人までのときは、これをもって1学級を編制する。但し1年生を含むときは8人とする。

<中学校>
・複式学級~他の学年の生徒と合わせ8人までのときは、これをもって1学級を編制する。

である。全へき連は、従前から、この編制基準を改善するために下記の点について要望を行ってきた。しかし、財政的な面から一向に改善がみられていないのが現状である。

    [1] 複式学級編制基準の改善
    [2] 小学校1・2年の複式学級の解消
    [3] 小学校2・3年、4・5年の変則複式学級の解消
    [4] 中学校の複式学級の解消

 今回、このような機会を得たので下記の点について、改めて、要望し、特に複式学級編制基準の改善につながるよう期待している。

学級編制基準に関する要望事項

    [1]小学校1・2年の複式学級を解消する。
    [2]小学校2・3年、4・5年の変則複式学級を解消する。
    [3]中学校の複式学級を解消する。
    [4]複式学級編制基準の改善をする。

○小学校~16人を10人とする。 ※1年生を含む場合、8人を5人とする。
○中学校の複式学級が解消されない場合は、8人を4人とする。

 以上の4点について特に配慮をいただきたい。今後もこれらの改善に関わっては、現場の困難性を訴えながら、政府、文科省等に配慮をお願いしていきたい。

 基準の改善については、国が一定の基準を示すことで今日まできているが、現実には、地方公共団体等の財政的な事情もあり、全国的には大きな温度差が生じていることも確かである。地方分権が叫ばれる昨今ではあるが、地方に各権限が移譲されても当該地方公共団体の財政的な問題もあり、国の基準を下回らない歯止めも必要である。現実に、へき地手当などは、各都道府県での対応に大きな差が生じ、全国的には問題ともなっている。

 いずれにせよ現行基準の改正は、少子化が進む中で、より多くの学校が児童・生徒一人一人を大切にしながら新たな教育を築くために必要不可欠なものであると考える。次の課題である教職員定数との関連もあるが、学級編制基準を改善し、国が一定の予算を担保することによって、地方公共団体が更に独自の弾力的な運用が図れることにつながるものと期待している。

(2)教職員定数の改善に関わって

 全へき連としては、現実的に困難な状況を解消するために従前から、下記の点について要望をおこなってきた。

教職員定数に関する要望事項  

[1]専任教頭の全校配置
[2]事務職員と養護教諭の全校配置   
[3]中学校の免許外教科担任の解消

 現在は、いくつかの県において独自の改善策を立て、その解消に努めているが、全国的には温度差が大きく、地方公共団体の財政的な力に左右されている。

 [1]については、

 複式学級を有する学校が主であるが、教頭が未配置の学校と教頭が学級担任を行いながら、教頭職を全うしているものである。小規模学校においても事務量等は多級校と変わらないのが現実であり、こうした状況にある校長、教頭の負担は計りしれないものがある。当然、小規模校は、配置基準から言うと、事務職、養護教諭等も制限があり、配置されない状況下での学校運営を余儀なくされている。このことは児童・生徒数が少ないからという理由で片づけられる問題ではない。

 学校の教職員は、それぞれの職務に応じた職責があり、その本来的な仕事を通して、学校全体で児童・生徒の教育に当るものである。「教育の機会均等」「教育水準の確保」等からも見直されるべきと考える。

 [2]については、

 [1]同様に小規模学校に配置が見られない現状である。教職員の定数は、児童数に応じて決められているが、現実的には、管理職が事務的業務を行ったり、児童の健康・安全面での対応に当っている。専門的な知識や児童への精神衛生的な配慮を考えると小規模校でも事務職員、養護教諭の配置は不可欠である。事務、養護といった専門的な視野から学校運営に携わることで学校により質的な向上が期待でき、児童・生徒へのきめ細かな指導が可能となる。配置によって余裕が出る分、児童・生徒への時間が生まれ、学習指導等への工夫した教育活動もまた可能となる。

 [3]については、

 中学校での免許外教科担任が全国的に課題となっている。人事等での配慮をしてもその解消に至っていない都道府県が多くみられる。教職員定数の関係で、中学校では自校の教員で賄うことができない教科が多くの学校で存在する。特に定数が少ない小規模中学校での場合がこれに当る。教員の免許の偏りや、人事面での困難さから、無免許の先生が教科を担当せざるを得ない状況が生まれている。担当する教員にも得て、不得手があるばかりでなく、指導される生徒の立場に立つと問題も多い。専門的な教科での指導は、確かな学力の向上に欠かせないことは承知の通りである。また、この現状は、教育の「機会均等」「水準の確保」の観点からも早急に見直されるべきである。

 以上、へき地教育が抱えている観点で数点に絞って意見を述べた。従前から要望をしてきた内容が半世紀以上に渡っての課題であることを承知願いたい。時代の流れが新たな人員を要請し、それに応えていく状況はわかるが、従前からの多くの課題の上に新たな課題が解決されぬまま積み重なっていることをもう一度確認されて、是非現状を一歩でも抜け出るような施策をお願いする。

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初等中等教育局財務課