政務三役と有識者との「懇談会」(第1回) 議事録

1.日時

平成21年10月13日(火曜日)

2.場所

文部科学省東館12階 総務課会議室1

3.議題

  1. 意見交換(「高等学校実質無償化」をはじめとする初等中等教育関係施策について)

4.出席者

委員

荒瀬克己氏、大神田賢次氏、小川正人氏、貝ノ瀬滋氏、陰山英男氏、金子郁容氏、岸裕司氏、高岡信也氏、布昭子氏

文部科学省

川端達夫文部科学大臣、鈴木寛文部科学副大臣、高井美穂文部科学大臣政務官

5.議事録

 【鈴木副大臣】  よろしいでしょうか。

 荒瀬先生は、あとから1時ごろにご到着のようですので、早速始めたいと思います。

今日はお忙しいところ、皆様方にお集まりいただきましてありがとうございました。

 今日は新しい体制になりまして、初中等教育の話題を中心に、もちろん教員養成の話も入ってくるかもしれませんが、ざっくばらんに皆様方と意見交換、あるいはいろいろ教えていただきたいということで、こういう場を持たせていただきました。

 時間の関係もございますし、今日ご出席の皆様方は、それぞれに大変にご活躍の方々でございますので、そこは省略をさせていただきます。

 早速、川端大臣からごあいさつをお願い申し上げたいと思います。

【川端大臣】  皆さん、こんにちは。

 本日は急遽のお願いでありました。いろいろお忙しい中をこうしてお集まりいただきまして、ありがとうございました。

 まだ1カ月経ってたっておりません。、9月16日にスタートいたしました鳩山内閣で文部科学大臣を拝命いたしました川端達夫です。また、いろいろとよろしくお願い申し上げたいと思います。

 それぞれ教育現場の第一線でご活躍いただいている先生方ばかり今日お集まりいただきましたのは、私が文部科学大臣を拝命いたしまして、一番初めに鳩山総理から「これをしっかりやりなさい」という仕事の指示書をいただきました。私も生まれて初めて見たんですが、後学のために、こういう紙でございます。形式的ですが。…。

 1.高校を実質無償化し、大学は奨学金を大幅に拡充するなど、教育にかかる国民の負担を軽減し、すべての意志ある人が教育を受けられる仕組みを構築する。

 2.将来の日本を支える人材を育てるため、教員の資質や数を充実することにより、質の高い教育を実現する。

 3は大学や教育観ということです。

 この1番と2番が、教育の根幹にかかわることのご指示をいただきました。現在、概算要求を取りまとめ作業中でありますが、その中で高校の無償化問題も制度設計に入りつつあります。それ以外にも、教育現場に普段から教育行政の皆さん方には頑張っていただいているお立場からいったときに、いろいろな課題があると思います。我々もそれを予算編成に反映していく一助とさせていただきたいということで、今日はこういう場を持たせていただきました。

 ざっと言いますと、実質無償化以外にも、低所得者層への奨学金のあり方、教職員の定数や給与、教員免許制度の抜本的な改革、全国学力学習状況調査、あるいは「心のノート」の問題と、挙げだしたら課題は幾らでもあります。

 そういうことで意見交換をさせていただきたいと思いますので、限られた時間ではありますが、よろしくお願い申し上げて、冒頭のごあいさつにかえさせていただきます。

 今日はよろしくお願いします。ありがとうございました。

【鈴木副大臣】  どうもありがとうございました。

 15日に概算要求の出し直しをしなさいということでございますので、このタイミングで、大変にタイトなスケジュールでお願いをいたしました。今日と明日とこうした形でいろいろご意見を伺って、それを徹夜して概算要求に反映させていきたいと思っておりますので、ぜひご理解をいただきたいと思います。

 また、今日をきっかけに予算の査定、予算が決まってからもそれの執行をどうするのか。また、予算以外のいろいろな教育政策の検討などもございますので、今日はキックオフということでご理解をいただきたいと思います。

 繰り返しになりますが、スケジュール的に申し上げますと、本来8月30日に出した概算を、いいものは残す、追加する動きは追加する、見直すべきは見直すということで、是非是非是々非々でやっていきたいと思っております。

 今日はどちらかといえば、やや予算に関連したあたりを、総枠の問題もありますし、個別項目で、今までもやってきたけれど、これは継続したほうがいいとか、そういったお話も含めてお話しできればと思っております。

【川端大臣】  これは?

【鈴木副大臣】  これは、置いて参考にしたいということです。公開を旨としておりますので、お願いいたします。

【川端大臣】  そうなの。記者さんはずっとおられるということで、カメラだけ出るということね。

【鈴木副大臣】  記者さんは聞いておられますので。別に隠す話も何もないでしょうから、いていただいております。むしろご理解を深めていただくということで、いていただいております。

 それから、今日は補正の見直しと概算要求と、盆と正月が一緒に来ているような状況でございます。1時間ほど経ちたちましたら、大臣は早退させていただくご無礼をお許しいただきたいと思います。

【川端大臣】  すみません。

【鈴木副大臣】  それでは早速ですが、まず一巡してをして、大神田さんから、何でも結構でございます。大臣がいる間にこれだけはという話をぜひお願いしたいと思います。

【大神田氏】  今日はお招きいただいてありがとうございました。

 せっかくの機会ですので、民主党の政策の項目をいろいろと拝見させていただいて、正直言って大体賛成のことがほとんどなんですが、そういう中で私が特に目を引いたのが、学校理事会制度を導入するということです。

 実は我々設立にはえらい苦労をしたもんですから、これがほんとうに全国的に導入できるのか、その辺の興味と心配と両方があります。ぜひ、そんな中で意見を述べ公開させていただいて、自分の経験したことがまたお役に立てることがあれば、なおよろしいかなと思ってまいりました。

 よろしくお願いいたします。

【鈴木副大臣】  よろしいでしょうか。

【小川氏】  もうレジュメで…。

【鈴木副大臣】  もしも、レジュメで。

【大神田氏】  よろしいですか。

【小川氏】  何分ぐらいですか。

【鈴木副大臣】  5分程度で。そうすると9名いらっしゃいますので、何とか大臣のいる間に一巡はできるかと。

【大神田氏】  それでは、もう少しお時間をいただけるようですから、私のレジュメにある高校のことについては、もう皆さん十分にご理解・ご議論いただけると思うので、後程にということで、まず理事会制度をもしこれを導入するにあたって、問題点がちょっとこんなところにあるんだけどなというところを3点ばかり挙げさせていただきました。

 学校理事会というのは、地域とか保護者が主体的に学校に対して物を言う、あるいは主体的に経営の段階まで入っていくという組織なものですから、なかなか一般の方々は、しり込みしてしまうんですね。地域の方々にが、もっと元気を出して発言をせよとおしりをたたくんですが、当初はなかなかそれがものが言えない口がきけないという部分がありました。

 よく考えてみますと、五反野小学校の場合は、文部科学省からコミュニティ・スクールのを研究を依頼されるしてくれと言われる前に、足立区では開かれた学校づくりという制度をその2年前から導入していまして、区内の109校の小中学校全校にそれを設置されていしました。

 各学校の取組みは、中身はばらばらで、すごく進んでいるところもあれば、なかなか未だいまだしというところもあるんですが、でも五反野小学校の場合は、その活動をやっていたことが理事会制度を実施するためには大きな下敷きになりました。て、当時のその活動のときに学校評価や授業診断などの項目がありまして、ったものですから、我々もまじめに取り組んだことが後々のためによかったと思ってます。やろうとするんです。

 しかし、こうした活動も周りの方々、特に教育の専門家といわれる方々からは冗談じゃない、専門家が評価するならともかく、素人の評価を持ってこられても困るとか、学校の教員からは、私たちは子ども供を評価することが仕事であって、評価されるのが仕事じゃないというようなことも言われたりしました。たわけです。

 それを当時の校長先生と、とにかく前に進もうやろうよということで授業の評価項目を作って、つくって、全保護者、地域の方々のおしりをたたいて、教室にとにかく入って、見たままに感じたことでいいから、それをつけてくださいということをずっとやってきました。

 そうしたのことが、だんだん年を経るにしたがって教員の方々にも理解をしていただけるようになったところで、て、コミュニティ・スクールに移行しました。こうしたていくという段階を経ることがその後に、にまで行くのに、大いにそれが役に立ったということがいえるだろうと思います。制度を導入するにあたっては、そんな段階を作ることもぜひご参考にしていただけるといいかなと思います。

 先日頂いた資料の構想をこの間の資料を拝見しますと、理事会の構成員の中で地域やとか保護者代表、そしてもちろん学校教職員、そのほかに教育専門家というのが入っていましたが、おったんですが、私どもではここにれに教育委員会代表がメンバーに加わっています。

 それはレジュメここにも書いてあるように、地域が理事会活動をだんだんやっていくうちに、調子に乗って暴走しちゃうといけないなということで、そういった意味ではある程度の枠をしっかり守っていくことがもらえるような意見を言ってくれる人が必要だろうということ。それと、理事会を運営するには新しい教育の情報というものも取り入れることが必要だろうということで、教育委員会の代表を入れたわけで、これは現在も続いております。

 逆に教育の専門家をここに入れた場合、多分適切なところはお考えをお聞かせ下さるとになっていると思うのんですが、先ほどもちょっと申し上げたように、専門家といわれる方々がそんなもの、素人の評価を持ってもらっちゃ困るよ、学校というのは校長がすべての運営の責任者なんだから、そこまで口出すなといったいうような意見を言われると、これは地域運営という理事会の意味からはちょっと心配だなということを感じました。

 あとは、どうやって地域人材を開発していくかということであります。これは今日おいでの皆様方の中では、にいろいろと地域コーディネーターをやっていらっしゃる方もおいでのようですので、むしろ私のほうがこの辺のご意見を伺わせていただければありがたいなと思う次第でございます。

 以上です。

【鈴木副大臣】  どうもありがとうございました。

 日本で第一号のコミュニティ・スクールの初代理事長さんの大神田さんでいらっしゃいました。

 引き続いて、教育行政学の日本の大家でいらっしゃいます小川先生です。

【小川氏】  小川です。私の資料は、出席者配付資料の最初に掲載しておりますので、これに即してお話しさせていただきたいと思います。

 民主党のマニフェストを含めて、いろいろと広範囲にわたって、私自身も関心があって言いたいことがあるんですが、今日は初等中等教育関係の教育予算に限定して、ということでしたので、それに限って、4点お話しさせていただきたいと思います。

 1つは、高等学校の授業料無償化、これは高等教育の平等保障にとっての基本的な施策ですので、ぜひ実現させてほしい。ただ、実施方法については家庭への授業料相当分の給付金の交付ではなくて、授業料を徴収しないという仕組みで実施するほうが、実質化する意味でも経費の削減という意味でも望ましいのではないかという立場です。

 2つ目は、授業料無償化だけでは高等学校の教育を実質的に平等化していくことは不十分じゃないかということで、私は高等学校版の就学援助制度をぜひつくっていただきたいと思っています。

 というのは、授業料を無償にしても、授業料以外の諸経費というのは相当かかるということは、もう十分ご存じだと思います。ただ、高等学校段階では義務教育と比べて学習支援の仕組みが非常に不十分です。

 例えば義務教育段階では、生活保護家庭への教育扶助と準要保護、これは生活保護の認定基準を平均すると1.3倍ぐらいの認定基準で支給される就学援助というものがあるんですが、実は高等学校ではこうした義務教育環境段階での就学支援の仕組みというのはほとんど整備されてきませんでした。

 ただ、高等学校では生活保護世帯に対しては、2005年度から交付税措置で生業扶助の一部として高校就学費が支給されるようになってきました。しかし、いわゆる義務教育段階の準要保護への就学援助のような仕組みは高等学校ではありません。

 義務教育段階で就学援助を受給している児童・生徒数というのは教育扶助を受けている子ども供も含めて、全部で142万人です。全児童・生徒数に比較すると13.8%が就学援助を受けているんです。

 それに対して、高等学校で生活保護の生業扶助の高校就学費を受けているのは、わずかに3万7000人弱で、全高校生350万人の約1%しかありません。また、育英奨学金が2005年から地方自治体に移管されて、奨学金制度もあるんですが、これについても今、高等学校で奨学金を受けているのは大体15万人です。

 ただ、この奨学金というのは成績が3以上の高校生というように成績の選抜セレクトがありますし、公立の場合でも大体2万数千円、私立でも3万円という少額です。ですから、授業料を無償にしても生活困窮家庭では、授業料以外の教育経費をまかなうという、そういう層に対する支援というのが、こういう生活保護の就学費、および奨学金でもカバーできないというのが現実にあります。

 ですから、義務教育段階で就学援助受給者が全児童・生徒数の13.8%ぐらいいるとなると、生活保護の就学援助費が1%、奨学金ですら4%です。ほぼ98%が高校進学することを考えると、残りの7、8%は義務教育では就学援助を受けていた児童が高校ではそうした就学支援の恩恵を受けられないということがありますので、ぜひこれは生活保護受給世帯よりも緩やかな取得要件で教育支援をできる仕組み、高校版の就学援助というような制度を創設して頂ければと思います。ことがつくられる必要があるのではないかと思います。

 次に、高等学校授業料無償化以外の予算で、特に重要だと思われる2点だけ述べさせていただきたいと思います。

 1つは、義務教育段階の教育支援の根幹である就学援助制度です。もうご存じだと思いますが、2005年の三位一体改革で国の就学援助補助金から準要保護世帯が外されまして、準要保護世帯への就学援助費が市区町村の全額自己負担ということになりました。地方財政事情も非常に厳しいですので、平均では生活保護認定基準の1.3というのが平均ですが、その1.3をさらに切り下げたり、る。東京は大体1.2ぐらいですが、そういう認定基準の切り下げですとか、給付の対象品目を縮小するという動きが出ています。ですから、市区町村間でそういう就学援助事業の格差が拡大してきています。

 これは、義務教育の機会均等保障の根幹にかかわる制度ですので、市区町村の財政力や位置づけ方によって、大きく違いが出てくるということは大きな問題ではないかと考えます。

 この前、北海道に調査に行ってきたんですが、北海道では2005年以降、認定基準の厳格化ということで就学支援の事業を縮小した市町村が全体の3分の1ぐらいになっているんです。全国調査は実はないんです。文科省としても、精度の高い全国調査をやっていないんで、2005年以降の就学援助の事業がどういうふうな形で縮小になっているのかというデータはないんで、詳細はわかりませんが、北海道で見ただけでも3分の1ぐらいが縮小になっているというのであれば、全国的にはもっと大きなパーセンテージじゃないかと思います。これはぜひ考えていただければと思います。

 時間がありませんので、最後です。教職員定数の改善です。これは前政権のもとでは抑制・削減、さらには直前に実施を控えている新教育課程の教職員配置というのは、ほぼ全部非常勤で対応するということになってきまして、地方自治体の教師の定数配置ということは非常にいろいろな問題が出てきています。

 一つの事例は、負担金制度のもとで総額裁量制により、ということで常勤定数を非常勤に切りかえるということが行われてきていますが、これが例えば、平成14年度から17年度の数年間を見ただけでも、国と都道府県の県費負担教職員でやる先生ですら2倍以上ふえてきているということですので、これに県独自費とか市区町村独自の非常勤の数をプラスすると、学校現場には、相当、の非常勤の数が増えてふえてきており、いる。これは学校現場にいろいろな問題をもたらしてきているということが1つです。

 もう一つは、これはもうご存じだと思いますが、給与費の3分の1は国庫負担制度で国から直接支給されていますが、この国から支給される教員の国庫負担分を使い切れなくて、国に返還するという道府県が平成20年度で16県にふえてきています。総額にすると、国庫負担分の118億円と、それに対応する地方交付税で教員給与費を措置すると予定されている財政額が236億あり、合計354億円が本来教職員の人件費として支出されるべきものが使われていない。これは大体2千数百人分の教職員の給与に当たるかと思います。

 こういうふうな跛行的状況爬行状態も出てきていますので、やはり今後10年間で教員の半数が入れかわるという時期になりますので、こういう時期にきちっとした、国と地方を見通した計画的な教職員の定数改善、少人数学級を含めて、そろそろしっかりやる時期じゃないか。

 それとともに義務標準法標準定数法の見直しも含めて、給与、定数配置の制度的な仕組みもそろそろ見直すべき時期に来ているのではないかと考えます。

 ちょっと早口で、まとまった報告ではありませんでしたが、これで終わらせていただきます。

【鈴木副大臣】  ありがとうございました。

 じゃあ、貝ノ瀬さん。

【貝ノ瀬氏】  私は三鷹市の教育長の貝ノ瀬でございます。よろしくお願いいたします。

 資料は、今の小川先生のあとの3枚目の資料でございます。私は人口18万を抱えます小さな町ですが、そこで小学校、中学校22校の現場を持っている立場で教育改革を進めている立場でお話をいたします。おります。

 その中で私どもがどういう考えで進め、どうあったらいいかということを考えながらやっているわけであります。これからの社会はどうしていくかというビジョンがない教育改革というのは意味がないだろう。一番下に書きましたが、そういう意味で、私どもはいろいろ理念を掲げながら、教育改革を進めているところでございます。

 もちろんこれはこれから目指すものもございますが、その中で全国展開、またご支援していただければありがたいというものを幾つかチョイスしてメモしました。一つ目は、「競争社会」から「協働社会」への転換ということです。三鷹市は協働の町づくりを進めておりますが、その中で学校教育も皆が地域ぐるみで子ども供を育てていこうという合言葉で教育改革を進めております。

 市内22校を全部コミュニティ・スクールに指定して実践しておりますが、この構想はスクール・コミュニティというものを念頭に置いております。これは従来、釈迦に説法でございますが、明治以降学校教育中心の施策が進められてきたということで、学校教育が肥大化しているのをそぎ落として、家庭教育、地域の教育力を高めようという発想で考えたりするのではなくて、むしろ学校教育を新しい価値観で再構成するということがもっと建設的ではないかということです。

 コミュニティ・スクールはを地域の代表、地域の保護者の方々の運営によって、学校が動いていくわけですが、それを中心として、学校の子ども供たちの教育はもちろんですが、学童クラブ、地域子どもクラブ、就学前の教育、余有教室での保育所運営、給食のデイサービス、特別支援教室、そういうものをコミュニティ・スクールを核として、スクール・コミュニティということで、すべてこれを視野に入れて運営していくということを目指しております。

 ですから、私どもの地域ではあまり対象者はおりませんけれども、場合によっては朝ごはんを十分にとれないという子についても、給食のサービスということもやっていけるということでございます。

 こういうふうなコミュニティ・スクールが充実してまいりますと、当然のことながら、教育委員会のあり方が縮小してくるということになります。これは将来的にはどうするかということになりますが、もし廃止ということで考えていきますと、学校への第三者機関として、イギリスのようなオフステッドセットが必要になってくるだろうと考えます。

 全国学力調査等も私どもは国の調査、東京都の調査、市独自の調査と3本立てでやっているんですが、これはまた大変にきついことでして、そろそろおつき合いも勘弁してほしいということです。国でおやりになるのは、やはり政策を立案していくための抽出調査が望ましいんじゃないかと思います。

 悉皆調査は、子どもの指導1人1人に生かしていくということでありますので、これは当然基礎自治体でやるべきだということで、私どもは数年前から基礎自治体、つまり私どもでやって、子ども供たちの指導改善に生かしていくということをやっているわけです。ですから、必ずしも国がそこまで考えていただく必要はないんではないかと考えております。

 それから、スクール・コミュニティ構想が現実になっていきますと、地方分権・地方主権ということになっていくわけでありますので、基礎自治体が当事者意識だとか自立性をしっかり持っていかなければならない。ということは、当然のことながら人事権もやはり持つ必要があるということです。

 とりあえず中核都市でも結構でありますし、そうではない小さいところは人事組合等をつくって、やはりまずは進めてみるということが必要ではないかと思います。そうなれば、ほんとうのアカウンタビリティーというものが保障されていくと思います。

 また、20世紀は「量」の時代、21世紀は「質」の時代といわれておりますが、今は1人1人の子ども供に注目していく、能力を生かしていくということが求められていくんではないかと思います。

 従来の新自由主義的な教育観からの転換がをしていく必要があるんではないか。確かに規制緩和等で一定の恩恵は大変こうむってはおりますけれども、同時に教育の伏線、セーフティーネットという面では、まだ十分ではなかったということです。を考えますと、そういう意味で充実した教育の地方主権を進めていくとなりますと、やはり歴史の踊り場から下がっていくのではなくて、歴史の踊り場から登っていく、上がっていくという方向転換を、今やらなければならないというふうに思っています。

 ですから、そうなりますと、当然のことながら教育の構造改革ということで、情報とか知識、知恵にシフトした方向性を、予算の面でも示していく必要があるんじゃないかと思います。

 もう補正の見直しなども終わったかもしれませんが、例えば地デジのテレビの買い換え買いかえなども、今までの惰性で一教室1台なんて当たり前に考えていらっしゃるかも知れませんが、私に言わせますと、テレビをしょっちゅう見せる先生はいい先生とは言えません。

 本来、ですから、カリキュラムがあって、そしてそれに基づいて指導していくわけで、それは必要に応じてテレビを見せるのでありますので、学年に1台あればいいわけですね。私どもはすべて揃えてそろえていただけるということで最初はありましたが、そういうあまりムダな意味のないことをしてもしょうがないということで、見直し以前に1校10台程度に考えて予算申請をしていたんですね。それで済むんですよ、実際問題は。ですから、そういうむだなことはしない。

もっと本質のところに注目する必要があります。

 それから、理科の教材、備品等も十分ではないので、理科の実験ができないとか、何とか言っておりますけれども、これはそうじゃなくて、むしろ理科の実験の準備が煩雑で、結局教員学校が多忙になっているということで、そういう意味で準備がしっかりできないことが、ので、理科の教材、備品不足に論点がすりかわっているのです。そちらのほうよりも、後でまた述べますが、教員を増やふやしていくという中で、こういう問題は解消していくと考えています。ですから、物ものがたくさんあれば、これが充実していくという問題ではないということであります。

 それから、教職員定数については、今小川先生もおっしゃいましたが、人的措置の充実が望まれると思います。やはり1人1人ということにシフトするためには、十把一からげの指導ではだめだということであります。ただ、一挙にこれをやりますと、教室が足りなくなりますので、低学年あたりから徐々に定数改善をしていくということが望まれるのではないかと思います。

 コミュニティ・スクールはの今「できる」規定です。金子先生や鈴木副大臣の前で恐縮でありますが、これは新しい教育を展望していくということでは、非常に重要なものだと思っておりますので、これを「できる」規定じゃなくて、制度化していくということの中で、スクール・コミュニティを構築していくということが大事ではないかと考えております。

 義務教育学校は、小と中とに分かれて連携するのもいいですし、一貫校としてやれるような複線化していく。それから、小学校、中学校が相互乗り入れするときに教員の免許の関係でいろいろ難しいところがありますので、簡便単にとれるような制度が必要だと思います。

 それから、免許更新制と教職員大学院の件です。更新制は必ず形骸化すると思っております。形式になると思っています。むしろ教員になって10年目、または15年目に自分自身の実践を振り返ることができるような1年間の、まさにリカレント教育として教職大学院あたりで勉強し直すとか、通信教育などさまざまな形でまたもう一度勉強し見直すということが必要です。

 例えば修士課程6年間の大学院を出れば、必ずいい先生になれるということはありません。むしろ頭でっかちの先生ばかりで、指導力がない先生になったりがいたりしますので、教職途中でリカレントで勉強できるという方法のほうがむしろ望ましいんじゃないかと思っています。

 また、それよりも、学部に教職経験の教員を多く入れていくということのほうが必要なんじゃないかと思います。教職大学院大学をつくるときに、教職経験者が40%でしたか、そういう条件で言っていましたが、むしろ学部のほうにそういう人たちを入れていくということが重要である。

 3つ目は、教育と福祉をつなぐということです。「子どもの社会保障」という施策をもっと推進していく必要があるんじゃないか。これは首長部局に、教育を育てる部と、これは教育委員会がなくなっていくという前提でありますが、首長部局に、「教育子育て部」をつくって、やはり生涯学習を推進していく。

 つまり、ゼロから18歳、本市の場合はゼロから15歳までですが、18歳までいつでもやり直し、だれでもいつでもどこでも無料で、という生涯学習施策を推進していく。そうなりますと、18歳までですので、高等学校も実質無償化になっていく。

 今は小学校、中学校が義務教育ですが、小学校以前も準義務教育として扱おう。それから、中学校を卒業しても準義務教育として扱おうということになれば、例えば小学校6年生の親が収入が多いとか少ないということで、授業料がどうという話になりませんよね、義務教育ですから。

 ですから、高等学校でも同じ準義務教育として扱おうということになれば、所得があろうがなかろうが、これは当然のことながら無償料ということになるわけであります。して、そういうふうに考える。

 また、所得が多い人、少ない人といいますが、例えば1杯飲んでもいつも割り勘じゃなくて、ときにはだれかが持っても、それはいつかはどこかで返してもらう。だから、所得の多い人は所得税とか住民税で少し多めに払ってもらえばいいわけで、そのときにすぐに回収しなければならないということも考える必要もないんじゃないかと思いますので、これは無料化で結構なんじゃないかと思います。

 そして、そんなことで、就学前教育、保育所、学童クラブ、地域子どもクラブも学校教育とみなして、子どもの社会保障をもっと充実させなければいけないんじゃないかというのが私の考えです。

 以上です。

【鈴木副大臣】  ありがとうございました。

 それでは、陰山先生よろしくお願いします。

【陰山氏】  立命館小学校で副校長をやっています陰山と申します。

 六、七年前まで学校現場のほうにおりまして、民間校長、公募校長の形で校長を3年間、それから今は私学のほうに移っております。

 私は学力低下問題との絡みでお話ししようと思います。といいますのは、1999年の「分数ができない大学生」という本が出版されて、学力低下問題が提起されましたので、ちょうど今年は10年目にあたります。

 この間は、いろいろな形での改善がなされてきたとは思うんですが、私は今もって現在の方向性は、実態、内容、レベルにおいてまだそれにふさわしいものになってきていないと思っています。

 根本的な理由は一貫して続いていることなんですが、教育内容にかかわる実体的な研究というのでしょうか、これが現実と合っていない。そこに制度論の問題があって、今、貝ノ瀬さんのほうで言っていただきました教員免許の更新制にしてみましても、学校現場の経験のある人がは教育学部のほうにいないということ自体がおかしいわけです。医学部の先生であれば、教授であっても、メスも握れば調剤もされると思うんですが、学校現場に立ったことのない人が教育学部で教えるというのはいかがなものか。

 実は教員免許で更新制でいってみたとしましても、あんたに言われたくないって実は思っているやつはかなりいっぱいいるわけでありまして、そういうふうなところから見ましても、やはり教育学のあり方を改善していく必要があるのではないか。

 一方、教育学部の学生さんが悪いということでもないと思うんです。学校現場に例えば教育学の方が入っていこうと思っても、現場が忙しくて、来てくれるな。今や教育実習生を受け入れるということは相当な負担を伴います。

 そういうことを考えてみても、単にだれかが悪いという問題ではなくて、構造的な問題になっているのではないか。その結果、一体どのようなことが起きてきているかというと、そこに書かせていただいていますが、社会はものづくりが重要と言われているんだけれども、低学年理科がなくなったままです。これは一体どういうことなのかということです。

 つまり、昔に比べて理科の授業数は半分近くまで減っているのがそのままです。子ども供たちの生活体験がなくなっているということで生活科ができたわけなんですが、だったら学校5日制にして地域に返すといった、あの論理はどこへ行ってしまったのか。これは矛盾しています。整合性がとれていない。

 それから、特に保守系の方々から言われたんですが、日本では歴史を教えていない。これは完全な間違いです。歴史の授業時間が社会科の中で一番多くとられているんです。一番とられていないのは地理です。これは現実にあった話なので、笑わないで聞いていただきたいんですが、大阪で新任の先生に富士山の位置を知っているかと聞いたら、知りませんと答えるんです。何でかというと、この20年間都道府県名を3県しか教えていなかったんです。

 ところが、今度の新しい指導要領では、それではいかんだろうということで、小学校3、4年生には全都道府県名を教えますが、教える側の先生が教わったことがないという、非常にブラックユーモアな状態です。これは現実にあるんです。

 それから、日本はPISA型学力が低い、低いと言われていて、確かに考える学習をしなければいけないんですが、ちょっと資料を見ていただきたいと思います。PISAの順位は実は第1回目が一番いいんです。つまり、ゆとり教育とも何とも言われていなかった、古典的な教育をやっていたときは1位だったんです。これはもう一遍考え直していただきたいということです。

 資料2は、先ほど申し上げました社会科の授業の内容なんですが、子ども供の興味・関心・意欲を大切にするのはいいんだけれども、フランス文化の広がりでフランス料理のメニューを授業で子ども供たちに教えなくてもいいと思うんですよね。これが現実問題としてありました。

 それから、学力テストを分析しますと、習熟度別学級編成や放課後学習ということをいいといわれたんですが、実は詳細に分析をしていきますと、伸びている学校というのは、読み書き、計算のような基本的にやったところなんです。

 だから、私が一番心配をしますのは、放課後指導や習熟度別というのは枠組みの問題なんのです。中身がどうなのかということがおざなりにされているから、いろいろ努力をしても成果が上がっていかない。現場には、ものすごく徒労感が漂っている。

 ですから、ここのところで言うと、何を重要視しなければいけないかというシンクタンク機能をしっかり持っていただきたい。世界一の学力を目指すんだということを前政権がおっしゃっていましたが、それはそれで心強かったんですが…。

 文科省の前でちょっと言いにくいんですが、世界の教科書はどこに行ったら見られますかと文科省の人に聞いたら、どこにもありませんと言われたんですよ。それで、世界トップクラスを目指すって、それはないでしょう。やはり行政であったとしてみても、どの方向を目指すのかという内実については、しっかり考える仕組みが必要なのであって、そこのところを考えていただきたい。

 2点目は、学力低下の本当ほんとうの理由です。

 そこにも資料を用意させていただきました。資料3、広島県基礎基本調査の結果です。これを読みますと、睡眠時間を増やせば増やすほど、子どもたちのふやせばふやすほど、子供たちの学力は上がっていく。7時間から9時間だと、大体安定してきて、それ以上寝すぎると落ちてくるというのもご愛嬌なんですが。

 それから、就寝時刻というのは、何時に寝るかということなんですが、8時から9時までに寝る子ども供たちの成績がよくて、それ以降落ちてくるということも出てきました。これは就寝時間と知能指数との関係を見てみても、相関関係があるんです。知能指数というのは、何か生まれつきの遺伝的要素に支配されているような錯覚がありますが、実はそうじゃないんです。生活習慣から、大きく規定されてくるんです。

 ですから、私たちは逆説的に生活習慣を整え、子ども供たちの知能を高める実践をやったらよくなるんじゃないかという仮説をもとに、文部科学省の応援を得まして山陽小野田市というところでやってみました。

 そうすると、12の小学校、4000人の子供たちの知能指数が9カ月間で9ポイント上がって、算数の偏差値が4ポイント上がりました。たった9カ月間の間にできたことなんです。ですから、こういう実証的な研究がなされてくればいいのではないか。

 余談ですが、大阪府の学力テストも、その方向性とほぼ同じ内容で実施させていただきました。実質今年の1月と2月の2カ月間しか指導する時間はなかったんですが、新聞報道等にありますように、かなり劇的な改善を見ることができたということだろうと思います。

 統一学力テストにつきましても、私はもともとこういうのはあまりなくてもいいんじゃないかと思っていた口なんですが、悉皆から抽出に変えていただくのは結構なんですが、ここのところしばらく学校現場のほうは、詰め込みだ、ゆとりだと、振れすぎてきました。

 そういうところで一番問題なのは、行政に対する信頼感が今失われているんです。また、変わるんじゃないの、政権が変わったら、また悉皆に戻るんじゃないのというような心情が現場にはあるんですね。ですから、連続性については十分ご配慮をいただきたいと思います。

 3点目は、分権制に対する考え方です。私もコミュニティ・スクールの考え方には賛成ですし、私もコミュニティ・スクールの研究指定校で校長をさせていただきました。ただ、20年前後の長きにわたって日本の教育論がかなり混乱をしてきました。

 現段階で地方に分権することによって、その混乱をそのまま残すことになりはしないだろうか。今後何年間かは今、何をなすべきかということをきっちり中央のほうで仕切りをやって、土台を整えた上で、徐々に分権化を行っていくというふうにしていったほうがいいのではないかと思います。

 先ほど申し上げましたように、ゆとり教育の中で先生方というのは、ゆとり教育で育った先生方なんです。ところが、そうではない形の教育に転換していこうと思いますので、かなり学校現場には応援が要ると思います。その点で、私がぜひともお考えいただきたいのが、教育のICT化ということです。

 インターネットを通じて、学習すべき内容をきちんと現場に届け、そして、その教材すらもデジタルによって全国に届けていくということ。そして、その結果については情報公開に付して、地域分権がきちんと成り立っていくようにしていかなければならない。地方分権と情報公開というのは、私はもっとも重要なことになってくるのではないかなと思っております。

 最後に申し上げたいのは、資料7、8なんですが、この間国際調査でわかったことです。資料7はTIMSS2003で調べられたものです。日本の中学生の宿題をする時間で見ていくと、日本は最低だったんです。テレビ、ビデオを見る時間というのは2.7時間ということで、世界トップです。

 つまり、あまりきちんとした家庭学習がなされていない。きつく言うと、ほとんどしつけがなっていない。ご存じのように行財政における教育の資質というのも、OECDの中でも最下位クラスである。

 学校現場は、しつけの悪い親と金を出さない政府に文句を言われている。そこのところからは、やっぱりまじめにやる気がなくなるよねというのがあるわけなんです。でも実際に子ども供たちはよくない。

 私が最後に申し上げたいのは、子ども供たちの生活習慣の悪化が問題であり、これは単に子ども供だけの問題ではないと思います。資料8は、ベネッセの調査によりますビジネスマンの帰宅時間です。圧倒的に東京が遅いですね。新宿では、晩の11時になりますと、ホームから人が落ちるぐらいに溢れてあふれているそうです。やっぱりこんな国はないでしょうね。

 今、昇り竜の勢いの中国にしてみても、お父さん方は早く帰宅している。決して時間数によって経済力が高まるものではないと思うんです。それを証明するかのように、資料9は国民1人あたりのGDPです。まるで子ども供たちの学力低下と同じように、2000年に3位だったものが、2006年調査には18位になっている。

 ですから、この夜型の生活習慣の問題はおそらくこれは教育問題というよりも、日本全体の社会問題であるというふうに思っておりますので、最終的に申し上げたいのは、マニフェストにはぜひとも夜型社会の是正ということを入れていただくと、私は一生懸命応援したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

【鈴木副大臣】  ありがとうございました。

 それでは、金子先生。

【金子氏】  慶応義塾大学の金子でございます。自己紹介をしますと、私はスタンフォード大学で学位をとった後、アメリカの州立大学で10年間、日本の国立大学で10年間教え、その後、日本の私立大学で教えて現在15年目になります。その間に私立の小学校の校長を3年半やり、長野県教育委員会委員も3年半やりました。そのような経験を踏まえてお話をいたします。

 皆様が、すでに現場のことについていろいろ力強くお話しされたので、私は予算に関連することを中心に幾つか指摘をしたいと思います。

 近年の文科省は学校教育について「地方分権」という名の下に、いくらか腰が引けているという印象があります。具体的な学校づくりは地域に任せる。しかし、力ずくできちんとやるべきところは文科省がやらなければいけないと思います。多くの国民が納得する政策を打ち出して、しっかり予算を確保するということは文科省の重要な仕事のひとつだと思います。

 コミュニティ・スクールが導入され、特区もいろいろな波及効果があり、学習指導要領も自治体が申請することで一部外せるようになったりしました。財源確保や教員定数のこと以外の制度面の大枠は、だいたい出そろった感じがある。これからは、今まで各地のよい学校でできたよい取り組みが全国に広がることを推進するための制度や仕組みを作って行くということが重要だと思う。その観点から、4点お話ししたいと思います。

 先ほど貝ノ瀬さんがコミュニティ・スクールについてお話しされましたが、コミュニティ・スクールと小中一貫を組み合わせるというのは効果的な方法だと思います。特に子どもの数が減っている中、学校の統合や連携がどうしても必要になってきている。そのとき、地域の意向を反映させ、参加を促進するためのひとつの方策として小中一貫コミュニティスクールという選択がある。しかし、その場合、教員定数の問題が壁になる可能性がある。

 三鷹市のにしみたか学園は日本で初めての小中一貫コミュニティスクールですが、そこでは中学校ひとつと小学校ふたつの3校が統合せずに実質的にひとつの「学園」として機能しています。学園には、校長、副校長で6人いるわけです。一体型の学校運営に管理職6名いらないが、一方で、学校が連携すると教員はそれだけ調整に時間がとられるので、コーディネータや補充教員が必要になる。その分を補充することが必須です。SFCでの修士学生の研究によりますと、全国の小中一貫校では成果が上がっている学校ほど教員の負担が増えているという結果が出ています。地域連携に基づいた質の高い教育を推進するには、統合や連携にともなった教員数の確保について何らかの手当をする必要がある。たとえば、組織的に統合したら管理職の数が減って、実質的には教員定員が減ってしまう可能性がある。それでは、統合のメリットは少なくなってしまう。

 私がかねてから提案しているのは、学校ごとではなく中学校区単位という「面」で教員定数を決めるというやり方です。その上で、統合ないし連携した学校が不利にならないように加配などを含めて制度設計をすることを検討してよいのではないでしょうか。

 教職課程6年間のことはどなたかおっしゃったように、従来の教職課程をそのまま二年間延ばすというのでは効果が期待できないでしょう。もし6年間やるなら、最後の2年間は現場で学んでもらうのがよいでしょう。京都市長の門川さんの言い方をすれば、「すし屋の職人にはすしを握らせろ」です。現場経験を重視した教員養成のためのインターン制度は京都市や杉並区、三鷹市でやっております。学校の受け入れが大変ですので、その点、学校にもメリットがあるように工夫する必要があります。ひとつの可能性として、国が予算を出して、自治体がインターンを“雇用”するというやり方も検討してよいかと思います。

 教員はややもすると「完璧」を求められますが、採用されたとき完全な先生であるはずがなく、また、その後のキャリアの中でも教員として人として、常に学び、向上する存在です。これは教員以外の誰でも同じですが、特に、子どもの未来を担う教員は常に学ぶ機会が提供されていてしかるべきです。したがって、教員研修が非常に重要です。しかし、現行の教員研修は、多額の予算が費やされているわりに効果が薄いものが多いと聞いています。基本的なスキルや知識のリフレッシュについては遠隔システムの利用が効果的でしょう。企業では社員研修のためのさまざまなビデオ教材があるので、企業に協力をいただき、それらの教材を利用するということもあるでしょう。教員研修システムは大幅に改善できるはずです。

 信頼される学校づくりを達成するためには、教員の研修の機会を充実させ、教育の質を高め、その上で、どうしても教壇に立つことに適性がない人には教員以外の道を選んでいただくためのなにかしらの方法があってしかるべきでしょう。なお、『教員免許の更新のときに、だめな先生に辞めてもらう』というような発想は安易ですし、現実的でない。皆さんが発言されたように、そのために教員免許の更新制を導入したということなら、私もそのような免許更新制度なら意味がないと思っております。それよりも、教員の研修方法をきちんと整えることが大事です。

 最後に、何人かの方がおっしゃいましたが、教育の質の向上と、教員の仕事量を減らし多忙感の解消をするために、学校関連の情報システムをしっかりと作り、ひとりひとりの教員が気楽にいつでも使えるようにすることが非常に重要です。今、学校には教育に関するたくさんの情報がありますが、ほとんどそれが生かされていない状態です。

 情報システムの整備は自治体単体ではなかなか難しい面もある。韓国はすべての学校にインターネット接続がされ、すべての教員が学校でパソコンを与えられ、教職員の研修システムなどのコンテンツやカリキュラムは国が提供していると聞いています。授業改善や個々の子どものつまづきを発見することは、国や県教委が「上から」やるのではなく、ひとりひとりの教員や教員グループが、それぞれの経験に基づいた気づきやアイディアや仮説によって自分で分析して「事実関係」が分かるようにすることが重要です。

 先ほど陰山さんがおっしゃったようなクロス分析も簡単にできるようになる。それを日常の児童・生徒の指導やご家庭へのお願いに活かす。教員の負担は増えないか。やり方次第だと思います。これまでのわたしたち慶應大学のチームでは、いくつかの自治体と共同で学力調査の結果を分析して授業に活かすための情報システムを作って実際に教員の方々に利用していただいています。その経験から言うと、教員はいろいろな比較などができて、より納得が行く、自分の努力がきちんと報われると感じているようです。また、教育にある程度の客観的な視点を持ち込むことで、保護者とのコミュニケーションも図れ、相互信頼が高まり、結果として保護者対応の負担が減るということも十分に期待できると思います。教育委員会も効果的な政策決定ができるようになります。

 データはたくさんあります。しかし、個人の名前がついたプライバシーに関する情報です。先生が自分の児童生徒の成績表をフラッシュメモリーに入れて持ち歩くといったことは問題です。システム全体として国がしっかりとセキュアな枠組みを作った上で、県教委単位、教育センター単位、市町村教委単位、学校単位、そして、個々の教員が一定のアクセス条件の下でそれぞれの工夫で簡単に利用できるような構成にする必要があります。情報システムの提供は、国がちゃんと予算をとるべきもののひとつです。そんなに膨大な予算は必要ない。他にもいろいろ言いたいことはございますけれども、今日はこの辺で。

【鈴木副大臣】  ありがとうございました。

 それでは、岸さん、よろしくお願いします。

【岸氏】  岸裕司と申します。私は東京で広告デザイン会社を営んでいまして、今日参加させていただいたのは、子ども供3人がお世話になって、居住している習志野市立秋津小学校という普通の公立の学校の例です。先ほども貝ノ瀬先生のお話にがありましたが、僕らもスクール・コミュニティと呼んでいますが、単に学校改革だけではなくて、地域全体を学校を拠点に生涯学習社会にしていく実践です。

 とともに、大人が学ぶ。大人になっても子ども供と一緒に学ぶという経験が、実は大人の学ぶ姿を見ている子ども供たちが、そこから大変大きな刺激をたくさん受けます。それと同時に、大人の有用感が増していきます。そういう教育方法を、僕は学社融合型と呼んでおります。

 簡単に言えば、学校教育と社会教育を結合させる。または学校が持っている学ぶ施設という機能と地域社会という機能を融合させることによって、双方にメリットのある状態を生み出すあり方です。

 私は、ビジネスマンですから、WIN&・WINというあり方のは、日常当たり前なんです。自分だけよくなることはあり得ないんで、相手もともによくなるからこそ長続きしていく。私の資料は8ページ、9ページなんですが、そんなことを20年間やってきた結果の一部が9ページにあります。

 大学の先生らと調査をいろいろしながらきているんですが、図:2と書いてあります。学校というのは、普通の公立の小中学校で、私立は除きます。学校が週5日制だと1日8時間使われて、横軸で見ると200日しか使われていないんです。そうすると、放課後の約200時間ととか休日のは165日の学校教育として使われていない時間帯、ありますから、これだけでも年間36%もの時間比率がも使われていないわけです。

 ですから、私たちはここの一番上に書いてありますが、2つの学社融合という考え方を推進しています。1つは、狭義の学社融合といいまして、地域住民が自らの生涯学習のためにも学校の授業に参画して学んでいくシステムです。これで、現在350人の児童数のところ、年間延べで2万人の大人が参加して、児童とともに自らの生涯学習をしています。この際の謝礼は一切ありません。自分のメリットだからです。

 次は、広義の学社融合といいまして、学校施設を共用するという考え方です。これは、秋津小学校コミュニティルーム運営委員会というのを住民自治で51人の委員で運営しています。鍵も預かっています。ですから、朝の9時から夜の9時まで、1年365日使って、およそ1万人が利用しています。です。これは教育委員会からの行政支出は年間たったの3万円と、水道光熱費のみで済んでいます。みます。

 こういう住民自治力がつくためには、公立の学校開放がというのは非常にいい場所なんですね。なぜならば、学校というのはほとんどの人の心のふるさとである。それから、学校というところは、もともと学ぶところである。そういうもともと持っている共通理解が大人が本来のもとより持っているよい面として、改めて立ち上がってくるんです。

 その結果どうなったかというと、授業内容が充実してくる。多様な学社融合プログラムと呼んでいますが、年間の授業時数で言うと、学年に応じて50時間から105時間です。うちも全国7自治体、9校のコミュニティ・スクールの研究指定のときから陰山先生のところとか足立区五反野小と同じ時代から経てきています。

 ですから、研究指定になった後は、学校は「人間大好き、ふれあい活動」大好き、ふれあい活動という領域の名称で、この50時間から105時間をさまざまな授業の教科に当てはめて配当しています。それから、不登校児のゼロ更新が続いています。知的理解力の高い児童が多い。教師の負担が軽減、なぜならば、放課後や休日の出勤を求めない保護者や地域住民が育っているからなんです。

 実際の教師の発言では、秋津小に赴任してびっくりしたのは、夜間にの保護者からの緊急電話がない。それは犯罪が習志野市内16小学校区のうち、2番目に少ない校区であることからです。これは習志野警察の資料を調べてみたらわかったのです。るんです。

 さらには、自尊感情やコミュニケーション能力が高い児童が育成され、卒業後もその傾向が続く。これは、その下に一例がありますが、今の自分が好きかどうかということを秋津小の卒業高校生男子に調査して、そのほかの地域との同じ調査結果を比べてみたら、明らかに高いんですね。つまり今までは学力調査はあるんだけれども、どういう開かれた学校区で幼少期を過ごしたら、そのときに培った能力、つまり見えない学力のような能力が青年期にまで反映できているのかどうかという実証調査です。

 こういう調査は、ほとんどないんですね。アトランダムに30歳ぐらいの青年にどういう子ども供時代だったかという調査はあるんですが、どういう教育コミュニティで幼少期に育ったかという調査はないんです。できるだけこういうこともエビデンスとして培って、学力調査だけに踊らされない、つまり君の可能性は違うところにもいっぱいあるんだぜということを、それこそ大人の社会の皆で言っていかないと、勉強だけがだめだから人生すべてがで落ちこぼれてしまうみたいなことはおかしいと思うのです。

 ですから、大阪の例を出して申しわけないけれども、45位がなんで悪いんだ。大阪の子なら、笑いをとればナンバーワンじゃないかみたいな、そういう別な評価軸もたくさん周りの大人がつくっていっていくことが大切じゃないかと思っています。

 そんな20年間の実践から結果的としてに児童数がふえるような、僕らはサスティナブル・コミュニティと言っていますが、UターンやIターンをしたくなる地域社会にはなってきています。ですから、一見学校教育改革をやっているようなんですが、実は都市政策なんだ。次世代を育て、住民参画の実力の上がっていく地域社会を、学校を拠点にすればつくれるんじゃないか。

 それから、何といっても新教育基本法の第3条に謳う生涯学習社会を構築する上ではお金がいっぱいかかってはしようがないんで、チープガバナンスに寄与しながら、学校施設の有効活用を図る。「秋津。地域で遊ぼう!」という名称の放課後子供教室も年間授業日数は200日ですが、240日間、5年間連続で今年も秋津コミュニティが自主的にやってきています。

 また、これは中学校区がいいかなと思っているのは、総合型地域スポーツクラブも住民自治で運営しています。だから、学校や行政からは施設をかりるだけなんです。家族会員で年間1万円です。とか。これも住民自治です。総合型をやってみてよかったのは、例えば中学生や高校生が小学生や乳幼児に教える場面が生まれるんです。今までの学校スポーツ教育は同じ学年で試合をしてきますから、うちの息子もそうだったんですが、バスケットではレギュラーになれないんですね。小学校のときから、もう友達のレベルはわかっていますから。

 でも、総合型をやれば、お兄ちゃん、お姉ちゃんとしてのいう有用感が生まれるんです。これはお金が要らないんです。だから、学校施設の開放というところに、今までも文科省は力を入れているんですけれども、いろいろな壁が厚いものですから、なかなか施設開放に至らない。だけど、子ども供がいない青少年とか、青年とか高齢者のおじいちゃん、おばあちゃんたちの税金も使っているわけですから、学校施設はだれが使ったっていいんだということを常識にして、学校を拠点とした生涯学習コミュニティをつくっていったらいいんじゃないかと思っています。

 もとの8ページに戻ります。若干ですが、理念みたいなことをお話ししすぎたんですが、真ん中から下の新政権への意見というところです。現在行われている学校支援地域本部事業は評判がいいですね。ただし、名称を学校・地域パートナー推進事業のように変えていただきたい。

 支援となると、いつも保護者や地域住民が学校の下請けをやらされるという感覚になるんで、地域の方々も自らの学びなんですよという意識づけをしないと長続きしない。指定期間が終わったら元の木阿弥というケースが今まで多いもんですから。こういうことで学校参画に慣れたなれる人が増えたいた上で、コミュニティ・スクールという制度を導入しないと役員だけが集まる会議だけになってしまって、私の経験では新政権が実行しようとしている学校理事会はむだと思います。です。

 やはり授業参画を通して、子ども供ってかわいいねとか、今の学習はこういうことをやっているのとかいうことを知る地域住民を増やすふやすことが前提であって、その次に学校理事会制度があるのではというふうに感じます。

 放課後子ども教室は、学校施設を住民自治で活用する手だてとして、とても推進上有効に思います。

 5番目に飛びますが、高等学校費用は無償化ではなく、私は学ぶ意欲があり、金銭的に進学が困難な生徒には給付型の奨学金がよいと思っています。私自身も母子家庭で育った経験で、僕が24歳になるまで母親が奨学金を返済し払い続けていたことを知らなかったんですね。その完済しましたという葉書を見たときに、涙が出ました。できるならば、学びたいという人にとっての給付型の奨学金がいいと思っています。

 飛んで、10番目です。新学習指導要領実施充実に向けての必要な予算は実施をしていただきたい。金子先生がおっしゃったICT化とか。特に小学校の英語教員、中学への武道とダンスの指導ができる教員などは急務だと思っています。

 13番目は、学校の安全は地域の安全と一体で、顔と名前がわかる住民を学社融合型でふやしながら、人の石垣で子供を守ることを推進しないと、管理社会になってしまう。現在、民主党案で学校安全専門員の配置ということを掲げていますが、私は疑問に思っています。むしろ犯罪は学校内よりも、圧倒的に地域のほうが多いですから、地域そのものを安全にすれば、学校も当然安全だからです。

 池田小とかの例を出して申しわけないけれども、国立付属のような広域から子どもがくる学校には地域がありません。私立もそうだと思います。圧倒的に多い公立の小中学校の安全は、地域住民自らが守るという考え方でないと、なかなか継続的にはいかないだろうというふうに思っています。

 17番目ですが、へき地や島しょ部の学校存続はその地の死活問題ですので、一律の施策ではなくて、その地にあわせた町を継続させるという観点でやっていただきたい。18番目の子どもの権利条約というのが、なおざりにされている感じがします。けれども、あちこちの自治体で子どもの権利条例のようなものをつくって、最近は施策がだいぶ始まってきたので、それらを調査し、評価するようなことも今後必要かと思います。

 最後は私の思いですが、私のワイフは在日朝鮮人、国籍は韓国の3世なんです。ですから、新たな国歌の制定が今後必要なのかなと思います。このあたりが新しい時代に向けて明るく前に進むために大切かと私は思っています。

 以上です。

【鈴木副大臣】  ありがとうございました。

 それでは、高岡さん。

【高岡氏】  私は皆さん方の大変感動的なお話をたくさん伺って、いい勉強になったなと感じております。、これで帰ろうかなというところでございます。

 ちょっと腰を折るようで大変に申しわけないんですが、大学で教育学部長なんかやっておりまして、しかも専門はも教育学でございます。田舎の大学の教育学をやっている人間って、先ほどもございましたが、一番使い物にならないかもしれません。可能性もあります。

 今日は、免許制度について日ごろ思っていること、あるいは我々がやってきたことについて、少し整理をしてみました。ですから、提言というようなほどのことではございませんが、。3点ほどございます。少し端折ってはしょって申し上げます。

 まず、免許更新制。この件については、おそらく世情一般、免許更新制度についてはやめろという声が非常に強いし、問題がある、疑問だということがあると思いますが、ので、私も実は半ばそう思っているところがあります。始まったと頃ころから、これは拙速だと感じていました。

 いろいろな新聞報道などを書かせていただいたりするときに、最初に言うのは、これは拙速だ。しかし、だけど、やっておもしろいことをこれで見つけてみませんかと言い続けてきたところなんです。それでやってみたことを少しお話します。ちょっと資料を見ていただけますでしょうか。

 私は、この免許更新制というのは幾つかポイントがあって、教職の研修システムとして何か使えないかなと夢想しました。夢想の夢はゆめですから、その夢を語るということに転換できないと、我々もやる気にならない。せっかく作ったんだから夢をもとうと。ならんなということです。

 それで、中国地区の5大学の教育学部長さんに集まってもらって、中国地域の教職支援機構、まず免許更新制に対応することから始めて、大学の枠を取っ払って、教員の現職研修に乗り出していくような仕組みができないだろうか。私は岡山県の山の中にそういうセンターができて、私は初代所長になるというふうに言っておりました。が、だれも賛成しませんでした。

 それで、そこの中での議論として、いろいろなことをいろいろな学部長が言いました。第一にやっぱり免許更新制というのは、教員の職能成長支援ツールとして使えないだろうか。30時間なんだけれども、これをうまく機能させられないか。、現職研修全体の中で、これをどう位置づけることはできないだろうか。かという問題です。

 第二に、現在、それから、教員に対しては非常に社会的な厳しい評価がある。だから、先生たちが子ども供たちに教えるというだけじゃなくて、「今日は先生は学校を休んで、実は君らと同じように勉強に行ってくるんだ」ということを子ども供に伝える、保護者に伝えるという意味で、教職への社会的評価の再向上ツールで使えないか。

 それから、第三に、私達にとってこれが一番大きいんですが、大学というところはこれまで教員研修にはほとんど関与しなかった、背を向けてきたわけです。これをこなしていくということが大事です。養成で免許を出しているにもかかわらず、あとの面倒を何も見ていないという大学が、「何とかしようか」ということを1年やってみたら、結構一般学の先生方でもおもしろくやり始めた。もちろん謝金がついているということも一方にはあるんですが・・・。

 この5大学をやったということは、大学間連携が機能しているということで、文科省も推進しておられる高等教育の中の機能別分化文化ということと同時に、大学間連携、共同設置ということ、は何かないかという、これがテーマじゃないかと私は思って、そういうことをを思いながら試行と本実施をやってみました。ら、ひょっとすると廃止かなということになって、来年どうしようかと思っているんですが。

 私は、現場の先生方、つまり県の指導主事クラスも、今年は無理でしたが、来年あたりからはどんどん使うよということを言っています。先ほどもありましたが、現場を知っている人間というのは、ほんとうに講師として迎えるということは大事じゃないかと思います。

 こういうことになりますと、大学の教員というのは現場から大学に来てもらうなんて、自分でらはできないくせに、あまりいい顔はしないんです。例えば、自分たちが放っておくとやらなければいけないことを手伝ってもらえると思ったら、もろ手を挙げて賛成してくれるんで、このすきに学校を知っている人たちをどんどん講師で呼ぶ。

 このシステムは、実は講師で呼ばれると免許更新制を免除してもらえるという、仕組みとしては結構おもしろいものがあって、その辺をアイデアで何とかできないかということを考えてきました。どうなるかは結果を見させていただきたいなと思っているところです。

 もう1点は、6年制の問題です。これはもう数年前からありますし、教員養成系の学部では場合によっては30年来の悲願だという話もあります。しかし、私は必ずしも賛成ではない。100万人以上という職業集団を、どうやってマスターまで上げるか、これの財政はどうするのか。

 先ほどの金子先生も、また趣旨としては場合によっては陰山先生もちょっと触れられましたが、私も「4プラス2」だと思います。その2は、やはり現職研修です。資料のその最後のところに、免許更新制度のあり方について、民主党政権ということでは、ちょっと誤解されると困るんでまずいんですが、これは教職と教育の改善にとって、今、千載一遇のチャンスだとほんとうに思っています。

 そういう意味では免許更新制度のあり方や大学院へのシフト、現職研修というものをどうやっていくかということをうまくつなぐ工程表をぜひつくっていただきたい。その際に、私としてはそこで、一つはここまで一生懸命やったんだから、すぐには辞めないやめないでよという意味もないわけではないですが、免許更新制を抜本的に見直すということを通して、研修の高度化につないでいくんだということが見えるとすばらしいと思います。

 この更新制は研修という観点では入り口でしかないですから、その入り口を次のステップにつないでいくために、それ自身も改善しながら、いずれほんとうの意味で現職の教員が生涯職能成長ということが実現できるシステムをつくる。ができ上がった暁には、そのあかつきには、こんなものは要らないというふうに自然消滅させていく、というぐらいの長いスパンでものを考えられないかなと思っています。

 大学院について、は、4プラス2と申し上げたことが、まさにそのことです。そのままです。少し突っ込みすぎの話ですが、。私がいつも思っているのは、が、途中の時点で1年の研修、(実はうちは現職1年コースということで特別コースをもっているんですが、)まずこれで1年で集中させる。10年前後の教職経験が一番いいんじゃないかと思います。

 民主党さんのマニフェストには、も、具体的にはなかったですが、さらにその後にかつての国会の議論などで鈴木副大臣などはおっしゃっておられた3つの領域の大学院でのさらなる技量高度化。このあたりをあわせて2年間という形をとること。専修免面は先に出すけれども、大学院の課程はその2年間を30年、40年の教職体験、経験の中でクリアしていく。こういうふうにやっていけば、今ストレートマスターを6年制にする必要はあえてないかもしれないと考えています。

 ただ、高校の教員は非常にマスターを持っている人が多いですから、持っている科学的な知識を高度化するという意味では、高校の教員については先行専攻でやる、これはストレートマスターでもあり得るかなというふうにも思っています。

 要点は、最後の3-2,3-43の2の3と4のところです。少し更新講習でつながりかけた大学と行政の連携を実現する。それから既存の県立の教員研修センターなども思い切って見直す。その中で大学はどう機能を発揮できるかということを検討する。そういう工程表と検討内容が示されるとうれしいかなと思います。

 もちろん初任研や10年経研修はそういう枠の中では必要ではなくなるかと思います。初任研なんかは、子供と出会わせたくてしようがない時期に指導主事とばかり話をしているという構図になっていますので、これはぜひやめたいなと思います。

 大変雑駁ですけれども、最初に副大臣から5分程度というお話でしたのでこれで終わります。時間が時間ですので。

【鈴木副大臣】  ありがとうございました。

 じゃあ、布さん、よろしくお願いいたします。

【布氏】皆様、こんにちは。

「地域で育てよう、健やかな子ども」を方針にかかげ、小平市では平成13年4月から地域を中心にしたさまざまな人や組織が、学校や家庭で結びつき、子ども達の教育を創造する取り組みがスタートしました。私自身、学校は開かれたけれども、なかなか現場が開かれないという状況の中でいろいろ思い悩みながら、8年間学校支援コーディネーターとしてやってきた中から、現時点での課題と、今後それらを解決し、継続的に取り組んでいくための提案を簡単にまとめましたので、資料を見ながらお話を聞いてください。

さまざまな教育問題というのは教員の意欲の低下が原因のひとつではないかと思っています。ほんとうにやる気がある、力ある先生が一生懸命やっている姿を、私は8年間同じ職員室の中で見てきました。 資料1にあるように、教育ニーズが複雑・多様化して、学校に求められるものが増大したからだと思います。だから、先生だけに任せるのではなくて、もっと地域・家庭が教育に支援する必要があると思います。

 それを実現していくために資料2にあるように、コーディネーターの存在が重要です。先生は、それぞれの教科や担当に分かれていてつながりが案外薄い部分があります。ですから、つなぐ人がいないと微妙な人間関係の中で苦労している先生方も多いと感じています。 そういう状況の中で地域の教育力を取り入れていくときに、連携が不十分なところに、地域のリソースをいくら入れてもうまく活かされません。先生方は、ある時間は全部使ってますから、空いた時間空いたリソースをやりくりし、調整して大きな力にしていくための先生以外のコーディネート役がどうしても必要です。そして管理職のリーダーシップの下で、コーディネーターがきちんと位置づけられ成長していく環境も重要になります。

 次は資料3です。学校と地域の連携にはコーディネーターが重要という視点に立って、学校支援地域本部事業がスタートしました。他にも文部省が既に取り組んでいる事業、放課後子ども教室、地域ぐるみの学校安全体制整備、家庭教育支援、特別教育支援、スクールカウンセラーなどいろいろありますが。その内容にかかわらず、地域の教育力をコーディネートする仕組みづくりに焦点が当てられた事業が、まさしくこの学校支援地域本部事業ではないのかと思います。私は平成14年から地域の教育力を活かし子ども達の学びを豊かにするための支援を始めていましたのでこの事業が提案されたときには、これで私たちの感じてきた課題が少しは解決できるのではないかとうれしく思いました。

また取り組み始めてこれからのお話ということで資料の右側の列をご覧ください。学校と地域の連携が本格化するに伴って、業務が煩雑になってきています。各地で展開されている学校支援地域本部事業でも、地域との連携となると、力量ある先生、やる気のある先生は、地域のいろいろなリソースを上手に調理して、授業、学びの中に取り入れることができるのですが、学校にいろいろな心理的・物理的ゆとりがなかったり、気持ちがちょっと薄かったりすると、なかなかそれが上手くいきません。

 地域の教育力を束ねる、放課後子ども教室のコーディネーターであるとか、学校支援のコーディネーターであるとか、理科教育支援コーディネーター、これからのキャリア教育コーディネーター。いろいろな分野のコーディネーターが、地域の特色にあわせて活動しています。それらのコーディネーターをまとめていく統括コーディネーターというものが必要なのではないかと私自身思うようになりました。

 学校の校長の経営方針、どういう学校にしたいのか、子ども達にどういう学びを提供していきたいのかという経営方針に伴って、どのような教育を提供していくのか、一緒にパートナーとして考えていく統括コーディネーターが必要です。自分の学校、自分の地域には、何が1番マッチングしているのかを判断していけるようなコーディネーターの存在が必要と考えます。

 さらに、その統括コーディネーターは、単なるボランティア的な感覚の中途半端な立場ではなく、臨時職員ぐらいに位置づけていただけたら良いと思っています。それは、私も8年間さまざまな立場でやってきましたが、現場の先生たちからすると、確かにこの人は力がある、いろいろなことをやってくれる人だ、もっとお願いしたいとあれこれ思っても、ボランティアなのにお願いしてもいいのだろうかといった気持ち、遠慮がでます。先程もお金が出るかどうかが大事だというお話が出ましたが、仕事でお金が出ているということであれば、先生方も同じ仕事として子どもに関わる仕事だと思ってくれますし、パートナーとして、お互いの信頼、関係が改善されるのではないかと考えております。コーディネーターが、パートナーとしていろいろな方が活躍できる、またそういういい人材を逃さないために、能力のある方、適任の方が、きちんと教育という分野で先生方と一緒にかかわるという体制づくりのための予算をお願いしたいと、強く思っております。 

 次の資料5、教員側の体制作りです。外部の教育力を活用するようになると、教員内のコミュニケーションだけでなく、外部とのコミュニケーションをとることが増えてきます。

 教員が最も大切にすべきは、教科をはじめ生徒を学校内でしっかり指導する力であるのはもちろんです。しかし、外部とのコミュニケーションが増えている中では、先生方の研修などでも、学校以外の文化や企業で働いている人のリズムなどを知る内容や機会を設けてほしいと思います。

 私が6年間、職場体験をはじめキャリア教育的視点を取り入れた様々な支援に関わる中で、まずは先生方が地域の世界を理解する必要性を感じるシーンが何度もありました。初めはごあいさつが遠慮がちな先生がいろいろな方と触れ合ううちに1年2年たつと、お互いにしっかりとコミュニケーションが取れるように変化していく姿がありました。保護者を含めた地域の方も、先生方の変化していく姿を身近に触れて、学校に対する理解が深まり協力的に支援してくださる方が少しずつですが広がりました。

 それから学校側の対応窓口という視点ですが、学校が地域とかかわっていくときの窓口がはっきりしていると助かると感じます。窓口は副校長先生や校長先生ということも多いのですが、お忙しい部分もあって管理職だけでは難しいですし、やはり何人か事情を分かっている方(例えば教務主任・主幹・進路指導主任・学年主任)が、チームとして私たちと関わって下さると良いと思うのです。

 私自身、コーディネーターもチームで動くほうがいいと思っていますし、統括コーディネーターがそれを取りまとめていく。 同じように先生方もトータルに学校の運営・教育というものを見ていくチームを作って、それぞれを管理職が取りまとめるようにしていけば、もっと上手くいくと思います。

 次は資料6です。資料5の内容と続いています。「多様な大人に触れることが生きる力を育む。何で勉強しなければいけないのだろうか。」要は社会人として自立して生きていくために、学校の教育はあるのだろうと、私は、思っています。そこに関わる大人、地域住民、教員も含めて、地域、学校との連携の中で子ども達に接することは接する側にも大きな学びや気づきの場であると、私自身日々実感しております。

 視点は変わりますが、 最後に私の実感として、私がこの8年間いつも大事にしてきた1つのキーワードは、「よかったね」ということです。いつも「何々できてよかったね」という会話が様々な場面で出ます。今、子ども達が携帯を手放さない姿が多く見られます。いつもだれかとつながっていたい、誰かに認めてもらいたいと感じているのは、そばで見ていてよく伝わってきます。

 そんな子ども達に足りないのは、やはり「私はこれでいいんだ」「私はちゃんと社会にかかわっていけるんだ」という自己肯定感と自己効力感です。そしてそれは、右肩上がりの時代が終わった中で、大人にも不足しているのではないかと思います。私自身を含め関わってくださった人が、「学校に関わってよかったな」と思う心が伝わってくる。何よりも先生が、公立校など、「この学校に赴任してハズレ」と思うのではなくて、「この学校に赴任してよかったな」と思う。またその地域に住んでいる人たちも、「この学校のあるところに住んでいてよかったな」という肯定感が、地域社会の中で浸透していったら、すばらしいと思います。地域と学校が連携し多様な教育に深くかかわる学校支援地域本部事業のような形を、今後も継続していく事が、事業を設立した意義に合致するのではないかと思っています。

 終わりです。ありがとうございました。

  皆様、こんにちは。

 私も学校支援ということで、「地域で育てよう、健やかな子供」ということで、小平市では約10年ぐらい前からスタートしました。私自身は学校を開く、学校は開かれたけれども、なかなか現場が開かれないという現状の中でいろいろ思い悩みながら、8年間やってきた中から、いろいろ思ったことを簡単にまとめましたので、資料を見ながらお話を聞いていただければと思っています。

 参考のほうなんですが、免許更新制にもちょっとかかわるのかもしれませんが、これまでの話は、よく地域連携というと、先生たちの学校の力がすごく落ちているんじゃないか。確かにどうしてこの人と思うような方もいれば、早く更新してほしいと思う方も実際は私もいつも思うんです。どんな研修を先生たちは受けてきているんだろうと思っているのも事実なんです。

 でも、今横にいらした高岡先生がおっしゃったような話を聞くと明るい希望を今日は見出せたのでうれしいなと思っております。

 ここにも書きましたように、さまざまな教育問題というのは、教員の教育力の低下が原因ではないんじゃないかなと思っています。ほんとうにやる気のある、力のある先生が一生懸命やっている姿を、私は8年間同じ職員室の中で見てきました。

 やはりここに書いてあるように教育ニーズが複雑・多様化して、学校に求められる教育力が増大したからじゃないのかなと思います。だから、先生だけに任せるのではなくて、やはりもっと地域、家庭が教育に貢献する必要があるんじゃないかと思います。

 それを実現していくために、2コーディネーターの重要性です。やはりつなぐ人がいないと、先生方はそれぞれの専門家でもありますし、子供たちには仲良くしなさいと言うんですが、意外と先生たちって仲があまりよろしくないんですね。微妙な人間関係の中で苦労しながら仕事をしていらっしゃるんだなということを私は肌で感じているんです。

 そういう状況の中で、外の教育力を入れていくときに、仲が悪いところに外の力を幾ら入れてもうまくつながらない。やはり先生たちはいる時間を全部使っていますから、かかわる人というのはあいた時間、あいたリソースをやりくりして、参加、貢献している皆さんなわけで、少しずつの貢献を調整して、大きな力にしていくためにコーディネート役がどうしても必要ではないか。コーディネーターの位置づけ、育成の重要性が増している。

 3学校と地域の連携にはコーディネーターが重要という視点に立って、学校支援地域本部事業がスタートしたんだろう。また、この事業は支援内容が、放課後子ども教室であるとか、スクールガード何とかとか、文科省が既にやっている事業はいろいろありますが。

 その内容にかかわらず、地域の教育力をコーディネートする仕組みづくりに焦点が当てられた事業が、まさしくこの学校支援地域本部事業ではなかったのかと思います。私は平成14年からこの取り組みを始めながら、この事業が提案されたときには、これで私たちの悩みが少しは解決できるんじゃないかと思って喜んでおりました。

 また、取り組み始めてこれからのお話ということで、その隣です。その学校と地域の連携が本格化するに伴って、やはり業務が確かに煩雑になってきています。よくこの学校支援地域本部事業などでも、地域との連携となると、力量ある先生、やる気のある先生は外のいろいろなリソースを上手に調理して、授業、学びの中に取り入れることができるんですが、現場にいろいろな心理的・物理的ゆとりがなかったり、気持ちがちょっと薄かったりすると、なかなかそれがうまくいかない。

 地域の教育力を束ねる、今は放課後子ども教室のコーディネーターである人とか、学校支援のコーディネーターであるとか、理科教育支援コーディネーター、例えば、これから生まれるかもしれないキャリア教育コーディネーター。いろいろな名前のついたコーディネーターばやりなんですが、そのコーディネーターをまとめていく統括コーディネーターというものが設置されていく必要があるんじゃないかと私自身いつも思っています。

 学校の校長の経営方針、どういう学校にしたいのか、子供たちにどういう学びを提供していきたいのかという経営方針に伴って、学校理事会じゃないですが、どういう教育を提供していくのか、一緒に考えていく統括コーディネーターが必要です。自分の学校、自分の地域には、何が一番マッチングしているのかを判断していくような存在のコーディネーターがいたらいいと考えます。

 やはり、そのコーディネーターは単なるボランティア的な感覚であるとか、中途半端な立場ではなく、臨時職員ぐらいに位置づけていただけたらと思っています。なぜかと言うと、私もいろいろ8年間やってきましたが、現場の先生たちからすると、確かにこの人は力がある、いろいろなことをやってくれる人だ、もっとお願いしたいといろいろ思っても、ボランティアなのに、お願いしていいんだろうかといった気持ち的な遠慮が出ます。

 仕事だ、この人は給料をもらっているんだ、さっきもお金があるかどうか大事だとありましたが、やはりお金が払われているということで、先生方の中にも同じだという気持ち、その中には守秘義務のことであるとか、同じパートナーとして、お互いの関係性が改善されるんではないかと考えております。

 次の5教員側の体制づくりです。外部の教育力を活用するようになると、教員内のコミュニケーションではなく、外部とのコミュニケーションがふえてきます。やはり私はここで職場体験やキャリア教育のほうにもかかわっているんですが、研修では先生方の外とのおつき合い方みたいなものをぜひ充実していただきたいと考えております。

 先生が交渉してうまくいくときもあるんですが、先生が交渉して職場体験がなくなったときもあるのでは、やはり接遇といったものをしっかり学んでいただけたらなと思っています。

 あとは、教員側ということで、地域から見ても、保護者から見てもそうですが、学校が地域とかかわっていくときの窓口がはっきりしていただけたらと思っています。かといって、教頭先生、副校長、校長先生だけということになると、なかなか難しいものがあって、やはり私自身現場で考えているのは、コーディネーターもチームとして動くほうがいいと思っていますし、統括コーディネーターがいて、いろいろな専門コーディネーターがいる。

 学校側も教頭がいて、そこに教務主任、主幹、進路指導主任担当であるとか、いろいろな先生方がいる。学年だけ、自分の教科だけという、自分のところだけにかかわるのではなくて、トータル的に学校の運営、教育というものを見ていくチームづくりがあるといいのではないかと思っております。

 6多様な大人に触れることが生きる力を育む。何で勉強しなければいけないんだろうか。要は社会人として自立して生きていくために、多分学校の教育はあるんだろうと、私は簡単に思っているんですが、簡単な言葉で言えば、そこにかかわる大人、地域住民、教員も含めてですが、地域、学校との連携の中で子供たちに接することは大きな学びや気づきの場であると、私自身もすごく実感しております。

 初めはごあいさつもできなかった先生が、いろいろな方とふれ合うようになって、1年、2年たつと、ごあいさつができ、外の人ともしっかりコミュニケーションがとれるようになって、ほかの学校に異動されていく。私自身、先生を育て、子供を育て、自分の子供を育て、すごいなって…。

 コーディネーターに安い謝金ではなく、パートナーとしていろいろな方が活躍できる、またそういういい人材を逃さないために、そこがただ同然だと、特に女性が多いんですが、理解のないご主人とか、いろいろな方に責められて、そんなことやっているぐらいなら、ほかのパートに出ろといわれているのが現実なので、そういう能力のある方、適任の方にちゃんと教育で先生方と一緒にかかわってくださるという体制づくりのための予算をお願いしたいなと一番思っております。

 私はこの8年間いつも大事にしてきたキーワードは、「よかったね」ということです。いつも何々できてよかったね、ということで、今子供たちが携帯を手放さないで、いつもだれかとつながっていたい、だれかに認めてもらいたいという気持ちが強いのは、そばで見ていてもよく伝わってきます。

 そんな子供たちに足りないのは、やはり私はこれでいいんだ、私はここで社会にかかわっているんだという自己肯定感と自己効力感が今はすごくないんじゃないか。私自身かかわった人も学校にかかわってよかったな。何よりも先生が、私立もそうかもしれませんが、公立なんか、この学校に赴任してハズレ、と思うんじゃなくて、この学校に赴任してよかったなと思う、またその地域に住んでいる人たちも、この学校のあるところに住んでいてよかったなという肯定感が地域社会の中でできていけたら、今文科省が取り組み始めている3年間と言われています学校支援地域本部事業が地域の多様な教育にかかわっていく、すごくいい意義になるのではないかと思っています。

 終わりです。

【鈴木副大臣】  ありがとうございました。

 じゃあ、荒瀬さん。お願いします。

【荒瀬氏】  遅れて、おくれて、申しわけありませんでした。1枚ものでA4縦長の資料がございます。それに沿ってよろしくお願いします。

 まず、そこには書いていないんですが、マニフェストだったかと思います。学習指導要領の大綱化というのをお書きになっていたかと思います。当然、いろいろ考えていっていただくということはある話だと思いますが、学習指導要領はでき上がったばかりで、しかもこれからほんとうにどうして行くかということを現場は相当考えておりますので、どうぞその点はご配慮よろしくお願いいたします。

 その中で、学習意欲をどう伸ばしていくのかが大きな課題になっています。今日は、ここにいっぱい書いていますが、要は学習意欲をどうして伸ばしていけるのかということにかかわることを申し上げられたらと思っております。

 まず1高校無償化、これはもうずいぶん皆さんもおっしゃったんですが、私はそこに書きましたように、子ども手当もそうなんですが、このお金を教育予算というふうにはできる限りしていただきたくないと思っております。子ども供の教育のために直接使えるお金として学校に出していただくお金を厚くしていただきたいと思っております。これは国民にとっては大変ありがたい話かと思うんですが、学校はほんとうにお金がないんです。

 この間もNHKでやっていましたが、理科の人体模型がセロテープで止めてとめてあるとか、そんな状態がありまして、うちも見てくれは格好いいように見えるんですが、人工芝がはがれたら、直しようがないというようなことがいろいろあります。ですから、学校現場にお金を使っていただくということをよろしくお願いしたいと思っています。それは、直接生徒に還元されていきます。

 また、そのお金の点で言うと、先ほどちょっとおっしゃっていましたが、お知り合いになった島根県の島の方なんですが、Iターンがいっぱい入るくらい、ものすごく魅力的な活動をなさっているんです。しかし、子ども供の数がどんどん減ってきて、高校がなくなる可能性があるという話を聞きました。

 そうなったら、Iターン組はやっぱり自分の子ども供はそこには置いておけないので、ということで、学校があるかないかということは地域が生きるか、生きないかということに、ものすごくかかわりがあります。そういったところへもお金が使われるということはありがたいなと思います。

 2ですが、うちはSSHスーパー・サイエンス・ハイスクールなんですが、地方自治体がだんだんお金がなくなってきて、第1期指定で3年間、その後新たな5年間ということで、8年間指定していただいています。うちの場合は、8年目です。

 これが終わると、せっかく今まで積み上げてきたことと、今、小学生、中学生、高校生が一緒に学びあうという、さらに新しいことをやっています。高校間の横のつながりというのをやっていらっしゃる学校はたくさんあって、それはそれで大変いいと思うんですが、小学生の間から、もっともっと理科や数学・算数に対する興味を持たせるふうにできないかということも考えていまして、そういったことも含めて、またお考えいただきたいと思います。

 それと同じことにもなるんですが、3教育委員会制度の見直しというのもお書きでしたが、そこに書いたとおりです。自治体に完全に任せきりということにはならないんでしょうけれども、そうなりますと、お金の面では自治体はお金に困っていますので、考え方もあるんですが、教育予算の面で非常に厳しくなるんじゃないかと思っています。

 4高等学校長の権限の拡大と責任の明確化です。小中学校を置いておいて、高等学校は、ということですが、非常に高等学校は課題が多いのです。今度でき上がりました学習指導要領も教育課程部会の中に高等学校部会ができて、議論したんですが、ありていに言えば間と間がないんです。

 多様性と共通性という、相矛盾するものをいかにまとめるかということで、結局それぞれの学校がさまざまです。さまざまなことによって、いろいろな課題があるんですが、その具体的な対策がなかなか講じにくい。

 それはどうしてかと言うと、1つには高校の校長が2年ないし3年で、特に公立高校は変わっていく。私は実は7年目でして、ほかでは使い物にならないと思われていることが大きな理由なんですが、7年いるといろいろなことが見えてきますし、ここをこうしたらどうかと思えるんですね。

 ところが、7年いても人事権もなければ、予算も自由にはならない。一度腰をすえて、授業料無償化するというきっかけもありますし、ぜひお考えいただきたいと思っています。

 同じことで5職業専門高校の充実です。現在、中教審でキャリア教育・職業教育特別部会というのがあって、非常に活発な議論が行われているんですが、どう形を変えても、普通科、大学進学という一つの価値観と、職業高校へ行って、そこで就職という価値観とが、社会の中であまりにも均衡を欠いていると思います。

 ものをつくっていく、しっかりと社会を支えていくというカテゴリーの中で生きていく人に対して、もっと敬意を払わなければ、そこのところがこの日本は弱いと思うんです。

 私は子ども供がヨーロッパにずっと住んでいて、ものづくりをやっていますが、ものすごく尊敬されます。そんなものがつくれるのかと。やっぱりそこは大いに見習うべきではないかと思います。

 日本もかつてはものづくりってもっと重視されていただろうに、それが高等学校でものづくりに関係する学校へ行くとか、職業専門学校へ行くということが、何か後ろめたいみたいな、その感覚を何とかなくせないかと思っています。

 6司書教諭の配置をお書きになっていたかと思いますが、司書教諭は授業を持っていますので、町の中に司書の資格を持っていて、職場がなくて困っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃって、私も何人か存じ上げています。こんな言い方は変なんですが、そんなにびっくりするほど高いお金にならないと思いますので、そういう方をもっと活用できるんじゃないかなと思います。町の人材も活用するということも大事じゃないかと思います。そして、授業を持っておられなかったら、活用度は高くなると思います。

 それから、全国学力学習状況調査はやってみてわかったことがいっぱいありました。それはそれでよかったと思うんですが、明日お越しになります秋田県の根岸教育長と話をしていてほんとうに思ったのは、子ども供たちは励ましと見守りが大事なんです。今までおっしゃっていた皆さんは、そういうことにかかわることをおっしゃっていたと思うんですが、励ますような社会、励ますような地域、あるいは励ますような学校、家庭かどうか。同じように見守るということも大事、です。

 そこのところはさっきの話で、職業専門高校の生徒たちは、きっと励まされていないし、あまり見守ってもらっていないということにもつながっている。ここのところをもっと考えないといけないじゃないか。

 8教員免許更新制は、条件が整っていないということで私は廃止に大賛成です。ただ、先ほどもおっしゃっていましたが、教員採用に関すること、教員増に関することで申しますと、教員採用は私もインターンシップをぜひ導入していただきたい。

 必ずわかります。1年見ていれば、この人が向くか向かないか。お互いミスマッチというのはすごく不幸で、それはぜひ避けたいと思っていますので、お願いしたい。それから、これもおっしゃっていましたが、研修機会というときに、週休2日制まではいかないまでも、6、7年働いたら、10年でもいいんですが、1年間ほんとうに休めるようにしていただいて、それで教員数を増やして、ふやして、ちゃんと現場では回っていけるような形をとっていただきたい。

 その場合、無給でもいいと思うんですが、大学院行こうが、海外へ行こうが、あるいは仕事をしてみるというのも一つの大きな勉強になろうかと思います。いろいろな教員がいて、それが生徒に、子ども供たちに対して大変大きな刺激になっていくと思いますので、ぜひそういったことをお考えいただいて、子ども供たちの学習意欲が生まれるような状況をつくっていただければと思います。

 ありがとうございました。

【鈴木副大臣】  ありがとうございました。

 2時になってしまいまして、大臣一言。

【川端大臣】  仕事柄、いろいろな時にときにいろいろなヒアリングをさせてもらいましたが、今日が一番楽しかったです。

 ほんとうに勉強になりました。今日はキックオフですので、またいろいろな機会にご教授ください。

 ありがとうございました。失礼します。

【鈴木副大臣】  すいません、ありがとうございました。

 今日はキックオフということですので、おおむね私どもが考えておりますことと、皆様方からも非常に参考になることばかりでございました。まだ、追加でこれを我々に指導いただけることとかいろいろありましたら、お手紙なり、メールなり、ファクスなりをいただければと思いますし、概算要求が落ち着きましたら、もう少しテーマを絞って、こういう意見交換の会も持ちたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

 一、二何かご質問があれば、お答えはさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。

 基本的に、今日お話のございました地域、家庭を大事にするという予算は、引き続き確保していきたいと思っておりますし、教員免許更新も教師の自己研鑽の場というものは言いわけでございまして、何人かの方々からお話がありましたが、不適格教員の問題と教員が生涯研鑽を積み重ねていくという話がごちゃごちゃになっておりました。それはきちんと分けて考えていきたいというふうに思っております。将来、おそらく予算は12月まで年内予算をちゃんとやるということにプライオリティーを置いて考えていかなければいけないと思っております。

 年が明けたあたりから、先ほど高岡先生からもお話がありましたが、60年ぶりぐらいに教育のあり方とか、特に教育人材のあり方を見直す絶好のチャンスだと思っておりますので、引き続き皆様方にお知恵なり、いろいろなアイデアをお寄せいただきたい。これは、また改めてご相談をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 それから、1点だけ申し上げますと、マニフェストと政策集INDEXというのがありまして、これが私どもの説明不足で、正確なご理解を賜りたいと思います。マニフェストとは、鳩山政権がこの4年間でぜひ実施を、是が非でもやりたいというものでございます。

 政策集というのは、民主党結党以来10年がたちますが、10年間いろいろ議論してきたこと、それから民主党がこれからも4年以上は続くとは思いますので、そこで我々の党として勉強なり、検討なりをしていきたいという途中経過のプロセスを皆さんとシェアさせていただいているというふうに読み分けていただいたらいいかと思っております。

 例えば、大綱化の話とかはずっと議論はしてきまして、これからも議論はしていきたいと思っていますが、これも4年間で直ちに、もちろん議論が熟せばその可能性を否定するわけではありませんが、そういうことです。

 私どもはこう考えていまして、マニフェストができなかった場合には、これは国民の皆さんからお叱りをいただく。それぐらいの覚悟を持ってマニフェストということをしています。

 これから皆さん方のご意見を伺って、マニフェストに書いていないけれども、あるいは政策INDEXにはまだ生煮えのことだけれども、皆さんのお知恵で何か新しいものをきちんと形に出すことができれば、逆に加点評価を国民の皆さんにしていただけるんじゃないかと思っております。

 そういう部分も、川端体制の中でぜひ積み上げていきたいと思っております。この4年間で申し上げると、大体3つぐらいのフェーズで考えていまして、まず学費負担の問題、あるいは格差是正の問題です。これは来年の4月からでも速やかにやっていきたいという話です。

 第2段階としては、ここをまさにご指導いただきたいわけでありますが、教員、あるいは教育に携わる人材の質と数の問題です。もちろんこのメーンになるのは教師でありますが、そうした学社連携的なことも含めて、人材としての教育力をどう上げていくか。それと同時に教材のデジタル化ということも私どもは掲げさせていただいていますし、今日も何人かの先生から出ました。

 我々はハードから、ソフトとヒューマンへと言っていますから、教育におけるヒューマンの問題とソフト、どういう教材を使っていくか、ここでデジタル化ということは重要な意義を持っていると思います。ただ、ここも私どもはまだ未執行の分の電子黒板は1回やめさせていただきましたが、ICTは前政権よりも理解を深く持っているつもりであります。

 まだ国語と英語の一部教材のデジタル化しか進んでいなくて、このバランスをよくしていきたい。したがって、モデル授業的なことはどんどん進めていきたいと思っていますが、貝ノ瀬さんからもお話があったように、そこのバランスと教える人材と教材とその環境ということを、もう少し現場のニーズに着目して考えていきたい。これを相当まじめにやっていきたい。これが第2フェーズのソフトとヒューマンの話です。

 そして、第3フェーズとして、今日もコミュニティ・スクール、あるいは学校理事会のお話がありましたが、まさにガバナンス。これは今まで進めてまいりましたコミュニティ・スクールを増やしていく。ふやしていく。それから、学校支援地域本部、そのことを拡充していく、あるいは広めていく。このことは今年からでも着々とやっていきたいと思っております。

 地方教育行政法のあり方については、この4年間の仕上げといいますか、検討は今からきちんとしていくべき非常に重要な問題があり、かつ大切な問題ですから、検討はすぐに着手しますが、これは全国津々浦々の教育現場のお声を十分に聞きながら、議論を熟することで進めていきたいと思っております。

 そんなピクチャーの中で折に触れていろいろとご指導いただければと思いますし、皆さんからもぜひ意見を日々お寄せいただければありがたいなと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 高井さん、何か。

【高井大臣政務官】  大変有意義な、すとんと腑に落ちるというか、それぞれメークセンスのお話、イメージがすごくわいてまいりましたし、大変参考になりました。長期的なことも含めて取り組んでいきたいと思いますので、今日はありがとうございました。

【鈴木副大臣】  では、とりあえず今日はこれで終わらせていただきたいと思います。

 ほんとうにお忙しいところ、ありがとうございました。

【全員】  ありがとうございました。

 ―― 了 ――

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