児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(平成30年度)(第1回) 議事要旨

1.日時

平成30年11月19日(月曜日)15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省15階 15F特別会議室

3.議題

  1. SOSの出し方に関する教育を含めた自殺予防教育の実施状況について
  2. 今後の議論の進め方について
  3. その他

4.出席者

委員

新井委員,荊尾委員,川井委員,窪田委員,高橋委員,中馬委員,村瀬委員

文部科学省

永山初等中等教育局長,松木生徒指導室長,星専門官

5.議事要旨

※議事に先立ち,新しい委員の紹介が行われ,主査の選出が行われた。また,議事要旨と配布資料の公開についての確認が行われた。その後,永山初等中等教育局長・主査より挨拶があった。
※事務局より配布資料の確認とポイントについての説明があった。

【主査】 2006年の8月にこの会議が始まって,毎年度,委員の方から申し出ているが,どうして第1回の会議がこんなに遅くなるのだろうか。たしか今年に関しては,1月に集まって意見を交換して,今年度は4月から始めようという話だったのが,第1回の会議が11月になってしまった。これではまた来年度もこんなふうになるのかなという心配をしながら今日集まってきたのだが,その点どうか。
【事務局】  開催が非常に遅れてしまったことについて,大変申し訳ないと思っている。本来,もっと早いタイミングで開きたいと思っていたが,当課の業務の混み具合によって,ここまで遅れてしまった。申し訳ない。
【主査】   もう一つ,初年度のときに報告書を出して,そこで子供の自殺予防に関してはほとんど何もされていない,全てをできるわけではないので,とりあえず絞って,まずこれだけはやってほしいというのが2つあった。私が記憶しているのは,先生方に子供の自殺予防についての正しい知識を持ってもらおうというのが1つ。もう一つは,どれほど自殺を予防しようと頑張っても,それでも起きてしまう自殺があるというのも現実なので,起きてしまった自殺があったら,遺された人に対するケアをきちんとすべきだという,2つの柱で報告書を作った覚えがある。
 まず第1点だが,先ほど事務局から,普及啓発協議会を各ブロックに分けてやっているという話があったが,参加者の方からどういう評価があるのか。先生方がそういった研修会に出て,どのように捉えているのかということを,もしデータがあったら教えてほしい。
 もう1点,各地域で自殺が起きてしまっている。いじめ自殺ではないかというので,第三者委員会が立ち上げられているけれども,どうも第三者委員会の中立性というのが保たれなくて,かなり各地で混乱が起きている。その点の検討というのを,この会議でする必要はないのかなと疑問に思っているので,その2点について,まず教えてほしい。
【事務局】  自殺の普及啓発協議会については,参加者からアンケートをとっている。今手元にないので,また改めて紹介したいと思う。それから,いじめの自殺については,確かに今いろいろな問題点が指摘されていて,特に第三者委員会が立ち上がった後に,調査報告書の内容とか,あるいはそもそもの人選の部分とか,いろんなところで指摘されている。主要な原因は,教育委員会等と保護者との間の信頼関係がうまく構築できないということで,うまくいかないことにある。その結果,再調査になるといったような問題が指摘されている。こういった問題については,この会議とは別に,いじめ防止対策協議会という,いじめのことを話し合う協議会があり,今後,そういったところでも議論していきたい。当面は重大事態の成果の分析というところをその協議会では議論しており,その分析結果を再発防止に生かすためのシステム化された仕組みというか,そういったものが必要ではないかという観点から議論しているが,当然その先に第三者委員会の在り方自体ということがあり,これも実際関心が高いところなので,議論したいと考えている。 一部,自殺の背景調査がリンクしてくるわけだが,こういった議論の進み方を見ながら,両者の関係をどのように整理するかも課題だと考えているので,その課題についても検討したいと考えている。
【主査】  それは今年度のこの委員会のテーマとして考える必要はないということか。
【事務局】  まずはこの会議では,SOSの出し方教育というものを議論いただきたいと考えている。いじめ防止対策協議会の検討も,今のところは,重大事態の調査報告書の分析,それからその成果の活用といったところを議論しているので,その次の段階かなと思っている。また,当然いじめの調査と自殺の背景調査の方との関係性については,よく議論する必要が出てくると思うので,その状況を見ながら,こちらでも相談させてもらいたい。
【委員】 資料5だが,平成28年度に調査結果が発表されている。まず,自殺対策基本法に定める教育に当たり,「死ぬこと」や「自殺」を取り上げた教育の実施状況ということで,これは実施した学校の中で取り上げたものがこの内容がどうかということの分析だ。だから,やっていない学校は,もちろんここには入ってこないという理解でよいか。
【事務局】  その理解で結構だ。
【委員】  それで,明示的に取り上げなかった理由というので,保護者からの合意が得られなかったためというのが1.7%。この合意が得られなかったというのは,合意を取り付けようとして得られなかったのか,それとも合意をとろうとしたけれども難しいとしてやめたのか。
【事務局】  両方含まれている。そこを区別して聞いてはいないということだ。つまり,最初から保護者の同意は無理だろうと思って,チャレンジをしなかったケースはあるということだ。
【委員】  なぜそんな質問をしたのかというと,こう書いてあると,合意を得ようとしたんだけれども,得られなかったからやめましたという捉え方になってしまう。もし保護者が同意しないのであれば,どういう理由なのかとかということを少し見ていった方がいいのかなという思いがある。 それからその次,啓発の実施状況ということで,これは授業や講義はしていないが,リーフレットや何かを配布したというのが,これだけあるという理解でよいか。
【事務局】  そういう理解でよいと思う。
【委員】  これも,数字としてこう出てくるのは分かるけれども,どういう配り方をしたのか。何か学校がリーフレットを作ったり,あるいは,どこかにあったものを配布しただけで済ませているのか。何かそういう形で進んでいくということに非常に心配な面がある。この啓発というのが,リーフレットの配布というようなことで啓発と捉えられると,丁寧さに欠け過ぎていて,何かやればいいみたいな感じになりかねない。そんな懸念を感じている。今質問したことに関して言うと,今まで私たちの委員会の取組としては,ある意味遠回りに見えるようなところもあったけれども,教職員への研修,保護者への同意は,全部契約をとるという意味ではなくて,周知して,こういうことやりますよと言ってやっていくことだ。それから教材についても,適切な内容を,できれば教職員が検討する中で進める。さらに,医療との連携というのも,その場にいるという意味ではなくて,作ろうというようなことを言ってきて,それが十分に広がらなかったので,何かSOSの出し方教育に変わるというような感じがする。変わるのかどうかというのはあるが,何かちょっとそういう感じがして,私としては,今までこの委員会で取り組んできた自殺予防の教育が,例えば,委員の先生方がそれぞれいろいろな地域で実践しているようなことが余り反映されずに,SOSの出し方というだけで出ているところにちょっと懸念がある。普及啓発協議会を展開して,教職員への研修ということを進めてきたが,そういう成果というのが検討・検証されて,それでどうするのかという方向性でないと,どうなのかなと思う。我々が今まで取り組んできたことが,ここに全然出てきていないというのが,ちょっと寂しい。文部科学省としてこういう取組をやってきたんだということを,例えば自殺総合対策大綱のときあたりに発言してもらったか。こういう成果と課題があるということを言ったのか言わなかったのか,というあたりが気掛かりであるので,答えられる範囲で答えてもらいたい。
【事務局】   資料5の最後のページの啓発の実施状況については,授業や講義ではなくリーフレットの配布のみを行った場合は該当とあるが,このリーフレットの配布をしつつ,授業や講義を行った学校も,この1番右の2万2,000校の中には含まれていると思っている。なので,授業や講義を実施せずにリーフレットの配布のみを行った学校数ではなくて,この前のページに出てきている様々な教育を実施しつつリーフレットの配布を行った学校も含まれているという理解なので,当然,いわゆる自殺予防教育を行わずにリーフレットの配布といった啓発のみを行った学校もあるかもしれないが,そうではなくて,自殺予防教育も行って,かつ啓発も行った学校もあるという理解でいる。
授業は行ったがリーフレットの配布のみ,啓発までは行っていないといった教育の中で,例えば24時間SOSダイヤルを周知してもらったりとか,あるいは相談機関の窓口を周知してもらったりというのは,恐らくやられていると思うが,そこをあえて分けたときに,可能性として,授業はやったけれども啓発は行っていないという学校はあるかと思う。
その上で,2つ目の指摘として,この協力者会議で「子供に伝えたい自殺予防」などを取りまとめていただいて,その後,様々な地域で自殺予防教育の取組が進んでいるということだが,それについて,例えば自殺総合対策大綱といった取りまとめ,さらに文部科学省から,その点を主張したのかという指摘だが,厳密には,そちらの主張をしたかどうかという根拠を今持ち合わせていない。ただ,大綱が策定されようとしたときは当然,事前に文部科学省にも照会が,あるいは確認依頼がきて必要な意見を述べてきている。その際に,当然ながら,こういった「子供に伝えたい自殺予防」を作成したりとか,それを踏まえて普及啓発協議会で啓発を行ったり,そして現場において様々な実践がされているということは,言っている可能性が高いと思う。 ただ,現場でどれぐらいの数が取り組まれているのかとか,どれぐらいのクオリティーで行われているのかというのは,文部科学省に十分なデータがない。もしあるとすれば普及啓発協議会,28年度からは10ブロックで開催しており,その際に,先生方の生の声を聞くこともあるし,終わった後にはアンケートを毎回実施して,その自由記述欄で様々な内容を記載してもらうこともあるので,そういったことを通じて生の現場の声をとっている状況にあると思っている。
 文部科学省として何もやっていない,あるいは協力者会議における議論が何ら自殺予防教育につながっていないと捉えられてしまうのは,文部科学省としても本意ではない。引き続き,文部科学省として推進してきた施策をきちんとアピールしていくことの重要性というのは認識しているので,今後そういったところにも留意していきたい。
【委員】  ですから,例えば,この文科省の考え方を受けて,この協議会の委員が関係している,さいたま市あるいは北九州市の取組がある。私も兵庫県で教員とプログラムを作って,兵庫県教育委員会として自殺予防の授業づくりとかをしている。我々のアピールが足りなかったのかもしれないが,それらが出ていないというのがちょっとどうなのかな,ということで言わせてもらった。
【委員】  これまでこの会議で進めてきた自殺予防教育というものと,SOSの出し方に関する教育というものの具体的なコンテンツの移動というか,そのあたりの議論はどうか。具体的には,どういう中身のものがSOSの出し方教育として今回出てきているのか,というあたりが余り明確にされないままに,やはりこれまでのものと連続線上ではない形で新しいものが入ってきている,という印象を持つ。
 この委員会で,私も最初からではなくて途中から入ったが,最初に,まず一番身近な大人である教員の先生方に,正しい知識と対応スキルを持っていただくということで,「教師が知っておきたい子供の自殺予防」という冊子がまず出た。しかし,どれだけ留意していても,起きてしまった後の事後ケアのための「自殺が起きたときの緊急対応の手引き」が出て,それを踏まえて,子供たちに適切に安全な環境の中で伝えていこうという流れで進んできているわけで,どの部分をどのようにより進めていくとか,変える必要があれば変えていくというように,これまでの取組の延長線上に必要なことを入れていくことが必要かと思う。言葉だけが先行していて,例えばSOSの出し方のみならず,受け止め方についても必要ということで,それはそのとおりだが,その点は既に「子供に伝えたい自殺予防」の中の重要な要素として入っているし,それがある意味,子供を対象とした啓発教育の肝だと私たちも考えている。そういう概念整理というか,中身の整理の上での議論ではないと今後,効果的ではないのではないかと思った。
【事務局】  私も普及啓発協議会などで実際質問を受けることがあったが,SOSの出し方に関する教育と私どもが進めてきた自殺予防教育との関係がどうなっているのかということは,やはり現場で少し混乱が起きている。それは我々がきちんと概念整理を示していなかったからだと思うので,それを,自殺予防教育の実施の留意点という形になるかもしれないが,きちんとした形で示すことも必要だと考えている。
【委員】  いいですか。3点ほど。まず1点はお願いだが,冒頭主査がおっしゃったように,自殺の背景調査の指針の改訂版ということの中で,これはいじめ防止対策推進法のいわゆる重大事態への対応というところの基盤になる考え方であったのだろうと思っている。マニュアルではなくて在り方だという位置付けで作ってきた。先ほどもあったように,やっぱり課題が出てきている。1つは第三者委員会の問題,報告書の内容と御遺族の思いがすれ違ってくる中で再調査という流れがある。先ほど学校あるいは教育委員会と遺族の方の信頼の問題だということもおっしゃっていたが。もう一つは,委員自体。これは中立性,公平性ということを担保するということをしてきたわけだが,今はさらに,専門性というところが言われてきている。その中で,委員を引き受ける方がどんどん少なくなってきているという現状がある,という大きな課題が生まれてきている。さらに,もう一つ言えば,学校,教育委員会が調査した内容を隠蔽していたという指摘もあった。これは私どもも一番懸念していたことだ。それはそれとして,こうした議論の場というのが,改めてこの会議としてできたところなので,是非そういう議論の場を与えてもらいたいということが1つ。これはお願いだ。
 それからもう一つ,先ほど事務局の話の中で,児童生徒の自殺等に関する実態調査というのがあったが,実は平成23年の6月1日付けの調査だったと思う。児童生徒の自殺等に関する実態調査は,文部科学省に調査の概要を出すようにということで動いた。私の数字の認識不足かもしれないが,数年して,たしか500事例ほどの報告があった。要は,自殺する前に子供たちが誰かに相談したという実態がどの程度あったかということが,その実態調査の中から分かるのかどうか。今,いじめの会議の中で,こういった分析がなされているという話が先ほどあったが,例えば自殺する前にそのお子さんが誰かに相談していた実態があったのかどうかということについて,報告があるとすれば教えてほしい。最後にもう一点。SOSの出し方という点で,かつて自殺予告というのが日本中で蔓延したときは電話によるものだった。では,誰がその電話を掛けたのかということを特定するために,学校はローラー作戦をやり,緊急度が非常に高いということで,夜を徹して本人を特定するということをやってきた。今回SNSを活用することも含めて,そうした非常に緊急度が高い子供からの訴えに対しての対応として,かつてあった課題と同じように,今回この資料の中に友人の感情を受け止めてという整理がされていた部分がある。かつてはピアカウンセリングということが言われて,子供たちが友達の悩みを受け止めていくということ,これも同様に議論があった。ところが,相談を受けた子供の危険性というようなことも含めて課題があった。それから,授業の一環として,少なくとも年1回授業の中で,と資料にある。年1回ということで本当に実効性が上がるのかどうか。かつて相談カードを配布したり,様々なことをやってきた。そういう,かつては自殺予告ということだったが,議論してトライしてきたこと,よく言えば検証ということだが,その上に立って,ほぼ同じようなプロセスで今回SOSの出し方というところも一部で重なる部分があるだろうと思う。そうしたところの動きやこれまでの過去のことも踏まえての今回の議論になるのかどうか。あるいは,そういう整理が事前になされるのかどうか。そのあたりは難しいところだと思うが,いかがか。
【事務局】  まず1点目は,背景調査の指針について,特に平成26年7月に改訂版を公表したが,その前の平成24年度,25年度に非常に精力的な議論が,この協力者会議で行われたと承知している。その当時からも様々懸念はされていたが,いわゆる第三者委員会の問題,人選の問題,特に公平,中立性の問題,そして御遺族と委員の信頼関係,これが場合によっては損なわれているケースがあるということ,そして委員の専門性,特に,なり手が不足しがちではないかという指摘があったが,今指摘のあったものについては,全ておっしゃるとおりで,現実にそういった課題が生じてきている。特に,近年それがかなり顕在化するようになっていると受け止めている。先ほど話のあった,いじめの有識者会議,いじめ防止対策協議会においても,やはり,この第三者委員会の在り方については早急に議論をすべきではないかという声が上がっており,そういった声を受けて,我々としても議論を開始しなければならないと考えている。お願いとしては,そういった第三者委員会の在り方について,この協力者会議においても議論してはどうかということだったと思う。ここは検討課題として受けさせてもらえればと思うが,我々としては,いじめ防止対策協議会の方で,その第三者委員会の在り方,要は,いじめの重大事態の調査の在り方について議論を進めていく予定だった。ただ,これまでのこの協力者会議の経緯を見てみると,まさに背景調査の指針を作る中で,そういった同じような議論があったかと思うので,そこは何とかして,この2つの会議を関連付けられるようにしたい。例えば,いじめの会議に,この協力者会議の委員にお越しいただき発言いただくとか,あるいは,いじめの会議の方で臨時委員として就任いただくとか,様々なやり方があると思うので,それについては今後の課題としたい。
 2つ目として,実態調査の分析の話があったかと思うが,平成23年6月から平成25年末までの間に,文部科学省の方で個票を集めて,それを踏まえて,約500件のデータを基に実態分析を行っている。この実態分析の結果については,平成26年7月に公表するとともに,その後の普及啓発協議会においても,機会を捉えて周知をしているところで,その後の平成26年1月以降の個票についても,今,平成29年3月末までの個票が集まっており,ある程度集計ができているところだ。この協力者会議において,そちらをまた分析をしてもらうというのは,実はこれも宿題事項になっているので,今後相談させてもらえればと思うが,そういった実態分析を通じて分かったことを周知していく,そして今後に生かしていくということは大事だと思う。例えば自殺してしまったお子さんが生前誰かにSOSを出したかどうかというのは,実態分析だけで捉えるのは難しいかもしれない。実態分析の個票の中には特記事項欄というのがあり,ここは自由記述欄になっているが,それに書いていればある程度把握できると思うが,書いていない場合もあるので,そこは把握は難しい場合もあると思う。一方で,いわゆるいじめの重大事態の調査報告書というのは,特に第三者委員会が作成したものは非常に詳細に事案の解明がなされているケースが多く,その際には分かった範囲で,生前SOSを出していたかどうか,誰か周りの人に相談していたかどうか,そういったものも書いていたりするので,そういった報告書の分析を通じて,その結果を全国に展開していく,活用していくということは重要だと思っているし,まさに今,いじめ防止対策協議会において,重大事態の調査報告書の分析については方針を検討しているところだ。最後に3点目として,SOSの出し方というか,過去は自殺予告というのが電話であって,ローラー作戦を使って,緊急度の高い子供を把握して,何とか救出につなげていったという話だったと思うが,そこは,緊急度の高い子供については,例えば24時間子供SOSダイヤルだとか,あるいは今年から始めているSNS相談でキャッチできれば,それを学校や教育委員会,あるいは医療機関のようなところに緊急的につないで自殺を食い止めるということは現場で運用されていると思う。ただ,その蓄積のようなものをどこまで検証して,どこまで生かせるかというのは,どういったデータが今あるのかというところも含めて検討しなければならないと思っているので,今後の課題とさせていただきたい。
【事務局】  今の件の補足だが,資料7と8にSNS等を活用した相談体制の構築という事業があり,説明があるが,この資料7の2ページの(3)で緊急時等の具体的な対応要領というのを定めている。自殺をほのめかす等の相談が来てしまった場合,音声通話による相談への切替えを図るとともに,可能な限り相談者の氏名や所在地を聞き出して,必要に応じて学校や警察等の関係機関にも通報するとしている。現に幾つかの自治体では,緊急時に備えて,地元の警察との間でフローチャートとかそういったものを整備しているところもあると聞いている。また,これは今年度から始まった事業なので,効果検証というか,課題の抽出というところは今後のことになるが,一応緊急時の対応についてもここでは定めている。
【主査】  要するに,ほとんどの委員が感じていることは,2006年にこの委員会が立ち上がってから,我々の意見をまとめてきて,子供の自殺予防にはどうしたらいいだろうかという意見をまとめてきた。それが十分に反映されないまま時間がたってしまったのは私たちの責任でもあるけれども,ここに来て唐突にSOSの出し方教育が出てきたという印象が拭えない。それでSOS教育というのは一体どういう内容なのか,それをしたからといって効果はどの程度あるのかということを事務局に聞くが,余りよく伝わってこない。話を聞くと,閣議決定されたからということで,命題がこちらの委員会に投げられてくるので,そこがやはり私たちからするとすんなり受け止められないところだろうというのが,私の印象だ。また後でフリートーキングの時間があるので,今日の議題を進めていきたい。 今後の議論の進め方について,事務局からの説明をお願いする。
【事務局】  資料2は,平成30年度,この調査研究協力者会議の進め方についてのペーパーである。現状と検討課題というところから説明すると,自殺者の数,大人を含めた全体の数は減っているが,児童生徒の自殺者の数は横ばいで,全体に占める割合という観点で増えている。最初に説明した法改正,自殺対策基本法の法改正の施行とか,その後の自殺総合対策大綱の改定を受けて,SOSの出し方に関する教育の推進をするという通知を出した。ただ,先ほど言ったとおり,SOSの出し方教育というものと,これまで進めてきた自殺予防教育という関係性,概念整理というものを明確に示してこられなかったところはあるわけだ。それで,遅まきながらこの会議を開かせていただき,そういったところを明確に示していくべきではないかと考えている。
 私どもの考えとして,今年度のこの協力者会議で是非議論いただきたいのが,SOSの出し方に関する教育の実施上の留意事項の整理,これは概念整理とリンクする。どういったところに気を付けて実施していくべきかといったようなことだ。それから当該教育の指導例の全国版というか,既に東京都教委とか北海道教委などが作ったものはあり,それを参考に周知はしているが,各自治体のそういう実際の例を紹介するだけではなくて,全国的な指導例といったものを是非この委員会で作れないかというところも議論いただきたい。
 調査結果の説明もさせていただいたが,例えば保護者の同意を得るというところまできっちり行ったパーセンテージが1.8%ということで,逆に,そこを外せば30%あったわけだ。なので,例えば,そこがひっかかっているということを考えて,その点を留意事項で何かしら工夫して示せば,もしかしたら,その実施に第一歩を踏み出すことをためらっているような学校とか教育現場に第一歩を踏み出してもらうことができるのではないか。あと最近○○教育という形で,かなり学校にも負担が増えている中で,それでも実施できるための工夫はないかとか。薬物の防止教育とか,いろいろあるわけだ。環境教育,消費者教育,法教育,放射線に関する教育とか,本当にいろいろあるが,そういう多忙な中で,それでもきちんと実行してもらうためには,どういったところに関心というか,工夫の余地があるかとか。少しでも自殺予防教育を実施してもらえるような工夫というか,何かを留意点という形で示せないかと考えている。他方で,そういったことを考える上で,是非こうしてはどうかというヒアリングを実施してはどうかと思っている。例えば北海道教育委員会の資料を見ると,私どもがこれまで言ってきた自殺予防教育をかなり忠実に踏まえて,この資料などを作って,実際モデル事業的に実施できているような形になっている。これは平成28年度から事業を実施しているが,今年度が3年目になって,実際こういった自殺予防教育を実施してみて,どういったところに課題があるかとか,どういった効果が実際上がっているかといったことを今年度検証する予定だと聞いている。例えばそういったところから話を聞いてみるとか,あるいは,いわゆるSOSの出し方教育といったものに詳しい有識者の方をこの場に呼んで,実際どういった資料を使ってどういう授業をしているのかとか,どういったところに課題があるかとか,いろいろな話を聞いてみて,それで私どもとしてどういう全国版指導資料を作ればいいかとか,どういったところを留意点として示せば,より一層自殺予防教育は進むのかといったことを考える一つのいいツールというか,いい情報が得られるのではないかと思っている。そのヒアリングについても是非実施していただいてはどうかと考えている。この場で,皆さん御存じの,例えばこういう人が良いとかがあれば是非出していただいて,そういったヒアリングの進め方についても是非議論いただきたいと思っている。それから今後の進め方だが,きょう第1回を開き,ヒアリングを第2回でやって,第3回,第4回ぐらいで一通り,年度内にということで考えている。スタートが遅れてしまい恐縮だが,年度内を目途に議論の取りまとめを行うことができればと考えている。そういった観点から,今後の進め方と方向性について,皆様の忌憚のない意見を聞かせていただきたい。
【委員】  先ほども現場で混乱が出ているという話もあり,留意点のところで概念整理もと言われたが,いきなりヒアリングというよりは,既に資料が出ているので,SOSの出し方に関する教育として進めている方々は,どういう内容のことを,具体的にどういう手法で伝えることをSOSの出し方に関する教育と言っていて,この委員会でこれまで考えてきた自殺予防教育のコンセプトというか,内容や具体的な進め方も含めて,そのあたりを少し突き合わせてみる。この部分については共通しているところがあると思う。先ほど来,保護者の合意形成の部分が何度か話題になっているが,それ以外に,この委員会の中で進めてきた自殺予防教育というところの重視してきている部分とか,SOSの出し方に関する教育と言っている方が重視している部分をきちんと整理した上で話を聞かないと,むしろまた混乱が深まるような気がするが,いかがか。
【事務局】  確かに今,既にSOSの出し方に関する教育が各地で行われていて,様々な教材,あるいは考え方を示す資料なども出回っているので,ヒアリングを行う前に,まず事務局の方で,そういった考え方というかコンセプトを突き合わせて,整理をした上でヒアリングに臨むというのは,考えとしてはあるかと思う。
【主査】  次の第2回の会議までに,まとめておいて出してもらえますか。
【事務局】  事務局の方で整理をして,第2回が始まるまでに委員の皆様にお配りして,それを踏まえてヒアリングに臨むということもあるだろうし,場合によっては,ヒアリングは第2回ではなくて第3回以降にして,第2回は概念整理のところについて議論を深めるというのもあるかと思ったが,もし何か意見があればお願いしたい。
【委員】  私自身は,少し整理をした上で,話を聞く方がよいのではないかと考える。
【主査】 その人にここに来てもらって,まとめてということか。それ以前の段階で整理するのか。
【委員】  以前の段階で整理をする。以前の段階で既に資料も出ているし,かなり共通しているというか,同じようなことをやっている部分もたくさんある。重なる部分と重ならない部分もあって,そのあたりを,まず資料に基づいて整理しつつ議論した上で,話を伺って,その意図を明確にしようということだ。
【事務局】  今提案があった方法,つまり第2回が整理で,第3回でヒアリングというように進めたいと思うが,いかがか。
【主査】  あと,埼玉も名古屋もやっていますね。委員の中に今までの経験を持っている方もいるわけだ。あなたは教育プログラムの作製に関わったということですか。それとも実際に子供を対象に教育を実施したのですか。
【委員】  教員がやっている。だから,例えば北海道においても,この会議の委員が以前から入ってやっていて,それが教育委員会の流れになっている。だから,SOSの出し方という言葉が閣議決定の中で出てきて,その言葉にちょっと引っ張られているところがあって,実際には,重なるところもあるし,違うところもあると思う。だから,それを精査する。そうすると,実際にこの委員の中で,かなり実践的に取り組んできた委員に報告してもらうというのと,SOSの出し方の中の一番典型的なところを我々が分析して,比較して,異同を明らかにしていくということを,まずしていけばと思う。
【主査】  そういった流れで,いかがか。
【委員】  はい。たくさんやっている委員もいるし,教材も含めて検討はできると思う。
【委員】  さいたま市は,いろんな先生のお力もかりながら,これがSOSの出し方に対する教育になるかどうか分からないが,「いのちの支え合い」を学ぶ教育というのを今,全校でやっている。小学校の5年生から,ストレスというのは誰にでもあるんだよ,悩みというのは誰でも起きるんだよ,だからそのことを他の人に相談することは悪いことじゃないんだよ,恥ずかしいことじゃないんだよというのが1つ。それから,友達からそういった悩みを相談されたときには,真摯に受け止めて,しっかりとした相談にのりましょうという相談のスキルを学ぶ授業。そして,もしその相談内容が,どうしても子供たちだけで解決できないような重い内容のものについては,信頼できる大人につなげましょうという教育。そして,そのために様々な相談機関等を,保護者にも子供たちにも周知する。さらに最後は,人生というのは紆余曲折,様々いろんなことがあって,自分の思い描いた絵のとおりには進んでいかないんだと,そういった内容の教育。これをしている。ただ,実際に自殺という言葉を出して,そこをやるというところまでは,まだ踏み込んでいない。今言った内容については全校で行っている。また,その授業をするために,下地として,人間関係プログラム,ソーシャルスキルトレーニング,構成的グループエンカウンターの授業も全校で実施している。また,子供が死にたいといったときのためのゲートキーパー研修,これも悉皆(しっかい)研修で全教職員に行っている。そういった総合的な取組を生かして,子供たちの自殺を何とか予防していきたいとやってきた経緯があり,そういった資料等でよければ,実際に現場でやった教員を紹介することは可能だと思う。
【委員】 今ここでキーワードで出ているSOSの出し方というのは,教員から児童生徒に対する内容である。そして,一歩手前のところの,教員がどのようにSOSの出し方教育を受けたらいいのか,若しくは受けるべきなのかという,もう少し先生側,教師側にとってみると何が必要なのかということも,現在どうなっているのかを把握した方がいいと思う。もしかすると私が知らないだけかもしれないので,その点,この場ではなくても,教示いただければと思う。そして,今SOSの出し方という言葉で特化しているが,自殺予防教育全体との関係というところで,今年公表された調査結果で,いまひとつ,大まかにつかめないところがある。というのは,実際,この法律の17条に基づいてやっている学校は,全体の学校の中で,どれだけあるのかないのかということが,複数回答が余りにも多くて,分母が分からないというところがある。要は,現状どの程度の割合の学校が取り組んでいるのかということが全国レベルで分かるように見せてもらう方法はあるのか,ないのかを教えてもらいたい。
【事務局】   まず1点目のSOSの出し方に関する教育について,教員に対する研修のような形だと思うが,これがどういった状況なのかということは,データがない状況だ。ただ,あるとすれば,まさに文部科学省が実施している自殺の普及啓発協議会というのは一つの研修の場にあたると思っているし,ほかにも文部科学省の方で生徒指導担当者向けの大きな会議を年2回やっている。実際に特化して1時間とか1時間半とか十分な時間をとれるのは,やはり普及啓発協議会になると思うが,そういった場を通じて,整理された資料なり教材があれば,我々から伝えることはできると思う。もう一点目の17条3項に定める教育の実施状況で,複数回答が多いので母数がどれぐらいで実際どれぐらいの校数がということだが,こちらも,そういった複数回答を排除した形でのデータを持ち合わせていない。今,学校における働き方改革の流れもあり,こういった実態把握を頻繁に行うことが難しい状況なので,機会を捉えて行いたいとは思うが。
 この結果を見ても,例えばこの資料5のマル3番を見ても,様々な教材を活用しながら実施しているとあり,その実施のクオリティや内容のところまではよく分からないが,少なくとも行ったと言っている学校数は数万単位であると思う。実際,母数としては,大枠のつかみだが,小中高校全体で3万5,000校程度である。そのうちの約2万校以上が恐らくやられていると思うので,クオリティは置いておくとしても,かなりの学校で何らかの自殺予防教育はなされていると思っている。
【委員】  残念ながら命をなくしてしまった子供たちがSOSを出していたのかどうかという数について,もう少ししたら調査の結果が分かるということだが,私も気になっていた。SOSが出せなかったのか,それとも出したけれども受け止め方に課題があったのかというあたりをもう少し知りたいと思った。今までに教師に正しい知識を持ってもらい、子供たちの自殺予防教育に役立てようというテキストもできていて,その中にはSOSの出し方についても,具体的な指導例としてワークシートも出ているので,今回のSOSの出し方教育とどう違うのかなと思う。自殺予防教育とSOSの出し方というところのすみ分けがどうなのかがはっきり分からないところだ。また,細かいことで言うと,リーフレット一つにしても,ただ配るだけで終わっているところもあるかもしれない。そうではなく,例えば,リーフレットや相談連絡先のカードなどを配布する時に,必要のある子には個別に連絡用の10円玉を持たせて,困ったときにはここへ電話するんだよということを伝えるなど,特に携帯とか持たない子供たちには丁寧に指導するということをやっていくことが大切であると思う。SOSを出したり相談をしたりするといっても,子供たちというのは相談相手を選ぶと思う。日本では相談という体験が余りないので,健康度の高いときに相談をしたら気持ちよかったとか,相談をすることで少し元気が出たという体験をすることもとても大事ではないかと思い,スクールカウンセラーの協力を得て実践したことがある。子ども達は,相談を肯定的に捉えていた。 子供たちが実際SOSを出せるのが,友達なのか大人なのかは分からないが,友達の場合,SOSを受ける側の教育も同様に大事だと感じる。
【事務局】  おっしゃるとおりだと思っており,SOSが,ある事案において出せなかったのか,それとも出したけれども受け止めてもらえなかったのかというのは,やはり個別のケースを見ていかないと分からないところがある。なので,1つ考えられるのは,いじめの重大事態と呼ばれるものの調査報告書において,その点がかなり詳しく分析されているケースが多くあるので,そういった個別のケースを子細に分析することを通じて,どういったケースがあったのかというのは見ることはできると思う。ただ,例えば1,000のケースがあって,1,000のうちどれぐらいが出せなかったのかとか,どれぐらいは出したけれども受け止めてもらえなかったのかというのをマクロ的に把握するのは難しいかもしれないが,個別の事案であれば,紹介することはできると思う。それから,従来の自殺予防教育と,このSOSの出し方に関する教育のすみ分けの問題,これがまさに我々としても課題だと考えている。今指摘のとおり,「子供に伝えたい自殺予防」においては,SOSの出し方とか,出されたときに友人はこうしようという,いわゆる受け止め方のところも資料として書いているので,そういった意味では,SOSの出し方に関する教育と自殺予防教育というのは共通したところが多いと思う。ただ,相違点もあると思うので,そこら辺をきちんと整理していけば何らかの整理がつくのではないかと思っている。
 そしてまた,健康なときに相談を出すことの大切さというのは,まさにおっしゃるとおりで,適切に出し方が分からないからこそ,例えばツイッターとかで不特定多数の人に,何か相談とも言えないようなつぶやきをしてしまって,悪意がある人にだまされてしまうとか,そういったことに巻き込まれてしまうということだと思うので,どういった場合に誰に対して出すのが適切なのか,そして出された大人や友人たちはどのように受け止めればいいのかという,それはある意味,大人たちの問題でもあるかと思うので,そういったことも意識に置きながら議論を進めていければよいと思う。
【委員】  ちょっと戻る形になるが,いじめ防止対策推進法の下での重大事態,そこの調査報告書を見て,SOSの出し方とか,あるいは自殺のことを見ていくということについては,当然いじめ防止という観点,それからいじめが命を落とすというところにつながるということでは当然やらなければならないことだ。しかし,自殺という問題に関したときには,いじめが原因の自殺よりも,ほかの要因の自殺の方が,少なくとも警察署の調査あるいは文科省の子供たちが置かれていたときの状況というのを見たときに,多いわけだ。そうすると,そこからだけ出していくという印象を持ってしまうと,自殺予防という全体が偏ってしまう気がする。だから,少なくとも個票があるので,その分析,整理を急いで,いじめ以外の自殺,いじめが原因でない自殺というところをきちんと押さえていかないと,自殺予防というところになかなか行き着かないのではないかという気がする。いじめ防止の方と絡めると同時に,子供の自殺全般というところをきちんと押さえてやっていくということを確認しておいてほしい。
【事務局】  先ほどの自殺の実態分析の個票の分析というのは,ちょっと進捗は遅れてしまっているが,課題だと認識している。個票の中で,特に自由記述になっている特記事項欄で,SOSを出したか出さなかったのか,あるいは出したけれども受け止められなかったのかということがもし書いているならば,そういったことは参考になる資料かと思うので,そちらの分析の方も急いで取り組んでいきたい。
【主査】  いじめ自殺の検討会というのが別にある。2006年の8月にここの協力者会議ができて,たしか10月に小学校6年生の女の子が実はいじめ自殺で亡くなったと報道されたら,突然,どういう動きか分からないうちに,そのいじめ自殺の防止の検討会が立ち上がった。あれも,ちょっと政治的な動きがあったと思う。あのときも,ここの委員会には相談なしに、別途できてしまって驚いた。今回も,この委員会には何の相談もなく,SOSの予防教育しなさいという通知が,文科省から全国に出されてしまった。その後に,ここの会議で内容を検討してくださいというのが来て,驚いているというのが現状だ。今までのところをまとめると,第2回の委員会の進め方だが,例えば今SOSの出し方教育というのをやっているところの特徴を事務局の方でまとめて,あと,こちらの委員が関わっている自殺予防教育について話してもらい,その中で突き合わせをして,私たちの考える自殺予防教育とSOSの出し方教育の特徴というものをはっきりさせた上で次に進む。ですから,私どもの委員から,短い時間ずつ,こういうことを強調しながら子供に向き合っているんだという話をしてもらう。2回目の進め方というのはそんな形でよいか。
【事務局】  その進め方でやりたいと思う。
【主査】  では,具体的に誰かを呼ぶというのは3回目以降でよいか。
【事務局】  それで結構だ。
【委員】  先ほど来,学校の先生方がいかに子供の自殺についてきちんと理解をして受け止めるかが重要だという話は繰り返し出ているし,もし先生たちが子供の自殺についての認識が深まれば,特に自殺予防教育,SOSの出し方教育という授業の中のみならず,日常的に様々な教科の中とか,学活とか,いろんなところで,そういうメッセージを伝え続けることが可能になる。こう言うと申し訳ないが,先生は非常にたくさんのことを抱えているから,この問題に関してそれほど関心がない先生も,1年に1回やらなければならないという形で教材だけが下りてくるような形でやられた授業の中でのことが,子供たちに的確にメッセージとして届くのかと考えると,確かに普及啓発協議会はずっと続いているが,でも全国津々浦々の一人一人の先生に届くところまではいっていない。さいたま市や北九州市では,全学校で教員向けのを必ず行っているので,そうなると,先生方はいろんな教科の中で工夫して展開していく。もともとこの委員会でも,教員向けの啓発を一番大きな柱としていて,最初にもそういう啓発用の冊子ができている。改めて,もちろん子供たちにも直接伝えていかなければならないが,受け止める側としての,しかも授業を実施しろといわれている側の先生方が負担なく,理解が深まると全然負担でも何でもないという意味で,そのあたりもうまく絡ませていけるといいと,改めて思った。
【事務局】  非常に重要な指摘だと思う。まさにこの「子供に伝えたい自殺予防」でも,合意形成というのは学校における合意形成が一番初めに来ており,まさに何ら重要性を理解しないまま,あるいは内容もおぼつかないまま,単に子供たちに教えろと言われても,学校の先生方も困ると思うし,これまでの文部科学省としての通知の書き方で反省すべきところがあるのかもしれないが,今の意見に留意して,伝え方にも十分留意していきたい。
【委員】  昨日,生徒指導学会というのがあり,そこである先生が京都のある中学校に入って,養護教諭を中心に,校長のリーダーシップもあって,4年間ずっと続けてきている。ところが,養護教諭の方が発表してくれたが,学校の中では,やっぱり4年間続けてきても,教職員の合意形成を毎年毎年研修して取り付ける。取り付けるといっても,なかなか一枚岩になるわけではない。そういう中で,ある意味,非常に苦労しながら何とかやっている。それは子供たちに何らか一定の成果を上げているから継続できている。でも,4年間継続するということが,学校という現場の中で考えたときには非常に難しい。その難しさというのをどうするのか。例えば市を挙げてやっている,県を挙げてやっているというローラー的なやり方もあるけれども,一つ一つの学校の実情の中で,悩みながら,苦しみながら,でも子供のことを考えてやっているという中に,かなりの労力が入ってくる。そういうものだということを我々は認識しながら,ここで国としても何かを排出していくときに,極論して出せばいいんだというのではなくて,どうやって作っていくのかという,その苦労する部分というのを頭の中に置きながらやっていかないとまずいんだろうなということを痛感しているので,そんなところも次の会で報告してもらえればと思う。
【委員】  資料9-1について。SOSの出し方に関する教育を少なくとも年1回実施するなど積極的に推進するという,ここのつらさだ。やっぱりすばらしい教材ができて,すばらしい指導案ができてということを期待するわけだが,ただ現場としては,先ほどから話が出ているが,カリキュラムの一体どこに,そのすき間を見いだしていくのだろうか。
 今,例えば小学校の外国語教科の時間でも,既にオーバーフローしている中に押し込まざるを得ないという現実がある。道徳の教科化をどうするんだ。それから,何とか教育というのは,数えたことはないが,恐らく100は下らないだろう。それはどれも重要なので,しっかり学校教育の中でやるべしという考え方がある。一方でワーク・ライフ・バランスとは何だということがある。そういったはざまの中で恐らく,少なくとも年1回積極的に実施というところを言わざるを得なかったんだろう。教育委員会の人間として,ここに文科省のつらさというところが見えてくる。そこで,1点だけ。先ほどのさいたま市の取組はすごいと思う。全ての学校で,先ほどのようなスキームを取り組んでいく。どのぐらいの時間が必要で,どの領域でやっているか教えてほしい。
【委員】  まず,領域は特別活動でやっている。「いのちの支え合い」を学ぶ授業です。もう一つ,人間関係プログラムという,いわゆるスキルトレーニングをやっている。それは当初は教育特区があったので,それでやって,今は特別な教育課程を組んでやっている。「いのちの支え合い」を学ぶ授業については年間1時間,1つの学年について1時間ずつ。小5,小6,中1,中2,中3というように1年間ずつで積み上げている。子供たちが小さいときから,相談することの気持ちよさというか,成功体験を味わうとか,そういったものもあるのであれば,小学校の小さい子供用の何かがないかなというので,今研究指定校を作って始めようとしているところだ。
【委員】  先程の内容を年1時間の授業で。命に関わるということの授業を核としながら,道徳もそうだし,教科に係るものも含めてだと思うが。あらゆる授業の中で,そういった点をしっかり踏まえながら進めていくということだろうと思う。特活そのものも年間35時間という枠しかないわけなので。
【主査】  現実に青少年の自殺を考えるときに,背景が学校だけということは本当に少ない。今,むしろ,家庭が崩壊してしまっているという背景が結構ある。そうしたときに,以前のように親の役割を期待できない。それが子供の自殺の背景にあるというのも現実だ。そういう子供を助けようとするときに,私はかなりの率の子供がそうだと思うが,家庭だけとか,医療機関だけという考え方では難しいので,地域全体で子供を支えるという発想がないと,救える命も救えないのではないかと思って活動している。こんなことはなかなか文科省から言えないだろうが。学校でできることに関して提言はするだろうが,実際,子供の危機の後ろに大人の危機,親の危機もあるということは,どこかで触れることも難しいか。
【事務局】  自殺もそうだが,不登校も最近増えていて,その背景には必ずしも学校に起因するものだけではなくて,実際,家庭の事情というのもある程度あるわけだ。そういったときにどう対応するかということだが,学校だけで対応できないものがある。そういったときには,外部の関係機関ときちんと連携してくださいということは我々も言っており,例えばスクールソーシャルワーカーのように,連携を中心に働いている方もいるし,それから児童虐待など,例えば,これは家庭の問題だが,そういったものが学校で見付かった場合には,すぐに情報提供,あるいは通告を児童相談所に対してするようにという通知も出している。そういった連携という形であれば,私どもは言うべきで,実際そういったことは呼び掛けている。
【主査】   それでは,本日の議論の内容を踏まえて,今後の会議の進め方などについて,事務局から説明を願う。
【事務局】  本日提案いただいたとおり,次回はヒアリングではなくて,まずSOSの出し方教育と言われるものとこれまで進めてきた自殺予防教育は,どこが共通してどこが違うのか,というところを整理する回にあてたいと思う。また,個別に依頼させていただくが,それぞれの委員の方からいろいろな発表を頂くことも次回考えたいと思う。詳細については,また主査とも相談して決めたい。日程については,後ほど調整させていただく。
【主査】   会議進行に協力いただきありがとう。これで閉会とする。

―― 了 ――


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