資料1 チャイルドラインから見える子どもたち

NPO法人チャイルドライン支援センター

チャイルドラインとは

  • 「チャイルドライン」18歳までの子どもがかける、子どものための電話
  • 1970年頃より北欧を中心にはじめられ現在世界70数カ国90数箇所にて実施され世界のチャイルドライン連盟となるCHI(世界子どもヘルプライン)という組織を持ち、日本は初代アジアパシフィック地域の理事国をつとめる
  • 日本では1998年にはじめて実施され、現在34都道府県64箇所に設置され活動中
  • チャイルドライン支援センターは、1999年に日本にチャイルドラインを広げることを目的に発足、主に「キャンペーン活動」「研修活動」「広報活動」「政策提言」等を行う
  • 2005年度一年間で全国のチャイルドラインが受けた子どもからの電話の数は12万件
  • 超党派のチャイルドライン支援議員連盟による支援
  • 文部科学省、厚生労働省との連携

現状

  • 「いちばん気を使う相手はともだち」-孤独を深める子どもたち
  • 自己肯定感の低い子どもたち
  • 「おとな」化を急がされる子どもたち
  • 言語によるコミュニケーションを苦手とする子どもたち

  チャイルドラインが2005年度に受けた件数は10万件を超えました。これはすべて、子どもからの電話です。ここ5年の年間着信件数の推移は下記の表の通り、年々増加しています。

  (配付資料:『2005チャイルドライン年次報告』2,3頁参照)
  2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度
年間着信数 22,393件 36,666件 55,951件 89,153件 122,436件
実施団体数 33団体 43団体 53団体 56団体 61団体

  チャイルドラインはこの数に後押しされるように団体数を増やしてきました。なぜ、これだけ、子どもたちがチャイルドラインを選んで電話をかけてきているのでしょうか。チャイルドラインは子どもたちに「どんなことでもOK、匿名でかけられ、ヒミツは絶対に守られます」と約束しています。そして、チャイルドラインのガイドラインとして次のようにうたっています。
電話をかけてきた子どもは、自分自身の気持ちや、抱えている困難について話すことで、心を開放し、ほっとしたり、混乱した感情を整理したり、自身を癒したり、自身の存在を確かめたりします。また、自分を受けとめられた、認められた、ということで、自尊心をとりもどし、人間や社会への不信感が和らぐこともあるかもしれません。会話のなかで、何かきっかけをつかんだり、新たな一歩を踏み出すこともあるでしょう。誰かとつながっていたい、そんな気持ちにつきあうこともあります。ほっと安心できる場のひとつが「チャイルドライン」なのです。
(『チャイルドライン・ガイドライン』より)

  「子どもにそっと寄り添い、そっと子どもの声を聴く」、それこそが子どもが求めていることなのです。

【参考1】電話をかけてくる子どもの概要

  (配付資料:『2005チャイルドライン年次報告』 4頁)

男女の割合 男子53パーセント、女子32パーセント、不明15パーセント
年齢の割合 小学生女子16パーセント、高校生男子15パーセント、中学生男子12パーセント、中学生女子9パーセント
電話の内容 学校生活27パーセント、性18パーセント、自分自身14パーセント、家族関係6パーセント、その他35パーセント
男女別内容 女子・学校生活20パーセント、男子・性18パーセント、男子・学校生活10パーセント、男女・自分自身各8パーセント

【参考2】子どもの声の内容

  (その他参考資料:『2005チャイルドライン年次報告』 5~9頁)

  • 学校へ行きたくない。人が多いところは嫌、友達が苦手、自分が嫌われているような気がして落ち込む。自分はここにいてはいけないのではないか、申し訳ない
  • 休みの日も部活でくたくたなのに、塾(週4日)を休むなと親に言われ家庭教師もつけられた。進学も自分の希望はレベルが低いといわれる。今部屋に閉じこもって電話している(中3)
  • ネットで自分の名前を使って違う学校の子に文句を書かれ、その子が文句を言いに来た。どうしたら良いか分からない(中学生)
  • どうして人を殺してはいけないのか?大人は当たり前に言うけど、もし自分が理由なく明日殺されても別にかまわない(中学生)
  • 母親から暴力を受けている。ご飯も食べさせてくれないので給食だけ食べている。施設に行きたい、死にたい(小学生)
  • いじめを受けてきたことを家族を気遣って言えず一人で泣いてきた。笑顔でがんばってきた。辛い気持ちを誰かにわかってほしかった
  • 母親の代わりに家事やちいさい妹の世話をしている。とても大変(小2)
  • 学校の先生に身体を触られる。誰にも言うなといわれる。いやだと言ってもやめてくれない(小学校)
  • いじめられる、嫌われている、もう限界、こんな生活いや(小学生)
  • セックスをしたいけど相手がいない。マンガでやっているので僕もしたい(9才)
  • 好きな男に家でセックスを見せられ、参加してしまった。妊娠したかもしれない(中学生)
  • 体の発達が早く、小4の頃から風俗で働かされている。学校に行くより楽しくなっている(中1)
  • 2人の子どもを育てている。学校へ行っていたらどうなっていただろう(16才)

  これらの声から浮かび上がるのは、友人に気を使い、大人に気を使い、大人社会に翻弄される子どもたちです。そして、自らの生命を、そして存在を肯定できない自己肯定感の低い子どもたちです。世間では、少年少女たちによる他者のいのちや自身のいのちを粗末に扱ったような事件が起きています。その根底には自己の否定、その裏返しとなる他者の否定が流れています。また氾濫する性情報に翻弄されたり、バーチャルなメディアで人とつながる経験しか持たずにリアルな生命力に触れる機会を持たなかったり、危険を察知できず犯罪に巻き込まれるような事件や、大人が陥る罠のターゲットが子どもにも向けられ金銭的物質的な被害を被ることも起こっています。また、チャイルドラインで電話を受ける現場では、子どもが自らの思いを言葉にして伝える能力が落ちてきていることを実感しています。言葉の力が不足することで他者とのコミュニケーションはいっそうとり難くなります。人と結びあう方法を知らず、情報だけが過多に与えられ大人化を急がされる、そのような中で、子どもが生きている実感を得、将来に夢を抱きながら育つ事はますます難しくなっているのです。

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初等中等教育局児童生徒課生徒指導室

(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室)