児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(平成25年度)(第3回) 議事要旨

1.日時

平成25年7月24日(木曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省東館16階 16F1会議室

3.議題

  1. 児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

 新井委員、市川委員、荊尾委員、川井委員、窪田委員、阪中委員、高橋委員、中馬委員、坪井委員

文部科学省

 白間児童生徒課長、池田生徒指導室長、鈴木生徒指導調査官 他

5.議事要旨

(1)議事に先立ち、事務局より配布資料及び検討課題についての説明が行われた。

(2)議事に従い、委員による討議が行われた。

(3)事務局から、今後のスケジュ-ルについて説明があった。

(1)配付資料及び検討課題についての説明

【事務局】
 今回は、児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について御議論いただきたい。資料1は、前回の御議論を踏まえ、平成23年の3月の「審議のまとめ」のうち具体的な検討が必要な箇所についてまとめたもので、資料2は「審議のまとめ」本体である。資料3は、6月28日に公布された「いじめ防止対策推進法」の公布通知で、本法律にはいじめ対策のほかに、重大事態への対処として、重大事案が発生したときは調査委員会等を設置して調査をするということが書かれているので、自殺の背景調査のための調査委員会とも今後少しリンクしてくるかと思い、参考にお示しさせていただいた。資料4は第2回会議の議事要旨である。

(2)議事に従い、「資料1」に基づき討議が行われた。

【委員】
 では、資料1でまとめられた論点を一つ一つ検討していく。

1.背景調査の意義などについて

【委員】
 調査の過程でたとえ学校にとって不都合なことがあっても、事実を明らかにしていく姿勢が重要であると冒頭に明記すべきという意見についてはどうだろうか。反対するという人はいないと思うが。

【委員】
 この点は最後の「おわりに」で整理して書いているが、むしろ「はじめに」とできちんと明記をしておくことが必要だと思う。

【委員】
 結局、それができるかできないかでその後の学校側と遺族側のコミュニケ-ションが成り立つか否かの別れ道になってしまう。だから最初に、どんなに不都合なことであってもきちんと明らかにすることが再発の防止につながるということを明記しておくべき。

【委員】
 背景調査の意義だけでなく、背景調査自体の目的を最初にはっきり提起すると分かりやすいのではないか。現在は、調査の目的は、自殺に至った経緯や事実をできる限り明らかにすることと書いてあるが、もっと本質的なことは何かを突き詰めて書くべきではないか。弁護士会で今検討を行っているが、今を生きる子供たちの権利保障というのが、私たちが考える一つの到達点である。そのために一番大切なのは、現実的で効果的な再発防止策の提言と、現実に生じている子供の権利侵害の解消と緩和ではないか。そのために可能な限り詳細な事実の把握に努めるということだ。

【委員】
 もう少しかみ砕くと、亡くなった子供と似たような問題を抱えた子供にどういった形で救いの手を差し伸べるかを考えることが調査の目的だと言って良いのだろうか。

【委員】
 そういうことである。

【委員】
 これまでの調査委員会の報告書を読むと、ともすると学校と遺族の間の調停的な役割をしていて、本当に自殺の背景にある問題を明らかにできたのかは疑問視されるものもある。調査委員会の目的は、あくまでも背景にどういう問題があって自殺が起きてしまったのか、残された子供たちが同じような問題を抱えた時に悲劇を繰り返さないために何を学べるのか、というところにあると明記すれば、調査が調停的になることも防げると思うがいかがだろうか。

【委員】
 目的は十分わかるが、ともすると、遺族の希望とは関係なしに、学校あるいは教育委員会として、事案が起きたら必ず調査をするということになるのでは。

【委員】
 確かに、教育現場での調査なので、例えば学校とは全く関係のないと思われる形で、遺族も隠しておきたいという自殺も家庭の中で起きるかもしれない。その全てにまで教育委員会や学校が関与して調査せよということではないだろうとは思う。学校現場が再生するための調査なので、教育の現場に何らかの要因があると考えられる自殺に限定で、全ての自殺という意味ではないと思う。

【委員】
 では、学校に関係があるかないとかという判断を、それぞれの事案について、誰がするのかという問題が出てくる。ガイドラインでは、学校として、調査の要請がなくても調査をすることも考えているが、その線引きをうまく入れておかなければ、隠蔽とはいかなくても、判断の難しさが出てくるのでは。

【委員】
 調査のきっかけは、例えば遺族の希望、PTAの希望、子供たちの希望、学校からの自発的なものなど幾つもあり得ると思う。ただ、きっかけをどうするかというのは手続きの問題なので、この調査の目的を最初に明らかに最初にしておいて、その目的を実現するために一番いい方法は何か、という枠組みで考えることが重要ではないか。

【委員】
 起こったことについて、とにかくまず初期調査をする。その中には、学校、家庭、個人の3つの要因があるだろうが、その中で、学校要因については明らかにする。残りの2つの部分については、判断を間に置き、どうしても調査をするということであれば、遺族の理解も得ながら調査をするというプロセスで整理をすれば良い。

【委員】
 不都合なことがあっても事実を明らかにするというのはそのとおりだと思うが、自殺というのは、いろいろな要因が一緒になって起こる。すると、学校にとって不都合なことだけではなく、場合によっては本人や遺族にも不都合なことが出てくるかもしれない。そちらに触れずに、学校に不都合なことだけを明記するのも変な話で、いろいろな要因について不都合なことがあっても、それを明らかにしていくという方が正しいのではないかと思うがいかがだろうか。

【委員】
 これまでの調査委員会の報告書などを見ていると、それがなかなかなされていない。

【委員】
 極端な例で、ある子が性同一性障害で悩んでおり、それがきっかけで、学校の中でいじめられる、そしてその子が本当に悩み、親にも訴えられないまま自殺をしてしまったという事案があったとする。これは、一つには子供自身の生まれ持った個性がある。それから、学校で、それを理解がされなかったがためにいじめが起きた。あるいは、家族は障害について、そんなのおまえの思い過ごしだと否定し続けていたという事実が出てきたとする。精神科の医師からは、こういう子供に対してはこういうケアがあれば、素直に健やかに生きていけたのにという意見が出てきたとする。こうした事案では、学校要因も、家族要因も、個人要因もある。こうしたものを本当に予防しようとするのなら、全てを明らかにしなければ、子供たちの苦しみは救えないのだと思う。
 ただ、亡くなった子供や遺族にとって、そうした要因を明らかにするということは、まだ偏見が大きな世の中では、辛いかもしれない。本当に自殺を予防するなら、同じような子供たちの苦しみを救おうと思うなら、本当はそこまで提言すべきだが、遺族の意向によってできないというところで止まる。このあたりのジレンマはあると思う。

【委員】
 結局、遺族に言われたからやる、遺族に不都合なことは書けない、とやっている限り、今後の自殺を防ぐという本質的な目的に資する提言にはならないように思う。

【委員】
 そういう意味でも、全てを明らかにするということをきちんと「はじめに」の部分に書き込んでおけば、調査委員会を開くに当たっても、関係者の間で最初に目的についての合意形成ができると思うがいかがだろうか。

【委員】
 そのことと、結果をどこまでどういう形で開示していくかということも、すごくリンクしてくると思う。自殺予防のために必要な部分もあるが、国民全員に、実際その人がどういう障害を抱えていたかとか、御家庭にどういう問題があったかということを知らせる必要はない部分もあるので、結果をどう公開し、それをどう使っていくかというところも含めて書き込んでおくことが、合わせて必要になってくる。

【委員】
 報告書の書き方については慎重であるべきだが、やはり事実関係をつかんでいかないと結局同じことが起きるリクスはどうしても防げないので、調査はきちんとするべき。

【委員】
 技術的な話になるかもしれないが、「はじめに」と「おわりに」を読むと、「おわりに」には、どういう考え方や目的で実施するのが良いかという趣旨のことがたくさん書いてあるので、「おわりに」の部分を相当「はじめに」に移行させていった方が良いのではないか。

【委員】
 ここ1、2年のように、調査委員会がいろいろなところでできてくるという状況を、策定当時はまだ想定できてなかった。当時は、やらなければならないことはあるものの、それを完全にマニュアル化することはできないので、大きな考え方の指針として大事にすべきものを示そうという段階だったように思う。事実を明らかにしていくということについても、学校の姿勢として書いており、起こったこと全てを明らかにしようというところまで実は踏み込んでいなかった。やはり遺族の意向を大事にしながらというところが優先していた。
 当時、完全に独立した第三者委員会というのはなかなか難しいと書いていたが、実際に大津の例などでは、そういうことが起こっている。つまり、現場の方がこの指針よりも一歩先んじて動いているので、このガイドラインを、この先をさらに見通したものにしていくことが必要だ。

【委員】
 指針を作っていくときに、遺族の意向というのがかなり頭の中にあった。このガイドラインがそういう形で出たことによって、遺族の意向に沿わない部分はなかなか書けない、踏み込めないという状況を作り出してしまったのではないかという反省はある。

【委員】
 それでは、少し進んで、45ペ-ジの(2)について、「学校要因、家庭要因及び個人要因など分けて自殺への影響の程度をできる限り分析評価することが望ましい」としているが、学校要因以外の分析評価に困難もあるのではないか、というコメントが寄せられている。この点についてはどうだろうか。

【委員】
 この記述に異論があるわけではないが、学校要因以外のところには踏み込めない現在の状況を見ていると、これだけが書かれていても、現実的には機能しないのではないかという意味。よって、先ほどからの議論のように、本来の目的のところでそのあたりがもう少し明確になれば、ここも生きてくるだろうと思う。

【委員】
 むしろ子供の自殺は、学校の要因だけで起きているわけではないということを書いているので、全てを明らかにするというところがはっきりしていれば、これはこのままの記載でよいということか。

【委員】
 次に、45ペ-ジの(1)、(2)だが、分析評価する内容は、1.収集された情報の信憑性の確認(事実認定)と、2.認定された事実がどの程度自殺と関係があるかについての関連性の認定となるのではないか。その場合、2.の自殺との関連性についての評価は、相当慎重であるべきであり、それをどの程度調査委員会が評価できるのか、さらに検討が必要ではないか、とのコメントだが。

【委員】
 いじめがあったことは認められるが自殺との関連は明確でない、という結論しか出し得ないような報告書が今までもたくさん出ていたし、実際、全てが司法の専門家でもない学校や教育委員会が行う調査での因果関係の認定にはかなり限界がある。当然複合的な要因もあるので、このあたりをどのように書けば、委員会としてある程度の目的を達したことになるのかが、このままではやや不明確ではないかと感じる。

【委員】
 当時調査委員会が開かれていたところの結論は、判で押したように、確かにいじめがあったことは認められるが、それが自殺に至る直接の原因かどうかは分からないというものだった。我々も、それ以上は言えるのかについて随分議論をした。
 もう一方で、単にいじめの問題だけではなく、例えば本人の精神疾患や性的な虐待などがあり、いじめも含めそれらが複合的に作用して自殺に至ったのではないかという議論が仮にされたとしても、公表するときには、いじめがあったことは認めるけれどもそれが直接の原因かどうか分からない、ということまでしか公表できないだろうというジレンマもある。
すると、冒頭議論があったとおり、遺族の意向ではなく、調査委員会として事実認定はきちんとしていく。実際問題としてそれを全て公表できるかどうかは別だが、少なくとも調査委員会の中では事実認定はきちんとしていかなければ、子供を守っていくことにはつながらないだろう。

【委員】
 やはり先ほどから議論になっている、個人や家庭の要因についてもきちんと明らかにし、それも含めて書き込んでいくことが重要。だから、この書き方に問題があるというわけではないが、どちらかというと因果関係というよりは事実認定に力点があるということだと思う。

2.初期調査と詳しい調査の実施時期や方法について

【委員】
 36ペ-ジの(3)についてコメントが寄せられている。詳しい調査を行うことを決定する「調査の決定者」について、教育委員会や学校を想定しているが、学校は必要性を感じたら教育委員会に提案することとして、「調査決定者」は教育委員会とすることも考えられるのではないか、とのことだが、この点はいかがだろうか。

【委員】
 公立学校の場合、教育委員会と学校は同一母体なので、ここは学校でも教育委員会でも決定するというように複雑にするのではなく、この提案のとおり、やはり教育委員会が決定者となるということで整理する方が明確だと思う。 
 さらに、現在いじめ防止対策推進法でも議論がされているように、地方公共団体の長による調査、あるいは教育委員会の調査の再調査を地方公共団体の長がするということもあり得るので、そちらとも兼ね合って少し踏み込む必要はあるだろうと思っている。

【委員】
 教育委員会が調査をするという建前でいいとは思うが、私は調査委員会よりは学校に生き返ってほしいと思うので、常に教育委員会に提案するしか学校は主体的に動けないことになってしまうのはすごく寂しい。

【委員】
 学校と教育委員会は同一の母体だということを申し上げたかっただけで、学校が調査しましょうといったときに教育委員会が止めるということは想定してないので、そうした意図が崩れるものでは決してないと思っている。

【委員】
 しかし実際のところを見ていると、まれに教育委員会がブレ-キ要因になることは経験している。だから私も、学校が主体的にというのを残したい気持ちはある。だから、学校がそういう意思を表明して、教育委員会の協力の下に進めていくとか、何か学校の主体性は残しておきたい気がする。

【委員】
 中立性云々という議論からすると、学校のみの調査委員会というのが現実的にはかなり難しいと思ったので、むしろすっきり議論させるために教育委員会でいいのではないかと思ったのだが、そういう意味では、書き方の工夫で、「学校・教育委員会」とか、学校の主体性も生きるような形にしたら良いかもしれない。現在は殊さらに学校があり得る、という表現になっているのでちょっと混乱を招くかと思い、こうした提案をした。

【委員】
 私立や国立の場合はどうか。

【委員】
 公立と私立の場合は全然違うので、まずは公立を前提に作って、部分によって不都合があるときに、国立、私立を言い換えるというように、最終的に整理をしていけば良いのでは。

【委員】
 次に、37ペ-ジの(4)について、調査の進め方等について遺族の合意が得られない場合はどうすべきか、何か追記できることはあるだろうか、というもの。これはどういった状況を想定しているのか。

【委員】
 調査の段階で一番遺族との合意形成が難しいのは、やはり調査で得られた生のデ-タ、生の資料、生のアンケ-トの取扱いだと思う。
 例えば、「遺族と協議しながら、合意を作っている過程がとても重要です。一度の協議で合意を得ようとせず、よく考えていただくことが大切です」の後に、「特に調査で得られた分析・評価前の資料等を全て遺族へ開示することを求められることも考えられます。その場合には、アンケ-ト調査の持つ危険性、例えば噂、憶測、悪意のある記述などということについても伝えていくことが大切です」というふうなことを挟んでみてはいかがだろうか。

【委員】
 これも、この調査の目的というところから重ねて考えていかなければならないと思う。現在は、遺族の要請によって調査を開始するという、遺族との関係を重要視した指針になっているが、「今生きている子どもたちの権利保障のために」という形に書き換えるのであれば、遺族が拒否したから調査を始めないというのはあり得なくなるし、遺族に対しての生のアンケ-トの開示もあり得なくなる。これは個人情報保護法の問題で、遺族であれ誰であれ、行政が個人から得た情報を開示するか否かという判断は行政がすべきであって、調査委員会がすべきではないと割り切らなければならない。そうでなければ、調査委員会の立ち位置が遺族に引きずられてしまうのではないか。

【委員】
 その部分について、現場の悩みは非常に大きい。今委員からあったように「とにかく事実を明らかにする」ということを目的にするならば、ほとんどの書きぶりを変えなければならない。しかし、それで本当に実際に現場で起こっていることに対応できるのだろうか。現場ではもっと生々しいことが日々起こっている。
 いずれにしても、この会でその方向性をまずはっきりさせなければ。それによって以下の書きぶりは相当大きく変わってくる。

【委員】
 例えば大津の事案では、本当にしっかとり調査をし、公表していたと思う。資料についても、個人情報に反しないものは遺族に開示されている。
遺族は、調査の中で獲得したものを訴訟の資料として使うこともあり得るので、やはりル-ルはきちんとしておくべきだ。遺族が獲得できるものはどんどん獲得して、訴訟で使っても良いということを前提にしなければ、十分な調査にならない。この調査は今を生きる子どもたちの権利保障のためという限界の中で行う、そして出せるものは全て遺族にもお渡しする、という腹のくくり方が必要だと思う。

【委員】
 現実には、遺族を前にしてしまうとなかなかきれいに二つに分けることができなくなるということが現状なのでは。

【委員】
 常に子どもや遺族と向き合って調査を進めていくことは絶対に避けられないという認識はある。ただ、もっと毅然と整理していくべきだということについては、この会議としてどう考えるか、議論していく必要があるだろう。

【委員】
 逆に、調査委員会の立場をはっきりさせることによって調査委員会の進め方が遺族と学校との間で揺れ動いたりせず、定まってくるのではないか。

【委員】
 再発防止を主目的とするのであれば、遺族以外の人が調査を提言してもよいはずだが、調査委員会の設置を要望するのは遺族、という前提で始まったのだったか。

【委員】
 現実的には遺族だろうということで、第三者というのは想定してない。

【委員】
 まったく関係のない第三者というのはおかしいだろうが、関係者ではあってもいいような気がする。

【委員】
 43ペ-ジの(2)(3)についてのコメントに移りたい。子供への詳しい調査について、指針では「子供からの聴き取り」の後に「子供へのアンケ-ト」が記載されているが、まずアンケ-トを実施し、その後聞き取りによってアンケ-トの曖昧な点を確認すべきと考えられるのではないかというもの。現実に、アンケ-トが先にやられている例の方が多いような気もするが、この点はいかがだろうか。

【委員】
 これを作ったときには、最初に初期調査をし、判断をしてから詳しい調査を行うこととしていた。初期調査のことを踏まえて書いたのでこの順番になっているというだけで、大きくは聞き取り調査とアンケ-ト調査になることは間違いないので、アンケ-ト調査を先にしても問題はないと思う。

【委員】
 これを作ったときに時系列は考えていなかったと思う。ワ-キングではアンケ-トが持っている危険性についてかなり強く考えていたのでこういう順番になった。アンケ-トについてはかなり慎重にやらなければいけないというのがあったので、必ずアンケ-トをやってから聞き取り、という発想はなかったと思う。

【委員】
 実際にはかなり初期調査の段階でアンケ-トがされており、その後聞き取りなどで確認をしている。初期調査と詳しい調査の区別が現場ではあまりなくなっているので、整理は必要なのではないか。どちらにしてもアンケ-トだけで判断できる内容ではないので、基本的には順番も含めて明示する方が、混乱が少ないのかなと思っている。

【委員】
 私も、アンケ-ト調査が先でも良いと思う。ただ、アンケ-トの持つ危険性や踏まえておくべきことは明記しておくべきだろう。

【委員】
 その意味では、聞き取りが安全かというと必ずしもそうではない。安全性の問題についてはいずれにしてもきちんと明記するべきだ。

【委員】
 続いて、44ペ-ジの(3)について。詳しい調査における「子供へのアンケ-ト調査」について、アンケ-トは万能ではなく、時として噂や憶測を含むこと、聞き取り調査など、必要に応じて十分な情報を得る必要があることなどの留意事項を明記することを検討すべきではないか、という意見。まさしくそのとおりで、子供の自殺がメディアで大きく取り上げられると、すぐにアンケ-ト調査をしたとかしないとかいう話が出てくるが、単にアンケ-トをしたかしないかという話だけになってしまうことがしばしば起きているように思う。それに伴う問題点についてきちんと理解してもらわなければならない。

【委員】
 それについて四点考えている。一つは、アンケ-ト調査は決して万能ではないということ。二点目は、聞き取り調査なども絡めて、量的、質的にも十分な情報を得る必要があるということ。つまり、アンケ-トだけで事を終わらせないということ。三点目は、アンケ-ト調査そのものが、時として、噂や憶測、悪意のある記述を含む危険性があるということ。最後に、私が一番言いたいのは、調査は決して犯人探しをするものではないということ。この四点くらいは必ず明記した上で、アンケ-ト調査について書きたいと思っている。

【委員】
 これまで行われているアンケ-トに関して問題点を感じたものはあるか。私は、最初から、いじめと決めつけている誘導的なアンケ-トが結構多いような気がするのだが。

【委員】
 アンケ-ト調査の実施そのものが抱えている課題というのは、例えば個人的要因や家庭的要因の調査を前提にアンケ-ト調査はなされないということ。つまり、アンケ-ト調査を学校で行うということは、背景に学校要因があるのだということとイコ-ルになる、そういう部分をアンケ-ト調査は持っていると思う。

【委員】
 何か気が付いたことはありませんか、のようなオ-プンクエスチョンであれば良いが、いじめに気付きましたか、のような質問になりがちであるという問題点もある。

【委員】
 聞き取りの場合も同じことが言えるし、この指針ではそういうオ-プンエンドの書き方を例として挙げている。アンケ-トの質問の中でだんだん学校要因がすり込まれていくということについては非常に危険性があると思っている。

【委員】
 アンケ-トの危険性については、資料としてつけたアンケ-トのサンプルの中で触れているが、それを本文中に入れる必要があるのではないか。
 さらに、初期調査の段階で学校がアンケ-トをしてしまっているなど、初期調査と詳しい調査の流れの中でアンケ-トをどう位置付けるのかということが不明確になっていたのではないかと思う。アンケ-トさえしていれば学校がちゃんと調べる姿勢を示したというイメ-ジがあってやってしまっているのではないかという危険を感じているので、その辺は書き込んでいく必要があると思う。

【委員】
 アンケ-トや聞き取り調査が誘導的なものにならないようにというのは極めて重要な点であるということと、ただアンケ-トをすれば済むというものではないということを、どこかにきちんと書き込んでおくということでよいだろうか。

【委員】
 現実に起きた色々な事件では、聞き取りの対象は必ずしも子供だけではない。教員や校長先生への聞き取り、遺族への聞き取り、それから子供と一口にいっても、加害者と言われている子供、加害者と言われている子供の周りにいた子供、それぞれについて留意点がある。例えば、校長先生は、教員からの報告でこういう事実を知っています、というところしか話せないようなこともあり、現場の教員から聞き取るときとは違う留意点がある。そうしたことに留意した上で聞き取りをしていけば、教員からの聞き取りと校長先生からの聞き取りの評価は違ってくる。それから、見ていた子供たちや加害者と言われている子供からの聞き取りにはものすごく配慮が必要で、時には加害者と言われている子供に、例えば弁護士や親などの立ち会いもした上できちんと話を聞いてあげることも必要かもしれない。さらに、御遺族からの聞き取りも不可欠なので、目的をはっきり示した上で、御遺族との信頼関係を持った形で行うことが必要である。このように、それぞれの場面における聞き取りの留意事項みたいなものを、今までの経験から書き込むことが役に立つのではないか。

3.アンケ-トや聞き取り調査で得た資料の取り扱いについて

【委員】
 次に、42ペ-ジに、調査で得られた分析・評価前の資料の開示を遺族が求める場合の留意事項を記載することも考えられる、という意見。例えば、開示する場合には事前に文書で保護者の了解を得た上で、遺族に対してアンケ-ト調査の持つ危険性について伝もえるなどといったことが考えられる、とのことだが。

【委員】
 要は、事前に子供たちや保護者に了解のないことや約束していないことを後で勝手にしないということはきちんと書いておかなければならないと思う。

【委員】
 これは、今ある個人情報開示の条例で全てが解決するほど簡単な問題ではない。やはり、この調査委員会がきちんと機能するためには、各都道府県なりできちんと条例を持ち、調査委員会の目的や構成メンバ-、調査方法やアンケ-トの開示方法などについてきちんと担保することが必要ではないか。
 そうすることによって、現場がそのたびごとに悩むことなく、この調査委員会はこういう役割で、こういう方法で、こういうアンケ-トをして、このアンケ-ト結果はこうした形で用いられるということをちゃんと分かった中で調査が行われるという制度設計はできないだろうか。

【委員】
 調査委員会が教育委員会に設置される場合は要綱で設置できるが、調査委員会の委員が全くの第三者で、設置者が自治体の首長である場合には、条例の設置が基本となる。法的なことはよくわからないが、首長の下に設置する場合のみならず、教育委員会の下に設置する場合であっても条例できちんと整理をすることが望ましいと思う。47ペ-ジの「調査委員会の設置要綱で定める主な事項」は、調査委員会を要綱として定めていく場合の例示として書かれているものだが、例示として書くとかなりそれが流布されていくという特性を持つ。ここに、条例というところまで踏み込んで書いていくのかについては、皆さんの御意見を伺いたい。

【委員】
 ここは、そもそも調査委員会を立ち上げる前に遺族とも合意をきちんととっておかなければいけない項目ではないだろうか。例えば、調査をするに当たって、遺族に見せられる情報と見せられない情報とをはっきりさせておく。

【委員】
 おっしゃるとおり、現在は、説明をして同意を得る、同意が得られない場合にはまた協議をするという書き方をしている。しかし、今の意見は、こういう場合には情報を見せる、見せないということを条例の中であらかじめ整理しておくべきだということだと思う。

【委員】
 それともう一点、残されたほかの生徒にアンケ-トや調査をする場合には、保護者に説明して同意をとっておくというのが書かれていたと思うが、現実にはほとんどされていないのは問題ではないのだろうか。

【委員】
 現場の人間からするとそれは非常に危険だと思っている。やはり、ここの例示で書いているように、集まったデ-タの取扱いや調査の目的、そして了解が得られた人にだけアンケ-ト調査をするということを、きちんと文書で保護者にも子供にも説明することが重要だ。しかし現実には、担任がこれは他の人には見せないからと口頭で説明してしまい、結果として、それが御遺族を通して色々なところに出ていってしまうという例があったと聞いている。

【委員】
 指針の中に書いてあるのに、それが現実には守られない背景というのは何なのだろうか。

【委員】
 きちんとやった方が後々絶対良いということはみんな分かると思うが、現実に、今すぐしなければならない、明日にもやらなければいけないというときに、そこまで冷静な判断ができないのではないか。

【委員】
 アンケ-トをとる際には、児童生徒が回答する出来事や見聞きしたことなどについて、それはいつのことなのか、つまり、亡くなる前なのか後なのかについて回答できるような設問の仕方が大事だと感じている。というのは、複数の事例を聞いていると、時期が非常に不明確で、直接聞いたという回答にはなっていても亡くなった本人ではなく友達から聞いたとか、ネットの情報を見たという伝聞情報がさも体験的出来事のような記述として出てきたりして、それがさらに増幅することもあるようなので。

【委員】
 ところで、今考えている調査委員会と、いじめ防止対策推進法で考えられている調査委員会というのは、制度的にはどのように整理されていくものとして検討したら良いのだろうか。

【事務局】
 今議論していただいている背景調査は、原因は何か分からないがともかく探っていこうというもので、いじめ防止対策推進法に定める重大事態の調査というのは、「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき」に行うもの。ただ、「いじめにより…疑いがある」という場合をどう考えるのかということを含めて、正直まだ整理ができてない状態。今後、政府の方でも基本方針の策定の検討に入っていく。

【委員】
 その場合、ここで重ねられてきた議論と、いじめが原因のときの調査委員会を立ち上げるための議論が、全く違うものになることもあり得るということか。

【事務局】
 この法律はいじめによるものが対象になっている一方で、重大な事態というのは、生命、身体、財産に重大な被害が起きた場合や長期間登校できない場合など、若干広く想定されている。逆に今御議論いただいているのは、いじめなども含めて自殺をしてしまった事案なので、いじめ防止対策推進法で設置される調査委員会が重なってくるというのは事実。
 この法律の立て付けは、重大事案が起こった場合には、公立の場合は、学校又は教育委員会が調査委員会を設けて調査をする、さらにその調査結果について再調査が必要な場合には、地方公共団体の長が再調査をする、というもの。法律では、地方公共団体の長の調査委員会というのは再調査の場合に出てくるのだが、ここで議論いただいている調査委員会は要件も違うし、再調査でなくても自殺事案について地方公共団体の長がいきなり調査委員会を立ち上げるということもあり、この法律がそれを禁じているわけでもない。追って整理して御説明させていただきたいが、基本的には法律に定められているものはここで御議論いただいているものに含まれるということになるだろうと思っている。

(3)最後に、事務局から、今後のスケジュ-ルについて説明があった。

--了--

お問合せ先

児童生徒課