児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(平成25年度)(第2回) 議事要旨

1.日時

平成25年6月13日(木曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省東館16階 第1会議室

3.議題

  1. 児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

 市川委員、荊尾委員、川井委員、窪田委員、阪中委員、高橋委員、中馬委員、坪井委員

文部科学省

 白間児童生徒課長、池田生徒指導室長、鈴木生徒指導調査官 他

5.議事要旨

(1)議事に先立ち、事務局より配布資料及び検討課題についての説明が行われた。

(2)議事に従い、委員による討議が行われた。

(3)事務局から、今後のスケジュ-ルについて説明があった。

(1)事務局より配付資料及び検討課題についての説明

【事務局】
 本日は背景調査の在り方の見直しの検討について進めさせていただきたい。資料1がその検討についての課題をまとめたペ-パ-、資料2は前回の調査研究協力者会議第1回の議事要旨である。
 それから、背景調査の見直しのため、実際に背景調査を行い、調査委員会を開いたことのある教育委員会や学校、自治体の報告書をまとめたファイルを机上に配布している。結構分量があるので、今後は会議ごとに机上配布し、参考にしていただくこととする。

【委員】
 それでは、今日の審議を始めたい。不幸にして自殺が起きてしまった後に、第三者委員会による調査が始まった場合の背景調査について、細かい点を、これまでの例を基に検討し直しておくというのが今回の主なポイントである。その検討課題について事務局から説明いただきたい。

【事務局】
 資料1をご覧いただきたい。児童生徒の自殺が起きたときの背景調査の在り方、この見直しの検討ということで、特に平成23年3月に当会議でまとめた「審議のまとめ」の中にある背景調査の在り方と、そのガイドライン的な調査の指針について検討いただきたい。これらについて、実際に児童生徒の自殺があった自治体で、第三者委員会や調査委員会を開いたり、アンケ-ト等の調査を行ったりした際に出てきた課題や論点を四点にまとめている。
 まず一つ目は、「背景調査の意義について」。これについては、審議のまとめの論点整理の中の特に6ペ-ジに書かれており、学校要因について調査を行う必要があるが、自殺の要因は複数要因であるということから、個人要因や家庭要因についても調査の対象となり得ることに留意する必要がある、とされているが、報告書を読んだり、実際に背景調査を行った教育委員会や学校から課題について聞いてみると、やはり学校で家庭要因や個人要因について調べるのは相当限界がある。
 また、学校要因を調べることについても、第三者委員会で調べたことが、例えば紛争になったときの材料になってしまったり、実際背景調査をやってみるとガイドラインの意義がだんだんずれていく感があったことから、特に6ペ-ジにあるような家庭要因や個人要因といったものについてまで果たして言及できるかどうか、調べられるかどうか。警察機構のような捜査権限のない学校や教育委員会の限界について訴えがあったため、課題として挙げている。
 二つ目に、「初期調査と詳しい調査の実施時期や方法について」。教育委員会や学校で行う「初期調査」、つまり、学校の全教職員への聴き取りや、親しい友達や部活動の仲間といった者についての聴き取りと、全校生徒アンケ-ト等の「詳しい調査」の時期について、「初期調査」は数日以内、「詳しい調査」は遺族と取り決めながらというふうにされているが、これを一緒にやっているところも出てきている。確かにこれはガイドラインではあるが、実際に行う場合、初期調査と詳しい調査をいつやるのが適切なのかについて課題があるいう学校や教育委員会、自治体の声があるので、二番目の課題として、初期調査と詳しい調査の実施の時期や方法について、少し御議論いただきたい。
 それから三番目は、「アンケ-トや聞き取り調査で得た資料の取り扱いについて」。個人情報の取り扱いも含め、特に報告書だけでなく、アンケ-トや聞き取りの内容についても遺族が知りたいと言う場合もあり、それが裁判になるケ-スも出てきている。
 例えば、アンケ-トについては、このガイドラインは、保護者に了解を得て調査を行い、それを遺族に見せるか否かについては学校や教育委員会で判断する、ただし、内容が精査されていないうちから見せるのは控えた方がいいということが示されているが、遺族に対してはある程度見せるべきではないかという話も様々な方面から出てきている。こういった資料の取り扱いを、全体的な対外的なものと、遺族に対してのもの、そして亡くなった生徒と近しい者に対してのもの、それぞれどうするかというところが課題になっている。
 それから四番目は、「調査委員会の設置・運営の主体等について」。調査委員会は、今ではほとんど第三者委員会という名前で出ているが、ガイドラインでは、遺族から詳しい調査を依頼されたとき、もしくは学校や教育委員会が詳しい調査をしなければならないと判断したとき、やはり有識者による情報の精査が必要だというときに調査委員会を設置するとなっている。しかし、学校や教育委員会は信用できないので、そこが調査委員会を設置するのはやめてほしいという意見があり、自治体、特に都道府県や市区町村が調査委員会を設置するという形も出てきている。児童生徒の情報等の調査については、学校教育法ではできるとされているが、自治体が調査するとなると条例によって調査委員会の設置を決定しなければならず、その制定に時間が掛かったりしてなかなか機敏な動きができないこともあると聞く。児童生徒の自殺ということで、機敏な動きをしなければならない一方、遺族の希望でそうした形にせざるを得ないというジレンマがあるところもある、そういった中でこの調査委員会の設置についてどうするかを御議論いただきたい。
 運営についても、調査委員会の委員の名前を全部公表せよという要求が遺族やメディアからなされることもあるが、ガイドラインでは適切に、となっていて、必ず委員の名前や役職を開示せよとはなっていない。そういった運営的な部分についても、少し現状に即した形で提言をしていく必要があるか否かといった課題があると考え、「調査委員会の設置・運営の主体等について」を想定される論点案の四番目とさせていただいた。

(2)委員による討議

【委員】
 では具体的に、資料1の四点を一つ一つ見ていきたい。まずは、「背景調査の意義について」。
 この委員会でもよく出てきたのは、自殺が起きてしまった場合遺族が一番知りたいことは、自殺が起きる前に子どもに何が起きていたのかということ。そこを明らかにしていくとして学校側も腹をくくること、同じようなことを繰り返さないためには現実に何が起きたのかに正面から向き合うことが大事だ、という議論がずっとされてきた。
 自殺が起きてすぐに、例えばいじめの事実はなかったというようなことを学校側が発表し、しばらくしてから、犯罪ともとれるような悲惨ないじめの事例がぼろぼろ出てくる、そうなると学校と遺族側の間のコミュニケ-ションが全く成り立たなくなってしまい、どんどんこじれていくこともあるように思う。
 背景調査の意義については、資料の5ペ-ジにも、調査に当たっては、たとえ学校にとって不都合なことであっても事実を明らかにしていく姿勢が基本的には重要であると最初に書いてある。この背景調査の意義について、まず御意見を頂きたい。

【委員】
 年間、残念ながら子どもたちの自殺が約300件あるが、背景調査がクロ-ズアップされてくるのはいわゆる学校要因に関するもので、最近の例だと約6%程度である。このガイドラインは、一般的な自殺の背景を調べていくことを前提に作っているが、最近は6%の部分、すなわち学校要因に特化して、もう学校に要因があるということを断定的に見取った上でどう背景を調査していくかということになっている。この会議としては、年間300件の自殺を網羅的に調べていくという考え方でいくのか、学校要因にシフトした形で整理していくのか、ひとまず意見を聞きたい。

【委員】
 実際問題としては要因が一つだけではないことがたくさんあり、学校要因だけを洗おうというのは実際できないはずで、ほかの要因との相対的な関係で出てくる。だから、学校が中心になってなるべく不都合なことも明らかにすると書いてあるものの、幾らやってもそれが透明性を担保できていると認めてもらえないということが延々と続いている。
 学校におけるいじめの問題に焦点が当たったときには、本人要因が全然検討されていないケ-スも多く、そこが分からないと学校要因との関係が難しいと思う。なかなか本人要因はやりにくい部分もあるが、本当にきちんとした背景調査であればそこまでやらなければ意味はないだろう。そうすると、本当は第三者機関がやらなければならない、それをどう考えるかという問題があると思っている。

【委員】
 起きた自殺全体をきちんと捉えないと子どもの自殺予防を一般に当てはめられないが、学校と遺族側が少しこじれて第三者委員会までいってしまっているときの調査についての議論もある。一体どちらに焦点を当てるべきなのか。今までの第三者委員会の調査結果だと個人要因みたいなものはほとんど書かれておらず、いじめがあるかないかしか書かれていないものが多いとのことだったが。

【委員】
 いじめがあったかなかったかは重要かもしれないが、精神科医として子どもとつき合っていると、いじめというものを理解していない人が余りにも多い。周りが、いじめているかいないかではなく、本人がそれをいじめととっているかとっていないかとか、いじめをどういうふうに考えているかということを考えないと、いじめについての議論は結局ぼやけてしまうのではないかという気がしている。

【委員】
 ここでやろうとしていることは子どもの自殺予防のために何をしていくかという話なので、中にはこじれて紛争化しているものがあるのも事実だが、原点に立ち返ると、そこで白黒はっきりさせていくという仕事は、そもそも学校や教育委員会、文科省の仕事ではないという気がする。また、何が起こったのかは明らかにしなければならないが、結果として責任追及になっているというところもある。
 本来は個人要因や家庭要因まで明らかにしないと自殺予防に資する部分は非常に少ないと思うが、ではそれを学校や教育委員会の調査委員会がやれるのか、というこの先の話ともつながってくる。しかし、ここでやろうとしていることは、自殺をいかに防いでいくかということなので、一部の自殺ではなく、全体とに立ち返らなければならないと思う。

【委員】
 私も同じように感じている。真実100%の自殺の原因というのは分からないだろうが、できるだけそれに近づき予防するという意味では、もう少し早くに子どもたちの変化に気づかなかったのかなど、全ての子どもたちに関わる大事な部分があると思うので、全ての自殺に関しての調査という考え方が良いのではないか。

【委員】
 いじめの自殺事件が起きたがために、世の中がいじめと自殺というものを一体に考えているし、いじめの調査と自殺の背景調査も同じように考えているが、それはおかしい。ここの会議では、はっきり自殺といじめとは違う問題で、自殺の大きな問題はそこだけにあるのではなく、学校要因以外の部分が非常に大きいのだということを世の中に提起しないと自殺予防にはならないと思う。

【委員】
 子どもがなぜ自殺したのか、背景について分からないケ-スが全国的にあるので、できるだけそれをすくい上げるような仕組みとノウハウをガイドラインという形で作り、例えば遺族自身がいじめについてではない調査を希望したときにも調査ができるような仕組みを作っておくことが、子どもはなぜ自殺するのかを私たちが知る一つのツ-ルではないかと考えてこういう仕組みを作ったので、特定の背景に特化した形でのガイドラインではなく、様々な要因に対応できる仕組みの方が良いと思う。

【委員】
 この資料を作るときにその議論もずっとやってきて、初期調査によってどういうことが背景にあるのかということをあらかた見取った上で、そこで判断をして、詳しい調査をするのか、あるいは一旦ここで置くのか、という整理をしている。もう一度それを議論するということではなく、当初作っているものを柱にしながら、ぶれずに全体を見取っていくことを念頭に置きながら、個々に起こっている問題をその中に織り込んでいくというスタンスでいかがだろうか。

【委員】
 子どもの自殺が起きてしまったら何を学校でしなければならないかというと、分かっていることを全て時系列で並べ、学校で調べられることはできるだけ調べておこうというのが初期調査で、第三者委員会を立てるときというのは、大体ちょっとこじれてしまっていて、学校の説明に納得がいかないという理由で第三者委員会が設置されるというようなのがほとんどだったように思うが、どんな書き方をしていただろうか。

【委員】
 初期調査をし、遺族への説明をして、そこでさらに詳しい調査が必要な場合を判定するポイントを、ガイドラインでは3つ挙げていて、学校要因の可能性があれば御遺族に提案して協議するとか、学校要因に関わらず御遺族からの調査の要望があれば詳しい調査をするとか、そういう文型にしていたと思う。

【委員】
 この点について何か付け加えるなどはいかがだろうか。

【委員】
 構造として、何が背景にあるのかということをまずつかみ、それによって分岐をしていくという考え方だったので、考えられるのはもうこの三つくらいかと思っている。さらにこういう考え方もあるということがあれば、また御指摘を頂いて入れていけばいい。

【委員】
 現実的には、現場で不幸にして子どもの自殺が起きてしまったときにはほとんど全例で初期調査というのは行われるものなのか。

【委員】
 これも前回かなり議論になったが、遺族の方から、うちの子が死んだのは病気にしてほしいと言われる数は随分多いと思う。その場合には、やはり本人自身に関することや家庭の要因がかなりのウエ-トを占めているだろう。だから、それ以外の部分がここに該当するのだと思う。

【事務局】
 背景調査は、次の自殺を生まないためのものなので、自殺があったときには実施するよう文科省から周知している。遺族から事故にしてくれという要望があったとしても、遺族に迷惑が掛からない範囲で、初期調査ぐらいは、学校内でできる限りやってほしい旨を文科省からアドバイスをするときもある。

【委員】
 二度と自殺が起きないようにすることが大前提であれば、遺族が反対しようとしまいと、実施しなければならないのではないか。遺族が明らかにしてほしいからやるというよりは、やはり二度と起きないように、というのが第一という前提に立たないとまずいと思う。

【事務局】
 おっしゃるとおりで、自殺があったという一報が入った際には、初期調査の実施についての確認・助言を必ずするようにしている。遺族が事故だと言っているので動きたくないという教育委員会や学校が万が一あった場合には、自殺というのは連鎖など周りへの影響もあるものだから、そういったことも考えて、ケアと並行できちんと調査をしておいた方が良いと助言している。

【委員】
 こうして背景調査に関わる様々なことがクロ-ズアップされ、学校の責任も問われてきているという状況で、現時点では、学校が自殺ということを知り得た場合には、ほとんどの場合は初期調査はやっていると理解している。

【委員】
 この手引きの34ペ-ジの初期調査のところは今までも議論になっていたと思うが、全教師と周辺の子どもから聞くというところが、初期調査に入っている。自殺ということが分かっていながら、誰からも事情を聞かないなど現実的ではないし、されていると思うが、では全教師かというと、これもケ-ス・バイ・ケ-スである。例えばその子どもが学校にあまり来ていないとか、影響力が少ないようなときには、必ずしも全教師から聞いていないこともあり得る。ここが全教師となっているばかりに、全教師から聞かなかったので初期調査もちゃんとやられていないというような、瑣末なことで、きちんとやられているものがそうではないととられてしまった部分もあるのかと思っている。

【委員】
 ここに書いてあるかどうか分からないが、初期調査については、分かっている事実を全て記録しておき時系列で並べておくのは最初にしなければならないことだという一文を入れることは必要だと思う。

【委員】
 今の点で1つだけ申し上げると、いわゆる通常の学校危機への対応のさなかにこの背景調査が同時に起こってくるので、記録をとるということは、一般的な危機対応としてむしろ「緊急対応の手引き」の方で整理をしておくことではないだろうか。その仕分けは当時もしたと思うが、ガイドラインにそれを書かないということではないので、そういうことが必要であればこちらにも入れていく必要があるかもしれない。

【委員】
 原則としては、初期調査は可能な範囲ですべきであるということ。例えば、明らかに病気であるということが分かっていながら家族からの希望がなかったとしても、分かっている範囲ではその記録をしておくということも大事だと思う。

【委員】
 学校現場としては、病気であっても一応記録に残している。教員同士は学年が違ったりするとその情報がなかなか共有できていないこともあるので、全然知らないということも含めてすべて書いておくことが必要。だから、全教員には、最低こういう事案が起こればかならず調査をすると明記されている方が記憶に残ると思うので、私はこの全教員というのは残してほしいと思っている。

【委員】
 基本的に、学校で起こったこういう危機的状況について、全教職員、構成員で共有したところからスタ-トというところが前提としてあり、その危機対応の一部として記録がある。危機対応の中で、前提としてまずそういうことがあるということを、改めて提起できると良いのでは。

【委員】
 では、二番目の、「初期調査と詳しい調査の実施時期や方法について」、今までの具体的な例などを見て、初期調査、あるいは第三者委員会による調査、それらの時期や内容について御意見があれば。
 現実の例として、子どもの自殺が起きてかなりの時間がたってから第三者委員会を設置してほしいという要望が出てくるということはあるのだろうか。

【事務局】
 どのケ-スとはっきりは言えないが、記憶している限りでは、初七日とか四十九日という区切りで御遺族が少し感情の整理ができてきたときや、外から色々な情報を聞いたときなど、学校要因について少し調査してほしいと言われるケ-スは実際にある。中には何年か経ってから調査を希望する方も実際に出てきているという状況もある。

【委員】
 医療過誤の訴訟などと同じだろうか。

【委員】
 教育と医療は違うと言われがちだが、実は非常によく似ている。後で遺族から、医療的な処置が悪かったので亡くなったといって訴えられる可能性もあるわけなので、医療現場では、時間と何をしたかを、みんなで書いておき、後でそれを突き合わせるという作業をせざるを得ない。
 今伺ったように、仮に1年後、2年後に調査の申し出があるとすると、そのときにちゃんと対応できるように、ある程度の情報は持っていなければならない。もちろん、亡くなったという事実があれば何もないということはあり得ないだろうが。

【委員】
 私の知っている限りでも、医療過誤の訴訟などを見ると、治療中の患者さんが自殺してしまったケ-スで、担当医も相当打撃を受けたものの、何とか時間が経ってそれを受け入れていったところで、3年後ぐらいに突然訴訟を起こされる。そしてまた新たにその自殺と直面させられるが、もう自分の記憶の中にもそんなにはっきりない、頼れるのはもう記録しかないんだ、というようなことを言われることがある。
 場合によるとかなり経ってから遺族がきちんと調べてほしいと言ってくることも現実にはあるのだろう。しかし、自殺が起きて間もなければ調べることは可能でも、何年も経ってしまっていると調べようがない、ということも起きてきてしまう。この点について、初期調査を実施する時期や、さらに詳しい調査を実施する時期について、このガイドラインで示したものに関してここが現実にやりにくいなどの意見があれば。

【委員】
 「緊急対応の手引」の危機対応の態勢というところで、まず何が起こったかについて客観的な事実を把握し、時系列でメモしておくということは書いてある。そして、なるべく全教員が分かっている事実を全てメモして情報共有すべきであり、できる限りの聞き取りを行うことというのも全部書かれている。初期調査のうち、この部分は「緊急対応の手引」の中に入っている部分のことを言っているんだという認識でガイドラインを作成したと認識しているが、それについて確認したい。
 要するに、ガイドラインに書かれている初期調査というのは、「緊急対応の手引」にある緊急対応をした上でまた初期調査をする、という意味ではなく、事故後3日ぐらいまでについては、いわゆる緊急対応の中で行うべきこと。子どもの死というあらゆる事件が起きたときに、緊急対応を行う。その中で時系列にメモをし、全教員が情報共有し、分かる限りの子どもたちからの聞き取りを行う、これが一週間以内くらいに行われると、こういうことで良いのだろうか。だとすれば、「初期調査はいつ行うか」ではなく、死亡事案が起きたらすぐに緊急対応の中で行われている、そういう意味だと思っているが。

【事務局】
 なぜ初期調査の実施時期という論点を出したかというと、ガイドラインで一週間以内と言っているにもかかわらず、学校や教育委員会が混沌としていてものができなくなって数か月掛かったり、態勢や人員を整えるのに時間が掛かったりして一週間どころではない学校や教育委員会が実際に出てきている現実があるからだ。それが遺族との不和の原因になることもあり、実際、このスパンに関して、現実問題としてかなり重く置かれているという実情があるので、そこを明確にすべきではないか、ということで論点に入れさせていただいた。

【委員】
 文科省としては、緊急対応の中で行うべきことをしっかりやってください、それが初期調査です、とはっきり示してはと思うが、もし今のような誤解があり、ガイドラインに「初期調査とは緊急対応の手引にあるこれのことです」みたいなことをしっかり書くことによって分かりやすくなるのであれば、それは意味があると思う。だから、方針を変えるのではなく、既に出しているものをはっきりさせるという意味であればわかる。

【事務局】
 明確にするということももちろんある。ただ、相反することをもう一つ言うが、実際、1週間以内という形で手引きでもガイドラインでも言っているが、例えば遺族が早くやってほしいというところもあれば、落ち着くまでじっと待っている学校や教育委員会もあり、その対応が功を奏している場合もある。一体どこの時期が果たして良いのかという議論については、一週間という期間そのものが適切かどうかの議論と、一週間というものを明確にすべきかどうかという議論、この二つがあるのではと考えている。

【委員】
 初期対応の手引に書いてあることと緊急対応の手引が別々だったら問題だし、現実にはどちらかだけ読んでばたばたしているというのが現実なので、もし、早い段階で何かをしなければならないかということがきちんと徹底されていないならば、今後も繰り返し研修会等で言い続けるしかないのでは。

【委員】
 「緊急対応の手引」は、自殺ということで少し整理しているが、例えば事故などの学校危機の場面では、頭が真っ白になるようなことがある瞬間からどっと来る、ということが必ず起こる。しかし、学校は学校として、子どもたちがいるので、平常の機能、授業も果たしていかなければならない。そういう中で背景を調査するということが、もう一つ上にオンされてくる。
 だから、まずはいわゆる危機対応をしっかりとやって、それから背景を調査しましょう、ただ、間が空けば空くほど子どもたちは様々な噂や憶測に影響されやすいという特質もあるので、できるだけ早く情報を集約しましょう、というので、1週間という線を出したけれども、学校という集団の中でそれらを同時にやっていくことはなかなか難しい。だから、そこに教育委員会が全面的なバックアップのために入り、マンパワ-をしっかり整理して二つのことが同時に進行するようにやっていこうと。これを一つで書いてしまうとぐちゃぐちゃになるので、いわゆる危機対応の部分は危機対応として整理しつつ、背景調査は背景調査としてその上に書いていこうと。だから、同時に起こっていることを二つに分けて書いているという意味で、むしろ現状の方が現場としては分かりがいいのでは。

【事務局】
 それともう一つ、実際に調査をやったところの中には、アンケ-トや聞き取りを初期調査段階でほぼやっているところが多いという現状がある。ガイドラインでは、アンケ-トや聞き取りは詳しい調査の段階でやると書いてあるが、実態上は初期段階からやっているところが多くなっていることもあり、その時期が適切かどうかというところも含めて、少し課題かと思う。中には、時間が経ってから調査をやると記憶が薄れるとか、逆にあまり早くやると、興奮した児童生徒がきちんとしたことを書かなくなるのではないかとか、様々な課題が現場からは上がってきている。

【委員】
 確認だが、時間をかけて調査を行った方が功を奏する場合があるというのはどういう意味か。

【事務局】
 遺族が混乱している最初の頃には、校長先生が遺族に対して話しかけすらもできないというときが数日から数週間、数か月続くこともあると。そういうときには、やはり少しそっとしておく期間を設けることが必要だという教育委員会もある。

【委員】
 それは、遺族対応としては分かるが、二度と自殺を起こさなくていいように背景を調べるということからはずれているのでは。

【事務局】
 我々もそう思い、自分たちができることはやった方が良いとは言っているが、遺族の感情を逆なでしないためにも何も動かない方がいいというところも実際にある。

【委員】
 確かに、ケアを全面に出さずに調査、調査と言ったら、抵抗して何も動かなくなるということも現実にはあるだろう。

【委員】
 調査、調査ではなく、家族に聞けなかったら家族以外のところからでも聞いておき事実を積み重ねておくことは、全てについて必要だと思う。だから、それを理由にやめてしまうのはちょっと納得がいかない。ただ、御家族に無理やり聞くというのは、それは失礼なことかもしれないし、それはできないと思うが。

【委員】
 三点目の、「アンケ-トや聞き取り調査で得た資料の取り扱いについて」、何か意見があれば。

【委員】
 初期調査は一週間ぐらいで実施して、それから遺族と協議をして詳しい調査をやるかやらないかという判断をし、計画を立てて詳しい調査を行うとしている。
 実際にこの辺の準備がうまくできていれば、恐らく二週間目くらいには詳しい調査が実施できるのではないかと思う。やはり、遺族の我が子を失った悲しみの時期とか、あるいは友達を失った子どもの気持ちとか、学校が日常生活を少し取り戻してくるような時期を見たときに、最も早くやってもそのくらいではないかという判断でこういう見取りをした。ただ、実際には、事案が起こったらすぐにアンケ-ト調査をやっておくべき、あるいはそうせざるを得ないというレアなケ-スも出てきていると思う。
 ただ一つ心配なのは、状況が分からないままアンケ-ト調査をやるというのは、結局学校要因を調査することとイコ-ルに近いと思っている。自殺の要因を、例えば個人の要因、家庭の要因、学校要因と三つに分けると、例えば異性関係がどうだとか精神的な疾患があるとかいう個人要因や、まして家庭要因のために子どもたちにアンケ-ト調査はしない。すると、自殺の事案が起こってすぐにアンケ-ト調査とやるということは、過去にいじめがあったとか、調査そのものが持っている特質というのがあるので、それは詳しい調査の段階でしっかりとやっていくのが大事なのではないか。

【委員】
 ガイドラインというのは100%当てはまるものではなく、ある程度このようににしたら良い、というようなもので、あとはそれをたたき台にして現実の状況に合わせて工夫をしていくというのが当然なのに、1週間以内にと書いてあると、8日目じゃだめですかとか学校に言われるのが不思議なのだが、そんなものなのだろうか。冒頭に、これはたたき台なので、この会議としてはこれをお勧めするが、これが全ての状況に当てはまるわけではないと書いてあるのだが。

【委員】
 おっしゃるとおり、数字を書くと数字が独り歩きすると思う。3日以内と言われると3日以内にやらなきゃいけない。かといって、適切な時期に的確に行うと書くと、何のことか全然分からなくなるので、大体何日程度ということは入れていかざるを得ないと思うが。ただ、現場は極限状態にあるわけなので、やはり数字を見るとそれが頭にこびり付くというのはあるかもしれない。

【委員】
 何かにすがりたい、よりどころにしたいという気持ちは、極限にあればあるほど人間の心理としてあるのかもしれない。これを平常時によく読んで全体をうまくつかんでいれば、うまくコントロ-ルできるかもしれないが。

【委員】
 場合によっては遺族の御希望で警察介入になる場合もある。そのときのことはどこかに書いておいた方が良いのでは。仮に警察介入になった場合、場合によっては調査委員会を開くこと自体が問題になる場合もあるのでは。

【事務局】
 あり得るとは思うが、少年事件であり、基本的には任意の捜査で身柄は確保しないので、捜査と調査が並行でできる部分もあるかもしれない。それは本当にケ-スバイケ-ス。ただ、警察が介入してもともとあった資料を全部押収されたりすると、調査が後にならざるを得ないというのは、事実関係としてはあると思う。

【委員】
 だから、もしそういうことになった場合はこういうふうにしましょうとどこかに入れてはどうだろうか。

【委員】
 一行だけ、警察の捜査が行われている時期には警察の捜査に支障のない範囲で情報収集を行ってくださいと書いてあり、そういう場合の想定は一応されている。

【事務局】
 それで十分だと思う。付言すると、警察との連携というのは前から言われている。県警も教育委員会も、お互いがどのようなことをしているのかを非常に気にはしているので、捜査の秘密もあるだろうし、学校側にも個人情報があると思うが、よく顔の見える関係を作って、何をしているのかを分かっておいていただきたい。

【委員】
 それから、これは相当議論になり、現場からの声も上がっているが、アンケ-トをどこまで開示すべきか。学校側とすれば、書かれていることが現実にあったのかが確認できないものを遺族には出せないという意見があるが、遺族にしてみると全部出してほしいと。それをどう考えるか。

【委員】
 ガイドラインでは、調査方法を明記した文書を基に保護者や子どもたちに説明し、文書で承諾を得てから実施すると書いている。これは大原則としてこのとおりでいくべきだと思う。口頭で何も言わずに調査をして、調査をされた側がこれは学校が資料とするためにやっていると思っていたら突然それが全て遺族に提供されたとなると、逆に他の保護者から学校が批判されるという新たな危機を生んでしまうことになる。
 要は、事前の十分な協議が必要で、どうしてもそのまま遺族に資料を提供する場合は、調査前の説明のときにその旨を説明したり、その旨をしっかりと明記したりして実施することが重要だ。ただ、その場合には、どこまで情報が集まるかどうかというのはなかなか難しいと思う。記名をするかしないかでも違うし、全てが公表されることを前提とした場合の情報の集まり方も違う。書き方は色々あるだろうが、約束にない開示の仕方というのは、法的にどうであれ、保護者や子どもと学校の信頼関係ということから考えると、それはやはりまずいと思う。

【委員】
 実際に書面で保護者に説明をして、同意はとれているのか。

【事務局】
 このガイドラインの、特にアンケ-ト様式の保護者に関する同意書とか承諾書の部分についてはほとんど活用されていないようだ。中には口頭で外に出さないからと言ったりするところはあるようだが。

【委員】
 49ペ-ジの一番下、プライバシ-への配慮と公表というところで、聞き取りの内容についてはそのまま公表することはありませんし、御遺族の方にもそのままお知らせすることはいたしませんと書いてあるが、ここが今回、1つ大きな課題として指摘された。要は文書でそういう仕切りでやっていることを前提として書いているのだが、ここだけを見て文科省もこう書いていると、この部分が独り歩きをしてしまっているということについては、私自身大きな反省を持っている。

【委員】
 例えば、個々のケ-スによって具体的にどういうことをするのかとを十分に話し合い、ある程度書面にまとめておくということか。

【委員】
 きちんと文章化して、約束をするということ、そして承諾書という形で意思表明をしてもらうということ。文章はともかくとして、その趣旨をはっきりしておくということだと思う。

【委員】
 伝聞の内容がアンケ-トに反映されてきたとき、それは事実と確認ができないので遺族に見せることはしないという判断はされているようだが、それはそれで問題ないと思うが。

【委員】
 基本的にそうだが、ただ、これも少しこちらの意図することと違う使われ方をしている例も実はある。要は学校にとって都合の悪いことであっても出そうという意図があったが、事実関係がきちんと整理されていないから出せないといって引っ込めてしまう例がある。ここは非常に微妙な問題なので、どういう書きぶりで伝えていくかという課題がある。

【委員】
 事務局の方に寄せられているのはどのような事案なのか。

【事務局】
 特にこの49ペ-ジのプライバシ-への配慮と公表の部分については、なぜここを入れたのかというそもそも論や、保護者が承諾書を書いていないのに、遺族に個人情報もそのまま見せてしまったというケ-スがあった。また、A県では見せるが、B県では見せないなど、教育委員会ごとの対応の差に関する疑問が呈されるケ-スもある。

【委員】
 遺族からしてみれば、信頼が置けない主体がアンケ-トを実施したことに関して、それを見せないと言われたら絶対信用しないと思う。だから、遺族もちゃんと了解した第三者委員会などがアンケ-ト調査をし、筆跡から子どもたちのプライバシ-が判明するのでそのままは見せられないが、中身についてはきちんと判断した上で開示をすると話をしておけば、遺族の方たちも、何が何でも開示しろということにはならないだろう。

【事務局】
 ならないだろうと思うが、なってしまっている例が実際にある。きちんとしたル-ルを作れば大丈夫かというと、遺族感情とのバランスで、学校や教育委員会がなかなか毅然とした対応がとれなかったりするのも現状。

【委員】
 もちろん遺族が満足する調査をするのも重要なことだとは思うが、遺族の満足だけに焦点化されてしまう例もある。遺族自身が子どもを亡くしたという現実を受け止めて回復していくための支援というのは、また別の枠組みで準備されなければならないもので、それを全て、学校や教育委員会や文科省が背負えるはずもない。

【委員】
 時間の関係もあるので、四番目の「調査委員会の設置・運営の主体等について」に移るが、この会議の場では、あくまでも第三者委員会というのは自殺の背景に何があったのかを調べるのが第一目的だとしているものの、現実に行われていることはかなり調停的になっており、個人的な要因などがほとんど飛ばされている。会議の中では精神障害の疑いなども議論はされているが、最終的な報告書の中にはそれが一切出てこないということがある。調査委員会の設置、あるいは設置の主体、そして、実際に何を目指すのかというあたりに話を持っていきたいと思う。
 また、誰を委員に選定するのかということもきちんと書いておかないと、遺族側の主張に沿った偏った委員の選択などもなされ、委員会の調査を待たずに方向が出てしまう可能性があるのではないかと心配されるケ-スもあるが、それについてはいかがだろうか。子どもの自殺は数が少ないので、各市町村で専門家のプ-ルみたいなものを作るというのは非常に難しい。そこで、県単位ぐらいの大きさでそういった専門家のグル-プを選定しておき、いざ何かあったらそこから専門家を選んで調査委員会を立てるというのはどうかという意見があるが。

【委員】
 調査の指針の32ペ-ジに、各自治体においてどう取り組むかを検討し、あらかじめ準備をしておいていただくことを希望しますと書かれているが、何のことかさっぱり分からないような書きぶりになっている。弁護士など、属性をいくつか挙げてはどうか。ただ、子どもたちの自殺に関する専門家を探し、さらにそうした専門家を長期間拘束できるようなシステムを市町村レベルで準備をしていくことはほとんど不可能に近い。だとしたら、やはり都道府県レベルであらかじめこういった委員を選定し、年に何回か、子どもたちの発達や児童心理について、また自殺という特異な面についての研修を行う。そして、都道府県の市町村で不幸にして自殺が起こったときには、市町村から要請があれば調査団を送り込むことができるような準備をあらかじめしておく。
 事が起こってから、一体だれを委員にするのかということで何ヶ月も全然先に進まないというような事態は少なくとも回避できるかもしれないし、そういう小さな自治体をサポ-トするのも都道府県の役割だと思っているので、この指針の中で、都道府県でそういったものを平常時に準備をしておくべきということをもう少し力説していく必要がある。
事務レベルで検討を進めている県もあるが、一つ大きな壁になっているのは、相当期間調査委員会の委員として専念できる人がいるのかどうかということ。また、委員によってそれぞれ仕事が違うので、ギャランティ-もみな違うなど、簡単にフレ-ムが立ち上がるというものでもないと思っている。

【委員】
 その場合だと、ある程度、委員の中立性は選ぶときに担保されていると。

【委員】
 委員が満遍なく県内から来るとすると、利害関係がないという意味での中立性は少し担保できる。市町村というレベルで委員会を作れば作るほど、委員もその地域の人なのでかなり利害関係があり、それは遺族側だとか、それは行政側だとかいう色分けができてしまう可能性がある。そういう意味では、県で立ち上げるというのに意味がある。

【委員】
 その考え方だと問題は出てこないだろうが、委員の選定のときに、学校側はこの人と言っても、遺族はその委員ではだめだということで自分たちの推薦する委員を入れようとすると、その時点で方向性が決まってしまう可能性がある。そういったときに、誰が委員の良い悪いを決めるのが良いだろうか。

【委員】
 もう既に教育委員会レベルで委員会を設置しているということ自体に同意が得られない。だから、自治体の首長が主催するとか、あるいは全くの第三者が第三者によって調査をするとかでないと許されないとか、極論すればそういうこともあるかもしれない。

【委員】
 事務局の分かっている範囲で、この人を委員会に入れるという最終的な判断はだれがしているのか。

【事務局】
 基本的には設置主体者だと思うが、首長が入ってくる場合もあれば、教育委員会の中でまとまる場合もあれば、県教委が紹介しても同意が得られない場合もあって、そのときの政治的な判断も入るので、最終的にどの形で決まるかというのは個々のケ-スによる。

【委員】
 川西や、大津で作ろうとしている子どもの権利の問題に関するオンブズパ-ソン的な第三者委員会が常設され、どんなところで起きてもその常設の委員が行って調査をするというのは一つの在り方だとは思っている。これはもう自殺ということだけではなく、不登校であれ、いじめであれ、教師暴力であれ、子どもの権利侵害があるという訴えがあったら調査するというのはあり得ると思う。

【委員】
 常設の委員会を作るにしても、委員になる人が公平かどうかというのはどうやって誰が判断するのか。

【委員】
 オンブズパ-ソンになったら、市長部局や議会の附属機関であったりするので、誰の候補、という意味ではなく、もう常設のこの人たち、という意味になる。例えば、地元弁護士会や医師会の推薦という方法はとれるかもしれないが、決定するのは首長部局や県議会になるだろう。
 今国会に上がろうとしているいじめ対策防止法案に、常設の委員会設置が条文に入るか入らないかという状況だが、これは、現在ここで考えている調査委員会と重なるものなのか。

【事務局】
 いじめと自殺は別ものなので、当然それは違うものだが、立法意思として重なる部分は多いかとは思う。

【委員】
 法案が通ると、何らかの形のいじめ対策委員会ができる。すると、それはいじめ問題なのだろうが、ほとんどの自殺事案がいじめという問題に対しての調査委員会を立ち上げるのだとすると、それがあるのにまた別に調査委員会を立ち上げるのかという問題が起きるのではないかという構造的な疑問を持っている。今ここで議論をして、こういう調査委員会を立てるべきだといっても、法案が通ってしまった後にはどうなるのだろうか。

【事務局】
 確かに、実際に立法されれば、いじめによって重大な結果があるものについては重なってくると思う。ただ、その作り方まで法律では書いていないので、それを具体的にどうやるのかというのはこれから検討しなければいけない。

【委員】
 ただ、自殺に関して委員会を設置する際には、複合的な要因が考えられ、結論はまだなのに、最初からいじめという言葉が入る、それに私はすごく違和感を持っている。

【委員】
 この会議としても、教育再生実行会議など、国の議論も頭に入れておく必要がある。第一次提言では、いじめの問題への対応ということで、やはりいじめの問題をどう解決していくかということに重きが置かれているので、先ほど言われたように、この会とどういう住み分けがなされるのかも意識しておかなければいけない。
 それからもう一つ、教育委員会制度そのもののありようについて、第二次提言が出されていた。責任の所在について、これまでは教育委員会という合議制の場に責任を持たせていたが、それでは責任の所在が分からないので、首長は教育長を直接任命あるいは罷免する権利を有する、したがって、これらについては教育長個人が責任を持っていくという仕切りになると私は理解している。そうすると、調査委員会の主体が誰になるかというときに、これまでの合議制の教育委員会ではなく教育長が責任を持って委員会を設置する、などというように、少し影響してくる可能性もあると思う。

【委員】
 そろそろ時間だが、私が聞いていた範囲では、調査の指針について、大まかなところは大きく変更する必要はないと思うので、これから具体的に、この部分は誤解を招きやすいというところを修整していくという流れになっていくと思うが、それでよろしいか。(「異議なし」の声あり。)では、これまでのものをよく読んできてほしい。
 ここでもう一点、背景調査の在り方についての問題とともに、子どもを対象とした自殺予防教育をする場合の具体的なテキストをそろそろこの委員会で作って提示しようという話になっていたので、どのような流れにするかを、話していただけないか。

【委員】
 自殺予防教育の前提として考えなければならないことをまず書き、それから実際のプログラムを中学校をメインとして作り、それをたたき台にして小学校・高校など各学校の実態に即して考えていく。それから、自殺予防教育を実施した場合のフォロ-アップや、ハイリスクな子へのフォロ-の部分を考えていきたい。また、保健体育や、国語や社会科にも関連する話が出てくるので、そういう兼ね合いも少し提示できたらと思っている。

【委員】
 年度内には、四人の委員で一応たたき台を作り、皆さんから御意見を頂き最終案を作るという流れにしたい。

(3)今後のスケジュ-ルについて

--了--

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