児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議(平成22年度)(第2回) 議事要旨

1.日時

平成22年10月15日(金曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省 旧庁舎第1会議室

3.議題

  1. 会議運営規則(案)について
  2. 背景調査の指針についての検討状況について
  3. 米国における子どもに対する自殺予防教育の現況調査について
  4. その他

4.出席者

委員

高橋主査、新井委員、川井委員、菊地委員、窪田委員、阪中委員、中馬委員、坪井委員

文部科学省

磯谷児童生徒課長、郷治生徒指導室長、清重児童生徒課課長補佐 他

5.議事要旨

開会

議事

(1)会議運営規則(案)について事務局より説明があった。
(2)背景調査の指針についての検討状況について、背景調査ワーキンググループより中間報告があった。
(3)米国における子どもに対する自殺予防教育の現況調査について、自殺予防教育ワーキンググループより中間報告があった。

 

1.背景調査ワーキンググループ中間報告

(1)報告

【委員】背景調査ワーキンググループでは、統一フォーマットと背景調査の指針について議論した。

 まず、平成21年度の「審議のまとめ」において、的確な自殺予防対策を充実させるためには、統一フォーマットを定めて、児童生徒の自殺が発生した場合に全てが報告されるよう協力を求めることが必要であるとされたところだが、この統一フォーマットをどのように作ればいいのか等について、検討を行ってきた。

 この統一フォーマットは、自殺の背景となった可能性のある事実関係の正確な把握に基づくデータを数多く収集することにより、的確な自殺予防対策を充実させるという目的の下で、学校を特定しない形で、任意で協力してもらう。自殺と断定はできなくても可能性を否定できない場合も挙げてもらう点に特徴がある。提出は、発生から1か月程度を目途に考えている。死亡した児童生徒の状況又は可能性のある状況については、死亡した児童生徒がどんな状況にあったのかを我々が正確に把握することによって自殺予防対策につながるであろうということで、かなり詳細な選択肢になっている。今後、まだ修正等を加えて、正確なデータを集められるようにしていきたい。

 次に、背景調査の指針については、昨年度行われた論点整理に基づき、いろいろな状況を想定しながら、検討を進めてきた。昨年度作成した「子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き」に示された事後対応を丁寧に行う中で背景調査が始まると考えるが、背景調査として、自殺が起きた直後にどう動くかという初期手順とその後の本格調査の二つについて検討をしていくことが必要であると考え、まずは初期手順について検討を行った。

 初期手順については、御遺族の要望を受けてから調査を開始したのでは時期を逃してしまう可能性があること、また、将来の子どもの自殺を予防するという観点で、学校が背景を知ることはとても大きな意味があることから、御遺族の要望がなくても学校や教育委員会が主体的に背景調査に向けて取組を行っていくことが望ましいということを基本スタンスとして考えている。初期手順のモデルとしては、まず第一に、児童生徒の自殺が発生した場合、学校は原則として全ての教師に対して急ぎ聴き取りを行う必要がある、第二に、子どもの心理状況に十分配慮しながら、自殺した子どもと関係があると思われる子どもから聴き取りを行う、第三に、第一と第二の聴き取りによって学校に自殺の何らかの要因があると考えられる場合には、仮に御遺族の要望がなくても、さらなる調査を学校の方から御遺族に提案することが望ましい、第四に、そのような形で御遺族の了解が得られれば、保護者に対して調査の方法や目的を説明した上で更なる調査に入る、その際に調査の手段としてアンケートを行うこともあり得る、第五に、御遺族の御意向で自殺の事実が公表されていない場合は、自殺であるという事実を明らかにした上で更なる調査を行いたいという学校や教育委員会の基本姿勢を御遺族に伝えて了解を得る努力をすることが望ましいというように考えている。なお、ここで提示した初期手順のモデルは全ての事案に必ずあてはまるということではなく、あくまでもモデルであることに留意していただきたい。今後、これを具体的に詰めて、そして本格調査をどう進めていくか検討していきたい。

(2)質疑

【委員】統一フォーマットについては、家庭的背景や個人的な背景など、例えそれを感じていても答えにくい部分もあると思うが、次に生かすために必要なことであり、実際に踏み出してみることが大事である。

【委員】実際に現場の先生等に対してシミュレーションで記入してもらうなどして、どの程度書きやすいのか、書きにくい点はあるのかといったことも検討していきたい。

【委員】調査が進むにつれて、書いた時点の状況が後で変わるということがありえると思うが、統一フォーマットは、とりあえずその時点の段階のことを書いてもらうということか。

【委員】発生1か月後を目途に話を進めてきた。初期手順のモデルで動き始めたところで、とりあえず出していただく。

【委員】1か月程度というスケジュール感について、どのように感じるか。

【委員】1か月というのはいい目途だと感じる。ご遺族の意向が変わることを含め、1ヵ月の間に結構起こることは起こってくる。それ以降も状況が変わることがあるが、時間が経つと記憶になくなって書きにくくなることもあるので、1か月という間だからこそ書ける部分がある。また、このようなことを書くことによって、自分たちに見えてなかったものが見えてくる。

【委員】大体、直後の1週間くらいは緊急対応で学校はすごく混乱していて、次の目処が個別の児童生徒に対応しつつも学校が正常活動に戻ってくる1か月後くらい、次は3か月後くらいで、この時期になると先生方のメンタルヘルスが安定してくる。このように考えると、1か月後というのは、学校も正常活動にほぼ戻るので、いったん事柄を明確にするという時期としては適切だと思う。

【委員】四十九日は一つの節目ではないのか。

【委員】調査は1か月後ということで考えているが、四十九日や卒業のときは、子どもたちや教職員の心の中に一生残っていく問題であって、どこかで区切りがつくという話ではない。

【委員】統一フォーマットについても、背景調査についても、自殺未遂の子どもについては、どうするのか。予防という観点を考えると、自殺未遂をした子どもの事案をたくさん集め、それらの事案を分析し、どうしたら予防できるか考えるのが重要ではないか。

【委員】議論のスタートが事後対応で、どのように背景調査をし、ご遺族の「事実を知りたい、何があったか明らかにしたい」という気持ちに応えるかというのが一つの方向性であった。

【委員】自殺未遂の子どもは将来自殺が起きるハイリスクの子どもであるが、そのようなハイリスクの子どもに関しては、「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」の作成時などの昨年度までの議論で結構扱ってきた。確かに重要ではあるが、今年度の議論の中に新たに入れるには難しいのでは。

【委員】自殺未遂の場合、調査が可能であればすごく貴重なデータになるであろうが、実際に組織的に調査を行うというのは現実的に難しいだろう。

【委員】ハイリスクの子どもをどう見守っていくかという視点は予防にあるが、自殺未遂をした子どもから聴き取ることで、なぜそうなったかという背景が見えてくるのでは。

【委員】今議論しているのは、自殺が起きた背景であり、なぜ起きたか学校だけで調査しきれないときに専門家を入れた背景調査を行おうという話であって、未遂についてもそれをやるのかというと、少し議論が別になってくるように思う。

【委員】統一フォーマットを作ることで、学校の教職員がこれを見て、自殺の背景にこのようなことがありえるのかと思ったり、子どもの自殺予防のマニュアルや事後対応の手引きができたことで、教職員の意識が少しずつ変わってくる。そのように意識が変わっていく中で、既遂ばかりでなく未遂の子どもにも目を向けるようになる。目を向けていく中で、それぞれの教職員がいろいろな形でその背景を推察したり聞いたりして、様々な事例がやがて集まってくるだろう。未遂について検討しないという意味ではなく、まずは今のような形で統一フォーマットを用い、それが流れていく中で未遂のことを考えていくというように分けた方がいいのではないか。

【委員】未遂のデータというのは大人でもほとんどない。未遂の数はかなり多くなるし、それが本当に既遂とどの程度重なり合うのかという問題、それからそもそも未遂の定義が難しいので、将来的には検討すべきかもしれないが、今すぐに取り上げるのは、現実の問題として相当難しい。

【委員】背景調査については、中立的な立場で調査をしようとすると、全部第三者にするのが理想的だみたいな意見が一部あるが、現実の問題として、子どものことを扱おうとする場合に、学校の関係者が一切入らないような第三者調査というのはむしろ非現実的ではないかというような議論が出た。

【委員】例え学校に不都合なものが出てきても事実を明らかにしていくという基本スタンスを取っていけば、学校の関係者が調査委員会の中に入ることで、もっと見えるものが多くなってくるだろうという議論があった。

【委員】中立的な第三者が背景を調査しても、学校の意識が変わらなければ何にもならない。その意味で、学校の全ての教師からの聴き取りをまず始めることに大きな意義がある。

【委員】御遺族が自殺の事実の公表を希望しなければ、その意向を尊重せざるを得ないというように思うが。

【委員】御遺族が自殺の事実の公表を希望しない場合は、学校の中でできることとして、全教師への聴き取りは行う。その中で、学校要因が見えてきた場合、自殺の事実を共有できれば更に調査をすることができ、これからの自殺予防につなげることができる。そこで、自分たちの責任を学校や教育委員会として明らかにし、子どもの自殺が二度と起こらないように努力していくために、背景調査を更に進めていきたいという旨を御遺族に伝え、その上で了解が取れれば調査を行うということ。そのような努力姿勢を取ることが必要ではないかということである。

【委員】現実に、御遺族が病気で亡くなったことにしてほしいというような意向があることは非常に多いが、そのような場合に、学校の要因が見え隠れしているのに、遺族に意向に沿って、学校の要因に蓋をしてしまっていいのかということ。また、最初は病気ということにしたが、後に違うのではないかと噂になるようなケースもあるが、そのような場合には、事案が発生してかなりの月日が経ってから、改めて背景調査をしようとしてできるのかという問題がある。よって、御遺族が自殺の事実の公表を希望しない場合でも、調査を打診すべきだろうという判断をしている。

【委員】現場では、御遺族の意向もあるし、学校もできれば問題があったということでなく終わればいいと思いがちなところを、敢えてそこに踏み込むという非常に重要な姿勢だと感じる。それをうまく伝えていくのは非常に大きな仕事だ。

【委員】教育や学校、子どもたちのためという視点で、学校や教職員の姿勢や学校の在り方自体を今後捉え直していくきっかけになるのかもしれない。いろいろと難しい問題はあるが、初期手順のモデルを提示し、更に、本格調査をどのようにやっていくのかということを現実に即しながら検討して、指針として提示できるように、今後取り組んで進めていきたい。

 

2.自殺予防教育ワーキンググループ中間報告

(1)報告

【委員】11月に、マサチューセッツ州とメイン州に、子どもを直接対象としている自殺予防教育の調査に行く。視察の内容としては、マサチューセッツ州の公衆衛生局にて、自殺予防プログラムに携わっている方や自傷治療の専門家の方々からの聴取、メンタルヘルス・スクリーニングという団体のSOSという教員や保護者向けの自殺予防トレーニングを実際に受講、実際に自殺予防プログラムを実施している学校関係者との討論、メイン州ポートランドにて青少年自殺予防プログラムの関係者からの聴取などを予定している。

 現段階では、我が国では子どもを直接対象とした自殺予防教育については、いわば「寝ている子を起こしはしないか」という不安が強いため、まず教師に予防に関する正しい知識を持ってもらおうとしている。今回の米国視察の目的は、米国における子どもを直接対象とした自殺予防教育の取組を調査して、日本でも将来どのような方向に進むべきか検討するということ。そのため、アメリカで自殺予防教育を導入した背景や経緯、ハイリスクの子どもたちとそうでない子どもたちの取扱いに関する留意事項、自殺予防教育プログラムの詳細、また、自殺予防教育プログラムに対する評価等について聞いてきたい。

(2)質疑

【委員】当然、今回の調査の主はプリベンションということになると思うが、ポストベンションについてはどうか。

【委員】日本でも、欧米のように子どもを直接対象とした自殺予防教育が可能なのか、現実に海外では何をやっているのか視察するというのが一番の目的であるため、この調査の一番の眼目は、子どもを直接扱って自殺予防教育することが危険ではないのか、十分に安全にできるのかというところにある。ただし、現実に起きてしまった後のポストベンションをどうやっているのかということも当然、こちらが行って質問してくる内容の重要な項目にはなる。スクリーニング・フォー・メンタルヘルスという団体のトレーニングキットを見ても最後の方に必ずポストベンションの項目があるので、そういったことも聞いてきたい。

【委員】日本でも、自殺予防の教師向けの研修が行われるようになってきたが、その際に教員に話を聞くと、9割ぐらいの方が子ども向けの自殺予防教育の必要性は強く感じると言う。しかし、いざ行うとなると二の足を踏んでしまう。その理由は何かと聞いたときに、一つは、自分自身が自殺に向き合っていく自信が持てないとのこと。よって、SOSのトレーニングを受ける際に、トレーニングを受ける動機づけをどのように高めているのか、また、学校関係者との討論する際に、子ども向けの自殺予防プログラムを実施するようになる前の下地づくりを、学校や教育委員会としてどのようにやっているのかを聞いてきてほしい。

 また、日本の教員が子ども向けの自殺予防教育の実施にためらうもう一つの理由は、教室の中に自死遺族の子がいる場合があるとのこと。自死遺族の子どもがいる中で、どんな形でプログラムを展開していけばいいのか自信が持てないという声もかなり出ている。よって、その辺を米国でどのようにやっているのかを聞いてきてほしい。

【委員】教育委員会等において、子どもたちに自殺予防教育を実施する方たちのトレーニングはどのようにしているのか聞いてきてほしい。

【委員】我々が今検討している背景調査をどうやっているのか聞いてきてほしい。

【委員】米国は学校での自殺が訴訟につながっているケースが多いようなので、そういったことについてはかなり情報が得られるのではないか。

【委員】自殺予防のトレーニングキットなどを手に入れてきてほしい。

【委員】米国で自殺予防プログラムを継続的、持続的にやっているところがあれば、どんなことを心がけているのか、実質的にどんなことが支えになっているのか、継続の土台のところを聞いてきてほしい。

【委員】予算がなくなったら切ってしまうというのは、米国の方ががもっと激しい。そういう中で、どのように頑張って続けているのか聞いてこようと思う。他に聞いてきてほしい質問があれば、事務局を通じて連絡してほしい。 

閉会

 

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課生徒指導室