生徒指導提要の作成に関する協力者会議(第2回) 議事要旨

1.日時

平成21年7月7日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省16階特別会議室

3.議題

  1. 生徒指導上の課題・子どもをめぐる状況等に関するヒアリング1.木下崇子(東京都保護司)2.櫻橋賢次(東京都目黒区立中目黒小学校)
  2. 共通理解を図るべき事項についての発表 滝充(国立教育政策研究所総括研究官)
  3. 自由討議

4.出席者

文部科学省

金森初等中等教育局長、徳久大臣官房審議官、磯谷児童生徒課長、岸田生徒指導室長 他

5.議事要旨

開会

議事

(1)事務局から資料について説明があり、その後ヒアリング、討議が行われた。

(2)次回、ヒアリング事務局から 提要の骨子、目次の項ベースのものを提案することとなった。

(3)次回は7月21日(火曜日)に開催することとなった

【委員】保護司の主な職務には、保護観察と調査、生活環境調整並びに犯罪予防活動がある。平成20年6月、更生保護法の完全施行により、メリハリのある強靱な保護観察を実施し、少年の保護者に対しても指導・助言その他の適切な措置をとれるようになった。最近は全国的に学校と保護司との連携は進んできている。最近の保護観察対象者には、両親そろって経済的にも何不自由ないごく普通の家庭の少年が増えている。また、精神に障害のある少年も増えていると感じる。  

 生徒指導に関することでは、昭和56年の改訂版「生徒指導の手引き」で記載されていることは今も通じることだと思う。

 まず、非行を中学、高校まで持ち込まないため、小学校からの初期対応が非常に大切である。小中学校の連携については、小学校の担任が情報を出すことに抵抗があり、中学校に情報が上がってこないことがあると聞いている。特に、障害のある子どもに関しては、小さなエピソードでも上げることで、中学では早くから対応の準備ができる。教科や進路指導と生徒指導との関係は切り離せないと思っている。授業が命であり、落ちこぼれのないように気を配ってほしい。保護観察中の生徒に対して、何もしてくれない先生もいれば、保護者、保護司、先生との連携で改善更生が認められた生徒の例もある。個別と集団指導との関係では、授業や、学級会、ホームルームにおいて、もっと生徒自身が仕切って、生徒同士でディスカッションして、自分の意見を発表するという機会がもっと多くあるほうがいいのではないか。校内では、担任が抱え込むことなく学校全体で取り組む体制づくりが必要で、また関係機関に対してもオープンになって、問題解決の体制をつくるべきである。

 保護者対応に関しては、保護者のプライドに気をつけながらも、自信を持って接してほしい。家庭訪問を迷惑がる保護者がいるが、家庭のいろいろな状況を見るということは指導上非常に大事なことなので、家庭訪問はしてほしい。常に学校とPTAは本音で話し合える関係をつくっておかないといけない。共働きで皆忙しく、活動が縮小している中で何らかの工夫をして、学校へ目を向けてもらう、足を運んでもらうというような工夫が必要ではないか。性とか、結婚とか、家庭の管理、育児保育についても、昔は家庭の日常生活の中で教えられることが多かったが、今は核家族化し、地域の人間関係も希薄化しているため、わからない人も多い。女性保護司を中心とした更生保護女性会では子育て支援にも力を入れている。

 子どもを持つ前に、性の問題とか、結婚の問題、家庭のつくり方、育児保育ということも、ある程度学校の教育の中でも取り上げることが必要なのではないか。何と言っても若いうちのほうが更生しやすいので、教育は最も重要と感じている。

【委員】学校の中で子どもが問題を起こしたことを警察に言うのはまだ現実として非常に少ない。外で問題を起こしたことで関係機関につながり、保護司のお世話にもなる。ぜひ連携したい。保護観察中にもかかわらず、子どもがなかなかいい方向に行かないときに、保護観察所長は、法改正により警告したり、再度家裁へ少年院等に収容してほしい旨の申請をすることも可能となったが実際にそこまでできるかといったら、なかなかできない。個々の子どもによって緊急性のあることもあり、保護司に助言していただきたい。

 【委員】保護司や保護司会が保護観察の対象者のみならず、学校協議会のメンバー等として地域を支える事例があるかと思う。その中でも、学校の組織化された中のメンバーになる場合と、それからそうではない地域のボランタリーな立場として、学校に入り、学校あるいは生徒を支援するような例は多いのか。個人情報の扱いの問題で難しい面はないのか。

【委員】小学校の場合は、学校から相談するのは、民生児童委員が多い。その上で、収容したり、面倒を見るとかは、児童相談所や、児童自立支援施設などの話になる。学校から依頼のある場合もあるが保護者側から、保護司に対して何とかならないか、力をかしてほしいと依頼があることもある。学校と協力して、先生方が抱え込まないように対応してもらった。保護者としては、他人に知られたくないという思いがあるので、予防的な活動においても、個人情報の扱いは、十分気をつけなければならない。

 【委員】今の子どもの現状としてとして、基本的な生活習慣の獲得されていない、体力がない、我慢強さがない、言葉遣いが悪い、キレやすく、うそをつき通すといった問題が見られる。また、自他の持ち物の区別がつかずに子ども同士トラブルに発展したり、大人との会話はできても子ども同士の会話ができないということがある。自分が学級の代表、委員長をやるだとか、班長をやるだとかということは非常に少なくなっていて、リーダーが育たない。

 小1プロブレムや高学年の荒れはどの学校でも見られる。小1プロブレムには補助員をつけることで効果が上がっている。高学年の荒れについては、教師の言うことを全く聞かなくなって授業がうまく進行しないことがある。家庭の教育力の問題に加え、大人が手本となっていないということが大きいのではないか。

 東京都では、生徒指導というよりは生活指導という言い方をしている。どの学校でも小学校では生活指導部会が1つあり、これは毎月1回は開かれている。校長、主幹教諭、学年の教諭、主任教諭等、養護教諭、スクールカウンセラー等のメンバーで開かれている。毎月の職員会議で、特に生活指導上問題があるものについて、共通して知っておいたほうがいい情報を交換をしている。

 講師を呼び、ケース会議をやって問題行動への対応の改善策を明らかにすることもしている。また、障害や病気があったり、生活指導上の問題がある等の要配慮児童への対応について共通理解を図る会議があり、外国からの帰国児童生徒や、外国人生徒、あるいは転入児童の適応にかかわる問題等には適応指導委員会がある。青少年の健全育成に関する会議は非常に多く、生活指導についてのネットワークが非常に細かい網が張られている。その中で、近年、小学校では児童相談所、それから警察署との連携が多くなり、相談することも増えている。

 生活指導に関して、時間をとられているのが健康・安全指導である。特に不審者対策ということで、児童の安全確保にかかわる時間、これに時間をとられてきている。小学校では、児童の暴力的な行動に対しては経験がない教員が多いので、中学校のノウハウを学んで、これから対応していかなければいけない。対応から予防への取り組みというものを、校長がリーダーシップを発揮して教員に指導していく必要がある。

 予防的な見地からは、問題行動を行う子どもが落ちついて穏やかなときにこそ、教員とじっくり話をして心を解きほぐしていくことが大事であるが、 子どもと教師がかかわる時間がどうしても年々少なくなってきている。特別支援の必要な子どもへの対応については、ADHDなどの子どもがクラスに入ってきた場合に、介助の人がついていない場合は学級担任1人で対応するということになり、周りの子どもや保護者に与える影響を何とか少なくするようにしていかなければならないということで苦慮する場合がある。どの辺までお話しすれば納得してもらえるのか、個人のプライバシーの問題等もあって、難しい。

 学校と保護者、行政が一体感をつくり上げていくためにコミュニケーションをよくして、一体感を構築していくことが大事である。

 【委員】PTAにおいては、小・中・高校の連携が難しく、特に中学校に入ると母親が仕事を始めるためPTAの活動も入っていきにくくなる。地域・学校によっても差があり、PTA活動が活発な学校は比較的落ちついている。PTA会長、役員、学校の三役の先生方が密に話をしている学校というのは比較的情報の連携がとれていて、予防的な対応がとれる。

【委員】学校と保護者の一体感をつくるため、具体的に小学校で、どんなふうな工夫をされているのかを教えてほしい。

 【委員】PTAの行事、これに全面的に学校側も協力をしていく、地域も協力するということをやっている。PTAの運営委員会が月1回あるが、そこに積極的に働きかけて、一緒にやっていかないといけない。

 【委員】学習指導や生徒指導を行うに当たって、子どもたちが、どれくらい担任以外の先生に相談する道が開かれているのか。すべての学校の先生は、すべての子どもにとってのリソースであるということをお互いに申し合わせて、生活の問題、学習の問題、相談したくなったら、どの先生のところにも行っていいというように開かれているべき。

 【委員】例えば高学年では、少人数指導や交換授業など、担任以外もかかわるような授業形態の工夫が進んでおり、担任の情報だけじゃなくて、客観的なほかの教員の情報も入ってきて子どもが相談する。また、カウンセラーに相談することも可能で、より開かれてきているとは思う。

【委員】今回の提要自身が小学生を含めたものまで広がったのは非常にすばらしいことだと思う。小学生にどう対応するかということが、問題解決とか、事後対処にならない1つの大きなコツだと思う。現在の子どもの問題の1つは物を大切にしないことだ。生活習慣の中で物を大事にしないということは非常に大きな問題を派生的に起こしている。2つ目は、群れて遊ぶことの経験が少ないこと。自分たちでルールをつくって自分たちで協力をして考えるというような体験がないのが理由のひとつではないか。また、自然を含めた本物に出会っていない。これは心を育てる意味では非常に欠けている点である。

 「心のノート」はどの程度使われているのか。親子で上手く使ったらすばらしいことができると思う。これはどんなふうに扱っているのか、これはあくまでも副読本なのか。

 【委員】小学校では活用している。学校に置いてあるから保護者の目に届かないのではないか。東京では、もう10年ぐらい前から、道徳授業地区公開講座というものを全校でやるという一大「心の東京革命」というものがあり、道徳の授業を1年間に1回は全教室がやる。

【事務局】「心のノート」は、小学校1・2年生用で1冊、3・4年生用で1冊、5・6年生用で1冊で、中学校は1、2、3年通じて1冊という形で、道徳の時間などで使うということで、子ども一人一人に配布している。

 現場では、9割以上の学校で「心のノート」が使用されている。道徳は、内容項目ということで学習指導要領で示しており、その項目すべてに心のノートは対応している。

 保護者と子どもたちがどういう道徳の授業をやったのかを話すための工夫もなされている。活用してもらうため、「心のノート」の教師用の手引というものがあり、例えばこういうような使い方をすると効果的だというような資料もあわせて教師に向けて配布している。

 【オブザーバー】生徒指導の意義は、一人一人の生徒の研さん・成長を促し、生徒自身が現在及び将来における自己実現を図っていくことにある。同時に、問題行動等への対応もある。

 学習指導要領等では「生徒指導」という呼び方であり、例えば東京都では、これが小中高ともに「生活指導」という呼ばれ方をしている。しかし、同じものと理解すればよい。学校教育は、生徒指導と学習指導の2つで成り立っている。学校教育から学習指導を引いたものすべてが生徒指導と考えると分かりやすい。

 生徒指導は単なる生徒の問題行動への対応という消極的な面だけにとどまるものではないという話がずっと繰り返されている。ということは、いかにこれが改善されていないかということのあかしでもある。いわゆる狭い意味での生徒指導という部分であっても、例えば、事後的生徒指導、予防的生徒指導というような形や、または事後対応ではなくて未然防止だと、あるいは早期発見・早期対応だというような言い方をしてもう少し積極的な面を強調されることがある。あるいは、医療関係者は治療ではなくて予防が大事というような言い方で消極的な面、積極的な面ということを表現したり、あるいは、カウンセリングをする方は、治療的カウンセリング、開発的カウンセリングという言い方をしたり、それを予防的、開発的といったりすることもある。ただ、例えばいじめの予防という以上は、どうしてもいじめを暗に想定している。不登校の予防といっても、不登校を想定している。そうすると、どうしても目の前に起きている問題からなかなか抜けられない。

 同じ予防といってもいろいろある。例えば問題を想定した治療的な予防に対して、問題を想定するというよりは、むしろ免疫力とか基礎体力を高めるみたいな教育的予防とかという発想をもう少ししたほうがいいのではないか。

 しかし、学校は何もやっていないわけではない。「心のノート」もそうだが、実は生徒指導という名前ではなく、道徳とか、特別活動とか、総合的な学習の時間という中で、生徒指導という表現を使わないで、実は生徒指導のねらっている話を行っている部分がある。文科省の事業でも豊かな体験活動とか、キャリア教育とか、徳育の話とか、まさに自己実現へ向けての子どもたちの社会性や、基本的な部分というものを育てようという部分である。

 問題は、学校現場の中でも、「キャリア教育は進路指導の担当で生徒指導は口が挟めない」というように知らないうちにすみ分けをしてしまって、本来だったら全く共通するはずの、日常的な授業の中で、あるいは特別活動であるとか、総合的な学習であるとか、道徳の時間であるとかに、実は生徒指導を当たり前のようにしているはずなのに、そこに生徒指導をやっているという自覚がないということだ。ぜひこの生徒指導提要ができ上がっていく中で、生徒指導というものを全体像としてとらえる形になるといい。

 中学校で不登校やいじめが急増する原因として、小学校と中学校の間に大きなギャップが存在するからという考え方、それを中1ギャップという表現をされるようになってきた。平成19年度の不登校児童生徒数で、小学校と中学校、単純に総数を比較すると4.4倍である。ところが、中学校1年で不登校になった者について調べると、4、5、6年生の間にほとんど休まなかった子供たちは実は2割であり、別にギャップでも何でもない、普通の増え方になる。

 それから、アンケートについては、例えば「中学校へ行くのはわくわくしますか」とか、「中学校へ行ったらどんな夢がありますか」ということを一緒に聞きながら、それをクロス集計してみると、結構「不安はあるけれども、でもわくわくする」という子どもが随分いるはず。不安感を強調し過ぎていないかなという印象はある。

 次に小中間の連携の弱さについては、同じ学年の子どもたちを追いかけてみると、小6から中1にかけての復帰の少なさが気にかかる。小6から中1の段階で復帰しにくいのは、学校段階が変わってしまうという部分が大きいと考えられる。

 ただ単純に中1ギャップという言葉で判断してしまうと難しい。むしろギャップというのは子どもたちにあるわけではなくて、あるいは学校制度にあるわけではなく、むしろ小中の連携とか、あるいは保護者の意識とかというところの中で変えていくことの中でクリアできるはずの部分があり、それを発達段階上の課題として存在するというような言い方をすると、対策を間違うのではないか。

 【委員】今度の提要が小中高を見通したものであるのは大賛成だ。今の子どもたちの問題を見ると、早期から課題があると見られるものが多い。全員の教員に配布されるというのも大英断だ。56年の生徒指導の手引は読みにくい。もう少し読みやすく、親しみやすいものになればいい。

 生徒指導という言葉が小学校1年生、2年生の指導に対して適当かどうかということは、これは一考を要する。

 中学校で一番苦労しているのが、いわゆる消極的生徒指導だが、消極的といいながら、実は積極的な生徒指導をやっている。問題を抱えて苦労している子どもたちへにどうやって自己有用感を持たせようかというようなことでやっているので、決して消極的生徒指導と積極的生徒指導が対立概念ではない。

 中1ギャップに関連して不安感のことだが、中学一年生は、教科担任で先生がかわる、新しい教科ができる、幾つもの学校から友達が入ってくる、部活動がある、これは実はみんな楽しみにしていること。それが逆から見るとギャップになってしまう。小中連携で、教員同士の研修、中学校の教員が小学校へ行ってやってみる、それから中学校へ入ると、小学校の勉強スタイルが変わる、これを小学校の6年生から、進学する学校の勉強はこうやってやっているということを少しずつ取り入れていくということをやるとスムーズに中学校へ入っているという印象は強い。

【委員】積極的、消極的、この言葉そのものの持つ意味合いと、もう1つは予防的ということがある。やはり、予防的というのは、究極的には何を予防するかというと、問題行動を予防するとということになり、そうすると最終的な目標は、やはり今までの区分でいうと、事後的、消極的生徒指導を目標とした教育活動、教育機能になってしまう。そうすると、その先にもう1つカテゴリーとして、この生徒指導提要に、やはり一人一人の子どもたちの発達あるいは成長、そして自己実現を図っていくという基本的な活動があり、また、事後的、あるいは予防的というところへもやっぱり働きかけていくという、3つのクロスがあるように感じる。

【オブザーバー】消極的、積極的はいい表現だとは私は思っていない。もともと学校教育でまず真っ先にやらなければいけないのは日々の授業であり、特別活動である。おそらく何十年か前には事後的な対応が必要な子どもたちの割合は非常に少なかったと思う。そういう子どもたちを例外的に扱っていれば、生徒指導というものは済むというところがあった。ところがその数が増えてくることで、問題対応が肥大化した。そういう考え方に立てば、3つに分けるというよりは、コアになる部分をはっきりさせて、それよりもさらに発展させるには何か、それよりも落とさないためにどうするかというような考え方もできる。生徒指導という表現をどうするかということも含めて、3つに分ける、あるいは逆に今のまま、1つのまま、あくまでもそれとその前、後みたいな話でもいいのかなと思う。

【委員】治療とか予防というのは医療でよく使う言葉だが、予防してうまくいかないと積極的治療に入らないといけないというようなイメージがあるので、何か誤解を招くという気がする。

 【委員】今までの生徒指導の手引は消極的な面を中心に書かれている。今回、発達障害等も含めて書くことになるが、二次障害の延長線上でいろいろなものが起きているという視点もとてもあることを考えると、積極的な面というものがまず主体にないといけない。積極的な面が崩れてきているがゆえに、いろいろな課題が子どもたちの中で起きてきていて、対症療法的になってしまうとするならば、その積極的な面についての書き込みをどこまで行い、前面に出していくのかということを考えると、今までの生徒指導の手引の歩みからすると、少し方向転換がいるのではないか。

 【委員】 心理の分野では、開発的という言葉をよく聞く。開発的という言葉のイメージは、私は予防的よりももう少し積極的な面の側にあってもいいのではないかと思う。そして、こういう話が実は教育課程部会の中でも、中学校部会とか、あるいは道徳のほうでも出てきた。まさに道徳の中で、これからもっと魅力のある道徳の時間にするにはどうすればいいかという話で、これまでになかったような要素で、これは大事だと思えるものとして3つ出た。1つはキャリア教育。ボランティアとして何か自分のやりがいのあることを社会の中でやっていくということも含めたどう生きていくかというキャリア教育の部分。2番目は法教育。自分たちで決まりをつくって、そしてそれを守っていくということの大切さを実感するようなものとして法教育。3番目は心理教育。いじめや、犯罪、うそをつくことなど、みんないけないとわかっているけれど、起こってしまう。そういう心の仕組みを知る。道徳には道徳の伝統があって、こういうことが入っていくのかは分からないが、むしろ総合的な学習の時間であるとか、特別活動なども通して、今の3つのようなことが入っていくとすると、まさにこれの生徒指導の一番右側にあるような積極的で開発的な面というふうになっていくといいのではないか。

 【オブザーバー】私は開発というのはほんとうは一番積極的な部分に来なければいけないと思う。開発という言葉だと、どうしても受け身的に、大人が開発していくみたいになる。自己開発もしくは発達というほうが適当で、このことは、まさに豊かな体験活動やキャリア教育あたりが目指してきているはずのことで、また特別活動等でも従来から行ってきているはずの部分である。そこが何か共通の言葉で、これも生徒指導だということがもっと出てくればいい。

【委員】用語に関係して、指導だけではなくて、最近、支援という言い方が広まっている。指導と支援との関係をどのように考えていくか。また、特別支援との関係で、学校現場が相談体制というふうにいったときに、そこに特別支援がどう絡むのかという点で、実際の校内体制その他のところでの認識が相当複雑になっている。かつては反社会と非社会みたいな形が生徒指導と教育相談だみたいな形で非常に図式化されて現場で認識されているような側面があった。外部支援者として学校に入るとき、そのあたりのすみ分けに非常な難しさを感じる。

 実は開発あるいは予防ということでは、支え切れないような子どもたちがいる。例えばやや自閉的な子どもが、人の気持ちを理解しましょうみたいなことをやられると、実はその子はその時間が一番苦痛であるというような問題状況が深刻化している。 右と左との連環がどうなのかということを、一方通行制ではなくて、どういう形でフィードバックされてしまっているのか、それはポジティブもネガティブもあるように思うが、そういう構造の中で見ていく必要があると感じている。

【委員】生徒指導という言葉がやっぱり学校現場の先生、あるいは一般の方々の中で、極めて狭い範囲でとらえられやすい。ところが、今日の子どもたちが置かれている状況、あるいは持っている課題というのは極めて広い。この提要をつくっていく中で、学校現場での取り組みを明確にしていくためにも、今の子どもたちの課題、社会の課題に対応できるような、そういう概念、枠組みをぜひこの場で検討してほしい。

【委員】 やや問題行動の対応に偏っていたものを積極的・開発的な側面へ、総合的に小中高を通じて体系的に、さらにそれぞれの持つ問題の固有性を反映させながら、この提要というものをつくっていかなきゃいけないという基本的な方向性というものは共通したところだろうと思う。

 一体感という、ある意味では学校へのアイデンティティーという大事な要素をどう形成していくかということは重要な1つの課題であり、学校にどうコミットするか、あるいは学校のルールに従うか、従わないかも、この一体感があるかないかということによって大きく異なる。

 組織の問題については、これまで教科教育を基盤として学校の組織がつくられてきた。その中でいろいろ問題があって、スクールカウンセラーや生徒指導や、いろいろなものをそこへ足してきたという校務分掌になっている。しかし、問題解決型の組織機構というものを、組織化といった場合に、単なる今までの学習組織へおろしていくのではなくて、新たな1つのそういう問題解決型の組織をどのようにその中へ工夫して盛り込んでいくかという問題提起がある。組織化ということは非常に重要な、校内全体の組織も含め、学外あるいは関係機関との組織化も含めて考えていくべきところである。

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