資料1 学校の第三者評価と大学の認証評価制度との共通点・相違点について(日永委員提出資料)

 日永龍彦(山梨大学)

1.法的な根拠
【第三者評価】
・直接的に法的な根拠となるものは現状ではない。
 文部科学省『学校評価ガイドライン〔改訂〕』(2008年1月31日)
○ 第三者評価は、その学校に直接かかわりをもたない専門家等が、自己評価及び学校関係者評価の結果等も資料として活用しつつ、教育活動その他の学校運営全般について、専門的・客観的(第三者的)立場から評価を行うものである。

【認証評価】
・学校教育法(109~112条)
・学校教育法施行令(40条)
・学校教育法施行規則(166~172条)
・学校教育法第110条第2項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令(2004年3月1日文部科学省令第7号 以下、「細目省令」と略す)

2.評価主体・評価者
【第三者評価】
1.評価主体については未定?
2.評価者
 ・大学教員等(教育経営学研究者、校長・指導主事・教育長等の学校経営・教育行政経験者など)
 ・現職の教育行政関係者(他の自治体の教育長・指導主事など)
 ・その他学校教育についての有識者
 ・自治体の財務担当者を入れた事例がある

【認証評価】
1.評価主体
・中央教育審議会への諮問・答申に基づき文部科学大臣が認証した評価機関(大学・短期大学それぞれの機関別認証評価機関と専門職大学院の分野別認証評価機関とがある 学教法109条2項、110条、112条)
・評価を受ける大学は、認証評価機関を選択して申請し、評価を受ける。評価機関から評価申請の強制、評価時期の指定をすることはできない。
2.評価者
 ・評価対象となる大学と利害関係のない大学教職員(現職/元職、同僚評価者として)
 ・企業関係者・マスコミ関係者・高等学校関係者
 ・専門職大学院については実務経験者
 ※ただし、企業関係者・マスコミ関係者・高等学校関係者については、評価プロセスの妥当性を監視する役割に重点を置いている評価機関もある。

3.評価基準・評価項目
【第三者評価】
・『学校評価ガイドライン〔改訂〕』では、「評価項目・指標等を検討する際の視点となる例」が教育課程・学習指導等12分野に区分して例示されている。また、自己評価について、以下のような用語の定義がされている。
 評価項目 :短期的(中期的)な重点目標等の達成に向けた具体的な取組など
 評価指標 :評価項目の達成状況や達成に向けた取組の状況を把握するために設定するもの
 評価基準 :評価指標の達成状況等を把握・評価するために設定するもの
・教育課程の基準として「学習指導要領」が定められている。
・大学に比べて教育活動や学校運営方法等について共通性が高いため、評価者の情報量に依存するものの、他校との比較をすることは容易である。そのため、専門的立場からの評価といった場合、各学校の目標の達成度よりも他校の実践事例や先進的な事例が基準となって評価が行われることが多いように思える。

【認証評価】
・大学評価基準(認証評価機関が定めるもので、文部科学大臣による認証にあたり審査の対象になる)に盛り込むべき項目が法令で定められている。機関別認証評価の場合、以下のとおり(細目省令1条2項)。
 一 教育研究上の基本となる組織に関すること。
 二 教員組織に関すること。
 三 教育課程に関すること。
 四 施設及び設備に関すること。
 五 事務組織に関すること。
 六 財務に関すること。
 七 前各号に掲げるもののほか、教育研究活動等に関すること。
・大学評価基準には文部科学省令の大学設置基準に適合していることが求められている。ただし、1991年の大学設置基準の大綱化以降、同基準に教育課程に関する具体的な規定はなくなり、国家資格取得のための教育プログラムを除き、教育課程に関する公的な基準は存在しない。
・各大学が掲げる使命・目的の達成状況を評価するという前提から、定性的な基準が大半を占める(=各大学が掲げる目標そのものが基準になる)。大学設置基準等法令に明記されていない限り、定量的な基準は定めにくい。ただ、評価の統一性を図るために、一定程度の定量的な基準を設けている場合もある。

4.評価の周期
【第三者評価】
・『学校評価ガイドライン〔改訂〕』では、自己評価については毎年度(年度の中間期に実施する場合もあり)、全方位的な自己点検・評価を「例えば一定の時期(数年に一度など)」に行なうことが考えられるとの記述が見られる。

【認証評価】
・機関別認証評価の場合は7年に1度、専門職大学院に対する認証評価は5年に1度(学教法施行令40条)
・認証評価の根拠となる自己点検・評価活動については、大学によって異なる。(毎年~5年に1度~7年に1度)

5.評価方法・実施プロセス
【第三者評価】
・『学校評価ガイドライン〔改訂〕』では、「自己評価及び学校関係者評価の結果等も資料として活用しつつ」とあり、下記の認証評価に比べて自己評価の重要性がそれほど大きくないようにも思える。実際、これまで参加した第三者評価では、自己評価結果の様式が表形式で文字数も限られていることもあり、各学校の評価に必要な学校の状況を把握するための情報が得られるということは少なかった。
・事前に提出された自己評価結果を初めとする書面と実施視察当日の授業参観・教職員・保護者等に対する面談等で情報を収集して評価する。ただ、上記のような状況のため、自己評価の妥当性を検証することは難しい。

【認証評価】
・自己点検・評価の結果の分析と教育・研究活動に関する実地視察を行なうことが法令で定められている。実施プロセスはおおむね以下のとおり。
 4月:申請(事前の意向調査は前年末に行なわれる)
 5月:評価者研修
 6~9月:書面評価
 10~11月:実地調査
 12~2月:評価結果案の取りまとめと当該大学からの意見聴取
 3月:評価結果の確定・公表
※ 評価の中心資料となる自己点検・評価報告書については、前年度までのデータに基づき1年以上費やして作成を求める機関と最新年度までのデータに基づき申請年の6月末ころを目処に提出を求める機関がある。いずれにしても、自己評価活動に多くの時間的なコストが必要となる。

6.評価結果の活用方法・影響等
【第三者評価】
・『学校評価ガイドライン〔改訂〕』では、「学校評価の結果及びそれを踏まえた今後の改善方策の公表は、学校の現状や・・・今後の改善方策について家庭・地域等に周知するものであるとともに、今後の取組に向けて家庭・地域の理解や連携協力を求めていくための手段(ツール)でもある」と書かれている。ただ、学校選択制が導入されている場合、他の学校を選択する材料となり連携協力を得られない場合も想定される。

【認証評価】
・評価結果については、「刊行物への掲載、インターネットの利用その他広く周知を図ることができる方法によつて行う」ことが義務付けられている(学教法施行令171条)。
・評価基準となる各大学の目標が多様であり、全大学の評価が7年しないと確定できないことなどから評価結果の比較が難しく、認証評価の結果が資源配分に活用されることは今のところない。
・高校関係者が自己点検・評価報告書や評価結果を進路指導の参考にしているという話も聞く。

以上 

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初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

(初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付)