資料6 小学校との交流、連携の充実に向けて -「互恵」「学びの連続性」-

大田区久が原保育園 嶋田 あけみ

1.地域の状況

  大田区は東京都の東南部にあり、東は東京湾に面し、北は品川・目黒区に、北西は世田谷区に、さらに西と南は多摩川を挟んで神奈川県川崎市とそれぞれ隣接している。
 面積は59.46平方キロメートル(23区内第1位)総人口680,683人(23区内第3位)

  • 公立保育園59園(内公設民営園10園)私立保育園17園
  • 公立幼稚園9園、私立幼稚園50園
  • 公立小学校63校、私立小学校2校

  大田区は平成17年に幼児教育センターを設置して、幼児教育にかかわるすべての機関(幼稚園・保育園・小学校等)が幼児教育に関わる問題とその背景について共通認識し、それぞれの特性を生かし連携・協働による取組をはじめた。

2.取組のねらい

  「互恵」
  交流活動をすることで保育園、小学校が単独では育てられない“力”を育成し相互の子どもの成長につなげる。

  「学びの連続性」
  園児は交流活動に取組むことにより小学校という施設、小学生及び小学校教師を身近に感じられるようになり、成長を具体的にイメージする。
  児童は生活科学習の中で、園児とのかかわりを通して自分の成長を実感したり、課題を解決したりする力を育てる。

3.実践の展開(配慮事項含む)

(1)連携の概要

  平成16年より1年生110名の生活科の授業と、保育園の4、5歳児36名との交流活動が始まった。久が原保育園では長年に渡り、保育の主流に縦割り保育を取り入れ、園内で異年齢児間の交流保育を行っていたことをベースに、保小の交流活動へとつなげていった。

  今年度のスタイルは園児、児童ともにグループを決め、1年間同じ子どもとの交流を図ってきた。1年生はクラス単位で園児と交流するため、園児は同じ活動を3回繰り返すことになるがこの繰り返しは園児にとって実に意味深い。児童の活動に受身的な立場でかかわるのではなく、繰り返しの活動を経験することから主体的なかかわりへと変容し、自信をもって活動に参加できている。

  (例)平成20年度交流活動計画

時期 主な活動 1年生のねらい 5歳児のねらい 4歳児のねらい
6月 久が原保育園で1年生が考えた遊びを、グループに分かれて楽しむ 園児に親しみを持ち、自分達が考えた遊びを園児と共に楽しむ 交流を通して1年生に親しみ、遊び方を教えてもらい楽しむ 交流活動の内容を理解し、グループのメンバーに親しみ、かかわろうとする
9月 小学校探検を楽しむ 小学校内を園児に案内し、園児が不安に感じる事なく探検できるようにする
10月
11月
身近な物や自然物を使って遊ぶ 色々なアイデアをいかし遊び方を広げながら、園児と遊ぶことを楽しむ 自然物を使って遊ぶことの面白さを、1年生と共有し遊びの場が広がる 1年生との触れ合いを通して、自然物を使って遊ぶことの楽しさを知る
2月 久原フェスタに参加する 1年生コーナーで遊びを楽しむとともに、来校した園児が楽しめるよう、やさしく接する 小学校全体の雰囲気から刺激を得て、遊びに生かそうとする 小学校という場所に魅力を感じ、体験できるコーナーでは、取組むことを楽しむ
1月
2月
3月
最後の交流活動を楽しむ 最後の交流活動を通して、小学校生活の楽しさを園児に知らせる 1年生とのふれあいの中で、小学生になることの憧れと期待を高める 小学生に対する親しみを深めると共に、来年の交流活動に対する期待を持つ

(2)園児と児童の交流

  子ども達の関わりを深める為に、段階的に3年前から園児と児童でグループをつくり、メンバーを固定する方法をとっている。これにより園児にとっては自分とかかわる児童がわかり、安心して交流ができ、児童にとっても広く浅いかかわりではなく、園児の個性を理解しながら年下の子に対するかかわり方を学ぶ機会になっている。

(3)教師・保育士の交流

  毎年夏に久原小学校の初任教諭が保育園で、1週間の保育実習に臨んでいる。この事は教師にとって保育園児の園生活を知る機会となっている。また、保育士も学校の教育活動に関心をもち、機会ある度に教育活動を見学し、保育の参考にしている。

(4)小学校教育への円滑な接続のための課程編成の工夫

  小学校の生活科の授業計画と4、5歳児の指導計画の双方に、園児と児童が育ち合う活動を展開するためのねらい、活動内容を位置付ける。

4.成果

  交流活動を通して保育士は小学校1年生が学ぶ内容や、保育園と異なる小学校の指導方法を知った。そして単に小学校の活動を取り入れるのではなく、それらを踏まえたうえで幼児の育ちに即した内容を見極めて保育に取組むことができるようになった。

  連携によって顔見知りになった小学生は、学校の帰りに立ち寄ることもある。このような日常的な関わりも連携の成果といえる。地域の子ども達の自然なかかわりが生まれると、保護者を通して大人も地域に目が向きそのことが地域力となり、地域全体が子どもの育つフィールドだという意識を共有することにつながる。

  保育園児は交流活動をとおして成長を具体的にイメージすることができる。児童においては年下の子とかかわることで思いやりの気持ちを育てることが出来る。

5.課題

  • 今後の課題としては保育園も小学校も職員の異動があるため、交流の意義、方法など相互に組織的に定着させて行く必要があると感じている。
  • 現在は保育園と小学校独自で行っている交流活動であるが、行政に援助してもらうことで更なる発展が望めると思っている。

お問合せ先

初等中等教育局幼児教育課