(e)幼稚園・保育所の教育・保育と小学校教育との連携を工夫しよう
幼稚園・保育所から小学校への接続が円滑に行われるようにするため、情報提供の充実や教育内容の一層の連携が求められる。
幼児の親の間には、例えば、「読み書きを覚えさせないと小学校でついていけない」、「小学校で英語教育が始まるから英語教室に通わせる必要がある」、「小学校へ入ったら遊びは終わり」といった不安や誤解もあると言われる。小学校は、幼稚園・保育所との連携を図りながら、実際の学校の姿や教育活動の目指す方向などについて積極的に情報を提供していく必要がある。
幼稚園・保育所での活動の中で大きな比重を占める遊びや体験活動は、小学校教育においても効果的に取り入れられていくべきである。そうした点で、小学校低学年で導入された生活科での取組は成果をあげつつあり、その一層の工夫改善が期待される。他方、幼稚園・保育所においては、卒園近い時期に、小学校への入学を念頭に置いて、皆と一緒に教員や保育者の話を聞いたり、行動したりすることができるように指導することも必要である。こうした教育内容・方法についての連携を進めていくためには、教員や保育者相互の交流や共同の研修の機会を増やし、相互の理解を深め、具体的な改善の方途を共に考えることが必要である。
行政において、幼稚園の教員、保育所の保育者、小学校教員との合同の研修を一層充実していくことが必要である。また、各幼稚園・保育所と各小学校間でも、合同の校内研修を実施したり、行事に際して互いの子どもたちを招待するなど、相互の交流に努めてほしい。
5.幼児期における教育を推進する
【施策】
◇ 幼児教育全体の質の向上
幼児教育の質の向上に向け、教育内容の整合性を図った新しい幼稚園教育要領と保育所保育指針を幼稚園・保育所で平成21年から実施するとともに、子どもの発達や学びの連続性を踏まえ、幼稚園・保育所と小学校の連携を促す。
ア 幼稚園の教育課程の編成
幼稚園においては、幼児の遊びを中心とした楽しい集団生活の中で、豊かな体験を得させ、好奇心をはぐくみ、健康な心と体を育て、幼児期にふさわしい道徳性の芽生えを培うなどの教育を通して、小学校以降の生活や学習の基盤を養う必要があると考える。
ウ 小学校との連携
小学校以降の生活や学習の基盤は、様々な人との出会い、自然や事物との触れ合い体験など、幼児期の発達にとって必要な事柄を経験することにより育成されるものである。幼児の指導に当たっては、幼児一人一人が幼児期にふさわしい生活を十分に体験できるようにし、物事に進んで取り組む意欲と自信を身に付けさせるとともに、創造的な思考や主体的な生活態度の基礎を培うことに十分配慮することが大切である。また、その際には、小学校における生活科などとの関連に留意し、幼稚園における主体的な遊びを中心とした総合的な指導から小学校への一貫した流れができるよう配慮する必要がある。
(1)小学校教育との連携・接続の強化・改善
遊びを通して学ぶ幼児期の教育活動から教科学習が中心の小学校以降の教育活動への円滑な移行を目指し、幼稚園等施設と小学校との連携を強化する。特に、子どもの発達や学びの連続性を確保する観点から、連携・接続を通じた幼児教育と小学校教育双方の質の向上を図る。
具体的には、幼児教育における教育内容、指導方法等の改善等を通じて生きる力の基礎となる幼児教育の成果を小学校教育に効果的に取り入れる方策を実施する。
その際、例えば幼稚園においては園児の8割近くが私立幼稚園に在園していることなどを踏まえ、市町村教育委員会が積極的役割を果たすなどして、公立・私立の連携を図りつつ実施することが必要である。
ア 教育内容における接続の改善
幼稚園等施設において、小学校入学前の主に5歳児を対象として、幼児どうしが、教師の援助の下で、共通の目的・挑戦的な課題など、一つの目標を作り出し、協力工夫して解決していく活動を「協同的な学び」として位置付け、その取組を推奨する必要がある。
遊びの中での興味や関心に沿った活動から、興味や関心を生かした学びへ、さらに教科等を中心とした学習へのつながりを踏まえ、幼児期から児童期への教育の流れを意識して、幼児教育における教育内容や方法を充実する必要がある。
幼稚園教育要領等で幼稚園等施設と小学校との連携の推進等について、より明確化する必要がある。また、これに関連して、将来的には、学校教育法第1条における学校種の規定順序の在り方についても見直すことが望まれる。
イ 人事交流等の推進、奨励
幼稚園等施設の教員等と小学校の教員の合同研修等を通じて相互理解を深め、教員等の資質向上を図り、きめ細かな教育を展開する必要がある。
幼稚園等施設と小学校の双方において、非常勤講師等で相互の経験者を活用することや、人事交流を推進するなどの施策を通じ、より一層、双方の教育の質を高める必要がある。
加えて、特に幼稚園と小学校との連携に関しては、人事交流や相互理解を進める上で、教員免許の併有を促進する必要がある。例えば、免許法認定講習等の実施方法の改善について、中核市等への実施主体の拡大、都道府県の認定講習等の実施の拡大等を検討することが望ましい。
ウ 「幼小連携推進校」の奨励、幼小一貫教育の検討
市町村教育委員会の支援の下に、教員等の人事交流、「協同的な学び」や小学校の生活科等での幼稚園等施設と小学校との合同活動等、連携の取組を積極的に行う幼稚園等施設・小学校を、例えば「幼小連携推進校」として奨励し、その成果や課題に関する情報の提供に努めるなど、各地域に適した連携の強化が進むようにする必要がある。
幼稚園等施設の教育と小学校教育の一貫性に配慮した教育の在り方について、現在の連携に関する様々な取組の進展状況、その検証、学校間連携全体の在り方の議論、幼小一貫教育の必要性などを踏まえながら検討する必要がある。
平成19年6月の学校教育法の一部改正において改められた各学校段階の目的や目標等を踏まえ、各学校段階の教育が果たすべき役割は、次のとおりである。
それぞれの学校段階において、その役割をしっかり果たすことが何よりも重要であるが、それに加え、教育課程の改善に当たっては、発達の段階に応じた教育課程上の工夫の観点から、学校段階間の円滑な接続に留意する必要がある。
まず、幼児教育と小学校教育の接続については、幼児教育では、規範意識の確立などに向けた集団とのかかわりに関する内容や小学校低学年の各教科等の学習や生活の基盤となるような体験の充実が必要である。他方、小学校低学年では、幼児教育の成果を踏まえ、体験を重視しつつ、小学校生活への適応、基本的な生活習慣等の確立、教科等の学習への円滑な移行などが重要であり、いわゆる小1プロブレムが指摘される中、各教科等の内容や指導における配慮のみならず、生活面での指導や家庭との十分な連携・協力が必要である。
(発達や学びの連続性を踏まえた幼稚園教育の充実)
a)幼稚園教育と小学校教育との円滑な接続
小学校での学習や生活への適応の課題を含め、小学校教育との円滑な接続を図り、幼稚園における教育の成果が小学校につながっていくことが大切であることから、教師が意見交換などを通じて幼児と児童の実態や指導の在り方について相互理解を深めたり、幼児と児童が交流するなど、小学校との連携や交流を図る。
(1) 小学校教育との連携・接続の強化
学校である幼稚園と児童福祉施設である保育所には、その目的や機能において違いがある。
従来から、幼稚園は、希望するすべての3歳以上の幼児を対象とした教育施設として、保育所は、保護者の就労等で「保育に欠ける」0~5歳児を対象とした児童福祉施設として、異なった目的・機能等を持つ施設として、それぞれの整備・充実を図ってきた。
一方、両施設とも、小学校就学前の幼児を対象に教育・保育を行う施設であり、近年は少子化の進行、共働き世帯の一般化などに伴う保育ニーズの多様化を背景として、文部科学省と厚生労働省では、両施設の連携を進めてきた。
具体的には、施設の共用化、教育内容・保育内容の整合性の確保、幼稚園教諭・保育士の資格の併有の促進、合同研修などを実施してきた。また、構造改革特別区域における幼稚園児と保育所児等の合同活動のための特例等の措置を行ってきた。
第1章及び第2章で述べたとおり、今後の幼児教育の在り方として、幼稚園等施設が家庭や地域社会と連携して総合的に幼児教育を推進するため、また、幼児の生活の連続性及び発達や学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実を図るためには、小学校就学前の子どもの育ちを、幼稚園と保育所とで区別することなく保障していく必要がある。この意味においても、今後とも、幼稚園と保育所の連携を進める必要がある。
(1)幼稚園と保育所の連携の促進
1.地域の関係機関等との連携
市町村は、各地域の実情等に応じ、保育所が、地域子育て支援拠点、幼稚園、小学校、放課後児童クラブ、要保護児童対策地域協議会など地域の関係機関等と積極的な連携及び協力を図ることができるよう、必要な支援を行うことが望ましい。
初等中等教育局幼児教育課