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第5章 情報モラル教育

 本章では、平成20年3月に告示された学習指導要領の内容を踏まえ、発達の段階に応じた情報モラル教育の必要性や具体的な指導について記述する。情報モラル教育については、学習指導要領以外でも平成20年7月に文部科学省から通知された「児童生徒が利用する携帯電話等をめぐる問題への取組の徹底について」の中でも学校における情報モラル教育の取組について提唱しているほか、平成20年7月に策定された「教育振興基本計画」の中でも地域・学校・家庭における情報モラル教育が推進されている。また、平成21年4月から施行される「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」でも青少年がインターネットを適切に活用する能力を習得することができるよう学校教育におけるインターネットの適切な利用に関する教育の推進に必要な施策を講じることとなっており、これらことからも学校における情報モラル教育の充実は必要不可欠である。

第1節児童生徒の実態や発達段階に応じた情報モラル教育

1.情報モラル教育とは

 情報社会では、一人一人が情報化の進展が生活に及ぼす影響を理解し、情報に関する問題に適切に対処し、積極的に情報社会に参加しようとする創造的な態度が大切である。誰もが情報の送り手と受け手の両方の役割を持つようになるこれからの情報社会では、情報がネットワークを介して瞬時に世界中に伝達され、予想しない影響を与えてしまうことや、対面のコミュニケーションでは考えられないような誤解を生じる可能性も少なくない。このような情報社会の特性を理解し、情報化の影の部分に対応し、適正な活動ができる考え方や態度が必要となってきている。そこで、学習指導要領では、「情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度」を「情報モラル」と定め、各教科の指導の中で身につけさせることとしている。
 具体的には、他者への影響を考え、人権、知的財産権など自他の権利を尊重し情報社会での行動に責任をもつことや、危険回避など情報を正しく安全に利用できること、コンピュータなどの情報機器の使用による健康とのかかわりを理解することなどの内容となっている。これらの内容は、情報社会の進展に伴って変化することが考えられ、今後も柔軟かつ適切に対応することが必要である。また、普及の著しい携帯電話をはじめとする携帯情報通信端末のさまざまな問題に対しては、地域や家庭との連携を図りつつ、情報モラルを身につけさせる指導を適切に行う必要がある。

情報モラル教育

(1)情報社会の特性の理解

 情報化社会の進展により、携帯電話のインターネット等の普及が急速に進む中で、インターネットの掲示板や携帯電話のメールによるいじめ、「ネットいじめ」が多発している。「平成19年度生徒指導上の諸問題に関する調査」(文部科学省)によると、「コンピュータや携帯電話等で、誹謗・中傷や嫌なことをされる」の認知件数は、5、899件(前年度:4、883件)に昇り、ネットいじめが急増している。常に持ち運ぶことができるようになった携帯電話は、子ども達に最も身近なインターネット端末となった。子どもたちはその携帯電話の小さな画面から世界中にリンクしていることを理解しないまま利用している。何気なくプロフに書き込んだ個人情報、悪気のない掲示板への書き込みが世界中に発信されていることを理解しないまま利用しているという現状がある。
 携帯電話を使ったコミュニケーションは、従来の人と人が接するコミュニケーションとは全く異なる。会話であればその場で話したことは記憶にのみ残り、記録には残らない。しかし、インターネットを介したコミュニケーションの場合、記録として保存され、簡単に削除することができない可能性がある。これにより、インターネット上の1つの書き込みから、裁判に至るケースもある。基本的な情報モラルを持ち合わせていないために大きな事件に巻き込まれる場合もある。このような情報社会の進展とともに変化する特性を教員自身が理解し、児童生徒に指導することが必要である。

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区分 2006年 2007年 前年比
小学校 466 536 70件増
中学校 2、691 3、633 942件増
高等学校 1、699 1、705 6件増
特別支援学校 27 25 2件増
合計 4、883 5、899 1016件増

「平成19年度生徒指導上の諸問題に関する調査」(文部科学省)

※ プロフ・・・インターネット上で自己紹介をするサイト。画像や詳しい個人情報を掲載できる。

(2)社会の変化と情報モラル教育の必要性

 前述のように、情報社会は日々進化しており、その流れは後戻りできない状況である。児童生徒は将来にわたり、社会人となっても情報社会の中で生きていかなければならない。そういう観点からも、児童生徒の時期の情報モラル教育は、重要且つ急務であり、情報活用能力の学習と合わせて行われなければならない。
 コンピュータや携帯電話は、一つの道具・ツールとして非常に利便性が高く社会生活から切り離す事ができない。しかし、使い方によっては、非常に危険なツールとなることもあり、児童生徒が巻き込まれる事件も多く、ネット上のいじめ等、顕在化していないトラブルは相当の数に達すると考えられる。既にコンピュータや携帯電話を利用している児童生徒への情報モラル教育はもちろん必要であるが、これから新たに触れていく初期段階の児童生徒に対しても、情報社会の光の部分と共にその影の部分に関する具体的な事例、それに伴うルール決めや遵守すべき項目を明確に理解させる必要がある。また、この取組は学校のみならず、社会や家庭を巻き込み、それぞれの立場で情報の共有化や児童生徒への教育を進めていかなければならない。

(3)地域や学校の実態の把握

 情報化によるコンピュータや携帯電話の機能や使用方法は日々変化・進化しており、今後、新たな機能や使用方法の開発に伴った問題が起こってくる可能性がある。学校や地域、家庭で情報モラル教育を推進する上で、これらの実情を知るとともに、情報社会での児童生徒の行動や状況を知ることは非常に重要である。
 児童生徒の情報化社会における行動や状況を把握するには、アンケートやヒアリング等を定期的に実施し、新しい情報を把握する必要がある。そして、その分析結果や動向を元に、情報モラル教育の対象、方法、中身を検討し、臨機応変に対応できるよう取組む必要がある。児童生徒本人へのアンケートやヒアリング以外に、保護者(家庭)に対するアンケートやヒアリングも把握のためには重要である。保護者(家庭)に対するアンケートは実態の把握のみならず、保護者への意識付けや家庭での情報モラル教育の推進のためにも重要な取組といえる。一方、学校からの一方的なアプローチだけではなく、PTA等を活用した家庭から学校への情報発信の仕組も必要である。
 また、情報化に関連する企業・団体との連携も必要な要素である。地域だけでなく、全国的な児童生徒の情報社会に関する情報が入手可能で、情報モラル教育を実施するための支援者ネットワークとしても活用できる。

図

(4)不易の部分の指導と変化への対応

 情報モラル教育の目標は、道徳などで扱われている「日常生活におけるモラル(日常モラル)の育成」と重複する部分が多く、これは情報モラル教育の基本となる態度の育成に欠かせない。
 道徳で指導する「人に温かい心で接し、親切にする」「友達と仲良くし、助け合う」「他の人との関わり方を大切にする」「相手への影響を考えて行動する」「自他の個人情報を、第三者にもらさない」などが基盤となる。道徳においては、そのカリキュラムの軸の一つとして、

  1. 主として自分自身に関わること
  2. 主として他の人とのかかわりに関すること
  3. 自然や崇高なものとのかかわりに関すること
  4. 主として集団や社会とのかかわりに関すること

 などの視点から内容が展開される。情報モラルでは、その「他の人」や「集団や社会」がインターネット上の関係も含めた「情報化社会」に置き換えることができる。しかし、日常の社会では、個人、家庭、地域社会と順に経験しながら、ゆっくりと時間をかけてその関係を理解していくことができるのに対し、情報ネットワークでは、端末を利用したコミュニケーションを開始するとすぐに、見えない人とのつながりや社会との接点が同時に生じる部分が異なる。従って、情報端末を利用するにあたって、危険回避を行うための具体的な教育が必要な一方、情報化社会の特性やネットワークの理解を深め、自分自身で正しく活用するために的確な判断ができる力を身につけることが必要である。

情報モラル教育が必要!

(5)児童生徒のコミュニケーション能力や方法の変化と実態

 家庭の教育力や地域の機能の低下、携帯電話の普及等により人間同士の関わり合いやコミュニケーションの不足を生じさせている。特に児童生徒のネットワーク上のコミュニケーションの拡大がコミュニケーション力に影響を与えている。
 一般的に、対人関係のコミュニケーションが苦手で不得意な児童生徒が、その不安な気持ちを埋める場所として、ネットワーク上のコミュニケーションに傾倒している場合がある。ネットワーク上のコミュニケーションは、参加者全員が匿名という場合もあり、通常のコミュニケーションとは大きく性質が異なるものである。しかし、児童生徒はその理解度が薄いのが現状である。結果的にネットワーク上では、誹謗中傷の言葉や表現が数多く掲載されることや、有害情報サイトへの誘導が行われるなど、児童生徒を危険な環境に陥れている場合もある。
 児童生徒に対して、ネットワーク上と社会生活上のコミュニケーションは、異なる特性がある事を理解させると共に、相手の立場に立ち、思いやりのある行動は、ネットワーク上でも必要であるということを明確にし、日常的な行動として指導を行い身につけさせることが必要である。

2.発達の段階に応じた情報モラルの指導

(1)児童生徒に身につけさせたい情報モラル

 平成19年3月に出された「『情報モラル』指導実践キックオフガイド」の中に、情報モラルに関する「モデルカリキュラム」が示され、「情報社会の倫理」、「法の理解と遵守」、「安全への知恵」、「情報セキュリティ」、「公共的なネットワーク社会の構築」の5つの柱とともに、発達の段階に応じた指導内容が例示された。具体的には、情報発信による他人や社会への影響、ネットワーク上のルールやマナーを守ることの意味、情報には自他の権利があること、情報には誤ったものや危険なものがあること、健康を害するような行動について考えさせる学習活動などを通じて、情報モラルを確実に身に付けさせるようにすることが必要となっている。そして、情報の収集や判断、処理、発信などの情報活用能力の育成の中で情報モラルについて学習させることが重要であるとしている。また、子どものインターネットの使い方の変化に伴い、学校や教員は、その実態や影響に係る最新の情報の入手に努め、それに基づいた適切な指導に配慮することが重要であるとしている。
 情報モラル教育の内容は、次のように大きく2つに分けられる。1つは、「情報社会における正しい判断や望ましい態度を育てること」である。つまりは「心を磨く領域」として、自分を律し適切に行動できる正しい判断力と、相手を思いやる心、ネットワークをよりよくしようとする公共心を育てることが求められている。もう1つは、「情報社会で安全に生活するための危険回避の理解やセキュリティの知識・技能、健康への意識」である。健康への意識は、生活習慣の領域だが、昼夜逆転やネット依存など健全な生活を維持することへの悪影響がないよう適切な指導が望まれる。情報化が進み生活が便利になればなるほど危険に遭遇する機会も増える。危険を回避し安全に生活するための知識を身につける必要がある。これは、「知恵を磨く領域」と言ってよいだろう。

公共的なネットワークの構築

 上記の内容を踏まえて、学校教育においては先に述べた5つの柱に基づいて体系的に取り組む必要があり、心の発達段階や知識の習得、理解の度合いに応じた適切な指導が大切である。

(2)モデルカリキュラムの活用

 「情報モラル指導ガイドブック」の「モデルカリキュラム」には、先の5つの領域に関して、小学校低学年(1、2年生)、小学校中学年(3、4年生)、小学校高学年(5、6年生)、中学校、高等学校の5つの発達の段階に応じた指導内容が示された。
 「情報社会の倫理」と「法の理解と遵守」の内容は、日常的なモラル指導の延長線上にあり、特に小学校低学年では、日常モラルの指導が優先され、中学年からは情報機器の活用などにあわせて、徐々に情報社会の特性やそのなかでの情報モラルについてふれるようにしていくことになっている。小学校高学年や中学校・高等学校になると、自分の権利や他人の権利を尊重することについて身の回りの課題から自ら考えさせ理解させ、情報社会へ参画する場合の責任や義務、態度に関する内容へと発展するような指導内容となっている。この場合、情報社会もルールや法律によって成り立っていることを知り、情報に関する法律の内容を理解した上でそれらを遵守する態度を養うことが必要性である。
 例えば、「情報社会の倫理」の大目標「情報に関する自分や他者の権利を尊重する」に含まれる中目標を見てみると次のようになっている。

イメージ

 小学校低学年で、人や物などの具体物を大切にすることを身につけ、そのことが個人の権利という抽象的なものを大切にすることにつながっていくことを意味している。発達の段階に応じて、身の周りにある人や物など分かりやすい「ものを大切にする」という日常的な「心を磨く」ことを基盤にして体系的に指導していくことを示している。

情報モラル指導モデルカリキュラム表

 一方、安全教育については、「安全への知恵」「情報セキュリティ」で展開され、小学校の段階では、「情報社会の危険から身を守るとともに、不適切な情報に対処できる」や「安全や健康を害するような行動を抑制できる」、「危険を予測し被害を予防するとともに、安全に活用する」などが具体的な目標になっている。中・高等学校の段階では、「情報セキュリティに関する基礎的・基本的な知識」を身につけ、「情報セキュリティの確保のために、対策・対応がとれる」ようになることなどが求められている。
 これらの健全な心と社会のルールの理解、安全に活用する知恵の育成を前提に、健全で公共的なネットワーク社会の構築へ積極的に参画する態度を育成するようなカリキュラム構成になっている。

 このモデルカリキュラムを参考にしながら、各地域や学校の実態に応じて系統的なカリキュラムを作成することが必要であり、その内容を学校全体で教員がそれらを共通理解して指導することが必要である。そのためには、校種にかかわらず、それぞれの学校で年間を通した情報教育の指導計画のなかに情報モラルの項目を設定し、指導事項や指導内容を位置づけるなどの工夫が必要である。

(3)発達の段階に応じた継続的な指導

 例えば、前述のモデルカリキュラムの中項目にある「法の理解と遵守」について、5つの発達の段階に応じた指導内容を具体的に抽出すると、次のようになっている。

イメージ

 小学校の段階では、ルールやマナーを知ることから始め、違反行為を行わないことなどを確かな習慣として身につけることを行い、中学校では、違法となる行為の理由などを判断し適切に行動できるよう、段階を追って指導することとなっている。
 このモデルカリキュラムに示されているように、情報モラルの指導には、様々な内容が含まれており、それぞれを一通り説明するだけでは、態度として定着させることは難しい。そこで、学習活動の様々な場面での適時、継続的な指導が必要となってくる。学級活動の中での説話や総合的な学習の時間、各教科、道徳などの時間に事例やタイミングを工夫しながらくり返して指導することが求められる。
 ここで、留意しなければならないのは、校内で一部の児童生徒の突出した事案に対応する場合に、その事案を他の児童生徒への共通の指導内容として取り扱うかどうかについては、学校の実態に応じて適切に判断する必要がある点である。
 また、単なる説明だけでなく、友だちとの討論やコンピュータ教室等での実際の操作体験、資料を活用した調査活動など、学習方法を工夫して、児童生徒が情報モラルの重要性を実感できるような授業展開も必要である。校内における掲示物や校内放送での指導なども有効である。指導内容を計画的に配置するとともに、学級活動をはじめとする特別活動などを通して学校教育全体で継続的に指導を行うように心がけたい。

第2節学習指導要領における情報モラル教育

1.道徳における指導

 社会における情報化が急速に進展する中、インターネット上の「掲示板」への書き込みによる誹謗中傷やいじめといった情報化の影の部分に対応するため、「情報モラル」に関する指導について、道徳の改善の具体的な項目の10項目の中の一つに上げられ、道徳の時間における指導にあたって配慮する事項の中に記載されている。
 道徳教育は、小・中・高等学校の全ての学校段階において一貫して取り組むべきものである。小学校においては生きる上で基盤となる道徳的価値観の形成を図り、自己の生き方についての指導を充実すること、中学校では、思春期の特質を考慮し、社会とのかかわりを踏まえ人間としての生き方を見つめさせる指導を充実すること、高等学校においては社会の一員としての自己の生き方を探求するなど人間としての在り方生き方についての自覚を一層深める指導を充実することとなっている。このような発達の段階に応じた道徳の指導の中で「情報モラル」に関する指導に留意することとなっている。

(1)小学校「道徳」における情報モラルの指導

 小学校の道徳においては生きる上で基盤となる道徳的価値観の形成を図る指導を徹底するとともに自己の生き方についての指導を充実することが必要である。具体的には、小学校学習指導要領「道徳」の「指導計画の作成と内容の取扱い」の3の(5)に「児童の発達の段階や特性等を考慮し、第2に示す道徳の内容との関連を踏まえ、情報モラルに関する指導に留意すること。」と記述されており、情報化の影の部分への対応としての情報モラルの指導が盛り込まれた。第2に示す内容とは、「主として自分自身に関わること」「主として他の人とのかかわりに関すること」「主として集団や社会とのかかわりに関すること」の4つの内容である。学年があがるにつれて、コンピュータや携帯電話の活用度合いが高まり、それに応じた学校教育の対応として、道徳の時間において情報モラルに関する指導の配慮が必要だとしている。

(2)中学校「道徳」における情報モラルの指導

 中学校の道徳においては思春期の特質を考慮し、社会とのかかわりを踏まえ、人間としての生き方を見つめさせる指導を充実することが必要である。具体的には、中学校学習指導要領「道徳」の「指導計画の作成と内容の取扱い」の3の(5)に「生徒の発達の段階や特性等を考慮し、第2に示す道徳の内容との関連を踏まえ、情報モラルに関する指導に留意すること。」と記述されており、小学校と同様、情報化の影の部分への対応としての情報モラルの指導が盛り込まれた。生徒は、すでにコンピュータや携帯電話を日常的に活用しており、それに応じた学校教育の対応として、道徳の時間において情報モラルに関する指導の配慮が必要だとしている。
 これを踏まえて、小学校学習指導要領解説「道徳編」、中学校学習指導要領解説「道徳編」には、次のように記載されている。

(1) 情報モラルと道徳の内容

 情報モラルとは情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と態度ととらえることができ、その内容としては、個人情報の保護、人権侵害、著作権等に対する対応、危険回避やネットワーク上のルール、マナーなどが一般に指摘されている。
 道徳の時間においては、第2に示す道徳の内容との関連を踏まえて、例えば、情報モラルに関する題材を生かしたり、情報機器のある環境を生かす(中学校編では「生かしたりする」)などして指導に留意することが求められる。道徳の内容との関連を考えるならば、例えば、ネット上の書き込みのすれ違いなど他者への思いやりや礼儀の問題及び友人関係の問題、情報を生かすときの法やきまりの遵守に伴う問題など、多岐にわたっている。特に、情報機器を使用する際には、自分のことを明らかにしなくとも情報のやりとりができるという匿名性に伴って、使い方によっては相手を傷つけるなど、人間関係に負の影響を及ぼすこともある。小学生の段階も、少しずつそのような環境の中に入っていく時期であることを押さえて指導上の配慮をしていく必要がある。(中学校編では、下線部分の記述はない。)
 各学校においては、児童や地域の実態等を踏まえ、指導に際して配慮すべき内容について検討していくことが重要である。

(2) 情報モラルへの配慮と道徳の時間

 情報モラルに関する指導について、道徳の時間では、その特質を生かした指導の中での配慮が求められる。
 指導に際しては、情報モラルにかかわる題材を生かして話合いを深めたり、コンピュータによる疑似体験を授業の一部に取り入れたり、児童の生活体験の中の情報モラルにかかわる体験を想起させたりする工夫などが考えられる。創意ある多様な工夫が生み出されることが期待される。
 具体的には、例えば、相手の顔が見えないメールと顔を合わせての会話との違いを理解し、メールなどが相手に与える影響について考えるなど、インターネット等に起因する心のすれ違いなどを題材とした指導が考えられる。また、ネット上の法やきまりを守れずに引き起こされた出来事などを題材として授業を進めることも考えられる。その際、その問題の根底にある他者への共感や思いやり、法やきまりのもつ意味などについて児童が考えを深めることができるように働き掛けることが重要になる。
 なお、道徳の時間は、道徳的価値の自覚及び自己の生き方についての考え(中学校編では、「及びそれに基づいた人間としての生き方についての自覚」)を深めることを通して道徳的実践力を育成する時間であるとの特質を踏まえ、例えば、情報機器の使い方やインターネットの操作、危険回避の方法やその際の行動の具体的な練習を行うことにその主眼をおくのではないことに留意する必要がある。

2.各教科における指導

 教育課程実施上の配慮事項9の「情報教育の充実、コンピュータ等や教材・教具の活用」には、『各教科等の指導に当たっては、児童生徒がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ、コンピュータで文字を入力するなどの基本的な操作や情報モラルを身に付け、適切に活用できるようにするための学習活動を充実するとともに、これらの情報手段に加え視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること。』とあり、情報活用の場面での情報モラルに関する指導が重要だとしている。情報に関する自他の権利の尊重や、情報発信による他人や社会への影響、ネットワークを利用する際のルールやマナーの理解と遵守、情報の真偽の見分け方など、その活動は多岐にわたっており、さまざまな教科の学習活動の中で育成することが必要である。道徳だけでなく、各教科での情報モラルの指導が必要だと考えることができる。
 例えば国語では、「伝え合う力」や「コミュニケーション能力」を身につける指導が行われている。メールのやり取りや掲示板の利用などから、「相手を思いやる気持ち」「文字の大切さ」「言葉の表現」を学ぶことが可能である。
 社会・理科・総合的な学習の時間などでは、調べ学習を取り入れることで、正しい情報と間違った情報の区別・選別する方法を学ぶことや、著作権や肖像権といった知的財産権や個人の権利に触れることも出来る。また、危険情報・有害情報に出会ったときの対処方法も学べる。更に、情報を入手する手段として、各方面へ問合せをする際に、メールという手段を活用することで利便性や注意点を学び、個人情報の管理など広範囲でのモラル教育が可能である。
 保健体育では、健康管理といった側面に触れ、携帯電話の利用時間や使用頻度、ネット利用の種別などのアンケート調査を実施したり、インターネットで健康被害について調査したりし、グループディスカッションで意見交換をすることも可能になる。
 これらの指導内容は、学年で区切るのではなく、地域社会の環境や生徒児童のネットの利用状況(アンケート調査などで把握する)などを踏まえた上で、適切に指導する必要がある。

3.技術家庭(中学校)との関連

 情報機器が日々進歩する社会においては、「〜してはいけない」という禁止事項などの知識を身に付けるだけでなく、「なぜ〜してはいけないのか」を生徒自身で十分に考え、適切に判断し行動できるようにしていくことが必要である。そのために、情報に関する技術を指導内容としている中学校技術・家庭科技術分野においては、情報を利用するための基本的な仕組みを元に情報モラルの指導を行うことが必要である。
 中学校学習指導要領解説「技術・家庭編」には、次のように記述されている。

 「D情報に関する技術」の(1)情報通信ネットワークと情報モラルについての指導事項において、著作権や、情報の発信に伴って発生する可能性のある問題と、発信者としての責任について知ることができるようにするとともに、情報社会において適正に活動する能力と態度を育成する。
 この学習では、情報通信ネットワーク上のルールやマナー、法律等で禁止されている事項に加えて、D(1)のアの情報のディジタル化や、D(1)のイの情報通信ネットワークの学習と関連させて、情報通信ネットワークにおいて知的財産を保護する必要性を知ることができるようにする。その上で、情報通信ネットワーク上のルールやマナーの遵守、危険の回避、人権侵害の防止等、情報に関する技術の利用場面に応じて適正に活動する能力と態度を育成する。

4.特別活動を含めた学校教育全体での指導

 各教科や技術家庭、総合的な学習の時間などでの指導だけでなく、学級指導や郊外学習などを含めた特別活動などで、情報モラルに関する内容をスポット的に指導することや、児童生徒の生活体験に基づいた実態や問題点を取り上げ、それらに対する迅速な指導が必要である。

第3節具体的な指導内容

1.小学校における指導内容

<国語>

 各学年において「A話すこと・聞くこと」、「B書くこと」、「C読むこと」を通じて情報を収集することや、知識や情報を関連づけるなどの学習が含まれている。言語を中心とした学習活動では、出典を明示することや、引用部分をかぎ括弧でくくり適切な量にすることなど、著作権に留意した指導が求められる。また、適切な本や文章を選ぶために、学校図書館やインターネットなどの利用に関する知識、情報モラルなどを身に付けさせることができる。インターネットでは、言語以外の情報を検索することもあり、それらを引用する場合や参考にする場合のルールなどについても指導することが必要となってくる。国語辞典の利用だけでなく、各種の事典などで事柄を調べ、図書資料を活用することへと発展させたり、本や情報を検索する様々なメディアの活用の仕方を身に付けさせたりするようにしていく必要がある。例えば、第5学年及び第6学年の話すことや聞くことでは、互いの立場や意図をはっきりさせながら、計画的に話し合う活動に取り組む場合に、本や資料から情報を集めることで、自分の考えの裏づけや立場をはっきりさせ、話し合いの場面では、相手の立場や意見に耳を傾け、それに対する自分の考えを作りあげていく活動に取り組む。この場合に図書やインターネットでの資料収集がある。
 小学校の低学年では、はがきの書き方、中学年では手紙の正しい書き方、高学年では自分の気持ちを相手に伝える言葉や相手を思いやる表現などを学習する。それらのことを基盤として、電子メールや掲示板での適切な表現を指導することも可能である。

<社会>

 調べ学習などにおける資料や情報を活用する学習活動の機会を通して、著作権等に関する法律に関する指導を中心に、倫理的な指導が可能である。小学校の中学年では、地域の様子や生活をしらべ、その特色を理解する調べ学習があり、その中で地域に出かけて調査を行い、図書やインターネットで検索して調べたことを整理して発表するような活動が含まれている。これらの中で、相手に許諾を得て内容を公開することや、著作物からの引用時に、出展を明記する約束などを取り入れることで、自然と著作物などに対する正しい取り扱い方を身につけることができるようになる。
 第5学年では、「情報化の進展は国民の生活に大きな影響を及ぼしていること」や「情報の有効な活用が大切であることを考えるようにする」を考える内容があり、ここでは、情報の有用性や役割、情報の適切な収集・活用、発信や伝達の仕方、情報化のもたらす様々な影響などをもとに、情報化した社会において人々が主体的に生きていくためには情報を有効に活用することが大切であることについて考えるとともに、様々な情報に対して適切に判断し、望ましい行動をしようとする能力や態度を身に付ける情報モラルの指導が必要となっている。

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<算数>

 学習指導要領の内容の取り扱いでは、「数量や図形についての感覚を豊かにしたり、表やグラフを用いて表現する力を高めたりするなどのため、必要な場面においてコンピュータなどを適切に活用すること。」となっており、児童自身がコンピュータを扱う場面もある。その場合の利用に際して解説の内容の取り扱いに関する配慮事項では、「算数科の指導においては、コンピュータなどを用いて、知識・技能の活用を図ったり、児童の能力をさらに創造的に発揮させたりすることが大切であることを示している。その際、資料などの情報を分類整理したり、表やグラフを用いて表現したり、図形を動的に変化させたり、数理的な実験をしたりするなど、コンピュータのもつ機能を効果的に活用することによって、数量や図形についての感覚を豊かにしたり、表現する力を高めたりするような指導の工夫が考えられる。」となっている。自分の考えを仲間に発表するなどの学習場面が考えられ、その場合の資料の利用ルールや、人の考えや表現内容を引用する場合の約束事などを考えさせ、守るようにすることなどの情報モラルの指導が必要である。

<理科>

 学習指導要領の内容の取り扱いに「観察、実験、栽培、飼育及びものづくりの指導については、指導内容に応じてコンピュータ、視聴覚機器などを適切に活用できるようにすること。」と記述され、解説編の指導計画の作成と内容の取り扱いには、「観察、実験などの指導に当たっては、直接体験が基本であるが、適宜コンピュータや視聴覚機器などを組み合わせ、活用することによって学習の一層の充実を図ることができる。コンピュータや視聴覚機器などで扱われる映像情報については、それぞれの特性をよく理解し、活用することが大切である。(中略)学習を深めていく過程で、児童が相互に情報を交換したり、説明したりする手段として、プロジェクタをはじめとする様々な視聴覚機器を活用することが考えられる。これらの機器を活用する場合は、その操作について適切な指導を心掛けることが必要である。」とあるように、児童が実験や観察などの過程で視聴覚機器などを活用して、実験の様子や観察物を撮影することや情報交換する場面がある。
 この場合、記録したものの確からしさなどを確認してから発信することや、他者のデータを活用する場合の取り扱いなどを日常的に指導するようにしたい。また、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を利用して、気象データなどの第三者からの著作物を活用する際のルールやデータの信憑性の確認方法などについても指導することが必要である。これらの機会を通して、適切に判断しながらインターネットなどの情報を活用する習慣を身につけさせたい。

<生活>

 「学校と生活」での「通学路しらべ」や、「地域と生活」での「町探検」などの活動で、地域に出かけて話を聞くことや、デジタルカメラで撮影するなどの学習活動が考えられる。その場合に、インタビューする相手に許しを得てから話を聞くことや、写真撮影の基本的な約束事などについて指導することが必要となってくる。

<音楽>

 作曲や編曲など、音楽に関する著作権について、他者の権利を大切にすることが必要である。具体的には、私達が日常聞いている音楽に関する著作権や著作隣接権について理解し、正しく利用することの必要性を学ばせる。テレビやラジオ、カラオケなどで使われている音楽は、それぞれ著作権者に対価が支払われていることや、教育機関での音楽利用の特例、友だち間での音楽のやりとりの決まりなどを正しく指導することが望まれる。また、児童生徒が作詞や作曲をした場合にもそれぞれ著作権や著作者人格権などがあり、それらをどのように行使すればよいかなどについて伝えることも必要である。自分の作品を大切にすることをとおして、他者の作品も尊重することができるように指導したい。一方、伝承による「わらべ歌」など著作権がない古い楽曲や歌詞が存在すること、それらは自由に使えることなどについても指導したい。

<図画工作>

 音楽と同様、絵画の模写や意匠権などについて、絵画活動を通して指導する場面がある。小学校の段階から、自分自身の作品だけでなく友だちの作品を大切に扱うことを指導することが、著作物に対する意識の高揚につながる。既存のロゴやキャラクターなどを模写するような授業では、模写する対象が保護期間を過ぎているかどうかを調べさせることを行い、教室内での展示か否かなどの判断を生徒にさせることをとおして、自身で判断し行動できるようにすることが大切である。

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<道徳>

 内容としては、情報モラル指導モデルカリキュラムに示されている「情報社会の倫理」、「法の理解と遵守」、「安全への知恵」、「情報セキュリティ」、「公共的なネットワーク社会の構築」などを踏まえ、個人情報の保護、人権侵害、著作権等に対する対応、危険回避などネットワーク上のルールやマナーなどが考えられるが、単に知識や対処を教るのではなく、児童が考えたり、話し合ったりする時間を設定しながら自ら判断し、対処できる力や態度を身につけることが必要である。
 小学校の段階での具体的な目標としては、次のような項目が考えられる。

  • 発信する情報に責任を持つ
  • 情報社会での行動に責任を持つ
  • 情報に関する自分や他者の権利を尊重する
  • 情報社会のルールを知る
  • 情報社会のマナーを守る
  • 情報を正しく安全に利用する
  • 健康に留意して情報機器を活用する
  • 情報社会での危険な面を理解し身を守る
  • 不適切な情報を回避・対応できる
  • 情報セキュリティの基本を知り対応できる
  • 情報社会に対して公共的な意識を持ち対応できる

 例えば、小学校では、顔を合わせてのコミュニケーション(会話)と、電子メールでのコミュニケーション(文字情報)での伝わる内容の違いを、具体的な体験の交流や資料を活かした話し合いを通して学習する事例がある。児童に、実際の話し言葉をそのまま文字にしても、気持ちを表せないことを体験的に理解させる。コンピュータや携帯電話などの電子メールによる文字情報のみのコミュニケーションでは、どんな文章にすると、相手にきちんと気持ちを伝えられるのかを考えさせる。それをもとに、相手が直接見えなくても相手を感じ、尊重する心情を伝えるための留意点について学習することが可能である。

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2.中学校における指導内容

<社会>

 公民的分野の内容では、「「情報化」では、大量の情報の活用によって経済などの仕組みや社会生活が変化してきていることや、その中で個人が主体的に情報を収集、処理、判断、発信するなどの情報を活用する力や情報モラルを身に付けていくことなどが大切となってきていること」と記述され、内容として情報モラルの大切さを学ぶ。情報ネットワークの利便性に目を向け、情報化の進展によって人々の生活の向上が図られていることを具体的に調べ、情報を有効に活用しながら生活する必要があることや、情報の送り手として発信する情報に責任を持とうと考える活動がある。また、マスメディアの働きや、それを通して送り出された情報が国民生活に大きな影響を及ぼしていることを調べ、情報を発信する側に求められる役割や責任の大きさ、情報を受け取る側の正しい判断の必要性などについて考えることを通して情報モラルの指導ができる。
 一方、調べ学習などにおける資料や情報を活用する学習活動の機会を通して、著作権等に関する法律に関する指導を中心に、倫理的な指導が可能である。地図や統計、写真などの資料活用、聞き取り調査やインターネットなどでの情報収集、電子メールによる情報発信など、学習場面での情報機器の活用を通しての情報モラルの指導場面が多く存在する。

<保健体育>

 コンピュータの心身への影響について、コンピュータや携帯電話、ゲーム機などを長時間使用すると、心身に悪い影響があること、使う時の注意事項、自分の健康は自分で守るという意識、健康によい生活行動を自ら実践することが必要であることを理解させる。

<技術・家庭>

「D情報に関する技術」
ア情報のディジタル化の学習活動と関連させた情報モラルの指導
 情報をコンピュータで利用するために必要なディジタル化の方法について知る際に行う情報モラルの指導である。
 具体的には、情報(作品)をディジタル化した場合、ディジタル化することで劣化なく複製が容易にできるようになることを知らせる。このことは、情報の利用という視点で見ると大変便利なことではあるが、一方では違法コピーによって同じものが複数作成できることから、例えば、映画や楽曲等の違法な複製は、制作者に経済的な損害とともに制作意欲の減退などの悪影響を及ぼすことを知らせるなどして、ディジタル化という情報に関する技術の利点をどのように活かすべきか考えさせるといった指導が考えられる。

イ情報通信ネットワークの学習活動と関連させた情報モラルの指導
 情報通信ネットワークの仕組みについて知る際に行う情報モラルの指導である。
 具体的には、情報通信ネットワークの構成については、サーバや端末、ハブなどの機器及び光ファイバや無線などの接続方法に加えて、TCP/IPなどの共通の通信規約が必要なことについて知らせる。
 このことは、情報の発信や収集を容易にする。ただし、情報通信ネットワーク上ではディジタル化された情報が多くのサーバに一時的ではあるが情報が保存されるといったことも行われていることから、例えば、個人認証や情報の暗号化といった安全に情報通信ネットワークを利用するための方法について考えさせるといった指導が考えられる。

<外国語>

 海外との交流学習で英語版学校紹介のビデオやWebページの制作を通し、その中で指導する事例がある。コンピュータや情報通信ネットワークを使うことによって、教材に関する資料や情報を入手することや、電子メールによって情報を英語で発信することもできる。このような活動を通して、生徒一人一人が主体的に世界とかかわっていこうとする態度を育成することもできる。

<道徳>

 小学校と同様、内容としては、情報モラル指導モデルカリキュラムに示されている「情報社会の倫理」、「法の理解と遵守」、「安全への知恵」、「情報セキュリティ」、「公共的なネットワーク社会の構築」などを踏まえ、個人情報の保護、人権侵害、著作権等に対する対応、危険回避などネットワーク上のルールやマナーなどが考えられるが、単に知識や対処を教るのではなく、生徒が考えたり、話し合ったりする時間を設定しながら自ら判断し、対処できる力や態度を身につけることが必要である。
 中学校の段階での具体的な目標としては、次のような項目が考えられる。

  • 情報社会への参画に責任ある態度で臨み、義務を果たす
  • 情報に関する自分や他者の権利を理解し尊重する
  • 情報社会のルール・法律を知り、遵守する
  • 情報に関する危険を予測し被害を予防する
  • 情報を正しく安全に活用するための知識や技術を身につける
  • 自他の安全や健康を害するような行動を制御できる
  • 情報セキュリティに関する基礎的基本的な知識を身につける
  • 情報セキュリティの確保のために、対策・対応がとれる
  • 情報社会の一員として公共的な意識を持ち、適切に判断し行動できる

 例えば、新たなコミュニケーション手段としての携帯電話やインターネットでは、発信者が特定されないことなどからさまざまなトラブルが発生している事実をもとに、情報化社会を生きるために必要な考え方や態度を身につけさせる。例えば、生徒たちに一番身近なメールを取り上げ、メールの利用によるさまざまな弊害を疑似体験させることで、そこに発生するさまざまな問題について考察し、普段の利用法やセキュリティ対策の重要性を理解させる。

<総合的な学習の時間>

 情報活用の実践力の育成を伴うような実践事例を中心に紹介する。情報モラルに関する内容を広く捕らえ、課題解決的な活動の中で著作権に関する課題から情報発信時に留意することなど、情報モラル教育の範疇を広く確実に定着させる。

<特別活動>

 教科の指導では難しい、安全・安心に関する分野の指導をスポット的に取り扱っている事例を紹介し、短時間でも効果的な指導ができることや、教員が安全・安心に関する一般的な考え方や情報を日常的に把握しておくことの必要性、それらを教材として構築して指導することが必要である。

第4節家庭や地域の連携と学校の役割

1.児童生徒が安心して生活できる環境の確保

 インターネットの普及や携帯電話の利用の増加により、児童生徒が様々なトラブルに巻き込まれる事例が多発している。その解決には、学校での指導だけでなく、家庭や地域の連携が要となる。まず、児童生徒のインターネットや携帯電話の活用実態の調査を実施することで、大人との利用方法の違いを把握し、その報告を家庭や地域へ発信し、多くの大人が関心を持つことが、児童生徒が安心して生活できる環境の確保へつながることを認識させることが大切である。
 具体的な方法としては、児童生徒に対して、有害情報対策やネットトラブルの対処法などを中心とした情報モラル教育を実施し、このタイミングで家庭へのアンケートによる利用実態調査を行い、家庭からのフィードバックを得る。次にその報告を兼ねた家庭や地域の大人たちへの情報モラルの講演会などを実施する。これらのことを毎年実施して定着させることや、各家庭で、「インターネットの利用」や「携帯電話の使用」のルール作りを親子で考える機会の必要性を伝えることが大切である。この場合、学校から家庭への一方的な啓蒙活動だけではなく、家庭での話し合いの内容や実態調査のキャッチボールを学校と家庭の間で行いながら連携して進めることが必要である。
 この、家庭や地域との連携をつくるには、まずは学校内での体制作りが必要である。例えば、教員による「情報委員会」などを設置し、各学年より1〜2名の委員を選出し、児童生徒からの情報の共有化を図る。問題が発生した場合は、この委員会が中心になって対応できるような組織運営が求められる。この委員会が学校内にとどまらず、PTAや地区の連絡協議会に働きかけ連携した組織作りをすることで、共有の認識が生まれ、問題を未然に防ぐことが期待できる。
 平成20年6月に可決・成立した法律「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」によって、携帯電話会社・プロバイダはフィルタリングサービスの利用を容易にする措置を講じている。保護者のフィルタリングに対する理解を深めるために、平成20年3月には「子どもの携帯電話等におけるフィルタリングの普及促進のための啓発活動について」が通知されている。これらの資料を参考にすることでより、フィルタリングに関する理解を深めることができる。

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2.携帯電話の普及、新たな情報端末への対応と情報モラル教育

 携帯電話は急速に普及し、必要不可欠なものとなり、日々進化している。その進化に柔軟に対応し、新たな知識として取り込むことが必要となる。情報端末の新たな進化を予測することは難しいが、新たな情報収集に取り組むことにより、対策方法を迅速に検討することができる。情報モラル教育を特別な内容と意識せず、日常の問題として取り組むことにより、生徒たちとのコミュニケーションなどから自然と新たな情報を収集することができる。この情報の一つ一つをおろそかに対応せず、着実に着手することが重要となる。情報を受け取ってから、知識として身につけたことに満足せず、実際の機能やサービスを積極的に利用することでより、具体的に確認することができる。携帯電話・コンピュータに関わらず、有害情報の規制を行う各種サービスは、児童生徒を有害情報から守るのに有効な手段である。
 また、生活に便利な使い方などを正しく理解し身につけることで、新しい情報機器を適切に活用し、健全な情報社会へ積極的に参画する態度を養うことも必要である。危険性を理解し、安全に使えるように指導することを心がけたい。

3.学校教育の情報社会の変化への対応の必要性

 情報社会の変化へ対応するためには、いち早くその変化を把握し認識する必要がある。学校のみならず、家庭地域の大人達に児童生徒が安全に使用できる機能についての理解が備わっているかがポイントになる。まずは、大人達が児童生徒の使用実態を把握し、トラブルが起きた際の解決方法や対応策を学ぶことが大切だ。具体例としては、学校・家庭・地域が一体となり、学校主催でオープンスクールやPTA主催の総会や各委員会での勉強会、地域の家庭教育講座や教育委員会主催の研修会などで定期的に情報モラルの専門指導員から最新情報を得る講演会や端末機器の実演講習会を実施する。NPO団体や携帯電話業者、警察などの出前講座を利用することも有益だ。 さらに、参加者自らが、専門的な指導員になれるよう知識を身につけ、その後の学校や地域での指導にあたれるよう指導員の育成も大切だ。また、学校と保護者が連携して、児童生徒が巻き込まれやすいネット上のトラブルに対しての対処方法を記載した冊子を作成し、各家庭や地域に配布することで意識を高める効果につながる。 地域の携帯事業業者や電気機器販売店(端末機器を扱う販売店)やネット販売や売買の利用に使うコンビニエンスストアなどとの情報や意見交換なども児童生徒の実態を把握する上で活用すると良い。

情報社会

4.教員の指導力の向上

 第3節で述べたように、情報モラル教育の指導を行う際には、学習指導要領の内容を踏まえ各教科の指導の中で、小学校低学年から発達の段階に応じて情報モラルを取り扱っていく必要がある。情報モラル教育の指導力を向上するために理解しておくべき項目は、主に下記の内容である。

1情報社会で起きていることの理解

 サイト上に児童生徒たちが危険に巻き込まれる可能性がある掲示板やプロフ、出会い系サイト、学校裏サイト(学校非公式サイト)、ブログ等があるという事とその危険性を理解する。また、新聞記事やデータベースを活用し児童生徒が巻き込まれた事例を把握しておく必要がある。
 学校でのコンピュータなどの活用においても、IDやパスワードの取り扱い方と、その操作体験などをとおして、社会でそれらがどのような役割を果たし、またどのような危険性を持っているのかということを理解させることが必要である。身近な問題を体験的に生場競るような環境の整備が必要である。
 「青少年が利用する学校非公式サイト等に関する調査(平成20年1月〜3月)」(文部科学省)においては、全国で38,260件の学校非公式サイトが確認されている。

学校非公式サイトの利用実態調査(ウェブサイト調査)
青少年が利用する学校非公式サイトのウェブサイト数に関する調査
サイト・スレッド数38,260件
(平成20年1月〜3月現在で確認できたもの。)

形態

a特定学校非公式サイト…858件
(特定の学校の生徒が閲覧や書き込みをするもの)

b一般学校非公式サイト…1,931件
(全国の中高生が誰でも掲示板を閲覧し書き込みもできるもの
「Teens学園」、「高校生のしゃべり場」等)

cスレッド型学校非公式サイト…33,527件
(「2ちゃんねる」など巨大掲示板にスレッドとして掲載されているもの)

dグループ・ホームページ型非公式サイト…1、944件
(生徒が「個人ホムペ」と呼び、数人のグループで遊ぶサイト)

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2情報モラルの教材・授業カリキュラムの作成と指導方法

 児童生徒たちに情報モラル教育を推進するために必要な教材・カリキュラムを作成するには、無料で利用できる教材の利用や、先進的な取組を行っている学校の情報収集等がある。
 授業カリキュラムの実施については、一方的な授業ではなく児童生徒が自発的に参加し考える事ができる仕組が必要である。そのためには、コンピュータ教室で体験的に学ばせることや、ビデオやアニメーションなどを活用して理解させることが必要である。また、保護者に対する啓蒙にも活用できるという視点で作成することが望ましい。

3関連する法律の知識

 インターネット上での児童生徒のトラブルには、保護者や教員が気づいた時には手遅れになる場合も多い。犯罪者や被害者にならないためにも、著作権法、個人情報に関する法令やその他インターネットに関する法律の知識を踏まえた上での指導が必要である。

4具体的な対処方法

 児童生徒のインターネット上の問題の対処については、予防のための対処方法と、事後の対処方法があるが、両方について理解しておく必要がある。情報モラル教育は、予防のための対処方法であるが、問題が起きた場合の対処方法(相談窓口、有害・誹謗中傷書き込みの削除依頼方法、発信者開示請求の方法、心のケアの必要性)も理解すべきである。

5.学校全体で取り組むことの必要性

 携帯電話の所有や利用については家庭の問題と認識されがちだが、第3章にもある通り、教科指導におけるICT活用は今後の生徒指導には必要不可欠である。携帯電話やコンピュータを利用した教育の進展のためにも、学校全体で情報モラル教育を取り入れることが必要である。
 携帯電話やコンピュータなどの最新の情報端末を利用した情報モラル教育を効果的に実施する、各科目と連動した活用が重要となる。各科目を担当する教員の視点から学校全体として取り組み、特別なカリキュラムとして取り組むのではなく、従来の授業の中に情報モラルの視点をもった学習活動を取り込むことが必要である。これにより、情報モラルの重要性が学校全体から発信され、児童生徒への興味関心のきっかけとなり、児童生徒をとおして保護者へ関心を持たせることができる。情報モラル教育は学校と家庭、地域が連携して推進することで、情報社会の有害な部分ではなく、有効な部分が認知され、健全な情報社会の構築につながる教育となるようにしたい。

「児童生徒・家庭のための情報モラルチェックシート」の項目例

学校の実態に応じて、次の項目から必要なものを抽出し、設問や回答方法を工夫して実施。

インターネットを利用する際の取扱い

  • パスワードは、親しい人になら教えても良い
  • 友達や家族のパスワードを使ったことがある
  • パスワードがなにかわからない
  • なりすましメールが届かないように設定してある
  • メールは登録したメールアドレスからしか届かないようにしている
  • フィルタリングはみたいサイトがみられない設定していない
  • 有害サイトにアクセスしないようにフィルタリングを設定している

約束・ルールなど

  • 家庭でケータイやコンピュータに関する「ルール」がある
  • 友人同士でケータイやコンピュータに関する「ルール」がある
  • ケータイやコンピュータを使って困ったことがある
  • ネット上の情報はすべて正しいとは限らない
  • 著作権や個人情報の取り扱いの正しい知識が身についている
  • コンピュータやケータイがなかったら生活できない

お問合せ先

初等中等教育局

-- 登録:平成21年以前 --