「心のノート」の改善に関する協力者会議(第1回) 配付資料

1.日時

平成20年7月23日(水曜日) 13時~15時

2.場所

旧文部省庁舎 6階「第2講堂」

3.議題

  1. 「心のノート」の改善について

4.配付資料

5.出席者

委員

 中西主査、赤田委員、上杉委員、加倉井委員、新宮委員、土井委員、中川委員、馬場委員、藤永委員、本田委員、無藤委員

文部科学省

 金森初等中等教育局長、徳久審議官、高橋教育課程課長、牛尾視学官、森友学校教育官、永田教科調査官、谷田教科調査官

6.議事

  • (1)金森初等中等教育局長より挨拶が行われた。
  • (2)中西主査より挨拶が行われた。
  • (3)事務局より配付資料の確認が行われた後、「心のノート」の改善等について審議が行われた。議事については以下のとおり。

【委員】
 まず最初に、「心のノート」の概要につきまして事務局から説明をお願いいたします。

【文部科学省】
 「心のノート」は、道徳教育の充実を図る観点から、子どもが身に付ける道徳の内容をわかりやすくあらわし、道徳的価値についてみずから考えるきっかけとし、理解を深めていくことができるような児童生徒用の冊子として作成し、全児童生徒に配付してきたものであり、学習指導要領の内容項目それぞれについて、子どもがイメージを膨らませたり、あるいは自己の生き方と結びつけて考えたりすることができるようなメッセージやイラスト、あるいはさまざまな文章などで構成しています。
 この「心のノート」は、平成14年度に全児童生徒に配付しましたが、同じ平成14年度に全教員に配付した手引「『心のノート』活用のために」の中にその趣旨が示されております。
 小学校版の手引きの6、7ページを開けますと、「『心のノート』作成の背景と道徳教育」とあり、「子ども自らが道徳性をはぐくむ」、「子ども自らが道徳性を身に付け伸ばす窓口」としています。3番目に「学校・家庭・地域の連携」と示し、広く生かすことができるところを眼目としていました。
 それを受けて、7ページには、「『心のノート』の3つの特徴」を示しています。子どもが自ら学習することができるように、例えば余剰時間や朝の時間や家庭でも使える。そして子どもの心の記録となり、その一冊が子どもにとって、自分の心の宝物になるように、そして、家庭や地域の教育と学校教育が一層連携を深めていくことができる心の架け橋となるように、という願いをもって作成されたものです。
 続いて「予想される子どもの活用場面」を示しています。日常の中で、各教科の中で、そして道徳の時間はもとより特別活動、総合的な学習の時間、学校・家庭・地域連携の中で、さまざまな交流の中でなど、7つの場面を例示し、幅広い活用も願っています。
 10ページに「3冊の『心のノート』とその構成」を示しています。小学校用の手引なので3冊となっていますが、参考として中学校用も書いていますので、全体がわかるようになっております。
 また、全体として、1つの内容項目について、4ページずつで構成しています。この内容項目の順番は学習指導要領の内容と一致しています。
 4冊とも同じような構成になっている中で、その前や後ろには特設ページなどがございます。例えば、中学校の最初の「いまここに23の鍵がある」というページでは、内容項目全体のイメージを大きなイラストにしています。このような鳥瞰図の前には自分のプロフィールを書き込むページを用意しており、その中に自分を知るためのシートがあります。そして、最後のほうには、自由な書き込みページを用意したりして、一冊を構成しています。
 平成15年度に配付した「『心のノート』を生かした道徳の教育の展開」においては、活用場面例ごとに実際の事例を活用の参考となるように示しています。 その後、社会状況も踏まえ、平成16年度中に一部改善をし、低学年用を平成17年度に配りました。
 例えば、48、49ページ、64、65ページを増やしました。前者は、伝え合う、あるいはコミュニケーション、人と豊かにかかわり合えるという趣旨から、後者は、生命の大切さについての考えを深めるという趣旨から特設しました。また、6、7ページの「このノートのつかいかた」を用意しました。さらに、書き込みページも増やすなどして、全体としては8ページ増やしております。平成18年度配付用の中学年版と高学年版についても同様の改善を図っています。
 では、この「心のノート」がどのくらい使われてきているのか、どのような活用状況なのかということについては、平成15年度の道徳教育推進状況調査にデータがありますが、道徳の時間に使用する教材として「心のノート」を挙げた割合が、小学校は97.1パーセント、中学校は90.4パーセントということで、ほかの教材と比べるとかなり高くなっております。
 本年度は7年目の配付になりましたが、道徳の時間での使い方について、まだ十分なコンセンサスを得られていないところもあるかもしれないこと、データやイラストの内容が若干古くなってきているものも見られそうなことなどの課題があると考えています。

【委員】
 ありがとうございました。引き続きまして、お手元の資料3には今回の改善のあらましの様子が書いてございます。これに基づきましてご議論いただきたいと思っております。資料3について文部科学省より、ご説明をいただきたいと思います。

【文部科学省】
 資料3「『心のノート』の改善方針等の大枠(案)」は、今回の学習指導要領の改訂内容を踏まえまして、改善することが考えられる内容を事務局において整理したものです。
 まず1つ目ですが、今回の学習指導要領改訂における道徳の内容項目の改善の内容を踏まえた改善ということでございます。
 資料5、A3の横の資料の2枚目を御覧いただきたいと思います。
 学習指導要領で示しております道徳の内容項目を整理いたしますと、このようになります。 ここで見え消しにしているところ、下線を引いたり、二重線を引いたりしているところがございますが、これは現行の指導要領を今回の改訂で見直したところが見え消しになっているものでございまして、これを反映したものが1枚目にくるわけでございますけれども、この見え消しをした結果のものが、今の新しい改訂後の学習指導要領の姿になっております。
 今回の改訂におきましては、例えば「小学校第1学年及び第2学年」、一番左側の欄でございますが、そこの下の4、「主として集団や社会とのかかわりに関すること」の(2)といたしまして、「働くことのよさを感じて、みんなのために働く」という項目を新たに設けたり、あるいは右の縦の欄の「小学校第3学年及び第4学年」のところの1番の「主として自分自身に関すること」の(5)といたしまして、「自分の特徴に気付き、よい所を伸ばす。」という項目を新たに設けたりしております。
 また、一番右の縦の欄でございますけれども、「中学校」の欄の2、「主として他の人とのかわりに関すること」の最後の(6)といたしまして、「多くの人々の善意や支えにより、日々の生活や現在の自分があることに感謝し、それにこたえる」といった項目を新たに設けるなどの改訂をしております。
 そのほか、ごらんいただきますとおわかりになりますように、それぞれの項目について若干の微修正をしているところもございます。
 「心のノート」の内容につきましても、これらの指導要領の内容項目の見直しに合わせた改善が必要ではないかということが、改善方針の大枠の1つ目の内容でございます。
 次に、資料3の2つ目ごらんいただきたいと思いますが、今回の学習指導要領の改訂におきます道徳の指導内容の学年段階ごとの重点化を踏まえた改正ということでございます。
 学年段階ごとの指導内容の重点化につきましては、今回の学習指導要領の改訂の大きなポイントでございますけれども、具体的に申しますと、各学年を通じて自立心や自律性、自他の生命を尊重するといったこと。あるいは小学校低学年であいさつ、人間としてしてはならないことをしないこと。中学年で集団や社会の決まりを守ることなどにつきまして、発達の段階を踏まえて配慮することを指導要領上、明示をしております。これらの内容につきましても、「心のノート」の内容に反映していく必要があると考えております。
 3つ目ですが、「心のノート」の道徳の時間での活用を従来以上に積極的に推進することとし、そのための工夫が必要ではないかということです。
 今回の指導要領の改訂では、道徳教育はすべての教科等を通じて行うものであることを、より明確化すると同時に、道徳教育の要は道徳の時間であることも明確化しております。
 「心のノート」は、道徳の時間をはじめとして各教科等、さらには家庭教育においても活用することとしておりますが、このような考え方は維持しつつ、他方で実態として道徳の時間で活用されることが最も多いということも考慮して、道徳の時間で活用しやすいような工夫が必要ではないかということでございます。
 具体的に申しますと、例えば「心のノート」は低・中・高学年ごと、中学校ごとに作成しておりますが、内容項目によっては、例えば低学年で1年生の欄、2年生の欄というような学年ごとの欄が設けられてないところもございます。そういったところについて、各学年ごとの記述欄を増加させるといったことも考えられるのではないかということです。
 最後の4点目は国による読み物資料の作成についてです。いわゆる骨太の方針などにおきましても、多様な教材の充実ということが提言されており、このようなことを踏まえれば、国においてもさまざまな読み物資料を作成することを検討する必要があると考えられるところでして、その際には、四角囲いにございますように、今回の学習指導要領の改訂において、先人の伝記、自然、伝統と文化、スポーツなどを題材とし、児童生徒が感動を覚えるような魅力的な教材の開発や活用といったことが盛り込まれたことを踏まえて、その内容を考えていくことが必要ではないかということです。
 続きまして、協力者会議のスケジュールにつきまして、ご説明申し上げます。資料4でございます。本日、ご議論、ご意見をいただいたことを踏まえまして、小学校の低・中・高学年、中学校、全体で4つのワーキンググループを設けまして、メンバーとしてはそれぞれ10人程度ずつですが、そのワーキンググループで具体的な「心のノート」の改善内容を検討していただいた上で、9月以降、本協力者会議におきましてご審議をいただきたいと思っております。
 なお、上杉委員、新宮委員、藤永委員、横山委員には、それぞれの学年段階ごとのワーキンググループのとりまとめをお願いしているところです。
 なお、ワーキンググループでの検討の際には、教材会社の協力も得ながら検討をしていくことになると考えております。
 改訂された学習指導要領の道徳の部分につきましては、来年度、平成21年度からの実施となっていることを考慮すれば、「心のノート」の改善版の内容につきましては、本年11月、12月ぐらいまでには発表して、年度内に印刷・配付していく必要があると考えております。
 国による読み物資料につきましては、「心のノート」の改善版の確定後も、引き続き検討を進めていきたいと考えております。

【委員】
 スケジュールについて大体11月ぐらいが目処だということで本当に時間がございません。ですから、そういう段取りの中でお考えいただくということを、まず前提にしていただきまして、具体的に今回の指導要領の改訂に伴う改善を中心として、2回目は、その改善案について考えて、11月には決定と、こういうことになるわけでございます。
 まず資料3の1のところで、こういう改善の内容だということがございました。これは今お聞きのとおり、一覧になっているものの中から、特に大事だと思われるところをおっしゃっていただいたわけでありますので、その意図を十分に私たち尊重しながら議論したいと思います。
 働くこととか、特徴の発見ということ、これが大事だというお考えが基本にあって、それについて私たちは意見を申し上げたい、こういうことだろうと思います。中学校の場合には感謝、そんなところでございます。
 それから、2にございますのは、従来の学年段階の重点化、これを反映した「心のノート」が欲しいと、こういうご意見でございますので、そういうことについてのご意見を承りたいと。
 あわせまして、3にありますように記述欄の工夫という、これは非常に大事なことだと思います。そんなこともお考えいただいて、4はきょうの後半に別途時間を設定いたしますので、3までについて討議をいただきたいと存じます。

【委員】
 小学校の中にもつけ加えたほうがいいと思われるものはたくさんあるはずですけれども、その中で、特に1、2年の「働くことのよさを感じて、みんなのために働く」が、ここで取り上げられた理由には何かあるのでしょうか。

【文部科学省】
 資料3の1に出しているものは、優先というよりも、わかりやすかったので取り上げたものでございます。先ほど申し上げましたとおり、資料4で見え消しにしているところは、今回の改訂で見直しをしたところでございますので、それらについては今の「心のノート」の内容に反映させていくことが必要だろうと考えておりまして、そういう意味で見え消ししているものはすべて同価値だと考えております。

【委員】
 今のお話に関しまして、資料3の中に「働くことのよさを感じて、みんなのために働く」というのが取り上げてありますが、これは資料4のどこにあるのでしょう。

【文部科学省】
 資料4の一番左側の縦の列が「小学校第1学年及び第2学年」の欄ですけれども、その下の4の「主として集団や社会とのかかわりに関すること」の下の(2)にございます。

【委員】
 今の低学年のところは一覧表の4の(2)というところですね。次に書いてあります「自分の特徴に気付き・・」というのが、小学校3、4年生の1の(5)にあると、こういう見方をすればよろしいわけですね。

【文部科学省】
 はい。

【委員】
 先生がおっしゃるのは、働くことのよさというのを全学年に入れたらいかがかという要件ですね。

【委員】
 そういうこともあるんですが、要するに「働くことのよさを感じて、みんなのために働く」というのは、小学校1、2年の対象の中で、ちょっと違和感を感じたのです。

【委員】
 要するに、低学年で働くということを具体的に言うとどういうイメージかという、そういうご説明を求めておられるのかと思います。

【文部科学省】
 今回、学習指導要領の改訂でこれを設けたんですけれども、改訂の基本的なコンセプトとして、小学校の低・中・高学年、中学校の系統性をわかりやすくしようということで、設けたものでございます。低学年のところで、勤労観にかかわる言葉が内容項目としてなかったので、中学年の「働くことの大切さを知り、進んでみんなのために働く」などといったところに発展していく基となる低学年の勤労観に係る内容項目を新設しました。具体的には学校の中での係活動、当番活動などを通じて、低学年は低学年なりに、ここに書いているような働くことのよさを感じるといったことが含まれていくものだととらえております。

【委員】
 つまり働くということは、言ってみれば人間の基本の問題みたいなもので、小さいころからそういうことを教えようと。要するに、みんなのために役立つということでしょうかね。

【委員】
 先ほど調査官から「心のノート」の使用状況についてご報告をいただきました。
 使用状況としては、小学校97.1パーセント、中学校90.4パーセント、いわば量的な把握ということですね。しかも、道徳の時間に使用する教材として小学校は97パーセント、ほとんどが「心のノート」使っているということです。中学校は9割ですから、これも多くの教室で使われている。何か使い方の質とか、もうちょっと道徳の時間以外に踏み込んだところで把握されていることがありましたら、今後広く活用してもらう方向に向けて、どのような改善が必要かが見えてくるように思いますが、そのあたりを把握しているデータがございましたら、ご紹介いただきたいと思います。

【委員】
 いかがでしょうか。100パーセントでありたい、120パーセントでありたいですね。それが90パーセントということですが。

【文部科学省】
 道徳の時間に使われる場合の多くのケースは、例えば、導入で、「ぐるりとまわりを見渡せばよくしていきたいこの社会」といったページを見て問題意識をもって、文章資料などに出会って話し合う。あるいは、自分のよさ、自分らしさを話し合った後、「自分向上プロジェクト」のページを開いて、じゃ、何ができそうか、1個だけでもいいから見つけてごらんということで、終末などの話合いの終わりの段階で使ったりすることが比較的多く見られます。
 「心のノート」を指導計画に位置づけている学校も一定度ありますが、多くの場合はメインの資料があって、それと組み合わせて、「心のノート」を導入や終末段階、あるいは展開段階の後半などで使っているケースが多いようです。中心的な資料として使っているケースも、一定度見られます。例えば、低学年では、「うそなんかつくもんか」というページがありますが、これは文章資料になっていて、これを道徳の時間で使って、「ないしょのはこ」のページで話合いをさらに広げてみる。
 このように道徳の時間で活用することができるページもありますが、2年間で1冊ということもあり、やはり年間の中で使い方を多様にアレンジしていくことで、「心のノート」にだんだん親しんでいくという使い方が一般的かと思われます。

【委員】
 この「心のノート」は、私の娘も30歳を過ぎておりますが、読みふけっております。娘は母親なんですが、母親にも非常に参考になるものだと私は思っております。
 このノートを本当に活用するには子どもの手になじまないとだめだと私は思うのです。
 例えば、「心のノート」は学校に配付されておりますが、子どもがなくしては大変だということで、担任の先生は学校に据え置いている場合があります。自分の「心のノート」になっていないという場合があるのです。
 やはり予算がかかわってくると私は思うのですが、紛失しても入手できるような体制にもっていかないと、私はほんとうに活用できないだろうと思うんです。
 実は、私は大学で親を対象にした授業において、こういうノートがありますという紹介をしましても、注文しても入手できませんという問題があるように思われます。それから、教師用の指導書も配付されていますが、先生方は手に取れないという状況なんです。

【委員】
 これについて文部科学省の考えで、何か妨げになるようなことがございますか。

【文部科学省】
 紛失をされたときということになりますと、かなり厳しい財政状況もございますので、そこまで予算的に余裕をもってというのはなかなか厳しい面があるかと思います。この冊子自体は市販されておりますので、紛失された場合には購入していただくことになるのではないかと思います。

【委員】
 大切になくさないようにしようと思えば、きちんとしまっておくと。そのことによって活用率が下がるということもございますね。
 先ほど、私も改めて繰り返し紹介させていただいたのが平成15年の調査ですから、かれこれ5年経過をしています。先ほどのお話で、若干出回った当時よりも活用率が下がっているということもございましたが、もし何らかの形の現在の数字的なデータがあれば、ご提示いただきたいし、もしそうでなければ、この会議に現場の先生方もご参加いただいていますので、実際のところはどうなのかということを、やはりきちっと共通理解した上で次の方策を考えるというのが議論の手順かなと思うわけです。

【委員】
 小学校の現場では、今言われていますように、家にもって帰すともってこない、忘れるものが多い、それで使えない。では、学校に置いておくのか。そうすると、せっかく家庭との連携と言われているのに支障があるということで、私どもの学校では、道徳の時間には必ずもってくるということにしております。そういうふうにやってからは、きちんと学校にもってくるし、家庭にもちゃんともち帰っています。そういう方法をとっております。

【委員】
 それが一般的傾向ですね。

【委員】
 それが増えていると思います。

【委員】
 中学校からということで、一つは、中学校ですと3年間、小学校は2年間使うんですけれども、例えば1年生で書き込みをして、2年生で、またそのページを使いますと、前にやったことで自分でどれだけ成長したかということにはなるのでしょうが、逆に、自分自身がちょっと気恥ずかしくなるようなところがあります。そこが使用率が少し減少している背景にあるのではないかと思います。もちろん、先ほど永田調査官のほうからありましたように、データがそれぞれ古くなっているということもあろうかと思います。
 それから、もう一つ、中学生ぐらいになりますと、心の内面を書いたりしますので、なかなか親にも見せづらいですし、子ども同士でも、置いておいたものを取ってきて、悪ふざけなんですけど、「こんなこと書いてある」ってからかったり、そういうことで活用しにくいところもあります。
 お互いにあまり見たりしないようにというところを強調しているところもありますが、逆にもっとオープンにできれば、かえって活用もしやすいのではないかと思います。
 保管の件と、もっとオープンにできるか、できないか、親にもちょっと見せにくい内面の記述もあるし、友達に見せにくいところもあったり、友達に見られて、「おまえ、こんなこと書いたのか」とからかわれる、その辺が実際に使うに当たって活用に躊躇する、または保管に躊躇する、そういうところを中学校では感じております。

【委員】
 一つ抜けておりました。先ほどの道徳の時間にもってくるようにすることで、家にもって帰るのは親や家庭との連携にはいいのですが、道徳の時間だけではなく、いろいろなところに使いたいという担任の先生は、学校に置いておかせる先生が多いです。
 また、最近の、中3の女の子が父親を刺殺してしまった事件は、父親と女の子の家庭の問題が指摘されています。それから八王子で起きた事件の男性は父親に自分の職の辛さとか、いろいろなことを相談しているんですよね。それに父親がこたえられてあげられなかったというところで、やはり家庭の問題がかなりあるのではないか。そして、さらに今朝のニュースでも、60歳の女の人が息子のために6億円のお金を横領してしまったというのがありましたが、やはりそれも、親と子の関係ではないかということで、家庭の問題にかかわるものが最近の事件では多いのではないかと感じています。
 そんな時に、「心のノート」が親と子を結ぶ家庭の力になるかけ橋として役に立つことはできないのだろうかというのを、ちょっと感じました。

【委員】
 「心のノート」は小学校に入ってから中学までを取り扱っているので、当然のことながら限界はあるということはよくわかっているんですけれども、小学1年からだんだん成長して中学校に行く段階をずっと見ていくと、「心のノート」は非常によくできていて、特に高学年になるほど、整った形で対応できるようになっていると思うんです。
 ただ、小学校1、2年のものが、本当ににこのままでいいのかなと感じています。児童は1、2年になる前に6年間、家庭、あるいは保育所、幼稚園を経て小学生になるのです。ところが、「心のノート」を見ると、そこが始まりのような感じがあるんです。だけど、子どもの6年というのは、大人の10年、20年に匹敵するような、ものすごいインパクトを受ける時代で、特に家庭でどうあったかということが非常に大きな問題で、今の馬場先生の話とも関連があるんですけれども、ほんとうにいい子どもたちをつくるためには、そこにかなりの目を注がないと、理屈がわかるようになってからでは遅いような気がしてしようがないのです。
 そういう意味では、1、2年の内容というか、先ほどの「働くことのよさを感じて、みんなのために働く」というのもそうなんですけれども、そこに来るまでのプロセスをどう1、2年の「心のノート」に反映させることができるのかということがとても重要ではないか。
 やはり3、4年、5、6年、中学生となるに従って、内容はとても豊富になって、やり方、あるいは先生が教えるための材料が結構あるんです。ただ、1、2年のほうを見ると、何か元気でいこうとか、そういう──要するに大人が子どもにこうあるべしということは非常に強くあって、生まれて6年間生きてきたこととの落差があまりにも大きいのではないか。その落差をどうやったら縮められるかというのが、実はこの「心のノート」の大きな問題ではないのかなと、そんなふうに感じます。

【委員】
 ただいまの中川委員のご発言でございますが、就学前の問題というのは非常に重要であって、そのつながりが従来はとかく見えないようになっていたということは確かにあろうかと思います。ただ、現状といたしまして、今の就学前の子どもというのは、おそらく九十何パーセントかが幼稚園ないし保育所という施設保育を経てまいりますので、そこでの指導要領のようなものと対応させて考えると、この辺のことは少し明確になろうかと思います。
 その辺のことを、無藤委員などが何かご意見がおありであれば、ご説明いただければわかりやすいかと思いますが。

【委員】
 幼稚園、保育所とのつながりというのは、幼稚園教育要領と小学校学習指導要領の総則などにも書かれて、進めることになっております。
 特に、広い意味での道徳というのは、幼稚園では道徳性の芽生えとか、規範意識の芽生えと呼んでおりますけれども、遊びや生活の中で自然に周りの大事さに気づくというあたりでやっております。
 そのあたりから道徳とか、それから小学校低学年ですと狭い意味での道徳というよりは、生活科とか特別活動とか、いろいろなところにつながると思いますけれども、そういうところにつなげようと考えています。
 じゃ、実際にうまく動き出しているかというと、それは、まだ、これからではないかという気がしています。特に、道徳とか規範意識という観点で幼稚園と小学校をつなげるというのは、実際にまだあまり出ておりませんので、その辺を考える必要があります。
 それから、さらに小学校低学年の段階で、「心のノート」を活用しながら幼稚園からの発展を考えているという実践を私は見たことがないので、多分あまりないだろうと思います。
 そういう意味では、特に小学校1年の段階で「心のノート」の活用をどうしていくかということは、一つの課題です。
 ただ、おそらく1年生の最初の段階では、ここにいろいろ出ていますけれども、適応指導とか生活指導というのでしょうか、そういう面については1年生の先生は、かなりなさるわけです。
 それから、今回生活科などで1年生の入学当初については、かなり幼児教育からのつながりを配慮して指導に力を入れるということになっておりますので、そこで「心のノート」が役立つということが、もうちょっとPRされれば使えるようになるのではないかと思っています。ただ、もう少し幼稚園からのつながりを、「心のノート」の最初に意識されてもいいかなと思いました。それが一つです。
 次いで、もう一つ申し上げたいのですけれども、先ほど上杉委員もご指摘でしたけれども、道徳の時間に使っている率というのは、多分何らかの形で使っているということだと思うんです。ですから、九十何パーセントと、利用は高いんですけれども、道徳の時間が年に35時間あるとして、そのうちのどのくらい使っているかというのでは、多分ないのだろうと思いますが、それほど多くは使ってないのではないかという感じはします。当然ながら副読本が通常ありますので、こちらを主に使っているんですけれども、副読本は文部科学省が決めているわではないので、副読本などと「心のノート」を組み合わせて、どう道徳の教育を進めるかという意味で、活用事例集といったものはもう少し出たほうがいいのではないかと思います。
 つまり、年間35時間の道徳の教育課程を組む際に、副読本なり、そのほかの資料なり、「心のノート」を組み合わせる中で、どういうふうに単元案を組むかということが、もう少し出てこないといけないと思います。

【委員】
 最初に編集したときからかかわっておりましたので、その後、どういうふうに実際に使われるのかというのが気になっておりましたし、教育大学に勤めて、教員養成を担当しておりますので、「君たちが赴任するところでは『心のノート』というのを子どもたちはもっているはずだから、学生のうちにもきちんと読んでおいてほしい」と、私は生協に常に平積みをさせるようにしておいて、結構売れています。
 学生たちにしてみると、子どもたち向けではあるんだけれども、自分たちが読んでもとても役に立つという意味で、かなり広い年齢層に受け入れられる編集にはなっていたのだろうなと思います。しかし、さすがに時代の流れによって、中をある程度データ修正とか、写真の差しかえとか、そういうものをたくさんしなければいけないなという必要も年とともに出てきておりますので、今回はどの程度時間の制約と予算の枠の中でできるのかを考えつつということになると思うんです。
 これは、多分事務局のほうもお答えにくいだろうと思うんですが、何とか長く広く使われるようになってほしいという願いをもちながら、平成14年に配付されて以来、毎年心配していたのは、基本的には、これは単年度予算ですので、文部科学省が大事なものだといっても、財務省が予算を組んでくれなければ配付できません。今回は改訂するんですから、まさか来年度1回配ったらおしまいということはないだろうと思うんだけれども、そこら辺をこの会議がこれほど大事なものだから、きちんとそういう枠を保障するといったようなアピールはできないものかというのが一つ。それは、この会議の性格上なじまないと言われると、それまでなんですけれども、せっかく改訂するんだから、それなりの元気が出るようなバックアップというものをしていただけるといいなと思います。
 もう一方では、道徳の授業の話のことがありましたけれども、文部科学省の調査でも中学校については、年間35時間を超えているところは、半数に満たない状況にあるのです。提供する側とすればベストのものを出していきたいということは思いますので、やはりきちんとしたバックアップ体制をとっていただけると、実際の作業も元気が出るなと思いますので、それは特にお願いを申し上げたいところです。

【委員】
 京都の校長をしている友人が、学校ではなくて公的機関で「心のノート」が置いてあったというのです。これは大変うれしかったという話を聞きました。予算の問題がありましょうが、そういう学校以外の公的機関に置くということも頭の隅に置いたほうがいいように思っています。

【委員】
 さきほど、財政の問題がありましたけれども、単年度予算で決まっていて、継続的にできないとか、そういうお話がございましたけども、これは予算的にどうなんでしょうか。例えば、これをアピールをして、非常に重要なものとすれば、次の予算はたくさんつくとか。

【文部科学省】
 予算は単年度主義ですので、年度年度で要求をしていくという仕組みになっております。我々といたしましては、今回こういう形で改正にかかわるご検討をいただいております。今後ともきちっと無償で配っていきたいと考えております。

【委員】
 私も会議の前に「心のノート」を見させていただいて、よく工夫しておつくりになっておられると感心はしております。
 ただ、ちょうど私の息子、娘がこれを使っている年齢ですので、来る前に聞いてきたんですが、息子は「それはいい本だとは思うけれど、記述のところは先生が書いてほしいことはわかるんだよね」という言い方をしております。
 それが一体どういうことなのかを私なりに考えてみたときに、子どもたちが道徳、あるいは法とか規範とか、そういうものを守っていく場合にも、それに違反する場合が出てくると思うんです。しかし子どもたち自身が多様なものですから、道徳あるいは法に反する場合の理由もまた多様で、それぞれについて考えてやらないといけないんだろうと思うんです。
 たしかに、何をしてはいけないか、何をすべきかということ自体がわからないとか、わかってはいるけれど受け入れようとしていない、そういう段階で問題が発生している子どもたちもいると思うんです。
 例えば、いじめがいけないということをわかっていないとか、いじめはいけないということを大人は言っているけれども、自分はそう思わないとか、そういう段階で問題行動を起こす子もいます。しかし、逆に、いじめがいけないということはわかっているんだけれども、今自分のやっていることがいじめに当たるかどうかということが議論の余地があるという子もいると思うんです。
 例えば、体重のことで女の子をからかうということを男の子はやりますけど、それはいじめだと思ってやっているのか、単にからかっていると思ってやっているのか、よくわかってないところがございます。
 そのあたり、どこまでいけばいじめなのかは、多分その子の生活経験とか気質によっても違います。具体的な当てはめの基準が、その子の性格によって違うということは、そのとおりなんです。
 では逆に、一番敏感な子に合わせるのかということになれば、それはそれでふざけ合いも何もできないということになってくるので、その辺が問題なのだということぐらいは、おそらく中学校ぐらいまでくれば、それなりの子たちは、もうわかっているんだろうと思います。
 あと、ほかには、当てはめも間違ってないんだけれども、ただ自分のやったことの結果の予測がよくわかってない場合もあります。例えば、軽いいたずらのつもりでやったことが大けがにつながったといった場合、別に悪いことをやろうと言っているわけではないし、それなりの道徳心はあるんだけれども、軽率にやってしまうという場合もございます。あるいは、全部わかっているんだけれども、友達関係の中でできないとか、あるいは何らかの能力等の問題でできないというような、いろいろなタイプの子どもたちがいるわけです。
 その中で、いじめはいけないということはわかっているから、いじめはいけないと書くんだけれども、具体的な場合にどうなのかという話になると、子どもたちの間にも沢山難しいことがあることは自分でわかっている。
 では、例えば記述欄をつくったときに実際にどこまで書かせるかのという時に、友達に見られるということに対する恐怖心とか、先生が見るということでどう思うのか。自分の本心を書かせるのか、あるいは本心はそうなんだけれども、それでもやってはいけないことはあるし、思っていても言ってはいけないことを書かせるのか。そのあたりが、記述欄を工夫していくときに問題があるんだろと思うんです。
 息子が言った一つは、おそらく文部科学省でおつくりになるということもあって、規範の内容について、比較的にみんなが悪いとか、みんながすべきだということがテーマになっている部分がそれなりにある。しかし、それは彼らはある意味でわかっていたりするわけで、考えさせるということになると、今度はむしろ答えのないような話を入れて、だれが何を言おうと、一つのやり方、生き方なんだという延長線上で物事を考えさせるということにもなってきたりすると思うんです。
 だから、「心のノート」はよくできていると思うんですが、特に難しいのは、中学生とか小学校高学年になればなるほど、現実もわかっているし、自分たちに問題があるのはわかっているけれども、どうしようもない自分がいるという子たちに向けて何をつくれるかというのが、実際に彼らが本当の意味でどう活用していくのかということで重要なのではないか。規範意識の問題というのは、基本的にそういう問題をはらんでいますので、文部科学省としておやりになれることと、実際に先生方が現場でおやりにならなければいけないこと、家庭でしかできないことの区分があると思いますけれども、記述欄を改めるのなら、その辺りについてお考えいただいたほうがいいのかなと思います。

【委員】
 ただいまの5人のお話をお伺いしながら、各教室では、先生ご指摘のような教育がしっかり行われていくということが極めて重要だと私なりに理解をしつつ、もう一方で、「心のノート」がそこまでの教育条件といいますか、教育内容といいますか、そこまで提示していくものであるのかどうかということに関して、私の中には若干の戸惑いがございます。
 私は、「心のノート」そのものは、目次から順にごらんいただければおわかりのとおり、学習指導要領の構成を基本にしております。したがいまして、学習指導要領の子ども向け翻訳本というのが私なりの理解でございます。これは極めて重要なことで、子どもたちがそれぞれ小学校、中学校の道徳で一体何を学ぶのかということを明示しているという例はほかにはない。そういう意味でいえば、極めて画期的な材料だと思っております。
 しかし、そこから先、具体的に今のいじめの問題、先ほどもお話が出ましたが、必ずしも歓迎しないというよりも、むしろ問題として意識すべき事態がさまざまに起きています。それらの問題の直接的な対応をどうしていくのか、あるいは今現在、彼らをめぐるさまざまな問題に対して、より深く教室では考えてほしいと思いながら、しかし「心のノート」はそのための基本的な基盤をきちっとつくっていくという、これが基本的な役割なのであろうと思っておりまして、お話を伺いながら深く納得する部分と、「心のノート」の役割に関しては、私の中では必ずしもピタリ像が結んでおりません。
 先ほど、本田委員、無藤委員、あるいは中川委員から幼稚園との接続でというお話がありました。これは作業的な見通しを立てるために、一つ私なりにこんな理解をということでご紹介申し上げながら、重ねてご意見いただければありがたく思うんですが、小学校の低学年の冊子の72ページと73ページがございます。これは実際に現場で使っている教員たちの声を一部紹介いたしますけれども、「かぞくが大すき」というページでございますけれども、中には非常に使いづらいということをはっきり表明する者もいます。と申しますのは、平均的な家族モデルを図で示していると。
 しかし、ご存じのように家族形態も多様になってきておりますので、家族はかくあるべしというモデルを示すということは状況的には非常に難しゅうございます。しかし、例えば右上の「かぞくのねがいをかいてもらおう」「こんな人にそだってほしい」、ここに例えば、親に子どもの成長に対する願いのようなこと、これをメッセージとしてもらうという、この欄は非常に使って意味があるよねという言い方をする教員がいます。つまり、子どもの教育に学校だけではなくて、親も積極的に参加してもらえる。幼児期から学齢期を通して、この子たちをどう守り育てていくのかと。そこに、残念ながら必ずしも子どもの教育に積極的に関与しない家庭のケースも、最近はしばしば見られる。むしろネグレクトの問題、虐待の問題など、深刻な問題も一方であると思います。
 そうしたことを考えると、モデルとしての家族像を示すということよりも、積極的に子どもたちの学び、あるいはそれをサポートすることに家庭に参加してもらう、これが一つの方法として今回の改訂の方向で強調していい点かなと、私なりにそんな理解をしているところでございます。
 例えばということで方向性の例を示しました。もし、それについての率直なご意見をお聞かせいただけると、私なりの作業的な見通しがつきます。よろしくお願いできればと思います。

【委員】
 ありがとうございました。残念ながら時間の制約がございまして、次の議題にそろそろ移らなければいけない時間になっておりますが、見事に私たちが最初に意図しました学習指導要領の改訂に伴う「心のノート」の改訂ということではない話がずっと出てまいりました。これは見事に問題の所在を明確にしていると思います。
 ですから、これはこれとして、つまり学習指導要領の改訂について若干の追加なり何なりをするということは、事務的な作業として必要だと思います。しかし、同時にそれだけでは終わらないということに、むしろ「心のノート」の重要性、今日における課題というものがあるんだということは、一つきょうの議事録にとどめるべきことだと思います。それは極端に言うと、別途の目標、あるいは組織をもって、「心のノート」をどうすべきかということを考える機会を文部科学省のほうで考えていただくということだろうと思います。それに対して、私たちが大きな発言をしたと思いますね。
 最初に戻りまして、まずなぜ忘れるのかということも、忘れても仕方がない内容だから忘れるんだということもあり得るのです。ですから、近ごろの子どもが非常にルーズになったということはもちろんあります。あるけども、同時に我々としても、いつもこれを愛される冊子にしようということが、むしろ大事な先ほどからのご意見の結論だと思います。
 私なんかは、これは大事な自分の分身みたいなものだと。だから、僕は抱いて寝るんだといったようなものにしなければいけないのだと思っておるんです。
 この「心のノート」も、先生のノートなのか、子どものノートなのか、その辺をはっきりさせていないのではないかという気持ちさえございます。ですから、徹底的にこれは子どもに書かせる。先ほどお話のあった家族の願いも子どものために対する発信を書いていただくということですので、そういう子どものためのノートと。我々は昔、背丈を柱に刻んで親が成長を記録してくれました。それと同じような、これも心の成長を柱に刻んだ身の丈だと、心の丈だというものにならなければいけないと思うんです。
 よく私はわかりませんけれども、2学年にわたっておりますのは、当然1年で書いてしまえば2年では書くことがなくなる。両方の欄がありますけれども、ですから、先ほどちょっと出ておりましたが、これは各年次ごとに配付すべきものであって、1年のときはこうだ、2年のときはこうだということをあわせて、その子の成長の記録になると。そうでないと、昔書いたことが恥ずかしいから捨ててしまうということもあろうかと思うのです。
 そういうことも、今大事なこととして出てきたと思いますので、それぞれのご意見を大所高所から吸収していただいて、今後の文部科学省の心の教育政策としてお考えいただけたらと思います。
 これを大きなアピールにしようではないかということも、やはりこれが国民の総意に訴えるものであれば、当然そうなると思うんです。幸い、これは公開の会議でもございますので、世間への伝わり方はそんなに絶望的ではないと思います。ですから、これがいかに大事かということ、それを世の中が認識してくれれば、もっともっと大きな力になると思います。
 そんなことで、次の議題に移らせていただきたいと思います。
 次の問題が、先ほどの4のところでありますけれども、これにつきましてはいかがでしょうか。時間はあまりないのですけれども、先ほどの4のことにつきまして、文部科学省からの若干のご説明をいただければと思いますが、お願いいたします。

【文部科学省】
 4のところは、「国による読み物資料の作成について検討」、その課題となっているところでございますけれども、資料といたしましては、先ほど「心のノート」について説明しました資料2がございますが、その3枚目のところに、「道徳の時間に用いる読み物資料について」と1枚に整理されているものがございます。それを開いておいていただきながら、その後ろに、若干の民間の副読本会社の教材例、資料例がとじられておりますので、ちょっとほどいておいていただけたらと思います。
 その1枚ものに書いてございます一番上のところですけれども、今回、「第3章 道徳」の「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」の3)のところですが、つまり道徳の時間にかかわって5項目明示された中で、(3)のところに「先人の伝記、自然、伝統と文化、スポーツなどを題材とし、児童が感動を覚えるような魅力的な教材の開発や活用を通して、児童の発達の段階や特性等を考慮した創意工夫ある指導を行うこと」と示されました。
 ご存じのように、平成20年1月17日の中央教育審議会答申での道徳教育の充実に関する趣旨を、特に教材の充実に関してはこのようなところに盛り込んでいるものでございます。少しだけ見ていただきたいのは、A4判の白い表紙の「小学校学習指導要領解説・道徳編」のところです。今私が読み上げました学習指導要領3の(3)の教材の充実にかかわることについての解説が2ページにわたって記述されております。そこでは、「道徳の時間に生かす教材」は、例えばこのような条件をもっているものが好ましい、あるいは、このような条件をもつようなものを開発していこうということで、アからオまで、また、アからカまで、左側の90ページにカタカナを見出しにして書いています。
 そして、その右側に、さらにそれを広げていく視点から、「教材の開発と活用の創意工夫」ということで例えば、「先人の伝記には、多様な生き方が織り込まれ、生きる勇気や知恵などを感じることができるとともに、人間としての弱さを吐露する姿などにも接し、生きることの魅力や意味の深さについて考えを深めることができる。」
 自然のところは、「自然を題材としたものには、自然の偉大さや生命の尊さなど、感性に訴えるものが多い。伝統と文化を題材としたものには、有形無形の美しさに郷土や国への誇り、愛情を感じさせるものが多い」などと考えられる。また、スポーツを題材としたものには、「今、実際に活躍するアスリートなどのチャレンジ精神や力強い生き方、苦悩などに触れて、道徳的価値や生き方についての自覚を深めることができる」ということで、教材の充実の意味づけについて例示的に述べているものがございます。
 このようなところをひもといて考えてみますならば、1枚もののプリントにもう一度戻っていただきますと、枠の中にございますように、例えば小学校高学年段階を事例とするならば、現在も多様な資料が使われております。
 まず1つは、民間の副読本が机上にそれぞれ若干部置いてございますが、小学校、中学校ともに9社、10社程度から出されております。そのような中にも、その後にカラー判でとじられていますような多様な道徳資料が含まれております。
 それ以外にも、例えば地域で開発したもの、あるいは文部科学省が指導資料として開発して、そして各学校に配付して、各学校が印刷したり、あるいは引用したりして使っているもの等、読み物資料だけでも多様にございます。もちろん映像資料やほかのものも使うなどして、それぞれの学校、学級での創意工夫が見られるところです。
 その中で、例えば先人の伝記が示されていますが、その下にゴシックで4つほど例が出ております。それと同じものがカラー判で、その後ろにとじられております。
 例えば本田宗一郎氏の資料が最初の1ページ目、2ページ目にわたって、資料でいいますと4ページ分になりますが、このような実業家を取り上げたりしています。本田宗一郎氏は何度やってもうまくいかない、100回に1回成功すればいいところだということで、1枚めくりますと、本田宗一郎氏の手にたくさんできている傷がイラストになって載っています。このような資料は、小学校でも中学校にも取り上げられています。
 また「太平洋のかけ橋」とありますが、文化人であります新渡戸稲造氏の資料です。これは5ページのところを見ていただきますと、「小学校・中学校道徳教育用郷土資料 青森県教育委員会」と書いてありますように、教育委員会が開発した資料です。これは文部科学省が何年間かにわたって郷土資料の開発を各教育委員会に依頼したときにできた資料を、副読本会社等が活用しております。
 また、その後は歴史上の人物である伊能忠敬氏の「50歳からの再出発」という資料です。これは多様な実物や、あるいはイラスト等を使って構成されているのがわかります。その後ろには渋沢栄一氏が出ています。経済人と言ったらいいでしょうか、福祉にも多様な力を発揮された明治、大正の人物を小学校用の資料にしているわけですが、例えば73ページ、これはもともと文部科学省が指導資料として開発したものを民間の副読本会社がそのまま使っているという形になっております。
 このように多様なところから、それぞれ先人の伝記などが出されてきておりますが、おおよそ何割ぐらいかという調査はございませんが、上の学年に行くほど、やはり先人が出てきている割合は高いというのが実際のところです。
 また、その後ろの、自然の偉大さ生命の尊さなどに関するところですが、11ページは世界自然遺産の「白神山地」が題材に取り上げられたビジュアルな構成になっていますが、人物ではなく説明文的な資料になっているということで、また違う角度の資料になっていることがおわかりかと思います。
 その後ろには、人物の事例が出ております。
 また、16ページから2事例載っておりますのは、「日本のたから」「もうひとつの塔」ですが、一つはご存じのように岡倉天心、もう一つは西岡常一を取り上げたものです。薬師寺の西塔を建てるときに、西塔が東塔よりも大分高さが高くでき上がって、なぜだろうと皆さん不思議に思っているんだけど、1000年たてば同じ高さになるというような大変感動的な部分が織り込まれている資料です。
 伝統と文化にかかわっても、今のところも資料は開発されてきていると言いながらも、必ずしも十分多くはないという印象はございました。
 最後の2編は、スポーツにかかわってですが、ここではご存じの今度の北京オリンピックでも活躍が期待されます谷亮子選手ですが、元は田村亮子、そして谷亮子、今度は最高で金メダル、最低でも金メダルの後の、ママでも金メダルというのが目標ということで、またこの資料がつくり直されていく。常にタイムリーな資料であるというよさもあるということです。
 その下に、メジャーリーガー・イチロー、みなさんご存じの活躍されているスポーツ選手ですが、この谷選手もイチロー選手も、「心のノート」の中でそれぞれ取り上げられておりまして、谷選手は、中学校でメッセージを書いてくれている。イチロー選手は、小学校で志をもとうというところで、イチロー選手の子ども時代の写真が配置されており、よくそのページとつなげて指導される先生もいます。
 ほかにも、サッカー選手、スキーヤー、マラソンランナー、あるいはパラリンピックで活躍している選手など、スポーツ選手は近年少しずつ増えてきているように感じています。
 このような、読み物資料を使いながら、道徳の時間で話し合いをやっている現状がありますが、まだそのあたりにしっかりとポイントが置かれているものが、必ずしも割合として高くないのではないかということも感じています。
 いずれにしましても、ここの1枚ものでわかりますように、すべて実話、リアリティーのあるものというところが性格としておわかりになると思いますし、また副読本会社が開発したもの、地域の教育委員会が開発したもの、あるいは文部科学省が開発したものが使われている。そのようなアレンジの中で、このような読み物資料が少しずつ拡充してきているという状況でございます。

【委員】
 従来の考え方と実例をお話いただいたんですが、端的に申しますと、どんなものをイメージして、どういうふうにやることが望ましいとお考えなのか。それはいかがですか。

【文部科学省】
 文部科学省では、国の読み物資料の内容については、まだつぶさには検討はしておりません。先生方にお知恵をいただきながら検討を進めてまいりたいと思います。過去にも文部科学省で多方面にわたって読み物資料をつくってきておりますが、創作も含めて、しっかりと現場で活用していただけるような内容を検討していく必要があるのではないかと思っています。

【委員】
 道徳が教科でないということから起きている子どもたちの問題ということになりますと、結局、子どもが何か道徳の授業で使うものをもとうとすると無償ではないわけです。教科の場合は、全部国が予算保障をしていますので、いわば保護者にしてみれば無償で教科書が手に入る。道徳に関しては教科ではないがために、その保障がないので、したがって1人1冊ずつ手に入ることが全国的に保障されているわけでは決してないのです。
 そうすると、例えば1セット買って学年で使い回しにするという学校もあります。一方で、私の子どもが通っていた小学校、中学校の場合は、人権学習用と道徳の授業用の副読本とを1冊ずつ別に1人ずつもたせる方針でやっている学校ですので、各学年のものが全部手元にあります。
 そういうふうに、公教育であると言いながら、現実的に道徳の教材に関しては大変なばらつきが大きい。それを放っておくとどうなんだろうかと思うので、そういう意味で国が、これまでも何冊もつくっているわけですが、特にきちんとしたものをつくって先生方にお示しをするというのは、とり得る手立てとすれば大事なことではなかろうかと思います。その点だけに限定しての意見です。

【委員】
 現場の声を聞きますと、「先生、いい読み物ありませんか」という声が非常に多いのです。いろいろな副読本も出版社から出ておりますけれども、ここで著作権の問題がありまして、コピーがなかなか難しいという状況になってきているんです。
 そんなことを考えますと、やはり人間のよさに向かって、いいもの、美しいものをしっかりとと子どもに示していくということは非常に大事なことであって、そういう意味からしますと、今の世の中がどうも人間の醜さを取り上げてあげつらう傾向が強うございますから、そういう点からしましても、ぜひとも子どもに自由に、教師の目を通して、これはいいと思うものを子どもの目に触れさせるためにも積極的に進めてもらいたいと願います。

【委員】
 これは、まさに心のための事例集といいましょうか、そういうものですけど、私の息子を1年間アメリカの中学校に入れたんですけど、そうしましたら文学の教育の授業で、分厚い作品集を与えて、それをひたすら読ませるだけなんです。教師が何も言わない。ただ読みなさいというだけで読むという、これはものすごい効果的な教育だと思いました。
 ですから、こういうものも何か枠をつくって、あるいはパイプを通して、こちらからこうすべきであるということではなくて、子どもたちが自由にこれに接して、自由に自分の中に取り入れていくという、そういう文章集をもたせるということは非常に大事なことだと思うんです。ですから、何とかこれはすばらしいものをつくっていただきたいと思っておりますが、そのためにもいろいろなご意見をちょうだいしたいと思うんですが。

【委員】
 今まで出された指導資料の中で、2回ほどかかわらせてていただいたんですが、第1回は「思いやりの心を育てる」、それから2回目が第2の柱、「主として他の人とのかかわりに関すること」の資料集でした。今回は、先人の伝記とか自然、伝統と文化、スポーツ、それに重点を置いた読み物資料というのを集めていこうということでしょうか。

【文部科学省】
 今回の指導要領の改訂で、その4つについては例示として挙げられておりますので、そこを中心として盛り込んでいくことになろうかと思いますが、それ以外のものを排除する、ということはならないと思っております。

【委員】
 先ほど座長がご発言くださいましたアメリカなどの、いわゆる言語の教科書でございますか。その中にリーディングというのがございまして、それはほんとうに読み物がただぎっしり詰まっているだけという形で、日本の国語の教科書というのは、その中にいろいろな要素が入って一冊になっておりますけれども、そうではなくて幾つか分冊されておりまして、読み物だけのものというかなり分厚いものがきちっとあって、そこでたくさんの著作に触れさせるというのでしょうか。そういう形ででき上がっているということは非常にいいことであろうと思います。
 そのような見地から、読み物集というのでしょうか、そういうものをつくる。しかも無償で配付するということを考えると、文部科学省がそれをつくるということ自体は結構なことであろうと思うのですが、それに関連して、ちょっと細かいことでお伺いしたいと思いますが、ここに並べられております文例を見ますと、「何とかによる」というのと、編集委員会が書き下ろしたであろうものと、それからストレートに「○○(まるまる)作」というのがあって、それらがどのようになっているのか。これは技術的なことでございますけれども、オリジナルな原作をそのまま選んで、これは読んだらよろしいであろうという形で載せるのか、あるいは何かリライトして載せるのか、あるいは「よる」という場合には、原作から都合のいいというか、こちらのねらいに合うようなところだけをアレンジしていくのか、ちょっとよくわからないところがございますので、その辺、細かいことでございますけれども、方針のようなことがあれば、むしろ伺いたい。
 座長が言われましたように、ほんとうにオリジナルな作品をどんどん読ませていくというのと、もう一つ、ちょっと違う考え方から編集される場合とがあるのかなと思うものですから、その辺のことを伺えたらと思うのですが、いかがでございましょうか。

【文部科学省】
 今日、例示させていただきました副読本に取り上げられているものでも、先ほど申し上げましたように、文部科学省が開発した資料を転記している場合もあります。ただし、いずれの場合でも、何らかリライトはある程度しているケースが多いです。副読本会社は、文部科学省、地域の郷土資料、あるいは文学作品をリライトすることをよくやっていますし、文部科学省も文部省時代に作ってきているものについては、学校の教師などのオリジナルのものと、何らかに取材して伝記などを集約したり、リライトしたりしているものなどがさまざまに重なっているというのが実際のところです。

【委員】
 間口を広くして、それでみんなを迎え入れるという格好のほうがいいわけですから、わりあい自由な大きなものをつくるということがいいと思います。
 読み物集につきまして、ほかにいかがでしょう。
 これは早急にどうこうというのではなくて、少しスパンを長くして考えたいと、そういうふうに考えてよろしいですね。ですから、今回結論を出すようなものではないわけですけれども、さっきあれほどすばらしい大きな大局的なご議論をいただいたのですから、この事柄につきましても高邁なご意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょう。
 先ほどから家庭との問題も出ておりますけれども、赤田委員、いかがでございますか。ご発言をいただきたいと思いますけれども。

【委員】
 いろいろとお話を伺っておりますが、非常に難しい問題だなと私なりに感じております。
 中学校の「心のノート」に関しまして、内容そのものが心のひだみたいなものだと私は思います。
 私が見ても非常におもしろい、役に立つものだと思うんですが、先ほどご意見ありましたように、中学校レベルでは先生が期待しているとおりのものは書くと思うんですけれども、自分の心の中はなかなか見せづらいのかなと思いました。
 偉人、歴史、あるいは自然は大事なものだと思っております。家庭の中で活用できるのは、小学生だと多分保護者と一緒に家庭の中でいろいろなことができるかと思うんですが、中学生レベルだとちょっと難しいのかなと正直思っております。心は開いてくれるんですけれども、思春期の子どもが、果たして親に、保護者に自分の心の中まで、大っぴらに見せるのかなと。見せたほうが逆におかしいのではないかと、そんな気もしておりますので、そこの部分が大事だと思いますし、中学校の活用が90パーセント台というのは、多分そこのところもあって活用しづらいのかなと思いました。
 先ほども言いましたが、今の議論に関しては、工夫しながら、やはり日本のすばらしい偉人、それから夢をもてる形のものはどんどん活用していったらいいのかなと思います。

【委員】
 これは繰り返し申しますように、末永い議論をひとついただきたいと。抜本的といいましょうか、残念ながら時間が来てしまいましたので、きょうはほんの入り口のところだけでご意見を伺ったということにしたいと思います。
 長時間にわたりまして、いろいろご意見、ありがとうございました。一番最初に申しましたように、これが各ワーキングの方々のほうに渡りまして、きょうのご意見をもとにして、次回は改善案が出てまいりますので、それをご審議いただきたいということにしたいと思いますが、今後の予定につきまして、それでは事務局のほうにお願いいたします。

【文部科学省】
 先ほどご説明申し上げましたとおり、第2回、第3回につきましては、9月以降に開催をいたしたいと考えております。
 できるだけ早く日程の調整を始めさせていただきたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。具体的な日程につきましては、座長ともご相談の上、決定をして、お知らせしたいと思います。

【委員】
 よろしいでしょうか。特段のことがなければ、これで……。どうぞ。

【委員】
 すみません、1つだけ希望があるんですけれども、これからの作業の中での希望なんですけれども、1年から中学まで家族が出てくるんです。その中で老人というか、家族の中におじいちゃん、おばあちゃんが出てくるんですけれども、小学校、中学校を含めて、扱いが老人を介護するというか、老人が喜ぶことが、お遣いに行ってあげること、肩をたたいてあげることとか、そういうことが非常に多いのです。
 しかし、人間の文化というのは、そういう三世代の中の一番ここにいる人たちのものが伝わって文化が成立するところがあり、動物には三世代というのはないのです。人間だけが三世代なんです。人間の基本的な文化の創造というのは、積み上げたものが次々と受け継がれれていく中で大きくなるので、そういうところのよさを、老人をいたわる存在だけではないところで扱う部分が、この教科書の中で、せめて一場面ぐらいあってもいいのかなという気がしますので、工夫していただきたいと思います。

【委員】
 ありがとうございました。最後に、大変貴重なご意見だと思いますが、スリランカでしたか、考古省というのがあるらしいのですが、遺跡をめぐりまして、遺跡は老人と同じだと。だから、老人というのはそれぞれ働きたがっているんだと。ただ、遺跡も同じで大事にするということだけじゃなくて、遺跡は遺跡として生かすことが大事なんだという発言をして、日本の文化庁の考え方なんかも大体そういうふうになっているんです。
 それでは、今日はこんなことでよろしいでしょうか。ご協力ありがとうございました。これで閉会いたします。

‐了‐

お問合せ先

初等中等教育局教育課程課

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