高等学校における発達障害支援モデル事業における成果の事例
資料2-1
高等学校における発達障害支援モデル事業における成果の事例
(平成19~20年度指定モデル校事業報告書より)
1.成果としてあげられていること
(1)関係機関との連携
- 特別支援教育研究協議会の幹事校として協議会を実施し、参加高等学校間で、実践報告、情報交換などの実践的な取組を実施。
- 地域の福祉行政機関、就労関係機関への相談、協議会参加を通じて連携体制を確立。
- 教職員の情報に加えて、中学校を含む関係機関等の情報、家庭からの情報も収集し、生徒の全体像を把握。
(2)専門家からの支援
- スクールカウンセラー、巡回相談員からの助言とフィードバックによる、より効果的な支援の工夫が実現。
- 教育相談を計画的、積極的に実施したことが効果的。
- 臨床心理士の協力により、発達障害の観点からの継続的な教育相談の充実と、教職員に対する助言を得て、学習環境の改善、板書の工夫や授業中の指導方法の改善につながった。
- 心理の専門家により集約された情報を基に、特性理解が進み、学校生活上の課題に対応。
- 大学生を学習支援員として活用。相談相手やコミュニケーション相手として重要。
(3)教員の意識変革、専門性向上
- 生徒や家庭の状況把握が進み、対応策を検討できるようになった。
- 臨床心理士の協力により、学習環境の改善、板書の工夫や授業中の指導方法の改善・工夫等に係る教職員の意識が高まった。
- 教員へのアンケート調査は生徒の特性への理解を深め、適切な指導の工夫の必要性を理解する機会となった。
- 研修を重ねるにつれ、障害の特性や「特別支援教育」を行う意義などを理解でき、特別支援教育の視点を持って生徒に接することが、学校生活において最も大事な観点であることを認識できるようになってきた。
(4)対象となる生徒以外の生徒への成果
- 校内支援体制や実態把握の方法や対応策の検討は、実際には様々な課題をもっている生徒の実態把握に活用され、問題行動等の予防に大いに役に立った。
- すべての生徒の観察や指導・支援につながり、生徒に対して迅速に対応できるようになった。不登校生徒や中途退学者が2年次には大幅に減少し、一時はゼロとなった。
- 教育相談室等を活用した個別の支援だけではなく、その基盤となる全体の支援として、基礎学力の定着を図るための取り組みや、学級集団としてのサポート体制作りを目指した取り組みも進んで来ており、発達障害のある生徒はもとより、彼らを支える周囲の生徒たちも着実に成長している。
- ユニバーサルデザインの授業作り指針の具現化を意識した授業に各教師が取組んだ。これまで、ノートをとらなかった生徒や、授業に集中できないでいた生徒の変容も見られるようになった。
- 個別の指導の効果を上げるためには、授業やHR活動等の指導を充実させる。HR、授業は特別な支援を必要な生徒もそうでない生徒も共に生き生きと生活する空間にしていくこと、その指導事例を教師が一つ一つ積み重ねていくこと。
- 教科によっては習熟度別、T・Tによる授業を実施。放課後の補習、試験前の補充指導等も実施。その結果、期末テスト等における欠点をとる生徒の減少が見られた。資格試験に向けての個別指導にも力を入れた結果、多くの生徒が合格。
(5)進路指導や自己理解
- 進路指導に結びつけたSSTについては、従来からの進路指導の要素を生かした実践を行い、一定の成果を挙げた。
- 1年次、あるいは早期からのキャリア教育を充実させることにより、職業生活の準備を行うことが重要。
- 就労体験実習を実施することにより、職業適性の発見や自己理解の促進、一人ひとりの障がいの状況に応じた支援や援助の在り方、実習授業等の成果測定や指導法の検証等、つぎのステップに向けた課題を多数見出すことができた。
- 進路実現を目指す支援の在り方を研究する中で、卒業後の進路を見据え、社会に出た際に不可欠となる「コミュニケーション能力」を高める取組に加えて、就労体験を行ったことは、生徒の進路意識の高揚と進路先の決定につながった。
- 高校生である彼らの気持ちを最優先にして取り組んだことで、当事者自身が「自分の特性を客観的に知る機会になった」「良いところ・優れたところを確認でき、自信が持てるようになった」「不得手なところを知り、生活の中で注意することが確認できた」等と述べている。
(6)個別の指導計画、個別の教育支援計画の作成
- 個別の教育支援計画、個別の指導計画を作成し、学年進行に伴う教職員間の情報の円滑な引き継ぎ及び指導の継続性の確保ができた。
- ケース会議の内容を支援経過シートに記録し、経過を継続的に把握。学校の支援姿勢を伝えることで、保護者を支えることも可能。
2.実態把握の方法
- チェックシート、教員向けアンケートなどを実施
- 巡回相談員などの外部専門家による授業観察
- 共有ファイルへの書き込みやメモを提出することによって情報を集積
- 各種心理検査(集団型、個別型)
- 小テストの結果活用
- 欠席日数に注目した実態把握
- 教育相談実施生徒に注目
- 全員に対して面接を行い、基礎資料を作成
- 事故等が発生したときのレポート作成とその集積
- 定期的に生徒の様子について話題にする場を設定
- 保護者や生徒本人に対するアンケート調査
- 合格発表後の中学校からの情報収集
3.授業改善・指導の工夫(小・中学校で、あまり行われていないことを中心に)
- SHRの2回設定
- わかりやすい、読みやすいシラバス集の作成
- 認識しやすい色チョーク(アンケートによる色の決定)
4.テストの配慮
- 巡回中の丁寧な説明
- 小テストを繰り返し実施
- 問題用紙と解答用紙を1枚にする
- 鮮明な印刷、カラー印刷による見やすい問題用紙
- 漢字にルビを振る、行間を空ける、文字を拡大する
- テスト前の補習(小集団、個別指導)など
- 別室受験
- テスト時間延長
- テスト監督の複数配置
5.評価(単位認定)の配慮
- 基本的に評価の方法は全員同一
- 日常の授業への取組の態度等を加味して総合的に評価
- 提出物や課題等への取組を加味(それらに対する支援も実施)
- テストの得点が不足した場合のレポート指導
- シラバスに授業内容や評価方法を掲載、事前に周知
- 生徒の変容を多角的、総合的に把握
- 評価に配慮を要する生徒についての配慮内容は、学年主任や担任等が要請