特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議高等学校WG(第6回) 議事要旨

1.日時

平成21年7月24日(金曜日)10時30分~12時50分

2.場所

文部科学省東館6階 6F1会議室

3.議題

  1. WG報告とりまとめ(素案)について
  2. その他

4.議事要旨

(1)   事務局より配付資料の確認が行われた。
(2)   中田委員より、神奈川県教育委員会が取りまとめた「かながわの特別支援教育推進プロジェクト会議 後期中等教育段階における様々な支援の在り方(報告)」の提供があり、その概要についての説明が行われた。
(3)   WG報告とりまとめ(素案)について、事務局より説明された後、素案の構成に沿って質疑応答・討議が行われた。その概要は以下のとおり。 

〔概要〕
○:委員
△:事務局

 (素案中「はじめに」及び「1.高等学校における特別支援教育の必要性」について)

○ 先日、ある昼間定時制高校の校長に聞いた話では、昼間定時制高校にはかなりの割合で中学校の特別支援学級や特別支援学校中等部から進学してきた生徒が在籍しており、特別支援学校と同様に個別の教育支援計画を作らないと対応できず、支援員ではなく教員の配置を特別支援学校と同等にしてほしい状況と言っていた。

○ 「高等学校の特別支援教育が遅れている、課題がある」という記述がある。これは事実であるが、一方で高校においては、生徒指導等において生徒の支援を行ってきた蓄積がある学校もあり、それをさらに伸ばしていくという視点も必要ではないか。

○ 「はじめに」において「特別支援教育支援員の配置も進んでいない状況である」という記述があるが、本文中では「全国的に配置が進んでいる」と記述されている箇所があり、「配置も進んでいない状況である」と書く必要はないのではないか。「支援員を配置しなければならない、配置が遅れている」と書かれると、高校側からすると高校はどんな生徒も受入れなければならないというイメージを強く持つのではないか。私の県では、高校や特別支援学校において子どもに合った教育課程を編成して、専門的な教育をやっていくという方向を打ち出しているので、このような書き方には違和感がある。

○ 体制整備が遅れているのは事実だと思うが、着手したのも幼稚園、高校は遅かったのではないか。高校自身の努力不足を言うのではなく、「今緒についたばかりであり、これからだ。」という書き方にすべき。例えば「基本的な体制整備も遅れており」の前提として「着手が遅かったこともあり」を入れるなど、少し柔らかい表現にするほうが、高校側の感情的な側面からもよいのではないか。高校側は「十分な支援をしてくれていないではないか。」と感じていると思う。

○ 2、3人の方から聞いた話では、中学校時代に不適応があったため特別支援学級に行っている生徒について、保護者としては特別支援学校高等部に進学させたかったが、15歳の時点で10歳程度の力があるため特別支援学校には入れなかった。あるいは特別支援学校を受験したが不合格となり、結局定時制高校に進学するという生徒がいる。

  しかし定時制高校では、10歳程度の力しかなく授業についてこられないため、単位が与えられない。もともと中学校では不適応行動があって特別支援学級にいた生徒であるため教室に入れなかったり、ずっとトイレで手を洗っていたりするような問題行動にもつながる。場合によっては単位が取れないため退学になってしまう。彼らのようにIQ70から85くらいの人たちについて、誰がどこで支援していくかを考えていくことが必要なのではないかと思う。

 

(「2.高等学校における特別支援教育体制の充実強化」について)

○ 今、私の県では、小学校が4校、中学校が2校、県立高校が1校ある人口2万人ぐらいの町で、中高連携に関する研究を行っている。そこではさらにそれを広げて小中高連携も実施しようという動きがある。これはその町の校長たちが「連携する必要性の一つに特別支援教育がある」という共通認識を持っていることが要因の一つとなっている。

  教育委員会の生徒指導担当などで話を聞くと、中高連携は非常に難しいと言う。それは現在、私の県では高等学校は全県1区となっているため、中学校から高校へ進学する際に飛躍的に通学エリアが広がるからだ。

  (2)の校長をはじめとする管理職や教職員の理解・認識の向上に「特別支援教育を推進することによって授業がうまくいく、生徒たちにわかる授業ができるようになる」というメリットがあることを書き加えてほしい。特別支援教育の必要性の理解を深めなさいということが書いてあるが、具体的なメリットを書き加えることによって説得力が増すのではないか。

○ 退学者と発達障害のある生徒との相関関係的な数値を入れることはできないか。

  (8)の私立高等学校に対する支援について、私立学校間において非常に格差がある

ことは事実。私立高校を所管している県の知事部局から実態把握をするようにと指導を

受けた学校もあると聞いているが、まだ校長は発達障害がある生徒の実態把握をできて

いないのが現状。

○ 退学者数については、文科省から調査があるため把握しているが、中退した理由については詳細に把握しておらず、発達障害があることを理由に中退したかどうかまでは分からないのではないか。

△ 文科省では児童生徒課において中退に関するデータを取っている。以前からやはり中退率というのは非常に話題になっている。例えば産業教育の議論をした際に、3年なり専攻科を入れて5年の中退率をどう算定するかという議論になり、入学段階での実数と3年なり5年の卒業時点での在籍数を比較して、その差をいわばみなしの中退としてとるしかないのでないかという話になったが、実際には、進路変更などを理由にした積極的な中退もあり、留年をする者もいる。そのため、一概に中退率が高い低いという議論は難しいのではないかということになり、最終的な報告書に中退率のデータは盛り込まないことになったことがある。

  今回の議論でも同じような問題が出てくる可能性もあり、記述するのは難しいかもしれない。

○ 現在、高校は一部の進学校を除きほとんど全入の時代になっている。そのため、今まで特別支援学校に進学していた生徒たちが普通科の高校に入学している。その結果、今までと違った形での退学が出てきている。

  例えば、本当は特別支援学校が適当だろうという生徒が、中学校側の非常に強い要望により普通科に入学した例があった。結果的に進級が難しい状況になり、将来的には退A学になる可能性も出てきたことがあった。このような例は実際に各地で起こっている事例ではないか。

○ (3)において、「取り巻く」という表現が使われているが、「生徒の周囲の」のような表現に修正した方が良いのではないか。また「他方、発達障害は一般に理解されにくい障害と言われているが」とあるが、本人やその保護者が気づいていないケースもあり、障害に対する認識を持てるように何らかの支援をする必要があるのではないか。その上で学校側も発達障害が一般に理解されにくい障害であることを認識するという記述になればよいのではないか。

○ 中高連携は難しい課題であるが、しっかりやらないといけない事項であり、話し合い活動を行っていくことを強く打ち出した方がよいのではないか。

また、保護者との連携も記述しておく必要がある。さらに、教員については、障害に対する対応力を身につけなければならないことや特別支援学校と高等学校の連携も書き加える必要がある。

○ 今回の提言は発達障害の生徒への対応をまとめたものであることをより明確にするため、このことについて「はじめに」で触れるか副題に例えば「発達障害等困難のある生徒への支援の在り方」を入れるなどした方が読み手もわかりやすいのではないか。

○ 定時制、通信制の問題だけではなく、全日制普通科でも支援が必要な生徒が多いところもあるので、例えば東京のチャレンジスクールなどの試みについて取り上げるのはどうか。

○ (7)の1番目の○の文章の最後に「そのような高等学校について重点的に支援を行うべきである」とあるが「そのような高等学校について重点的に、その体制整備に取り組むべきである」と書いた方がよいのではないか。

  全体の話として、高校は都道府県立が多い中で、私立高校についても項目を立てて書いているが、少ないながらも市立高校もある。そのため「各都道府県においては」と記述されている箇所については、「各都道府県など」とした方がよいのではないか。

○ 平成17年12月の中央教育審議会答申の基本的な考え方である医学的な診断の確定にこだわらず、教育的ニーズを把握して、それに対応した指導を行う必要があるということを是非盛り込んでほしい。特別支援教育を行うことによって、全体的な教育の向上にもつながるということは、校長も受け入れやすいと思う。

○ 学生支援員の関係で、今年の3月に私の県の教育委員会と大学との連絡会があったときに、私の県は東京に近いところと離れたところという地理的な条件があるが、学生は東京に近いところの市に支援員として行くことを希望する一方で、支援を求めている東京から離れた市や町の小中学校には支援員が来てくれないという話があった。

(4)の最後の○に学生支援員についての記述があるが、学生支援員だけではなく、いわゆる団塊の世代でやめていく教員の活用についても触れることはできないか。

△ 退職教員の活用というのは大事な視点であり、協力者会議において早期支援の議論をした際にもぜひ活用すべしという声があった。非常勤職員については教員定数の改善とは別に大幅増を図っているところであり、特に団塊の世代の方々の中にはまだまだ力を残されている方も多く、そのような活用も考えているところ。

 

(「3.発達障害のある生徒への指導・支援の充実」について)

○ (1)の2番目の○の個別指導計画や個別教育支援計画のところで、特別支援学校のセンター的機能による支援という記述があるが、そこに巡回相談も加えた方がよいのではないか。

  (2)の5番目や6番目の○において、放課後の補習や社会生活上必要とされるスキルを身につける学習に関する記述があるが、教員がそれらをやるという体制にするのか、専門性のある支援員が担当できるようにするのかを明確にした方がよいのではないか。     

もし専門性のある支援員が、1人で子どもを見ることができるようになったり、特定の授業をできるような形の資格を与えてもらえるようになったりすれば、学校にとっても有効ではないかと思う。

○ (2)の2番目の○について、「このような配慮や工夫を行うことは、発達障害等の生徒のみならず、学級・学校全体の学習意欲の向上につながるものである」という記述があるが、このことをもっと強調してもよいのではないかと思う。

○ 同感である。学力の向上につながるということは絶対に触れるべきだと思う。

○ 1つの実践例として少人数、小集団の学習方式は、すごく有効だと思うので、どこかで具体的に触れてもらえないか。

○ (4)の最後の○で「改めて検討する必要がある」の「改めて」を取ることはできないか。もう具体的に検討する時期に来ているのではないかと思う。

○ 同様に(4)の2番目の○で「将来の制度化」との記述もある。「改めて」や「将来」は先伸ばしている感じがある。

△ 1つはやはり高等学校の指導要領が今年3月に改訂されたばかりであり、新学習指導要領では学び直しも含めていろいろな柔軟な措置ができるようになっており、文部科学省では今その普及に努めているところ。そのような状況で新しい制度を作ることは、現段階では難しい面があるのは事実。まず新学習指導要領のもとで、やれるだけのものはやってみようというのが基本。その上で通級による指導を制度化するに当たっては、定時制の改善や財政上の裏づけが必要であり、これらについてはやはり改めての検討が必要になるところ。

○ その点については「モデル事業や研究開発学校での研究成果を踏まえて」といったような表現はできないか。「改めて」だとどのくらい先かよくわからない。

△ (5)で「モデル事業の指定校をはじめとして」という記述をしている。高校のモデル事業は、各年度13、4校程度指定し2年間の研究を行っているが、これを2倍、3倍くらいに増やしたいという気持ちはある。

  モデル事業を実施するに当たっては、その成果をしっかりと新しい制度につなげていくために、良いものは普及させ全国ベースで展開していくことが大事であるが、現状では足りない点もあり、啓発の努力をしているところ。モデル事業の拡充を第一のステップにし、そこでスタンダードとなるモデルカリキュラムのようなものを構築し、本格的な制度につなげていくというロードマップは念頭に置いている。

○ (5)の優良実践事例情報の集積・提供等については、モデル校が情報発信の中心となってセンター的役割を果たすことも盛り込んでほしい。

○ (2)の3番目の○でいわゆるICTに関する記述があるが、これを(3)として抜き出して書くことはできないか。ICTを積極的活用することは特に発達障害のある子どもたちには求められると思う。項目として追加すれば、もっとわかりやすくなるのではないか。

 

(「4.高等学校入学試験における配慮や支援等」について)

○ (3)に、「保護者によっては」や「保護者が必要な」、「保護者に浸透」、「保護者に対して」などの表現があるが、中学生くらいで知的障害のない発達障害の生徒の場合は本人が意思を持っており、「生徒と保護者」のように表現していただきたい。

○ (2)の3番目の○で「高等学校における入試に際し」「生徒の可能性を伸ばせるような情報を含めて」高校に情報を提供することは良いことだと思うが、高校としては、入試の前にここまで情報をもらうことに対しては戸惑いがあるのではないか。

  (4)の「入学決定後のフォロー」という表現よりも、新たな高校生活を楽しくスタートするためにというような前向きな表現の項目とした方がよいのではないか。

○ (2)の3番目の○については、入試だけ特別に配慮してもらっても、入学後、何も配慮してもらえないと実は困るため、例えば身体障害がある生徒には入学後も必要な支援があり、そういうことも含めて、受け入れてもらえるかどうかということをあらかじめ伝えることが必要だというように私は理解した。

また、「個人情報にかかわるものであるため、生徒や保護者と十分に相談・連携」という表現があるが、個人情報を使う場合は、「了解や承諾」になるのではないか。

○ 中学校3年間の中で、子ども自身が発達障害であるということをきちっと認知し、親が認知している上においては難しくないかもしれないが、担任としては、そうではない場合に、(2)の3番目の○で記述されているように生徒、保護者と十分に連携・相談しつつ取り組むことは大変難しいことだと感じた。

  (4)については、やはり「入学のフォロー」ではなく「教育相談の充実」と改めるべきだと思う。入学後の生徒一人一人の教育相談の充実ということになるのではないか。

○ (3)の1番目の○は「保護者によっては、入試において不利になることを懸念し」という書き出しになっているが、むしろ順番としては、まず本人や保護者が配慮を望む場合の対応を記述し、その後に配慮を望まないケースを記述するという形にした方がよいのではないか。

○ 12ページに挙げられている入試における配慮の事例は、入学後の各学期の試験においても同様に必要な配慮であることを盛り込んだ方がよいのではないか。

○ それについては、3.(2)の障害の特性に応じた教科指導の配慮や工夫のところで触れるよう必要があるのではないか。

(「5.キャリア教育・就労支援等」について)

○ (3)の2番目の○にある人材とは、高等学校に配置する人材という理解でよいか。

△ 教育委員会に配置することをイメージしている。職場実習の要望が企業に対して複数の学校からバラバラに来ることがあり、それを調整する役割を担う。もちろん個々の学校の就労担当や厚生労働省の関係機関とも連携する。

○ (4)の卒業後の就労支援のあり方について、3月の時点で就職できなかった生徒のフォローについて記述されているが、特別支援学校においては、就職した人の定着のためのフォローを一定期間行うことが一般的な話になってきている。そのため、就労の定着支援と卒業時に就労できなかった人への支援の2つに分けて記述した方がよいのではないか。

○ (1)3の1番目の○について、「いわゆる障害者雇用促進法による『障害者雇用枠』を利用した就労も考えられる」と書いてあるが、読んだ人は、発達障害者でこの障害者枠を利用した就労というのはあるのだろうかと思うのではないか。

障害者自立支援法改正法案は廃案になってしまったが、発達障害のある方に対する具体的支援が発達障害者支援法以外にもないと難しいのではないか。

○ 発達障害者支援法以外にも支援について規定した法律はある。従来から厚生労働省は、発達障害は精神保健福祉手帳の対象として明記されてはいないが、精神障害の範疇に入っているという見解。障害者自立支援法改正法案は、すでに障害者自立支援法の対象となっているが明記はされていない発達障害について、条文に明記しようとしたもの。事実上対象となっているが市町村における運用が徹底されていないため、徹底してほしいという通知が近々厚生労働省から都道府県、市町村に対して出されると聞いている。

  (1)3の1番目の○の障害者雇用枠については、通常の高校の場合、障害者雇用枠での雇用はほとんど経験ないはず。そのため制度やルートなど通常の雇用とはいろいろ違う面もあるが、発達障害のある子どもの中には障害者雇用枠を使って就労しているケースがあり、それを活用することも考えてはどうかという提言だと思う。実態として結構な数の例があり、3年前から障害者雇用率の対象に発達障害も加わったため、現在は、知的に遅れがない子は精神保健福祉手帳の取得をしているというケースも出てきている。

  ある子どもを見たときに、一般枠で就労するのと手帳をとって就労するのとどちらがよいか分からない子どももたくさんおり、そのような事情を踏まえた指導や支援が必要だという記述にしてほしい。また、通常の高校で就労支援を担当している方の多くは、障害者雇用促進法について、ほとんど知らないと思うのでそういった状況も踏まえた記述が必要ではないか。

○ 一般枠や障害者雇用枠という言葉自体をここで書いてもなかなか伝わりにくい。企業側が出す求人でハローワークが言う障害者求人というものは、手帳なり診断書なりがなければその時点で受け入れないので、その枠を使っていくというパターンと、全く障害があることを公表せずに普通に応募するパターン、というように記述した方がわかりやすいのではないか。

○ 質問になるが、大学において特別支援が必要な場合に、特別支援学校のセンター的機能による支援の対象となるのか。実際に高大連携を進める上ではセンター機能を活用して、両方の巡回相談員と連携できれば、本人の同意のもとに一緒に大学の先生に入った形で話を伝えるということは可能なのではないかと思う。

△ 特別支援学校のセンター的機能については、学校教育法第74条に規定されているが、そこでは「幼稚園、小学校、中学校、高等学校又は中等教育学校の要請に応じて」とされており、大学は対象となっていない。しかし、保育所もそうであるが、やはり可能な範囲で関係する機関については、このセンター的機能を活用しようということで考えており、運用上はあり得る話だと考えている。

(4)   会議の運営について説明があり、閉会した。

 

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)