特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議高等学校WG(第2回) 議事要旨

1.日時

平成21年5月14日(木曜日)10時00分~12時40分

2.場所

中央合同庁舎第7号館 東館6階 文部科学省6F3会議室

3.議題

  1. 高等学校における指導上の支援や配慮について
  2. その他

4.議事要旨

(1)  事務局より配付資料の確認が行われた。

(2)  事務局より「高等学校における発達障害支援モデル事業における成果の事例」について、佐藤委員より「高校での特別支援教育」について説明がされた後、質疑応答・自由討議となった。その概要は以下のとおり。

 

〔概要〕

○委員

△事務局

 (事務局の説明について)

○ 特別支援教育コーディネーターの動きについて、情報があれば教えていただきたい。

△ 複数のコーディネーターを配置した高校がいくつかあった。コーディネーター自身が非常に専門的な知識を持っている教員だったために、うまくいったという例もあった。全体的には、小・中学校におけるコーディネーターの工夫とそれほど大きな違いはないという印象を受けた。

○ モデル事業の成果をどのように普及させるか、プランを伺いたい。

△ モデル校に対しては、継続校と新規指定校の両方が参加する連絡会を年1回開催し、情報交換が出来る場を設けている。

  全国への発信方法については、必要な予算の確保も含めて検討中。

○ 私の学校はモデル事業の指定を受けていたので、6月に開催される県内の全ての高校関係者が参加するコーディネーターの養成講座において、現状や2年間のモデル事業成果について話をする予定である。

 我が校のコーディネーターは特別に授業の持ち時間数の減があるわけではない。多分県内の他の高校も同様だと思う。

○ 成績評価の配慮の中に「テストの得点が不足した場合のレポート指導」があるが、どうしても得点が基準に達しない場合に、レポートによって合格にすることもあり得るという指導をされたのかどうか伺いたい。

○ レポートの件については、私学と公立で違いがあると思うが、発達障害の子供たちについて一律の評価はできないと思う。何らかの手だてを講じるということで私どもはレポートをやっている。

△ いくつかの高校の教務規程では、例えば単位認定に関して、テストが何%で態度点が何%なのか決まっていた。実際に点が足りなかったときには、レポートのようなものを追加して総合的に判断するといったことをしているものと思われる。発達障害の生徒に限らず、いろいろな面で学習上の困難を有する生徒たちに対しても同じように対応をしているのではないか。

(佐藤委員の説明について)

○ 本県では平成14、5年ごろから特別支援教育コーディネーターではなく生徒指導や不登校も含めた教育相談コーディネーターという形で入ってきており、各校の教員の1人は必ず教育相談コーディネーターの研修を受けている。3分の1ぐらいはかなり機能しているが、3分の2ぐらいは管理職の理解がないなどの要因により十分には機能していない。

 高校における通級による指導は私も興味を持っている。今私の学校では補習を少し拡大し、年間通して定期的に実施している。

 私の学校では、教育相談コーディネーターの研修講座を修了した者が4人おり、各学年1名で1年生のみ2名、さらに将来を控えて今研修中の者が1人という形で、教育相談コーディネーターのチームが生徒指導も含めて展開している。

 

(自由討議)

○ 検討課題としては、校内委員会、コーディネーターといった指導支援体制を高校にどう位置づかせるか。小学校、中学校では支援員が今導入されているが、高校ではどう考えていけばよいのか、小中学校と同じなのか、別の対応をしなければいけないのか。

 また、指導支援のために先生方の意識を変えるにはどんな手だてが必要か。通級による指導を実施するとすればどんな形でできるのか。

 あるいは、全日制や定時制、通信制といった課程や普通科、専門学科、総合学科といった学科ごとの取り組みで共通するものと共通しないものがあるのかどうか。

○ 障害のある方のことを考えたときに、企業の中でもよく言われていることは、障害のある社員に対してやっていることは、当然社員であれば本来ならばやっていくべきことであるということ。また、全く新しいことをやってもらうのではなく、今までやっていることの見方を変えれば障害のある方にも生かせるということ。この2点については強調していただきたい。

  テストに関しては、最終的に点数だけを見るのではなくて、今後、本人がどうやればうまく生活していけるのかといった点を強調して評価していくことも重要ではないか。

○ 本人が自分の学習の認知スタイルを意識、または自分から発信できることが大事。それができれば、社会に出ても企業の中でどういうサポートを求めていったらいいかにつながる。

○ 高校における通級ということを考えたときに、1つは指導内容の問題、それから通級指導教室というものが校内にあったときに、実際に通うかもしれない高校生の自尊感情、プライドの問題がある。

 通級による指導については、学校設定科目として開講し、選択科目として位置づけ、例えば学び直しの教科を通級指導教室のような場所で実施するという方法はできるのではないかと思う。

○ 問題は教員の意識改革だ。教職員に対する研修というのがまず一番必要ではないか。

○ 高校での支援体制づくりは教育委員会の立場から指導をすれば、数値上は一定程度上がるが、その結果、何か変わってきたのかということは、すぐには見えない。必要性があって実際にやってみて、「良かった」という事実を積み重ねていくことで具体的にうまくいく。だから、モデル校における成果の事例をちょっとした事例でもよいので紹介していくことが大事なのではないか。

○ 支援員に関しては私の高校には大学生のボランティアが大体10名から20名ぐらい来てくれているが、試験前の対策などでかなり活躍している。もう少し拡充したいと思っているが財政的な問題がある。

○ 今後高校と特別支援学校が連携を進めるにあたっては、教育委員会において特別支援教育の担当課が高校教育課をいかに関わらせるかがすごく重要な要素になると思う。

○ 中学校、義務教育を終えた後の高校への進路選択は、その生徒の能力をどう評価するかではなく、学力というところにどうしても行ってしまう。中学校から進路指導をして選択させるときには、現実としては大きな難しさがある。やはり、学力が十分ではない生徒の進学先、進路先は、どうしてもその生徒たちを受け入れてくれるところに行かざるを得ない。

○ 特別支援学校はセンター的機能が法的に位置づけられている。小中学校はかなり受入体制が整ってきており、多くの特別支援学校が助言援助を行っていると思うが、高校はまだ特別支援教育に対する抵抗感があるようだ。高校の文化に沿った形でどう一人一人に対応していくのかという点を特別支援学校においても一緒に考え、仕組みを作らなければいけないと感じた。

 高校で特別支援教育を進めるに当たっては、高校にはいろいろな学校があることを踏まえ、大規模進学校も含め、高校全体を進めていくにはその高校に合った仕組みをつくっていくことが大事なのではないかと思う。

○ 高校での指導上の支援や配慮をしていく一つの手だてとして、精神科医の声をきちんと位置づけるということが必要ではないかと感じた。

 通級による指導については、教育課程編成上の問題がクリアできて選択科目の一つのような形で位置づけられれば、高校生の自尊感情を害することなく生徒のニーズに合った指導を受ける場が用意できるのではないか。

○ 今年の入学試験のときに特別支援を必要としている中学生の受験者について、中学校側がそのことを隠して受験させたという事例があった。高校側としては正確な情報があれば、指導についても生かせるので中学校側から正確な情報がほしい。中高連携を進めるにあたっては中高間での意見交換会や研修会などが必要になってくるのではないか。

○ 通級による指導については、結果的に高校に制度として導入すべきだ。ただし、今はやれるところから、制度上なくても現行制度の中でやろうと呼びかけたい。なぜならば、平成5年に小学校、中学校に通級による指導が制度化されたが、そこに至るまでに20年、30年先輩たちが教育的サービス、奉仕的な教育活動としてやってきた結果が制度として生まれてきたという歴史があると思う。今やれるところからやっていって制度化に向けていこうという意味で提案した。

 

(3)  事務局より今後の会議の運営について説明があり、閉会した。

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)